JP2002206152A - 室温時効抑制と低温時効硬化能に優れたアルミニウム合金材の製造方法およびアルミニウム合金材 - Google Patents
室温時効抑制と低温時効硬化能に優れたアルミニウム合金材の製造方法およびアルミニウム合金材Info
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Abstract
化能に優れた過剰Si型6000系Al合金材であって、更に、
プレス成形性、ヘム加工性、耐食性、溶接性などの諸特
性を兼備したAl合金材の製造方法およびAl合金材を提供
することを目的とする。 【解決手段】 Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.0
1 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が1 以
上であるAl-Mg-Si系アルミニウム合金材を、500〜550
℃で溶体化および焼入れ処理した後に、直ちに50〜100
℃の範囲で保持する予備時効処理を施し、その後更に、
80〜120 ℃の範囲でで保持する亜時効処理を施し、この
アルミニウム合金材の亜時効処理後少なくとも 4カ月間
の室温時効後の特性として、導電率を41〜47.5IACS% の
範囲で、かつ−0.125 σ0.2 +61.4以上 (但し、σ0.2
は亜時効処理後少なくとも 4カ月間の室温時効後の耐
力) 、耐力を110 〜160MPaの範囲に制御し、かつ亜時効
処理直後との耐力差を15MPa 以内とし、伸びを28% 以上
とし、更に2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の低温時効
処理時の耐力を180MPa以上としたことである。
Description
温時効硬化能に優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金材
(以下、アルミニウムを単にAlと言う)の製造方法およ
びこの製造方法によって得られたアルミニウム合金材に
関するものである。
どの輸送機、家電製品、建築、構造物の部材や部品用と
して、成形加工性 (以下、単に成形性と言う) に優れた
Al-Mg系のAA乃至JIS 5000系や、成形性や焼付硬化性に
優れたAl-Mg-Si系のAA乃至JIS6000系 (以下、単に5000
系乃至6000系と言う) のAl合金材(圧延板材、押出形
材、鍛造材などの各アルミニウム合金展伸材を総称す
る)が使用されている。
して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の
向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体
に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、Al合
金材の適用が増加しつつある。
フェンダー、ドア、ルーフなどのパネル構造体の、特
に、外板 (アウターパネル) や内板 (インナーパネル)
に使用されるAl合金パネル材を例にとると、板厚が1.0m
m 以下の薄肉化した上での高強度Al合金材として、JIS
乃至AA規格に規定された(JIS乃至AA規格を満足する) 、
過剰Si型の6000系のAl合金パネル(板)材の使用が検討
されている。
に、Si:0.4〜1.3% (質量% 、以下同じ) 、Mg:0.4〜1.2%
を含み、かつSi/Mg が1 以上である、Al-Mg-Si系アルミ
ニウム合金である。そして、この過剰Si型6000系Al合金
は、特に優れた時効硬化能を有しているため、プレス成
形や曲げ加工時には低耐力化により成形性を確保すると
ともに、成形後の焼付塗装処理などの人工時効処理時の
加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確
保できる利点がある。
Mg量などの合金量が多い、他の5000系のAl合金などに比
して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら60
00系Al合金材のスクラップを、Al合金溶解材 (溶解原
料) として再利用する際に、元の6000系Al合金鋳塊が得
やすく、リサイクル性にも優れている。
途分野では、外板では加工条件の厳しいフラットヘム加
工と呼ばれる180 °曲げ加工等の厳しい曲げ成形が、内
板では深絞りや張出し等の厳しいプレス成形が複合して
施される。
的な要求特性として、高強度、高耐食性、高溶接性も要
求される。したがって、この種パネル構造体の外板や内
板のパネルには、高成形性、高ヘム加工性、高強度 (高
時効硬化性) 、高耐食性、高溶接性を兼備することが要
求される。
パネル材に要求される、高成形性、高強度、高耐食性、
高溶接性を兼備するために、特公平6-74480 号公報など
が提案されている。この特公平6-74480 号公報では、60
00系Al合金パネル材の組成をSi:0.6〜1.5%、Mg:0.5〜1.
4%とし、特にCuを0.07% 以下に規制し、溶体化および焼
入れ処理後の結晶粒の平均粒径を70μm 以下、導電率を
43〜51 IACS%の範囲としている。
処理後の特性は、板厚が1.0mm の薄板で、30% 以上の伸
び、10mm以上のエリクセン値などの成形性を有し、塗装
後の耐糸さび性や、MIG 、TIG などのアーク溶接性にも
優れている。
付け処理の温度は、省エネルギー化の要求と塗料改善と
によって、益々低温短時間化される傾向にあり、従来低
温短時間化の常識的であった、170 ℃×20分の処理か
ら、150 ℃×20分の低温短時間処理条件などに、益々低
温化する傾向にある。
塗装焼き付け処理が、150 ℃×20分の低温短時間化して
も、従来の170 ℃×20分の塗装焼き付け処理で得られ
る、180MPa以上の耐力とすることが求められる。しか
し、このように人工時効処理が低温した場合、過剰Si型
6000系Al合金パネル材をもってしても、その時効硬化能
には限界があるため、塗装焼き付け処理後の耐力を180M
Pa以上とすることは、非常に難しい課題である。
施例で示されているAl合金パネル材の塗装焼き付け処理
後の耐力は、175 ℃×30分の処理で、最大でも180MPa程
度であり、前記150 ℃×20分などの低温時効硬化処理条
件では、耐力が到底、この種パネル材用途に要求される
180MPa以上とならない。
開示されたパネル材でも、低温時効硬化処理条件では、
板厚が1.0mm 以下の薄板で、前記180MPa以上の高強度
で、かつ高成形性というわけにはいかない。また、同公
報には、曲げ加工性、特に自動車外板パネルに要求され
る前記フラットヘム (曲げ) 加工性についての開示もな
い。
れら従来の過剰Si型6000系Al合金材は、その優れた時効
硬化能ゆえに、Al合金材自体の製造後、前記各用途に使
用されるまでの間に、室温 (常温) 時効が生じるという
大きな問題があった。この室温時効の傾向は、特に、本
発明が対象とする過剰Si型6000系Al合金材で強い。
6000系Al合金材自体の製造後2 週間経過後でも、20% 程
度以上耐力が上昇するとともに、逆に伸びが10% 程度以
上低下するような現象も生じる。
合、製造直後には、過剰Si型6000系Al合金材が前記各用
途の要求特性を満足したとしても、一定時間の経過後
に、実際の用途に使用される際には、要求特性を満足せ
ずに、パネル材であれば、前記プレス成形性やヘム加工
性、また、前記低温での時効硬化性を著しく低下させる
こととなる。
室温時効抑制と低温時効硬化能向上の課題に対しては、
特開平10-219382 号、特開2000-273567 号等の公報など
で、6000系Al合金板材を溶体化および焼入れ処理した後
