JP6481052B2 - 高強度かつ容易に成形可能なAlMgストリップおよび同を製造するための方法 - Google Patents

高強度かつ容易に成形可能なAlMgストリップおよび同を製造するための方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム合金からアルミニウムストリップまたは薄板を製造するための方法ならびにアルミニウム合金ストリップまたは薄板とその使用とに関する。
圧延アルミニウム合金薄板は、鋼からなる同等なソリューションと比べて低い重量を有することができるので、現在の自動車軽量構造概念においてますます重要な役割を担っている。高い応力を受ける車両コンポーネントにおいて強度、たとえば降伏強度Rp0.2および引張強度Rは、これによって車両コンポーネント用のそれぞれのアルミニウム薄板の厚さが、したがって車両コンポーネントの重量も、決定されるので、第一義的な役割を担う。車両コンポーネント、たとえばいわゆる「ボディー・イン・ホワイト(Body in White)」の部品(BIWコンポーネント)は、多くの場合複雑に成形された幾何形状を必要とし、そのため複雑な幾何形状を提供するための良好な成形挙動は、車両コンポーネントとしてのアルミニウム合金薄板の使用のためのさらに別の非常に重要な要件を構成する。アルミニウム合金薄板の腐食挙動は、全般的にすでに非常に良好であるが、AA6XXXクラス析出硬化性アルミニウム合金の場合とAA5XXXクラス非析出硬化性合金の場合との両方において粒界腐食が考慮されなければならない。それがコンポーネントの不良につながることがあるからである。
今まで、高い応力を受ける車両コンポーネントは、好ましくはAA6XXXクラス析出硬化性Al−Mg−Si合金からなるアルミニウム薄板から製造されている。このクラスのアルミニウム合金薄板は、T4溶体焼鈍状態において成形され、続いてT6状態においてより高い最終強度を得るために人工時効処理に付される。この複雑化した製造プロセスは、特に、T4状態において薄板を加工するためおよびT6状態を得るために薄板を人工時効処理するために必要な物流努力の所為もあり、より高い製造コストという結果となる。今まで、AA5XXX型非析出硬化性アルミニウム合金からなるコンポーネントは、軟化焼鈍されたアルミニウム合金薄板を成形することによって製造された。しかし、これによる不利は、これらの薄板が、強度の増加、特に高い変形度の区域における降伏強度Rp0.2の増加だけを示すことである。対照的に、成形されていない区域は、軟状態のままである。このことから、車両コンポーネントの薄板厚さは、成形部品の軟らかな区域を考慮して対応して選ばれなければならないので、経済的にはコスト効率よく製造可能な非析出硬化性アルミニウム合金からなる車両コンポーネントの場合における軽量構造の潜在力が、今まで十分に利用できていなかった。
3重量%を超える、特に4重量%を超えるMg含有率を有するAA5XXX型Al−Mg合金は、たとえば増加した温度に曝露された場合に次第に粒界腐食を起こしやすくなる。70℃〜200℃の温度で粒界に沿ってβ−AlMg相が析出し、これはβ粒子と呼ばれ、腐食性媒質が存在すると選択的に溶解することがある。このことは、自動車のコンポーネント、特に通常は陰極ディップ・コーティング(CDC)に付され、続いて焼込プロセスにおいて乾燥される、自動車のいわゆる「ボディー・イン・ホワイト」のコンポーネントにもあてはまる。標準的なアルミニウム合金ストリップの場合、この焼込プロセスによって粒界腐食に関する鋭敏化がすでに引き起こされることがある。さらに、自動車産業における使用のために、コンポーネントの製造時の成形操作とその後のコンポーネントへの操作荷重が考慮されなければならない。
粒界腐食の起こりやすさは通常、試料が硝酸に曝露され、アルミニウム薄板の質量損失が測定されるASTM G67による標準試験において試験される。本出願においては、ASTM G67による標準試験を用いて130℃の温度における17時間の事前の鋭敏化熱処理により適用事例におけるコンポーネントへの対応熱応力がシミュレーションされる。ASTM G67によると、粒界腐食に抵抗性でない材料の場合における質量損失は、15mg/cmを超える。
本出願人による特許文献1は、粒界腐食に抵抗性である自動車コンポーネント用の軟化焼鈍アルミニウム合金薄板の製造を開示している。ここで開示されているアルミニウム合金薄板は、良好な引張強度Rと均一伸びAについての卓越した値とを粒界腐食に対する良好な抵抗性とともに示すが、塑性変形に対する薄板の抵抗性についての測定を表す降伏強度Rp0.2についての値が薄板厚さの顕著な低下、ひいては車両コンポーネントの製造におけるさらなる軽量化を得るには低すぎる。本特許出願に関して、車両コンポーネントは、「ボディー・イン・ホワイト」(BIW)のコンポーネントとも呼ばれる、自動車の内部構造の成形薄板ならびに車両本体のシャーシ・コンポーネントおよび部品と理解される。
