JP6851159B2 - 防汚塗料組成物、及びその塗膜を有する塗装物品 - Google Patents

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本発明は、防汚塗料組成物及びその塗膜を有する塗装物品に関し、さらに詳しくは、優れた防汚性を長期間維持することが可能な防汚塗膜を形成し得る防汚塗料組成物及びその塗膜を有する塗装物品に関する。
近年、海洋汚染が懸念される有機錫含有共重合体に替わる防汚塗料用樹脂として、海水中で加水分解性を有する樹脂が各種検討されてきた。このような加水分解性を有する樹脂を含む防汚塗料組成物(すなわち、加水分解型防汚塗料組成物)を用いて船舶等の海水と接触する構造物の表面に形成された塗膜は、海水に接触すると、前記加水分解性を有する樹脂が徐々に加水分解して海水中に塗膜が溶解していき、塗膜表面が更新され続けることによって、その防汚性能を維持することが可能となる。海水中で加水分解性を有する樹脂としては、トリアルキルシリルエステル基含有樹脂又は金属カルボキシレート構造を有する樹脂を含む加水分解型防汚塗料組成物が、これまで多く提案されている。しかしながら、トリアルキルシリルエステル基含有樹脂は、トリアルキルシリルエステル基の有するアルキル基の種類や該樹脂の構造によって加水分解速度が異なり、また、金属カルボキシレート構造を有する樹脂は、金属の種類や該樹脂の構造によって加水分解速度が異なるため、これらの加水分解性を有する樹脂を用いた防汚塗料組成物は、得られる塗膜の海水中における溶解速度の制御が困難となることが多い。
そこで、このような加水分解性を有する樹脂とロジン又はロジン誘導体とを併用した加水分解型防汚塗料組成物によって塗膜の溶解速度を制御する方法が検討されている(特許文献1〜6を参照)。このように加水分解性を有する樹脂とロジン又はロジン誘導体とを併用することで、塗膜の溶解速度の制御がある程度可能となるものの、ロジン又はロジン誘導体の使用量が少ない場合は、海水中における塗膜の溶解性が十分に得られず、塗膜の防汚性能が持続し難いという問題があった。一方、ロジン又はロジン誘導体の使用量が多い場合は、海水中への塗膜の溶解速度が大きくなることで防汚性能は向上するが、塗膜の物性や密着性が低下してしまうため、塗膜剥離やブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生し易くなり、防汚性能の長期維持が困難となる虞があった。
そして、これらの問題を解決するために、ポリエステル樹脂と、トリアルキルシリルエステル基含有樹脂とを特定の範囲内の質量比率で含む防汚塗料組成物が提案されている(特許文献7を参照)。かかる防汚塗料組成物によれば、優れた防汚性を有しつつ、ブリスターやクラックなどの塗膜欠陥が発生し難い防汚塗膜を形成することができるものの、防汚塗膜が曝される海域や塗料組成によっては、防汚性能の長期維持という点で、やや塗膜性能が不足する場合があるため、更なる改良が求められている。
特開平10−30071号公報 特開2002−53797号公報 特開2011−26357号公報 特開2011−32489号公報 国際公開第2011/046087号 特開平9−286933号公報 国際公開第2015/156073号
本発明の目的は、長期間に亘って優れた防汚性を維持することができ、塗膜剥離、ブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生し難い防汚塗膜を形成できる防汚塗料組成物、及び該防汚塗料組成物の塗膜を有する、漁網、船舶、海洋や湾岸の構造物等の塗装物品を提供することである。
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行い、特定の構成単位を樹脂骨格中に有するポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び/又は金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)と、防汚剤(C)とを含む防汚塗料組成物により得られた塗膜は、海洋中への塗膜の溶解速度を制御することが可能であり、長期間に亘って優れた防汚性を維持することができる上、塗膜の物性にも優れるため、上記防汚塗料組成物を船舶の船底部に塗装した場合に、航行中又は停泊中に塗膜剥離やブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生し難くなることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
本発明は、以下の各項に記載の防汚塗料組成物、及びその塗膜を有する塗装物品を提供するものである。
(項1)ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び/又は金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)と、防汚剤(C)とを含む防汚塗料組成物であって、前記ポリエステル樹脂(A)が、下記式(1)で表される構成単位を該樹脂骨格中に有するとともに前記構成単位の合計質量が前記ポリエステル樹脂(A)の質量を基準として2〜50質量%の範囲内であるポリエステル樹脂であり、前記ポリエステル樹脂(A)と、前記シリルエステル基含有樹脂(B1)及び金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)の合計との質量比が、3/97〜80/20の範囲内であることを特徴とする、前記防汚塗料組成物。
Figure 0006851159
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは1〜100の整数を表す。)
(項2)前記シリルエステル基含有樹脂(B1)が、下記式(2)で表される単量体(b1)の1種又は2種以上と、前記単量体(b1)以外の単量体(b2)の1種又は2種以上との共重合体であることを特徴とする、項1に記載の防汚塗料組成物。
Figure 0006851159
[式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Rは水素原子又はR−O−CO−(ただし、Rは有機基又は−SiRで表されるシリル基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に炭化水素基を表す。)を表す。]
(項3)前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)が、下記式(3)で表される金属カルボキシレート構造を有する特性基を有するものであって、前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)に含まれる金属原子の含有量が、前記樹脂(B2)の固形分質量を基準として0.04〜3.50モル/Kgの範囲内であることを特徴とする、項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
Figure 0006851159
(式中、Mは2価の金属原子を表し、Xは水酸基、有機酸残基及びアルコール残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。)
(項4)前記ポリエステル樹脂(A)が、乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含む原料混合物、並びにグリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含む原料混合物の少なくとも一方の原料混合物を用いて製造されたポリエステル樹脂であり、且つ、前記ポリエステル樹脂(A)の酸価が0.1〜120KOHmg/gの範囲内であることを特徴とする、項1〜3の何れか一項に記載の防汚塗料組成物。
(項5)前記ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量が190〜15000の範囲内であることを特徴とする、項1〜4の何れか一項に記載の防汚塗料組成物。
(項6)前記ポリエステル樹脂(A)が金属カルボキシレート構造を有しないものであることを特徴とする、項1〜5の何れか一項に記載の防汚塗料組成物。
(項7)項1〜6の何れか一項に記載の防汚塗料組成物の塗膜を有する塗装物品。
本発明の防汚塗料組成物は、優れた防汚性を長期間に亘って維持可能であり、且つ、塗膜剥離、ブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生し難い塗膜を形成することができる。
本発明の防汚塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び/又は金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)と、防汚剤(C)とを含む防汚塗料組成物であって、前記ポリエステル樹脂(A)が、下記式(1)で表される構成単位を該樹脂骨格中に有するとともに前記構成単位の合計質量が前記ポリエステル樹脂(A)の質量を基準として2〜50質量%の範囲内であるポリエステル樹脂であり、前記ポリエステル樹脂(A)と、前記シリルエステル基含有樹脂(B1)及び前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)の合計との質量比が、3/97〜80/20の範囲内であることを特徴とする。
Figure 0006851159
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは1〜100の整数を表す。)
以下、本発明の防汚塗料組成物について詳細に説明する。
[ポリエステル樹脂(A)]
本発明の防汚塗料組成物に用いられるポリエステル樹脂(A)は、前記式(1)で表される構成単位を該樹脂骨格中に有する。前記式(1)で表される構成単位をポリエステル樹脂に導入するために、該樹脂の製造において、乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分並びにグリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の少なくとも一方の成分を、原料として用いることが好適である。なお、本明細書におけるグリコリドの別名は、1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(1,4−Dioxane−2,5−dione)である。
また、前記式(1)で表される構成単位の合計質量は、前記式(1)中のRがメチル基の場合、前記ポリエステル樹脂(A)の質量を基準として、2〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%の範囲内であり、前記式(1)中のRが水素原子の場合、前記ポリエステル樹脂(A)の質量を基準として、2〜50質量%、好ましくは4〜40質量%、更に好ましくは6〜30質量%の範囲内である。前記構成単位の合計質量が、2質量%よりも少ない場合や50質量%よりも多い場合には、得られる塗膜の防汚性を長期に維持することが困難なことがある。
ポリエステル樹脂(A)は、従来から公知の方法で製造してもよく、乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分並びにグリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の少なくとも一方の成分と、乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸並びにグリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸以外の酸成分(a1)と、乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸並びにグリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸以外のアルコール成分(a2)とを用い、これらの各成分を相互に反応せしめて製造することができる。
なお、ポリエステル樹脂(A)を製造するための上記反応は、エステル化反応、エステル交換反応、開環重合反応、開環付加反応等の公知の反応の何れかを含む。また、本明細書において、ポリエステル樹脂(A)を製造するための上記反応を「重合反応」と称することがある。
乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸
ポリエステル樹脂(A)の製造において、乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸は、市販品をそのまま使用してもよい。これらの化合物は、それぞれ光学異性体が存在するが、本発明においては、L−体とD−体とを任意の割合で含むものを用いることができる。長期間に亘って優れた防汚性を維持することができ、塗膜剥離、ブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生し難い防汚塗膜を形成するために、ポリエステル樹脂(A)の製造においては、上記化合物の中でも、乳酸のラクチド及び/又はポリ乳酸を用いることが特に好適である。
グリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸
ポリエステル樹脂(A)の製造において、グリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸は、市販品をそのまま使用してもよい。長期間に亘って優れた防汚性を維持することができ、塗膜剥離、ブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生し難い防汚塗膜を形成するために、ポリエステル樹脂(A)の製造においては、上記化合物の中でも、グリコール酸及び/又はグリコリドを用いることが特に好適である。
また、ポリエステル樹脂(A)の製造において、上述のポリ乳酸及びポリグリコール酸は、それぞれ重量平均分子量が450〜1000000の範囲内のものを使用することができる。
酸成分(a1)
本発明において、酸成分(a1)は、ポリエステル樹脂の製造に通常使用される酸成分を使用することができる。そのような酸成分としては、例えば、脂環族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、芳香族多塩基酸、芳香族モノカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、並びにこれらの酸のエステル化物、無水物及びハロゲン化物が挙げられる。
脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基とを有する化合物、並びに該化合物の酸無水物、エステル化物及びハロゲン化物等である。該脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、テトラヒドロメチルフタル酸類、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;これら脂環族多価カルボン酸の無水物;これら脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物などが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物、該脂肪族化合物のハロゲン化物である。該脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;これら脂肪族多価カルボン酸の無水物;これら脂肪族多価カルボン酸のハロゲン化物などが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、並びに該芳香族化合物の酸無水物、該芳香族化合物のエステル化物及び芳香族化合物のハロゲン化物である。
1分子中に2個のカルボキシル基を有する芳香族多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸;これら芳香族多価カルボン酸の無水物などが挙げられる。
1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する芳香族多塩基酸としては、例えば、3価の芳香族多価カルボン酸、4価の芳香族多価カルボン酸などが挙げられる。3価の芳香族多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸アルキルエステル、トリメリット酸ハロゲン化物等のトリメリット酸類;ヘミメリット酸、無水ヘミメリット酸、ヘミメリット酸アルキルエステル、ヘミメリット酸ハロゲン化物等のヘミメリット酸類;トリメシン酸、トリメシン酸アルキルエステル、トリメシン酸ハロゲン化物等のトリメシン酸類;カルボキシル基の芳香環への結合位置が異なる各種ナフタレントリカルボン酸及びその無水物;カルボキシル基の芳香環への結合位置が異なる各種アントラセントリカルボン酸及びその無水物;カルボキシル基の芳香環への結合位置が異なる各種ビフェニルトリカルボン酸及びその無水物;カルボキシル基の芳香環への結合位置が異なる各種ベンゾフェノントリカルボン酸及びその無水物;エチレンビストリメリット酸及びその無水物などが挙げられる。また、4価の芳香族多価カルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ピロメリット酸アルキルエステル、ピロメリット酸ハロゲン化物等のピロメリット酸類;メロファン酸、メロファン酸二無水物、メロファン酸アルキルエステル、メロファン酸ハロゲン化物等のメロファン酸類;プレーニト酸(prehnitic acid)、プレーニト酸無水物、プレーニト酸アルキルエステル、プレーニト酸ハロゲン化物等のプレーニト酸類などが挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の製造に用いられる酸成分(a1)は、芳香族モノカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸などのモノカルボン酸を使用してもよい。上記芳香族モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸などが挙げられる。また、上記脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ブラシジン酸、リノール酸、リノレン酸、ロジン酸、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記脂環族モノカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、4−エチルシクロヘキサンカルボン酸、4−へキシルシクロヘキサンカルボン酸、4−ラウリルシクロヘキサンカルボン酸などが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の製造に用いられる酸成分(a1)は、上記モノカルボン酸のグリセリンエステル等のエステル化物を含んでいてもよい。モノカルボン酸のグリセリンエステルとしては、例えば、ヤシ油、綿実油、麻実油、米ぬか油、魚油、トール油、大豆油、アマニ油、桐油、ナタネ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油などが挙げられる。
また、本発明において、ポリエステル樹脂(A)の製造に用いられる酸成分(a1)は、防汚性の長期維持の観点から、芳香族多塩基酸を含むことが好ましく、その含有量は、酸成分(a1)の合計モル数を基準として、30モル%以上、好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。
アルコール成分(a2)
本発明において、アルコール成分(a2)は、ポリエステル樹脂の製造に通常使用されるアルコール成分を使用することができる。そのようなアルコール成分としては、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ジオールなどの2価アルコール及び/又は3価以上の多価アルコールを含むものが好ましく、例えば、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、1,2−プロピレングリコ−ル、ジ−1,2−プロピレングリコール、トリ−1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコ−ル、2,3−ブチレングリコ−ル、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、3−エトキシプロパン−1,2−ジオール、3−フェノキシプロパン−1,2−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−フェノキシプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−フェニルプロパン−1,3−ジオール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−エチル−1,3―オクタンジオール、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ブタンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ジメチロ−ルシクロヘキサン、トリシクロデカンジメタノール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート(ヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールとのエステル化物)、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビス(4−ヒドロキシヘキシル)−2,2−プロパン、ビス(4−ヒドロキシヘキシル)メタン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニット、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、これらの多価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物等など挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール、ドデシルアルコール等のモノアルコール;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル(商品名「カージュラE10」HEXION Specialty Chemicals社製)等のモノエポキシ化合物とプロトン酸を有する化合物とを反応させて得られたアルコール化合物なども、ポリエステル樹脂(A)を製造する際の副原料として使用することができる。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って行なうことができる。ポリエステル樹脂(A)は、例えば、乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分並びにグリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の少なくとも一方の成分と、前記酸成分(a1)の1種又は2種以上と、アルコール成分(a2)の1種又は2種以上とを窒素気流中、150〜250℃の温度で2〜10時間重合反応させて、製造することができる。上記重合反応において、原料の反応順序は任意に調整してもよく、例えば、乳酸のラクチドを予め開環重合反応させてポリ乳酸を得た後に、或いはグリコリドを予め開環重合反応させてポリグリコール酸を得た後に、上記酸成分(a1)と、アルコール成分(a2)とを、前記開環重合体の存在下で重合反応を行ってもよい。また、上記酸成分(a1)とアルコール成分(a2)との重合反応により得られたポリエステル樹脂と、乳酸のラクチド又はグリコリドとの重合反応及び/又はエステル交換反応によっても、ポリエステル樹脂(A)を得ることができる。これらの反応は、公知の有機溶剤の存在下で行ってもよい。
また、前記重合反応は、反応を促進させるために、触媒を用いて行ってもよい。そのような触媒としては、例えば、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸鉄、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ホウ酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、酸化亜鉛、ホウ酸鉛、酢酸鉛、酢酸マンガン、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の既知の触媒を挙げることができる。
本発明において、前記ポリエステル樹脂(A)は、乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸
から選ばれる少なくとも1種の成分、並びにグリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の少なくとも一方の成分と、酸成分(a1)と、アルコール成分(a2)との重合反応により製造されるが、必要に応じて、上記酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)以外の公知の有機化合物及び/又は無機化合物を構成成分として含んでいてもよく、アミド化反応、ウレタン化反応、イミド化反応、カーボネート化反応、ウレア化反応等の公知の化学反応を伴って製造されてもよい。例えば、ポリエステル樹脂(A)は、重合反応中又は重合反応後に、反応中間体又は反応生成物を、有機酸亜鉛、有機酸銅、塩化亜鉛、塩化銅、水酸化亜鉛、水酸化銅、酸化亜鉛、酸化銅等の金属化合物、脂肪酸、油脂、モノ又はポリイソシアネート化合物、水素原子が結合した窒素を有するモノ又はポリアミン化合物、エポキシ化合物、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂等と反応させることによって得られる、変性ポリエステル樹脂であってもよい。また、ポリエステル樹脂(A)は、グリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を原料として用いている場合には、乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸等の有機化合物も、上記酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)以外の構成成分として含むことができる。