に、70〜150 ℃の低温で0.5〜50時間程度保持する熱処
理 (時効処理) を施して改善することが開示されてい
る。
時効硬化能を阻害している要因は、溶体化および焼入れ
処理後の室温放置中に形成されるMg-Si クラスターであ
るとしている。即ち、この形成されたMg-Si クラスター
が、塗装焼き付け時に析出することで、強度上昇に寄与
するGPゾーンの側の析出を阻害することであるとしてい
る。
温時効硬化能を阻害するMg-Si クラスターの生成量を規
制するために、また、特開2000-273567 号公報では、成
形性向上には寄与するMg-Si クラスターを低温時効硬化
能を阻害しない範囲で一定量の存在 (活用) させるため
に、溶体化および室温まで焼入れ処理した後に、前記70
〜150 ℃で0.5 〜50時間程度保持する低温熱処理を施し
ている。
382 号、特開2000-273567 号等の公報では、過剰Si型を
含む6000系Al合金材の室温時効抑制と低温時効硬化能向
上を課題としているものの、その低温時効硬化能は、前
記特公平6-74480 号公報と同じく、175 ℃×30分乃至17
0 ℃×20分の処理のレベルであって、前記した、最近の
150 ℃×20分などの低温時効硬化処理 (塗装焼き付け処
理) 条件ではない。
は、前記70〜150 ℃の低温熱処理を施しても、実施例で
示されているAl合金パネル材の塗装焼き付け処理後の耐
力は、170 ℃×30分の塗装焼き付け条件では、最大でも
168MPa程度であり、前記150℃×20分などの低温時効硬
化処理条件では、耐力が到底、この種パネル材用途に要
求される180MPa以上とならない。
時効抑制効果として、製造後100 日放置した後のAl合金
パネル材の伸びが30% 以上、エリクセン値が10mm以上を
もって、成形性が良く、室温時効が抑制されているとし
ている。
Al合金パネル材の耐力は、最大でも109MPa程度の低いレ
ベルである。これは、室温時効が抑制されたこともある
が、製造直後のAl合金パネル材の耐力が元々相当に低い
レベルであったとも言える。そして、仮に室温時効が抑
制されたとしても、前記150 ℃×20分などの低温時効硬
化処理条件では、前記低い耐力レベルでは、到底この種
パネル材用途に要求される180MPa以上とならない。
ネル材の室温時効抑制と低温時効硬化能向上は、これま
での高成形性化と高強度化との課題と同様に、相矛盾す
る技術課題であって、両立させることは中々難しい。こ
のため、従来から種々提案されている晶出物や析出物の
制御技術や、Cuなどを多量に添加する技術をもってして
も、室温時効抑制と低温時効硬化能向上とを同時に達成
することはかなり難しい技術課題となる。
制されるとともに、前記低温時効硬化能に優れた過剰Si
型6000系Al合金材であって、更に、各用途に要求され
る、プレス成形性、ヘム加工性、耐食性、溶接性などの
諸特性を兼備した過剰Si型6000系Al合金材は、これまで
に無かったのが実情である。
側としても、Al合金材の性能を保証することが難しく、
パネル製造などの用途側でも、過剰Si型6000系Al合金材
をパネル製造工程などに合わせて、長期間保管すること
ができなかった。
用途などでは、各々の要求特性のみを満たす過剰Si型60
00系とそれ以外の別のAl合金パネル材を使い分けるか、
あるいは過剰Si型6000系Al合金パネル材を両方に用いた
としても、パネル構造体側の設計条件や成形を大幅に変
えて用いざるを得なかった。例えば、パネル構造体の外
板用には過剰Si型6000系Al合金パネル材を用いたとして
も、成形性要求の厳しい内板用には、前記5182-O材など
のより強度が低く厚肉化した5000系Al合金パネル材など
を用いていた。
ものであって、その目的は、基本的に、室温時効が抑制
されるとともに低温時効硬化能に優れた過剰Si型6000系
Al合金材であって、更に、各用途に要求される、プレス
成形性、ヘム加工性、耐食性、溶接性などの諸特性を兼
備したAl合金材の製造方法、およびAl合金材を提供しよ
うとするものである。
に、室温時効抑制と低温時効硬化能に優れたアルミニウ
ム合金材の本発明製造方法 (請求項1)の要旨は、Si:0.4
〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:0.001〜
1.0%を含み、かつSi/Mg が1 以上であるAl-Mg-Si系アル
ミニウム合金材を、500 〜550 ℃で溶体化および焼入れ
処理した後に、直ちに50〜100 ℃の範囲で保持する予備
時効処理を施し、その後更に、80〜120℃の範囲でで保
持する亜時効処理を施し、このアルミニウム合金材の亜
時効処理後少なくとも 4カ月間の室温時効後の特性とし
て、導電率を41〜47.5IACS% の範囲で、かつ−0.125 σ
0.2 +61.4以上 (但し、σ0.2 は亜時効処理後少なくと
も4カ月間の室温時効後の耐力) 、耐力を110 〜160MPa
の範囲に制御し、かつ亜時効処理直後との耐力差を15MP
a 以内とし、伸びを28% 以上とし、更に2%ストレッチ付
与後150 ℃×20分の低温時効処理時の耐力を180MPa以上
とすることである。
れた本発明アルミニウム合金材 (請求項2)の要旨は、S
i:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:0.
001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が1 以上で、残部Alおよ
び不可避的不純物からなるAl-Mg-Si系アルミニウム合金
材であって、このアルミニウム合金材の少なくとも 4カ
月間の室温時効後の特性として、導電率が41〜47.5IACS
% の範囲で、かつ−0.125 σ0.2 +61.4以上 (但し、σ
0.2 は少なくとも 4カ月間の室温時効後の耐力)であ
り、耐力が110 〜160MPaの範囲で、かつ室温時効前との
耐力差が15MPa 以内であり、伸びが28% 以上であり、更
に2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の低温時効処理時の
耐力が180MPa以上であることである。
材、パネル材を押出形材、鍛造材などの各種Al合金展伸
材を含み、かつ総称する。
溶体化および焼入れ処理した後に、直ちに前記予備時効
処理を施すとともに前記亜時効処理を施し、この亜時効
処理後 (少なくとも 4カ月間の室温時効後) のAl合金材
の導電率を、41〜47.5IACS%の範囲でかつ−0.125 σ
0.2 +61.4以上 (但し、σ0.2 は亜時効処理後少なくと
も 4カ月間の室温時効後の耐力) 、耐力を110 〜160MPa
の範囲となるように制御することによって、各用途に要
求される、プレス成形性、ヘム加工性、耐食性、溶接性
などの諸特性を兼備した上で、室温時効が著しく抑制さ
れ、低温時効硬化能が優れることを知見した。
焼入れ処理後に、直ちに予備時効処理および亜時効処理
した場合の組織と相関しているものと推考される。即
ち、溶体化および焼入れ処理後の、本発明の予備時効処
理と亜時効処理によって、本発明Al合金材の組織は、主
として、Mg/Si クラスターとβ" 相と過飽和固溶体およ
び少量のSi/ 空孔 (原子間の原子の無い空間部、ベーカ
ンシーとも言う) クラスターなどからなるミクロ組織と
なるものと推考される。
理した後の、通常のMg/Si クラスターは、焼き入れ直後
には、Siと空孔とのペアが形成され、時間の経過ととも
に、拡散、集団化することで、Si/ 空孔クラスターとな
ってしまう性質を有する。このため、室温での長時間経
過後においても、材料中にはなお多量のSi- 空孔のペア
が存在し、空孔濃度は高い。このため、溶質原子の拡散
が容易に生じ、前記Si/ 空孔クラスターの形成が促進さ
