以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.回路装置
図1に本実施形態の回路装置の構成例を示す。図1に示すように本実施形態の回路装置は、同期検波回路81と、同期検波回路81の後段側に設けられるフィルター部90を含む。また同期検波回路81とフィルター部90の間に設けられる信号選択回路88を含むことができる。
同期検波回路81は、物理量信号と不要信号を含む入力信号INが入力され、入力信号INから物理量信号等を同期検波して出力する回路である。
フィルター部90は、例えばフィルター部90の後段側に設けられたA/D変換回路100(図6参照)の前置きフィルターや、同期検波等では除去しきれなかった不要信号を減衰させるフィルターとして機能する。
同期検波回路81は、入力信号INが入力される第1の検波回路82(第1の同期検波部)と、入力信号INが入力される第2の検波回路84(第2の同期検波部)を含む。これらの第1、第2の検波回路82、84は、クロック信号に基づいて同期検波を行う回路であり、一例としては複数のスイッチ素子で構成されるスイッチングミキサーなどにより実現できる。
具体的には、第1の検波回路82は、入力信号INが入力され、クロック信号CK0に基づいて、入力信号INから物理量信号を同期検波して出力する。第2の検波回路84は、入力信号INが入力され、CK0とは位相が異なるクロック信号CK90に基づいて、入力信号INから不要信号を同期検波して出力する。
ここで物理量信号は、ジャイロセンサーを例にとれば角速度の検出信号である。但し、物理量信号は、例えば加速度、速度、角加速度などの他の物理量の検出信号であってもよい。不要信号は漏れ信号である。具体的には不要信号は例えば機械振動漏れ信号である。この機械振動漏れ信号は、所望信号である物理量信号に対して例えば90度の位相差がある不要信号である。また第2のクロック信号CK90は、第1のクロック信号CK0に対して、例えば位相が90度ずれた信号である。入力信号INは、例えば前段側の増幅回路からの信号である。増幅回路は、例えば物理量トランスデューサーから出力された物理量(角速度等)に応じた信号を増幅し、増幅後の信号を入力信号INとして同期検波回路81に出力する。
例えば、検波回路82は、クロック信号CK0に基づき入力信号INを同期検波して、角速度信号等の物理量信号を出力する。即ち、クロック信号CK0と同位相となる物理量信号(所望信号)が検波され、クロック信号CK0に対して90度の位相差がある不要信号が除去される。
また検波回路84は、クロック信号CK0に対して位相が90度ずれたクロック信号CK90に基づき信号INを同期検波することで、物理量信号に対して位相が90度ずれた不要信号を同期検波して、出力する。即ち、クロック信号CK90と同位相となる不要信号が検波され、クロック信号CK90に対して90度の位相差がある物理量信号が除去される。
検波回路84からの不要信号を、例えば後段のA/D変換回路100(図6)によりA/D変換して、そのA/D変換値を解析することで、故障検出が可能になる。例えば物理量トランスデューサー(振動片)に恣意的に漏れ信号を発生させ、検波回路84が、クロック信号CK90に基づき、この漏れ信号を含む入力信号を検波することで、回路装置(検出回路)の故障検出(故障診断)が可能になる。
フィルター部90は、第1のフィルター92と第2のフィルター94を含む。図1では、フィルター92は、キャパシターCF1と抵抗RF1で構成されるパッシブ型のローパスフィルターであり、フィルター94も、キャパシターCF2と抵抗RF2で構成されるパッシブ型のローパスフィルターである。
なお、フィルター部90は図1の構成に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図1ではフィルター部90は、1次のフィルター(ローパスフィルター)で構成されているが、2次以上のフィルター(ローパスフィルター)で構成してもよい。また図1ではフィルター部90は、パッシブ型のフィルターで構成されているが、例えばSCF(スイッチトキャパシターフィルター)などのアクティブ型のフィルターで構成してもよい。
そして図1では、第1のモードでは(回路装置の動作モードが第1のモードに設定された場合には)、検波回路82からの物理量信号(出力信号Q1、所望信号)が、フィルター92に入力され、検波回路84からの不要信号(出力信号Q2)が、フィルター94に入力される。一方、第2のモードでは(回路装置の動作モードが第2のモードに設定された場合には)、検波回路82からの物理量信号(Q1)が、フィルター92及びフィルター94に入力される。
例えば、同期検波回路81とフィルター部90の間には信号選択回路88が設けられている。そして信号選択回路88は、第1のモードでは、検波回路82からの物理量信号を、フィルター92に出力し、検波回路84からの不要信号を、フィルター94に出力する。一方、第2のモードでは、検波回路82からの前記物理量信号を、フィルター92及びフィルター94に出力する。
この信号選択回路88はスイッチ素子S5、S6を有する。これらのスイッチ素子S5、S6は例えばN型のトランジスターやトランスファーゲートなどにより実現される。
スイッチ素子S5は、検波回路82の出力ノードN1と、フィルター94の入力ノードN3の間に設けられる。スイッチ素子S6は、検波回路84の出力ノードN2と、フィルター94の入力ノードN3の間に設けられる。スイッチ素子S5はスイッチ信号XφFによりオン又はオフに制御され、スイッチ素子S6はスイッチ信号φFによりオン又はオフに制御される。
そして、回路装置の動作モードが第1のモードに設定された場合には、スイッチ素子S5がオフになり、スイッチ素子S6がオンになる。これにより、検波回路82からの物理量信号(Q1)がフィルター92に入力され、検波回路84からの不要信号(Q2)がフィルター94に入力される。この結果、フィルター92により物理量信号に対するフィルター処理(ローパスフィルター処理)が行われ、フィルター94により不要信号に対するフィルター処理(ローパスフィルター処理)が行われるようになる。そして、フィルター92、94からのフィルター処理後の出力信号QA1、QA2が、後段のA/D変換回路100(図6)に出力されるようになる。
一方、回路装置の動作モードが第2のモードに設定された場合には、スイッチ素子S5がオンになり、スイッチ素子S6がオフになる。スイッチ素子S6がオフになることにより、検波回路84からの不要信号(Q2)はフィルター94には入力されないようになる。一方、スイッチ素子S5がオンになることで、検波回路82からの物理量信号(Q1)がフィルター92及びフィルター94の両方に入力されるようになる。そして、フィルター92、94からのフィルター処理後の出力信号QA1、QA2が、後段のA/D変換回路100に出力されるようになる。
以上のように第1、第2のモードで動作させることで、フィルター部90のフィルター92、94の故障検出を実現できる。
図2は図1の回路装置の動作を説明する信号波形図である。図2に示すようにスイッチ信号φFがHレベルになり、信号XφFがLレベルになると、図1のスイッチ素子S6がオンになり、スイッチ素子S5がオフになり、回路装置の動作モードが第1のモードM1に設定される。これにより検波回路82からの物理量信号(Q1)が、フィルター92に入力されると共に、検波回路84からの不要信号(Q2)が、オンになったスイッチ素子S6を介してフィルター94に入力されるようになる。
一方、スイッチ信号φFがLレベルになり、信号XφFがHレベルになると、スイッチ素子S6がオフになり、スイッチ素子S5がオンになり、回路装置の動作モードが第2のモードM2に設定される。これにより検波回路84からの不要信号(Q2)は、スイッチ素子S6がオフになることで、フィルター94に入力されなくなる。また検波回路82からの物理量信号(Q1)は、フィルター92に入力されると共に、オンになったスイッチ素子S5を介してフィルター94にも入力されるようになる。
図2では、スイッチ信号φFがHレベルになり、動作モードが第1のモードM1に設定された期間が、第1の期間T1になる。また、スイッチ信号XφFがHレベルになり、動作モードが第2のモードM2に設定された期間が、第2の期間T2になっている。
本実施形態では、図2に示すように、第1のモードM1に設定される第1の期間T1と、第2のモードM2に設定される第2の期間T2とにより構成される期間が、繰り返される。例えばT1の後にT2になり、T2の後にT1になり、T1の後にT2になり、T2の後にT1になるというように、T1、T2からなる期間が繰り返される。具体的には後述する図12に示すように、回路装置の起動後(電源投入後等)の常時診断期間(故障検出期間)において、第1のモードM1に設定される第1の期間T1と、第2のモードM2に設定される第2の期間T2とにより構成される期間が繰り返される。こうすることで、回路装置の常時の故障診断が可能になる。
なお、スイッチ信号φF、XφFのパルス幅(Hレベル期間)の長さは、フィルター部90のローパスのフィルター処理による遅れよりも、十分に長ければよい。
例えば物理量信号の信号レベルが0レベルであると想定する。すると図2のB1では、第1のモードM1に設定されることで、検波回路82からの物理量信号(Q1)がフィルター92に入力され、フィルター92の出力信号QA1は、フィルター処理後の物理量信号になっており、その信号レベルが0レベルになっている。
また、本実施形態では、物理量トランスデューサー18(図6)に恣意的に漏れ信号を発生させており、この漏れ信号である不要信号の信号レベルの期待値TG(漏れ期待値、ターゲットレベル)とする。すると図2のB2では、第1のモードM1に設定されることで、検波回路84からの不要信号(Q2)がフィルター94に入力されており、故障等が無ければ、フィルター94の出力信号QA2の信号レベルが期待値TGとほぼ一致する。