非析出硬化性アルミニウム合金からなり、高い応力を受ける車両コンポーネント用の薄板部品の製造は、特許文献2から公知である。最高250℃の温度での熱間成形プロセスにおいて歪み硬化および逆焼鈍されたアルミニウム合金薄板を成形することが提案されている。特定のアルミニウム合金組成物またはアルミニウム合金薄板用の製造プロセスについての詳細は、先に挙げた特許文献2から知られていない。さらに、歪み硬化および逆焼鈍されたアルミニウム合金ストリップの特定の機械的性質についての情報は、先に挙げた特許文献2に開示されていない。
以上に基づき、したがって、車両コンポーネント、特にBIWコンポーネント用の成形部品を容易に製造することができ、さらなる軽量化を得ることができるアルミニウム合金ストリップまたは薄板を、非析出硬化性アルミニウム合金から製造するための方法を提供することが本発明の目的である。さらに、本発明は、自動車において高い軽量化潜在力を有することに加えてコスト効率よく製造することができる、析出硬化性アルミニウム合金からなるアルミニウム合金ストリップまたは薄板を提案するという目的に基づいている。最後に、アルミニウム合金ストリップの有利な使用も提案される。
国際公開第2014/029853(A1)号 独国特許出願公開第10 2009 008 282(A1)号
本発明の第1の教示によれば、前記目的は、以下の重量%の合金化成分、
3.6%≦Mg≦6%、
Si≦0.4%、
Fe≦0.5%、
Cu≦0.15%、
0.1%≦Mn≦0.4%、
Cr<0.05%、
Zn≦0.20%、
Ti≦0.20%、
を有し、残りはAlと、個別で最大0.05重量%、全体で最大0.15重量%の不可避の不純物とであるアルミニウム合金からアルミニウムストリップまたは薄板を製造するための方法であって、
この方法は、以下のステップ、
− 指定されたアルミニウム合金からなる圧延インゴットを鋳造するステップと、
− 圧延インゴットを480℃から550℃で少なくとも0.5時間均一化するステップと、
− 圧延インゴットを280℃から500℃の温度で熱間圧延して熱延ストリップとするステップと、
− 熱間圧延後のアルミニウム合金ストリップを最終中間焼鈍の直前の圧延度10%から45%で冷間圧延するステップと、
− 冷間圧延されたアルミニウム合金ストリップに対して、冷間圧延されたアルミニウム合金ストリップが中間焼鈍後に再結晶した微細構造を有するように、少なくとも最後の中間焼鈍を300℃から500℃で行うステップと、
− 中間焼鈍されたアルミニウム合金ストリップを30%から60%の圧延度で最終厚さに冷間圧延するステップと、
ルミニウム合金ストリップをコイルとして最終厚さ逆焼鈍するステップであって、190℃〜250℃の金属温度少なくとも0.5時間、アルミニウム合金ストリップを焼鈍し、アルミニウム合金ストリップの微細構造中の回復プロセスにより成形特性の改善をもたらす、逆焼鈍するステップと、
を含む方法によって実現される。
次に、さらなる加工において、薄板をアルミニウム合金ストリップの長さに切ることができる。本発明によって用いられるアルミニウム合金の3.6重量%から6重量%、好ましくは4.2重量%から6重量%、特に好ましくは4.2重量%から5.2重量%というマグネシウム含有率は、良好な成形特性を有するアルミニウム合金が、同時に高い強度値、特に降伏強度値Rp0.2および引張強度値Rを実現する事実に寄与している。望ましくない時効硬化およびSiの析出の影響は、Si含有率を最大0.4重量%に制限することによって軽減される。Fe含有率は、アルミニウム合金の特性が悪影響を受けないように、最大0.5重量%に制限されるべきである。これは、最大0.15重量%に制限されるべきである。銅含有率にもあてはまるマンガンは、強度の増加という結果を生じ、粒界腐食に対する抵抗性の改善という結果も生じる。しかし、マンガン含有率は、制限されなければならない。さもないと逆焼鈍されたアルミニウム合金ストリップの成形特性が悪影響を受けるからである。さらに、最後の中間焼鈍時の高すぎるMn含有率は、20μm未満の平均結晶粒直径という結果を生じる。この理由で、Mn含有率は、0.1重量%から0.4重量%であるべきである。クロムは、最小量でもすでに成形特性、たとえば均一伸びAまたは破断後面積減少百分率Zを減少させる結果を生じ、そのため成形特性が悪化する。さらに、Crも中間焼鈍後の小さな結晶粒サイズという結果を生じる。この点で、クロム含有率は、0.05重量%未満、好ましくは0.01重量%未満の値に制限されるべきである。ここで個別に挙げられていないZrについても普通、合金に加えられなければならないので、原則として同じことがあてはまる。亜鉛は、アルミニウム合金ストリップの腐食抵抗性に対して負の影響を及ぼすことが可能であり、したがって0.2重量%に限定されるべきであるチタンは、通常、結晶粒微細化剤として、アルミニウム合金の連続鋳造時にたとえばTiホウ化物ワイヤまたはロッドの形で加えられる。しかし、過剰なTi含有率は、再び成形特性に負の影響を及ぼし、そのため最大0.20重量%というTi含有率への制限が望ましい。
