JP6486188B2 - 電子写真用部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
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Description
また本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を安定して出力できる電子写真装置及びその電子写真装置に用いられるプロセスカートリッジを提供することにある。
すなわち、本発明の一態様によれば、導電性の軸芯体と導電層とを有する電子写真用部材であって、該導電層が、含窒素複素芳香環カチオンと、該含窒素複素芳香環カチオンと反応可能な化合物とから合成された樹脂、及びアニオンを含み、該含窒素複素芳香環カチオンが、水酸基と結合している置換基を二つ有しており、該含窒素複素芳香環カチオン中の含窒素複素芳香環が窒素原子を一つのみ有する場合、該置換基のうち、一方が該含窒素複素芳香環の窒素原子と結合し、他方が該含窒素複素芳香環の炭素原子と結合しており、
該含窒素複素芳香環カチオン中の含窒素複素芳香環が窒素原子を二つ以上有する場合、いずれの該置換基も該含窒素複素芳香環の二つの窒素原子と結合していることを特徴とする電子写真用部材が提供される。
軸芯体2は、電子写真用部材1の電極及び支持部材として機能するもので、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属又は合金;クロム又はニッケルで鍍金処理を施した鉄;導電性を有する合成樹脂の如き導電性の材質で構成され、中実であってもよく、中空であってもよい。
本発明に係る電子写真用部材の導電層は、含窒素複素芳香環カチオンおよび当該カチオンと反応可能な化合物から合成された樹脂と、アニオンと、を含む。本発明において、導電層に含まれる樹脂はイオン導電剤を用いて合成する。イオン導電剤とは、導電層に含まれる樹脂を合成するための材料の一つを指し、カチオンと反応可能な化合物と反応する前の状態のものを言う。また、カチオンとは、イオン導電剤に含まれるカチオンを指し、下記構造式(2)で示される。
また、オキシアルキレン構造が、下記式(I)または(II)で示される構造であることが好ましい。
また、前記オキシアルキレン構造は、下記式(III)または(IV)で示される構造であることが好ましい。
また、A1、A2がポリテトラメチレングリコール基の場合では、繰り返し数2であるとき、カチオン骨格から水酸基までの最短距離で数えた原子の数が9のものに相当する。
カチオン骨格から水酸基までの最短距離で数えた原子の数が9以下であると、水酸基と反応した樹脂による立体障害が大きくなるため、カチオン性有機基に対してよりアニオンが近づきにくくなる。そのためアニオンが移動しやすくなり、導電性に優れる導電層が得られる。
カチオンと反応可能な化合物とは、水酸基と反応する官能基を二個以上含む化合物をいう。カチオンと反応可能な化合物は、イオン導電剤のカチオンが有する水酸基だけでなく、後述するポリオール、又はその他の導電層に含まれる化合物が有する水酸基と反応してもよい。カチオンと反応可能な化合物としては、例えば、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物、グリシジル基を有するエポキシド化合物、アルコキシ基、イミノ基、メチロール基を有するメラミン化合物等が挙げられる。イソシアネート化合物の例としては、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の如き脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネートの如き脂環式ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートの如き芳香族イソシアネート及びこれらの共重合物やイソシアヌレート体、TMPアダクト体、ビウレット体、それらのブロック体等のイソシアネート化合物が挙げられる。エポキシド化合物の例としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジエポキシド、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の芳香族ジエポキシドが挙げられる。メラミン化合物の例としては、例えばメチル化型メラミン、ブチル化型メラミン、イミノ型メラミン、メチルブチル混合型メラミン、メチロール型メラミンを用いることができる。