れ、強度が高くなり、時効硬化する傾向が著しい。ま
た、この室温での時効硬化によって、低温時効処理能も
低下する。
明の予備時効処理と亜時効処理によって、前記Mg/Si ク
ラスターを積極的に形成させると、空孔は拡散し、消滅
していくため、前記空孔濃度は低くなる。従って、室温
時効が著しく抑制されるという優れた特性を有する。ま
た、このMg/Si クラスターは、150 ℃×20分の低温時効
硬化処理条件など、その後の焼き付け塗装などの加熱
(時効処理) 温度が低くても、β" 相の核生成サイトと
なりやすく、低温時効処理能が高いという優れた特性も
有する。
これら空孔濃度が低いMg/Si クラスターと一部β" 相を
生成させるものである。
に、特に、室温 (常温) まで焼入れ処理した場合には、
前記した通り、時間の経過とともに、前記クラスターの
内でも、特に、Si/ 空孔クラスターが多く生成する。そ
して、このSi/ 空孔クラスターが多く生成してしまった
場合、その後、本発明の亜時効処理を行っても、前記Mg
/Si クラスターを高密度に生成させ、空孔濃度を低くす
ることが難しくなる。
の生成を抑制するために、溶体化処理後50〜120 ℃の範
囲で焼き入れを停止した後、また溶体化処理後に室温
(常温) まで焼入れ処理した場合でも、直ちに、50〜100
℃の範囲で保持する予備時効処理を行う。従い、この
予備時効処理は、前記Si- 空孔のペアの形成およびSi/
空孔クラスター自体の生成を抑制し、Si-Si の形成およ
びMg/Si クラスターを生成させるために、そして、続く
本発明の亜時効処理によって、Mg/Si クラスターと一部
β" 相を生成させるために必須のものである。
-273567 号等の公報でも、過剰Si型を含む6000系Al合金
材に対し、本発明の亜時効処理と同様の低温熱処理を行
っている。にも関わらず、170 ℃×30分の塗装焼き付け
条件では、最大でも168MPa程度で、150 ℃×20分などの
低温時効硬化処理条件では、耐力が到底180MPa以上とな
らない。
6000系Al合金材の元々の耐力が低いこともあるが、溶体
化処理後に室温まで焼入れ処理し、その後数時間経過後
に本発明の亜時効処理と同様の低温熱処理を行っている
ために、前記Si- 空孔のペアの形成およびSi/ 空孔クラ
スターが生成し、低温熱処理によっても、このSi/ 空孔
クラスターが残留し、前記空孔の無いMg/Si クラスター
が生成されにくくなっているものと推考される。
体の量を含めて、本発明のMg/Si クラスター主体の組織
か、通常のSi/ 空孔クラスターなどが主体の組織かを、
定性的かつ定量的に把握 (測定) 乃至区別して識別する
ことは、現時点での分析技術レベルでは、TEM や電子顕
微鏡によっても困難である。また、これらの分析手段で
の定性的および定量的な分析には膨大かつ煩雑で時間が
かかり、Al合金材の製造のための実際的な管理基準とは
なり難い。
00-273567 号等の公報では、これらクラスターの有無
を、DSC(示差走査熱分析法) で評価しようとしている。
これは、試料を室温から加熱し、昇温中の発熱乃至吸熱
反応の値を、析出物 (クラスター) の生成、溶解( 再固
溶) と対応させようとするものである。そして、より具
体的には、150 〜250 ℃での吸熱反応の有無で、クラス
ターの有無を判断しようとしている。しかし、図などか
らは、より低温側の100 ℃域においても、発熱反応が見
られ、昇温中に析出物が形成されたことを示している。
即ち、前記150 〜250 ℃での吸熱反応が、元々材料中に
存在していた析出物の溶解によるものか、前記昇温中に
より低温側で (後で新たに) 形成された析出物の溶解に
よるものかは、不明瞭である。したがって、前記した通
り、本発明のMg/Si クラスター主体の組織か否かを定性
的かつ定量的に把握することはやはり困難である。
記処理温度や処理時間などの好ましい条件範囲から選択
して亜時効処理を施したとしても、実際のAl合金材の室
温時効抑制効果と低温時効硬化能とは、それまでの製造
履歴や、加工条件や熱処理条件などのバラツキなどから
も大きな影響を受けるために、本発明の目的とするレベ
ルの効果が必ず得られるとは限らない。
ラスターやβ" 相の量に直接相関し、 測定が簡便で、か
つ再現性のよい、Al合金材の導電率によって、本発明組
織を規定するとともに、合わせて、定量的なAl合金材の
室温時効抑制効果と低温時効硬化能によって、本発明Al
合金材を規定する。
記亜時効処理後のAl合金材の導電率や、前記Al合金材の
組織、更に前記Al合金材の特性の点からも、そして、予
め前記50〜100 ℃の範囲で保持する予備時効処理を行う
点からも、通常の人工時効処理とは全く異なる人工時効
処理である。
5 〜185 ℃×数時間〜20時間など、比較的高温長時間の
加熱処理を行って、本発明とは逆に、β' 相を積極的に
析出させ、最大強度のAl合金材を得るなどの、高強度化
を図るものである。
に記載のように、処理温度が80〜160 ℃ (処理時間が好
ましくは1 〜24時間の範囲) から選択して行われる、比
較的低温で短時間の人工時効処理である。言い換える
と、最大強度のAl合金材を得る前記人工時効処理よりも
かなり低い温度で行われる人工時効処理である。このた
め、Al合金材組織の結晶粒内には、過飽和固溶体中にMg
/Si クラスターやβ" 相が均一微細に析出する。
の純粋なAl合金材組織というのはあり得ず、本発明の亜
時効処理を行っても、現実的には、Mg/Si クラスターと
β"相を主体とし、一部はSi- 空孔、Si/ 空孔クラスタ
ーなどとの混合相となるものと推考される。このため、
これら混合した組織による若干の室温時効硬化発生は避
けられない。したがって、本発明では、これら必然的に
組織中に混合乃至残留するSi- 空孔、Si/ 空孔クラスタ
ーなどの許容量を明確にするためにも、前記導電率以外
に、定量的なAl合金材の室温時効抑制効果と低温時効硬
化能によって、本発明Al合金材を規定する。
て、粗大な析出物であるので、成形の際の転位によって
切断されるにくく、Al合金材組織の均一変形能を向上さ
せ、特にプレスなどの成形性を向上させるとともに、高
強度化などの特性も保証している。
に、前記亜時効処理後 4カ月室温時効後の特性として、
Al合金材の導電率が41〜44 IACS%の場合に、限界絞り比
(LDR)が1.9 以上、平面ひずみ張出高さ(LDH0)が20mm以
上の特性が得られる。このため、プレス成形用パネル材
などに用いられて好適である。
は、請求項4 の要旨のように、代表的には、自動車内板
用パネル材に用いられて好適である。
効処理後 4カ月室温時効後の特性として、Al合金材の導
電率が43〜47.5IACS% の場合に、10% のストレッチを行
った後、JIS Z 2248に規定されるVブロック法により、
先端半径0.3mm 、曲げ角度60度の押金具で60度に曲げた
後、更に厚み0.6mm のAl合金板を挟んで、180 度に曲げ
た際に曲げ部の割れがない特性が得られる。このため、
曲げ加工用パネル材などに用いられて好適である。
は、請求項6 の要旨のように、代表的には、自動車外板
用パネル材に用いられて好適である。ただ、自動車用パ
ネル構造体の外板用として用いる際には、耐糸さび性を
劣化させないために、この請求項6 に記載の通り、Cuの
含有量を0.1%以下に規制することが好ましい。
って、高い強度を得ることができ、この結果、溶接性を
阻害するSi量を低減することができるので、請求項7 の
要旨のように、溶接構造材としても好適に使用すること
ができる。
ける亜時効処理後のAl合金材の導電率の規定について説
明する。本発明では、前記した通り、亜時効処理後の結
晶粒内のMg/Si クラスターとβ" 相の量に直接相関し、