圧延インゴットを480℃から550℃で少なくとも0.5時間鋳造および均一化することによって、非常に均一な合金化成分の分布を有する熱間圧延用の圧延インゴットが提供されることができる。280℃から500℃の温度範囲での熱間圧延によって、熱間圧延の終りに均一な再結晶した熱延ストリップが提供される。最後の中間焼鈍前に、アルミニウム合金ストリップの冷間圧延時の圧延度は、最後の中間焼鈍前の圧延度が中間焼鈍時に再結晶時の結晶粒構造の形成に決定的に影響を及ぼすので、本発明によれば10%から45%である。圧延度が高すぎる場合、300℃から500℃の温度での最後の中間焼鈍時の再結晶時に、20μm未満の平均結晶粒直径、すなわち平均結晶粒サイズを有する比較的細かな微細構造が製造される。しかし、減少した結晶粒直径は、アルミニウム合金ストリップの腐食挙動に対して負の影響を及ぼす。中間焼鈍前の冷間圧延時の10%から45%の低い圧延度では、最後の中間焼鈍時に本発明による組成物で20μmを超える平均結晶粒直径が製造され、このことはアルミニウム合金ストリップの腐食抵抗性に良い方向に影響を及ぼす。そのような中間焼鈍は、最終厚さへの圧延度30%から60%で行われる最後の冷間圧延ステップに再結晶した微細構造が提供されることを可能にする。最終圧延度は、軟化焼鈍された変化形と異なり、所望の利用のために歪み硬化によって製造されるアルミニウム合金ストリップの降伏強度を、たとえば後続の最終焼鈍後に190MPaを超える降伏強度に、連続的に増加させることを可能にする。190℃から250℃の金属温度で少なくとも0.5時間のコイル形のアルミニウム合金ストリップの最終逆焼鈍は、アルミニウム合金ストリップの微細構造中の回復プロセスにより成形特性、特に均一伸びAおよび破断後面積減少百分率Zの改善という結果を生じる。しかし、軟質状態と比べて高い降伏強度Rp0.2が、少なくとも大部分維持される。この製造方法では、それによって、一方ではたとえば車両コンポーネントに容易に成形することができ、他方では未成形区域において高い降伏強度を提供するアルミニウム合金ストリップが提供されることができる。製造されたアルミニウム合金ストリップは、同時に、粒界腐食に抵抗性でもあり、簡単な製造プロセスの所為で従来用いられているAA6XXX合金ストリップよりコスト効率がよい。
本発明による方法の第1の実施態様によって、最後の中間焼鈍の前の冷間圧延時の圧延度が20%から30%に制限された場合、最後の中間焼鈍の後にアルミニウム合金ストリップ中により大きな結晶粒直径が提供され、したがって、逆焼鈍されたアルミニウム合金ストリップにおける粒界腐食への抵抗性が改善される。
本方法の次の実施態様によれば、最後の中間焼鈍の後の最終厚さへの冷間圧延時の圧延度が40%から60%であった場合、降伏強度Rp0.2は、成形特性、たとえば均一伸びAまたは破断後面積減少百分率Zが悪影響を受けることなく、200MPaを上回る値に設定されることができる。
すでに前に説明されているように、本発明による方法は、アルミニウム合金ストリップおよび薄板が車両コンポーネント、たとえばボディー・イン・ホワイト(BIW)コンポーネントへの成形に提供されることを可能にする。本方法のさらに別の実施態様によれば、アルミニウム合金ストリップが0.5mmから5.0mmの厚さに、好ましくは1.0mmから3.0mmの最終厚さに冷間圧延された場合、車両コンポーネント用の成形部品が非析出硬化性アルミニウム合金から製造されることができ、そのことが、自動車工学における軽量化の潜在力をコスト効率のよい方法で実現することができる。
本方法のさらに別の実施態様によれば、アルミニウム合金ストリップの逆焼鈍時の温度は、220℃から240℃である。逆焼鈍時により高い温度を選ぶことにより、回復プロセスを通じて均一伸びAおよび破断後面積減少百分率Zの増加を有するアルミニウム合金ストリップの成形性が、プロセス信頼性のある方法で提供される。220℃から240℃という高い逆焼鈍温度も、なんらかの操作中の熱応力の場合に、本発明によるアルミニウム合金ストリップから製造されたコンポーネントの改善された長期安定度という結果を生じる。
