JP6489029B2 - リアクトル - Google Patents
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前記充填材は、樹脂と磁性粉末とを含み、比透磁率が1.5以上5以下である。
前記磁性コアは、前記充填材よりも比透磁率が大きい複数のコア片と、前記コア片間に前記充填材の一部が介在されて形成されたギャップ部とを備える。
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るリアクトルは、巻回部を有するコイルと、上記巻回部内外に配置されて、閉磁路を形成する磁性コアと、上記コイルと上記磁性コアとを有する組合体を収納するケースと、上記ケース内に充填され、上記組合体の少なくとも一部を埋設する充填材とを備える。
上記充填材は、樹脂と磁性粉末とを含み、比透磁率が1.5以上5以下である。
上記磁性コアは、上記充填材よりも比透磁率が大きい複数のコア片と、上記コア片間に上記充填材の一部が介在されて形成されたギャップ部とを備える。
(a)比透磁率が十分に高い磁性粉末を含むため、ギャップ部を通過する磁束をより多くできる。
(b)非磁性粉末を特定の範囲で含むため、充填材中に磁性粉末が均一的に分散して存在し易く、ギャップ部に磁束が均一的に通過できる。
(α)製造過程では、ギャップ形成部を利用して、介在部材に対してコア片を容易に位置決めできる上に、コア片間の間隔をギャップ形成部の厚さに対応した大きさに保持できる。そのため、例えば、複数のコア片と介在部材とを組み付けた中間品を一体物として取り扱えて、コイルとの組み付けなどの作業を行い易く、作業性に優れる。
(β)製造過程では、介在部材を利用して、コイルに対して磁性コアを容易に位置決めできる上に、巻回部と巻回部内のコア片間の間隔を隔離部の厚さに対応した大きさに保持できる。そのため、例えば、コイルと、磁性コアと、介在部材とを組み付けた中間品を一体物として取り扱えて、ケースへの収納などの作業を行い易く、作業性に優れる。
(γ)中間品(β)をケースに収納後、未固化で流動状態にある充填材をケースに流し込むと、巻回部とコア片間に形成される空間を流路に利用して、ギャップ形成部に支持されてコア片間に形成される空間に上記充填材を容易に流入できる。充填後、適宜固化することで、所定の位置に所定の大きさのギャップ部を容易にかつ精度よく形成できる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
図1〜図5を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。図2は、リアクトル1Aを、コイル2に備える巻回部2aの軸に平行な平面で切断した縦断面図であり、図3は、リアクトル1Aを、コイル2に備える一対の巻回部2a,2bの軸に直交し、巻回部2a,2bの並列方向に平行な平面で切断した横断面図である。
実施形態1のリアクトル1Aは、図1に示すように、一対の巻回部2a,2bを有するコイル2と、巻回部2a,2b内外に配置されて、開磁路を形成する磁性コア3(図2も参照)と、コイル2と磁性コア3とを有する組合体10を収納する箱状のケース4と、ケース4内に充填され、組合体10の少なくとも一部を埋設する充填材6とを備える。リアクトル1Aは、ケース4がコンバータケースなどの設置対象(図示せず)に取り付けられて使用される。図1〜図3では、ケース4の底部40が下側、ケース4の開口部が上側を向いた状態を設置状態として示す。底部40及び開口部が左右に向いた設置状態もある。
コイル2は、図4、図5に示すように1本の連続する巻線2wが螺旋状に巻回された一対の巻回部2a,2bと、巻線2wの一部から形成されて両巻回部2a,2bを接続する連結部2rとを備える。この例の各巻回部2a,2bは、角部を丸めた長方形状の端面形状を有する筒状体である。各巻回部2a,2bは、互いの軸が平行するように並列(横並び)に配置される。この例の巻線2wは、平角線の導体(銅など)と、この導体の外周を覆う絶縁被覆(ポリアミドイミドなど)とを備える被覆平角線(いわゆるエナメル線)であり、巻回部2a,2bはエッジワイズコイルである。