図2は本発明に係るプロセスカートリッジの断面図である。図2に示したプロセスカートリッジ17は、現像剤担持体としての現像ローラ16、現像ブレード(トナー規制ブレード)21、及び電子写真感光体18、クリーニングブレード26、廃トナー収容容器25、及び、帯電部材としての帯電ローラ24が一体化されている。また、当該プロセスカートリッジは、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている。現像装置22は、トナー容器20を含み、トナー容器20中には、トナー15が充填されている。トナー容器20中のトナー15は、トナー供給ローラ19によって現像ローラ16の表面に供給され、現像ブレード21によって、現像ローラ16の表面に所定の厚みのトナーの層が形成される。
感光体18は矢印方向に回転し、感光体18を帯電処理するための帯電ローラ24によって一様に帯電され、感光体18に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光体18に対して接触配置される現像装置22によってトナーを付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
現像装置22は、一成分現像剤としてトナー15を収容したトナー容器20と、トナー容器20内の長手方向に延在する開口部に位置し感光体18と対向設置された現像剤担持体としての現像ローラ16とを備えている。この現像装置22は感光体18上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。なお、バイアス電源30から現像ローラ16および現像ブレード21にそれぞれ電圧が印加されている。
SUS304製の直径6mm、全長278.9mmの芯金に、プライマー(商品名、DY35−051;東レ・ダウコーニング社製)を塗布し、温度180℃に加熱したオーブンで20分間焼きつけ軸芯体とした。
上記で用意した軸芯体を金型に配置し、以下の材料を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。
・液状シリコーンゴム材料(商品名、SE6724A/B;東レ・ダウコーニング社製)100質量部、
・カーボンブラック(商品名、トーカブラック#4300;東海カーボン社製)15質量部、
・耐熱性付与剤としてのシリカ粉体 0.2質量部、
・白金触媒 0.1質量部。
続いて、金型を15分間150℃に加熱して、シリコーンゴムを加硫して硬化させた。周面に硬化したシリコーンゴム層が形成された軸芯体を金型から脱型した後、当該軸芯体を、さらに温度180℃で1時間加熱して、シリコーンゴム層の硬化反応を完了させた。こうして、軸芯体の外周に直径12mmのシリコーンゴム弾性層が形成された弾性ローラD−1を作成した。
快削鋼の表面に無電解ニッケルメッキ処理を施した全長252mm、外径6mmの丸棒を用意した。次に前記丸棒の両端部11mmずつを除く230mmの範囲に全周にわたって、接着剤を塗布し、軸芯体とした。接着剤は、導電性のホットメルトタイプのものを使用した。また、塗布にはロールコーターを用いた。
・NBRゴム(商品名:Nipol DN219;日本ゼオン社製)100.0質量部
・カーボンブラック(商品名:トーカブラック#4300;東海カーボン社製)40.0質量部
・炭酸カルシウム(商品名:ナノックス#30;丸尾カルシウム社製)20.0質量部
・ステアリン酸(商品名:ステアリン酸S;花王社製) 1.0質量部、
さらに、前記A練りゴム組成物166.0質量部と下記に示す種類と量の各材料をオープンロールにて混合し未加硫ゴム組成物を調製した。
・硫黄(商品名:Sulfax 200S;鶴見化学工業社製) 1.2質量部
・テトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名:TBZTD;三新化学工業社製)4.5質量部
以下に本発明に用いる表面層を得るための合成例を示す。
<イオン導電剤の合成>
本発明に用いるイオン導電剤は、例えばメンシュトキン反応等の、公知の求核置換反応を一段階又は複数の段階用いて前駆体を合成した後、公知のイオン交換反応を行うことによって得ることができる。
従って、求核剤には、例えばイミダゾール化合物、ピリジン化合物、ピラゾール化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及びキノリン化合物等の、求核性の窒素原子を有する化合物を用いることができる。
また、求電子剤には、例えば水酸基を置換したハロゲン化アルキル化合物等を用いることができる。