なお、本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、金属カルボキシレート構造を有していてもよいが、その場合、前記ポリエステル樹脂(A)の固形分質量を基準とした、上記金属カルボキシレート構造に含まれる金属原子の含有量は、後述する金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)に含まれる金属原子の含有量よりも低く、0.04モル/Kg未満であることが好ましく、さらに、前記ポリエステル樹脂(A)は、上記金属カルボキシレート構造を実質的に有していないことが、より好ましい。ポリエステル樹脂(A)が金属カルボキシレート構造を有する場合、該樹脂を用いた防汚塗料組成物の製造コストが高くなることがある。
また、本発明の防汚塗料組成物が、金属化合物を含む成分(例えば、顔料成分や防汚剤成分等)を更に含む場合は、かかる防汚塗料組成物の製造時又は貯蔵時に、金属カルボキシレート構造を実質的に有していないポリエステル樹脂(A)と上述の金属化合物を含む成分とが反応して、経時的に金属カルボキシレート構造を生成することがある。このようにして生成される金属カルボキシレート構造に含まれる金属原子の含有量は、防汚塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、ポリエステル樹脂(A)の固形分質量を基準として1.5モル/Kg未満であることが好ましく、0.04モル/Kg未満の範囲内であることが更に好ましい。
ポリエステル樹脂(A)は、乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分並びにグリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の少なくとも一方の成分と、前記酸成分(a1)と、前記アルコール成分(a2)とに由来する構成成分が、該樹脂の全構成成分の80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
また、ポリエステル樹脂(A)の樹脂酸価は、得られる塗膜の防汚性を長期間に亘って維持する点から、0.1〜120mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、0.1〜95mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、0.3〜50mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。
さらに、ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量は、得られる塗膜の防汚性の点及び防汚性を長期間に亘って維持する点から、190〜15000の範囲内であることが好ましく、340〜13000の範囲内であることがより好ましく、600〜8000の範囲内であることが特に好ましい。
本明細書において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー株式会社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量を、ポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。重量平均分子量は、4本のカラム(商品名:「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」及び「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー株式会社社製))を用いて、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行うことができる。
[シリルエステル基含有樹脂(B1)]
本発明の防汚塗料組成物は、上記ポリエステル樹脂(A)のほかに、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び/又は金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)を更に含む。シリルエステル基含有樹脂(B1)は、下記の一般式(2)で表される、重合性不飽和基とトリオルガノシリルエステル基とを有する単量体(b1)(以下、「単量体(b1)」と称することがある。)の1種又は2種以上と、上記単量体(b1)以外の重合性不飽和基を有する単量体(b2)の1種又は2種以上との共重合体であり、好ましくは重量平均分子量(Mw)が1000〜150000の範囲内の共重合体であり、更に好ましくはMwが3000〜80000の範囲内の共重合体である。
Figure 0006851159
[式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Rは水素原子又はR−O−CO−(ただし、Rは有機基又は−SiRで表されるシリル基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に炭化水素基を表す。)を表す。]
本発明の防汚塗料組成物に用いられるシリルエステル基含有樹脂(B1)のMwが1000よりも小さいと、防汚塗料組成物から得られる塗膜の溶解速度は大きくなるものの、塗膜の物性が劣り、ブリスターやクラック等の塗膜欠陥が発生し易くなることがある。また、前記シリルエステル基含有樹脂(B1)のMwが150000を超えると、防汚塗料組成物から得られる塗膜の溶解速度が遅くなり、防汚性に劣ることがある。
また、前記単量体(b1)は、前記式(2)におけるRが水素原子である場合、下記の一般式(2−1)で表される。
Figure 0006851159
なお、前記式(2−1)中のR、R、R及びRは、それぞれ前記式(2)中のR、R、R及びRと同じである。
前記式(2)又は前記式(2−1)中のR、R及びRにおける炭化水素基は、炭素数が1〜10の直鎖状の若しくは分岐鎖を有するアルキル基、又は任意の置換基によって置換された若しくは無置換のフェニル基であることが好ましく、それぞれの炭化水素基は、同一であっても、異なっていてもよい。中でも、前記炭化水素基は、炭素数が1〜5のアルキル基であることが好ましく、特に、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソプロピル基などのアルキル基であることが好ましい。
前記式(2−1)で表される単量体(以下、「単量体(b1−1)」という。)としては、例えば、(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル等の(メタ)アクリル酸トリアルキルシリルが挙げられ、これらの中でも、得られる塗膜の溶解性、防汚性能の持続性、ブリスターやクラックの発生のし難さなどの点から、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリルが好ましい。
前記単量体(b1)は、前記式(2)におけるRが「R−O−CO−」(ただし、Rは有機基又は−SiRで表されるシリル基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に炭化水素基を表す。)である場合、下記の一般式(2−2)で表される。
Figure 0006851159
なお、前記式(2−2)中のR、R、R及びRは、それぞれ前記式(2)中のR、R、R及びRと同じである。
前記式(2)又は前記式(2−2)中のRが表す有機基としては、炭素数が1〜10の直鎖状の又は分枝鎖を有するアルキル基、シクロアルキル基、不飽和アルキル基、アラルキル基などが挙げられる。
上記の炭素数が1〜10の直鎖状の又は分枝鎖を有するアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、2−エチルブチル基、ペンチル基、3−メチルペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
また、上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
さらに、上記不飽和アルキル基としては、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基などが挙げられる。
そして、上記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基などが挙げられる。
なお、上記のアルキル基、シクロアルキル基、不飽和アルキル基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、例えば、アルコキシ基、アシル基などが挙げられる。また、置換基の数、置換の位置等については、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されない。
前記式(2−2)で表される単量体(以下、「単量体(b1−2)」という。)としては、例えば、マレイン酸ジエステル化合物、フマル酸ジエステル化合物(前記式(2−2)中のRが水素原子のもの)などが挙げられる。
前記式(2)又は前記式(2−2)中のR、R及びRにおける炭化水素基は、炭素数が1〜10の直鎖状の若しくは分岐鎖を有するアルキル基、又は任意の置換基によって置換された若しくは無置換のフェニル基であることが好ましく、それぞれの炭化水素基は、同一であっても、異なっていてもよい。中でも、前記炭化水素基は、炭素数が1〜5のアルキル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソプロピル基などのアルキル基が好ましい。
前記単量体(b1)は、得られる塗膜の溶解性、防汚性能の持続性、ブリスターやクラックの発生のし難さなどの点から、イソプロピルシリル基含有不飽和単量体が好ましい。そのようなイソプロピルシリル基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、4−ペンテン酸トリイソプロピルシリル、マレイン酸ビス(トリイソプロピルシリル)、マレイン酸メチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸エチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸n−ブチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸イソブチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸t−ブチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸n−ペンチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸イソペンチルトリイソプロピルシリル、マレイン酸2−エチルヘキシルトリイソプロピルシリル、マレイン酸シクロヘキシルトリイソプロピルシリル、フマル酸ビス(トリイソプロピルシリル)、フマル酸メチルトリイソプロピルシリル、フマル酸エチルトリイソプロピルシリル、フマル酸n−ブチルトリイソプロピルシリル、フマル酸イソブチルトリイソプロピルシリル、フマル酸n−ペンチルトリイソプロピルシリル、フマル酸イソペンチルトリイソプロピルシリル、フマル酸2−エチルヘキシルトリイソプロピルシリル、フマル酸シクロヘキシルトリイソプロピルシリルなどが挙げられ、これらの中でも、特に、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリルが好ましい。また、これらのトリイソプロピルシリル基含有単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
シリルエステル基含有樹脂(B1)は、単量体(b1)と単量体(b2)とを20/80〜70/30の範囲内の質量比(b1)/(b2)で共重合して得られたものが好ましく、単量体(b1)と単量体(b2)とを30/70〜60/40の範囲内の質量比(b1)/(b2)で共重合して得られたものが更に好ましい。
単量体(b1)と単量体(b2)の質量比(b1)/(b2)が20/80よりも小さい場合は、得られる塗膜の溶解速度が遅く、防汚性能が劣ることがあり、かかる質量比(b1)/(b2)が70/30よりも大きい場合は、得られる塗膜の溶解性が大きくなるものの、防汚効果を長期間に亘って維持するのが困難になることがある。
