JP6489029B2 - リアクトル - Google Patents

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本発明は、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される車載用DC−DCコンバータといった電力変換装置の構成部品などに利用されるリアクトルに関する。特に、漏れ磁束を低減でき、生産性にも優れるリアクトルに関する。
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。特許文献1は、ハイブリッド自動車などの車両に載置されるコンバータに利用されるリアクトルとして、一対の巻回部(コイル素子)を有するコイルと各巻回部内外に配置される環状の磁性コアとの組合体と、組合体を収納するケースと、ケース内に組合体を埋設する封止樹脂とを備えるものを開示する。特許文献1では、磁性コアとして、複数のコア片と、コア片間に介在される樹脂製のギャップ材とを有し、コア片とギャップ材とを接着剤や接着テープで一体化することを開示する。
特開2014−078603号公報
漏れ磁束を低減でき、生産性にも優れるリアクトルが望まれる。
上述のように製造過程では、コア片とギャップ材とが独立しており、接着剤や接着テープで一体化する場合、部品点数及び工程数が多く、生産性の低下を招く。しかし、ギャップ材を省略した閉磁路の磁性コアとすると磁束が飽和して、所望の特性が得られない可能性がある。従って、磁束飽和を抑制できながらも、部品点数や工程数が少なく生産性に優れるリアクトルが望まれる。
一方、上述のようにギャップ材が樹脂といった非磁性材料から構成される場合、コア片間のギャップ部分に生じた漏れ磁束がコイルに鎖交する恐れがある。漏れ磁束がコイルに鎖交すると銅損などの損失が増大する。特に小型化などを目的として、コイルと磁性コア間の間隔を狭くして両者を近接する場合、漏れ磁束がコイルに鎖交し易い。車載用リアクトルなどでは小型化が望まれることから、上記間隔が小さい場合でも漏れ磁束を低減できるリアクトルが望まれる。
例えば、ギャップ材の構成材料を樹脂と磁性粉末との混合物とすれば(特許文献1)、このギャップ材中の磁性粉末に磁束をある程度集中させて通過させられる。そのため、ギャップ部分に生じる漏れ磁束を低減できる。しかし、製造過程では、上記混合物からなるギャップ材を別途用意し、接着剤などでコア片に接合する必要があり、生産性に優れるとはいえない。
そこで、本発明の目的の一つは、漏れ磁束を低減でき、生産性にも優れるリアクトルを提供することにある。
本発明の一態様に係るリアクトルは、巻回部を有するコイルと、前記巻回部内外に配置されて、閉磁路を形成する磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとを有する組合体を収納するケースと、前記ケース内に充填され、前記組合体の少なくとも一部を埋設する充填材とを備える。
前記充填材は、樹脂と磁性粉末とを含み、比透磁率が1.5以上5以下である。
前記磁性コアは、前記充填材よりも比透磁率が大きい複数のコア片と、前記コア片間に前記充填材の一部が介在されて形成されたギャップ部とを備える。
上記のリアクトルは、漏れ磁束を低減でき、生産性にも優れる。
実施形態1のリアクトルを示す概略斜視図である。 実施形態1のリアクトルを図1に示す(II)−(II)切断線で切断した状態を示す縦断面図である。 実施形態1のリアクトルを図1に示す(III)−(III)切断線で切断した状態を示す横断面図である。 実施形態1のリアクトルに備える組合体とケースとを示す分解斜視図である。 実施形態1のリアクトルに備える組合体の分解斜視図である。 実施形態2のリアクトルを示す概略斜視図である。 実施形態2のリアクトルを図6に示す(VII)−(VII)切断線で切断した状態を示す縦断面図である。
[本発明の実施の形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るリアクトルは、巻回部を有するコイルと、上記巻回部内外に配置されて、閉磁路を形成する磁性コアと、上記コイルと上記磁性コアとを有する組合体を収納するケースと、上記ケース内に充填され、上記組合体の少なくとも一部を埋設する充填材とを備える。
上記充填材は、樹脂と磁性粉末とを含み、比透磁率が1.5以上5以下である。
上記磁性コアは、上記充填材よりも比透磁率が大きい複数のコア片と、上記コア片間に上記充填材の一部が介在されて形成されたギャップ部とを備える。
上記のリアクトルは、磁性粉末を含むギャップ部をコア片間に備えるため、ギャップ部に生じる漏れ磁束を低減できる。特に、ギャップ部を構成する充填材の比透磁率が特定の範囲であるため、ギャップ部中の磁性粉末に磁束をある程度集中して通過させられて漏れ磁束を低減しつつ、閉磁路の磁性コアであるものの磁束飽和を抑制できる。いわば、ギャップ部を本来の機能である磁気ギャップとしても十分に活用できる。
かつ、上記のリアクトルは、ギャップ部が充填材の一部から構成されるため、製造過程では、コア片とは独立したギャップ材を用意する必要がなく、部品点数を削減できる。また、コア片間に介在するギャップ部は樹脂を含むため、コア片同士を接合する接合材としても機能する。その結果、製造過程で、接着剤などによるコア片同士の一体化工程などを省略できる。製造過程では、ギャップ部の形成と、磁性コアの一体化と、充填材による組合体の埋設とを同時に行える上に、この工程によって上記のリアクトルを製造できる。従って、上記のリアクトルは、生産性にも優れる。
更に、磁性粉末を構成する磁性材料が金属といった熱伝導性に優れる材料であれば、充填材も熱伝導性に優れる。このような熱伝導性に優れる充填材がコア片間、及び組合体の周囲に存在して連続した放熱経路を構築できることで、上記のリアクトルは、放熱性にも優れる。
(2)上記のリアクトルの一例として、上記充填材が更に非磁性粉末を含み、上記磁性粉末の含有量が15体積%以上25体積%以下であり、上記非磁性粉末の含有量が35体積%以上70体積%以下であり、かつ上記磁性粉末の比透磁率が1000以上である形態が挙げられる。
上記形態は、以下の理由によって、ギャップ部に生じる漏れ磁束をより低減し易い。
(a)比透磁率が十分に高い磁性粉末を含むため、ギャップ部を通過する磁束をより多くできる。
(b)非磁性粉末を特定の範囲で含むため、充填材中に磁性粉末が均一的に分散して存在し易く、ギャップ部に磁束が均一的に通過できる。
また、上記形態は、ギャップ部が樹脂及び非磁性粉末を十分に含むため、磁気飽和をより確実に抑制できる。更に、磁性粉末及び非磁性粉末の少なくとも一方の構成材料が熱伝導性に優れる材料であれば、上記形態は、放熱性にも優れる。
(3)上記のリアクトルの一例として、上記巻回部と上記磁性コアとの間に介在される介在部材を備え、上記介在部材が、上記巻回部内に配置されて隣り合う上記コア片間の間隔を確保するギャップ形成部と、上記巻回部の内面と上記磁性コアの外周面間の間隔を確保する離隔部とを備える形態が挙げられる。
上記形態は、以下の理由によって、生産性により優れる。
(α)製造過程では、ギャップ形成部を利用して、介在部材に対してコア片を容易に位置決めできる上に、コア片間の間隔をギャップ形成部の厚さに対応した大きさに保持できる。そのため、例えば、複数のコア片と介在部材とを組み付けた中間品を一体物として取り扱えて、コイルとの組み付けなどの作業を行い易く、作業性に優れる。
(β)製造過程では、介在部材を利用して、コイルに対して磁性コアを容易に位置決めできる上に、巻回部と巻回部内のコア片間の間隔を隔離部の厚さに対応した大きさに保持できる。そのため、例えば、コイルと、磁性コアと、介在部材とを組み付けた中間品を一体物として取り扱えて、ケースへの収納などの作業を行い易く、作業性に優れる。
(γ)中間品(β)をケースに収納後、未固化で流動状態にある充填材をケースに流し込むと、巻回部とコア片間に形成される空間を流路に利用して、ギャップ形成部に支持されてコア片間に形成される空間に上記充填材を容易に流入できる。充填後、適宜固化することで、所定の位置に所定の大きさのギャップ部を容易にかつ精度よく形成できる。
