JP6484294B2 - 電解質膜・電極構造体の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Description
本発明は、多孔性の第1電極及び第2電極が固体高分子電解質膜の両側にそれぞれ接合された電解質膜・電極構造体の製造方法及び製造装置に関する。
固体高分子型の燃料電池の単位セルは、電解質膜・電極構造体を一組のセパレータによって挟持することで構成される。電解質膜・電極構造体は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜の両側にそれぞれ接合される第1電極及び第2電極とを有する。
第1電極及び第2電極の各々は、多孔性であり且つ電極触媒層とガス拡散層とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜に臨み、電極反応の反応場となる。ガス拡散層は、電極触媒層に反応ガスを拡散して供給する。
この種の電解質膜・電極構造体を製造するために、例えば、特許文献1記載の製造方法が知られている。この製造方法では、第1電極及び第2電極の間に固体高分子電解質膜を配置して積層体を形成し、該積層体に、その積層方向両側から加熱した金型を押し付けてホットプレスを行う。これによって、第1電極及び第2電極を介して固体高分子電解質膜まで金型の熱を伝導させ、第1電極及び第2電極のそれぞれと固体高分子電解質膜とを一体化して、電解質膜・電極構造体を得る。
しかしながら、第1電極と固体高分子電解質膜と第2電極を所望の位置関係となるように積層して、該位置関係を維持したままホットプレスを行うことは困難である。従って、上記の製造方法では、第1電極と固体高分子電解質膜と第2電極とが位置ずれした状態で接合される懸念がある。
この位置ずれを抑制するべく、例えば、固体高分子電解質膜の一方の面側に第1電極を接合して互いを位置決め固定した後に、他方の面側に第2電極を接合することも考えられる。ところが、上記の製造方法において、固体高分子電解質膜の一方の面側に第1電極を接合しようとすると、他方の面を金型に直接接触させてホットプレスすることになる。このため、軟化した固体高分子電解質膜が金型に付着する等して、電解質膜・電極構造体を得ること自体が困難になる。
本発明は、この種の問題を解決するものであり、第1電極と固体高分子電解質膜と第2電極との位置ずれや、固体高分子電解質膜の変形が抑制された電解質膜・電極構造体を容易に得ることが可能な電解質膜・電極構造体の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、ガス拡散層及び電極触媒層をそれぞれ有する多孔性の第1電極及び第2電極が固体高分子電解質膜の両側にそれぞれ接合された電解質膜・電極構造体の製造方法であって、吸引手段及び加熱手段が設けられた吸引加熱板の吸引加熱面に配置した前記第1電極を介して、該第1電極に積層された前記固体高分子電解質膜を吸引及び加熱することで、前記第1電極と前記固体高分子電解質膜の一方の面とを接合して接合体とする第1接合工程と、前記接合体の前記固体高分子電解質膜と前記第2電極とを積層した積層体を、前記吸引加熱面と加熱板との間で積層方向に加圧しつつ加熱することで、前記第2電極と前記固体高分子電解質膜の他方の面とを接合する第2接合工程と、を有することを特徴とする。
この電解質膜・電極構造体の製造方法では、第1接合工程により、固体高分子電解質膜の一方の面に第1電極を接合して互いを位置決め固定した後に、第2接合工程により、固体高分子電解質膜の他方の面に第2電極を接合する。これによって、例えば、第1電極と、固体高分子電解質膜と、第2電極を単に積層してホットプレスするような場合に比して、これらの位置ずれを容易に抑制することができる。
また、第1接合工程では、吸引加熱面から多孔性の第1電極を介して固体高分子電解質膜を吸引及び加熱する。これによって、固体高分子電解質膜に第1電極以外の構成を接触させることなく、該固体高分子電解質膜の一方の面を第1電極に向かって押圧しつつ加熱して、互いを接合することができる。従って、上記のように、固体高分子電解質膜の一方の面に第1電極を接合しても、例えば、金型を用いたホットプレス等を行う場合とは異なり、加熱により軟化した固体高分子電解質膜が該金型に付着すること等がない。