本発明の第2の教示によれば、上記目的は、好ましくは本発明による方法を用いて製造され、以下の合金化成分、
3.6%≦Mg≦6%、
Si≦0.4%、
Fe≦0.5%、
Cu≦0.15%、
0.1%≦Mn≦0.4%、
Cr<0.05%、
Zn≦0.20%、
Ti≦0.20%、
を有し、残りはAlと、個別で最大0.05重量%、全体で最大0.15重量%の不可避の不純物とであるアルミニウム合金であって、
アルミニウム合金ストリップまたは薄板は、
190MPaを超える降伏強度Rp0.2と、
少なくとも14%の均一伸びAと、
50%を超える破断後面積減少百分率Zと、
ASTM G67による腐食試験において130℃で17時間の事前の鋭敏化熱処理の後に15mg/cm未満の質量損失と、
を有するアルミニウム合金からなる、冷間圧延および逆焼鈍されたアルミニウム合金ストリップまたは薄板によって実現される。
190MPaを超える降伏強度を有し、少なくとも14%の均一伸びAおよび50%を超える破断後百分率面積減少Zを有すると同時に、130℃で17時間の事前の鋭敏化熱処理後に15mg/cm未満の質量損失を有するASTM G67による腐食試験における抵抗性を有する、上記で特定されたアルミニウム合金組成をアルミニウム合金ストリップまたは薄板に提供すると、今まで析出硬化性材料、特にAA6XXX型アルミニウム合金からなるアルミニウム合金ストリップに留保されたさらなる利用可能性を、非析出硬化性アルミニウム合金ストリップにもたらすことが明らかになっている。所定のアルミニウム合金組成を用いると、190MPa超から300MPaの降伏強度Rp0.2と14%から18%の均一伸びAおよび50%超から70%の破断後百分率面積減少Zとを上記の腐食抵抗とともに得ることができると予想される。後で示される例示的実施態様は、190MPaを超え、最大270MPaの降伏強度Rp0.2を有する一方で、最大16.6%の均一伸びAおよび最大62%の破断後百分率面積減少Zに起因して良好な成形挙動を保持するとともに粒界腐食への抵抗性が存在する、本発明によるアルミニウム合金ストリップまたは薄板を示している。予想値によれば、降伏強度値は、得られた均一伸びAおよび破断後百分率面積減少Zの値と逆に挙動する。これらの特定のアルミニウム合金ストリップは、それによってさらなる利用可能性、特に、車両コンポーネント、特にBIWコンポーネントを製造するためのコスト効率よく製造可能なアルミニウム合金ストリップおよび薄板を提供する可能性をもたらす。
本発明によるアルミニウム合金ストリップまたは薄板のさらに別の実施態様によれば、アルミニウム合金ストリップまたは薄板のMg含有率が4.2重量%から6重量%、好ましくは4.2重量%から5.2重量%の場合、最後の冷間圧延後の最大の降伏強度をアルミニウム合金ストリップまたは薄板に提供することができる。
本発明によるアルミニウム合金ストリップまたは薄板のさらに別の実施態様によれば、Mn含有率が0.1重量%から0.3重量%に制限されれば、アルミニウム合金ストリップまたは薄板の強度および腐食抵抗性へのマンガンの正の効果にもかかわらず、同時に良好な成形特性、すなわち均一伸びAおよび破断後百分率面積減少Zについて非常にプロセス信頼性のある方法で高い値を得ることができる。さらに、これらのMn含有率では、最後の中間焼鈍時に、アルミニウム合金ストリップまたは薄板の腐食抵抗性に良好に影響を及ぼす、20μmを超える平均結晶粒直径をプロセス信頼性のある方法で設定することができる。
前にも説明したように、クロム含有率は、非常に小さな濃度でも成形挙動との関係でアルミニウム合金の特性に悪影響を及ぼし、最後の中間焼鈍の後の結晶粒サイズを制限し、そのため、アルミニウム合金ストリップまたは薄板のさらに別の実施態様によれば、クロム含有率は、0.01重量%未満に制限される。これは、ジルコニウムおよびスカンジウムについても同様にあてはまるが、ジルコニウムおよびスカンジウムは、あったとしてもアルミニウム合金中に痕跡量しか存在しない。
さらに別の実施態様によれば、アルミニウム合金ストリップまたは薄板が、合金化成分の割合について以下の制約、
Si≦0.2重量%、
Fe≦0.35重量%、または
Zn≦0.01重量%、
の1つ以上を有する場合、アルミニウム合金ストリップまたは薄板の特性に対する前記合金化成分の負の影響は、除外することができる。
本発明によるアルミニウム合金ストリップまたは薄板のさらに別の実施態様によれば、アルミニウム合金ストリップまたは薄板は、以下の特性、
− 200MPaを超える降伏強度Rp0.2
− 少なくとも15%の均一伸びA
− 少なくとも55%の破断後百分率面積減少Z、または