単量体(b1)(或いは単量体(b1−1)及び/又は(b1−2))と共重合し得る単量体(b2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキル類;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類;(メタ)アクリル酸エチレングリコールモノメチル、片方の分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート、片方の分子末端がアルコキシ基であるポリオキシプロピレン鎖を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸プロピレングリコールモノメチル等の(メタ)アクリル酸アルキレングリコールモノメチル類;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマーの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の窒素含有モノマー;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸エステル類;塩化ビニル;塩化ビニリデン;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル;ブチルビニルエーテル;ラウリルビニルエーテル;N−ビニルピロリドン;スチレン;ビニルトルエン;α−メチルスチレンなどを挙げることができる。
また、前記単量体(b2)としては、例えば、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル等のカルボキシル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート及びこれらのナトリウム塩又はアンモニウム塩等のスルホン酸基含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等のリン酸基を有するモノマー;アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有モノマーなども用いることができる。
上記に例示した単量体(b2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上記に例示した単量体(b2)の中でも、特に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピルなどが好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
本発明において、シリルエステル基含有樹脂(B1)は、公知の重合方法により製造することができる。なお、シリルエステル基含有樹脂(B1)は、ランダム共重合体、グラフト共重合体、傾斜構造型共重合体、ブロック共重合体等の公知の共重合体であれば、いずれのタイプの共重合体であってもよい。
シリルエステル基含有樹脂(B1)は、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下、前記単量体(b1)と前記単量体(b2)とを共重合させることにより得ることができる。
上記の共重合反応において使用されるラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物類;ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオクトエート等のt−ブチルパーオキサイド化合物類;t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシアセテート、ジ(t−アミルパーオキサイド)、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のt−アミルパーオキサイド化合物類;t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシ−イソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート等のt−ヘキシルパーオキサイド化合物類などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
このような重合開始剤の使用量等を適宜設定することにより、シリルエステル基含有樹脂(B1)の分子量を調整することができる。
また、シリルエステル基含有樹脂(B1)を得るための重合方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法などが挙げられる。これらの中でも、前記シリルエステル基含有樹脂(B1)を簡便に、かつ、精度良く合成できるという点から、溶液重合法が特に好ましい。
上記の共重合反応においては、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。そのような有機溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシプロピル等のエステル系溶剤;イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤;ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤などが挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素系溶剤が好ましく、特にキシレンが好ましい。また、これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記共重合反応における反応温度は、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよく、通常は70℃〜160℃の範囲内の温度、好ましくは80℃〜140℃の範囲内の温度である。さらに、前記共重合反応における反応時間は、反応温度や重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよく、通常4〜8時間程度である。また、前記共重合反応は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気下で行われることが好ましい。
[金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)]
本発明の防汚塗料組成物は、上記シリルエステル基含有樹脂(B1)のほかに、或いは上記シリルエステル基含有樹脂(B1)に代えて、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)(本明細書においては、この「金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)」を、単に「樹脂(B2)」と称することがある。)を含んでいてもよい。前記樹脂(B2)は、金属カルボキシレート構造を有する樹脂であれば、樹脂の種類及び組成等に制限されることなく、公知のものを用いることができる。
前記樹脂(B2)は、下記の一般式(3)で表される金属カルボキシレート構造を有する特性基を含むものである。
Figure 0006851159
(式中、Mは2価の金属原子を表し、Xは水酸基、有機酸残基及びアルコール残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。)
前記式(3)における2価の金属原子Mとしては、例えば、亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム、鉄及びテルル等の金属原子を挙げることができ、好ましくは亜鉛又は銅を挙げることができる。
前記式(3)におけるXが水酸基である金属カルボキシレート構造を有する特性基(bb1)を含む樹脂(B2)は、例えば、カルボキシル基を有する公知の樹脂と、該樹脂中のカルボキシル基1モルに対して0.1〜1.0モルの範囲内の量の、2価の金属の酸化物又は水酸化物等とを、水の存在下で反応させることにより得ることができる。この反応における水の使用量は、上記カルボキシル基1モルに対して0.1〜10.0モルの範囲内の量が好ましい。この水の使用量が0.1モル未満であると、構造粘性が大きくなってしまい、生成した金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)の取り扱いが困難になることがある。一方、この水の使用量が10.0モルを越えると、過剰となる水の分離作業が必要になることがある。
前記特性基(bb1)を含む前記樹脂(B2)の具体的な製造方法としては、例えば、カルボキシル基を有する樹脂と、水と、2価の金属化合物とを反応容器に入れて、50℃〜150℃の温度で1〜20時間反応させる方法などが挙げられる。該反応は、上記反応容器に適当な有機溶剤を添加して行ってもよい。このような有機溶剤としては、例えば、アルコ−ル系、ケトン系、エステル系、エ−テル系溶剤などが挙げられ、これらは1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
前記特性基(bb1)を含む前記樹脂(B2)の製造に用いられる、前記2価の金属化合物は、特に制限なく公知のものを使用することができるが、コスト、毒性、反応性等の点から、銅、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄及びテルルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、塩又は水酸化物が好ましく、亜鉛若しくは銅の酸化物、塩又は水酸化物が更に好ましい。
また、前記特性基(bb1)を含む前記樹脂(B2)の製造に用いられる、前記カルボキシル基を有する樹脂としては、例えば、ビニル重合体、ポリエステル、ポリウレタン、天然樹脂等の樹脂を使用することができるが、組成変更の自由度が大きいという点で、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン等の他の不飽和単量体とを共重合して得られる、ビニル重合体を好適に使用することができる。
また、前記式(3)におけるXが有機酸残基である金属カルボキシレート構造を有する特性基(bb2)を含む樹脂(B2)としては、例えば、特性基(bb2)を含む不飽和単量体(bb2m)の重合体若しくは2種以上の共重合体、特性基(bb2)を含む不飽和単量体(bb2m)の1種若しくは2種以上と前記不飽和単量体(bb2m)以外の不飽和単量体(m1)の1種若しくは2種以上との共重合体、上記共重合体を任意の方法により変性した樹脂又は上記共重合体により変性した任意の樹脂などが挙げられる。
前記不飽和単量体(bb2m)としては、例えば、下記一般式(4)又は(5)で表されるものを挙げることができる。
Figure 0006851159
Figure 0006851159
上記式(4)又は式(5)中、R10、R11及びR12は水素原子又はメチル基を表し、Aは有機酸残基を表し、Mは2価の金属原子を表す。
前記不飽和単量体(bb2m)のうち、上記式(4)で表される不飽和単量体(bb2m−1)の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の重合性不飽和有機酸と、2価の金属の酸化物、水酸化物、塩等の金属化合物と、有機酸残基を形成し得る一塩基有機酸とを反応させる方法、重合性不飽和有機酸と、一塩基有機酸の金属塩とを反応させる方法などが挙げられる。これらの反応は、必要に応じて、有機溶剤及び/又は水の存在下で行ってもよい。
前記不飽和単量体(bb2m)のうち、上記式(5)で表される不飽和単量体(bb2m−2)の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の重合性不飽和有機酸と、2価の金属の酸化物、水酸化物、塩等の金属化合物とを反応させる方法などが挙げられる。該反応は、必要に応じて、有機溶剤及び/又は水の存在下で行ってもよい。
上記式(3)におけるXが有機酸残基の場合、該有機酸残基としては、例えば、酢酸、モノクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、ナフテン酸、プロピオン酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、バーサチック酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、クレソチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、ブラシジン酸、エルカ酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、安息香酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸、プルビン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、水添アビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、サンダラコピマル酸、樹脂酸、アビエタン、ピマラン、イソピマラン、ラブダン骨格を有する化合物等の有機酸から誘導されるものを挙げることができる。また、上記式(4)におけるAで表される有機酸残基についても、上記有機酸から誘導されるものを挙げることができる。