さらに、第1接合工程では、第1電極と所望の位置関係で積層された固体高分子電解質膜が、吸引加熱面からの吸引力を受けることで、位置ずれや、熱による変形が抑制された状態で該第1電極と接合される。これによって、固体高分子電解質膜の熱による変形を容易に抑制することができる。
以上から、この電解質膜・電極構造体の製造方法によれば、第1電極と固体高分子電解質膜と第2電極との位置ずれや、固体高分子電解質膜の変形を容易に抑制して、品質に優れた電解質膜・電極構造体を得ることができる。
上記の電解質膜・電極構造体の製造方法において、前記第1接合工程と前記第2接合工程との間に、前記接合体を前記吸引加熱面から搬送手段に受け渡す工程と、前記接合体を受け渡した後の前記吸引加熱面に前記第2電極を配置して吸引する工程と、前記吸引加熱面に吸引された前記第2電極に前記接合体を積層して前記積層体とする工程と、をさらに有し、前記第2接合工程では、前記第2電極を介して前記固体高分子電解質膜を吸引した状態で前記積層体を加圧しつつ加熱することとしてもよい。
この場合、第2接合工程においても、第2電極と所望の位置関係で積層された接合体の固体高分子電解質膜が、吸引加熱面から吸引力を受けることで、位置ずれや、熱による変形が抑制された状態で該第2電極と接合される。これによって、第1電極と固体高分子電解質膜と第2電極との位置ずれや、固体高分子電解質膜の変形を一層効果的に抑制することができる。
また、接合体を搬送手段に受け渡すことにより、第1電極の吸引、第1電極を介した固体高分子電解質膜の吸引、第2電極の吸引、第2電極を介した固体高分子電解質膜(接合体)の吸引を吸引加熱板によって行うことができる。これによって、電解質膜・電極構造体を製造するための設備を簡素化することができる。
上記の電解質膜・電極構造体の製造方法において、前記加熱板は、前記第2電極を吸引可能であり、前記第1接合工程と前記第2接合工程との間に、前記吸引加熱面に吸引された状態の前記接合体に、前記第2電極を吸引した状態の前記加熱板を接近させることで、前記接合体と前記第2電極とを積層して前記積層体とする工程をさらに有し、前記第2接合工程では、前記吸引加熱面及び前記加熱板のそれぞれにより前記第1電極及び前記第2電極を介して前記固体高分子電解質膜を吸引した状態で前記積層体を加圧しつつ加熱することとしてもよい。
この場合、第2接合工程において、固体高分子電解質膜が、吸引加熱面及び加熱板の両方から吸引力を受けることで、位置ずれや、熱による変形が抑制された状態で第2電極と接合される。これによって、第1電極と固体高分子電解質膜と第2電極との位置ずれや、固体高分子電解質膜の変形を一層効果的に抑制することができる。
また、吸引加熱面上で形成した接合体に対して、加熱板を用いて第2電極を積層して積層体とし、該加熱板をそのまま吸引加熱面に接近させることで、該積層体を加圧しつつ加熱して上記の接合を行うことができる。これによって、電解質膜・電極構造体の製造効率を向上させることができる。
また、上記した電解質膜・電極構造体の製造方法が適用された電解質膜・電極構造体の製造装置もこの発明に含まれる。すなわち、本発明は、ガス拡散層及び電極触媒層をそれぞれ有する多孔性の第1電極及び第2電極が固体高分子電解質膜の両側にそれぞれ接合された電解質膜・電極構造体の製造装置であって、吸引手段及び加熱手段が設けられ、吸引加熱面に配置された前記第1電極を介して、該第1電極に積層された前記固体高分子電解質膜を吸引及び加熱することで、前記第1電極と前記固体高分子電解質膜の一方の面とを接合して接合体とすることが可能な吸引加熱板と、前記接合体の前記固体高分子電解質膜と前記第2電極とを積層した積層体を、前記吸引加熱面との間で積層方向に加圧しつつ加熱して前記第2電極と前記固体高分子電解質膜の他方の面とを接合することが可能な加熱板と、を有することを特徴とする。
この電解質膜・電極構造体の製造装置によれば、上記の通り、第1電極と固体高分子電解質膜と第2電極との位置ずれや、固体高分子電解質膜の変形を容易に抑制して、品質に優れた電解質膜・電極構造体を得ることができる。