測定が簡便で、かつ再現性のよい、亜時効処理後のAl合
金材の導電率によって亜時効処理後のMg/Si クラスター
とβ" 相を主体とするAl合金材組織を規定する。
効果や低温時効硬化能を始めとする本発明効果を保証す
るために、亜時効処理後( 少なくとも 4カ月間の室温時
効後) のAl合金材の導電率(L-LT 方向) で、41〜47.5IA
CS% の範囲で、かつ亜時効処理後少なくとも 4カ月間の
室温時効後の耐力 (σ0.2)との関係で、−0.125 σ0. 2
+61.4以上と規定する。
制されるため、亜時効処理直後でも、亜時効処理後の長
期の室温時効後でも、Al合金材の導電率の変化は少な
い。この点では、導電率の規定は亜時効処理直後でも、
長期の室温時効後でも良い。ただ、本発明Al合金材であ
っても、室温時効は生じ、時間の経過とともに、Al合金
材の導電率は若干変化 (上昇) する。また、Al合金材と
しては、成形等される長期の室温時効後の材料特性が重
要となる。このため、亜時効処理後のAl合金材の導電率
規定は、長期の室温時効後、亜時効処理後少なくとも 4
カ月間の室温時効後の導電率測定によって行う。
CS% を越えた場合、通常のβ' 相主体の組織となり、強
度が高くなりすぎ、成形性が低下する。この結果、Al合
金材の亜時効処理後 4カ月間の室温時効後の特性とし
て、亜時効処理直後乃至時効前との耐力差が15MPa 以内
であり、かつ伸びが28% 以上である効果が得られない。
したがって、本発明では導電率の上限を47.5IACS% と規
定する。
41 IACS%未満の場合、亜時効処理後の室温時効が激しく
なり、目的とする室温時効抑制効果や低温時効硬化能が
得られない。この結果、板厚が1.0mm 以下の薄板であっ
ても、自動車用などのパネル構造体などとしての耐デン
ト性や強度を確保することができない。また、2%ストレ
ッチ付与後150 ℃×20分の低温時効処理時の耐力を180M
Pa以上とすることができず、低温時効硬化能も得られな
い。したがって、本発明では導電率の下限を41IACS%と
規定する。
41〜47.5IACS% の範囲であっても、亜時効処理後少なく
とも 4カ月間の室温時効後の導電率と耐力 (σ0.2)との
関係で、導電率が−0.125 σ0.2 +61.4未満の場合、亜
時効処理後の室温時効が激しくなり、目的とする室温時
効抑制効果や低温時効硬化能が得られない。図1 に、亜
時効処理後4 カ月間の室温時効後の導電率 (縦軸) と耐
力 (横軸)との関係を示す。図1 の斜線を付した範囲
が、本発明範囲内で、各用途に要求される、プレス成形
性、ヘム加工性、耐食性、溶接性などの諸特性を兼備し
た上で、室温時効が著しく抑制され、低温時効硬化能が
優れる範囲である。この図1 は、後述する実施例の発明
例、比較例を各々プロットした結果であって、図1 中の
右下がりの直線が導電率= −0.125 σ0.2 +61.4の線で
ある。
61.4の線より上にある (導電率≧−0.125 σ0.2 +61.4
である) 発明例は目的とする室温時効抑制効果や低温時
効硬化能が得られている。これに対し、−0.125 σ0.2
+61.4の線より下にある (導電率<−0.125 σ0.2 +6
1.4である) 比較例は、導電率が41〜47.5IACS% の範囲
であっても、目的とする室温時効抑制効果や低温時効硬
化能などの特性が得られていない。
内において、用途と要求特性によって好ましい導電率範
囲が異なる。より具体的には、プレス成形性が重視され
る、自動車内板用パネル材などの場合には、前記請求項
3 の要旨のように、前記亜時効処理直後のAl合金材の導
電率が41〜44 IACS%であることが好ましい。前記亜時効
処理後 4カ月室温時効後の特性として、Al合金材の導電
率の範囲が41〜44 IACS%の場合に、優れたプレス成形性
が得られる。即ち、限界絞り比(LDR) が1.9 以上、平面
ひずみ張出高さ(LDH0)が20mm以上の特性が得られる。一
方、前記導電率が41IACS% 未満、または、44 IACS%を越
えた場合には、上記特性は得られない。
板用パネル材などの場合には、前記請求項5 の要旨のよ
うに、前記亜時効処理後 4カ月室温時効後のAl合金材の
導電率が43〜47.5 IACS%であることが好ましい。導電率
がこの範囲にある場合、Al合金パネル材のヘム加工性
は、亜時効処理によるMg/Si クラスターとβ" 相の存在
により、組織の均一変形能が向上するために良好とな
る。
合は、前記した通り、通常のβ' 相主体の組織となり、
亜時効処理後のAl合金材耐力が高くなり過ぎ、成形性が
低下する。より具体的には、特にヘム加工性が低下し、
亜時効処理後 4カ月室温時効後の特性として、10% のス
トレッチを行った後、JIS Z 2248に規定されるVブロッ
ク法により、先端半径0.3mm 、曲げ角度60度の押金具で
60度に曲げた後、更に厚み1mm のAl合金板を挟んで、18
0 度に曲げた際に、曲げ部の割れが生じる。この結果、
自動車外板用パネル材などに使うことができない。
場合には、亜時効処理によるMg/Siクラスターとβ" 相
の量が不足し、亜時効処理後の室温時効も激しくなり、
目的とする室温時効抑制効果が得られない。また、自動
車外板用パネル材としての塗装焼き付け硬化処理後の強
度も低くなる。この結果、同様に自動車外板用パネル材
などに使うことができない。
係させる、亜時効処理後少なくとも 4カ月間の室温時効
後の耐力 (σ0.2)を、110 〜160MPa、好ましくは110MPa
から160MPa未満の範囲とする。前記図1 の規定におい
て、この耐力が160MPaを越えた場合、より厳しくは、16
0MPa以上の場合、特にヘム加工性などの曲げ加工性が低
下する。このため、前記耐力は160MPa未満のできるだけ
低い値の方が好ましい。しかし、一方では、耐力が110
MPa 未満では、目的とする低温時効硬化能が得られず、
2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の低温時効処理時の耐
力が180MPa以上とならない。
る、化学成分組成について説明する。本発明のAl合金材
は、過剰Si型6000系Al合金材として、特に、自動車等の
輸送機のパネル構造体などとして、室温時効が抑制され
るとともに低温時効硬化能に優れ、更に、各用途に要求
される、プレス成形性、ヘム加工性、耐食性、溶接性な
どの諸特性を兼備させる (満足する) 必要がある。した
がって、本発明Al合金における、基本的なSi、Mgの各元
素の含有量の臨界的な意義はこの観点から規定される。
、Fe、Zn、Ni、V などのその他の合金元素は、基本的
には不純物元素である。しかし、前記6000系合金のリサ
イクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけで
はなく、6000系合金や、その他のAl合金スクラップ材、
低純度Al地金などを溶解材として使用する場合を含む。
このような場合には、これら他の合金元素は必然的に含
まれることとなる。したがって、本発明では、目的とす
る前記諸特性向上効果を阻害しない範囲で、これら他の
合金元素が、JIS 乃至AAの規格内で含有されることを許
容する。
にMg/Si クラスターとβ" 相を形成して、室温時効抑制
効果と低温時効硬化能を発揮するための必須の元素であ
る。
るため、本発明の亜時効処理時に、SiとともにMg/Si ク
ラスターとβ" 相を形成できず、この亜時効処理直後の
アルミニウム合金材の導電率を41〜47.5IACS% の範囲に
制御することができない。この結果、室温時効抑制効果
と低温時効硬化能を発揮できない。
レス成形性や曲げ加工性 (ヘム加工性) 等の成形性が著
しく阻害される。したがって、Mgの含有量は、0.4 〜1.