従って、例えば後段の制御部140(図6)が、図2のB2において、フィルター94の出力信号QA2の信号レベル(A/D変換値)が、期待値TGを含む所与の判定範囲内(誤差範囲内)にあるかを検出することで、フィルター94の故障を検出できる。またフィルター94を通る経路にある回路での故障も検出できるようになる。例えばフィルター94及び同期検波回路81(検波回路84)での故障を検出できるようになる。
また図2のB3では、第2のモードM2に設定されることで、検波回路82からの物理量信号(Q1)が、フィルター92、94の両方に入力されている。このため、故障等が無ければ、B3において、フィルター92の出力信号QA1とフィルター94の出力信号QA2は、その信号レベルが一致するはずである。例えば物理量信号の信号レベルが0レベルであるとすると、出力信号QA1及びQA2の信号レベルは0レベルで一致する。従って、後段の制御部140は、出力信号QA1、QA2の信号レベルが一致していない場合(異なった値になっている場合)には、フィルター92とフィルター94のいずれか一方が故障していると判定できる。この一致・不一致判定は、所与の誤差範囲内での一致・不一致を判定することで実現できる。例えば制御部140は、例えば出力信号QA1の信号レベルを基準とした所与の判定範囲内(誤差範囲内)に出力信号QA2の信号レベルがない場合に、信号レベルが不一致であると判定し、フィルター92又はフィルター94が故障していると判定できる。
以上のように図1の構成例によれば、同期検波回路81の後段のフィルター部90のフィルター92、94の故障を検出できるようになる。そして第1のモードM1に設定される第1の期間T1と、第2のモードM2に設定される第2の期間T2からなる期間を繰り返すことで、フィルター92、94の常時の故障診断を実現できる。
また、検波回路82からの物理量信号(Q1)は、第1の期間T1及び第2の期間T2のいずれの場合も、フィルター92を介してA/D変換回路100に出力され、制御部140は、物理量信号のA/D変換値を取り込むことができる。従って、フィルター92、94の常時の故障診断を実現しながら、制御部140(DSP部110)は、物理量信号についても絶え間なく取り込んで処理を行うことが可能になる。この結果、信頼性の高い常時の故障診断と、物理量信号の常時の取り込みとを両立して実現することが可能になる。
2.第2の構成例
図3に本実施形態の回路装置の第2の構成例を示す。図3の回路装置は、同期検波回路81とフィルター部90を含む。そして図3では、同期検波回路81の検波回路82、84に入力されるクロック信号CK0、CK90が交互に入れ替わる。
この第2の構成例では、動作モードとして第1、第2、第3、第4のモードが用意されている。
そして、第1及び第2のモードでは、検波回路82、84は図1の構成例と同様の動作を行う。即ち、検波回路82がクロック信号CK0に基づいて物理量信号を同期検波して出力し、検波回路84がクロック信号CK90に基づいて不要信号を同期検波する。
これに対して、第3、第4のモードでは、検波回路82、84の役割が入れ替わる。即ち、第3、第4のモードでは、検波回路82がクロック信号CK90に基づいて不要信号を同期検波して出力し、検波回路84がクロック信号CK0に基づいて物理量信号を同期検波して出力する。
(1)具体的には、第1のモードでは、検波回路82からの物理量信号が、フィルター92に入力され、検波回路84からの不要信号が、フィルター94に入力される。
即ち、第1のモードでは、検波回路82は出力信号Q1として物理量信号を出力し、検波回路84は出力信号Q2として不要信号を出力する。また第1のモードでは、検波回路82からの出力信号Q1がフィルター92に入力され、検波回路84からの出力信号Q2がフィルター94に入力される。従って、検波回路82からの出力信号Q1である物理量信号が、フィルター92に入力され、検波回路84の出力信号Q2である不要信号が、フィルター94に入力されるようになる。
(2)また第2のモードでは、検波回路82からの物理量信号がフィルター92及び94に入力される。
即ち、第2のモードでは、検波回路82は出力信号Q1として物理量信号を出力し、検波回路84は出力信号Q2として不要信号を出力する。また第2のモードでは、検波回路82からの出力信号Q1がフィルター92及び94に入力される。従って、検波回路82の出力信号Q1である物理量信号が、フィルター92及び94に入力されるようになる。
(3)また第3のモードでは、検波回路82からの不要信号が、フィルター94に入力され、検波回路84からの物理量信号が、フィルター92に入力される。
即ち、第3のモードでは、検波回路82は出力信号Q1として不要信号を出力し、検波回路84は出力信号Q2として物理量信号を出力する。また第3のモードでは、検波回路82からの出力信号Q1がフィルター94に入力され、検波回路84からの出力信号Q2がフィルター92に入力される。従って、検波回路82の出力信号Q1である不要信号がフィルター94に入力され、検波回路84の出力信号Q2である物理量信号がフィルター92に入力されるようになる。
(4)また第4のモードでは、検波回路84からの物理量信号が、フィルター92及び94に入力される。
即ち、第4のモードでは、検波回路82は出力信号Q1として不要信号を出力し、検波回路84は出力信号Q2として物理量信号を出力する。また第4のモードでは、検波回路84からの出力信号Q2がフィルター92及び94に入力される。従って、検波回路84からの物理量信号がフィルター92及び94に入力されるようになる。
具体的には図3では、同期検波回路81とフィルター90の間に設けられる信号選択回路88には、図1で説明したスイッチ素子S5、S6に加えて、スイッチ素子S7、S8、S9、S10が設けられている。なおスイッチ素子S5、S6の接続構成及び動作は図1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
スイッチ素子S7は、検波回路82の出力ノードN1とノードN4の間に設けられ、スイッチ信号φDによりオン又はオフにされる。スイッチ素子S8は、検波回路84の出力ノードN2とノードN5の間に設けられ、スイッチ信号φDによりオン又はオフにされる。スイッチ素子S9は、検波回路82の出力ノードN1とノードN5の間に設けられ、スイッチ信号XφDによりオン又はオフにされる。スイッチ素子S10は、検波回路84の出力ノードN2とノードN4の間に設けられ、スイッチ信号XφDによりオン又はオフにされる。
ここでノードN4は、フィルター92の入力ノードとなる。またノードN4とフィルター94の入力ノードN3との間にはスイッチ素子S5が設けられる。ノードN5とフィルター94の入力ノードN3との間にはスイッチ素子S6が設けられる。
そして、第1のモードでは、スイッチ信号φD及びφFがHレベル(アクティブレベル)になることでスイッチ素子S7、S8、S6がオンになり、スイッチ信号XφD及びXφFがLレベル(非アクティブレベル)になることでスイッチ素子S9、S10、S5がオフになる。これにより信号選択回路88は、第1のモードでは、検波回路82からの物理量信号(Q1)を、フィルター92に出力し、検波回路84からの不要信号(Q2)を、フィルター94に出力する。
第2のモードでは、スイッチ信号φD及びXφFがHレベルになることでスイッチ素子S7、S8、S5がオンになり、スイッチ信号XφD及びφFがLレベルになることでスイッチ素子S9、S10、S6がオフになる。これにより信号選択回路88は、検波回路82からの物理量信号(Q1)を、フィルター92及びフィルター94に出力する。
第3のモードでは、スイッチ信号XφD及びφFがHレベルになることでスイッチ素子S9、S10、S6がオンになり、スイッチ信号φD及びXφFがLレベルになることでスイッチ素子S7、S8、S5がオフになる。これにより信号選択回路88は、検波回路82からの不要信号(Q1)を、フィルター94に出力し、検波回路84からの物理量信号(Q2)を、フィルター92に出力する。
第4のモードでは、スイッチ信号XφD及びXφFがHレベルになることでスイッチ素子S9、S10、S5がオンになり、スイッチ信号φD及びφFがLレベルになることでスイッチ素子S7、S8、S6がオフになる。これにより信号選択回路88は、第4のモードでは、検波回路84からの物理量信号(Q2)を、フィルター92及びフィルター94に出力する。
また図3では、選択回路86が回路装置に設けられている。選択回路86は、クロック信号CK0、CK90が入力され、同期信号SY1、SY2を検波回路82、84に出力する。例えば第1、第2のモードでは、選択回路86は、クロック信号CK0、CK90を、各々、同期信号SY1、SY2として検波回路82、84に出力する。一方、第3、第4のモードでは、選択回路86は、クロック信号CK90、CK0を、各々、同期信号SY1、SY2として検波回路82、84に出力する。
具体的には選択回路86は、スイッチ素子S1、S2、S3、S4を有する。これらのスイッチ素子S1〜S4は例えばN型のトランジスターやトランスファーゲートなどにより実現される。
スイッチ素子S1は、クロック信号CK0の入力ノードNK1と、同期信号SY1の出力ノードNK3の間に設けられる。スイッチ素子S2は、クロック信号CK90の入力ノードNK2と、同期信号SY2の出力ノードNK4の間に設けられる。スイッチ素子S3は、CK0の入力ノードNK1とSY2の出力ノードNK4の間に設けられる。スイッチ素子S4はCK90の入力ノードNK2とSY1の出力ノードNK3の間に設けられる。