更に、イオン交換反応に用いるアルカリ金属塩には、例えばフッ化アルキルスルホン酸リチウム塩、及びフッ化アルキルスルホニルイミドカリウム塩などの、前述した本発明のアニオンを含むアルカリ金属塩を用いることができる。
求核置換反応に用いる求核剤、求電子剤、及びイオン交換反応に用いるアルカリ金属塩を所望の組み合わせに変更することで、目的のイオン導電剤を公知の方法の組み合わせによって合成することができる。イオン導電剤を合成する例を以下に示す。用いた求核剤、求電子剤、及びイオン交換反応に用いるアルカリ金属塩を表1、表2、及び表9に示す。
ジムロート冷却器を取り付けたナスフラスコに撹拌子とテトラヒドロフラン(以下THF、関東化学社製)50mlを入れ、水素化ナトリウム(関東化学社製)12.5g(0.52mol)を分散させ、ナスフラスコを氷浴で冷却した。求核剤であるN−1(イミダゾール、東京化成工業社製)8.94g(0.13mol)をTHF50mlに溶解させた溶液をゆっくり滴下した後、氷浴を取り外し室温で2時間撹拌した。求電子剤であるQ−1(2−ブロモエタノール)(東京化成工業社製)41.1g(0.33mmol)を室温で加えた後、70℃で7時間加熱還流した。反応後の反応液をろ過し、不溶分をTHFで洗い流し、得られたろ液の溶媒を減圧留去した。再びジクロロメタンに溶解させ、ろ過し、ろ液を回収後溶媒を減圧留去した。得られた濃縮物をジエチルエーテルにて洗浄し、減圧下乾燥し、イオン導電剤前駆体P−1を28g得た。
原料となる求核剤、求電子剤の種類及び配合量を、表3に記載の通り変更した以外は、イオン導電剤前駆体P−1の合成と同様にして、イオン導電剤前駆体P−2、P−7、P−16を得た。
ジムロート冷却器を取り付けたフラスコに、求核剤であるN−1(イミダゾール、東京化成工業社製)6.17g(0.09mol)、求電子剤であるQ−2(2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、東京化成工業社製)23g(0.14mol)、炭酸カリウム(関東化学社製)25g(0.18mol)、アセトン200mlを加え、65℃で一晩加熱還流させた。反応後、反応液をろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製し、求核剤が三級化された化合物を得た。続いて、得られた化合物をジクロロメタン50mlに溶解させ、求電子剤であるQ−4(4−ブロモ−1−ブタノール、東京化成工業社製)20.8g(0.14mol)を加え、40℃で18時間加熱還流した。反応後溶媒を減圧留去し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥後白色粉末として四級化されたイオン導電剤前駆体P−3を得た。
原料となる求核剤、求電子剤の種類及び配合量を、表4に記載の通り変更した以外は、イオン導電剤前駆体P−3の合成と同様にして、イオン導電剤前駆体P−4、P−5、P−6を得た。
丸底フラスコに、蒸留したTHF500mlと2,6−ジ−tert−ブチルピリジン(Sigma Aldrich社製)1gを入れ、窒素雰囲気下0℃に冷却した。続いて、トリフルオロメタンスルホン酸メチル(東京化成工業社製)3.6g(22mmol)を開始剤として添加した。重合を停止させるため求核剤N−3(2−メチルベンズイミダゾール、東京化成工業社製)5.87g(44.5mmol)を加え、水中とジエチルエーテル中でポリマーを沈殿精製し、減圧乾燥後白色粉末としてテトラメチレングリコール置換されたイミダゾールを得た。続いてこれを四級化させるため、得られたポリマーをジクロロメタン200mlに溶解させ、求電子剤Q−3(6−ブロモ−1−ヘキサノール、東京化成工業社製)12.1g(67mmol)を加え、40℃で18時間加熱還流した。反応後溶媒を減圧留去し、ジエチルエーテルで洗浄後乾燥し、白色粉末を得た。アニオンを塩化物イオンに交換するため、得られたポリマーをイオン交換樹脂Dowex(和光純薬工業社製)を分散させたメタノール中で2〜3時間撹拌した。イオン交換樹脂をろ過で除去し、乾燥後、四級化されたイオン導電剤前駆体P−8を得た。P−8のアニオンは塩化物イオンである。
反応に用いる求核剤をN−1(イミダゾール、東京化成工業社製)2.87g(42mmol)、求電子剤をQ−8(12−ブロモ−1−ドデカノール、東京化成工業社製)16.8g(63mmol)に変更した以外は、イオン導電剤前駆体P−8の場合と同様に、イオン導電剤前駆体P−9を合成した。
