JP3229448B2 - 曲げ加工性及び衝撃吸収性が優れた衝撃吸収部材 - Google Patents

曲げ加工性及び衝撃吸収性が優れた衝撃吸収部材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車のバンパー及び
サイドメンバーの構成材料として好適の曲げ加工性及び
衝撃吸収性が優れたアルミニウム合金材及びその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム合金は、鉄に比して軽量で
あると共に錆びにくいという長所があり、近年、自動車
の部品に広く使用されるようになった。
【0003】ところで、自動車の部品のうち、例えばバ
ンパー及びサイドメンバー等に使用される材料として
は、曲げ加工性及び衝撃吸収性が高いことが要求され
る。このため、従来、これらの用途には、NP114及
びSPCC等の鋼板が使用されている。
【0004】しかし、近年、これらの部品に対しても軽
量化及び複雑な断面形状の要求が強く、自動車メーカー
においては、これらの部品にもアルミニウム押出型材合
金を使用することが検討されている。この場合に、強度
等の機械的性質、耐食性及び加工性が比較的優れている
ことから、6000系(Al−Mg−Si系)合金が注
目されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
6000系アルミニウム合金材は、高強度であるという
利点はあるものの、伸び特性が十分でなく、曲げ加工時
に割れが発生しやすいという欠点がある。また、600
0系アルミニウム合金材は、強い衝撃を受けた場合に割
れが発生するために衝撃吸収性が低いという欠点もあ
る。
【0006】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、バンパー及びサイドメンバー等の自動車用
部品の材料として好適の曲げ加工性及び衝撃吸収性が優
れたアルミニウム合金材及びその製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る曲げ加工性
及び衝撃吸収性が優れた衝撃吸収部材は、Mg:0.4
乃至1.0質量%、Si:0.5乃至1.2質量%及び
Cu:0.3乃至0.6質量%を含有し、残部が実質的
にAlからなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金に
より構成され、下記(1)式で規定されるn値が0.1
0乃至0.20であると共に、引張強さと耐力との差が
49MPa以上であり、局部伸びが2.5%以上である
Al−Mg−Si系アルミニウム合金押出材からなるこ
とを特徴とする。 n=log[{P1(1+e1)}/{P2(1+e2)}]/log[{log( 1+e1)}/{log(1+e2)}] ・・・(1) 但し、P1,P2:荷重 e1,e2:P1,P2に対応する伸び歪み
【0008】
【0009】
【0010】
【作用】本願発明者等は、アルミニウム合金における曲
げ加工時の割れ及び衝撃時の衝撃吸収性の低下の原因を
調べるべく、種々実験研究を行った。その結果、割れの
原因は伸び(一様伸び)だけでなく、後述する材料のn
値、引張強さと耐力との差及び局部伸びが大きく影響し
ているとの知見を得た。本発明は、このような実験結果
に基づいてなされたものである。
【0011】以下に、本発明に係るアルミニウム合金材
の各成分の添加理由及びその含有量限定理由について説
明する。
【0012】Mg(マグネシウム) Mgはアルミニウム合金の強度を高める主要な元素であ
る。しかし、Mg含有量が0.4量%未満では、強度
を向上させる効果を十分に得ることができない。また、
Mg含有量が1.0量%を超えると、強度は高くなる
ものの、伸び特性が低下して加工性が劣化してしまう。
従って、Mg含有量は、0.4乃至1.0量%とす
る。なお、Mgの最も好ましい含有量は0.5量%で
ある。
【0013】Si(シリコン) SiはMgと共にアルミニウム合金の強度を高める効果
がある。また、Siにはアルミニウム合金の伸び特性を
向上させる効果もある。しかし、Si含有量が0.5
量%未満の場合には、強度を向上させる効果を十分に得
ることができない。また、Si含有量が1.2量%を
超えると、強度は高くなるものの、伸び特性が低下して
加工性が劣化すると共に、耐食性も低下する。従って、
Si含有量は0.5乃至1.2量%とする。なお、S
iの最も好ましい含有量は0.9量%である。
【0014】Cu(銅) Cuはアルミニウム合金の強度を高めると共に、伸びを
向上させる作用がある。しかし、Cu含有量が0.3
量%未満の場合は強度を十分に向上させることができな
い。また、Cu含有量が0.6量%を超えると、強度
は高くなるものの伸び特性が低下して加工性が劣化する
と共に、耐食性も低下してしまう。このため、Cu含有
量は0.3乃至0.6量%とする。なお、Cuの最も
好ましい含有量は0.5量%である。
【0015】上述のMg、Si及びCuは必須の添加元
素であるが、本発明に係るアルミニウム合金において
は、これらの元素の外に、例えばMn、Cr及びZr等
の元素を総量で0.7量%以下含有していてもよい。