(4)上記のリアクトルの一例として、上記充填材がエポキシ樹脂又はウレタン樹脂と、表面エネルギー調整剤とを含む形態が挙げられる。
上記形態は、以下の理由により、製造過程で充填材を充填し易いため、製造性により優れる。エポキシ樹脂やウレタン樹脂と表面エネルギー調整剤とを含む樹脂組成物は、コイルなどのリアクトルの構成部材に対する濡れ性に優れる。そのため、上述の磁性粉末、更には非磁性粉末を含む場合でも、コイルとケース間、コイルと磁性コア間、コア片間といった細い隙間に容易に充填できるからである。後述する試験例に示すように、巻線を螺旋状に巻回して形成される巻回部のターン間といった非常に細い隙間などでも容易に充填できるからである。更に、この充填材を大気中で充填した場合でも、気泡を巻き込み難く、大気中で良好に充填できるからである。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
[実施形態1]
図1〜図5を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。図2は、リアクトル1Aを、コイル2に備える巻回部2aの軸に平行な平面で切断した縦断面図であり、図3は、リアクトル1Aを、コイル2に備える一対の巻回部2a,2bの軸に直交し、巻回部2a,2bの並列方向に平行な平面で切断した横断面図である。
(全体構成)
実施形態1のリアクトル1Aは、図1に示すように、一対の巻回部2a,2bを有するコイル2と、巻回部2a,2b内外に配置されて、開磁路を形成する磁性コア3(図2も参照)と、コイル2と磁性コア3とを有する組合体10を収納する箱状のケース4と、ケース4内に充填され、組合体10の少なくとも一部を埋設する充填材6とを備える。リアクトル1Aは、ケース4がコンバータケースなどの設置対象(図示せず)に取り付けられて使用される。図1〜図3では、ケース4の底部40が下側、ケース4の開口部が上側を向いた状態を設置状態として示す。底部40及び開口部が左右に向いた設置状態もある。
リアクトル1Aに備える磁性コア3は、複数のコア片を備える。この例の磁性コア3は、図5に示すようにコイル2の各巻回部2a,2b内に配置される複数の直方体状の内コア片31mと、平面視U字状体であり、巻回部2a,2b外に配置される基部と、基部から突出して各巻回部2a,2b内に配置される突出部とを有する一対の外コア片32m(図2も参照)とを備える。また、磁性コア3は、図2に示すように内コア片31m,31m間、内コア片31m、外コア片32m間に介在されるギャップ部36とを備える。
実施形態1のリアクトル1Aは、ギャップ部36が充填材6の一部によって形成されている点を特徴の一つとする。即ち、充填材6の一部は、組合体10の少なくとも一部(この例では全部)を埋設する封止材として機能し、充填材6の他部はギャップ部36の形成材として機能する。かつ、実施形態1のリアクトル1Aは、充填材6が樹脂6rと磁性粉末6mとを含む混合物で構成されており、特定の比透磁率を満たすことを特徴の一つとする。その他、この例のリアクトル1Aは、巻回部2a,2bと磁性コア3との間にそれぞれ介在される介在部材5,5を備える(図2、図5)。介在部材5は、製造過程において、内コア片31m,31m間、内コア片31m、外コア片32m間を所定の間隔に保持できる。この保持によって、内コア片31m,31m間等に形成される空間に未固化で流動状態の充填材6が充填されることで、ギャップ部36を容易に形成できる。
以下、リアクトル1Aの主要部材であるコイル2、磁性コア3、ケース4の概要、介在部材5の詳細及び充填材6の詳細を順に説明する。なお、内コア片31m、外コア片32mをまとめてコア片31m,32mと呼ぶことがある。また、内コア片31m,31m間、内コア片31m、外コア片32m間をまとめて、コア片間等と呼ぶことがある。
(コイル)
コイル2は、図4、図5に示すように1本の連続する巻線2wが螺旋状に巻回された一対の巻回部2a,2bと、巻線2wの一部から形成されて両巻回部2a,2bを接続する連結部2rとを備える。この例の各巻回部2a,2bは、角部を丸めた長方形状の端面形状を有する筒状体である。各巻回部2a,2bは、互いの軸が平行するように並列(横並び)に配置される。この例の巻線2wは、平角線の導体(銅など)と、この導体の外周を覆う絶縁被覆(ポリアミドイミドなど)とを備える被覆平角線(いわゆるエナメル線)であり、巻回部2a,2bはエッジワイズコイルである。
この例では、コイル2の巻回部2a,2bの軸がケース4の内底面40iに平行するように、コイル2がケース4に収納される(図2)。巻線2wの両端部はいずれも、巻回部2a,2bから適宜な方向に引き出され、先端の絶縁被覆が剥されて端子金具(図示せず)が接続される。コイル2は、この端子金具を介して電源などの外部装置(図示せず)と電気的に接続される。図1、図2では、巻線2wの両端部が、ケース4の開口部からケース4外に突出するように引き出された場合を例示する。引出状態は適宜変更できる(実施形態2参照)。
(磁性コア)
この例の磁性コア3は、上述のように複数の内コア片31mと、一対の外コア片32m,32mと、複数のギャップ部36とを備える。図5に示すように内コア片31m及び外コア片32mの突出部は、巻回部2a,2bの内周形状に対応した角部を丸めた直方体状であり、両者の端面の大きさ及び形状は実質的に等しい。磁性コア3は、U字の開口部が向かい合うように配置された外コア片32m,32m間に内コア片31mとギャップ部36とが交互に配置され(図2)、環状に組み付けられることで、コイル2を励磁したときに閉磁路を形成する。
内コア片31m,外コア片32mは、主として軟磁性材料から構成される。軟磁性材料は、例えば、鉄や鉄合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)といった軟磁性金属などが挙げられる。コア片31m,32mは、軟磁性材料からなる粉末や、絶縁被覆を備える被覆粉末などを圧縮成形した圧粉成形体、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体などが挙げられる。この例のコア片31m,32mは圧粉成形体である。コア片31m,32mにおける磁性成分の割合は、特定の組成の充填材6から構成されるギャップ部36よりも大きい。その結果、コア片31m,32mの比透磁率はいずれも、ギャップ部36よりも大きい。ギャップ部36の詳細は、充填材6の項で説明する。
(ケース)
ケース4は、図1,図4に示すようにコイル2と磁性コア3とを備える組合体10を収納する容器である。ケース4は、代表的には、組合体10を載置する内底面40iを備える底部40と、底部40から立設されて組合体10の周囲を囲む側壁部41とを備え、底部40に対向する側(図1〜図4では上側)が開口した箱体が挙げられる。ケース4がコンバータケースに一体に設けられることもある。
この例のケース4は、底部40と側壁部41とが一体に成形された金属製の箱である。金属は強度に優れる上に、一般に樹脂よりも熱伝導性に優れる。そのため、ケース4は、組合体10の機械的保護、外部環境からの保護(防食など)、放熱経路などとして機能する。この例のケース4は、内底面40iが平坦な平面であり(図2,図3)、平面的であるコイル2の巻回部2a,2bにおける底部40側の面を内底面40iに平行に配置して、内底面40iに近接する領域(ここでは後述の絶縁層7を介して接触する領域)を十分に広く確保できる。従って、組合体10は、内底面40iに安定して保持されて、ケース4に熱を良好に伝えられて、放熱性により優れる。ケース4の構成金属は、例えば、アルミニウムやその合金が挙げられる。
(介在部材)
主に図2,図3,図5を参照して介在部材5を説明する。
・概要