この例の磁性コア3は、上述のように複数の内コア片31mと、一対の外コア片32m,32mと、複数のギャップ部36とを備える。図5に示すように内コア片31m及び外コア片32mの突出部は、巻回部2a,2bの内周形状に対応した角部を丸めた直方体状であり、両者の端面の大きさ及び形状は実質的に等しい。磁性コア3は、U字の開口部が向かい合うように配置された外コア片32m,32m間に内コア片31mとギャップ部36とが交互に配置され(図2)、環状に組み付けられることで、コイル2を励磁したときに閉磁路を形成する。
ケース4は、図1,図4に示すようにコイル2と磁性コア3とを備える組合体10を収納する容器である。ケース4は、代表的には、組合体10を載置する内底面40iを備える底部40と、底部40から立設されて組合体10の周囲を囲む側壁部41とを備え、底部40に対向する側(図1〜図4では上側)が開口した箱体が挙げられる。ケース4がコンバータケースに一体に設けられることもある。
主に図2,図3,図5を参照して介在部材5を説明する。
・概要
介在部材5,5は、巻回部2a,2bの内面と磁性コア3における巻回部2a,2b内に配置される部分(ここでは特に内コア片31m)との間にそれぞれ介在される(図2,図3)。各介在部材5,5は、代表的には非磁性の絶縁材料によって構成されて、コイル2と磁性コア3間の絶縁材として機能する。また、各介在部材5,5は、後述するように所定の大きさ、形状に形成されて、巻回部2a,2bに対する磁性コア3(ここでは特に内コア片31m)の位置決め部材として機能する。更に、この例の介在部材5は、磁性コア3のうち、巻回部2a,2b内に配置される複数のコア片(ここでは内コア片31m、外コア片32mの突出部)間の間隔を確保するギャップ形成部51と、巻回部2a,2bの内面と磁性コア3の外周面間の間隔を確保する離隔部52とを備え、ギャップ部36の形成部材としても機能する。各巻回部2a,2b内にそれぞれ配置される介在部材5,5は、同一形状であるため、以下の説明では、主として、巻回部2a内に配置される一方の介在部材5を説明する。
この例の介在部材5は、図5に示すように巻回部2aの軸方向に沿った分割面を有する一対の分割材5A,5Bを備える。各分割材5A,5Bは同一形状であり、断面]状の部材である。各分割材5A,5Bは、直方体状の内コア片31mに対して、対向する二面(図5では上下面)を挟むように配置されると、分割面同士が接触せず、分割面間が離間された状態である。この状態では、各内コア片31m等の周方向の一部(図5では上面及び下面、並びに各面に続く二つの角部近傍)が分割材5A,5Bに覆われ、他部(図5では上記角部近傍を除く側面)が分割材5A,5Bに覆われず露出され、充填材6に覆われる(図3)。各分割材5A,5Bの長さは、巻回部2aの軸方向長さ、及び磁性コア3のうち、巻回部2a内に収納される部分の長さに実質的に等しい。詳しくは、各分割材5A,5Bの長さは、分割材5A,5Bに挟まれる複数の内コア片31mの合計長さと、二つの外コア片32mの突出部の合計長さと、複数のギャップ部36の合計長さとに実質的に等しい(図2)。
分割材5A,5Bは、同一形状であるため、以下の説明では、主として、分割材5Bを説明する。