2%の範囲で、かつSi/Mg が1.0 以上となるような量とす
る。また、後述する用途に応じたSiの上限量に対応し
て、Siの上限量が0.9%の場合は上限を0.9%、Siの上限量
が1.0%の場合は上限を1.0%とする。
に、SiとともにMg/Si クラスターとβ" 相を形成して、
室温時効抑制効果と低温時効硬化能を発揮する。したが
って、室温時効が抑制されるとともに低温時効硬化能に
優れた本発明過剰Si型6000系Al合金材にあって、更に、
各用途に要求される、プレス成形性、ヘム加工性、耐食
性、溶接性などの諸特性を兼備させるための最重要元素
である。
月間の室温時効後の特性として、2%ストレッチ付与後15
0 ℃×20分の低温時効処理時の耐力を180MPa以上とい
う、優れた低温時効硬化能を発揮させるために、Si/Mg
を1.0 以上とし、SiをMgに対し過剰に含有させた過剰Si
型6000系Al合金組成とする。
果や低温時効硬化能、更には、各用途に要求される、プ
レス成形性、ヘム加工性、耐食性、溶接性などの諸特性
を兼備することができない。
発明亜時効処理を行っても、前記室温時効抑制効果が小
さくなり、Al合金材の亜時効処理後 1カ月間の室温時効
後の特性として、亜時効処理直後との耐力差を5MPa以内
とし、かつ伸びを27% 以上とし、また、亜時効処理後 4
カ月間の室温時効後の特性として、亜時効処理直後との
耐力差を15MPa 以内とし、かつ伸びを25% 以上とするこ
とが期待できない。更に、溶接性を阻害する。
Si含有量範囲が若干異なる。より具体的には、プレス成
形性が重視される、自動車内板用パネル材などの場合に
は、Si含有量は上記0.4 〜1.3%の範囲であることが好ま
しい。この範囲の場合に、前記亜時効処理後 4カ月室温
時効後の特性として優れたプレス成形性が得られる。即
ち、限界絞り比(LDR) が1.9 以上、平面ひずみ張出高さ
(LDH0)が20mm以上の特性が得られる。一方、Si含有量が
上記0.4 〜1.3%の範囲を外れた場合には、上記成形性は
得られない。
板用などのパネル材の場合には、Si含有量は0.4 〜1.1%
と、上限値がより低めの範囲であることが好ましい。Si
含有量がこの範囲にある場合、Al合金パネル材のヘム加
工性は良好となる。
記した通り、亜時効処理直後のAl合金材耐力が140MPaを
越えて高くなり、溶体化後の焼き入れ時に粒界へSiが析
出しやすくなり、特にヘム加工性が低下し、亜時効処理
後 4カ月室温時効後の特性として、前記JIS に規定され
るVブロック法により曲げた際に、曲げ部の割れが生じ
る可能性がある。
重視される用途の場合には、Si含有量は0.4 〜0.9%の、
上限値が更により低めの範囲であることが好ましい。Si
含有量が0.9%を越えた場合、溶接条件の工夫によって
も、溶接割れなどの溶接欠陥が生じる可能性がより高く
なる。
件で、Al合金材組織の結晶粒内へのMg/Si クラスターと
β" 相析出を促進させる効果や、亜時効処理状態で固溶
したCuは成形性を向上させる効果もある。0.001%未満で
はこの効果がない。一方、1.0%を越えると、耐応力腐食
割れ性や、塗装後の耐蝕性の内の耐糸さび性、また溶接
性を著しく劣化させる。このため、耐応力腐食割れ性が
重視される構造材用途などの場合には0.8%以下、自動車
外板用などのパネル材用途などの場合には、耐糸さび性
の発現が顕著となる0.1%以下のできるだけ少ない量とす
ることが好ましい。しかし、前記耐食性が問題となら
ず、むしろプレス成形性の方が重視される、自動車内板
用パネル材などの場合には、0.001 〜0.8%の範囲の量と
することが好ましい。
し、これらの分散粒子には再結晶後の粒界移動を妨げる
効果があるため、微細な結晶粒を得ることができる効果
がある。そして、例えば、本発明におけるAl合金材のプ
レス成形性やヘム加工性はAl合金組織の結晶粒が微細な
ほど向上する。この点、0.01% 未満では、これらの効果
が無く、一方、0.65% を越えた場合、溶解、鋳造時に粗
大なAl-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) 系の金属間化合物や晶析出
物を生成しやすく、Al合金材の機械的性質を低下させる
原因となる。このため、特に、Al合金パネル材の場合に
は、Mn:0.01 〜0.15% の範囲とすることが好ましい。
時に分散粒子 (分散相) を生成し、これらの分散粒子に
は再結晶後の粒界移動を妨げる効果があるため、微細な
結晶粒を得ることができる効果がある。しかし、Cr、Zr
は、溶解、鋳造時に粗大なAl-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) 系の
金属間化合物や晶析出物を生成しやすく、Al合金材の機
械的性質を低下させる原因となる。この点、Cr:0.25%以
下、Zr:0.15%以下までは許容する。
と、粗大な晶出物を形成し、成形性を低下させる。但
し、Ti、B には微量の含有で、鋳塊の結晶粒を微細化
し、プレス成形性を向上させる効果もある。したがっ
て、Ti:0.1% 以下、B:300ppm以下までの含有は許容す
る。
u2Fe、Al12(Fe,Mn)3Cu 2 、(Fe,Mn)Al6などの晶出物を生
成する。これらの晶出物は、破壊靱性および疲労特性更
には成形性を著しく劣化させる。特に、Feの含有量が0.