介在部材5,5は、巻回部2a,2bの内面と磁性コア3における巻回部2a,2b内に配置される部分(ここでは特に内コア片31m)との間にそれぞれ介在される(図2,図3)。各介在部材5,5は、代表的には非磁性の絶縁材料によって構成されて、コイル2と磁性コア3間の絶縁材として機能する。また、各介在部材5,5は、後述するように所定の大きさ、形状に形成されて、巻回部2a,2bに対する磁性コア3(ここでは特に内コア片31m)の位置決め部材として機能する。更に、この例の介在部材5は、磁性コア3のうち、巻回部2a,2b内に配置される複数のコア片(ここでは内コア片31m、外コア片32mの突出部)間の間隔を確保するギャップ形成部51と、巻回部2a,2bの内面と磁性コア3の外周面間の間隔を確保する離隔部52とを備え、ギャップ部36の形成部材としても機能する。各巻回部2a,2b内にそれぞれ配置される介在部材5,5は、同一形状であるため、以下の説明では、主として、巻回部2a内に配置される一方の介在部材5を説明する。
・分割材
この例の介在部材5は、図5に示すように巻回部2aの軸方向に沿った分割面を有する一対の分割材5A,5Bを備える。各分割材5A,5Bは同一形状であり、断面]状の部材である。各分割材5A,5Bは、直方体状の内コア片31mに対して、対向する二面(図5では上下面)を挟むように配置されると、分割面同士が接触せず、分割面間が離間された状態である。この状態では、各内コア片31m等の周方向の一部(図5では上面及び下面、並びに各面に続く二つの角部近傍)が分割材5A,5Bに覆われ、他部(図5では上記角部近傍を除く側面)が分割材5A,5Bに覆われず露出され、充填材6に覆われる(図3)。各分割材5A,5Bの長さは、巻回部2aの軸方向長さ、及び磁性コア3のうち、巻回部2a内に収納される部分の長さに実質的に等しい。詳しくは、各分割材5A,5Bの長さは、分割材5A,5Bに挟まれる複数の内コア片31mの合計長さと、二つの外コア片32mの突出部の合計長さと、複数のギャップ部36の合計長さとに実質的に等しい(図2)。
・ギャップ形成部と離隔部
分割材5A,5Bは、同一形状であるため、以下の説明では、主として、分割材5Bを説明する。
この例の分割材5Bは、図5に示すように内コア片31m及び外コア片32mの突出部の下面に沿って配置されるベース板部520と、ベース板部520から立設されて、下面に連なる二つの角部から側面に亘って配置される一対の連結脚部521,521とを有する。更に分割材5Bは、ベース板部520と各連結脚部521,521との角部に接して設けられ、ベース板部520の幅方向に対向配置される一対の棒状部材を複数対備える。複数対の棒状部材は、ベース板部520の長手方向に所定の間隔をあけて並列される。これらの複数の棒状部材をそれぞれ、ギャップ形成部51とする。また、ベース板部520及び連結脚部521,521を離隔部52とする。その他、この例の分割材5Bは、ベース板部520の長手方向に所定の間隔をあけて設けられた複数の貫通孔53を備える。
ギャップ形成部51におけるベース板部520の長手方向に沿った長さを厚さとすると、この厚さはギャップ部36の厚さに等しく(図2)、磁気ギャップ距離を規定する。従って、所定の磁気ギャップ距離を満たすように、ギャップ形成部51の厚さを設定する。
ギャップ形成部51におけるベース板部520の内面及び連結脚部521の内面に直交する面S51は、磁束方向に直交に配置されて(図2)、内コア片31m等における磁束方向に直交に配置される面(図2では左右の面、以下、ギャップ端面と呼ぶ)を覆う(図3)。そのため、面S51の大きさは、内コア片31m等のギャップ端面におけるギャップ部36が占める面積割合(以下、占有割合と呼ぶ)に影響を与える。なお、図3に点線で示す角部を丸めた長方形状の領域は、内コア片31m等の磁路断面に相当し、その面積はギャップ端面の面積に等しい。
上記面S51が大きくなるほど、上記占有割合が小さくなる。いわば、コア片間等に介在される非磁性材料からなる介在部材5が多くなり、特定の比透磁率であるギャップ部36が少なくなる。その結果、コア片間等に生じる漏れ磁束が増大し得る。上記面S51が小さ過ぎると、製造過程でコア片間等の間隔を適切に保持できず、例えば、ギャップ部36の厚さにばらつきが生じる恐れがある。ギャップ部36の厚さがばらつくことで、上記漏れ磁束が増大したり、内コア片31m,31m同士、内コア片31m,外コア片32m同士を十分に接合できず、強固に固定できなかったりする恐れがある。漏れ磁束の十分な低減、コア片同士の強固な固定などを考慮すると、例えば、上記占有割合が50%以上95%以下を満たすように、上記面S51の大きさ(ここでは四つの合計の大きさ)を設けることが好ましい。上記占有割合を60%以上、70%以上、更に80%以上とすることができる。図3では、上記占有割合が約95%の場合を例示する。図5に示す直方体状のギャップ形成部51の大きさ、形状などは例示であり、適宜変更できる。
この例では、上述のように内コア片31m等に両分割材5A,5Bが離間して配置されると共に、両分割材5A,5Bに貫通孔53を備える。このような介在部材5によって、製造過程では、ギャップ部として、図3に示すように内コア片31m等のギャップ端面を覆うと共に、ギャップ端面から突出してコイル2の巻回部2a,2bの内周面に至る部分を有するものを形成できる。
ベース板部520の長手方向に隣り合うギャップ形成部51,51の間隔は、内コア片31mの厚さ及び外コア片32mの突出部の厚さに実質的に等しい。そのため、製造過程で内コア片31mと分割材5A,5Bとを組み付けると、上記隣り合うギャップ形成部51,51によって内コア片31mが挟まれて、介在部材5に対して内コア片31mを位置決めできる。この例では、一つの内コア片31mは、各分割材5A,5Bに備える四つのギャップ形成部51、合計八つのギャップ形成部51によって位置決めされる。
離隔部52を形成するベース板部520の厚さ、連結脚部521の厚さは、代表的には、巻回部2aとコア片31m,32m間に望まれる絶縁距離を確保するように設けられる。この例では、上記絶縁距離を確保する厚さであって、コイル2と、磁性コア3と、介在部材5とが組み付けられた状態では図2に示すように巻回部2aと介在部材5間に実質的に隙間が設けられない厚さとする。そのため、上述の組付状態では、介在部材5によって、巻回部2aに対してコア片31m,32mを適切に位置決めできる。
この例の各分割材5A,5Bは、ベース板部520の幅方向に並ぶ一対のギャップ形成部51,51の各面S51が内コア片31mのギャップ端面における二つの角部を覆うように形成されている。そのため、図3に示すように各内コア片31mの各ギャップ端面は、その四隅が両分割材5A,5Bのギャップ形成部51の面S51に覆われる。
・充填材の流路
離間して配置される分割材5A,5B間にできる隙間は、製造過程において未固化で流動状態にある充填材6をコイル2の巻回部2aと内コア片31m等間に流入する流路として機能する。また、ベース板部520に備える各貫通孔53は、製造過程で、上記流動状態の充填材6をコア片間等に流入する流路として機能する。製造過程でコア片31m,32mと介在部材5とを組み付けた状態において各貫通孔53がコア片間等の隙間に重複するように設けられている。即ち、貫通孔53とコア片間等の隙間とが連通しており、上記流動状態の充填材6を容易に充填できる。貫通孔53の個数、形状、離間距離などは適宜選択できる。図5は、複数の矩形状の貫通孔53が等間隔に配置された場合を例示する。
・構成材料
介在部材5を構成する非磁性の絶縁材料として、各種の樹脂が挙げられる。例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6、ナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。又は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。介在部材5は、射出成形などの公知の成形方法によって製造できる。
実施形態1で説明した介在部材5は、例えば、以下の変更が可能である。
[変形例1]
離隔部52に貫通孔53に代えて、又は貫通孔53に加えて溝を備えることができる。離隔部52におけるコア側面及びコイル側面の少なくとも一方において、ベース板部520の長手方向に連続する溝、一方の連結脚部521からベース板部520を経て他方の連結脚部521に連続する溝などが挙げられる。このような連続する溝を備えることで、製造過程において未固化で流動状態にある充填材6をコア片間等に導入し易い。
[変形例2]