求核剤であるN−4(2−ピリジンエタノール、東京化成工業社製)12.0g(0.15mol)をジクロロメタン200mlに溶解させ、求電子剤であるQ−1(2−ブロモエタノール、東京化成工業社製)38g(0.3mol)を加え、40℃で18時間加熱還流した。反応後溶媒を減圧留去し、ジエチルエーテルで洗浄後白色粉末として四級化されたイオン導電剤前駆体P−10を得た。
反応に用いる求核剤、求電子剤の種類及び配合量を表5に記載の通り変更した以外は、イオン導電剤前駆体P−10の場合と同様に、イオン導電剤前駆体P−11、P−12、P−14を合成した。
丸底フラスコに、蒸留したTHF 500mlと2,6−ジ−tert−ブチルピリジン(Sigma Aldrich社製)1.2gを入れ、不活性雰囲気下0℃に冷却した。続いて、トリフルオロメタンスルホン酸メチル4.92g(30mmol)を開始剤として添加した。重合を停止させるため求核剤N−4(2−ピリジンエタノール、東京化成工業社製)7.3g(59mmol)を加え、水中とジエチルエーテル中でポリマーを沈殿精製し、減圧乾燥後白色粉末としてテトラメチレングリコール置換されたピリジニウム塩を得た。アニオンを塩化物イオンに交換するため、得られたポリマーを、イオン交換樹脂Dowex(和光純薬工業社製)を分散させたメタノール中で2〜3時間撹拌した。イオン交換樹脂をろ過で除去し、乾燥後、四級化されたイオン導電剤前駆体P−13を得た。P−13のアニオンは塩化物イオンである。
求電子剤Q−6(10−ブロモ−1−デカノール、東京化成工業社製)19g(80mmol)に、N,N−ジメチルホルムアミド中イミダゾールの存在下tert−ブチルジメチルシリルクロリドを室温で3時間反応させ、酢酸エチル/水中で分液し乾燥後水酸基をシリル化した化合物を得た。蒸留したTHF400mlに、不活性雰囲気下求核剤N−7(3−ブロモピリジン、東京化成工業社製)8.55g(54mmol)を溶解させ、ドライアイス/メタノール浴で−78℃に冷却した。続いてn−ブチルリチウム/ヘキサン2.6mol/l溶液(関東化学社製)23ml(60mmol)をゆっくり滴下し、30分撹拌した。続いてシリル化したQ−6のTHF溶液50mlをゆっくり滴下した。−78℃で3時間、室温で一晩反応させた後、反応溶液に塩酸を加え、室温で1時間撹拌し脱シリル化させる。溶媒を減圧留去した後、ジクロロメタン/水で分液し、乾燥後3−(10−ヒドロキシデシル)ピリジンを白色粉末として得た。これをジクロロメタン50mlに溶解させ、四級化のための求電子剤であるQ−8(12−ブロモ−1−ドデカノール、東京化成工業社製)15.8g(60mmol)を加え、40℃で18時間加熱還流した。反応後溶媒を減圧留去し、ジエチルエーテルで洗浄後乾燥し、白色粉末として四級化されたイオン導電剤前駆体P−15を得た。P−15のアニオンは臭化物イオンである。
反応に用いる求核剤、求電子剤を表6に記載の通り変更した以外は、イオン導電剤前駆体P−15の場合と同様に、イオン導電剤前駆体P−17、P−18、P−19を合成した。
ナスフラスコにジムロート冷却器を取り付け、求核剤N−12(ジブチルアミン、東京化成工業社製)14.5g(0.11mol)、求電子剤Q−1(2−ブロモエタノール、東京化成工業社製)35.5g(0.28mol)をアセトニトリル200mlに溶解させ、炭酸カリウム69g(0.5mol)を添加した。90℃で一晩沸点還流し、反応液を酢酸エチル/水で分液し、有機層を回収し、溶媒を減圧留去し白色固体として四級化されたイオン導電剤前駆体P−20を得た。得られた前駆体のアニオンは臭化物イオンである。
反応に用いる求核剤、求電子剤を表7に記載の通り変更した以外は、イオン導電剤前駆体P−20の場合と同様に、イオン導電剤前駆体P−21、P−22、P−23を合成した。
求核剤であるN−16(4,5−ジブロモイミダゾール、Sigma Aldrich社製)15.5g(73mmol)、求電子剤であるQ−12(1−ブロモブタン、東京化成工業社製)15.2g(0.11mol)、炭酸カリウム(関東化学社製)27.8g(0.2mol)、アセトン100mlを加え、65℃で一晩加熱還流させた。反応後、反応液をろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製し、求核剤が三級化された化合物を得た。続いて得られた化合物をジクロロメタン50mlに溶解させ、求電子剤であるQ−11(ヨードエタン、東京化成工業社製)17.1g(0.11mmol)を加え、40℃で18時間加熱還流した。反応後溶媒を減圧留去し、ジエチルエーテルで洗浄後白色粉末として4,5−ジブロモエチルブチルイミダゾリウムヨージドを得た。続いてこの化合物を窒素雰囲気下、蒸留したTHF300mlに溶解させ、ドライアイス/メタノール浴で−78℃に冷却した。続いてn−ブチルリチウム/ヘキサン2.6M溶液(関東化学社製)80mlをゆっくり滴下し、30分撹拌した。続いて求核剤Q−9(2−ブロモエトキシ−tert−ブチルジメチルシラン、Sigma Aldrich社製)52.3g(0.22mmol)のTHF溶液100mlをゆっくり滴下した。−78℃で3時間、室温で一晩反応させた後、反応溶液に塩酸を加え、室温で1時間撹拌し脱シリル化させた。溶媒を減圧留去した後、酢酸エチル/水で分液した後、白色粉末としてイオン導電剤前駆体P−24を得た。P−24のアニオンはヨウ化物イオンである。