− ASTM G67による腐食試験において130℃で17時間の事前の鋭敏化熱処理後に10mg/cm未満の質量損失、
の1つ以上を有する。
降伏強度、均一伸び、破断後百分率面積減少および腐食試験における挙動といった特定の特性を設定することによって、アルミニウム合金ストリップはさらに、種々の分野の利用に適応されるように製造することができる。たとえば、200MPaを超えるより高い降伏強度は、アルミニウム合金ストリップの最終厚さの低下、ひいてはそれから製造される成形部品、たとえば車両コンポーネントのさらなる重量の低下を可能にすることができる。少なくとも15%への均一伸びの増加および少なくとも55%への破断後百分率面積減少の増加は、本発明によるアルミニウム合金ストリップまたは薄板がより複雑な成形プロセスにおいて用いられることが可能であるという結果を生じ、たとえば複雑に設計された成形部品が少ない成形ステップで製造されることができる。ASTM G67による腐食試験における粒界腐食に対する腐食抵抗性の向上は、粒界腐食に起因する不良に対するアルミニウム合金ストリップから製造された成形部品の信頼性を向上させる。
さらに別の実施態様によれば、アルミニウム合金ストリップまたは薄板が0.5mmから5.0mm、好ましくは1.0mmから3.0mmの厚さを有する場合、AA6XXX型析出硬化性アルミニウム合金からなる成形部品と同様な特性を有する成形部品がアルミニウム合金ストリップから製造されることができる。
この実施態様によれば、特に1.0mmから3.0mmの厚さ範囲のアルミニウム合金ストリップまたは薄板は、これまでに用いられた軟化焼鈍された変種と比べて大幅に向上した降伏強度に起因して、顕著に増加した分野の利用を可能にする。
最後に、上記の目的は、自動車の構造部品または車両コンポーネント、特にBIWコンポーネントの製造のための、本発明によるアルミニウム合金ストリップまたは薄板の使用によっても実現される。本発明によるアルミニウム合金ストリップは、非常に高度の変形を受けることができるが、同時にアルミニウム合金ストリップまたは薄板の材料厚さを小さくするために高い降伏強度を提供し、それでもASTM G67による腐食試験において非常に良好な腐食挙動を有する成形部品が対応する使用のために製造されることを可能にするからである。
本発明は、下記において例示的実施態様を図とともに用いてより詳細に説明される。
アルミニウム合金ストリップを製造するための方法の例示的実施態様の方法ステップの概略図を示す。 アルミニウム合金ストリップの有利な使用の例示的実施態様の概略透視図である。
図1は、まず、概略図において、本発明によるアルミニウム合金に基づくアルミニウムストリップを製造するための例示的実施態様の方法ステップを示す。まず、ステップ1において、以下の合金成分、
3.6重量%≦Mg≦6重量%、
Si≦0.4重量%、
Fe≦0.5重量%、
Cu≦0.15重量%、
0.1重量%≦Mn≦0.4重量%、
Cr<0.05重量%、
Zn≦0.20重量%、
Ti≦0.20重量%、
を有し、残りはAlと、個別で最大0.05重量%、全体で最大0.15重量%の不可避の不純物とであるアルミニウム合金からなる圧延インゴットが鋳造される。
圧延インゴットは、ステップ2により、480℃から550℃の温度で少なくとも0.5時間均一化される。続いて、ステップ3において、圧延インゴットは、280℃から500℃の温度で熱間圧延されて熱延ストリップとされる。ステップ5による最後の中間焼鈍の前に、アルミニウム合金ストリップは、ステップ4により、10%から45%の圧延度で冷間圧延される。圧延度を10%から45%に限定することは、ステップ5による続く中間焼鈍時に、再結晶によって20μmを超える平均結晶粒サイズを得ることができることを意味する。冷間圧延されたアルミニウム合金ストリップの最後の中間焼鈍を300℃から500℃で行うことは、20μmを超える結晶粒サイズを有する再結晶した微細構造を最終冷間圧延ステップ6に提供する。ステップ4およびステップ5は、必要なら、求められる場合により薄い最終薄板厚さを得るために、繰り返すことができる。再結晶した微細構造にステップ6による冷間圧延によって最終厚さへの圧延度30%から60%で歪み硬化が導入され、これが降伏強度Rp0.2の増加につながる。冷間圧延された微細構造は、ステップ7による逆焼鈍による回復を受け、そのため、特に均一伸びAおよび破断後百分率面積減少Zが再びより高い値を取り、良好な成形挙動が設定される。最後の冷間圧延時に得られた降伏強度Rp0.2の増加は、逆焼鈍の後の温度の選択に起因して少なくとも部分的に維持され、そのため、190MPaを超える降伏強度を有するアルミニウム合金ストリップを提供することができる。14%を超える均一伸びAのための伸びの値および50%を超える破断時百分率面積減少Zのための値により、製造されたアルミニウム合金ストリップおよびそれから製造された薄板も、複雑な成形操作に付すことができる。