一対の分割材5A,5Bを内コア片31mに固定する固定材を設けることができる。固定材を、例えば、粘着テープなどの接合材、輪ゴムや結束バンドなどの結束具などとすれば、容易に配置でき、作業性に優れる。又は、一対の分割材5A,5Bが互いに係合する係合部を備えることができる。
[変形例3]
一対の分割材5A,5Bが内コア片31m等の実質的に全周を覆うものとすることができる。この場合も貫通孔53や溝を備えることで、上述の流動状態の充填材6をコア片間等に導入し易い。
[変形例4]
一方の分割材の形状と、他方の分割材の形状とを異ならせることができる。例えば、貫通孔53の個数や大きさ、形状を異ならせたり、ギャップ形成部51の配置位置を異ならせたりするなどが挙げられる。前者の場合、例えば、ケース4の底部40側に配置される分割材5Bの貫通孔53を大きくしたり、個数を多くしたりすると、上述の流動状態の充填材6をより効率的に流入できる。後者の場合、例えば、内コア片31mのギャップ端面における一組の対角位置の角部に対して、一方の分割材が一つの角部のみを覆い、他方の分割材が残りの角部を覆うようにギャップ形成部51を備えることが挙げられる。
(充填材)
充填材6は、図1〜図3に示すようにケース4内に充填されて、種々の機能を奏する。代表的には、組合体10とケース4との一体化によるリアクトル1Aの強度や剛性の向上、組合体10の機械的保護、外部環境からの保護(防食など)、振動や騒音の低減、放熱性の向上などが挙げられる。この例のように巻線2wの端部を除く組合体10の全体が充填材6に埋設される場合には、上述の効果を更に得易い。
実施形態1のリアクトル1Aでは、更に充填材6の一部がギャップ部36を形成する。このギャップ部36から生じる漏れ磁束を低減できるように、充填材6の構成材料を特定の組成とする。
・構成材料
具体的には、充填材6は、図1、図2の破線円内に拡大して模式的に示すように樹脂6rと磁性粉末6mとを含み、比透磁率が1.5以上5以下であり、一般に比透磁率が1以下である非磁性材料とは異なる。充填材6は、更に非磁性粉末6cを含むことができる。
・・樹脂
充填材6は、樹脂6rを含むことで以下の効果を奏する。
1.樹脂6rが非磁性材料であるため、充填材6の比透磁率が過大になることを防止できる。
2.製造過程において未固化の充填材6に流動性を持たせることができ、組合体10とケース4間、コイル2と磁性コア3間、コア片間等に充填できる。
3.樹脂6rが一般に絶縁材料であるため、絶縁性を高められる(特にコイル2と金属製のケース4間の絶縁など)。
4.一般に金属よりも耐食性に優れるため、耐食性を高められる(磁性コア3の防食など)。
充填材6に含む樹脂6rは、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、PPS樹脂などが挙げられる。特に、エポキシ樹脂やウレタン樹脂は、大気中での充填が可能である。大気充填は、雰囲気制御が不要であり、充填作業性に優れる。その他、エポキシ樹脂は、耐熱性や絶縁性、耐候性などに優れる充填材6とすることができる。ウレタン樹脂は、濡れ性により優れて充填し易い。
充填材6は、エポキシ樹脂又はウレタン樹脂と、表面エネルギー調整剤とを含むと、製造過程で充填作業性に優れて好ましい。エポキシ樹脂又はウレタン樹脂と、表面エネルギー調整剤とを含む樹脂組成物は、コイル2や磁性コア3、ケース4、介在部材5などといったリアクトル1Aの構成部材に対して、濡れ性に優れる。このような上記樹脂組成物を充填材6に含むことで濡れ性に優れて、狭い隙間であっても容易に充填できる。磁性粉末6m、更には非磁性粉末6cを含有する場合にも、上記樹脂組成物の濡れ性がこれらの粉末によって実質的に損なわれることが無い。そのため、上記樹脂組成物と、磁性粉末6m、更には非磁性粉末6cとを含有する充填材6は、濡れ性に優れることで、上述のように狭い隙間、詳しくはコイル2とケース4間の隙間、コイル2と磁性コア3間の隙間(介在部材5の貫通孔53、介在部材5の分割材5A,5B間の隙間、内コア片31m,31m間の隙間、内コア片31m,外コア片32m間の隙間など)であっても容易に充填できる。また、上記樹脂組成物は大気中で充填できることからも充填作業性に優れる。更に、この充填材6は、熱サイクルを受けても割れ難いことからも好ましい。
表面エネルギー調整剤は、種々のものが利用できる。エポキシ樹脂やウレタン樹脂には、例えば、シリコーン系のものが挙げられる。なお、リアクトル1Aに備える固化後の充填材6において表面エネルギー調整剤の存在は、以下のようにして判別できる。充填材6から、磁性粉末6m、非磁性粉末6cを含む場合には非磁性粉末6cを除去して、成分分析を行う。そして、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などの樹脂成分の構成元素とは異なる元素の有無によって判別できる。例えば、シリコーン系の表面エネルギー調整剤は有機珪素化合物を含む。エポキシ樹脂やウレタン樹脂などの樹脂成分の構成元素とは異なる元素としてSiを含む場合や、Siを含む炭素化合物が存在する場合などでは、このSiを有機珪素化合物に由来するものと判別できる。
樹脂組成物におけるエネルギー調整剤の含有量は、所定の濡れ性を有する範囲で適宜選択できる。具体的な濡れ性として、リアクトル1Aの構成部材のうち、充填材6に接し、かつ上述のような狭い隙間を形成し得る部材に対する接触角が70°以下を満たすことが挙げられる。ここでは、製造過程で、充填材6の一部をコア片等間に充填してギャップ部36を形成するため、内コア片31m,外コア片32mとの接触角が70°以下であることが好ましい。その他、例えば、コイル2のターン間といった非常に狭い隙間に充填材6が介在する構成とする場合(実施形態2参照)には、コイル2を形成する巻線2wとの接触角、より具体的には充填材6に接する巻線2wの最表面を構成するエナメルなどの絶縁被覆との接触角が70°以下であることが好ましい。
接触角が大き過ぎると、大気中で充填した場合に気泡を巻き込むなどして絶縁性や外観に劣るリアクトルが得られる恐れがある。気泡を巻き込まないように低速で充填すると製造性の低下を招く。一方、接触角が小さいほど、濡れ性に優れて、大気中で充填したり、更には高速で充填したりしても気泡を巻き込み難い。大気中で充填しても気泡が実質的に存在せず、絶縁性や外観に優れるリアクトル1Aが得られることで、製造性にも優れる。以上のことから、接触角は65°以下、60°以下、更に50°以下とすることができる。エネルギー調整剤といった濡れ性向上用の添加剤などを多量に添加すれば、接触角を小さくできる。しかし、多量の添加は、密着性など、その他の特性の低下が懸念される。従って、接触角は30°以上、更に45°以上が好ましい。接触角が70°以下を満たすようにエネルギー調整剤の含有量などを調整するとよい。ここでの接触角は、表面エネルギー調整剤を含む樹脂組成物が固化しておらず、流動状態での値とする。エポキシ樹脂又はウレタン樹脂を含む場合には、例えば、45℃程度で接触角を測定する。
・・磁性粉末
充填材6に含む磁性粉末6mを構成する磁性材料は、例えば、上述したコア片31m,32mを構成する軟磁性材料が挙げられる。漏れ磁束の低減という目的からは、比透磁率が高い磁性材料から構成される磁性粉末6mを含むことが好ましく、全ての磁性粉末6mの比透磁率が高いことが好ましい。例えば、磁性粉末6mの比透磁率は1000以上であることが挙げられる。このような高比透磁率の磁性材料として、純鉄(99.8%Feの場合に5,000程度)、珪素鋼(4000程度)、などが挙げられる。充填材6は、単一種の磁性粉末6mを含む形態、異なる複数種の磁性粉末6mを含む形態のいずれでもよい。後者の形態では、比重が異なる粉末を含み得る。この比重差を利用して、磁性粉末6mが均一的に分散された充填材6とすることができる。その他、磁性粉末6mとして、軟磁性金属材料の粉末粒子の表面が絶縁被覆で覆われた被覆粉末を含むことができる。この被覆粉末は絶縁性に優れる上に金属成分によって熱伝導性にも優れる。