反応に用いる求核剤、求電子剤を表8に記載の通り変更した以外は、イオン導電剤前駆体P−24の場合と同様に、イオン導電剤前駆体P−25、P−26、P−27、P−28を合成した。なお、イオン導電剤前駆体P−24の合成におけるQ−12が求電子剤A、Q−11が求電子剤B、Q−9が求電子剤Cをそれぞれ表す。
イオン導電剤前駆体P−1、7.7g(33mmol)をジクロロメタン50mlに溶解させた後、アニオン交換塩であるA−1(ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドリチウム、東京化成工業社製)10.3g(36mmol)を溶解させた水溶液を加え、24時間攪拌した。得られた溶液を分液し、有機層を得た。この有機層を水にて2回分液後、ジクロロメタンを減圧留去し、アニオンがビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドアニオンであるイオン導電剤C−1を得た。
反応に用いるイオン導電剤前駆体、アニオン交換塩の種類及び配合量を表10に記載の通り変更した以外は、イオン導電剤C−1の場合と同様に、イオン導電剤C−2〜C−11、C−13〜C−30を合成した。イオン導電剤C−12は、イオン導電剤前駆体P−11を、イオン交換せずにそのまま用いた。
窒素雰囲気下、反応容器中でイソシアネートD−1ポリメリックMDI(商品名:ミリオネートMR200;(東ソー(旧:日本ポリウレタン工業)社製)38質量部に対し、ポリオールF−1(ポリ(テトラメチレングリコール)(商品名:PTMG2000;三菱化学社製))100質量部を反応容器内の温度を65℃に保持しつつ、徐々に滴下した。滴下終了後、温度65℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、メチルエチルケトン(MEK)50質量部で希釈し、イソシアネート基含有量3.4%のイソシアネート基末端プレポリマーB−1の溶液を得た。
反応に用いるイソシアネートとポリオールの種類及び配合量を、表13〜表15に記載の通りに変更した以外は、イソシアネート基末端プレポリマーB−1の場合と同様にして、イソシアネート基末端プレポリマーB−2〜B−4を合成した。
以下に、本発明の電子写真用部材の製造法について説明する。
表面層の材料として、以下の材料を撹拌混合した。
・反応性化合物
イソシアネート基末端プレポリマーB−1 66.4質量部
・ポリオール
ポリオールE−1(ポリ(テトラメチレングリコール)(三菱化学社製)) 30.6質量部
・イオン導電剤
イオン導電剤C−1 3.0質量部
・ウレタン樹脂微粒子(商品名、アートパールC−400;根上工業社製)90.0質量部
次に、混合物に総固形分比が30質量%となるようにメチルエチルケトン(以下、MEKという)を加えた後、サンドミルにて混合した。ついで、更に、MEKで混合物粘度を10〜13cpsに調整して表面層形成用塗料を調製した。
先に作成した弾性ローラD−1を、表面層形成用塗料に浸漬して、弾性ローラD−1の弾性層の表面に当該塗料の塗膜を形成し、乾燥させた。さらに温度160℃にて1時間加熱処理することで弾性層の外周に膜厚15μmの表面層を設け、実施例1に係る電子写真用部材を作成した。
本実施例で得られた表面層については、熱分解装置(商品名:パイロホイルサンプラーJPS−700、日本分析工業社製)及びGC/MS装置(商品名:Focus GC/ISQ、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用い、熱分解温度を590℃、キャリアガスとしてヘリウムを使用し、分析を行った。その結果、得られたフラグメントピークから、表面層が、それを構成する樹脂に、前記構造式(1)に示される構造を有していることが確認された。
こうして得られた実施例1に係る電子写真用部材を現像ローラ(現像剤担持体)として、以下の項目について評価を行った。