この例の分割材5Bは、図5に示すように内コア片31m及び外コア片32mの突出部の下面に沿って配置されるベース板部520と、ベース板部520から立設されて、下面に連なる二つの角部から側面に亘って配置される一対の連結脚部521,521とを有する。更に分割材5Bは、ベース板部520と各連結脚部521,521との角部に接して設けられ、ベース板部520の幅方向に対向配置される一対の棒状部材を複数対備える。複数対の棒状部材は、ベース板部520の長手方向に所定の間隔をあけて並列される。これらの複数の棒状部材をそれぞれ、ギャップ形成部51とする。また、ベース板部520及び連結脚部521,521を離隔部52とする。その他、この例の分割材5Bは、ベース板部520の長手方向に所定の間隔をあけて設けられた複数の貫通孔53を備える。
離間して配置される分割材5A,5B間にできる隙間は、製造過程において未固化で流動状態にある充填材6をコイル2の巻回部2aと内コア片31m等間に流入する流路として機能する。また、ベース板部520に備える各貫通孔53は、製造過程で、上記流動状態の充填材6をコア片間等に流入する流路として機能する。製造過程でコア片31m,32mと介在部材5とを組み付けた状態において各貫通孔53がコア片間等の隙間に重複するように設けられている。即ち、貫通孔53とコア片間等の隙間とが連通しており、上記流動状態の充填材6を容易に充填できる。貫通孔53の個数、形状、離間距離などは適宜選択できる。図5は、複数の矩形状の貫通孔53が等間隔に配置された場合を例示する。
介在部材5を構成する非磁性の絶縁材料として、各種の樹脂が挙げられる。例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6、ナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。又は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。介在部材5は、射出成形などの公知の成形方法によって製造できる。
[変形例1]
離隔部52に貫通孔53に代えて、又は貫通孔53に加えて溝を備えることができる。離隔部52におけるコア側面及びコイル側面の少なくとも一方において、ベース板部520の長手方向に連続する溝、一方の連結脚部521からベース板部520を経て他方の連結脚部521に連続する溝などが挙げられる。このような連続する溝を備えることで、製造過程において未固化で流動状態にある充填材6をコア片間等に導入し易い。
一対の分割材5A,5Bを内コア片31mに固定する固定材を設けることができる。固定材を、例えば、粘着テープなどの接合材、輪ゴムや結束バンドなどの結束具などとすれば、容易に配置でき、作業性に優れる。又は、一対の分割材5A,5Bが互いに係合する係合部を備えることができる。
一対の分割材5A,5Bが内コア片31m等の実質的に全周を覆うものとすることができる。この場合も貫通孔53や溝を備えることで、上述の流動状態の充填材6をコア片間等に導入し易い。
一方の分割材の形状と、他方の分割材の形状とを異ならせることができる。例えば、貫通孔53の個数や大きさ、形状を異ならせたり、ギャップ形成部51の配置位置を異ならせたりするなどが挙げられる。前者の場合、例えば、ケース4の底部40側に配置される分割材5Bの貫通孔53を大きくしたり、個数を多くしたりすると、上述の流動状態の充填材6をより効率的に流入できる。後者の場合、例えば、内コア片31mのギャップ端面における一組の対角位置の角部に対して、一方の分割材が一つの角部のみを覆い、他方の分割材が残りの角部を覆うようにギャップ形成部51を備えることが挙げられる。
充填材6は、図1〜図3に示すようにケース4内に充填されて、種々の機能を奏する。代表的には、組合体10とケース4との一体化によるリアクトル1Aの強度や剛性の向上、組合体10の機械的保護、外部環境からの保護(防食など)、振動や騒音の低減、放熱性の向上などが挙げられる。この例のように巻線2wの端部を除く組合体10の全体が充填材6に埋設される場合には、上述の効果を更に得易い。
具体的には、充填材6は、図1、図2の破線円内に拡大して模式的に示すように樹脂6rと磁性粉末6mとを含み、比透磁率が1.5以上5以下であり、一般に比透磁率が1以下である非磁性材料とは異なる。充填材6は、更に非磁性粉末6cを含むことができる。