上記の電解質膜・電極構造体の製造装置において、前記第1電極を搬送して前記吸引加熱面に配置すること、前記吸引加熱面に吸引された前記第1電極上に前記固体高分子電解質膜を搬送して配置すること、前記吸引加熱面上から前記接合体が受け渡されること、前記第2電極を搬送して前記吸引加熱面に配置すること、前記接合体を搬送して前記吸引加熱面に吸引された前記第2電極上に配置すること、が可能な搬送手段をさらに有することとしてもよい。
この場合、第2電極と接合体(固体高分子電解質膜)との位置ずれを効果的に抑制した状態で互いを接合すること、及び電解質膜・電極構造体の製造装置の構成を簡素化することができる。
上記の電解質膜・電極構造体の製造装置において、前記第1電極を搬送して前記吸引加熱面に配置すること、及び前記固体高分子電解質膜を搬送して前記吸引加熱面に吸引された前記第1電極上に配置することが可能な搬送手段をさらに有し、前記加熱板は、前記第2電極を吸引した状態で、前記吸引加熱面に吸引された前記接合体に接近することが可能であることとしてもよい。
この場合、第2電極と接合体(固体高分子電解質膜)との位置ずれを効果的に抑制した状態で互いを接合すること、及び電解質膜・電極構造体の製造効率を向上させることができる。
本発明によれば、第1電極と固体高分子電解質膜と第2電極との位置ずれや、固体高分子電解質膜の変形を容易に抑制して、品質に優れた電解質膜・電極構造体を得ることができる。
以下、本発明に係る電解質膜・電極構造体の製造方法及び製造装置につき好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1実施形態及び第2実施形態に係る電解質膜・電極構造体の製造方法(以下、単に製造方法ともいう)によって得られる電解質膜・電極構造体(MEA)10の概略断面図である。MEA10は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)12と、前記固体高分子電解質膜12を挟持する多孔性のアノード電極14(第1電極)及びカソード電極16(第2電極)とを有する。固体高分子電解質膜12は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用してもよい。
アノード電極14は、固体高分子電解質膜12の一方の面12aに接合される第1電極触媒層14aと、前記第1電極触媒層14aに積層される第1ガス拡散層14bとを有する。第1電極触媒層14a及び第1ガス拡散層14bは、同一の平面寸法を有するとともに、固体高分子電解質膜12と同一又は同一未満の平面寸法に設定される。
カソード電極16は、固体高分子電解質膜12の面12bに接合される第2電極触媒層16aと、前記第2電極触媒層16aに積層される第2ガス拡散層16bとを有する。第2電極触媒層16a及び第2ガス拡散層16bは、同一の外形寸法を有する。
また、カソード電極16は、固体高分子電解質膜12及びアノード電極14より小さな平面寸法(外形寸法)からなる。すなわち、MEA10は、所謂、段差MEAを構成する。なお、上記の構成に代えて、アノード電極14が、固体高分子電解質膜12及びカソード電極16よりも小さな平面寸法を有するように構成してもよいし、アノード電極14とカソード電極16が略同じ平面寸法を有するように構成してもよい。
第1電極触媒層14aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、例えば、カーボンペーパ、カーボンクロス等からなる第1ガス拡散層14bの表面に一様に塗布されて形成される。第2電極触媒層16aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、例えば、カーボンペーパ、カーボンクロス等からなる第2ガス拡散層16bの表面に一様に塗布されて形成される。
次いで、図2〜図9を参照しつつ、第1実施形態に係る電解質膜・電極構造体の製造装置(以下、単に製造装置ともいう)20について説明する。製造装置20は、MEA10を得るべく、固体高分子電解質膜12の両側にアノード電極14及びカソード電極16を接合することが可能な構成を備えている。具体的には、製造装置20は、第1吸引手段22及び第1加熱手段24が設けられた吸引加熱板26と、第2加熱手段28が設けられた加熱板30(図9参照)と、搬送手段32と、クリーナ34(図7参照)と、カメラ36(図8参照)とを主に備える。