現像ローラ電流値の測定は、温度23℃、相対湿度45%RH(以下N/Nと記す)の環境中に6時間以上現像ローラを放置し、N/N環境下で行った。
図4に、ローラ電流値評価冶具の概略構成図を示す。導電層の導電性が高い(抵抗が小さい)と、ローラに流れる電流値が大きくなる。そのため、一定電圧印加時の現像ローラに流れる電流値を測定することで、導電層の導電性を評価できる。
まず、図4(a)において、導電性の軸受け38を介して、電子写真用部材1の導電性の軸芯体2の両端を各々4.9Nの荷重で押しながら、直径40mmの円柱形金属37を回転させ、現像ローラとしての電子写真用部材1を60rpmの速度で従動回転させる。
次に、図4(b)において、高圧電源39によって電圧50Vを印加し、円柱形金属37とグランドとの間に配設した既知の電気抵抗(現像ローラの電気抵抗に対して2桁以上電気抵抗が低いもの)を有する抵抗器の両端の電位差を計測した。当該電位差の計測には、電圧計40(FLUKE社製 189TRUE RMS MULTIMETER)を用いた。測定した電位差と抵抗器の電気抵抗から、現像ローラとしての電子写真用部材1を介して円柱形金属に流れた電流を計算により求めた。ここで、該電位差の計測は、電圧印加2秒後から3秒間サンプリングを行い、その平均値から計算される値をローラ電流値とした。
次に、上記のようにして予め電流値の測定を行った現像ローラを、温度15℃、相対湿度10%(以下、L/Lと記す)の環境中に6時間以上放置した後、以下の評価を行った。
図3に示す構成を有する電子写真装置であるレーザープリンター(商品名:LBP7700C、キヤノン製)をL/L環境中に設置し、本実施例で得られた電子写真用部材を現像ローラとして装填し、ゴースト画像の評価を行った。
ゴースト画像の評価には、ブラックトナーを用い、画像パターンとしてA4サイズの用紙の1枚内で先端部に15mm×15mm角のベタ黒画像、その後に全面ハーフトーンの画像を印字した。次に、得られた印刷物において、ハーフトーン画像部分に現れる現像ローラの回転周期の濃度ムラを目視評価し、以下の基準でゴーストの評価とした。
(L/L環境下でのゴースト評価の基準)
A:ゴーストが全く認められない
B:極軽微なゴーストが認められる
C:軽微なゴーストが認められる
D:顕著なゴーストが認められる
以下に、本発明の別の電子写真用部材の製造法について説明する。
表面層の材料として、以下の材料を撹拌混合した。
・反応性化合物
反応性化合物R−2(ビスフェノールAジグリシジルエーテル(東京化成工業社製)) 18.0質量部
・ポリオール
ポリオールE−4(ポリエチレングリコール(三洋化成工業社製)) 72.0質量部
・イオン導電剤
イオン導電剤C−8 10.0質量部
・ウレタン樹脂微粒子(商品名、アートパールC−400;根上工業社製) 90.0質量部
次に、混合物に総固形分比が30質量%となるようにメチルエチルケトン(以下、MEKという)を加えた後、サンドミルにて混合した。ついで、更に、MEKで混合物の粘度を10〜13cpsに調整して表面層形成用塗料を調製した。
先に作成した弾性ローラD−1を、表面層形成用塗料に浸漬して、弾性ローラD−1の弾性層の表面に当該塗料の塗膜を形成し、乾燥させた。さらに温度180℃にて2時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚15μmの表面層を設け、実施例8に係る電子写真用部材を作製した。
以下に、本発明の別の電子写真用部材の製造法について説明する。
表面層の材料として、以下の材料を撹拌混合した。
・反応性化合物
反応性化合物R−3(2,4,6−トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン(東京化成工業社製)) 15.0質量部
・ポリオール
ポリオールE−4(ポリエチレングリコール(三洋化成工業社製) 82.0質量部
・イオン導電剤
イオン導電剤C−9 3.0質量部
・ウレタン樹脂微粒子(商品名、アートパールC−400;根上工業社製) 90.0質量部
次に、混合物に総固形分比が30質量%となるようにメチルエチルケトン(以下、MEKという)を加えた後、サンドミルにて混合した。ついで、更に、MEKで混合物の粘度を10〜13cpsに調整して表面層形成用塗料を調製した。
先に作成した弾性ローラD−1を、表面層形成用塗料に浸漬して、弾性ローラD−1の弾性層の表面に当該塗料の塗膜を形成し、乾燥させた。さらに温度180℃にて20分間加熱処理することで弾性層外周に膜厚15μmの表面層を設け、実施例9に係る電子写真用部材を作製した。