磁性粉末6mの含有量は、充填材6の比透磁率が1.5〜5を満たす範囲で選択するとよい。磁性粉末6mの比透磁率にもよるが、例えば、上記含有量は、充填材6を100体積%として、15体積%以上25体積%以下が挙げられる。上記含有量が上記の範囲内であれば、磁性粉末6mの粒子を十分に含み、各粒子が充填材6中に均一的に分散して存在し易い(偏在し難い)。このような充填材6の一部で構成されるギャップ部36は、均一的に分散する磁性粉末6mの粒子に磁束をある程度集中して通過させられる。その結果、ギャップ部36の全体に亘って、均一的に磁束を通過させられ、漏れ磁束を低減できる。
磁性粉末6mの平均粒径は、適宜選択できる。上記平均粒径がある程度大きいことで、各粒子が充填材6中に均一的に分散して存在し易く、ある程度小さいことで、製造過程での充填材6の流動性に優れる。上記平均粒径は、例えば5μm以上150μm以下程度が挙げられる。ここでの平均粒径とは、充填材6から樹脂6rや非磁性粉末6cを除去して磁性粉末6mを抽出し、レーザ回折式粒度分布測定装置によって体積基準の粒度分布をとり、小径側からの累積が50%となる値(D50、50体積%粒径)とする。後述する非磁性粉末6cについても体積基準のD50とする。その他、磁性粉末6mは、球状であると、針状や棒状、凸凹を有する形状などである場合に比較して、製造過程で充填材6の流動性を損ない難く、流動性に優れて好ましい。
・・非磁性粉末
充填材6に含む非磁性粉末6cは、磁性粉末6mとは構成材料が異なるため、通常、比重も異なる。この比重差を利用して、非磁性粉末6cは、樹脂6r中に磁性粉末6mを均一的に分散させる機能を有する。例えば、磁性粉末6mの比重が非磁性粉末6cの比重よりも大きい場合、製造過程では、高比重である磁性粉末6mが沈降し易い。比重が小さい非磁性粉末6cを含むことで、この沈降を抑制して、磁性粉末6mを樹脂6r中に均一的に分散できる。その他、非磁性粉末6cを構成する非磁性材料が熱伝導性に優れる材料であれば放熱性の向上、電気絶縁性に優れる材料であれば、コイル2とケース4間の絶縁性、コイル2と磁性コア3間の絶縁性などの向上を期待できる。
非磁性粉末6cを構成する非磁性材料は、例えば、セラミックスやカーボンナノチューブなどの非金属無機材料、各種の金属などが挙げられる。セラミックスは、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウムなどの酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ほう素などの窒化物、炭化珪素などの炭化物などが挙げられる。セラミックスは、熱伝導性、絶縁性の双方に優れるものが好適である。金属は、銅やアルミニウム、その合金が挙げられる。金属は熱伝導性に優れる。金属の粉末粒子の表面が絶縁被覆で覆われた被覆金属粉末とすると、絶縁性を高められる。充填材6は、単一種の非磁性粉末6cを含む形態、異なる複数種の非磁性粉末6cを含む形態のいずれでもよい。後者の形態では、特性が異なる複数の粉末を含有することで、上述の種々の機能を良好に有することができる。
非磁性粉末6cとして、熱伝導率が2W/m・K以上の非磁性材料からなるものを含むと、充填材6の熱伝導率が高くなる。このような高熱伝導性の充填材6は、コイル2や磁性コア3と金属製のケース4間の放熱経路に好適に利用できる。特に、熱伝導率が0.5W/m・K以上、更に0.75W/m・K以上、1W/m・K以上を満たす充填材6であると、放熱性に優れるリアクトル1Aとなって好ましい。
非磁性粉末6cの含有量は、上述の分散材としての目的からは、充填材6を100体積%として、35体積%以上70体積%以下が挙げられる。上記含有量が上記の範囲内であれば、非磁性粉末6cの粒子を十分に含み、磁性粉末6mとの比重差などを利用して、充填材6中に磁性粉末6mを均一的に分散させ易い。このような充填材6の一部で構成されるギャップ部36は、上述のように均一的に磁束を通過させられて、漏れ磁束を低減できる。上記含有量が上記の範囲内で多いほど分散材としての機能を十分に発揮できることから、40体積%以上、更に55体積%以上である形態とすることができる。上記含有量が上記の範囲内で少ないほど、製造過程での充填材6の流動性に優れることから、65体積%以下、更に60体積%以下である形態とすることができる。
非磁性粉末6cの平均粒径は、適宜選択できる。磁性粉末6mと同様に適切な大きさであると、充填材6中に磁性粉末6mを均一的に分散させ易い上に、製造過程での充填材6の流動性も優れる。上記平均粒径(D50)は、例えば1μm以上100μm以下程度が挙げられる。非磁性粉末6cの平均粒径は、磁性粉末6mの平均粒径と同じでもよいし、異なっていてもよい。非磁性粉末6cの平均粒径が磁性粉末6mの平均粒径よりも小さいと、磁性粉末6mを分散させ易いと考えられる。その他、非磁性粉末6cも球状であると、製造過程で充填材6の流動性に優れて好ましい。
・充填状態
充填材6は、組合体10の外周を実質的に埋設する埋設部と、この埋設部に連続し、コイル2の巻回部2a,2bと磁性コア3間を経て、内コア片31m,31m間、内コア片31m、外コア片32mの突出部間に介在する少なくとも一つのギャップ部36とを備える。この例の埋設部は、主として組合体10とケース4間に充填されて組合体10の外周を囲む部分と、組合体10におけるケース4の開口側を覆う部分と、巻回部2a,2bの内面と磁性コア3の外周面間に充填される部分とを含む。
・・ギャップ部
ギャップ部36は、比透磁率が1.5〜5である充填材6の一部で構成される。コア片31m,32mよりも遥かに小さい比透磁率であるものの、ギャップ部36に磁束をある程度集中して通過させられて、コア片間等からコイル2の巻回部2a,2bに及ぶような漏れ磁束を低減できる。この例のギャップ部36は、図3に示すように、内コア片31mのギャップ端面において介在部材5のギャップ形成部51の面S51による被覆部分を除く領域を覆うと共に、ギャップ端面の周縁から突出して、巻回部2a,2bの内面に接する部分を有する。詳しくは、ギャップ部36は、内コア片31m等の側面における両分割材5A,5Bから露出された部分から巻回部2a,2bの内面に至る部分、内コア片31m等の上面及び下面と両分割材5A,5Bの貫通孔53とに囲まれる部分に存在する充填材6を含む。従って、隣り合う一方の内コア片31mからの磁束は、ギャップ部36におけるギャップ端面の周縁から突出する部分を経て、隣り合う他方の内コア片31mを通過する。その結果、上記磁束がコイル2に及ぶことによる銅損などの損失を低減できる。
(絶縁層)
その他、この例のリアクトル1Aは、コイル2の巻回部2a,2bと、ケース4の内底面40i間に絶縁層7を備える(図2,図3)。絶縁層7は、コイル2と金属製のケース4の底部40間の絶縁性を高めるものであり、絶縁材料から構成される。絶縁層7は、熱伝導率が2W/m・K以上の絶縁材料を含み、熱伝導性にも優れると、コイル2の熱を金属製のケース4に伝え易く、放熱性に優れるリアクトル1Aとすることができる。所望の絶縁特性、放熱性を有するように絶縁層7の材質、厚さ(例えば、30μm以上2mm以下、更に1mm以下、0.5mm以下、0.1mm以下)、形成領域(コイル2における底部40側の面(下面)の大きさ以上、内底面40iの大きさ以下)などを選択するとよい。この例の絶縁層7の大きさは、コイル2における底部40側の面(下面)と同等程度である。後述する実施形態2に備える絶縁層7は、組合体10における底部40側の面(下面)に対応する大きさである。
絶縁層7の構成材料は、リアクトル1Aの使用時の最高到達温度に対して軟化しない程度の耐熱性を有し、電気絶縁性に優れ、更に熱伝導性にも優れるものが挙げられる。例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、湿気硬化性樹脂、常温硬化性樹脂などの種々の樹脂と、上述の非磁性粉末(特に絶縁性、熱伝導性に優れるもの)とを含む樹脂材料が挙げられる。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は、PPS樹脂、LCP、PA樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミドなどが挙げられる。
絶縁層7の構成材料は、接着剤成分を含むと、ケース4の内底面40iにコイル2や組合体10を強固に固定できて好ましい。具体的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などを主体とする硬化性接着剤が挙げられる。