充填材6は、樹脂6rを含むことで以下の効果を奏する。
1.樹脂6rが非磁性材料であるため、充填材6の比透磁率が過大になることを防止できる。
2.製造過程において未固化の充填材6に流動性を持たせることができ、組合体10とケース4間、コイル2と磁性コア3間、コア片間等に充填できる。
3.樹脂6rが一般に絶縁材料であるため、絶縁性を高められる(特にコイル2と金属製のケース4間の絶縁など)。
4.一般に金属よりも耐食性に優れるため、耐食性を高められる(磁性コア3の防食など)。
充填材6に含む磁性粉末6mを構成する磁性材料は、例えば、上述したコア片31m,32mを構成する軟磁性材料が挙げられる。漏れ磁束の低減という目的からは、比透磁率が高い磁性材料から構成される磁性粉末6mを含むことが好ましく、全ての磁性粉末6mの比透磁率が高いことが好ましい。例えば、磁性粉末6mの比透磁率は1000以上であることが挙げられる。このような高比透磁率の磁性材料として、純鉄(99.8%Feの場合に5,000程度)、珪素鋼(4000程度)、などが挙げられる。充填材6は、単一種の磁性粉末6mを含む形態、異なる複数種の磁性粉末6mを含む形態のいずれでもよい。後者の形態では、比重が異なる粉末を含み得る。この比重差を利用して、磁性粉末6mが均一的に分散された充填材6とすることができる。その他、磁性粉末6mとして、軟磁性金属材料の粉末粒子の表面が絶縁被覆で覆われた被覆粉末を含むことができる。この被覆粉末は絶縁性に優れる上に金属成分によって熱伝導性にも優れる。
充填材6に含む非磁性粉末6cは、磁性粉末6mとは構成材料が異なるため、通常、比重も異なる。この比重差を利用して、非磁性粉末6cは、樹脂6r中に磁性粉末6mを均一的に分散させる機能を有する。例えば、磁性粉末6mの比重が非磁性粉末6cの比重よりも大きい場合、製造過程では、高比重である磁性粉末6mが沈降し易い。比重が小さい非磁性粉末6cを含むことで、この沈降を抑制して、磁性粉末6mを樹脂6r中に均一的に分散できる。その他、非磁性粉末6cを構成する非磁性材料が熱伝導性に優れる材料であれば放熱性の向上、電気絶縁性に優れる材料であれば、コイル2とケース4間の絶縁性、コイル2と磁性コア3間の絶縁性などの向上を期待できる。
充填材6は、組合体10の外周を実質的に埋設する埋設部と、この埋設部に連続し、コイル2の巻回部2a,2bと磁性コア3間を経て、内コア片31m,31m間、内コア片31m、外コア片32mの突出部間に介在する少なくとも一つのギャップ部36とを備える。この例の埋設部は、主として組合体10とケース4間に充填されて組合体10の外周を囲む部分と、組合体10におけるケース4の開口側を覆う部分と、巻回部2a,2bの内面と磁性コア3の外周面間に充填される部分とを含む。
ギャップ部36は、比透磁率が1.5〜5である充填材6の一部で構成される。コア片31m,32mよりも遥かに小さい比透磁率であるものの、ギャップ部36に磁束をある程度集中して通過させられて、コア片間等からコイル2の巻回部2a,2bに及ぶような漏れ磁束を低減できる。この例のギャップ部36は、図3に示すように、内コア片31mのギャップ端面において介在部材5のギャップ形成部51の面S51による被覆部分を除く領域を覆うと共に、ギャップ端面の周縁から突出して、巻回部2a,2bの内面に接する部分を有する。詳しくは、ギャップ部36は、内コア片31m等の側面における両分割材5A,5Bから露出された部分から巻回部2a,2bの内面に至る部分、内コア片31m等の上面及び下面と両分割材5A,5Bの貫通孔53とに囲まれる部分に存在する充填材6を含む。従って、隣り合う一方の内コア片31mからの磁束は、ギャップ部36におけるギャップ端面の周縁から突出する部分を経て、隣り合う他方の内コア片31mを通過する。その結果、上記磁束がコイル2に及ぶことによる銅損などの損失を低減できる。
