JP2928445B2 - 高強度アルミニウム合金押出材及びその製造方法 - Google Patents

高強度アルミニウム合金押出材及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車のバンパー、バン
パーステイ及びサイドメンバー等の自動車部品用のアル
ミニウム合金押出材として好適の高強度アルミニウム合
金押出材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム合金は鉄に比して軽量であ
ると共に、錆びにくいという長所があり、近年、自動車
の部品に広く使用されるようになってきた。
【0003】ところで、自動車部品のうち、例えばサイ
ドメンバー又はバンパー等に使用される材料としては、
衝撃吸収性及び曲げ加工性が優れていることが要求され
る。このため、従来、これらの用途にはSPCC等の鋼
板が使用されていた。しかし、近年、これらの部品に対
しても軽量化の要求が強く、自動車メーカーにおいては
これらの部品にもアルミニウム合金押出型材を使用する
ことが検討されている。この場合に、高強度であると共
に、生産性が優れている7000系(Al-Mg-Zn
系)合金が自動車部品用のアルミニウム合金押出材とし
て注目されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
高強度アルミニウム合金である7000系アルミニウム
合金材は生産性、特に押出性及び溶着性が悪いという欠
点がある。例えば、JIS7003を使用したAl合金
押出材では強度が十分でない。一方、強度を満足するJ
IS7075合金の場合は、ポートホール押出ができな
いと共に、押出速度も遅くする必要がある。また、この
7000系アルミニウム合金材は応力腐食割れが生じや
すいという問題点もある。
【0005】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、高強度であると共に、曲げ加工性及び耐応
力腐食割れ性が優れており、バンパー及びサイドメンバ
ー等の自動車部品用の材料として好適の高強度アルミニ
ウム合金押出材及びその製造方法を提供することを目的
とする。
【0006】
【課題を解決するために手段】本発明に係る高強度アル
ミニウム合金押出材は、自動車用衝撃吸収部材用の高強
度アルミニウム合金押出材において、Zn;5.0乃至
7.0重量%、Mg;1.0乃至1.5重量%、Cu;
0.1乃至0.3重量%、Zr;0.05乃至0.2重
量%、Ti;0.001乃至0.05重量%、Cr;
0.03乃至0.2重量%を主成分とし、且つMn;
0.3重量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不
純物からなる組成を有し、表面再結晶層の厚さが肉厚の
7%以下、表面再結晶の平均粒径が150μm以下であ
ることを特徴とする。
【0007】本発明に係る高強度アルミニウム合金押出
材の製造方法は、上記組成を有するアルミニウム合金材
を400乃至480℃に加熱した後、押出成形し、次い
で200℃/分以上の平均冷却速度で空冷し、その後人
工時効処理を施すことにより、表面再結晶層の厚さが肉
厚の7%以下、表面再結晶の平均粒径が150μm以下
であるアルミニウム合金押出材を製造することを特徴と
する。
【0008】
【作用】本発明においては、押出条件及び時効処理条件
の規定によってアルミニウム合金を高強度とし、押出後
のアルミニウム合金押出材の表面再結晶層の厚さと再結
晶粒径を規定することにより耐応力腐食割れ性を向上さ
せる。
【0009】以下に、本発明に係るアルミニウム合金押
出材の各成分の添加理由及びその組成限定理由について
説明する。
【0010】Zn;ZnはMgと共存して合金に時効性
を与え、人工時効により強度を向上させる作用を有す
る。Znの含有量が5.0重量%未満では強度の向上が
十分でなく、また7.0重量%を超えると強度は高くな
るものの、伸びは低下し、加工性が劣化する。従って、
Znは、5.0乃至7.0重量%とする。
【0011】Mg;Mgはアルミニウム合金の強度を高
める主要な元素である。しかし、Mgの含有量が1.0
重量%未満では強度を向上させる効果を十分に得ること
ができない。また、Mg含有量が1.5重量%を超える
と強度は高くなるが、伸びの低下及び溶着性の劣化を招
く。従って、Mgは、1.0乃至1.5重量%とする。
【0012】Cu;Cuは強度の向上と耐応力腐食割れ
性を改善する効果がある。しかし、Cuの含有量が0.
1重量%未満ではその効果が十分でなく、0.3重量%
を超えると焼入れ感受性が高くなり、強度低下を招く。
従って、Cuは0.1乃至0.3重量%とする。
【0013】Zr,Cr,Mn;Zr、Cr及びMnは
結晶粒を微細化する効果がある。しかし、Zrの含有量
が0.05重量%未満、Crの含有量が0.03重量%
未満の場合はその添加効果が十分でなく、また、Zr及
びCrの含有量が夫々0.2重量%、Mnの含有量が
0.3重量%を超えると、その添加効果は飽和する。従
って、Zrは、0.05乃至0.2重量%、Crは0.