図1に例示される追加のステップ8において、アルミニウム合金ストリップから薄板が切断され、薄板は、成形操作において続いて成形部品、たとえば自動車の「ボディー・イン・ホワイト」の車両コンポーネント、いわゆるBIWコンポーネントに成形される。BIWコンポーネントは、多くの場合、複雑な幾何形状を有し、したがってそれらが製造される元のストリップまたは薄板の高い成形性を必要とする。顕著な軽量化を実現するために、アルミニウム合金からなるBIWコンポーネントも、対応して狭い薄板厚さを必要とし、このことは、用いられるアルミニウム合金ストリップまたは薄板の高い強度および降伏強度を必要とする。本発明によるアルミニウム合金ストリップおよびそれらから製造される薄板は、試験が示すようにこの要件ならびに必要な腐食抵抗性を満たす。したがって、車両コンポーネント、特にBIWコンポーネントが本発明によるアルミニウム合金ストリップから製造される場合、コンポーネントは、AA6XXX材料からなる従来のコンポーネントよりコスト効率よく提供されることができる。
図2a、図2bは、本発明によって製造されるアルミニウム合金ストリップの利用分野を、図2aによる車両構造のさまざまな薄板、またはたとえば概略的に例示される図2bによる車両ドアの内部部品の形で、概略的に示す。自動車における非析出硬化性の、すなわち本発明による自然に硬いアルミニウム合金ストリップおよび薄板のためのさらなる利用可能性が、本発明によるアルミニウム合金ストリップの良好な腐食挙動の結果としてもたらされる。
種々のアルミニウム合金組成物から圧延インゴットが鋳造され、480℃から550℃で少なくとも0.5時間の均一化に付され、280℃から500℃で熱間圧延されて熱延ストリップとされ、続いて最後の中間焼鈍の前後の冷間圧延時にさまざまな条件に付された。表1は、全部で7種類の異なる合金組成物を示す。12の試験において、7種の異なる合金に加えて、最後の中間焼鈍の前後の冷間圧延のために種々のパラメータが用いられた。熱延ストリップの完了まで、製造された試験ストリップは、異なる熱延ストリップ厚さおよび異なるアルミニウム合金を除いて異ならなかった。
Figure 0006481052
表1において、0.01重量%未満であったその他の不純物は、例示実施態様中に記載されていない。残りの内容物は、アルミニウムからなっていた。
さらに、表1において、本発明によって提供される範囲の外にある合金化成分は、下線を引かれている。試験番号1、2、9は、Mg、MnまたはCr含有率が本発明による範囲の外にあるアルミニウム合金を含んでいた。比較例1において、Mg含有率が低すぎ、MnおよびCrの含有率が高すぎる。比較例2も、Crについて高すぎる値およびMnについてわずかに増加した値を含んでいる。比較例9は、再び、MnおよびCrについて顕著に高すぎる値を有する。
種々のアルミニウム合金から提供された熱延ストリップは、次に、最後の中間焼鈍の前後の冷間圧延において表2の仕様により冷間圧延された。逆焼鈍温度は、すべての試験で240℃であった。逆焼鈍は、コイルの形で行われ、逆焼鈍温度の金属温度が少なくとも0.5時間維持された。表2において、大体0.7mmから1.7mmの間の最終厚さaも指定されている。
表2において、本発明による範囲の外にある圧延度は、下線が引かれている。比較例1、6は、高すぎる中間焼鈍の前の圧延度を有するが、比較例3は、低すぎる中間焼鈍の後の最終圧延度を有する。
すべての試験において、中間焼鈍後に平均結晶粒サイズ、すなわち平均結晶粒直径が測定された。この目的で、ストリップの試料が採取され、縦断面がバーカー(Barker)法によって陽極処理された。試料は、ASTM E1382に従って顕微鏡下で測定され、平均結晶粒サイズは平均結晶粒直径によって決定された。
ストリップが製造された後に、試料が採取され、EN 10002−1またはISO 6892にそれぞれ従って機械特性、たとえば降伏強度Rp0.2、引張強度R、均一伸びA、破断時伸びA80mmおよび破断後百分率面積減少Zが測定された。決定された平均結晶粒サイズまたは平均結晶粒直径に加えて、表3にすべての値がそれぞれ記録されている。表3はさらに、試料が事前に130℃で17時間のシミュレーションされた熱応力に付された、ASTM G67(NAMLT)による腐食試験における質量損失の値も示している。
Figure 0006481052
本発明によるアルミニウム合金ストリップについて請求されている値の外にある機械特性は、再び下線を引かれている。
Figure 0006481052