その他、この例のリアクトル1Aは、コイル2の巻回部2a,2bと、ケース4の内底面40i間に絶縁層7を備える(図2,図3)。絶縁層7は、コイル2と金属製のケース4の底部40間の絶縁性を高めるものであり、絶縁材料から構成される。絶縁層7は、熱伝導率が2W/m・K以上の絶縁材料を含み、熱伝導性にも優れると、コイル2の熱を金属製のケース4に伝え易く、放熱性に優れるリアクトル1Aとすることができる。所望の絶縁特性、放熱性を有するように絶縁層7の材質、厚さ(例えば、30μm以上2mm以下、更に1mm以下、0.5mm以下、0.1mm以下)、形成領域(コイル2における底部40側の面(下面)の大きさ以上、内底面40iの大きさ以下)などを選択するとよい。この例の絶縁層7の大きさは、コイル2における底部40側の面(下面)と同等程度である。後述する実施形態2に備える絶縁層7は、組合体10における底部40側の面(下面)に対応する大きさである。
リアクトル1Aは、例えば、組合体10の作製工程、ケース4への収納工程、充填材6の充填工程、という工程を経て製造できる。以下、各工程を簡単に説明する。組立手順は一例である。
この工程では、コイル2と複数のコア片31m,32mと介在部材5とを組み付けて組合体10を作製する。例えば、図5に示すように、一対の分割材5A,5Bによって、複数の内コア片31mを挟んだ中間品を作製する。隣り合う内コア片31m,31m間にギャップ形成部51を介在させることで、介在部材5に対して各内コア片31mを容易に位置決めでき、中間品を容易に組み立てられる。また、介在部材5によって、内コア片31m,31m間にギャップ形成部51の厚さに応じた空間を有する状態を維持できる。従って、中間品を上述の位置決めがなされた一体物として取り扱え得る。
この工程では、上述の組合体10をケース4内に収納する。例えば、図4に示すように、ケース4に絶縁層7、組合体10を順に収納し、ケース4の内底面40iと組合体10における底部40側の面間に絶縁層7を介在させる。更に、後述する固定部材を用いて、組合体10をケース4に固定することもできる。組合体10は、介在部材5によって位置決めされた状態をケース4内でも維持される。
この工程では、組合体10が収納されたケース4内に未固化で流動状態にある充填材6を充填する。充填後に適宜固化する。未固化の充填材6は、上述のように樹脂6rを含むことで流動性を有しており、コイル2とケース4間の隙間、コイル2と磁性コア3間の隙間、特に介在部材5の貫通孔53、介在部材5の分割材5A,5B間の隙間、内コア片31m,31m間の隙間、内コア片31m,外コア片32m間の隙間に流入する。流入した未固化の充填材6は、組合体10の全体を埋設すると共に、巻回部2a,2bの内周面と、貫通孔53を形成する内壁面と、コア片間等とでつくられるギャップ形成空間に充填される。固化後、埋設部と、上述のギャップ形成空間に形成されたギャップ部36とが連続した充填材6を形成できる。
実施形態1のリアクトル1Aは、以下の理由により、漏れ磁束を低減できる上に、生産性にも優れる。
内コア片31m,31m間、内コア片31m、外コア片32m間に磁性粉末6mを含み、特定の比透磁率を有するギャップ部36を備える。そのため、隣り合う一方のコア片から他方のコア片への磁束は、ギャップ部36中の磁性粉末6mにある程度集中して通過できるからである。
ギャップ部36が充填材6の一部から構成されるため、コア片とは独立したギャップ材を省略できる。また、コア片同士がギャップ部36(充填材6)によって一体化されるため、上記ギャップ材を接着剤で接合する工程なども不要である。更に、未固化で流動状態にある充填材6をケース4内に充填・固化することで、ギャップ部36を容易に形成できる。上記充填材6の充填・固化によって、ギャップ部36の形成工程と、磁性コア3の一体化工程と、組合体10の埋設工程とが同時に行えて、工程数をより少なくできる上に、リアクトル1Aも得られる。このように工程数が少ない上に、ギャップ部36を容易に形成できるからである。