前記不飽和単量体(bb2m−1)の具体例としては、例えば、酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、ナフテン酸亜鉛(メタ)アクリレート、酢酸銅(メタ)アクリレート、ナフテン酸銅(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸銅(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸銅(メタ)アクリレート、プロピオン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プロピオン酸銅(メタ)アクリレート、カプロン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、カプロン酸亜鉛(メタ)アクリレート、カプロン酸銅(メタ)アクリレート、カプリル酸マグネシウム(メタ)アクリレート、カプリル酸亜鉛(メタ)アクリレート、カプリル酸銅(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル酸亜鉛(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル酸銅(メタ)アクリレート、カプリン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、カプリン酸亜鉛(メタ)アクリレート、カプリン酸銅(メタ)アクリレート、バーサチック酸マグネシウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸亜鉛(メタ)アクリレート、バーサチック酸銅(メタ)アクリレート、イソステアリン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸亜鉛(メタ)アクリレート、イソステアリン酸銅(メタ)アクリレート、パルミチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、パルミチン酸銅(メタ)アクリレート、クレソチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、クレソチン酸銅(メタ)アクリレート、オレイン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、オレイン酸亜鉛(メタ)アクリレート、オレイン酸銅(メタ)アクリレート、エライジン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、エライジン酸亜鉛(メタ)アクリレート、エライジン酸銅(メタ)アクリレート、リノール酸マグネシウム(メタ)アクリレート、リノール酸亜鉛(メタ)アクリレート、リノール酸銅(メタ)アクリレート、リノレン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、リノレン酸亜鉛(メタ)アクリレート、リノレン酸銅(メタ)アクリレート、ステアロールマグネシウム(メタ)アクリレート、ステアロール酸亜鉛(メタ)アクリレート、ステアロール酸銅(メタ)アクリレート、リシノール酸マグネシウム(メタ)アクリレート、リシノール酸亜鉛(メタ)アクリレート、リシノール酸銅(メタ)アクリレート、リシノエライジン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、リシノエライジン酸亜鉛(メタ)アクリレート、リシノエライジン酸銅(メタ)アクリレート、ブラシジン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ブラシジン酸亜鉛(メタ)アクリレート、ブラシジン酸銅(メタ)アクリレート、エルカ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、エルカ酸亜鉛(メタ)アクリレート、エルカ酸銅(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート、安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、安息香酸銅(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸銅(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸銅(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸銅(メタ)アクリレート、プルビン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プルビン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プルビン酸銅(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの不飽和単量体(bb2m−1)は、1種又は2種以上を必要に応じて適宜選択して使用することができる。
上記式(5)で表される不飽和単量体(bb2m−2)としては、例えば、アクリル酸マグネシウム((CH=CHCOO)Mg)、メタクリル酸マグネシウム((CH=C(CH)COO)Mg)、アクリル酸亜鉛((CH=CHCOO)Zn)、メタクリル酸亜鉛((CH=C(CH)COO)Zn)、アクリル酸銅((CH=CHCOO)Cu)、メタクリル酸銅((CH=C(CH)COO)Cu)等を挙げることができる。これらの不飽和単量体(b2m−2)は、1種又は2種以上を必要に応じて適宜選択して用いることができるが、これらの不飽和単量体の中でも、得られる塗膜の防汚性能を長期間維持する観点から、(メタ)アクリル酸亜鉛を用いることが好ましい。
前記特性基(bb2)を含む樹脂(B2)を得るのに用いられる前記不飽和単量体(bb2m−1)の使用量は、得られる塗膜の防汚性能を長期間維持する観点から、樹脂(B2)の固形分質量を基準として、0.5〜30.0質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.0〜20.0質量%の範囲内である。
また、前記特性基(bb2)を含む樹脂(B2)を得るのに用いられる前記不飽和単量体(bb2m−2)の使用量は、得られる塗膜の防汚性能を長期間維持する観点から、樹脂(B2)の固形分質量を基準として、0.5〜50.0質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.0〜30.0質量%の範囲内である。
上記式(3)におけるXがアルコール残基である金属カルボキシレート構造を有する特性基(b3)を含む樹脂(B2)としては、例えば、特性基(b3)を含む不飽和単量体(b3m)の重合体若しくは2種以上の共重合体、特性基(b3)を含む不飽和単量体(b3m)の1種若しくは2種以上と前記不飽和単量体(b3m)以外の不飽和単量体(m2)の1種若しくは2種以上との共重合体、上記共重合体を任意の方法により変性した樹脂又は上記共重合体により変性した任意の樹脂などが挙げられる。
前記不飽和単量体(b3m)の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の重合性不飽和有機酸と、2価の金属の酸化物、水酸化物、塩等の金属化合物と、アルコール残基を形成し得るアルコール類とを反応させる方法、重合性不飽和有機酸と金属アルコキシド化合物とを反応させる方法などが挙げられる。これらの反応は、必要に応じて、有機溶剤及び/又は水の存在下で行ってもよい。
また、前記樹脂(B2)は、前記不飽和単量体(bb2m−1)、(bb2m−2)及び(b3m)からなる群より選ばれる少なくとも1種の不飽和単量体と、必要に応じてこれら以外の不飽和単量体(m3)の1種又は2種以上とを、共重合することによっても得ることができる。
前記不飽和単量体(m1)、(m2)及び(m3)は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。前記不飽和単量体(m1)、(m2)及び(m3)としては、前記シリルエステル基含有樹脂(B1)の製造に用いることのできる単量体(b2)として例示したものを挙げることができる。
不飽和単量体(bb2m)及び/又は(b3m)を含む前記共重合反応は、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で行うことができる。ラジカル重合開始剤は、前記シリルエステル基含有樹脂(B1)の製造における単量体(b1)と単量体(b2)との共重合反応に使用できるものと同様のものを用いることができる。
また、前記樹脂(B2)は、例えば、カルボキシル基を有する公知の樹脂と、該樹脂中のカルボキシル基1モルに対して0.1〜1.0モルの範囲内の量の、2価の金属の酸化物又は水酸化物等の金属化合物と、必要に応じて、有機酸、アルコール化合物又は水等とを、50℃〜200℃の温度で1〜20時間反応させることにより製造してもよい。この反応により生成される樹脂(B2)に含まれる、前記式(3)で表される金属カルボキシレート構造を有する特性基におけるXは、水酸基、有機酸残基及びアルコール残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であればよく、その構成比率は特に限定されない。また、この反応は、適当な有機溶剤の存在下で行ってもよく、その場合の有機溶剤としては、例えば、アルコ−ル系、ケトン系、エステル系、エ−テル系溶剤などが挙げられ、これらは1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
前記樹脂(B2)の製造に用いられる、上記2価の金属化合物は、特に制限なく公知のものを使用することができるが、コスト、毒性、反応性等の点から亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム、鉄及びテルルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、塩又は水酸化物が好ましく、亜鉛若しくは銅の酸化物、塩又は水酸化物が更に好ましい。
前記樹脂(B2)の製造に用いられる、上記カルボキシル基を有する樹脂は、例えば、ビニル重合体、ポリエステル、ポリウレタン、天然樹脂等の樹脂を使用することができるが、組成変更の自由度が大きいという点で、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン等の他の不飽和単量体とを共重合してなるビニル重合体を、好適に使用することができる。
また、特性基(bb2)を含む樹脂(B2)は、カルボキシル基を有する公知の樹脂と、一塩基有機酸の2価の金属塩とを反応させることによって製造してもよい。
本発明において、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)に含まれる前記一般式(3)で表される金属カルボキシレート構造を有する特性基におけるXは、水酸基、有機酸残基及びアルコール残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であればよく、さらに、前記金属カルボキシレート構造に含まれる金属原子の含有量は、前記樹脂(B2)の固形分質量を基準として0.04〜3.50モル/Kgの範囲内であり、好ましくは0.07〜3.00モル/Kgの範囲内、より好ましくは0.10〜2.50モル/Kgの範囲内である。上記金属原子の含有量が3.50モル/Kgよりも多いと、得られる塗膜の防汚性の保持期間が短くなることがあり、0.04モル/Kgよりも少ないと、得られる塗膜の防汚性が低下する傾向がある。
金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)の上記以外の製造方法としては、例えば、1分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物と金属化合物との縮合反応、金属カルボキシレート構造を有するポリオール化合物を用いた重付加反応又は縮合反応などが挙げられる。
[防汚剤(C)]
本発明の防汚塗料組成物は、前記ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び/又は金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)のほかに、防汚剤(C)を更に含む。かかる防汚剤(C)としては、従来より公知のものを用いることができ、例えば、無機化合物、金属を含む有機化合物及び金属を含まない有機化合物などが挙げられる。
上記無機化合物としては、例えば、亜酸化銅、銅粉、チオシアン酸銅、炭酸銅、塩化銅、硫酸銅等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛化合物、硫酸ニッケル、銅−ニッケル合金等のニッケル化合物などが挙げられる。
上記金属を含む有機化合物としては、例えば、有機銅系化合物、有機ニッケル系化合物、有機亜鉛系化合物などを用いることができ、その他、マンネブ、マンセブ、プロピネブなども用いることができる。さらに、前記有機銅系化合物としては、例えば、オキシン銅、銅ピリチオン、ノニルフェノールスルホン酸銅、カッパービス(エチレンジアミン)−ビス(ドデシルベンゼンスルホネート)、酢酸銅、ナフテン酸銅、ビス(ペンタクロロフェノール酸)銅等が挙げられる。また、前記有機ニッケル系化合物としては、例えば、酢酸ニッケル、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。そして、前記有機亜鉛系化合物としては、酢酸亜鉛、カルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジンクピリチオン、エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられる。