比較例1、2は、成形性に関する結果に対する合金組成の影響を明確に示している。顕著に増加したMn含有率を有する比較例1において、たとえば均一伸びAは、10.6%に低下している。比較例1における不十分なMg含有率も、大きな伸び率の値に不利に作用している。
他方、増加したCr含有率とわずかに過剰のMn含有率とを有する比較例2は、50%を下回る破断後百分率面積減少値Zを示し、悪化した成形挙動を示している。破断後百分率面積減少Zは、すなわち大きな成形操作の場合に破断なく断面積の減少によって成形のための材料を提供する材料の性質を表している。より高いMn含有率またはCr含有率に起因して、10μmまたは15μmの平均結晶粒サイズは、これらの試料の腐食特性に対して負の影響を及ぼしていない。
本発明による例示実施様態である比較例3と本発明4が比較されると、中間焼鈍後の最終圧延時の圧延度を設定することによって降伏強度Rp0.2を設定することができることが明確になる。本発明4、5、8は、中間焼鈍後の31%から60%の最終圧延度によって、成形のために重要な特性値、たとえば均一伸びAまたはZの範囲の顕著な減少を引き起こすことなく降伏強度Rp0.2を最大211MPaの値に上げることができることを示している。
比較例3および本発明4、5、8と同一のアルミニウム合金を有する比較例6が含まれる場合、最後の中間焼鈍前の冷間圧延時の圧延度を制限することによって平均結晶粒直径を設定することの影響を非常に明確に特定することができる。最後の中間焼鈍の前の冷間圧延時の61%の圧延度において、中間焼鈍によって13μmの平均直径または平均結晶粒サイズを有する腐食特性に負の影響を及ぼす比較的細かい結晶粒が製造される。比較例6は、粒界腐食に対して抵抗性でないと評価される。
本発明による例示実施態様は、降伏強度Rp0.2は、40%から60%の最終冷間圧延時の圧延度を用いることによって最大270MPaの値に増加させることができることを示している。ここで、特に、本発明12における最大5.2重量%のより高いMg含有率は、降伏強度Rp0.2の際立った増加に寄与している。
本発明による例示実施態様である比較例9および本発明10、11の比較は、腐食抵抗性が最後の中間焼鈍前の圧延度の選択に、したがって平均結晶粒直径または平均結晶粒サイズに著しく依存することを示している。本発明10、11の場合、Mg含有率は、比較例9と比較して増加し、これは、原理的には粒界腐食に関して悪化した腐食抵抗性という結果を生じる可能性があった。しかし、驚くべきことに、これらの例示実施態様の腐食抵抗性は、より小さな結晶粒直径およびより低いMg含有率を有する比較例9と比較して顕著に良好である。ここで、最後の中間焼鈍の前の冷間圧延度に対する本発明による制約による好ましい処理手順が逆焼鈍されたストリップの最終製品に対して際立った効果を有することが明確になる。
結論として、本発明による例示実施態様は、降伏強度値、伸び値および粒界腐食に対する腐食抵抗性を有し、高度に応力を受ける車両コンポーネントにおける使用に特に良好に適し、かつ非析出硬化性アルミニウム合金の使用に起因してコスト効率のよい方法で製造することができるアルミニウム合金ストリップを提供することができることを示している。

Claims (16)

  1. アルミニウム合金からアルミニウムストリップまたは薄板を製造するための方法であって、重量%で以下の合金化成分、
    3.6%≦Mg≦6%、
    Si≦0.4%、
    Fe≦0.5%、
    Cu≦0.15%、
    0.1%≦Mn≦0.4%、
    Cr<0.05%、
    Zn≦0.20%、
    Ti≦0.20%、
    を有し、残りはAlと、個別で最大0.05重量%、全体で最大0.15重量%の不可避の不純物とであり、
    前記方法は、
    − 前記指定されたアルミニウム合金からなる圧延インゴットを鋳造するステップと、
    − 前記圧延インゴットを480℃から550℃で少なくとも0.5時間均一化するステップと、
    − 前記圧延インゴットを280℃から500℃の温度で熱間圧延して熱延ストリップにするステップと、
    − 熱間圧延の後の前記アルミニウム合金ストリップを最後の中間焼鈍の前に10%から45%の圧延度で冷間圧延するステップと、
    − 前記冷間圧延されたアルミニウム合金ストリップが前記中間焼鈍の後に再結晶した微細構造を有するような方法で、前記冷間圧延されたアルミニウム合金ストリップに対して少なくとも最後の中間焼鈍を300℃から500℃で行うステップと、
    − 前記中間焼鈍されたアルミニウム合金ストリップを30%から60%の圧延度で最終厚さに冷間圧延するステップと、