絶縁層7は、例えばシート状のものを用いたり、上述の樹脂材料などの原料を内底面40iに塗布やスプレーしたりして形成できる。
(製造方法)
リアクトル1Aは、例えば、組合体10の作製工程、ケース4への収納工程、充填材6の充填工程、という工程を経て製造できる。以下、各工程を簡単に説明する。組立手順は一例である。
・組合体の作製工程
この工程では、コイル2と複数のコア片31m,32mと介在部材5とを組み付けて組合体10を作製する。例えば、図5に示すように、一対の分割材5A,5Bによって、複数の内コア片31mを挟んだ中間品を作製する。隣り合う内コア片31m,31m間にギャップ形成部51を介在させることで、介在部材5に対して各内コア片31mを容易に位置決めでき、中間品を容易に組み立てられる。また、介在部材5によって、内コア片31m,31m間にギャップ形成部51の厚さに応じた空間を有する状態を維持できる。従って、中間品を上述の位置決めがなされた一体物として取り扱え得る。
中間品をコイル2の各巻回部2a,2b内に挿入すると共に、外コア片32m,32mの突出部を挿入する。こうすることで、組合体10が得られる。組合体10は、介在部材5によって、内コア片31m,外コア片32m間にもギャップ形成部51の厚さに応じた空間を有する状態も維持できる。また、この組合体10は、介在部材5によって、巻回部2a,2bに対してコア片31m,32mがそれぞれ位置決めされた状態の一体物として取り扱える。そのため、次工程で、ケース4内に組合体10を容易に収納できる。
・ケースへの収納工程
この工程では、上述の組合体10をケース4内に収納する。例えば、図4に示すように、ケース4に絶縁層7、組合体10を順に収納し、ケース4の内底面40iと組合体10における底部40側の面間に絶縁層7を介在させる。更に、後述する固定部材を用いて、組合体10をケース4に固定することもできる。組合体10は、介在部材5によって位置決めされた状態をケース4内でも維持される。
・充填材の充填
この工程では、組合体10が収納されたケース4内に未固化で流動状態にある充填材6を充填する。充填後に適宜固化する。未固化の充填材6は、上述のように樹脂6rを含むことで流動性を有しており、コイル2とケース4間の隙間、コイル2と磁性コア3間の隙間、特に介在部材5の貫通孔53、介在部材5の分割材5A,5B間の隙間、内コア片31m,31m間の隙間、内コア片31m,外コア片32m間の隙間に流入する。流入した未固化の充填材6は、組合体10の全体を埋設すると共に、巻回部2a,2bの内周面と、貫通孔53を形成する内壁面と、コア片間等とでつくられるギャップ形成空間に充填される。固化後、埋設部と、上述のギャップ形成空間に形成されたギャップ部36とが連続した充填材6を形成できる。
(作用効果)
実施形態1のリアクトル1Aは、以下の理由により、漏れ磁束を低減できる上に、生産性にも優れる。
・漏れ磁束の低減
内コア片31m,31m間、内コア片31m、外コア片32m間に磁性粉末6mを含み、特定の比透磁率を有するギャップ部36を備える。そのため、隣り合う一方のコア片から他方のコア片への磁束は、ギャップ部36中の磁性粉末6mにある程度集中して通過できるからである。
・良好な生産性
ギャップ部36が充填材6の一部から構成されるため、コア片とは独立したギャップ材を省略できる。また、コア片同士がギャップ部36(充填材6)によって一体化されるため、上記ギャップ材を接着剤で接合する工程なども不要である。更に、未固化で流動状態にある充填材6をケース4内に充填・固化することで、ギャップ部36を容易に形成できる。上記充填材6の充填・固化によって、ギャップ部36の形成工程と、磁性コア3の一体化工程と、組合体10の埋設工程とが同時に行えて、工程数をより少なくできる上に、リアクトル1Aも得られる。このように工程数が少ない上に、ギャップ部36を容易に形成できるからである。
この例では、製造過程で、ギャップ形成部51及び離隔部52を備える介在部材5によって、介在部材5に対する各内コア片31mの位置決め、コイル2に対する磁性コア3の位置決めを精度よく、かつ容易に行える。また、介在部材5によって、この位置決め状態を維持して、中間品、組合体10(ギャップ部36が無いもの)などを取り扱い易い。そのため、コイル2と磁性コア3との組み付けや、ケース4への組合体10の収納などの作業性に優れるからである。
更に、実施形態1のリアクトル1Aは、コイル2への漏れ磁束を低減できることで、漏れ磁束に起因する銅損などの損失を低減できる。また、リアクトル1Aでは、ギャップ部36の比透磁率が特定の範囲であるため、上述の漏れ磁束を低減しつつ、閉磁路の磁性コア3が磁束飽和することを抑制でき、磁気ギャップとして良好に機能できる。
その他、リアクトル1Aは、1.充填材6が金属製の磁性粉末6mや熱伝導性に優れる非磁性粉末6cを含むこと、2.金属製のケース4を備えること、3.コイル2の巻回部2a,2b、更には後述する実施形態2のように磁性コア3の一部(外コア片32mの基部)もがケース4の内底面40iに絶縁層7を介して接すること(図2)、4.絶縁層7が接着剤成分を含んで巻回部2a,2bを強固にケース4の底部40に固定すること、の少なくとも一つを満たすことで、放熱性に優れる。全てを満たすと、コイル2からケース4に亘って連続した放熱経路を備えて、放熱性により優れる。
以下、主要部材の変形例や、リアクトル1Aに備えられるその他の構成部材などを説明する。
(主要部材の変形例など、その他の構成部材)
・コイル
巻回部が一つのみであるコイル2を備えることができる。この場合、磁性コア3は、EEコアやERコア、EIコアなどと呼ばれる公知の形状とすることが挙げられる。
巻線2wとして、丸線の導体と絶縁被覆とを備える被覆丸線などを利用できる。
巻回部を円筒状(端面円環状)などとすることができる。
・磁性コア
図2では、外コア片32mの基部におけるケース4の底部40側の面(下面)が、内コア片31m等における底部40側の面(下面)よりも突出し、コイル2の巻回部2a,2bにおける底部40側の面(下面)と実質的に面一である場合を例示する。この場合、組合体10は、内底面40iにより安定して保持され、コイル2に加えて、外コア片32mからもケース4に熱を伝えられて、放熱性により優れる。
その他、外コア片32mの基部におけるケース4の開口側の面(上面)が、上記内コア片31m等における開口側の面(上面)よりも突出した形態とすることができる。
コア片31m,32mの個数、形状、大きさ、組成、ギャップ部36の個数などは適宜変更できる。例えば、外コア片32mを直方体状とし、上述の突出部を内コア片31mに代えることができる。
・ケース
底部40と側壁部41とが独立した部材であり、組み合わせて一体となる形態とすることができる。例えば、組合体10を載置する底部40を金属板とし、組合体10を囲む側壁部41を樹脂などの絶縁材料の成形品とすることができる。
・その他の構成部材
・・固定部材
ケース4内に組合体10を固定する固定部材(図示せず)を備えることができる。固定部材は、帯状材が挙げられる。磁性コア3のうち、コイル2から突出する外コア片32mの基部の一面に帯状材を配置して押え付け、ボルトなどの締結部材(図示せず)によってケース4に固定することが挙げられる。帯状材の構成材料は、鋼などの高強度な材料が挙げられる。
・・センサ
温度センサ、電流センサ、電圧センサ、磁束センサなどのリアクトル1Aの物理量を測定するセンサ(図示せず)を備えることができる。
[実施形態2]
図6,図7を参照して、実施形態2のリアクトル1Bを説明する。図7は、リアクトル1Bを、コイル2に備える巻回部2aの軸に平行な平面で切断した縦断面図である。
(全体構成)