実施例1から、表面層の材料である反応性化合物、ポリオールおよびイオン導電剤として、下記表16〜表18に記載の材料を用いるように変更した以外は実施例1と同様に表面層形成用塗料を作成した。なお、ウレタン樹脂微粒子(商品名、アートパールC−400;根上工業社製)については、いずれにおいても実施例1,8および9と同様に90.0質量部用いた。そして、各塗料を弾性ローラD−1に対して、実施例1と同様にして塗布、乾燥及び加熱を行って実施例2〜7、10〜21に係る電子写真用部材を作製した。
表面層の材料として、ポリオールE−1(ポリ(テトラメチレングリコール)(三菱化学社製))30.0質量部に対し、イオン導電剤C−22 3.0質量部、イソシアネート基末端プレポリマーB−1 67.0質量部、及びウレタン樹脂微粒子(商品名、アートパールC−400;根上工業社製)90.0質量部、を撹拌混合した。
以降は、実施例1に係る表面層形成用塗料の調製方法と同様にして比較例1に係る表面層形成用塗料を調製した。この表面層形成用塗料を実施例1と同様にして弾性ローラD−1のシリコーンゴム弾性層の表面に塗工、乾燥させて表面層を形成し、比較例1の電子写真用部材を作製した。
実施例1から、表面層の材料である反応性化合物、ポリオールおよびイオン導電剤として、下記表19に記載の材料を用いるように変更した以外は実施例1と同様に表面層形成用塗料を作製した。なお、ウレタン樹脂微粒子(商品名、アートパールC−400;根上工業社製)については、いずれにおいても実施例1と同様に90.0質量部用いた。そして、各塗料を弾性ローラに対して、実施例1と同様にして塗布、乾燥及び加熱を行って比較例2〜9に係る電子写真用部材を作製した。
特に、実施例1〜5、8、9、11、12、14、18〜21に係る樹脂は、イオン導電剤のカチオンが有する水酸基と結合している置換基が、末端に水酸基を有し、炭素数が2〜8のオキシアルキレン構造を有する。係る樹脂を含む表面層を備えた電子写真用部材は、導電性が高く、高品質な画像が得られている。
さらに実施例1〜5、8、9、11、12、14に係る樹脂は、カチオンがイミダゾリウム、ピリジニウムのいずれかの構造を有するイオン導電剤を用いている。係る樹脂を含む表面層を備えた電子写真用部材は、特に導電性が高く、高品質な画像が得られている。
実施例1と同様に表面層形成用塗料を作成した。そして、弾性ローラD−1を弾性ローラD−2に変更した以外は実施例1と同様にして塗布、乾燥及び加熱を行って実施例22に係る電子写真用部材を作製した。
表面層の材料として、比較例1の材料を用いた以外は実施例22と同様にして、比較例10に係る電子写真用部材を作製した。
実施例22及び比較例10に係る電子写真用部材を帯電部材(帯電ローラ)として、以下の項目について評価を行った。
帯電ローラ電流値は、N/Nの環境中に帯電ローラとして用いる電子写真用部材を6時間以上放置し、N/N環境下で測定を行った。
図4に、ローラ電流値評価冶具の概略構成図を示す。
図4(a)に示すように、帯電ローラとしての電子写真用部材1の導電性の軸受け38を介して導電性の軸芯体2の両端を、各々4.9Nの荷重で押しながら直径30mmの円柱形金属37を30rpmの速度で回転させ、帯電ローラとしての電子写真用部材1を従動回転させる。
次に、図4(b)において、高圧電源39によって電圧200Vを印加し、円柱形金属37とグランドとの間に配設した既知の電気抵抗(帯電ローラの電気抵抗に対して2桁以上電気抵抗が低いもの)を有する抵抗器の両端の電位差を計測した。当該電位差の計測には、電圧計40(FLUKE社製 189TRUE RMS MULTIMETER)を用いた。測定した電位差と抵抗器の電気抵抗から、帯電ローラとしての電子写真用部材1を介して円柱形金属に流れた電流を計算により求めた。ここで、該電位差の計測は、電圧印加2秒後から3秒間サンプリングを行い、その平均値から計算される値をローラ電流値とした。
帯電ローラの導電性が低いと、ハーフトーン画像に細かいスジ状の濃度ムラ(横スジ)が発生することがある。これを横スジ画像と呼ぶ。この横スジ画像は導電性が低いほど発生する傾向にある。
電子写真装置であるレーザープリンター(商品名:LBP7700C、キヤノン製)の帯電ローラとして上記の実施例で得られた電子写真用部材を装着した。そしてハーフトーン画像(感光体の回転方向と該回転方向に対して垂直方向のそれぞれに幅1ドット、間隔2ドットの線を描く画像)を出力した。得られた画像を目視にて観察し、細かいスジ状の濃度ムラ(横スジ)を評価した。評価結果を表21に示す。横スジの評価基準は以下の通りである。