上記金属を含まない有機化合物としては、例えば、N−トリハロメチルチオフタルイミド、ジチオカルバミン酸、N−アリールマレイミド、3−置換化アミノ−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、ジチオシアノ系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
上記N−トリハロメチルチオフタルイミドとしては、例えば、N−トリクロロメチルチオフタルイミド、N−フルオロジクロロメチルチオフタルイミド等が挙げられる。
上記ジチオカルバミン酸としては、例えば、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド、N−メチルジチオカルバミン酸アンモニウム、エチレンビス(ジチオカルバミン酸)アンモニウム、ミルネブ等が挙げられる。
上記N−アリールマレイミドとしては、例えば、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−4−トリルマレイミド、N−3−クロロフェニルマレイミド、N−(4−n−ブチルフェニル)マレイミド、N−(アニリノフェニル)マレイミド、N−(2,3−キシリル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2’,6’−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2’−エチル−6’−メチルフェニル)マレイミド等が挙げられる。
上記3−置換化アミノ−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンとしては、例えば、3−ベンジリデンアミノ−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、3−(4−メチルベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、3−(2−ヒドロキシベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、3−(4−ジメチルアミノベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリン−2,4−ジオン、3−(2,4−ジクロロベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン等が挙げられる。
上記ジチオシアノ系化合物としては、例えば、ジチオシアノメタン、ジチオシアノエタン、2,5−ジチオシアノチオフェン等が挙げられる。
上記トリアジン系化合物としては、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン等が挙げられる。
また、上記の金属を含まない有機化合物としては、上記に例示した有機化合物のほか、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、4,5−ジクロロ−2−N−オクチル−3−(2H)イソチアゾロン、N,N−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、テトラメチルチウラムジスルフィド、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、2−(メトキシカルボニルアミノ)ベンズイミダゾール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、ジヨードメチルパラトリルスルホン、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、フェニル(ビスピリジン)ビスマスジクロライド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、トリフェニルボロンピリジン・アミン錯体、メデトミジン(体系名:(±)4−[1−(2,3−ジメチルフェニル)エチル]−1H−イミダゾール)、ジクロロ−N−((ジメチルアミノ)スルフォニル)フルオロ−N−(p−トリル)メタンスルフェンアミド、2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール、クロロメチル−n−オクチルジスルフィド等が挙げられる。
前記防汚剤(C)は、上記に例示した各化合物を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記防汚剤(C)は、上記に例示した各化合物の中でも、安定した防汚性能を発揮するという観点から、亜酸化銅を用いることが好ましく、特に亜酸化銅と銅ピリチオンを併用することが好ましい。
[防汚塗料組成物及びその塗膜を有する塗装物品]
本発明の防汚塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び/又は金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)と、防汚剤(C)とを含む防汚塗料組成物であって、前記ポリエステル樹脂(A)が前記式(1)で表される構成単位を該樹脂骨格中に有し、前記ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)の合計との質量比が、3/97〜80/20の範囲内であることを特徴とする。
上記ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び/又は金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)との質量比は、3/97〜80/20の範囲内であるが、好ましくは7/93〜60/40の範囲内であり、より好ましくは10/90〜40/60の範囲内である。上記質量比が、3/97〜80/20の範囲内であると、本発明の防汚塗料組成物によって得られる防汚塗膜の優れた防汚性能を長期間に亘って維持することができ、また、前記防汚塗膜において、塗膜剥離、ブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生し難くなる。上記質量比が、3/97よりも小さい場合又は80/20よりも大きい場合は、得られる塗膜の防汚性能を長期間に亘って維持することが困難になることがある。
本発明の塗料組成物における、シリルエステル基含有樹脂(B1)と金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)との質量比は、0/100〜100/0の範囲内で用いることができる。
本発明の防汚塗料組成物において、前記防汚剤(C)の含有量は、上記ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)との合計質量を基準として、50〜500質量%の範囲内であるが、好ましくは250〜400質量%の範囲内である。防汚剤(C)の含有量が50質量%よりも少ないと、得られる塗膜の防汚性能を長期間に亘って維持することが困難になることがあり、また、前記防汚剤(C)の含有量が500質量%よりも多いと、得られる塗膜の物性が低下して、剥離やフクレ等の不具合が発生することがある。
本発明の防汚塗料組成物には、ポリエステル樹脂(A)、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び/又は金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)、並びに防汚剤(C)のほかに、顔料、染料、脱水剤、可塑剤、搖変剤(タレ止剤)、消泡剤、酸化防止剤等の添加剤;ポリエステル樹脂(A)、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)以外の樹脂;有機酸;溶剤等の、一般的な塗料組成物に用いられている各種成分を、必要に応じて配合することができる。これらの成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記顔料としては、例えば、ベンガラ、タルク、酸化チタン、黄色酸化鉄、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、カーボンブラック、ナフトールレッド、フタロシアニンブルー等の着色顔料、タルク、シリカ、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛等の体質顔料が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物中の前記顔料の含有量は、ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)との合計質量を基準として、0.05〜1000質量%の範囲内であることが好ましく、1〜500質量%の範囲内であることがより好ましい。
上記脱水剤は、防汚塗料組成物の貯蔵安定性の向上に寄与する成分である。そのような脱水剤としては、例えば、無機系では、無水石膏、半水石膏(焼石膏)、合成ゼオライト系吸着剤(例えば、「モレキュラーシーブ」(商品名)等)などが挙げられ、その他、オルソエステル類(例えば、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル、オルソホウ酸エステル等)、シリケート類、イソシアネート類などが挙げられる。これらの中でも、無機系の脱水剤である無水石膏、半水石膏(焼石膏)が好ましい。また、これらの脱水剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、防汚塗料組成物中の脱水剤の含有量は、適宜調整することができるが、ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)との合計質量を基準として、0〜100質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜25質量%の範囲内であることがより好ましい。
前記可塑剤は、得られる防汚塗膜の耐クラック性や耐水性の向上などに寄与する成分である。そのような可塑剤としては、例えば、トリクレジルフォスフェート、ジオクチルフタレート、塩素化パラフィン、流動パラフィン、n−パラフィン、塩素化パラフィン、ポリブテン、テルペンフェノール、トリクレジルフォスフェート(TCP)、ポリビニルエチルエーテル等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本発明の防汚塗料組成物中に可塑剤を配合する場合、前記防汚塗料組成物中の可塑剤の含有量は、ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)との合計質量を基準として、0.5〜10質量%の範囲内であることが好ましく、1〜5質量%の範囲内であることがより好ましい。
上記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を挙げることができる。
上記搖変剤としては、例えば、有機系ワックス(例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス等)、有機粘土系化合物(例えば、Al、Ca、Znのアミン塩、ステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩等)、ベントナイト、合成微粉シリカ等が挙げられる。これらの搖変剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の防汚塗料組成物中に搖変剤を配合する場合、前記防汚塗料組成物中の搖変剤の含有量は、適宜調整することができるが、例えば、ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)との合計質量を基準として、0.25〜50質量%の範囲内である。
本発明の防汚塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)以外にも、必要に応じて1種又は2種以上のその他の樹脂類を含有していてもよい。そのような樹脂類としては、例えば、防汚塗料用の基体樹脂として広く使用されているアクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリブテン樹脂、シリコーンゴム、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ゴム、塩素化オレフィン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、ケトン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、アルキッド樹脂、クマロン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂等が挙げられる。