    記アルミニウム合金ストリップをコイルとして最終厚さ逆焼鈍するステップであって、190℃〜250℃の金属温度少なくとも0.5時間、前記アルミニウム合金ストリップを焼鈍し、前記アルミニウム合金ストリップの微細構造中の回復プロセスにより成形特性の改善をもたらす、逆焼鈍するステップと、
    を含む方法。
  2. 前記最後の中間焼鈍の前の冷間圧延時の圧延度は、20%から30%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記最後の中間焼鈍の後の最終厚さへの冷間圧延時の圧延度は、40%から60%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記アルミニウム合金ストリップは、0.5mmから5.0mmの最終厚さに冷間圧延されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記アルミニウム合金ストリップは、1.0mmから3.0mmの最終厚さに冷間圧延されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記逆焼鈍時の前記金属温度は、220℃から240℃であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  7. ルミニウム合金ストリップまたは薄板であって、以下の合金化成分、
    3.6%≦Mg≦6%、
    Si≦0.4%、
    Fe≦0.5%、
    Cu≦0.15%、
    0.1%≦Mn≦0.4%、
    Cr<0.05%、
    Zn≦0.20%、
    Ti≦0.20%、
    を有し、残りはAlと、個別で最大0.05重量%、全体で最大0.15重量%の不可避の不純物であるアルミニウム合金からなり、
    前記アルミニウム合金ストリップまたは薄板は、
    190MPaを超える降伏強度Rp0.2と、
    少なくとも14%の均一伸びAと、
    50%を超える破断後百分率面積減少Zと、
    ASTM G67による腐食試験において130℃で17時間の事前の鋭敏化熱処理後に15mg/cm未満の質量損失と、
    を有するアルミニウム合金ストリップまたは薄板。
  8. 前記アルミニウム合金ストリップまたは薄板のMg含有率は、4.2重量%から6重量%であることを特徴とする、請求項に記載のアルミニウム合金ストリップまたは薄板。
  9. 前記アルミニウム合金ストリップまたは薄板のMg含有率は、4.2重量%から5.2重量%であることを特徴とする、請求項7に記載のアルミニウム合金ストリップまたは薄板。
  10. 前記アルミニウム合金ストリップまたは薄板のMn含有率は、0.1重量%から0.3重量%であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載のアルミニウム合金ストリップまたは薄板。
  11. 前記アルミニウム合金ストリップまたは薄板のCr含有率は、0.01重量%未満であることを特徴とする、請求項10のいずれか一項に記載のアルミニウム合金ストリップまたは薄板。
  12. 前記アルミニウム合金ストリップまたは薄板は、重量%での前記合金化成分の割合に対する以下の制約、
    Si≦0.2%、
    Fe≦0.35%、または
    Zn≦0.01%
    の1つ以上を有することを特徴とする、請求項11のいずれか一項に記載のアルミニウム合金ストリップまたは薄板。
  13. 前記アルミニウム合金ストリップまたは薄板は、以下の特性、
    200MPaを超える降伏強度Rp0.2
    少なくとも15%の均一伸びA
    少なくとも55%の破断後百分率面積減少Z、または
    ASTM G67による腐食試験において130℃で17時間の事前の鋭敏化熱処理後の10mg/cm未満の質量損失、
    の1つ以上を有することを特徴とする、請求項12に記載のアルミニウム合金ストリップまたは薄板。
  14. 前記アルミニウム合金ストリップまたは薄板は、0.5mmから5.0mmの厚さを有することを特徴とする、請求項13のいずれか一項に記載のアルミニウム合金ストリップまたは薄板。
  15. 前記アルミニウム合金ストリップまたは薄板は、1.0mmから3.0mmの厚さを有することを特徴とする、請求項7〜13のいずれか一項に記載のアルミニウム合金ストリップまたは薄板。
  16. 自動車の構造部品またはシャーシ・コンポーネントを製造するための請求項15のいずれか一項に記載のアルミニウム合金ストリップまたは薄板の使用。
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