実施形態2のリアクトル1Bの基本的構成は実施形態1のリアクトル1Aと同様である。概略を述べると、リアクトル1Bは、図6に示すように、巻線2wが螺旋状に巻回された複数のターン2t(図7)から形成される巻回部2a,2bを有するコイル2と、巻回部2a,2b内外に配置されて、閉磁路を形成する磁性コア3と、コイル2と磁性コア3とを有する組合体10を収納するケース4と、ケース4内に充填される充填材6と、巻回部2a,2bと磁性コア3との間に介在される介在部材5とを備える。図7の左下方の破線円内に拡大して模式的に示すように、充填材6は、樹脂6rと磁性粉末6mと、適宜非磁性粉末6cとを含み、比透磁率が1.5以上5以下である。磁性コア3は、複数のコア片(内コア片31m、外コア片32m)と、これらコア片間等に充填材6の一部が介在されて形成されたギャップ部36とを備える(図7)。介在部材5は、ギャップ形成部51及び離隔部52と、貫通孔53とを備える。
(実施形態1との主な相違点)
実施形態2のリアクトル1Bは、ケース4の深さが比較的浅く、コイル2の巻回部2a,2bの一部がケース4の開口縁4eから露出すると共に、ケース4内の充填材6の表面60fからも露出する点、この露出部分における各ターン2t,2t間に充填材6の一部が介在されている点(図7の破線円内)が、実施形態1と異なる。即ち、リアクトル1Bは、巻回部2a,2bがケース4の開口縁4eから突出する露出部20を備える。充填材6は、ケース4の開口縁4e以下に位置する表面60fを有し、組合体10の一部を埋設する埋設部60と、埋設部60に連続し、露出部20における各ターン2t,2t間に介在するターン介在部62とを備える。各ターン介在部62の表面の位置が埋設部60の表面60fの位置よりも高い。以下、相違点を詳細に説明し、実施形態1と重複する構成及び効果については説明を省略する。以下の説明では、図6に示す設置状態(実施形態1と同様)において、リアクトル1Bの各構成部材におけるケース4の深さ方向(上下方向)に沿った大きさを高さと呼ぶ。
(ケース)
図7に示すように、ケース4の高さHは、組合体10がケース4内に収納された状態においてコイル2の巻回部2a,2bの高さHよりも低く、巻回部2a,2bの一部(露出部20)がケース4の開口縁4eから突出する大きさである。この例では、図7に示すように露出部20における開口縁4eからの突出高さが巻線2wの幅W以下となるようにケース4の高さH及び深さを設定している。
(コイル)
この例のコイル2は、端子金具(図7では二点鎖線で示す)が取り付けられた状態で、コイル2の巻回部2a,2bの開口側面2au,2bu(図6も参照)と端子金具とが実質的に面一になるように巻線2wの両端部を引き出している。詳しくは、開口側面2au,2buの近傍、かつ開口側面2au,2buよりも低い位置において、巻回部2a,2bの軸方向に沿って巻線2wをフラットワイズ曲げして引き出している。巻線2wの引出方向、引出長さは適宜変更できる。図7では、引出長さが、ケース4に組合体10が収納された状態において、巻線2wの端部がケース4の開口縁4eに達しない長さである場合を例示する。上述のようにケース4の高さHがケース4に収納された状態にある組合体10よりも低いため、巻線2wの端部に取り付けられた端子金具は、ケース4の開口縁4eから突出するように容易に配置できる。
本例のように上述の露出部の突出高さが巻線2wの幅W以下であると、組合体10を囲むケース4の高さHを十分に高くできる。その結果、充填材6(埋設部60)の充填高さHをある程度大きくできる。例えば、図7に示すように、磁性コア3の全体を埋設する程度に埋設部60を設けられる。磁性コア3の全体が埋設部60に封止されることで、防食性に優れる。また、充填高さHがある程度大きいことで、コイル2の巻回部2a,2bの開口側面2au,2buと埋設部60の表面60f間の距離を短くできる。この場合、製造過程で、ターン2t,2t間に充填材6を充填し易く、ターン2t,2t間に充填材6が介在するリアクトル1Bを製造できる。
(充填材)
ケース4内に充填される埋設部60の充填高さHは、ケース4の高さH(深さ)に依存する。埋設部60の表面60fは、ケース4の開口縁4e以下の位置、かつ上述のように高さHがコイル2の高さHよりも低いため、巻回部2a,2bの開口側面2au,2bu(ここでは上面)よりも低い位置にある。詳しくは埋設部60の表面60fは、コア片31m,32mの開口側面31u,32u(ここでは上面)と、上記開口側面2au,2buとの中間位置にある。この例では、表面60fの位置が開口縁4eと実質的に同位置であり、露出部20における表面60fからの突出高さH20は巻線2wの幅W以下である。また、ケース4の内底面40iから開口縁4eまでの深さと充填高さHとが実質的に等しい。表面60fは、製造過程において未固化で流動状態の充填材6が形成する液面に相当する。そのため、表面60fの位置,突出高さH20は、例えば、ケース4の高さHを一定として、製造過程で充填高さHを調整することで適宜変更できる。図7の破線円内の拡大図では、突出高さH20が巻線2wの幅Wの50%程度である例を示す。
この例の埋設部60は、組合体10の一部を囲んで連続して存在し、磁性コア3のうち、コイル2から突出する外コア片32mの基部の開口側面32uを埋設する。つまり、リアクトル1Bは、実施形態1と同様に、埋設部60によって、コイル2の大半と磁性コア3の全体とが埋設されて、ケース4に一体化される。このようなリアクトル1Bは、充填材6によって、強度や剛性を十分に高められる上に、騒音や振動の低減、機械的保護などを良好に行える。
露出部20における各ターン2t,2t間にも充填材6の一部が介在されて、ターン介在部62をなす。ターン介在部62は、図7の破線円内に示すように、埋設部60及びギャップ部36に連続しており、これらと一体物である。また、ターン介在部62の表面位置は、埋設部60の表面60fよりも高い。この例のターン介在部62は、巻線2wの幅Wの全域に亘って、つまりコイル2の巻回部2a,2bの内周面側から外周面側の全域に亘って存在する。従って、充填材6は、巻回部2a,2bの全周に亘って存在するといえる。また、全てのターン介在部62の表面位置が実質的に同じであり、巻回部2a,2bの開口側面2au,2buに実質的に面一である。全てのターン介在部62の表面位置が埋設部60の表面60fの位置よりも高い限りにおいて、複数のターン介在部62のうち、一部のターン介在部62が、巻線2wの幅Wの全域に亘って存在しないこと、つまり各ターン介在部62の表面の位置が異なることを許容する。製造条件などによっては、ターン介在部62の表面が巻回部2a,2bの開口側面2au,2buから突出することもある。突出することで、ターン2t,2t間の全域に亘ってターン介在部62が介在することが容易に把握できる。
ターン2t,2t間といった非常に狭い隙間にも容易に、かつ精度よく充填できる充填材6として、上述の濡れ性に優れる樹脂組成物(エポキシ樹脂又はウレタン樹脂と表面エネルギー調整剤とを含むもの)を含むことが好ましい。ベースとなる樹脂組成物が濡れ性に優れるため、磁性粉末6m、更には非磁性粉末6cを含むことで粘度が増大しても、これらの粉末は濡れ性を阻害しないため、濡れ性に優れる充填材6となる。このような充填材6であれば、コア片間等の隙間は勿論、ターン2t、2t間の隙間といった非常に狭い空間でも、その他従来の封止樹脂では行き渡り難い箇所などでも、大気中で高速充填できる。特に、露出部20におけるターン2t,2t間といった、隙間が狭い上に未固化で流動状態にある充填材6が供給され難い箇所であっても、毛管現象などによって充填できる。この例では、埋設部60の表面60fから露出部20における最も遠い箇所(コイル2の巻回部2a,2bの開口側面2au,2bu)までの距離が比較的短いため(ここでは巻線2wの幅W以下であるため)、露出部20におけるターン2t,2t間にも充填材6を充填し易い。
(作用効果)
実施形態2のリアクトル1Bは、実施形態1と同様の理由により漏れ磁束を低減できる上に、生産性にも優れる。
更に、実施形態2のリアクトル1Bは、ケース4内に収納された状態にある組合体10と比較して、ケース4の高さHが低く、リアクトル1Bの高さがケース4に依存しない。この例では、リアクトル1Bの高さは、巻線2wの端部に端子金具を取り付けた状態における組合体10の高さ(コイル2の高さH)と実質的に同じであり、端子金具がコイル2から出っ張らず、端子金具を含めた高さが小さい。そのため、リアクトル1Bは、小型である。