吸引加熱板26は、例えば、金属等から板状に形成され、一方の主面が吸引加熱面26aとなっている。第1吸引手段22は、吸引加熱板26を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔40と、吸引加熱面26aの裏面26b側に取り付けられるハウジング42によって形成されたチャンバ44と、チャンバ44を減圧する真空ポンプ46と、チャンバ44と真空ポンプ46とを連通する連通路48とから構成される。
複数の貫通孔40のそれぞれは、一端側が吸引加熱面26aに開口するとともに、他端側を介してチャンバ44と連通している。このため、第1吸引手段22では、真空ポンプ46を駆動してチャンバ44を減圧することによって、貫通孔40を介して吸引加熱面26aにアノード電極14等の被吸引物を吸引することが可能になっている。被吸引物の詳細については後述する。なお、第1吸引手段22は、吸引加熱面26aに吸引機能をもたせることが可能であればよく、上記の構成に限定されるものではない。
第1加熱手段24は、吸引加熱板26の内部に設けられるヒータ等からなり、例えば、固体高分子電解質膜12とアノード電極14及びカソード電極16の各々とを接合することが可能な温度(以下、接合温度ともいう)まで吸引加熱面26aを昇温させることができる。なお、第1加熱手段24は、吸引加熱面26aに加熱機能をもたせることが可能な構成であればよく、ヒータに限定されるものではない。
図9に示すように、加熱板30は、例えば、金属等から板状に形成され、サーボプレス等の加圧機構(不図示)によって吸引加熱板26の吸引加熱面26aに対して接近する方向又は離間する方向に相対的に移動可能となっている。第2加熱手段28は、例えば、第1加熱手段24と同様に構成することができる。
従って、吸引加熱板26及び加熱板30は、後述するように、加熱板30と吸引加熱面26aとの間に介在させた積層体10aを前記接合温度に加熱しつつ、その積層方向に加圧することが可能になっている。
搬送手段32は、第2吸引手段(不図示)が設けられた搬送板50a、50bと、該搬送板50a、50bを移動させる駆動機構(不図示)とを有する。なお、以下では、搬送板50a、50bを区別しないときは、これらを総称して搬送板50ともいう。第2吸引手段は、例えば、第1吸引手段22と同様に構成され、搬送板50の主面52にアノード電極14等の被搬送物を吸引することが可能になっている。被搬送物の詳細については後述する。
つまり、搬送手段32では、第2吸引手段により主面52に被搬送物を吸引した状態で、駆動機構により搬送板50を移動させた後、該第2吸引手段により吸引を解除することで、所望の位置に被搬送物を搬送することができる。
クリーナ34は、例えば、エアブローで異物を飛ばしながら、エア吸引を同時に行うことで、固体高分子電解質膜12の表面や、アノード電極14の第1電極触媒層14a側の表面、及びカソード電極16の第2電極触媒層16a側の表面等の異物を除去して清浄化する。
カメラ36は、吸引加熱板26の吸引加熱面26aに吸引された被吸引物や、搬送板50の主面52に吸引された被搬送物を撮像する。これによって得られた撮像データに基づいて、被吸引物と被搬送物との積層位置を検出することができる。従って、検出した積層位置に合わせて搬送手段32を駆動することによって、被吸引物と被搬送物とを所望の位置関係で積層することができる。
次いで、製造装置20を用いた、第1実施形態に係る製造方法について説明する。先ず、図2に示すように、搬送手段32により、搬送板50の主面52にアノード電極14(被搬送物)を吸引した状態で搬送して、吸引加熱板26の吸引加熱面26aに配置する。この際、アノード電極14の第1ガス拡散層14b側を吸引加熱面26aに臨ませる。吸引加熱面26aに配置されたアノード電極14(被吸引物)は、第1吸引手段22によって吸引加熱面26aに吸引される。
次に、図3に示すように、アノード電極14の第1電極触媒層14a側の表面に対して、矢印方向に沿ってクリーナ34を相対的に移動させて、該表面を清浄化する。