A:横スジが全く発生しないレベル。
B:横スジが画像端部のみに軽微に発生するレベル。
C:横スジが画像のほぼ半分の領域に発生し、目立つレベル。
2:軸芯体
3:弾性層
4:表面層
5:中間層
Claims (14)
- 導電性の軸芯体と導電層とを有する電子写真用部材であって、
該導電層が、
含窒素複素芳香環カチオンと、該含窒素複素芳香環カチオンと反応可能な化合物と、から合成された樹脂、及び
アニオンを含み、
該含窒素複素芳香環カチオンが、水酸基と結合している置換基を二つ有しており、
該含窒素複素芳香環カチオン中の含窒素複素芳香環が窒素原子を一つのみ有する場合、該置換基のうち、一方が該含窒素複素芳香環の窒素原子と結合し、他方が該含窒素複素芳香環の炭素原子と結合しており、
該含窒素複素芳香環カチオン中の含窒素複素芳香環が窒素原子を二つ以上有する場合、いずれの該置換基も該含窒素複素芳香環の二つの窒素原子と結合していることを特徴とする電子写真用部材。 - 前記水酸基と結合している置換基が、前記水酸基の水素原子と、前記窒素原子との間にオキシアルキレン構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真用部材。
- 前記含窒素複素芳香環カチオンが、イミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオンから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真用部材。
- 前記アニオンが、フッ化スルホン酸アニオン、フッ化カルボン酸アニオン、フッ化スルホニルイミドアニオン、フッ化スルホニルメチドアニオン、フッ化アルキルフルオロホウ酸アニオン、フッ化アルキルフッ化リン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ジシアンアミドアニオン及びビス(オキサラト)ホウ酸アニオンから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真用部材。
- 前記含窒素複素芳香環カチオンと反応可能な化合物が、イソシアネート化合物、エポキシド化合物及びメラミン化合物から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真用部材。
- 導電性の軸芯体と導電層とを有する電子写真用部材であって、
該導電層が、
下記構造式(1)で示される構造を有する樹脂と、アニオンと、を有することを特徴とする電子写真用部材:
- 前記連結基が、オキシアルキレン構造を有することを特徴とする請求項7に記載の電子写真用部材。
- 前記構造式(1)中のZが、カチオン性のイミダゾリウム骨格及びカチオン性のピリジニウム骨格から選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の電子写真用部材。
- 前記アニオンが、フッ化スルホン酸アニオン、フッ化カルボン酸アニオン、フッ化スルホニルイミドアニオン、フッ化スルホニルメチドアニオン、フッ化アルキルフルオロホウ酸アニオン、フッ化アルキルフルオロリン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ジシアンアミドアニオン及びビス(オキサラト)ホウ酸アニオンから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の電子写真用部材。
- 前記構造式(1)中のB1又はB2が、水酸基の水素原子と、イソシアネート化合物、エポキシド化合物及びメラミン化合物から選ばれる少なくとも一つとが反応した残基を含むことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の電子写真用部材。
- 電子写真装置の本体に着脱可能に構成されている、帯電部材及び現像剤担持体のいずれか一方を少なくとも備えているプロセスカートリッジであって、該帯電部材又は該現像剤担持体が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電子写真用部材であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 電子写真感光体と、帯電部材及び現像剤担持体を備えている電子写真装置であって、該帯電部材又は該現像剤担持体が請求項1〜12のいずれか1項に記載の電子写真用部材であることを特徴とする電子写真装置。
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