この例では、製造過程で、ギャップ形成部51及び離隔部52を備える介在部材5によって、介在部材5に対する各内コア片31mの位置決め、コイル2に対する磁性コア3の位置決めを精度よく、かつ容易に行える。また、介在部材5によって、この位置決め状態を維持して、中間品、組合体10(ギャップ部36が無いもの)などを取り扱い易い。そのため、コイル2と磁性コア3との組み付けや、ケース4への組合体10の収納などの作業性に優れるからである。
(主要部材の変形例など、その他の構成部材)
・コイル
巻回部が一つのみであるコイル2を備えることができる。この場合、磁性コア3は、EEコアやERコア、EIコアなどと呼ばれる公知の形状とすることが挙げられる。
巻線2wとして、丸線の導体と絶縁被覆とを備える被覆丸線などを利用できる。
巻回部を円筒状(端面円環状)などとすることができる。
図2では、外コア片32mの基部におけるケース4の底部40側の面(下面)が、内コア片31m等における底部40側の面(下面)よりも突出し、コイル2の巻回部2a,2bにおける底部40側の面(下面)と実質的に面一である場合を例示する。この場合、組合体10は、内底面40iにより安定して保持され、コイル2に加えて、外コア片32mからもケース4に熱を伝えられて、放熱性により優れる。
底部40と側壁部41とが独立した部材であり、組み合わせて一体となる形態とすることができる。例えば、組合体10を載置する底部40を金属板とし、組合体10を囲む側壁部41を樹脂などの絶縁材料の成形品とすることができる。
・・固定部材
ケース4内に組合体10を固定する固定部材(図示せず)を備えることができる。固定部材は、帯状材が挙げられる。磁性コア3のうち、コイル2から突出する外コア片32mの基部の一面に帯状材を配置して押え付け、ボルトなどの締結部材(図示せず)によってケース4に固定することが挙げられる。帯状材の構成材料は、鋼などの高強度な材料が挙げられる。
温度センサ、電流センサ、電圧センサ、磁束センサなどのリアクトル1Aの物理量を測定するセンサ(図示せず)を備えることができる。
図6,図7を参照して、実施形態2のリアクトル1Bを説明する。図7は、リアクトル1Bを、コイル2に備える巻回部2aの軸に平行な平面で切断した縦断面図である。
実施形態2のリアクトル1Bの基本的構成は実施形態1のリアクトル1Aと同様である。概略を述べると、リアクトル1Bは、図6に示すように、巻線2wが螺旋状に巻回された複数のターン2t(図7)から形成される巻回部2a,2bを有するコイル2と、巻回部2a,2b内外に配置されて、閉磁路を形成する磁性コア3と、コイル2と磁性コア3とを有する組合体10を収納するケース4と、ケース4内に充填される充填材6と、巻回部2a,2bと磁性コア3との間に介在される介在部材5とを備える。図7の左下方の破線円内に拡大して模式的に示すように、充填材6は、樹脂6rと磁性粉末6mと、適宜非磁性粉末6cとを含み、比透磁率が1.5以上5以下である。磁性コア3は、複数のコア片(内コア片31m、外コア片32m)と、これらコア片間等に充填材6の一部が介在されて形成されたギャップ部36とを備える(図7)。介在部材5は、ギャップ形成部51及び離隔部52と、貫通孔53とを備える。