次に、図4に示すように、吸引加熱面26a上のアノード電極14と、搬送手段32により搬送板50の主面52に吸引した固体高分子電解質膜12とのそれぞれをカメラ36で撮像する。そして、得られた撮像データに基づいて検出された積層位置に合わせて搬送手段32を駆動する。これによって、図5に示すように、吸引加熱面26a上のアノード電極14に所望の位置関係となるように固体高分子電解質膜12を積層することができる。この際、上記の通り、アノード電極14の第1電極触媒層14a側の表面を清浄化しているため、該表面と固体高分子電解質膜12との間に異物等が介在することを回避できる。
アノード電極14に積層された固体高分子電解質膜12は、上記の通り、アノード電極14が多孔性であることから、該アノード電極14を介して吸引加熱面26aに吸引される。この吸引力によって、固体高分子電解質膜12がアノード電極14に押圧され、アノード電極14と固体高分子電解質膜12とが所望の位置関係で積層された状態に維持(位置決め固定)される。
また、固体高分子電解質膜12に対して、第1加熱手段24によって加熱された吸引加熱面26aの熱がアノード電極14を介して伝達される。この際、固体高分子電解質膜12は、前記吸引力によって形状が維持されているため、熱による変形が抑制される。
なお、第1加熱手段24により吸引加熱面26aを昇温させるタイミングは特に限定されるものではなく、吸引加熱面26aにアノード電極14や固体高分子電解質膜12を配置する前から昇温させてもよいし、これらを配置した後から昇温させてもよい。
上記のようにして、アノード電極14及び固体高分子電解質膜12を吸引した状態で、接合温度に達するまで加熱することで、アノード電極14の第1電極触媒層14a側と、固体高分子電解質膜12の一方の面12aとを接合して接合体60とすることができる(第1接合工程)。
次に、図6に示すように、吸引加熱面26aから搬送手段32の搬送板50aに接合体60(被搬送物)を受け渡す。この際、接合体60のアノード電極14側を搬送板50aの主面52に臨ませる。
また、搬送手段32により、搬送板50bの主面52にカソード電極16(被搬送物)を吸引した状態で搬送して、接合体60を受け渡した後の吸引加熱面26aに配置する(図7参照)。この際、カソード電極16の第2ガス拡散層16b側を吸引加熱面26aに臨ませる。そして、吸引加熱面26aに配置されたカソード電極16(被吸引物)を、第1吸引手段22によって吸引加熱面26aに吸引する。
次に、図7に示すように、搬送板50aの主面52に吸引された接合体60の固体高分子電解質膜12側の表面に対して、矢印方向に沿ってクリーナ34を相対的に移動させて、該表面を清浄化する。同様に、吸引加熱面26aに吸引されたカソード電極16の第2電極触媒層16a側の表面をクリーナ34によって清浄化する。
次に、図8に示すように、吸引加熱面26aに吸引したカソード電極16と、搬送手段32により搬送板50aの主面52に吸引した接合体60とのそれぞれをカメラ36で撮像する。そして、得られた撮像データに基づいて検出された積層位置に合わせて搬送手段32を駆動する。これによって、カソード電極16に所望の位置関係となるように接合体60を積層して、吸引加熱面26a上に積層体10aを形成することができる(図9参照)。この際、上記の通り、接合体60の固体高分子電解質膜12側の表面と、カソード電極16の第2電極触媒層16a側の表面をそれぞれ清浄化しているため、互いの間に異物等が介在することを回避できる。
上記のようにして形成した積層体10aでは、多孔性のカソード電極16を介して接合体60が吸引加熱面26aに吸引される。この吸引力によって、カソード電極16と接合体60とが所望の位置関係で積層された状態に維持(位置決め固定)される。
次に、図9に示すように、第2加熱手段28により加熱した加熱板30を吸引加熱面26aに接近させて、互いの間に介在する積層体10aを、その積層方向に加圧しつつ加熱する。この際も、固体高分子電解質膜12は、前記吸引力によって形状が維持されているため、熱による変形が抑制される。