また、リアクトル1Bは、コイル2の露出部20における各ターン2t,2t間にターン介在部62を備えると共に、これらのターン介在部62がギャップ部36及び組合体10の一部を埋設する埋設部60に連続する。そのため、コイル2の熱を、ターン介在部62、ギャップ部36、埋設部60、ケース4を介して設置対象に伝えられる。リアクトル1Bは、充填材6によって連続した放熱経路を良好に構築できて、放熱性により優れる。露出部20がファンなどで冷却される場合にも、放熱性により一層優れる。磁性粉末6mが上述の被覆金属粉末を含んだり、熱伝導性及び絶縁性に優れる非磁性粉末6cを含んだりすれば、放熱性により一層優れる上に、ターン2t,2t間の絶縁性を高められる。
更に、リアクトル1Bは、ケース4の高さHが低く、充填材6の充填量を低減できる。そのため、軽量化、製造コストの低減なども期待できる。
[試験例]
実施形態1のリアクトル1A(試料No.1)、実施形態2のリアクトル1B(試料No.2)を作製した。各試料のリアクトルの構成部材は、以下の通りである。
コイルは、銅導体と、ポリイミドからなる絶縁被覆とを備えるエナメル線であって、被覆平角線を用いる。一対の巻回部は、エッジワイズコイルである。
複数のコア片は、純鉄粉などの軟磁性粉末を用いた圧粉成形体である。
介在部材は、ギャップ形成部、離隔部、貫通孔を備える一対の分割材を備えるPPS樹脂製の成形体である。
ケースは、アルミニウム合金製の箱体である。
試料No.1のケースは、組合体を収納した状態で、ケースの開口縁からコイルが突出しない深さを有するものである。
試料No.2のケースは、組合体を収納した状態で、コイルにおけるケースの開口側の領域がケースの開口縁から突出し、この突出高さが被覆平角線の幅以下となるように、その深さを調整したものである。ここでは、突出高さH20(図7)を被覆平角線の幅Wの50%程度とする。
絶縁層は、熱伝導率が2W/m・K以上の絶縁材料と接着剤成分とを含むものである。
充填材は、以下の磁性粉末と、非磁性粉末とを含み、残部が以下の樹脂組成物であり、比透磁率が2である。
樹脂組成物は、エポキシ樹脂にシリコーン系の表面エネルギー調整剤を添加して、被覆平角線に対する接触角が70°以下になるように調整したものである。ここでは、接触角が40°以上50°以下を満たすように表面エネルギー調整剤の添加量を調整した。圧粉成形体のコア片、アルミニウム合金製のケース、PPS樹脂製の介在部材に対する接触角を調べたところ、いずれも70°以下であった。
上記の表面エネルギー調整剤は、市販の樹脂添加剤が利用できる。例えば、共栄社化学株式会社製の表面調整剤(商品名ポリフロー)、エボニックジャパン株式会社製の表面調整剤(商品名TEGO Glide)などが挙げられる。添加量は、エポキシ樹脂を100重量部として、例えば、0.01重量部以上1.5重量部以下程度が挙げられる。
磁性粉末は、平均粒径(D50)100μmの珪素鋼粉(比透磁率4000程度)とし、充填材100体積%に対して17体積%添加する。
非磁性粉末は、平均粒径が20μmのアルミナ粉末とし、充填材100体積%に対して60体積%添加する。
いずれの試料も、用意した充填材を大気中でケースの開口縁近くまで充填して、充填高さをケースの深さに実質的に等しくする。充填後、所定の温度に加熱して、充填材を固化する。
得られた試料No.1のリアクトルは、巻線の端部を除いて、ケースに収納された組合体が充填材に埋設されている。試料No.2のリアクトルは、コイルの巻回部の一部がケースの開口縁から突出しており、組合体におけるケースに囲まれる部分が主として充填材に覆われている。これら試料No.1,No.2のリアクトルについて、充填材の埋設部の表面を目視観察した。いずれの試料も、大気中で充填したものの、気泡などが実質的に観察されず、優れた外観を有することを確認した。また、充填材中に、磁性粉末及び非磁性粉末が均一的に分散していることを確認した(ルーペなど使用)。
得られた試料No.1,No.2のリアクトルを、コイルの巻回部の軸方向に平行な平面で切断した縦断面をとり、コイルの巻回部内に配置されるコア片間における充填材の充填状態を目視観察した。いずれの試料も、上記コア片が介在部材によって所定の位置に支持されており、上記コア片間には充填材の一部が充填されて、均一的な厚さのギャップ部が形成されていることを確認した。
試料No.2のリアクトルの上記縦断面について、コイルの巻回部のうち、ケースの開口縁から突出する露出部について各ターン間を目視観察した。露出部におけるいずれのターン間についても、巻回部の内周面側から外周面側に亘って充填材の一部が充填されていることを確認した。これらターン間に介在する充填材(ターン介在部)は、ギャップ部及び埋設部に連続し、かつ、これらターン介在部の表面の位置はいずれも、埋設部の表面の位置よりも高いことを確認した。
試料No.1で用いた充填材について、上述の樹脂組成物に代えて、表面エネルギー調整剤を含んでいないエポキシ樹脂を用いたこと以外は、試料No.1と同様にして、リアクトルを作製した。得られたリアクトルは、試料No.1のリアクトルと同様に、コイルの巻回部内のコア片間に充填材の一部が充填されて、ギャップ部が形成されていることを確認した。
この試験例から、充填材が磁性粉末を含む場合、更に非磁性粉末も含む場合、更にはケースの開口縁からコイルの巻回部の一部が突出すると共にターン間に充填材の一部が介在するという構造である場合、その上、充填材を大気雰囲気で充填する場合などには、接触角が十分に小さい樹脂組成物を含む充填材を用いると、隅々まで容易に充填できて好ましいことが分かる。
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明のリアクトルは、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの車両に搭載される車載用コンバータ(代表的にはDC−DCコンバータ)や空調機のコンバータなどの種々のコンバータ、電力変換装置の構成部品に利用することができる。
1A,1B リアクトル 10 組合体
2 コイル
2a,2b 巻回部 2r 連結部 2w 巻線 2t ターン
20 露出部 H 高さ 2au,2bu 開口側面 H20 突出高さ
3 磁性コア
31m 内コア片 32m 外コア片
31u,32u 開口側面
36 ギャップ部
4 ケース
40 底部 41 側壁部
40i 内底面 4e 開口縁 H 高さ
5 介在部材
5A,5B 分割材
51 ギャップ形成部 S51
52 離隔部 520 ベース板部 521 連結脚部
53 貫通孔
6 充填材
6r 樹脂 6m 磁性粉末 6c 非磁性粉末
60 埋設部 62 ターン介在部 60f 表面
充填高さ
7 絶縁層

Claims (4)

  1. 巻回部を有するコイルと、
    前記巻回部内外に配置されて、閉磁路を形成する磁性コアと、
    前記コイルと前記磁性コアとを有する組合体を収納するケースと、
    前記ケース内に充填され、前記組合体の少なくとも一部を埋設する充填材とを備え、
    前記充填材は、樹脂と磁性粉末とを含み、比透磁率が1.5以上5以下であり、
    前記磁性コアは、前記充填材よりも比透磁率が大きい複数のコア片と、前記コア片間に前記充填材の一部が介在されて形成されたギャップ部とを備えるリアクトル。
  2. 前記充填材は、更に非磁性粉末を含み、
    前記磁性粉末の含有量が15体積%以上25体積%以下であり、
    前記非磁性粉末の含有量が35体積%以上70体積%以下であり、
    かつ、前記磁性粉末の比透磁率が1000以上である請求項1に記載のリアクトル。
  3. 前記巻回部と前記磁性コアとの間に介在される介在部材を備え、
    前記介在部材は、前記巻回部内に配置されて隣り合う前記コア片間の間隔を確保するギャップ形成部と、前記巻回部の内面と前記磁性コアの外周面間の間隔を確保する離隔部とを備える請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
  4. 前記充填材は、エポキシ樹脂又はウレタン樹脂と、表面エネルギー調整剤とを含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
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