03乃至0.2重量%、Mnは0.3重量%以下とす
る。なお、望ましくはCr、Zr、Mnの総量が0.7
重量%以下とする。
【0014】Ti;Tiはアルミニウム合金鋳塊中の結
晶粒を微細化する効果がある。しかし、含有量が0.0
01重量%未満ではその効果を十分得ることができず、
また、0.05重量%を超えると結晶粒微細化効果が飽
和してそれ以上の添加は無駄になる。従って、Ti含有
量は0.001乃至0.05重量%とする。
【0015】次に、再結晶層の厚さと再結晶の平均粒径
の限定理由について説明する。7000系の材料では常
に耐応力腐食割れ性が問題となり、上述の組成のアルミ
ニウム合金でも、耐応力腐食割れ性に注意する必要があ
る。しかしながら、本願発明者等は、表面再結晶層の厚
さが肉厚の7%以下、再結晶の平均粒径が150μm以
下である場合は応力腐食割れを抑制することができる
ことを見出した。表面再結晶層の厚さが肉厚の7%を超
えるか、又は再結晶の平均粒径が150μmより大き
なると、耐応力腐食割れ性が急激に低下する。従って、
押出材の表面再結晶層の厚さは肉厚の7%以下とし、
面再結晶の平均粒径は150μm以下とする
【0016】以下、本発明に係る高強度アルミニウム合
金押出材の製造方法について説明する。本発明において
は、上述の組成のアルミニウム合金材を400乃至48
0℃に加熱した後、押出成形する。次いで、この押出材
を200℃/分以上の平均冷却速度で空冷し、その後、
人工時効処理を行う。これにより、高強度であると共
に、表面再結晶層の厚さ及び粒径が制御され、耐応力腐
食割れ性が優れたアルミニウム合金押出材を製造するこ
とができる。製造条件がこれから外れた場合は強度が十
分高いものでなくなるか、又は耐応力腐食割れ性が急激
に劣化する。
【0017】このようにアルミニウム合金材の組成及び
製造条件を規定することにより、表面再結晶層の厚さを
肉厚の7%以下とし、表面再結晶の平均粒径を150μ
m以下とすることができる。そして、本発明において
は、表面再結晶層の厚さ及び平均粒径を規制することに
より、耐応力腐食割れ性の低下を防止する。また、熱処
理工程における処理条件を規制することで強度を満足さ
せ、更に表面再結晶層の厚さ及び平均粒径をコントロー
ルする。人工時効処理は強度の向上に寄与し、押出温度
は強度の向上及び金属組織の適正化に寄与する。
【0018】
【実施例】以下、本発明の実施例についてその比較例と
比較して説明する。
【0019】先ず、下記表1に示す組成のアルミニウム
合金鋳塊(直径が155mm)を通常の方法により溶製
した。なお、比較例6は7003相当のアルミニウム合
金であり、比較例7は7N01相当のアルミニウム合金
である。
【0020】
【表1】
【0021】次に、これらの鋳塊に対して、480℃の
温度で8時間の均質化処理を施した。その後、押出速度
が3m/分、押出温度が460℃(但し、一部の材料は
500℃)の条件で押出加工して、横断面における外縁
の一辺が60mm、他辺が45mm、肉厚が2mmの角
パイプを得た。そして、この角パイプを押出後、強制フ
ァンで空冷した。押出温度を表1に併せて示す。次に、
各角パイプを所定の長さに切断し、130℃の温度で1
2時間の人工時効処理を施し、供試材とした。
【0022】これらの実施例及び比較例の各供試材を切
断した後、鏡面研磨仕上げを行い、その後エッチングを
施し、顕微鏡写真を撮影して、その写真を基に表面再結
晶層の厚さ及び表面再結晶の平均粒径を測定した。即
ち、図1に示すように、アルミニウム合金押出材2の表
面の再結晶組織層1の厚さをt1、この再結晶組織層1
を含めた押出材2の全体の厚さをt2として、表面再結
晶組織層の厚さを下記数式1により定義した。また、再
結晶の平均粒径はJISH0501の切断法にて測定し
た。
【0023】
【数1】再結晶組織層厚さ(%)=(表面再結晶組織層
厚さt1)/(押出材厚さ又は径t2)×100
【0024】これらの実施例及び比較例の各供試材につ
いて、引張強さσB、耐力σ0.2及び破断伸びδをJIS
に規定する金属材料試験方法に準じて測定した。下記表
2はこれらの試験結果と表面再結晶層の厚さ及び平均粒
径を示す。また、表3は各供試材の強度、曲げ加工性及
び応力腐食割れ性を示す。表3において、強度評価は、
耐力が37kgf/mm2以上の場合を○、37kgf
/mm2未満の場合を×とした。
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】図2は曲げ試験方法(ドローベンディン
グ)を示す模式図である。直管状の供試材8の内側の略
半分の部分に芯金3を挿入し、この部分を圧力型5及び
ワイパー(しわ防止当金)6により挟んで供試材8を固
定し、芯金3が挿入されていない部分の供試材8をクラ
ンプ型4により握持した。このクランプ型4にはベンダ
ーの曲げ中心半径と同一の半径を有する曲げ型7が固定
されており、クランプ型4を上昇させて供試材8を持ち
上げると共に、供試材8を曲げ型7に沿って曲げ加工し
た。そして、ベンダーの曲げ中心半径(mm)を20
0、220、250と変えて30°曲げでの限界曲げ半
径を測定し、これにより供試材8の曲げ加工性を評価し
た。
【0028】更に、応力腐食割れ性はJISH8711