第1のモード及び第2のモードでは、スイッチ信号φDがHレベル(アクティブレベル)になることで、スイッチ素子S1、S2がオンになり、スイッチ信号XφDがLレベル(非アクティブレベル)になることで、スイッチ素子S3、S4がオフになる。これにより、クロック信号CK0、CK90が、各々、同期信号SY1、SY2として検波回路82、84に入力されるようになる。
一方、第3のモード及び第4のモードでは、スイッチ信号XφDがHレベルになることで、スイッチ素子S3、S4がオンになり、スイッチ信号φDがLレベルになることで、スイッチ素子S1、S2がオフになる。これにより、クロック信号CK90、CK0が、各々、同期信号SY1、SY2として検波回路82、84に入力されるようになる。即ち、第1及び第2のモードと、第3及び第4のモードとでは、同期検波回路81に入力されるクロック信号CK0、CK90が入れ替わる。
図4は図3の回路装置の動作を説明する信号波形図である。
(1)図4の第1の期間T1では、スイッチ信号φD及びφFがHレベルなることで、動作モードが第1のモードM1に設定される。
即ち、スイッチ信号φDがHレベルになると、図3のスイッチ素子S1、S2がオンになることで、検波回路82、84にクロック信号CK0、CK90が供給される。これにより検波回路82は物理量信号を出力し、検波回路84は不要信号を出力する。そしてスイッチ信号φD及びφFがHレベルになると、スイッチ素子S7、S8、S6がオンになる。従って、検波回路82からの物理量信号(Q1)が、スイッチ素子S7を介して、フィルター92に入力され、検波回路84からの不要信号(Q2)が、スイッチ素子S8、S6を介して、フィルター94に入力されるようになる。
(2)第2の期間T2では、スイッチ信号φD及びXφFがHレベルになることで、動作モードが第2のモードM2に設定される。
即ち、スイッチ信号φDがHレベルになると、スイッチ素子S1、S2がオンになることで、検波回路82は物理量信号を出力し、検波回路84は不要信号を出力する。そしてスイッチ信号φD及びXφFがHレベルになると、スイッチ素子S7、S8、S5がオンになる。従って、検波回路82からの物理量信号(Q1)が、フィルター92及び94に入力されるようになる。
(3)第3の期間T3では、スイッチ信号XφD及びφFがHレベルなることで、動作モードが第3のモードM3に設定される。
即ち、スイッチ信号XφDがHレベルになると、スイッチ素子S3、S4がオンになることで、検波回路82、84にクロック信号CK90、CK0が供給される。これにより検波回路82は不要信号を出力し、検波回路84は物理量信号を出力する。そしてスイッチ信号XφD及びφFがHレベルになると、スイッチ素子S9、S10、S6がオンになる。従って、検波回路82からの不要信号(Q1)がスイッチ素子S9、S6を介して、フィルター94に入力され、検波回路84からの物理量信号(Q2)が、スイッチ素子S10を介して、フィルター92に入力されるようになる。
(4)第4の期間T4では、スイッチ信号XφD及びXφFがHレベルになることで、動作モードが第4のモードM4に設定される。
即ち、スイッチ信号XφDがHレベルになると、スイッチ素子S3、S4がオンになることで、検波回路82は不要信号を出力し、検波回路84は物理量信号を出力する。そしてスイッチ信号XφD及びXφFがHレベルになると、スイッチ素子S9、S10、S5がオンになる。従って、検波回路84からの物理量信号(Q2)がフィルター92及び94に入力されるようになる。
図4では、スイッチ信号φD及びφFがHレベルになり、第1のモードM1に設定された期間が、第1の期間T1になる。スイッチ信号φD及びXφFがHレベルになり、第2のモードM2に設定された期間が、第2の期間T2になる。スイッチ信号XφD及びφFがHレベルになり、第3のモードM3に設定された期間が、第3の期間T3になる。スイッチ信号XφD及びXφFがHレベルになり、第4のモードM4に設定された期間が、第4の期間T4になる。
そして本実施形態では、図4に示すように、第1の期間T1と第2の期間T2と第3の期間T3と第4の期間T4とにより構成される期間が、繰り返される。例えばT1の後にT2になり、T2の後にT3になり、T3の後にT4になり、T4の後にT1になり、T1の後にT2になるというように、T1、T2、T3、T4からなる期間が繰り返される。具体的には後述する図12に示すように、回路装置の起動後の常時診断期間において、T1、T2、T3、T4とにより構成される期間が繰り返される。こうすることで、回路装置の常時の故障診断が可能になる。
なお、スイッチ信号φF、XφFのパルス幅(Hレベル期間)の長さは、フィルター部90のローパスのフィルター処理による遅れよりも、十分に長ければよい。またスイッチ信号φD、XφDは、例えばスイッチ信号φF、XφFを分周等することで生成でき、その分周比に制限はない。
例えば物理量信号の信号レベルが0レベルであると想定する。すると図4のE1では、第1のモードM1に設定されることで、検波回路82からの物理量信号(Q1)がフィルター92に入力される。そしてフィルター92の出力信号QA1は、フィルター処理後の物理量信号となっており、その信号レベルは0レベルになっている。
また図4のE2では、第1のモードM1に設定されることで、検波回路84からの不要信号(Q2)がフィルター94に入力されており、故障等が無ければ、フィルター94の出力信号QA2の信号レベルが期待値TGとほぼ一致する。
従って、後段の制御部140が、フィルター94の出力信号QA2の信号レベルが、期待値TGを含む所与の判定範囲内にあるかを検出することで、フィルター94やフィルター94を通る経路にある回路(検波回路84等)での故障を検出できるようになる。
また図4のE3では、第2のモードM2に設定されることで、検波回路82からの物理量信号(Q1)が、フィルター92及び94の両方に入力されている。そして、故障等が無ければ、E3において、フィルター92の出力信号QA1とフィルター94の出力信号QA2は、その信号レベルが一致するはずである。例えば物理量信号の信号レベルが0レベルであるとすると、出力信号QA1及びQA2の信号レベルは0レベルで一致する。従って、後段の制御部140は、出力信号QA1、QA2の信号レベルが一致していない場合に、フィルター92とフィルター94のいずれか一方が故障していると判定できる。この一致・不一致判定は、前述のように所与の誤差範囲内での一致・不一致を判定することで実現できる。
図4のE4では、E2に対して、不要信号を同期検波する回路が入れ替わっている。例えばE2では、第1のモードM1に設定されているため、検波回路84が不要信号を出力しているが、E4では、第3のモードM3に設定されているため、検波回路82が不要信号を出力している。そして検波回路82からの不要信号をフィルター処理した信号が、出力信号QA2としてフィルター94から出力される。このため、検波回路82に故障が無ければ、出力信号QA2の信号レベルが期待値TGとほぼ一致する。
従って、後段の制御部140は、第3の期間T3での出力信号QA2の信号レベルが、期待値TGを含む所与の判定範囲内に無い場合には、検波回路82が故障していると判定できる。或いはE2での出力信号QA2の信号レベルとE4での出力信号QA2の信号レベルの一致・不一致を判定することで、検波回路82、84の故障を検出することもできる。
以上のように図3の第2の構成例によれば、検波回路82、84とフィルター92、94の両方について、常時の故障検出が可能になる。また、フィルター92からは、フィルター処理後の物理量信号が、出力信号QA1として、常時に出力されるため、制御部140(DSP部110)は、物理量信号についても絶え間なく取り込んで処理を行うことが可能になる。
例えば図1の構成例や従来の回路では、検波回路82は、故障検出用の不要信号を出力するモードにならないため、検波回路82の個別の故障検出が難しいという問題がある。例えば信号Q2の信号レベルが期待値TGを含む所与の判定範囲内にあるかを検出することで、検波回路84の故障を検出することは可能であるが、検波回路82に故障があった場合に、それを検出できないという問題がある。
この点、図3の第2の構成例では、図4のE2とE4で、不要信号を検波する回路が入れ替わる。例えば第1の期間T1であるE2では、検波回路84が故障検出用の不要信号を出力するモードになる。従って、この不要信号が、期待値TGを含む判定範囲内にある否かを判定することで、検波回路84の故障を検出できる。また第3の期間T3であるE4では、検波回路82が故障検出用の不要信号を出力するモードになる。従って、この不要信号が、期待値TGを含む判定範囲内にある否かを判定することで、検波回路82の故障を検出できる。従って、検波回路82、84(及びその経路の回路)の両方についての故障検出を実現できるようになるという利点がある。
例えば、車載用などのアプリケーションでは、高い信頼性が要求されると共に、物理量信号についても絶え間なく取り込んで、種々の判定処理(例えば姿勢判定)を行う必要がある。このために、信頼性の高い常時の故障診断が要求されると共に、同期検波回路81は絶え間なく同期検波して物理量信号を出力する必要がある。
この点、本実施形態の回路装置では、第1、第2のモードM1、M2の第1、第2の期間T1、T2では、検波回路82が出力する物理量信号を取り込むことができると共に、検波回路84が出力する不要信号に基づいて、検波回路84の故障検出が可能になる。またフィルター部90のフィルター92、94の故障検出も可能になる。
また、第3、4のモードM3、M4の第3、第4の期間T3、T4では、検波回路84が出力する物理量信号を取り込むことができると共に、検波回路82が出力する不要信号に基づいて、検波回路82の故障検出が可能になる。またフィルター部90のフィルター92、94の故障検出も可能になる。
従って、図4に示すように第1、第2、第3、第4の期間T1、T2、T3、T4からなる期間を繰り返すことで、信頼性の高い常時の故障診断と、物理量信号の常時の取り込みとを両立して実現できるようになる。