上記のようにして加圧及び加熱された積層体10aの固体高分子電解質膜12が接合温度に達することで、カソード電極16の第2電極触媒層16a側と、固体高分子電解質膜12の他方の面12bとを接合することができる(第2接合工程)。その結果、固体高分子電解質膜12の両側にアノード電極14及びカソード電極16がそれぞれ接合されたMEA10を得ることができる。
つまり、この製造方法によれば、第1接合工程により、固体高分子電解質膜12の一方の面12aにアノード電極14を接合して互いを位置決め固定した後に、第2接合工程により、固体高分子電解質膜12の他方の面12bにカソード電極16を接合する。これによって、例えば、アノード電極14と、固体高分子電解質膜12と、カソード電極16とを単に積層してホットプレスするような場合に比して、これらの位置ずれを容易に抑制することができる。
また、上記の通り、第1接合工程では、固体高分子電解質膜12にアノード電極14以外の構成を接触させることなく、その一方の面12aをアノード電極14に向かって押圧しつつ加熱して、互いを接合することができる。従って、上記のように、固体高分子電解質膜12の一方の面12aにアノード電極14を接合しても、例えば、金型(不図示)を用いたホットプレス等を行う場合とは異なり、加熱により軟化した固体高分子電解質膜12が該金型に付着すること等がない。
さらに、固体高分子電解質膜12は、吸引加熱面26aからの吸引力を受けることで、位置ずれや、加熱による変形が抑制された状態で、アノード電極14及びカソード電極16に接合される。このため、アノード電極14と固体高分子電解質膜12とカソード電極16とを所望の位置関係で容易に接合できるとともに、固体高分子電解質膜12の変形を抑制できる。
以上から、この製造方法によれば、アノード電極14と固体高分子電解質膜12とカソード電極16との位置ずれや、固体高分子電解質膜12の変形を容易に抑制して、品質に優れたMEA10を得ることができる。
また、第1実施形態に係る製造方法では、接合体60を吸引加熱面26aから搬送手段32の搬送板50aに受け渡し、該接合体60を受け渡した後の吸引加熱面26aに、搬送板50bによりカソード電極16を搬送する。つまり、第1実施形態に係る製造装置20は、吸引加熱面26aから接合体60が受け渡される搬送板50aと、接合体60を受け渡した後の吸引加熱面26aにカソード電極16を搬送する搬送板50bとを備える。
これにより、アノード電極14の吸引、アノード電極14を介した固体高分子電解質膜12の吸引、カソード電極16の吸引、カソード電極16を介した固体高分子電解質膜12(接合体60)の吸引を吸引加熱板26によって行うことができる。その結果、製造装置20の構成を簡素化することが可能になる。
次いで、図2〜図5及び図10〜図13を参照しつつ、第2実施形態に係る製造装置70について説明する。なお、図10〜図13に示す構成要素のうち、図2〜図9に示す構成要素と同一又は同様の機能及び効果を奏するものに対しては、同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
製造装置70は、図12及び図13に示すように、上記の加熱板30に第3吸引手段72が設けられ、該加熱板30の主面30aにカソード電極16を吸引可能である点が上記の製造装置20と主に相違する。
第3吸引手段72は、例えば、第1吸引手段22と同様に構成することができる。つまり、第3吸引手段72では、加熱板30に設けられた複数の貫通孔74を介して主面30aにカソード電極16を吸引することが可能になっている。
次いで、製造装置70を用いた第2実施形態に係る製造方法について説明する。第2実施形態に係る製造方法では、図1〜図5に示すように、第1実施形態に係る製造方法と同様にして第1接合工程までの工程を行うことができる。
これによって、吸引加熱面26a上で接合体60を形成した後、図10に示すように、該吸引加熱面26aに吸引された接合体60の固体高分子電解質膜12側の表面に対して、矢印方向に沿ってクリーナ34を相対的に移動させて、該表面を清浄化する。同様に、搬送手段32により搬送板50の主面52に吸引したカソード電極16(被搬送物)の第2電極触媒層16a側の表面をクリーナ34によって清浄化する。