50% を越えると顕著にこれらの特性が劣化するため、好
ましくは、Feの含有量 (許容量) を0.50% 以下とする。
る。したがって、Znの含有量は好ましくは0.1%以下とす
る。
Si型6000系Al合金材は、本発明規定の亜時効処理などを
除き、常法により製造が可能である。但し、常法による
各工程と、特に前記亜時効処理の条件および溶体化およ
び焼き入れ処理条件、更には、焼き入れ処理後の亜時効
処理までの過程において、各々好ましい製造条件があ
り、この点を含め以下に説明する。
発明成分規格範囲内に溶解調整された、過剰Al合金溶湯
を、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通
常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
処理を施した後、熱間圧延- 冷間圧延 (必要により、熱
延- 冷延の間、冷延の間にバッチ式あるいは連続式の中
間焼鈍なども施しながら) 、または押出、鍛造などの塑
性加工を行い、コイル状、板状などパネル材、長手方向
に渡って断面形状が同じ押出形材、ニアネットシェイプ
の鍛造材などの所望Al合金展伸材の形状に加工する。
は、調質処理として、先ず、必須に溶体化および焼入れ
処理(T4 処理) される。溶体化および焼入れ処理は、続
く本発明の予備時効処理や亜時効処理、あるいは後の塗
装焼き付け硬化処理などの人工時効処理によりMg/Si ク
ラスターとβ" 相を十分粒内に析出させるために重要な
工程である。この効果を出すための溶体化処理条件は、
500 〜550 ℃の温度範囲で行う。
内板用パネル材などの場合には、溶体化処理条件は、53
0 〜550 ℃のより高温側の方が好ましい。
板用などのパネル材の場合には、溶体化処理条件は、50
0 〜530 ℃のより低温側の方が好ましい。
度は300 ℃/ 分以上の急冷とすることが好ましい。冷却
速度が300 ℃/ 分未満の遅い場合には、焼入れ後の強度
が低くなり、低温短時間の塗装焼き付けでの時効硬化能
が不足し、180MPa以上の高耐力を確保できない。また、
溶体化後の焼き入れ時に粒界上にSi、MgSiなどが析出し
やすくなり、プレス成形やヘム加工時の割れの起点とな
り易く、これら成形性が低下する。この冷却速度を確保
するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷でもよい
が、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段から選択して
行うことが好ましい。
は、このSi- 空孔、Si/ 空孔クラスター自体の生成を抑
制するために、溶体化処理後の焼入れ終了温度を50〜10
0 ℃と高くした後に、直ちに再加熱乃至そのまま保持し
て行う。あるいは、溶体化処理後常温までの焼入れ処理
の後に、直ちに50〜100 ℃に再加熱して行う。
空孔、Si/ 空孔クラスター自体の生成を抑制し、前記Si
-Si やMg/Si クラスターを生成させるために、そして、
続く本発明の亜時効処理によって、より安定なMg/Si ク
ラスターとβ" 相を生成させるために必須のものであ
る。このためには、前記50〜100 ℃の温度範囲に、1 〜
24時間の必要時間保持することが好ましい。また、予備
時効処理後の冷却速度は、1 ℃/hr 以下であることが好
ましい。
持時間が不足した場合には、Si- 空孔、Si/ 空孔クラス
ター自体の生成を抑制できない。このため、目的とする
室温時効抑制効果や低温時効硬化能が得られない。一
方、100 ℃を越える温度では、また、保持時間が長過ぎ
ると、β' 相が析出して時効が進み過ぎ、強度が高くな
りすぎるため、成形性が著しく低下する。
備時効の温度範囲で焼入れ処理を終了し、そのままの高
温でコイルに巻き取るなどして行う。なお、コイルに巻
き取る前に再加熱しても、巻き取り保後に保温しても良
い。また、常温までの焼入れ処理の後に、前記温度範囲
に再加熱して高温で巻き取るなどしてもよい。なお、こ
の予備時効処理温度を、前記亜時効処理並に高めとし、
亜時効処理と合わせた乃至連続した熱処理としても良
い。
れた、本発明の亜時効処理は、前記した通り、溶体化お
よび焼入れ処理後の、本発明の予備時効処理と併用する
ことで、Al合金材の組織を、主として、より安定なMg/S
i クラスター、β" 相と、過飽和固溶体からなるミクロ
組織とするものである。
の時効硬化が起きにくいという優れた特性を有する。そ
して、その一方で、このミクロ組織は、150 ℃×20分の
低温時効硬化処理条件など、その後の焼き付け塗装など
の加熱 (時効処理) 温度が低くても、核生成サイトとな
り、低温時効処理能が高いという優れた特性も有する。
に、時間的な遅滞無く、行われることが好ましい。即
ち、前記予備時効処理後、時間の経過とともに室温時効
(自然時効) が生じる。そして、この室温時効が生じた
後では、亜時効処理による効果が発揮しにくくなる。こ
のため、なるべく速く、亜時効処理によって、より安定
なMg/Si クラスターとβ" 相を生成させることが好まし
い。
前記組成範囲において、亜時効処理温度を80〜120 ℃の
範囲とし、亜時効処理時間は必要時間、好ましくは1 〜
24時間の範囲とし、この範囲の中から、前記組成に応じ
て、亜時効処理効果が得られる亜時効処理の温度と時間
を選択することが好ましい。また、亜時効処理後の冷却
速度は、1 ℃/hr 以下であることが好ましい。
持時間が短過ぎると、より安定なMg/Si クラスターと
β" 相を生成させることができない。このため、目的と
する室温時効抑制効果や低温時効硬化能が得られない。
処理と大差なくなり、β' 相が析出して時効が進み過
ぎ、強度が高くなりすぎるため、亜時効処理後少なくと
も 4カ月間の室温時効後のAl合金材の導電率が41〜47.5
IACS%の範囲であっても、4 カ月間の室温時効後の耐力
(σ0.2)との関係で、導電率が−0.125 σ0.2 +61.4以
上とならない場合が生じる。そして、この結果、成形性
が著しく低下する。この点は、亜時効処理の保持時間が
長過ぎても同じである。
抑制や低温時効硬化能に優れているため、用途や必要特
性に応じて、更に高温の時効処理や安定化処理を行い、
より高耐力化などを図ることも可能である。
意義を証明する。表1 に示す、本発明組成範囲および本
発明組成範囲から外れた各成分組成のAl合金板を作成し
た。Al合金板の作製は、50mm厚の鋳塊を、DC鋳造法によ
り溶製後、540 ℃×4 時間の均質化熱処理を施し、終了
温度300 ℃で厚さ2.5mm まで熱間圧延した。この熱間圧
延板を、更に、厚さ1.0mm まで冷間圧延した。
〜4)および比較例組成 (合金略号6〜9)の冷延板を各試
験片サイズに切断後、硝石炉で510 〜530 ℃×45秒の溶
体化処理および70℃の温湯焼入れ処理後、直ちにオイル
バスで70℃×2 時間の予備時効処理を行い、処理後直ち
に70℃の空気炉に各試験材を入れて室温まで40時間かけ
て冷却する徐冷 (冷却速度1 ℃/hr 以下) を行った。そ
の後、室温に3 日間放置後、表2 に示す100 〜140 ℃×
6 時間 (加熱速度40℃/hr 、冷却速度1 ℃/hr以下) の
条件で亜時効処理を行った。
認するため、前記亜時効処理直後の各試験材の耐力A 、
伸び、亜時効処理後 4カ月間(120日間) の室温時効後
の、各試験材の導電率(IACS%) 、耐力B 、伸びを測定し
た。また、亜時効処理直後との耐力差 (Δ耐力、A-B)、
導電率と耐力との関係( 導電率≧−0.125 σ0.2 +61.4
か否か、〇が関係を満足、×が関係を満たさない) とを
求めた。これらの結果を表2 に示す。
行うとともに、試験片形状はJIS 5号試験片で行い、試
験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。ま
た、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するま
で一定の速度で行った。
のAl合金材を、150 ℃×20分の低温時効硬化処理した後
の耐力(BH 耐力) を測定し、低温時効処理能を調査し
た。これらの結果も表2 に示す。
ような長期間放置した後に、自動車パネル材としてプレ