実施形態2のリアクトル1Bは、ケース4の深さが比較的浅く、コイル2の巻回部2a,2bの一部がケース4の開口縁4eから露出すると共に、ケース4内の充填材6の表面60fからも露出する点、この露出部分における各ターン2t,2t間に充填材6の一部が介在されている点(図7の破線円内)が、実施形態1と異なる。即ち、リアクトル1Bは、巻回部2a,2bがケース4の開口縁4eから突出する露出部20を備える。充填材6は、ケース4の開口縁4e以下に位置する表面60fを有し、組合体10の一部を埋設する埋設部60と、埋設部60に連続し、露出部20における各ターン2t,2t間に介在するターン介在部62とを備える。各ターン介在部62の表面の位置が埋設部60の表面60fの位置よりも高い。以下、相違点を詳細に説明し、実施形態1と重複する構成及び効果については説明を省略する。以下の説明では、図6に示す設置状態(実施形態1と同様)において、リアクトル1Bの各構成部材におけるケース4の深さ方向(上下方向)に沿った大きさを高さと呼ぶ。
図7に示すように、ケース4の高さH4は、組合体10がケース4内に収納された状態においてコイル2の巻回部2a,2bの高さH2よりも低く、巻回部2a,2bの一部(露出部20)がケース4の開口縁4eから突出する大きさである。この例では、図7に示すように露出部20における開口縁4eからの突出高さが巻線2wの幅W以下となるようにケース4の高さH4及び深さを設定している。
この例のコイル2は、端子金具(図7では二点鎖線で示す)が取り付けられた状態で、コイル2の巻回部2a,2bの開口側面2au,2bu(図6も参照)と端子金具とが実質的に面一になるように巻線2wの両端部を引き出している。詳しくは、開口側面2au,2buの近傍、かつ開口側面2au,2buよりも低い位置において、巻回部2a,2bの軸方向に沿って巻線2wをフラットワイズ曲げして引き出している。巻線2wの引出方向、引出長さは適宜変更できる。図7では、引出長さが、ケース4に組合体10が収納された状態において、巻線2wの端部がケース4の開口縁4eに達しない長さである場合を例示する。上述のようにケース4の高さH4がケース4に収納された状態にある組合体10よりも低いため、巻線2wの端部に取り付けられた端子金具は、ケース4の開口縁4eから突出するように容易に配置できる。
ケース4内に充填される埋設部60の充填高さH6は、ケース4の高さH4(深さ)に依存する。埋設部60の表面60fは、ケース4の開口縁4e以下の位置、かつ上述のように高さH4がコイル2の高さH2よりも低いため、巻回部2a,2bの開口側面2au,2bu(ここでは上面)よりも低い位置にある。詳しくは埋設部60の表面60fは、コア片31m,32mの開口側面31u,32u(ここでは上面)と、上記開口側面2au,2buとの中間位置にある。この例では、表面60fの位置が開口縁4eと実質的に同位置であり、露出部20における表面60fからの突出高さH20は巻線2wの幅W以下である。また、ケース4の内底面40iから開口縁4eまでの深さと充填高さH6とが実質的に等しい。表面60fは、製造過程において未固化で流動状態の充填材6が形成する液面に相当する。そのため、表面60fの位置,突出高さH20は、例えば、ケース4の高さH4を一定として、製造過程で充填高さH6を調整することで適宜変更できる。図7の破線円内の拡大図では、突出高さH20が巻線2wの幅Wの50%程度である例を示す。
実施形態2のリアクトル1Bは、実施形態1と同様の理由により漏れ磁束を低減できる上に、生産性にも優れる。
実施形態1のリアクトル1A(試料No.1)、実施形態2のリアクトル1B(試料No.2)を作製した。各試料のリアクトルの構成部材は、以下の通りである。
コイルは、銅導体と、ポリイミドからなる絶縁被覆とを備えるエナメル線であって、被覆平角線を用いる。一対の巻回部は、エッジワイズコイルである。
複数のコア片は、純鉄粉などの軟磁性粉末を用いた圧粉成形体である。
介在部材は、ギャップ形成部、離隔部、貫通孔を備える一対の分割材を備えるPPS樹脂製の成形体である。
ケースは、アルミニウム合金製の箱体である。
試料No.1のケースは、組合体を収納した状態で、ケースの開口縁からコイルが突出しない深さを有するものである。