次に、図11に示すように、吸引加熱面26aに吸引した接合体60と、搬送手段32により搬送板50の主面52に吸引したカソード電極16とのそれぞれをカメラ36で撮像する。このようにして得られた撮像データに基づいて検出された積層位置に合わせて、後述するように搬送手段32等を駆動する。これによって、接合体60に所望の位置関係となるようにカソード電極16を積層して、吸引加熱面26a上に積層体10aを形成することができる(図12及び図13参照)。この際、上記の通り、接合体60の固体高分子電解質膜12側の表面と、カソード電極16の第2電極触媒層16a側の表面をそれぞれ清浄化しているため、互いの間に異物等が介在することを回避できる。
次に、図12に示すように、搬送手段32により搬送板50から加熱板30の主面30aにカソード電極16を受け渡し、該主面30aにカソード電極16を吸引する。この際、カソード電極16の第2ガス拡散層16b側を主面30aに臨ませる。
次に、吸引加熱面26aに吸引された状態の接合体60に、カソード電極16を吸引した状態の加熱板30を接近させる。これによって、図13に示すように、接合体60とカソード電極16とを積層して積層体10aとする。このようにして形成された積層体10aでは、固体高分子電解質膜12が、吸引加熱面26a及び加熱板30の主面30aの両方から吸引力を受けることで、位置ずれや、熱による変形が抑制される。
この加熱板30を第2加熱手段28により昇温させた状態で、吸引加熱面26aにさらに接近させることで、積層体10aを加圧しつつ加熱して固体高分子電解質膜12の他方の面12bにカソード電極16を接合することができる(第2接合工程)。その結果、固体高分子電解質膜12の両側にアノード電極14及びカソード電極16がそれぞれ接合されたMEA10を得ることができる。
つまり、第2実施形態に係る製造方法によれば、上記した第1実施形態に係る製造方法と同様に、アノード電極14と固体高分子電解質膜12とカソード電極16との位置ずれや、固体高分子電解質膜12の変形を容易に抑制して、品質に優れたMEA10を得ることができる。
また、第2実施形態に係る製造方法では、上記の通り、加熱板30に第3吸引手段72が設けられることで、吸引加熱面26a上で形成した接合体60に対して、加熱板30を用いてカソード電極16を積層して積層体10aとすることができる。そして、この加熱板30をそのまま吸引加熱面26aに接近させることで、固体高分子電解質膜12とカソード電極16とを接合できるため、MEA10の製造効率を向上させることができる。
なお、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、上記の第1実施形態及び第2実施形態に係る製造方法では、第1接合工程において、アノード電極14を第1電極として、固体高分子電解質膜12の一方の面12aに接合した。また、第2接合工程において、カソード電極16を第2電極として、固体高分子電解質膜12の他方の面12aに接合した。
しかしながら、第1接合工程において、アノード電極14に代えてカソード電極16を第1電極として、固体高分子電解質膜12の一方の面12aに接合してもよい。また、第2接合工程において、カソード電極16に代えてアノード電極14を第2電極として、固体高分子電解質膜12の他方の面12bに接合してもよい。
10…電解質膜・電極構造体(MEA) 10a…積層体
12…固体高分子電解質膜 12a、12b…面
14…アノード電極 14a…第1電極触媒層
14b…第1ガス拡散層 16…カソード電極
16a…第2電極触媒層 16b…第2ガス拡散層
20、70…製造装置 22…第1吸引手段
24…第1加熱手段 26…吸引加熱板
26a…吸引加熱面 26b…裏面
28…第2加熱手段 30…加熱板
30a、52…主面 32…搬送手段
34…クリーナ 36…カメラ
40、74…貫通孔 42…ハウジング
44…チャンバ 46…真空ポンプ
48…連通路 50、50a、50b…搬送板
60…接合体 72…第3吸引手段
12…固体高分子電解質膜 12a、12b…面
14…アノード電極 14a…第1電極触媒層
14b…第1ガス拡散層 16…カソード電極
16a…第2電極触媒層 16b…第2ガス拡散層
20、70…製造装置 22…第1吸引手段