ス成形やヘム加工されることを模擬して、亜時効処理後
4カ月間の室温時効後のAl合金材を成形試験した。より
具体的には、各試験材の平面ひずみ張出高さ(LDH0)試
験、曲げ試験を行い、成形性を評価した。これらの結果
も表2 に示す。
件は、幅100mm ×長さ180mm の試験片を用い、試験片長
手方向が圧延方向と直角方向に一致するように作製し
た。そして、パンチ (玉頭、100mm φ) とダイス (ビー
ド付き) を用い、しわ押さえ力200kN 、潤滑油R-303 、
成形速度20mm/ 分、の条件で3 回行い、最も低い張出高
さをLDH0値とした。なお、1 回でも破断した試験材はLD
H0値を求めなかった (表2 の比較例No.6、7 、8)。
ットヘム加工されることを模擬して、試験材の10% のス
トレッチを行った後、曲げ試験を行った。試験片条件
は、JIS Z 2204に規定される3 号試験片 (幅30mm×長さ
200mm)を用い、試験片長手方向が圧延方向と一致するよ
うに作製した。曲げ試験は、JIS Z 2248に規定されるV
ブロック法により、フラットヘム加工を模擬して、先端
半径0.3mm 、曲げ角度60度の押金具で60度に曲げた後、
更に厚み0.6mm のAl合金板を挟んで、180 度に曲げた。
試験後の曲げ部 (湾曲部) の割れの発生状況を観察し、
割れがないものを〇、割れがあるものを×と評価した。
試験後の成形材表面を観察し、肌荒れが生じていないも
のを〇、生じているものを×と評価した。
のAl合金材から塗装後耐蝕性試験片を採取し、洗浄後、
同一条件でリン酸亜鉛処理、塗装処理を行った。リン酸
亜鉛処理は、リン酸チタンのコロイド分散液による処理
を行い、次いでフッ素を50ppm の低濃度含むリン酸亜鉛
浴に浸漬してリン酸亜鉛皮膜を成形材表面に形成した。
塗装処理は、カチオン電着塗装を行った後に、30μm 厚
さのポリエステルメラミン系塗装皮膜を設けて、現状汎
用されている条件である170 ℃×20分の焼き付けを行う
2 コート2 ベーク塗装を施した。
試験を行った。これらの評価結果も表2 に示す。耐糸さ
び評価試験は、前記塗装試験片の表面に一片が7cm のク
ロスカットを施した後、35℃の1.7%塩酸水溶液に2 分間
浸漬した後、次いで40℃、85%R.H. の恒温恒湿の雰囲気
に1500時間放置し、その後発生した糸さびの最大長さL
(クロスカットより垂直方向の距離、mm) を測定した。
そして、この糸さびの最大長さが2.0mm 以下のものを
〇、2.0 〜4.0mm のものを△、4.0mm を越えるものを×
として評価した。
範囲内で、本発明予備時効処理と亜時効処理を行い、か
つ亜時効処理後 4カ月間の室温時効後の導電率が41〜4
7.5IACS% の範囲で、導電率と耐力との関係 (導電率≧
−0.125 σ0.2 +61.4) を満たす発明例No.1〜4 は、目
的とする室温時効抑制効果や低温時効硬化能が得られて
いる。
4カ月間の室温時効後の特性として、亜時効処理直後と
の耐力差が15MPa 以内であり、かつ伸びが28% 以上であ
る。また、2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の低温時効
処理時のBH耐力も180MPa以上とすることができる。
ケ月間放置したものでも、平面ひずみ張出高さ(LDH0)が
20mm以上を各々満足し、成形後にもオレンジピールによ
る肌荒れも生じていない。
明例No. 3 を除き、塗装後の耐食性(耐糸さび性) も顕
著に優れている。そして、この結果は塗装された本発明
Al合金材が耐食性および外観性に優れていることを示し
ている。但し、発明例No.3は成形性が良いので、輸送機
などの内板用には使用できる。したがって、本発明のAl
合金パネル材は、パネル材製造後長期間放置した後の優
れた強度、成形性、耐食性などの諸特性を兼備し、特に
自動車などのパネル材として好適に用いることができ
る。
Si量が少な過ぎる比較例No.7、Cu量が多過ぎる比較例N
o. 8 、Si/Mg が1 未満の比較例No. 9 など、本発明合
金組成範囲から外れる比較例No.6〜9 は、本発明予備時
効処理と亜時効処理を施しても、導電率が41〜47.5 IAC
S%の範囲を外れ、また導電率と耐力との関係 (導電率≧
−0.125 σ0.2 +61.4) を外れている。このため、室温
時効抑制効果、低温時効硬化能、成形性などのいずれか
の基本特性が発明例に比して劣り、諸特性を兼備できて
いない。したがって、これら比較例では、成形されるパ
ネル構造体用としては不適である。
のAl合金板を用い、本発明予備時効処理と亜時効処理
条件の意義を証明する。Al合金板の作製は、450mm 厚の
鋳塊を、DC鋳造法により溶製後、540 ℃×4 時間の均質
化熱処理を施し、終了温度300 ℃で厚さ2.5mm まで熱間
圧延した。この熱間圧延板を、空気炉で350 ℃×3 時間
の焼鈍を行い、更に、厚さ1.0mm まで冷間圧延した。こ
の冷延板コイルを連続焼鈍炉で、加熱速度200 ℃/ 分、
500 〜540 ℃×30秒保持の溶体化処理後、室温まで冷却
速度600 ℃/ 分の水焼入れ処理を行った。この焼入れ処
理後、表3 に示す種々の条件で、本発明範囲内や本発明
範囲外の予備時効処理と亜時効処理を行い( 処理後の冷
却はいずれも徐冷で、冷却速度1 ℃/hr 以下) 、また
は、これらの時効処理を行わなかった。
理後 4カ月間の室温時効後の特性として、前記実施例1
と同様に、導電率(IACS%) 、機械的特性、室温時効抑制
効果、低温時効処理能、ヘム加工性、プレス成形性、耐
糸さび性を、前記実施例1 と同じ測定条件で行った。こ
れらの結果を表3 に示す。
備時効処理と亜時効処理を行った(各処理が適切な) 発
明例10〜14は、導電率が41〜47.5IACS% の範囲となり、
導電率と耐力との関係 (導電率≧−0.125 σ0.2 +61.
4) を満たし、室温時効抑制効果、低温時効処理能に優
れている。また、ヘム加工性やプレス成形性にも優れて
いる。そして、塗装後の耐食性 (耐糸さび性) も優れて
いる。
度、成形性、耐食性なども含め、特に自動車などのパネ
ル構造体のインナーパネル材やアウターパネル材として
好適に用いられる、また、各々に使い分けできるのが分
かる。
囲内であるものの、予備時効処理と亜時効処理が不適、
あるいは、予備時効処理およびまたは亜時効処理をしな
いために、導電率が41〜47.5 IACS%の範囲を満たすもの
の、導電率と耐力との関係 (導電率≧−0.125 σ0.2 +
61.4) が外れ、室温時効抑制効果、低温時効処理能、あ
るいは、伸びや成形性のいずれかが劣る。このため、こ
れらいずれかの特性が発明例に比して劣り、諸特性を兼
備できていない。したがって、これら比較例Al合金板で
は、成形用パネル用としては不適である。
め、比較例18は亜処理温度が低過ぎるため、比較例19は
予備時効処理が無いため、41〜47.5 IACS%の範囲内では
あるものの、導電率と耐力との関係導電率と耐力との関
係 (導電率≧−0.125 σ0.2 +61.4) を満たさず、室温
時効抑制効果と低温時効処理能が劣る。また、比較例16
は亜時効処理温度が高過ぎるため、比較例17は亜時効処
理時間が長過ぎるため、41〜47.5 IACS%の範囲内ではあ
るものの、導電率と耐力との関係導電率と耐力との関係
(導電率≧−0.125 σ0.2 +61.4) を満たさず、耐力が
高過ぎ、特にヘム加工性などの成形性が劣る。
ぎるため、41〜47.5 IACS%の範囲内ではあるものの、導
電率と耐力との関係導電率と耐力との関係 (導電率≧−
0.125 σ0.2 +61.4) を満たさず、耐力が高過ぎ、特に
ヘム加工性などの成形性が劣る。
成範囲であっても、最適予備時効処理と亜時効処理条件
を選択する必要があることが分かる。
用途への適用可否を確認した。表1 の発明例の合金番号
4 のAl合金板を作成した。Al合金板の作成は、450mm 厚
の鋳塊を、DC鋳造法により溶製後、540 ℃×4 時間の均
質化熱処理を施し、終了温度300 ℃で厚さ2.0mm まで熱
間圧延した。この熱間圧延板コイルを連続焼鈍炉で、加
熱速度200 ℃/ 分、500 〜550 ℃×30秒保持の溶体化処
理後、室温まで冷却速度600 ℃/分の水焼入れ処理を行