以上のように図3の第2の構成例によれば、検波回路82、84及びフィルター92、94の常時の故障診断を実現しながら、制御部140(DSP部110)が物理量信号を絶え間なく取り込むことができる。従って、信頼性の高い常時の故障診断と、物理量信号の常時の取り込みとを両立して実現できる。
図5(A)、図5(B)に、同期検波回路81の検波回路82、84の詳細な構成例を示す。図5(A)は第1、第2のモードM1、M2に設定されたときの状態を示しており、図5(B)は第3、第4のモードM3、M4に設定されたときの状態を示している。
図5(A)、図5(B)では、検波回路82は、入力信号INとして、正極側入力信号IP及び負極側入力信号IMにより構成される差動入力信号が入力される。そして第1の正極側出力信号QP1及び第1の負極側出力信号QM1により構成される第1の差動出力信号を出力する。
また検波回路84は、入力信号INとして、IP、IMにより構成される差動入力信号が入力される。そして、第2の正極側出力信号QP2及び第2の負極側出力信号QM2により構成される第2の差動出力信号を出力する。
そして第1、第2のモードM1、M2に設定された場合には、検波回路82が、第1の差動出力信号(QP1、QM1)として物理量信号を出力し、検波回路84が、第2の差動出力信号(QP2、QM2)として不要信号を出力する。一方、第3、第4のモードM3、M4に設定された場合には、検波回路82が、第1の差動出力信号(QP1、QM1)として不要信号を出力し、検波回路84が、第2の差動出力信号(QP2、QM2)として物理量信号を出力する。
具体的には、図5(A)、図5(B)に示すように、検波回路82は、第1、第2、第3、第4のスイッチ素子SD1、SD2、SD3、SD4を含む。これらのスイッチ素子SD1〜SD4はN型のトランジスターやトランスファーゲートなどにより実現される。
スイッチ素子SD1は、正極側入力信号IPの正極側入力ノードNIPと、正極側出力信号QP1の正極側出力ノードNQP1との間に設けられる。そして図5(A)の第1、第2のモードM1、M2ではクロック信号CK0に基づきオン又はオフにされ、図5(B)の第3、第4のモードM3、M4ではクロック信号CK90に基づきオン又はオフにされる。
スイッチ素子SD2は、負極側入力信号IMの負極側入力ノードNIMと、負極側出力信号QM1の負極側出力ノードNQM1との間に設けられる。そして図5(A)の第1、第2のモードM1、M2ではクロック信号CK0に基づきオン又はオフにされ、図5(B)の第3、第4のモードM3、M4ではクロック信号CK90に基づきオン又はオフにされる。
スイッチ素子SD3は、負極側入力ノードNIMと、正極側出力ノードNQP1との間に設けられ、図5(A)の第1、第2のモードM1、M2ではクロック信号CK0の反転信号である反転クロック信号XCK0に基づきオン又はオフにされる。図5(B)の第3、第4のモードM3、M4ではクロック信号CK90の反転信号である反転クロック信号XCK90に基づきオン又はオフにされる。
スイッチ素子SD4は、正極側入力ノードNIPと、負極側出力ノードNQM1との間に設けられ、第1、第2のモードM1、M2では反転クロック信号XCK0に基づきオン又はオフにされ、第3、第4のモードM3、M4では反転クロック信号XCK90に基づきオン又はオフにされる。
検波回路84は、第5、第6、第7、第8のスイッチ素子SD5、SD6、SD7、SD8を含む。これらのスイッチ素子SD5〜SD8はN型のトランジスターやトランスファーゲートなどにより実現される。
スイッチ素子SD5は、正極側入力ノードNIPと、正極側出力信号QP2の正極側出力ノードNQP2との間に設けられ、第1、第2のモードM1、M2ではクロック信号CK90に基づきオン又はオフにされ、第3、第4のモードM3、M4ではクロック信号CK0に基づきオン又はオフにされる。
スイッチ素子SD6は、負極側入力ノードNIMと、負極側出力信号QM2の負極側出力ノードNQM2との間に設けられ、第1、第2のモードM1、M2ではクロック信号CK90に基づきオン又はオフにされ、第3、第4のモードM3、M4ではクロック信号CK0に基づきオン又はオフにされる。
スイッチ素子SD7は、負極側入力ノードNIMと、正極側出力ノードNQP2との間に設けられ、第1、第2のモードM1、M2では反転クロック信号XCK90に基づきオン又はオフにされ、第3、第4のモードM3、M4では反転クロック信号XCK0に基づきオン又はオフにされる。
スイッチ素子SD8は、正極側入力ノードNIPと、負極側出力ノードNQM2との間に設けられ、第1、第2のモードM1、M2では反転クロック信号XCK90に基づきオン又はオフにされ、第3、第4のモードM3、M4では反転クロック信号XCK0に基づきオン又はオフにされる。
以上の図5(A)、図5(B)の構成の同期検波回路81においては、差動信号での同期検波が可能になると共に、常時の故障検出と常時の物理量信号の取り込みとが可能になる。
3.全体システム構成例
図6は本実施形態の回路装置の全体的なシステム構成例である。図6の回路装置は、駆動回路30、検出回路60、制御部140を含む。
駆動回路30は、物理量トランスデューサー18を駆動する。例えば物理量トランスデューサー18からのフィードバック信号DIを受け、フィードバック信号DIに対応する駆動信号DQを出力することで、物理量トランスデューサー18を駆動する。例えば物理量トランスデューサー18からの第1、第2の検出信号IQ1、IQ2は端子PD1、PD2(パッド)を介して回路装置の検出回路60に入力される。また物理量トランスデューサー18からのフィードバック信号DIは端子PD3(パッド)を介して回路装置の駆動回路30に入力され、駆動回路30は端子PD4(パッド)を介して駆動信号DQを物理量トランスデューサー18に出力する。
検出回路60は、増幅回路61と、同期検波回路81と、フィルター部90と、A/D変換回路100と、DSP部110(デジタル信号処理部)を含む。同期検波回路81、フィルター部90の構成、動作については、図1〜図5(B)で説明した通りである。増幅回路61、A/D変換回路100、DSP部110の詳細については後述する。
なお検出回路60は図6の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えばA/D変換回路100やDSP部110を設けずに、アナログの検出結果を出力するタイプの検出回路60であってもよい。
制御部140は各種の制御処理を行う。例えば制御部140は駆動回路30の制御処理や検出回路60の制御処理を行う。また制御部140は、前述の第1〜第4のモード等の動作モードの設定処理を行う。また、同期検波回路81やフィルター部90の故障判定の処理も行う。この制御部140は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線手法で生成されたロジック回路や、或いはファームウェアー等に基づいて動作するプロセッサー等により実現できる。
4.電子機器、ジャイロセンサー、回路装置の詳細な構成
図7に、本実施形態の回路装置20、この回路装置20を含むジャイロセンサー510(広義には物理量検出装置)、このジャイロセンサー510を含む電子機器500の詳細な構成例を示す。
なお回路装置20、電子機器500、ジャイロセンサー510は図7の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。また本実施形態の電子機器500としては、デジタルカメラ、ビデオカメラ、スマートフォン、携帯電話機、カーナビゲーションシステム、ロボット、生体情報検出装置、ゲーム機、時計、健康器具、或いは携帯型情報端末等の種々の機器を想定できる。また以下では、物理量トランスデューサーが圧電型の振動片(振動ジャイロ)であり、センサーがジャイロセンサーである場合を例にとり説明するが、本発明はこれに限定されない。例えばシリコン基板などから形成された静電容量検出方式の振動ジャイロや、角速度情報と等価な物理量や角速度情報以外の物理量を検出する物理量トランスデューサー等にも本発明は適用可能である。
電子機器500は、ジャイロセンサー510と処理部520を含む。またメモリー530、操作部540、表示部550を含むことができる。CPU、MPU等で実現される処理部520(コントローラー)は、ジャイロセンサー510等の制御や電子機器500の全体制御を行う。また処理部520は、ジャイロセンサー510により検出された角速度情報(広義には物理量)に基づいて処理を行う。例えば角速度情報に基づいて、手ぶれ補正、姿勢制御、GPS自律航法などのための処理を行う。メモリー530(ROM、RAM等)は、制御プログラムや各種データを記憶したり、ワーク領域やデータ格納領域として機能する。操作部540はユーザーが電子機器500を操作するためのものであり、表示部550は種々の情報をユーザーに表示する。
ジャイロセンサー510(物理量検出装置)は、振動片10と回路装置20を含む。振動片10(広義には物理量トランスデューサー)は、水晶などの圧電材料の薄板から形成される圧電型振動片である。具体的には、振動片10は、Zカットの水晶基板により形成されたダブルT字型の振動片である。
回路装置20は、駆動回路30、検出回路60、制御部140、レジスター部142、診断回路150を含む。なお、これらの構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
駆動回路30は、駆動信号DQを出力して振動片10を駆動する。例えば振動片10からフィードバック信号DIを受け、これに対応する駆動信号DQを出力することで、振動片10を励振させる。検出回路60は、駆動信号DQにより駆動される振動片10から検出信号IQ1、IQ2(検出電流、電荷)を受け、検出信号IQ1、IQ2から、振動片10に印加された物理量に応じた所望信号(コリオリ力信号)を検出(抽出)する。