24…第1加熱手段 26…吸引加熱板
26a…吸引加熱面 26b…裏面
28…第2加熱手段 30…加熱板
30a、52…主面 32…搬送手段
34…クリーナ 36…カメラ
40、74…貫通孔 42…ハウジング
44…チャンバ 46…真空ポンプ
48…連通路 50、50a、50b…搬送板
60…接合体 72…第3吸引手段
Claims (6)
- ガス拡散層及び電極触媒層をそれぞれ有する多孔性の第1電極及び第2電極が固体高分子電解質膜の両側にそれぞれ接合された電解質膜・電極構造体の製造方法であって、
吸引手段及び加熱手段が設けられた吸引加熱板の吸引加熱面に配置した前記第1電極を介して、該第1電極に積層された前記固体高分子電解質膜を吸引及び加熱することで、前記第1電極と前記固体高分子電解質膜の一方の面とを接合して接合体とする第1接合工程と、
前記接合体の前記固体高分子電解質膜と前記第2電極とを積層した積層体を、前記吸引加熱面と加熱板との間で積層方向に加圧しつつ加熱することで、前記第2電極と前記固体高分子電解質膜の他方の面とを接合する第2接合工程と、
を有することを特徴とする電解質膜・電極構造体の製造方法。 - 請求項1記載の電解質膜・電極構造体の製造方法において、
前記第1接合工程と前記第2接合工程との間に、
前記接合体を前記吸引加熱面から搬送手段に受け渡す工程と、前記接合体を受け渡した後の前記吸引加熱面に前記第2電極を配置して吸引する工程と、
前記吸引加熱面に吸引された前記第2電極に前記接合体を積層して前記積層体とする工程と、
をさらに有し、
前記第2接合工程では、前記第2電極を介して前記固体高分子電解質膜を吸引した状態で前記積層体を加圧しつつ加熱することを特徴とする電解質膜・電極構造体の製造方法。 - 請求項1記載の電解質膜・電極構造体の製造方法において、
前記加熱板は、前記第2電極を吸引可能であり、
前記第1接合工程と前記第2接合工程との間に、前記吸引加熱面に吸引された状態の前記接合体に、前記第2電極を吸引した状態の前記加熱板を接近させることで、前記接合体と前記第2電極とを積層して前記積層体とする工程をさらに有し、
前記第2接合工程では、前記吸引加熱面及び前記加熱板のそれぞれにより前記第1電極及び前記第2電極を介して前記固体高分子電解質膜を吸引した状態で前記積層体を加圧しつつ加熱することを特徴とする電解質膜・電極構造体の製造方法。 - ガス拡散層及び電極触媒層をそれぞれ有する多孔性の第1電極及び第2電極が固体高分子電解質膜の両側にそれぞれ接合された電解質膜・電極構造体の製造装置であって、
吸引手段及び加熱手段が設けられ、吸引加熱面に配置された前記第1電極を介して、該第1電極に積層された前記固体高分子電解質膜を吸引及び加熱することで、前記第1電極と前記固体高分子電解質膜の一方の面とを接合して接合体とすることが可能な吸引加熱板と、
前記接合体の前記固体高分子電解質膜と前記第2電極とを積層した積層体を、前記吸引加熱面との間で積層方向に加圧しつつ加熱して前記第2電極と前記固体高分子電解質膜の他方の面とを接合することが可能な加熱板と、
を有することを特徴とする電解質膜・電極構造体の製造装置。 - 請求項4記載の電解質膜・電極構造体の製造装置において、
前記第1電極を搬送して前記吸引加熱面に配置すること、前記吸引加熱面に吸引された前記第1電極上に前記固体高分子電解質膜を搬送して配置すること、前記吸引加熱面上から前記接合体が受け渡されること、前記第2電極を搬送して前記吸引加熱面に配置すること、前記接合体を搬送して前記吸引加熱面に吸引された前記第2電極上に配置すること、が可能な搬送手段をさらに有することを特徴とする電解質膜・電極構造体の製造装置。 - 請求項4記載の電解質膜・電極構造体の製造装置において、
前記第1電極を搬送して前記吸引加熱面に配置すること、及び前記固体高分子電解質膜を搬送して前記吸引加熱面に吸引された前記第1電極上に配置することが可能な搬送手段をさらに有し、
前記加熱板は、前記第2電極を吸引した状態で、前記吸引加熱面に吸引された前記接合体に接近することが可能であることを特徴とする電解質膜・電極構造体の製造装置。
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