試料No.2のケースは、組合体を収納した状態で、コイルにおけるケースの開口側の領域がケースの開口縁から突出し、この突出高さが被覆平角線の幅以下となるように、その深さを調整したものである。ここでは、突出高さH20(図7)を被覆平角線の幅Wの50%程度とする。
絶縁層は、熱伝導率が2W/m・K以上の絶縁材料と接着剤成分とを含むものである。
樹脂組成物は、エポキシ樹脂にシリコーン系の表面エネルギー調整剤を添加して、被覆平角線に対する接触角が70°以下になるように調整したものである。ここでは、接触角が40°以上50°以下を満たすように表面エネルギー調整剤の添加量を調整した。圧粉成形体のコア片、アルミニウム合金製のケース、PPS樹脂製の介在部材に対する接触角を調べたところ、いずれも70°以下であった。
上記の表面エネルギー調整剤は、市販の樹脂添加剤が利用できる。例えば、共栄社化学株式会社製の表面調整剤(商品名ポリフロー)、エボニックジャパン株式会社製の表面調整剤(商品名TEGO Glide)などが挙げられる。添加量は、エポキシ樹脂を100重量部として、例えば、0.01重量部以上1.5重量部以下程度が挙げられる。
磁性粉末は、平均粒径(D50)100μmの珪素鋼粉(比透磁率4000程度)とし、充填材100体積%に対して17体積%添加する。
非磁性粉末は、平均粒径が20μmのアルミナ粉末とし、充填材100体積%に対して60体積%添加する。
いずれの試料も、用意した充填材を大気中でケースの開口縁近くまで充填して、充填高さをケースの深さに実質的に等しくする。充填後、所定の温度に加熱して、充填材を固化する。
2 コイル
2a,2b 巻回部 2r 連結部 2w 巻線 2t ターン
20 露出部 H2 高さ 2au,2bu 開口側面 H20 突出高さ
3 磁性コア
31m 内コア片 32m 外コア片
31u,32u 開口側面
36 ギャップ部
4 ケース
40 底部 41 側壁部
40i 内底面 4e 開口縁 H4 高さ
5 介在部材
5A,5B 分割材
51 ギャップ形成部 S51 面
52 離隔部 520 ベース板部 521 連結脚部
53 貫通孔
6 充填材
6r 樹脂 6m 磁性粉末 6c 非磁性粉末
60 埋設部 62 ターン介在部 60f 表面
H6 充填高さ
7 絶縁層
Claims (4)
- 巻回部を有するコイルと、
前記巻回部内外に配置されて、閉磁路を形成する磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを有する組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填され、前記組合体の少なくとも一部を埋設する充填材とを備え、
前記充填材は、樹脂と磁性粉末とを含み、比透磁率が1.5以上5以下であり、
前記磁性コアは、前記充填材よりも比透磁率が大きい複数のコア片と、前記コア片間に前記充填材の一部が介在されて形成されたギャップ部とを備えるリアクトル。 - 前記充填材は、更に非磁性粉末を含み、
前記磁性粉末の含有量が15体積%以上25体積%以下であり、
前記非磁性粉末の含有量が35体積%以上70体積%以下であり、
かつ、前記磁性粉末の比透磁率が1000以上である請求項1に記載のリアクトル。 - 前記巻回部と前記磁性コアとの間に介在される介在部材を備え、
前記介在部材は、前記巻回部内に配置されて隣り合う前記コア片間の間隔を確保するギャップ形成部と、前記巻回部の内面と前記磁性コアの外周面間の間隔を確保する離隔部とを備える請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。 - 前記充填材は、エポキシ樹脂又はウレタン樹脂と、表面エネルギー調整剤とを含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
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