診断回路150は、診断モード(診断期間)において検出回路60(回路装置)を診断(自己診断)するための回路である。例えば診断回路150は、検出回路60を診断するための疑似的な所望信号(疑似角速度信号等)を生成し、検出回路60に供給するための動作を行う。そして、この疑似的な所望信号の検出結果に基づいて、検出回路60等が正常に動作しているか否かを判断する診断が行われる。なお、診断回路150の詳細については後述する。
振動片10は、基部1と、連結腕2、3と、駆動腕4、5、6、7と、検出腕8、9を有する。矩形状の基部1に対して+Y軸方向、−Y軸方向に検出腕8、9が延出している。また基部1に対して−X軸方向、+X軸方向に連結腕2、3が延出している。そして連結腕2に対して+Y軸方向、−Y軸方向に駆動腕4、5が延出しており、連結腕3に対して+Y軸方向、−Y軸方向に駆動腕6、7が延出している。なおX軸、Y軸、Z軸は水晶の軸を示すものであり、各々、電気軸、機械軸、光学軸とも呼ばれる。
駆動回路30からの駆動信号DQは、駆動腕4、5の上面に設けられた駆動電極と、駆動腕6、7の側面に設けられた駆動電極に入力される。また駆動腕4、5の側面に設けられた駆動電極と、駆動腕6、7の上面に設けられた駆動電極からの信号が、フィードバック信号DIとして駆動回路30に入力される。また検出腕8、9の上面に設けられた検出電極からの信号が、検出信号IQ1、IQ2として検出回路60に入力される。なお検出腕8、9の側面に設けられたコモン電極は例えば接地される。
駆動回路30により交流の駆動信号DQが印加されると、駆動腕4、5、6、7は、逆圧電効果により矢印Aに示すような屈曲振動(励振振動)を行う。即ち、駆動腕4、6の先端が互いに接近と離間を繰り返し、駆動腕5、7の先端も互いに接近と離間を繰り返す屈曲振動を行う。このとき駆動腕4、5と駆動腕6、7とが、基部1の重心位置を通るY軸に対して線対称の振動を行っているので、基部1、連結腕2、3、検出腕8、9はほとんど振動しない。
この状態で、振動片10に対してZ軸を回転軸とした角速度が加わると(振動片10がZ軸回りで回転すると)、コリオリ力により駆動腕4、5、6、7は矢印Bに示すように振動する。即ち、矢印Aの方向とZ軸の方向とに直交する矢印Bの方向のコリオリ力が、駆動腕4、5、6、7に働くことで、矢印Bの方向の振動成分が発生する。この矢印Bの振動が連結腕2、3を介して基部1に伝わり、検出腕8、9が矢印Cの方向で屈曲振動を行う。この検出腕8、9の屈曲振動による圧電効果で発生した電荷信号が、検出信号IQ1、IQ2として検出回路60に入力される。ここで、駆動腕4、5、6、7の矢印Bの振動は、基部1の重心位置に対して周方向の振動であり、検出腕8、9の振動は、矢印Bとは周方向で反対向きの矢印Cの方向での振動である。このため、検出信号IQ1、IQ2は、駆動信号DQに対して位相が90度だけずれた信号になる。
例えば、Z軸回りでの振動片10(ジャイロセンサー)の角速度をωとし、質量をmとし、振動速度をvとすると、コリオリ力はFc=2m・v・ωと表される。従って検出回路60が、コリオリ力に応じた信号である所望信号を検出することで、角速度ωを求めることができる。そして求められた角速度ωを用いることで、処理部520は、手振れ補正、姿勢制御、或いはGPS自律航法等のための種々の処理を行うことができる。
なお図7では、振動片10がダブルT字型である場合の例を示しているが、本実施形態の振動片10はこのような構造に限定されない。例えば音叉型、H型等であってもよい。また振動片10の圧電材料は、水晶以外のセラミックスやシリコン等の材料であってもよい。
図8に回路装置の駆動回路30、検出回路60の詳細な構成例を示す。
駆動回路30は、振動片10からのフィードバック信号DIが入力される増幅回路32と、自動ゲイン制御を行うゲイン制御回路40と、駆動信号DQを振動片10に出力する駆動信号出力回路50を含む。また同期信号SYCを検出回路60に出力する同期信号出力回路52を含む。なお、駆動回路30の構成は図8に限定されず、これらの構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
増幅回路32(I/V変換回路)は、振動片10からのフィードバック信号DIを増幅する。例えば振動片10からの電流の信号DIを電圧の信号DVに変換して出力する。この増幅回路32は、演算増幅器、帰還抵抗素子、帰還キャパシターなどにより実現できる。
駆動信号出力回路50は、増幅回路32による増幅後の信号DVに基づいて、駆動信号DQを出力する。例えば駆動信号出力回路50が、矩形波(又は正弦波)の駆動信号を出力する場合には、駆動信号出力回路50はコンパレーター等により実現できる。
ゲイン制御回路40(AGC)は、駆動信号出力回路50に制御電圧DSを出力して、駆動信号DQの振幅を制御する。具体的には、ゲイン制御回路40は、信号DVを監視して、発振ループのゲインを制御する。例えば駆動回路30では、ジャイロセンサー510の感度を一定に保つために、振動片10(駆動用振動片)に供給する駆動電圧の振幅を一定に保つ必要がある。このため、駆動振動系の発振ループ内に、ゲインを自動調整するためのゲイン制御回路40が設けられる。ゲイン制御回路40は、振動片10からのフィードバック信号DIの振幅(振動片の振動速度v)が一定になるように、ゲインを可変に自動調整する。このゲイン制御回路40は、増幅回路32の出力信号DVを全波整流する全波整流器や、全波整流器の出力信号の積分処理を行う積分器などにより実現できる。
同期信号出力回路52は、増幅回路32による増幅後の信号DVを受け、同期信号SYC(参照信号)を検出回路60に出力する。この同期信号出力回路52は、正弦波(交流)の信号DVの2値化処理を行って矩形波の同期信号SYCを生成するコンパレーターや、同期信号SYCの位相調整を行う位相調整回路(移相器)などにより実現できる。
また同期信号出力回路52は信号DSFDを診断回路150に出力する。信号DSFDは、同期信号SYCと位相が同じ信号であり、例えば正弦波の信号DVの2値化処理を行うコンパレーターなどにより生成される。なお、同期信号SYCそのものを信号DSFDとして診断回路150に出力してもよい。
検出回路60は、増幅回路61、同期検波回路81、フィルター部90、A/D変換回路100、DSP部110を含む。増幅回路61は、振動片10からの第1、第2の検出信号IQ1、IQ2を受けて、電荷−電圧変換や差動の信号増幅やゲイン調整などを行う。同期検波回路81は、駆動回路30からの同期信号SYCに基づいて同期検波を行う。フィルター部90(ローパスフィルター)は、A/D変換回路100の前置きフィルターとして機能する。またフィルター部90は、同期検波によっては除去しきれなかった不要信号を減衰する回路としても機能する。A/D変換回路100は、同期検波後の信号のA/D変換を行う。DSP部110はA/D変換回路100からのデジタル信号に対してデジタルフィルター処理やデジタル補正処理などのデジタル信号処理を行う。
なお、例えば振動片10からの電荷信号(電流信号)である検出信号IQ1、IQ2は、電圧信号である駆動信号DQに対して位相が90度遅れる。また増幅回路61のQ/V変換回路等において位相が90度遅れる。このため、増幅回路61の出力信号は駆動信号DQに対して位相が180度遅れる。従って、例えば駆動信号DQ(DV)と同相の同期信号SYCを用いて同期検波することで、駆動信号DQに対して位相が90度遅れた不要信号等を除去できるようになる。
制御部140は、回路装置20の制御処理を行う。この制御部140は、ロジック回路(ゲートアレイ等)やプロセッサー等により実現できる。回路装置20での各種のスイッチ制御やモード設定等はこの制御部140により行われる。
レジスター部142は各種の情報が設定されるレジスターを有する。レジスター部142は例えばSRAM等のメモリーやフリップフロップ回路等により実現できる。例えば、制御部140での故障判定の結果情報は、このレジスター部142に記憶される。そして、外部のコントローラー等は、このレジスター部142にアクセスすることで、故障判定の結果情報を読み出すことができる。
なお図8には、検出した角速度をデジタルデータで出力するデジタルジャイロの回路装置の構成例を示したが、本実施形態はこれに限定されず、検出した角速度をアナログ電圧(DC電圧)で出力するアナログジャイロの回路装置の構成であってもよい。
5.検出回路の詳細な回路構成例
図9に検出回路60の更に詳細な構成例を示す。なお、検出回路60は図9の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
診断回路150は第1、第2のキャパシターC1、C2を有する。第1のキャパシターC1は、検出信号IQ1が入力されるQ/V変換回路62の入力ノードNA1と、第1のノードN1との間に設けられる。第2のキャパシターC2は、検出信号IQ2が入力されるQ/V変換回路64の入力ノードNA2と、第1のノードN1との間に設けられる。入力ノードNA1、NA2は、第1、第2のキャパシターC1、C2の一端側のノードであり、第1のノードN1は、第1、第2のキャパシターC1、C2の他端側のノードである。
そして第2のキャパシターC2の容量値は第1のキャパシターC1の容量値とは異なっている。例えば第1のキャパシターC1の容量値をCとした場合に、第2のキャパシターC2の容量値はC+ΔCとなっている。ここでΔCは正の値の容量値であってもよいし、負の値の容量値であってもよい。容量値Cに対するΔC(ΔCの絶対値)の割合は、例えば5%〜30%程度に設定できる。