また、本発明の防汚塗料組成物は、公知のロジン系化合物を含んでいてもよい。そのようなロジン系化合物としては、例えば、ロジン、ロジン誘導体、ロジン金属塩等が挙げられる。さらに、前記ロジンとしては、例えば、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジン等が挙げられる。また、前記ロジン誘導体としては、例えば、水添ロジン、ロジンと無水マレイン酸を反応させたマレイン化ロジン、ホルミル化ロジン、重合ロジン等が挙げられる。そして、前記ロジン金属塩としては、例えば、ジンクロジネート、カルシウムロジネート、カッパーロジネート、マグネシウムロジネート、その他、金属化合物とロジンとの反応物等が挙げられる。これらのロジン系化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の防汚塗料組成物にロジン系化合物を配合する場合、前記防汚塗料組成物中のロジン系化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)との合計質量を基準として、50質量%以下が好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
本発明の防汚塗料組成物は、脂肪族溶剤、芳香族溶剤(例えば、キシレン、トルエン等)、ケトン系溶剤(例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル系溶剤、エーテル系溶剤(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、アルコール系溶剤(例えば、イソプロピルアルコール等)などの防汚塗料用の溶剤として一般的に用いられている有機溶剤を配合することができる。なお、有機溶剤の配合量は、適宜調整することができるが、例えば、防汚塗料組成物の全固形分率が20〜90質量%の範囲内となるような配合量であり、塗装時に、作業性に応じて更に添加してもよい。
本発明の防汚塗料組成物は、公知の防汚塗料組成物と同様の方法により調製することができる。例えば、ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び/又は金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)と、防汚剤(C)と、必要に応じて前記有機溶剤や添加剤等とを、攪拌槽に一度に又は順次添加して、撹拌、混合することにより、製造することができる。
また、本発明の塗装物品は、本発明の防汚塗料組成物の塗膜を有する物品である。上記塗装物品は、基材の表面に、上記防汚塗料組成物を1回〜複数回塗布或いは含浸させる工程と、該塗布或いは含浸させた上記防汚塗料組成物を乾燥させる工程とを含む方法によって、得ることができる。
上記基材としては、例えば、海水又は真水と(例えば、常時又は断続的に)接触する基材、具体的には、水中構造物;船舶外板又は船底;発電所の導水管や冷却管;養殖用又は定置用の漁網、漁具又はこれらに用いられる浮き子;ロープ等の漁網付属具などが挙げられる。なお、本発明の防汚塗料組成物から得られる塗膜の膜厚は、塗膜の消耗速度(溶解速度)等を考慮して適宜調整することができるが、例えば、塗装1回当たりの膜厚(μm)として30〜250μm/回、好ましくは75〜150μm/回程度とすればよく、必要に応じて、2回以上塗り重ねて60〜500μm程度としてもよい。
上記塗装物品を得るに当たっては、前記基材の表面にプライマー、防食塗料、及び必要に応じてバインダー塗料を塗装した表面に、刷毛塗り、吹付け塗り、ローラー塗り、浸漬等の手段によって本発明の防汚塗料組成物を塗装してもよい。また、本発明の防汚塗料組成物は、既存の防汚塗膜表面に重ね塗りしてもよい。塗膜の乾燥は、室温で行なうことができるが、必要に応じて約100℃までの温度で加熱乾燥を行なってもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、下記実施例中の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
ポリエステル樹脂(A)の製造
(製造例1) ポリエステル樹脂(A1)の製造
温度計、攪拌機及び精留塔を具備した2Lの反応装置に、PAを415.3部、NPGを235.7部、DEGを237.9部、乳酸のラクチドを161.6部仕込み、反応装置の内容物温度を160℃まで昇温した。次いで、反応装置の内容物温度を160℃から230℃まで3時間で昇温し、230℃で2時間、内容物温度を保持した後、精留塔を水分離器と置換し、反応装置にキシレンを約50.0部仕込み、水とキシレンとを共沸させて縮合水を除去しながら重縮合を進めた。生成したポリエステル樹脂の酸価が3.0mgKOH/g以下であることを確認した後、加熱を停止して冷却を開始し、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A1)溶液を得た。なお、上述の樹脂の酸価は、トルエンとイソプロパノールとの混合液(質量比1/1)を溶媒として測定試料を溶解し、1/10規定の水酸化カリウムのアルコール系溶液の滴定によって測定した。
ここで、本明細書におけるポリエステル原料の略号と相当する化合物の関係を以下に示す。
PA;無水フタル酸、iPA;イソフタル酸、AD;アジピン酸、HHPA;ヘキサヒドロ無水フタル酸、EG;エチレングリコール、PG;プロピレングリコール、NPG;ネオペンチルグリコール、1,6−HD;1,6−ヘキサンジオール、BEPG;2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、CHDM;1,4−シクロヘキサンジメタノール、DEG;ジエチレングリコール、TEG;トリエチレングリコール、テトラEG;テトラエチレングリコール、DPG;ジプロピレングリコール、TMP;トリメチロールプロパン、G;グリセリン、PE;ペンタエリスリトール、LA;乳酸のラクチド、GL;グリコリド
(製造例2〜8、13〜17) ポリエステル樹脂(A2)〜(A8)、(A13)〜(A17)の製造
製造例1における酸成分とアルコール成分とを、表1−1に示す配合としたこと以外は、製造例1と同様にして固形分70%の各ポリエステル樹脂(A2)〜(A8)、(A13)〜(A17)の樹脂溶液を得た。
(製造例9) ポリエステル樹脂(A9)の製造
温度計、攪拌機及び精留塔を具備した2Lの反応装置に、iPAを340.9部、NPGを215.6部、DEGを217.7部、乳酸のラクチドを147.8部仕込み、反応装置の内容物温度を160℃まで昇温した。次いで、反応装置の内容物温度を160℃から230℃まで3時間で昇温し、230℃で2時間、内容物温度を保持した後、精留塔を水分離器と置換し、反応装置にキシレンを約45部仕込み、水とキシレンとを共沸させて縮合水を除去しながら重縮合を進めた。生成したポリエステル樹脂の酸価が3.0mgKOH/g以下であることを確認した後、内容物温度を160℃まで冷却した。さらに、PAを152.0部添加し、160℃で1時間保持して付加反応(ハーフエステル化)した後、冷却を開始した。130℃まで冷却した後、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A9)の樹脂溶液を得た。
(製造例10) ポリエステル樹脂(A10)の製造
温度計、攪拌機及び精留塔を具備した2Lの反応装置に、iPAを292.8部、NPGを185.2部、DEGを186.9部、乳酸のラクチドを127.0部仕込み、反応装置の内容物温度を160℃まで昇温した。次いで、反応装置の内容物温度を160℃から230℃まで3時間で昇温し、230℃で2時間、内容物温度を保持した後、精留塔を水分離器と置換し、反応装置にキシレンを約45部仕込み、水とキシレンとを共沸させて縮合水を除去しながら重縮合を進めた。生成したポリエステル樹脂の酸価が3.0mgKOH/g以下であることを確認した後、内容物温度を160℃まで冷却した。さらに、HHPAを276.1部添加し、160℃で1時間保持して付加反応(ハーフエステル化)した後、冷却を開始した。130℃まで冷却した後、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A10)の樹脂溶液を得た。
(製造例11) ポリエステル樹脂(A11)の製造
温度計、攪拌機及び精留塔を具備した2Lの反応装置に、PAを415.3部、NPGを235.7部、DEGを237.9部、88質量%の乳酸水溶液を229.5部仕込み、反応装置の内容物温度を130℃まで昇温した。次いで、反応装置の内容物温度を130℃から160℃まで3時間で昇温し、230℃で2時間、内容物温度を保持した後、精留塔を水分離器と置換し、反応装置にキシレンを約50.0部仕込み、水とキシレンとを共沸させて縮合水を除去しながら重縮合を進めた。生成したポリエステル樹脂の酸価が3.0mgKOH/g以下であることを確認した後、加熱を停止し冷却を開始し、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A11)の樹脂溶液を得た。
(製造例12) ポリエステル樹脂(A12)の製造
温度計、攪拌機及び水分離機を具備した2Lの反応装置に、PAを217.4部、EGを18.2部、PEを205.7部、大豆油脂肪酸を625.3部、乳酸のラクチドを28.2部、キシレンを50.0部仕込み、反応装置の内容物温度を160℃まで昇温し、1時間保持した。次いで、反応装置の内容物温度を160℃から240℃まで4時間で昇温し、240℃で、生成した縮合水を除去しながら重縮合を進めた。樹脂酸価が約3.0mgKOH/g以下であることを確認した後、加熱を停止して冷却を開始し、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A12)の樹脂溶液を得た。
上述の各製造例にて得られたポリエステル樹脂(A1)〜(A17)の樹脂酸価及び重量平均分子量を、各製造例の配合量と併せて表1−1に示す。
Figure 0006851159
(製造例1’) ポリエステル樹脂(A1’)の製造
温度計、攪拌機及び精留塔を具備した2Lの反応装置に、PAを428.7部、NPGを243.3部、DEGを245.7部、グリコリド(GL)を134.4部仕込み、反応装置の内容物温度を160℃まで昇温した。次いで、反応装置の内容物温度を160℃から230℃まで3時間で昇温し、230℃で2時間、内容物温度を保持した後、精留塔を水分離器と置換し、反応装置にキシレンを約50.0部仕込み、水とキシレンとを共沸させて縮合水を除去しながら重縮合を進めた。生成したポリエステル樹脂の酸価が3.0mgKOH/g以下であることを確認した後、加熱を停止して冷却を開始し、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A1’)溶液を得た。
(製造例2’〜8’、13’〜18’) ポリエステル樹脂(A2’)〜(A8’)、(A13’)〜(A18’)の製造
製造例1’における酸成分とアルコール成分とを、表1−2に示す配合としたこと以外は、製造例1’と同様にして固形分70%の各ポリエステル樹脂(A2’)〜(A8’)、(A13’)〜(A18’)の樹脂溶液を得た。
(製造例9’) ポリエステル樹脂(A9’)の製造
温度計、攪拌機及び精留塔を具備した2Lの反応装置に、iPAを351.0部、NPGを222.0部、DEGを224.1部、グリコリドを122.6部仕込み、反応装置の内容物温度を160℃まで昇温した。次いで、反応装置の内容物温度を160℃から230℃まで3時間で昇温し、230℃で2時間、内容物温度を保持した後、精留塔を水分離器と置換し、反応装置にキシレンを約45部仕込み、水とキシレンとを共沸させて縮合水を除去しながら重縮合を進めた。生成したポリエステル樹脂の酸価が3.0mgKOH/g以下であることを確認した後、内容物温度を160℃まで冷却した。さらに、PAを156.4部添加して、160℃で1時間保持して付加反応(ハーフエステル化)した後、冷却を開始した。130℃まで冷却した後、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A9’)の樹脂溶液を得た。
(製造例10’) ポリエステル樹脂(A10’)の製造
温度計、攪拌機及び精留塔を具備した2Lの反応装置に、iPAを300.2部、NPGを189.9部、DEGを191.7部、グリコリドを104.9部仕込み、反応装置の内容物温度を160℃まで昇温した。次いで、反応装置の内容物温度を160℃から230℃まで3時間で昇温し、230℃で2時間、内容物温度を保持した後、精留塔を水分離器と置換し、反応装置にキシレンを約45部仕込み、水とキシレンとを共沸させて縮合水を除去しながら重縮合を進めた。生成したポリエステル樹脂の酸価が3.0mgKOH/g以下であることを確認した後、内容物温度を160℃まで冷却した。さらに、HHPAを278.5部添加して、160℃で1時間保持して付加反応(ハーフエステル化)した後、冷却を開始した。130℃まで冷却した後、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A10’)の樹脂溶液を得た。
(製造例11’) ポリエステル樹脂(A11’)の製造
温度計、攪拌機及び精留塔を具備した2Lの反応装置に、PAを428.7部、NPGを243.3部、DEGを245.7部、グリコール酸を176.1部仕込み、反応装置の内容物温度を130℃まで昇温した。次いで、反応装置の内容物温度を130℃から160℃まで3時間で昇温し、230℃で2時間、内容物温度を保持した後、精留塔を水分離器と置換し、反応装置にキシレンを約50.0部仕込み、水とキシレンとを共沸させて縮合水を除去しながら重縮合を進めた。生成したポリエステル樹脂の酸価が3.0mgKOH/g以下であることを確認した後、加熱を停止して冷却を開始し、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A11’)の樹脂溶液を得た。