った。この焼入れ処理後、表3 に示す種々の条件で、本
発明範囲内や本発明範囲外の予備時効処理と亜時効処理
を行い( 処理後の冷却はいずれも徐冷で、冷却速度1 ℃
/hr 以下) 、または、これらの時効処理を行わなかっ
た。
処理後 4カ月間の室温時効後の特性として、導電率(IAC
S%) 、室温時効抑制効果、低温時効処理能を、前記実施
例1と同じ測定条件で行った。また、構造材として必要
な、曲げ加工性、溶接性、耐SCC 性 (応力腐食割れ性)
を合わせて評価した。これらの結果を表3 に示す。
行った後、曲げ試験を行って評価した。試験片条件は、
JIS Z 2204に規定される3 号試験片 (幅30mm×長さ200m
m)を用い、試験片長手方向が圧延方向と直角方向に一致
するように作製した。曲げ試験は、JIS Z 2248に規定さ
れるVブロック法により、先端半径0.5mm 、曲げ角度60
度の押金具で60度に曲げ、曲げ部 (湾曲部) の割れの発
生状況を観察し、割れがないものを〇、割れがあるもの
を×と評価した。
の、溶接部の溶接割れ性を評価した。溶接継手は、成形
加工を模擬して3%ストレッチした後の、同じ発明例、同
じ比較例のAl合金板同士を継手母材として、板母材同士
を、5356Al合金溶加材によって、MIG 溶接により突き合
わせ溶接し( 溶接長さ140mm)、板状の継手を製作した。
溶接条件は以下の諸条件とした。溶接溶加材; Φ1.2mm
、開先形状;I形(キ゛ャッフ゜ 0mm)、前進角;5°、Ar カ゛ス 流
量; 27l/min 、溶接電流;90 〜100 A 、溶接電圧;17 〜
21 V、溶接速度;900 mm/min 。そして、溶接部の溶接割
れを目視により観察し、溶接割れが生じている場合を
×、生じていない場合を〇と評価した。
のAl合金板から採取した各試験片をR が14t のU 字に曲
げて治具に取り付け、試験片両端部を拘束した応力付加
状態で、電流密度0.062mA/mm2 で試験片に通電し、試験
液に浸漬した。試験液は、3.5%、30℃のNaCl水溶液と
し、発生までの時間 (分) により応力腐食割れを評価し
た。そして、1000分以上応力腐食割れが発生しなかった
ものを○、1000分未満で応力腐食割れが発生したものを
×として評価した。
備時効処理と亜時効処理を行った(各処理が適切な) 発
明例21〜23は、導電率が41〜47.5IACS% の範囲となり、
導電率と耐力との関係 (導電率≧−0.125 σ0.2 +61.
4) を満たし、室温時効抑制効果、低温時効処理能に優
れている。また、構造材として必要な、曲げ加工性、溶
接性、耐SCC 性 (応力腐食割れ性) も合わせて優れてい
る。
び亜時効処理が無いため、比較例25は亜処理が無いた
め、比較例26は亜処理温度が低過ぎるため、41〜47.5 I
ACS%の範囲内ではあるものの、導電率と耐力との関係導
電率と耐力との関係 (導電率≧−0.125 σ0.2 +61.4)
を満たさず、室温時効抑制効果と低温時効処理能が劣
る。また、比較例27は亜処理温度が高過ぎるため、41〜
47.5 IACS%の範囲内ではあるものの、導電率と耐力との
関係導電率と耐力との関係 (導電率≧−0.125 σ0. 2 +
61.4) を満たさず、耐力が高過ぎ、特に曲げ加工性など
の成形性が劣る。比較例24〜26は耐SCC 性 (応力腐食割
れ性) にも劣っている。したがって、これら比較例Al合
金板では、構造材用としては不適である。
とともに低温時効硬化能に優れた過剰Si型6000系Al合金
材であって、更に、各用途に要求される、プレス成形
性、ヘム加工性、耐食性、溶接性などの諸特性を兼備し
たAl合金材の製造方法、およびAl合金材をを提供するこ
とができる。したがって、Al合金材の自動車などの輸送
機などへの用途の拡大を図ることができる点で、多大な
工業的な価値を有するものである。
範囲を示す説明図である。
Claims (8)
- 【請求項1】 Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.01
〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が1 以上
であるAl-Mg-Si系アルミニウム合金材を、500 〜550 ℃
で溶体化および焼入れ処理した後に、直ちに50〜100 ℃
の範囲で保持する予備時効処理を施し、その後更に、80
〜120 ℃の範囲でで保持する亜時効処理を施し、このア
ルミニウム合金材の亜時効処理後少なくとも 4カ月間の
室温時効後の特性として、導電率を41〜47.5IACS% の範
囲で、かつ−0.125 σ0.2 +61.4以上 (但し、σ0.2 は
亜時効処理後少なくとも 4カ月間の室温時効後の耐
力)、耐力を110 〜160MPaの範囲に制御し、かつ亜時効
処理直後との耐力差を15MPa以内とし、伸びを28% 以上
とし、更に2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の低温時効
処理時の耐力を180MPa以上とすることを特徴とする室温
時効抑制と低温時効硬化能に優れたアルミニウム合金材
の製造方法。 - 【請求項2】 Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.01
〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が1 以上
で、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl-Mg-Si系ア
ルミニウム合金材であって、このアルミニウム合金材の
少なくとも 4カ月間の室温時効後の特性として、導電率
が41〜47.5IACS% の範囲で、かつ−0.125 σ0.2 +61.4
以上 (但し、σ0.2 は少なくとも 4カ月間の室温時効後
の耐力) であり、耐力が110 〜160MPaの範囲で、かつ室
温時効前との耐力差が15MPa 以内であり、伸びが28% 以
上であり、更に2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の低温
時効処理時の耐力が180MPa以上である室温時効抑制と低
温時効硬化能に優れたアルミニウム合金材。 - 【請求項3】 前記アルミニウム合金材が前記請求項1
の製造方法により製造されたものである請求項2に記載
の室温時効抑制と低温時効硬化能に優れたアルミニウム
合金材。 - 【請求項4】 前記アルミニウム合金材がプレス成形用
パネル材であって、前記亜時効処理後 4カ月の室温時効
後の特性として、前記導電率が41〜44 IACS%で、限界絞
り比(LDR) が1.9 以上、平面ひずみ張出高さ(LDH0)が20
mm以上である請求項2または3に記載の室温時効抑制と
低温時効硬化能に優れたアルミニウム合金材。 - 【請求項5】 前記アルミニウム合金材が自動車内板用
パネル材である請求項4に記載の室温時効抑制と低温時
効硬化能に優れたアルミニウム合金材。 - 【請求項6】 前記アルミニウム合金材が曲げ加工用パ
ネル材であって、Si:0.4〜1.0%、Mg:0.4〜1.0%を含み、
前記亜時効処理後 4カ月の室温時効後の特性として、前
記導電率が43〜47.5 IACS%の範囲であり、かつ耐力が11
0 〜140MPaであり、10% のストレッチを行った後、JIS
Z 2248に規定されるVブロック法により、先端半径0.3m
m 、曲げ角度60度の押金具で60度に曲げた後、更に厚み
0.6mmのAl合金板を挟んで、180 度に曲げた際に曲げ部
の割れがない請求項2または3に記載の室温時効抑制と
低温時効硬化能に優れたアルミニウム合金材。 - 【請求項7】 前記アルミニウム合金材が自動車外板用
パネル材であって、Cu含有量を0.1%以下に規制した請求
項6に記載の室温時効抑制と低温時効硬化能に優れたア
ルミニウム合金材。 - 【請求項8】 前記アルミニウム合金材が溶接構造材で
あって、Si:0.4〜0.9%、Mg:0.4〜0.9%を含む、請求項2
または3に記載の室温時効抑制と低温時効硬化能に優れ
たアルミニウム合金材。
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