診断モード時(診断期間)には、第1のノードN1に診断用信号SFDが入力される。例えば電源投入後、通常動作期間の前において、第1のノードN1に診断用信号SFDが供給されて、検出回路60(回路装置)の診断処理(自己診断)が実行される。この診断用信号SFDは、例えば、回路装置の外部から供給される信号ではなく、回路装置の内部で生成される信号である。例えば図8に示すように、診断用信号SFDは、駆動回路30からの信号DSFDに基づき生成される信号である。具体的には駆動回路30が出力する同期信号SYC(参照信号)と位相が同じ(略同一を含む)の信号である。
このように、診断モードにおいて第1のノードN1に診断用信号SFDが入力されることで、Q/V変換回路62は、第1のキャパシターC1とQ/V変換回路62の帰還キャパシターとの第1の容量比に応じた第1の電圧振幅の信号QB1を、出力することになる。またQ/V変換回路64は、第2のキャパシターC2とQ/V変換回路64の帰還キャパシターとの第2の容量比に応じた第2の電圧振幅の信号QB2を、出力することになる。第1、第2のキャパシターC1、C2の容量値は異なっているため、第1、第2の容量比も異なった容量比となる。このため、Q/V変換回路62が出力する信号QB1の第1の電圧振幅と、Q/V変換回路64が出力する信号QB2の第2の電圧振幅も異なった電圧になる。従って、後段の差動増幅回路70等で、第1、第2の電圧振幅の電圧差が差動増幅されることで、診断モードにおいて、擬似的な所望信号である診断用の所望信号を検出回路60に供給することが可能になる。そして、この診断用の所望信号に対する検出回路60の検出結果に基づいて、検出回路60が正常に動作しているか否かの診断が可能になる。
また診断回路150は、第1、第2、第3、第4のスイッチ素子SW1、SW2、SW3、SW4を有する。また診断用信号SFDを第1のノードN1に入力するための第5のスイッチ素子SW5を有する。第1のスイッチ素子SW1は、第1のキャパシターC1の一端と入力ノードNA1との間に設けられる。第2のスイッチ素子SW2は、第2のキャパシターC2の一端と入力ノードNA2との間に設けられる。
第3のスイッチ素子SW3は、回路装置の端子PD1(図6)と入力ノードNA1との間に設けられる。第4のスイッチ素子SW4は、端子PD2と入力ノードNA2との間に設けられる。
診断モード時(診断期間)には、第1、第2のスイッチ素子SW1、SW2がオンになり、第3、第4のスイッチ素子SW3、SW4がオフになる。これにより、第1、第2の端子PD1、PD2側との電気的な接続を、オフになった第3、第4のスイッチ素子SW3、SW4により遮断しながら、オンになった第1、第2のスイッチ素子SW1、SW2を介して、診断用信号SFDを用いた診断用の所望信号(疑似所望信号)を検出回路60に供給できる。
また通常動作期間においては、第1、第2のスイッチ素子SW1、SW2がオフになり、第3、第4のスイッチ素子SW3、SW4がオンになる。ここで通常動作期間は、検出回路60が検出動作を行う期間である。即ち、検出回路60が、検出信号IQ1、IQ2を用いて所望信号の検出処理を行う期間である。このようにすることで、通常動作期間においては、第1、第2のキャパシターC1、C2側との電気的な接続を、オフになった第1、第2のスイッチ素子SW1、SW2により遮断しながら、オンになった第3、第4のスイッチ素子SW3、SW4を介して入力される第1、第2の検出信号IQ1、IQ2を用いた検出処理を実現できる。
Q/V変換回路62は、演算増幅器OPB1、帰還キャパシターCB1、帰還抵抗素子RB1を含む。演算増幅器OPB1の非反転入力端子はアナログコモン電圧VCMに設定される。帰還キャパシターCB1は演算増幅器OPB1の出力端子と反転入力端子との間に設けられる。帰還抵抗素子RB1も演算増幅器OPB1の出力端子と反転入力端子との間に設けられる。帰還抵抗素子RB1は、演算増幅器OPB1の出力信号のDCバイアス点を設定するためのものであり、帰還抵抗素子RB1を省略する構成としてもよい。
Q/V変換回路64は、演算増幅器OPB2、帰還キャパシターCB2、帰還抵抗素子RB2を含む。演算増幅器OPB2の非反転入力端子はアナログコモン電圧VCMに設定される。帰還キャパシターCB2は演算増幅器OPB2の出力端子と反転入力端子との間に設けられる。帰還抵抗素子RB2も演算増幅器OPB2の出力端子と反転入力端子との間に設けられる。帰還抵抗素子RB2は、演算増幅器OPB2の出力信号のDCバイアス点を設定するためのものであり、帰還抵抗素子RB2を省略する構成としてもよい。
Q/V変換回路62、64は、振動片10からの検出信号IQ1、IQ2である電荷信号の電荷を、帰還キャパシターCB1、CB2に蓄積することで、電荷信号を電圧信号に変換する。Q/V変換回路62、64は、ローパスフィルター特性を有し、例えば、そのカットオフ周波数が、物理量トランスデューサー18の駆動周波数(共振周波数)よりも十分に低くなるように、帰還キャパシターCB1、CB2の容量値等が設定される。
差動増幅回路70は、第1のアンプAMC1と第2のアンプAMC2を含む。第1のアンプAMC1は、差動入力・シングルエンド出力のアンプである。第2のアンプAMC2も、差動入力・シングルエンド出力のアンプである。
第1のアンプAMC1は、第1の演算増幅器OPC1と第1〜第4の抵抗素子RC1〜RC4を有する。
第1の抵抗素子RC1は、第1のアンプAMC1の反転入力端子TM1(ノードNB1)と、第1の演算増幅器OPC1の反転入力端子(ノードNC3)との間に設けられる。第2の抵抗素子RC2は、第1の演算増幅器OPC1の反転入力端子と、第1の演算増幅器OPC1の出力端子(第1のアンプAMC1の出力端子。ノードNC1)との間に設けられる。即ち、第1、第2の抵抗素子RC1、RC2は、第1のアンプAMC1の反転入力端子TM1と第1の演算増幅器OPC1の出力端子(NC1)との間に直列接続される。第1のアンプAMC1の反転入力端子TM1(−)には、前段のQ/V変換回路62からの信号QB1が入力される。
第3の抵抗素子R3は、第1のアンプAMC1の非反転入力端子TP1(ノードNB2)と、第1の演算増幅器OPC1の非反転入力端子(ノードNC4)との間に設けられる。第4の抵抗素子RC4は、第1の演算増幅器OPC1の非反転入力端子(NC4)と、アナログコモン電圧VCMのノードNC7との間に設けられる。即ち、第3、第4の抵抗素子RC3、RC4は、第1のアンプAMC1の非反転入力端子TP1とノードNC7との間に直列接続される。第1のアンプAMC1の非反転入力端子TP1(+)には、前段のQ/V変換回路64からの信号QB2が入力される。
第2のアンプAMC2は、第2の演算増幅器OPC2と第5〜第8の抵抗素子RC5〜RC8を有する。
第5の抵抗素子RC5は、第2のアンプAMC2の反転入力端子TM2(ノードNB2)と、第2の演算増幅器OPC2の反転入力端子(ノードNC5)との間に設けられる。第6の抵抗素子RC6は、第2の演算増幅器OPC2の反転入力端子(NC5)と、第2の演算増幅器OPC2の出力端子(第2のアンプAMC2の出力端子。ノードNC2)との間に設けられる。即ち、第5、第6の抵抗素子RC5、RC6は、第2のアンプAMC2の反転入力端子TM2と第2の演算増幅器OPC2の出力端子(NC2)との間に直列接続される。第2のアンプAMC2の反転入力端子TM2(−)には、前段のQ/V変換回路64からの信号QB2が入力される。
第7の抵抗素子R7は、第2のアンプAMC2の非反転入力端子TP2(ノードNB1)と、第2の演算増幅器OPC2の非反転入力端子(ノードNC6)との間に設けられる。第8の抵抗素子RC8は、第2の演算増幅器OPC2の非反転入力端子(NC6)と、アナログコモン電圧VCMのノードNC7との間に設けられる。即ち、第7、第8の抵抗素子RC7、RC8は、第2のアンプAMC2の非反転入力端子TP2とノードNC7との間に直列接続される。第2のアンプAMC2の非反転入力端子TP2には、前段のQ/V変換回路62からの信号QB1が入力される。
このように図9の差動増幅回路70は、2つの差動入力・シングルエンド出力のアンプにより構成される。即ち、差動増幅回路70は、差動信号を構成する信号QB1、QB2のうち信号QB1が反転入力端子TM1(−)に入力され、信号QB2が非反転入力端子TP1(+)に入力される差動入力・シングルエンド出力の第1のアンプAMC1と、信号QB1が非反転入力端子TP2(+)に入力され、信号QB2が反転入力端子TM2(−)に入力される差動入力・シングルエンド出力の第2のアンプAMC2とにより構成される。
このような構成にすることで、差動増幅回路70からは、アナログコモン電圧VCM(アナロググランド)を基準として正極側又は負極側に電圧が変化する差動の信号QC1、QC2が出力されるようになる。例えば信号QC1が、アナログコモン電圧VCMに対して正極性の電圧である場合に、信号QC2は、VCMに対して負極性の電圧となる。信号QC1が、VCMに対して負極性の電圧である場合に、信号QC2は、VCMに対して正極性の電圧となる。
例えば抵抗素子RC1、RC3、RC5、RC7の抵抗値をR1とし、抵抗素子RC2、RC4、RC6、RC8の抵抗値をR2とし、差動増幅回路70の差動増幅のゲインをGCとすると、GC/2=R2/R1の関係が成り立つ。そして差動増幅回路70は、信号QB1、QB2が入力された場合に、下記の式に示すような信号QC1、QC2を出力する。
QC1=VCM−(GC/2)×(QB1−QB2)
QC2=VCM+(GC/2)×(QB1−QB2)
QC1−QC2=−GC×(QB1−QB2)
即ち、差動増幅回路70は、差動成分(QB1−QB2)がゲインGC倍され、且つ、アナログコモン電圧VCMを基準に極性が反転した差動の信号QC1、QC2を出力する。なお、通常タイプの差動入力・差動出力の全差動型アンプにより、差動増幅回路70を構成してもよい。
図9では、差動増幅回路70の後段側にゲイン調整アンプ76が設けられている。ゲイン調整アンプ76は、差動の信号QC1、QC2が入力され、これらの信号を調整可能なゲインで増幅して、差動の信号QD1、QD2を出力する。