(製造例12’) ポリエステル樹脂(A12’)の製造
温度計、攪拌機及び水分離機を具備した2Lの反応装置に、PAを217.4部、EGを18.2部、PEを205.7部、大豆油脂肪酸を625.3部、グリコリドを22.7部、キシレンを50.0部仕込み、反応装置の内容物温度を160℃まで昇温し、1時間保持した。次いで、反応装置の内容物温度を160℃から240℃まで4時間で昇温し、240℃で、生成した縮合水を除去しながら重縮合を進めた。樹脂酸価が約3.0mgKOH/g以下であることを確認した後、加熱を停止して冷却を開始し、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A12’)の樹脂溶液を得た。
上述の各製造例にて得られたポリエステル樹脂(A1’)〜(A18’)の樹脂酸価及び重量平均分子量を、各製造例の配合量と併せて表1−2に示す。
Figure 0006851159
シリルエステル基含有樹脂(B1)の製造
(製造例18) シリルエステル基含有樹脂(B1−1)の製造
攪拌機付きのフラスコに、キシレンを40部仕込み、液相温度を140℃に維持し、表2に示す各不飽和単量体と、日油(株)製の過酸化物系重合開始剤「パーブチルI」(商品名)1部との混合物を、フラスコの中へ3時間で滴下し、滴下終了後、同温度で30分間保持した。次いで、キシレン10部と「パーブチルI」(商品名)1部との混合物を、20分間で滴下し、同温度で2時間攪拌を続けてから、液相の冷却を開始した。さらに、フラスコの中にキシレンを加えて固形分濃度50質量%となるように生成した樹脂の溶液を調製し、シリルエステル基含有樹脂(B1−1)の樹脂溶液を得た。
(製造例19、20) シリルエステル基含有樹脂(B1−2)、(B1−3)の製造
表2に示す不飽和単量体の配合とする以外は、製造例18と同様にしてシリルエステル基含有樹脂(B1−2)、(B1−3)の樹脂溶液(固形分濃度50質量%)を得た。
Figure 0006851159
金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)の製造
(製造例21)金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2−1)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌機、還流冷却器及び滴下ポンプを具備した反応容器に、キシレンを241.7部、酢酸ブチルを197.5部、n−ブタノールを241.7部仕込み、反応容器内の内容物を撹拌しながら該内容物の温度を105℃まで昇温した。その後、メタクリル酸を104.2部、アクリル酸エチルを304.4部、アクリル酸メトキシエチルを272.4部、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を54.5部含む混合溶液を、105℃に保持され且つ均一に撹拌している反応容器内に、滴下ポンプを利用して一定速度で4時間掛けて滴下した。前記混合溶液の滴下終了後、引き続き1時間、反応容器内の内容物の温度を105℃に保つことにより、アクリル樹脂溶液を得た。
さらに、得られた樹脂溶液に、酸化亜鉛を49.7部、脱イオン水を34.0部加え、100℃で20時間撹拌を続けることにより、不揮発分約50%の金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2−1)の樹脂溶液を得た。この樹脂(B2−1)に含まれる金属原子の含有量(以下、単に「金属含有量」と称する。)は、0.79mol/Kgであった。
(製造例22) 金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2−2)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌機、還流冷却器及び滴下ポンプを具備した反応容器に、キシレンを563.0部、n−ブタノールを140.7部加え、反応容器内の混合溶液の温度を110℃から120℃に保った。この溶液中に、アクリル酸エチルを281.5部、アクリル酸2−エチルヘキシルを117.3部、アクリル酸を70.4部、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を37.5部含む混合溶液を、一定速度で3時間掛けて滴下した。前記混合溶液の滴下終了後、引き続き2時間、混合溶液の温度を110℃から120℃に保持することにより、アクリル樹脂溶液を得た。
さらに、得られた樹脂溶液に、ナフテン酸を236.4部、水酸化銅を82.8部加え、120℃に昇温し、2時間保持した。この間、生成する水を除去し(脱水量約30部)、不揮発分約50%の金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2−2)の樹脂溶液を得た。この樹脂(B2−2)に含まれる金属含有量は、1.08mol/Kgであった。
なお、上記樹脂中の亜鉛、銅等の金属含有量は、蛍光X線法により定量した。
Figure 0006851159
防汚塗料組成物の調製と各種試験
(実施例1〜28)及び(比較例1〜8)、並びに(実施例29〜57)及び(比較例9〜16)
評価
ポリエステル樹脂(A1)〜(A17)及び(A1')〜(A18')の樹脂溶液、シリルエステル基含有樹脂(B1−1)〜(B1−3)、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2−1)及び(B2−2)の樹脂溶液、防汚剤、顔料等を、表4−1〜表4−4に示す配合組成にて配合し、ホモミキサーを用いて約2000rpmの攪拌速度により混合分散した。分散後、ディスパロンA630−20XN(楠本化成社製、タレ止剤)及び溶剤を添加し、ディスパー撹拌して塗料組成物(E1)〜(E73)を調製した。調製した塗料組成物を、下記の防汚性能試験(表5−1〜表5−4に試験結果を示す。)、密着性試験(表6−1〜表6−4に試験結果を示す。)、及び耐クラック性試験(表7−1〜表7−4に試験結果を示す。)に供した。
<防汚性能試験>
サンドブラスト処理鋼板(100mm×300mm×2mm)の両面に、エポキシ系防錆塗料を200μmの乾燥膜厚となるようにスプレー塗装し、さらに、エポキシ系バインダーコートを、乾燥膜厚が100μmとなるように塗装した。この塗装板の両面に、各塗料組成物を、乾燥膜厚が片面480μmとなるようにスプレー塗装により4回塗装し、温度20℃、湿度75%の恒温恒湿室にて1週間乾燥させて、試験片を作製した。この試験片を用いて、三重県度会郡南伊勢町礫浦にて60ケ月の海水浸漬を行い、試験塗膜上の付着生物の占有面積の割合(付着面積)を経時的に測定した。
◎:(合格)付着生物が観察されなかった
○:(合格)付着生物の占有面積が5%未満
△:(不合格)付着生物の占有面積が5%以上、30%未満
×:(不合格)付着生物の占有面積が30%以上
<密着性試験>
円筒形のドラム(直径500mm×高さ240mm)に装着可能なように湾曲性を持たせた、サンドブラスト処理鋼板(120mm×120mm×1mm)に、エポキシ系防錆塗料を200μmの乾燥膜厚となるようにスプレー塗装し、さらに、エポキシ系バインダーコートを乾燥膜厚が100μmとなるように塗装した。この塗装後の鋼板の片面に、各塗料組成物を、乾燥膜厚が480μmとなるようにスプレー塗装により4回塗装し、温度20℃、湿度75%の恒温恒湿室にて1週間乾燥させて、試験片を作製した。この試験片を上記の円筒形ドラムに装着し、該円筒形ドラムを兵庫県由良湾の海面下500mmにて16ノットで24ヶ月間回転させた。海中から試験片を経時的に回収し、5mm×5mmのゴバン目をつくり、テープ剥離による密着性の評価を実施した。評価はISO 2409:1992に準拠するものとした。
◎:(合格)Table1 Classification 0・1
○:(合格)Table1 Classification 2
△:(不合格)Table1 Classification 3
×:(不合格)Table1 Classification 4・5
<耐クラック性試験>
上記密着性試験に供した試験片にて、その塗膜を目視観察し、クラックの発生の有無を調べた。
◎:(合格)クラックが観察されなかった
○:(合格)微細なクラックが塗膜表面にわずかに観察された
△:(不合格)下地には至らないものの、微細で明確なクラックが塗膜表面に多く観察された
×:(不合格)下地に至るクラックが観察された
Figure 0006851159
Figure 0006851159
Figure 0006851159
Figure 0006851159
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Figure 0006851159
Figure 0006851159
Figure 0006851159
Figure 0006851159

Claims (6)

  1. ポリエステル樹脂(A)と、シリルエステル基含有樹脂(B1)及び/又は金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)と、防汚剤(C)とを含む防汚塗料組成物であって、
    前記ポリエステル樹脂(A)が、下記式(1)で表される構成単位を該樹脂骨格中に有するとともに下記式(1)で表される構成単位の合計質量が前記ポリエステル樹脂(A)の質量を基準として3.847.7質量%の範囲内であり、且つ重量平均分子量が340〜13000の範囲内であるポリエステル樹脂であり、
    前記ポリエステル樹脂(A)と、前記シリルエステル基含有樹脂(B1)及び前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)の合計との質量比が、/90/0の範囲内であり、
    前記防汚剤(C)の含有量が、前記ポリエステル樹脂(A)と、前記シリルエステル基含有樹脂(B1)及び前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)との合計質量を基準として、50〜500質量%の範囲内であることを特徴とする、前記防汚塗料組成物。
    Figure 0006851159
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは1〜100の整数を表す。)
  2. 前記シリルエステル基含有樹脂(B1)が、下記式(2)で表される単量体(b1)の1種又は2種以上と、前記単量体(b1)以外の単量体(b2)の1種又は2種以上との共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の防汚塗料組成物。
    Figure 0006851159
    [式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Rは水素原子又はR−O−CO−(ただし、Rは有機基又は−SiRで表されるシリル基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に炭化水素基を表す。)を表す。]
  3. 前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)が、下記式(3)で表される金属カルボキシレート構造を有する特性基を有するものであって、前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)に含まれる金属原子の含有量が、前記樹脂(B2)の固形分質量を基準として0.04〜3.50モル/Kgの範囲内であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
    Figure 0006851159
    (式中、Mは2価の金属原子を表し、Xは水酸基、有機酸残基及びアルコール残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。)
  4. 前記ポリエステル樹脂(A)が、乳酸、乳酸のラクチド及びポリ乳酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含む原料混合物、並びにグリコール酸、グリコリド及びポリグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含む原料混合物の少なくとも一方の原料混合物を用いて製造されたポリエステル樹脂であり、且つ、前記ポリエステル樹脂(A)の酸価が0.1〜120KOHmg/gの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の防汚塗料組成物。
  5. 前記ポリエステル樹脂(A)が金属カルボキシレート構造を有しないものであることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の防汚塗料組成物。
  6. 請求項1〜の何れか一項に記載の防汚塗料組成物の塗膜を有する塗装物品。
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