に準じて試験した。試験片は押出方向と垂直の方向に採
取し、25kgf/mm2の応力を印加し試験した。腐
食をより促進させるために試験液にクロム酸を用い、9
5℃の温度で180分まで試験し、割れた時間を限界割
れ時間として評価した。これらの評価結果を表3に示
す。更に、これらの結果からバンパー及びサイドメンバ
ー等の自動車部品用の材料としての適性を総合評価し
た。その結果も表3に併せて示す。但し、表3におい
て、バンパー及びサイドメンバー等の自動車部品の材料
として適している場合を○、適していない場合を×で示
した。また、表面再結晶層の層厚、平均粒径と曲げ性、
強度、応力腐食割れ性の評価を図3に示す。Aが強度、
Bが曲げ性、Cが応力腐食割れ性(SCC)の評価で白
抜きが良好である。図3において、1〜7の符号は、夫
々比較例1〜7を示す。
【0029】この表3及び図3から明らかなように、実
施例1は強度、曲げ加工性及び応力腐食割れ性のいずれ
も良好である。一方、押出温度が高い比較例1及びアル
ミニウム合金の成分が本願から外れる比較例2〜7はい
ずれも強度、曲げ加工性及び応力腐食割れ性の少なくと
もいずれかが満足できるものではなかった。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係るアルミ
ニウム合金押出材は、所定量のCu、Mg、Zr、Z
n、Ti、Crを主成分とし、且つMnを含有し、残部
がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、表面再
結晶層の厚さ及び表面再結晶の平均粒径を夫々所定の範
囲に規定するから、高強度でしかも曲げ加工性及び耐応
力腐食性が優れており、バンパー及びサイドメンバー等
のような自動車部品用のアルミニウム合金押出材として
好適である。
【0031】また、本発明方法によれば、所定量のC
u、Mg、Zr、Zn、Ti、Crを主成分とし、且つ
Mnを含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる
アルミニウム合金材を所定の条件で押出し加工及び熱処
理するから、上述の高強度でしかも曲げ加工性及び耐応
力腐食性が優れ、バンパー及びサイドメンバー等の自動
車部品用のアルミニウム合金押出材に好適な押出材を製
造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における再結晶組織層の厚さを示す模式
図である。
【図2】曲げ試験方法を示す模式図である。
【図3】表面再結晶層の層厚及び平均粒径と、強度、曲
げ性及び耐応力腐食割れ性の評価結果との関係を示すグ
ラフ図である。
【符号の説明】
1;表面再結晶層 2;押出材 3;芯金 4;クランプ型 5;圧力型 6;ワイパー 7;曲げ型 8;供試材
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−297543(JP,A) 特開 昭59−113164(JP,A) 特開 昭49−1418(JP,A) 特開 平2−34741(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 21/00 - 21/18 B60R 19/03 - 19/18 C22F 1/04 - 1/057

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 自動車用衝撃吸収部材用の高強度アルミ
    ニウム合金押出材において、Zn;5.0乃至7.0重
    量%、Mg;1.0乃至1.5重量%、Cu;0.1乃
    至0.3重量%、Zr;0.05乃至0.2重量%、T
    i;0.001乃至0.05重量%、Cr;0.03乃
    至0.2重量%を主成分とし、且つMn;0.3重量%
    以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる
    組成を有し、表面再結晶層の厚さが肉厚の7%以下、
    面再結晶の平均粒径が150μm以下であることを特徴
    とする高強度アルミニウム合金押出材。
  2. 【請求項2】 自動車用衝撃吸収部材用の高強度アルミ
    ニウム合金押出材の製造方法において、Zn;5.0乃
    至7.0重量%、Mg;1.0乃至1.5重量%、C
    u;0.1乃至0.3重量%、Zr;0.05乃至0.
    2重量%、Ti;0.001乃至0.05重量%、C
    r;0.03乃至0.2重量%を主成分とし、且つM
    n;0.3重量%以下を含有し、残部がAl及び不可避
    的不純物からなる組成のアルミニウム合金材を400乃
    至480℃に加熱した後、押出成形し、次いで200℃
    /分以上の平均冷却速度で空冷し、その後人工時効処理
    を施すことにより、表面再結晶層の厚さが肉厚の7%以
    下、表面再結晶の平均粒径が150μm以下であるアル
    ミニウム合金押出材を製造することを特徴とする高強度
    アルミニウム合金押出材の製造方法。
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