ゲイン調整アンプ76は、第1、第2の演算増幅器OPD1、OPD2と第1〜第4の抵抗素子RD1〜RD4を含む。
第1の演算増幅器OPD1は、差動信号を構成する信号QC1、QC2(第1、第2の信号)のうち信号QC1が、非反転入力端子(第1の入力端子)に入力される。第2の演算増幅器OPD2は、信号QC1、QC2のうち信号QC2が、非反転入力端子(第1の入力端子)に入力される。
第1の抵抗素子RD1は、第1のノードND5と、第1の演算増幅器OPD1の反転入力端子(第2の入力端子、ノードND3)との間に設けられる。第2の抵抗素子RD2は、第1の演算増幅器OPD1の反転入力端子(ND3)と、第1の演算増幅器OPD1の出力端子(ノードND1)との間に設けられる。
これらの第1、第2の抵抗素子RD1、RD2は、第1のノードND5の電圧(VA)と、第1の演算増幅器OPD1の出力端子の電圧(出力信号QD1の電圧)を電圧分割し、電圧分割により得られた電圧VD1に、第1の演算増幅器OPD1の反転入力端子を設定する第1の電圧分割回路として機能する。
第3の抵抗素子RD3は、第1のノードND5と、第2の演算増幅器OPD2の反転入力端子(第2の入力端子。ノードND4)との間に設けられる。第4の抵抗素子RD4は、第2の演算増幅器OPD2の反転入力端子(ND4)と、第2の演算増幅器OPD2の出力端子(ノードND2)との間に設けられる。
これらの第3、第4の抵抗素子RD3、RD4は、第1のノードND5の電圧(VA)と、第2の演算増幅器OPD2の出力端子の電圧(出力信号QD2の電圧)を電圧分割し、電圧分割により得られた電圧VD2に、第2の演算増幅器OPD2の反転入力端子を設定する第2の電圧分割回路として機能する。
このように、ゲイン調整アンプ76は、第1の演算増幅器OPD1及び第1、第2の抵抗素子RD1、RD2を有する第1のアンプAMD1と、第2の演算増幅器OPD2及び第3、第4の抵抗素子RD3、RD4を有する第2のアンプAMD2とにより構成される。そして第1のアンプAMD1の抵抗素子RD1の一端と、第2のアンプAMD2の抵抗素子RD3の一端とが、ノードND5に共通接続される。このようにして、これらの第1のアンプAMD1と第2のアンプAMD2により、計測アンプ(instrumentation amplifier)が構成されることになる。
そして、このゲイン調整アンプ76は、差動の信号QC1、QC2が入力され、差動の信号QD1、QD2をノードND1、ND2に出力する。
また、RD1〜RD4は抵抗値が可変の抵抗素子になっており、これらの抵抗素子の抵抗値を調整することで、ゲイン調整アンプ76におけるゲインGDが調整される。例えば抵抗素子RD1、RD3の抵抗値をR1とし、抵抗素子RD2、RD4の抵抗値をR2とし、基準抵抗値をRとすると、ゲインGDに設定するための抵抗値R1、R2は、R1=R/GD、R2=R×(1−1/GD)と表すことができる。そしてゲイン調整アンプ76は、信号QC1、QC2が入力されると、下記の式に示すような信号QD1、QD2を出力する。
QD1=VA+(GD/2)×(QC1−QC2)
QD2=VA−(GD/2)×(QC1−QC2)
QD1−QD2=GD×(QC1−QC2)
ここで、VAはノードND5の電圧である。VAは、信号QD1、QD2の電圧を、抵抗素子RD1及びRD2と、抵抗素子RD3及びRD4とで、電圧分割した電圧であり、信号QD1、QD2の電圧の中点電圧となる。このため、VA=(QD1+QD2)/2の関係が成り立つ。そして信号QC1、QC2が、アナログコモン電圧VCMを基準(中心電圧)とした差動信号であり、VCM=(QC1+QC2)/2の関係が成り立つ場合には、VA=VCMの関係が成り立つ。
なお差動増幅回路70にゲイン調整の機能を設けることなどにより、ゲイン調整アンプ76の構成を省略してもよい。
また差動増幅回路70の故障検出は、例えば差動増幅回路70の出力信号QC1、QC2の電圧を監視することで実現できる。例えば出力信号QC1の第1の電圧と出力信号QC2の第2の電圧とに基づく監視電圧(例えば第1の電圧と第2の電圧の中点電圧)が、判定電圧範囲内(高電位側閾値電圧と低電位側閾値電圧の間の範囲)にあるか否かを判定することで、差動増幅回路70の個別の故障を検出し、常時の故障検出を実現できるようになる。
またゲイン調整アンプ76の故障検出は、例えばアンプAMD1、AMD2により構成される計装アンプのノードND5の電圧VAを監視電圧として監視することで実現できる。例えば監視電圧VAが、判定電圧範囲内にあるか否かを判定することで、ゲイン調整アンプ76の個別の故障を検出し、常時の故障検出を実現できるようになる。
同期検波回路81は、検波回路82と検波回路84を含み、差動の同期検波を行う。同期検波回路81の構成・動作は図5(A)、図5(B)で説明した通りである。例えば図5(A)、図5(B)のスイッチ素子SD1〜SD4が図9のスイッチ素子SF1〜SF4に相当し、スイッチ素子SD5〜SD8がスイッチ素子SG1〜SG4に相当する。
例えば振動片10に恣意的に振動漏れ信号を発生させ、検波回路84(スイッチングミキサー)がこの振動漏れ信号を検波することで、検出回路60の故障診断を行う。
例えば図7において、駆動腕4、5と駆動腕6、7とが屈曲振動を行うときの両者の振動エネルギーのバランスがとれていれば、振動片10に角速度がかかっていない状態においては、検出腕8、9は屈曲振動を行わない。一方、両者の振動エネルギーのバランスが崩れていると、振動片10に角速度がかかっていない状態においても、検出腕8、9の屈曲振動が発生する。この屈曲振動は漏れ振動と呼ばれ、コリオリ力に基づく振動と同様に矢印Cの方向の屈曲振動である。コリオリ力に基づく振動(検出信号IQ1、IQ2)は、駆動信号DQに対して位相が90度ずれた振動になるが、漏れ振動は駆動信号DQと同位相の振動になる。なお、Q/V変換回路62、64において位相が90度ずれるため、同期検波の段階では、漏れ振動に基づく信号は同期信号SYCに対して位相が90度ずれた信号になる。
そして本実施形態では、駆動腕4、5と駆動腕6、7の振動エネルギーのバランスがわずかに崩れるようにして、所望レベルの振動漏れ成分を積極的に発生させる。例えばレーザー加工等により、駆動腕4、5の先端の錘部と、駆動腕6、7の先端の錘部とで、質量に差をつけることで、振動エネルギーのバランスを崩し、恣意的な振動漏れを発生させる。この振動漏れのレベルは、既知の値となるため、検波回路84により、この振動漏れの信号を検波することで、検出回路60の故障診断が可能になる。
検波回路82には、前段のゲイン調整アンプ76からの信号QD1が、第1の入力ノードND1に入力され、信号QD2が、第2の入力ノードND2に入力される。そして駆動回路30からの同期信号SYC(例えばCK0)により差動の同期検波を行って、差動の信号QF1、QF2を第1、第2の出力ノードNF1、NF2に出力する。
これにより、ゲイン調整アンプ76からの差動の信号QD1、QD2が、差動信号の状態で同期検波されて、同期検波後の信号が差動の信号QF1、QF2として出力されるようになる。この検波回路82により、前段の回路(Q/V変換回路、差動増幅回路、ゲイン調整アンプ)が発生したノイズ(1/fノイズ)などの不要信号が高周波帯域に周波数変換される。また、コリオリ力に応じた信号である所望信号が直流信号に落とし込まれる。そして、検波回路82により高周波帯域に周波数変換された1/fノイズ等の不要信号は、後段に設けられたフィルター部90により除去される。このフィルター部90は、例えばパッシブ素子で構成されるパッシブフィルターである。即ち、フィルター部90としては、演算増幅器を用いずに、抵抗素子やキャパシターなどのパッシブ素子で構成されるパッシブフィルターを採用できる。
一方、検波回路84(スイッチングミキサー)には、前段のゲイン調整アンプ76からの信号QD1が、第1の入力ノードND1に入力され、信号QD2が、第2の入力ノードND2に入力される。そして差動の信号QG1、QG2を第1、第2の出力ノードNG1、NG2に出力する。
振動片10において恣意的に発生させる振動漏れの信号(広義には不要信号)は、同期信号SYC(所望信号)とは位相が90度異なる。従って、検波回路84が、同期信号SYCであるクロック信号CK0と位相が90度異なるクロック信号CK90に基づき、信号QD1、QD2を同期検波することで、恣意的に混入された振動漏れ信号を抽出できる。この場合の振動漏れ信号のレベルは既知となっているため、検波回路84による検出結果をA/D変換して、期待値と比較することで、期待する振動漏れ信号が信号QD1、QD2に混入されていることを検出できる。そして、期待する振動漏れ信号が検出された場合には、検出回路60は正常に動作している判定できる。この検波回路84を用いた診断処理は、図12に示す常時診断の期間において実行される。
なお、以上では、検波回路82が角速度信号等の物理量信号を検波し、検波回路84が不要信号を検波する場合を例にとり説明したが、図3等で説明したように、本実施形態では、動作モードの切り替えにより、物理量信号、不要信号を検波する回路が入れ替えられる。
図10は、VCMを生成するアナログコモン電圧生成回路の構成例である。このアナログコモン電圧生成回路は、演算増幅器OPH、抵抗素子RH1、RH2、RH3、キャパシターCH1、CH2を有する。抵抗素子RH1、RH2は電源VDD、VSSとの間に直列接続され、分割電圧をノードNH3に生成する。分割電圧は例えばVDDとVSSの間の中点電圧である。この分割電圧は、抵抗素子RH3、キャパシターCH2により構成されるノイズ低減用のローパスフィルターを介して、演算増幅器OPHの非反転入力端子のノードNH2に供給される。演算増幅器OPHは、いわゆるボルテージフォロワー接続になっており、分割電圧に対応する電圧をアナログコモン電圧VCMとして、ノードNH1に出力する。キャパシターCH1は電位安定化用のキャパシターである。
図11は診断回路150による自己診断について説明するための信号波形図である。図11では、電圧振幅がVBである診断用信号SFDが、図9の第1のノードN1に入力される。すると、Q/V変換回路62は、電圧振幅がVB1である信号QB1を出力し、Q/V変換回路64は、電圧振幅がVB2である信号QB2を出力する。なお図11では、診断用信号SFDは矩形波となっているが、正弦波等の周期信号であってもよい。
例えば、帰還キャパシターCB1とCB2の容量値は等しく、キャパシターC2の容量値はキャパシターC1の容量値よりも大きい。キャパシターCB1、CB2の容量値は例えば0.5pF〜1.5pF程度であり、キャパシターC1の容量値Cは例えば250fF〜750fF程度である。キャパシターC1とC2の容量値の差ΔCは例えば50fF〜150fF程度である。なお、C1、C2、CB1、CB2は例えばポリシリコンによるキャパシター(ポリ2層キャパシター)やMIM(Metal-Insulator-Metal)によるキャパシターなどにより実現できる。
このように、キャパシターC1に比べて、キャパシターC2の方が容量値が大きい場合には、図11に示すように、Q/V変換回路62、64は、VB1<VB2の関係が成り立つ信号QB1、QB2を出力する。具体的には、Q/V変換回路62、64は反転アンプである。従って図11に示すように、診断用信号SFDが正極性である場合には、Q/V変換回路62、64は、アナログコモン電圧VCMを基準(中心)として負極性となり、且つ、電圧振幅についてVB1<VB2の関係が成り立つ信号QB1、QB2を出力する。
即ち、Q/V変換回路62、64の演算増幅器OPB1、OPB2による仮想接地(バーチャルショート)により、入力ノードNA1、NA2の電位は共にアナログコモン電圧VCMに設定される。そして、キャパシターC1に比べて、キャパシターC2の方が容量値が大きいため、電圧振幅がVBである診断用信号SFDがキャパシターC1、C2の他端に印加された場合に、キャパシターC1の蓄積電荷量よりもキャパシターC2の蓄積電荷量の方が大きくなる。そして、Q/V変換回路62、64の帰還キャパシターCB1、CB2の容量値は等しいため、信号QB1、QB2の電圧振幅については、VB1<VB2の関係が成り立つ。即ち、信号QB1の電圧振幅VB1は、キャパシターC1と帰還キャパシターCB1の容量比(C1/CB1)に応じた振幅に設定され、信号QB2の電圧振幅VB2は、キャパシターC2と帰還キャパシターCB2の容量比(C2/CB2)に応じた振幅に設定される。そして、キャパシターC1に比べてキャパシターC2の方が容量値が大きいため、VB1<VB2の関係が成り立つ。
差動増幅回路70は、信号QB1、QB2の差動成分を増幅する。従って、図11に示すように、信号QB1、QB2の差分がゲイン倍され且つ反転された信号が、差動の信号QC1、QC2として出力される。例えば差動増幅回路70の差動増幅のゲインをGCとした場合に、信号QC1と信号QC2との間の差分電圧はVDF=GC×(VB2−VB1)と表すことができる。
このように、キャパシターC1の他端側のノードN1に診断用信号SFDを入力することで、信号QC1、QC2に示すような診断用の所望信号(疑似所望信号)を検出回路60に供給できる。そして検出回路60がこの診断用の所望信号の検出動作を行い、その検出結果をモニターすることで、検出回路60が正常に動作している否かの診断(自己診断、故障診断)が可能になる。具体的には、図11の信号QC1、QC2の差分電圧VDFを検出することで、検出回路60の診断が可能になる。
例えば、キャパシターC1、C2、CB1、CB2の容量値や診断用信号SFDの電圧振幅は既知であるため、信号QC1、QC2の差分電圧VDFも既知となる。従って、差分電圧VDFに対応する検出回路60の検出結果が、期待値の範囲内であれば、検出回路60が正常に動作していると診断できる。具体的には、例えば同期検波回路81の同期検波により、同期信号SYCと位相が異なる不要信号(例えば90度位相がずれた不要信号)が除去される一方で、同期信号SYCと位相が同じ診断用の所望信号が抽出されるようになる。つまり、周波数スペクトルにおいてDC等の周波数帯域に診断用の所望信号の成分が現れるようになる。従って、この診断用の所望信号のDC成分の値(DC電圧値やDC電圧のA/D変換値)が期待値の範囲内であれば、検出回路60が正常に動作していると診断できる。
図12は本実施形態の回路装置の動作を説明する動作シーケンス図である。図12に示すように、回路装置に電源が投入されて、電源がオンになった後、回路装置が診断モードに設定されて、初期診断が行われる。即ち、検出回路60が正常に動作しているか否かを検証する診断が行われる。この初期診断(診断モード)時には、診断回路150のスイッチ素子SW1、SW2はオンになる一方で、スイッチ素子SW3、SW4はオフになる。これにより振動片10からの検出信号IQ1、IQ2の入力は電気的に遮断され、駆動回路30からの信号を電圧レベル変換した信号が、診断用信号SFDとして、キャパシターC1、C2の他端のノードN1に入力されるようになる。これにより、図11で説明したように、診断用の擬似的な所望信号を検出回路60に供給して、検出回路60の各回路が正常に動作しているか否かを診断できるようになる。
一方、このような初期診断が終了して、所望信号を検出する通常動作期間になると、スイッチ素子SW3、SW4はオンになる一方で、スイッチ素子SW1、SW2がオフになる。これにより振動片10からの検出信号IQ1、IQ2が検出回路60に入力されて、所望信号の検出処理が行われる。この際、スイッチ素子SW1、SW2がオフになることで、例えば駆動回路30からの信号に基づくノイズ等が、検出回路60の入力ノードNA1、NA2に伝達してしまうなどの事態を抑制できる。
このように図12では、電源投入後、通常動作期間の前において、診断モードに設定される。この診断モードの設定は、例えば回路装置の外部のコントローラー等が診断モード(初期診断)を開始するためのコマンドを発行し、このコマンドが回路装置のインタフェースを介して受け付けられることで実現される。或いは、電源投入後に、自動的に回路装置の動作モードを診断モードに設定するようにしてもよい。なお、通常動作の開始後に、一旦、通常動作を停止し、例えば回路装置の外部のコントローラーからのコマンドの発行等に基づいて、回路装置の診断処理を行ってもよい。
また図12に示すように、通常動作期間においては、検出回路60が正常に動作しているか否かを常時確認するための常時診断が行われている。
この常時診断においては、図1〜図5(B)で説明した同期検波回路81やフィルター部90の常時の故障検出が行われる。また図9の差動増幅回路70やゲイン調整アンプ76の常時の故障検出も行われる。例えば、制御部140が、この常時診断期間において図1〜図5(B)等で説明した動作モードの設定や故障判定処理を行うことで、常時の故障診断を実現する。
以上のように本実施形態では、同期検波による物理量信号(所望信号)の抽出処理を行いながら、これと並行して、検出回路60の故障診断を実行することができ、回路装置の実動作中の常時診断を実現できる。従って、経時変化による故障や性能劣化に対する信頼性を、大幅に向上することが可能になる。
6.移動体、電子機器
図13(A)に本実施形態の回路装置20を含む移動体の例を示す。本実施形態の回路装置20は、例えば、車、飛行機、バイク、自転車、或いは船舶等の種々の移動体に組み込むことができる。移動体は、例えばエンジンやモーター等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。図13(A)は移動体の具体例としての自動車206を概略的に示している。自動車206には、振動片10と回路装置20を有するジャイロセンサー510(センサー)が組み込まれている。ジャイロセンサー510は車体207の姿勢を検出することができる。ジャイロセンサー510の検出信号は車体姿勢制御装置208に供給される。車体姿勢制御装置208は例えば車体207の姿勢に応じてサスペンションの硬軟を制御したり個々の車輪209のブレーキを制御したりすることができる。その他、こういった姿勢制御は二足歩行ロボットや航空機、ヘリコプター等の各種の移動体において利用されることができる。姿勢制御の実現にあたってジャイロセンサー510は組み込まれることができる。
図13(B)、図13(C)に示すように、本実施形態の回路装置はデジタルスチルカメラや生体情報検出装置(ウェアラブル健康機器。例えば脈拍計、歩数計、活動量計等)などの種々の電子機器に適用できる。例えばデジタルスチルカメラにおいてジャイロセンサーや加速度センサーを用いた手ぶれ補正等を行うことができる。また生体情報検出装置において、ジャイロセンサーや加速度センサーを用いて、ユーザーの体動を検出したり、運動状態を検出できる。また図13(D)に示すように、本実施形態の回路装置はロボットの可動部(アーム、関節)や本体部にも適用できる。ロボットは、移動体(走行・歩行ロボット)、電子機器(非走行・非歩行ロボット)のいずれも想定できる。走行・歩行ロボットの場合には、例えば自律走行に本実施形態の回路装置を利用できる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(物理量検出装置、物理量トランスデューサー等)と共に記載された用語(ジャイロセンサー、振動片等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、回路装置や物理量検出装置や電子機器や移動体の構成、振動片の構造等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。