また、本発明のアルミニウム合金においては、これらの
元素以外の元素を添加することも可能である。
【0016】次に、材料特性の限定理由について説明す
る。
【0017】n値 アルミニウム合金材は、組成及び熱処理条件等でn値が
変化する。このn値は、下記数式1に示す2点法により
規定される。
【0018】
【数1】 n=log[{P1(1+e1)}/{P2(1+e2)}] /log[{log(1+e1)}/{log(1+e2)}] 但し、P1,P2:荷重 e1,e2:P1,P2に対応する伸び歪み。
【0019】材料のn値が0.10よりも小さいと、衝
撃時に座屈が生じやすく、エネルギー吸収量の低下を招
くと共に、曲げ加工時に割れが生じる。また、n値が
0.20を超えると、一般的に強度が低く、曲げ加工時
にしわ等の型変形が大きくなる。従って、n値は0.1
0乃至0.20であることが必要である。なお、n値
は、例えば、アルミニウム合金材から押出方向を引張り
方向とするJIS5号試験片を切り出し、引張試験機に
よりこの試験片に5〜10%の歪みを加えて測定する。
【0020】引張強さと耐力との差 引張強さと耐力との差はアルミニウム合金の熱処理(特
に、時効処理条件)によって変化する。引張強さと耐力
との差が49MPaよりも小さいと、塑性変形能が低下
し、強い衝撃時に割れが発生してエネルギー吸収量の低
下を招来する。従って、引張強さと耐力との差は49M
Pa以上であることが必要である。なお、バンパー材と
して使用する場合は、耐力が245MPa以上であるこ
とが好ましい。
【0021】局部伸び アルミニウム合金材は、組成及び熱処理条件等で局部伸
びが変化する。この局部伸びは、破断伸びと一様伸びと
の差であり、局部伸び(%)=(破断伸び)−(一様伸
び)である。
【0022】アルミニウム合金材の局部伸びが2.5%
未満であると、強い衝撃を受けたときに割れが生じ、エ
ネルギー吸収量が低下する。従って、局部伸びは2.5
%以上であることが必要である。なお、局部伸びは、例
えば、アルミニウム合金材から押出方向を引張り方向と
するJIS5号試験片を切り出し、引張試験機によりこ
の試験片を引張試験して測定する。
【0023】このように構成された本発明に係るアルミ
ニウム合金材は、曲げ加工性及び衝撃吸収性が優れてお
り、自動車のバンパー及びテンションメンバー等の材料
として極めて適している。
【0024】以下、本発明に係る曲げ加工性及び衝撃吸
収性が優れたアルミニウム合金材の製造方法について説
明する。本発明方法においては、先ず、上述の含有量で
Mg,Si及びCuを含有するアルミニウム合金におい
てこれらの元素を溶体化させるために、500乃至54
0℃に加熱して押出成形した後、続けて1000℃/分
以上の冷却速度で例えば150℃以下の温度まで冷却す
るか、又は押出成形した後の最終熱処理工程において5
00℃乃至540℃に加熱した後、1000℃/分以上
の平均冷却速度で例えば150℃以下の温度まで冷却す
る。このようにして粒界析出物の大きさを所定の大きさ
に制御する。その後、時効処理を施すと、材料特性を大
きく変化させることができる。この場合に、時効処理時
の温度が180℃を超えると、粒界析出物が大きくな
り、伸び及び加工性が劣化する。従って、時効処理温度
は180℃以下であることが必要である。このようにし
て、上述の材料特性を有し、曲げ加工性及び衝撃吸収性
が優れたアルミニウム合金材を得ることができる。
【0025】
【実施例】次に、本発明の実施例についてその比較例と
比較して説明する。
【0026】先ず、Mg,Si及びCuを下記表1に示
す含有量で含有し残部がAl及び不可避的不純物からな
るアルミニウム合金を通常の方法により溶製し、直径が
155mmの鋳塊を得た。なお、比較例1は6061相
当のアルミニウム合金であり、比較例2は6N01相当
のアルミニウム合金である。次に、これらの鋳塊に対し
て、約540℃の温度で4時間の条件で均質化処理を施
した。その後、押出温度が500℃、押出速度が5m/
分の条件で各鋳塊を押出成形し、縦が70mm、横が6
0mm、肉厚が2mmの角パイプを得た。
【0027】
【表1】
【0028】次に、各角パイプを所定の長さに切断し
た。そして、各角パイプを表1に示すように、470℃
(比較例5のみ)又は510℃の温度(押出温度)で1
時間保持し、その後水焼入れする溶体化処理を行なっ
た。なお、冷却時の平均冷却速度も表1に併せて示し
た。また、比較例6についてはファンで空冷した。
【0029】次いで、これらの角パイプに対して175
℃の温度で8時間、比較例7については190℃の温度
で4時間人工時効処理を施し、供試材とした。
【0030】このようにして得た実施例及び比較例の各
供試材の引張強さσB、耐力σ0.2、局部伸びδ′をJI
Sに規定する金属材料試験方法に準じて測定した。ま
た、n値は引張試験で引張力を加え、5〜10%歪みの
範囲で2点法により測定した。局部伸びは破断伸びと一
様伸びとの差を計算することにより求めた。その結果を
下記表2に示す。
【0031】更に、実施例及び比較例の各供試材につい
て、曲げ試験及び圧壊試験を行った。図1は曲げ試験方
法(ドローベンディング)を示す模式図である。各供試
材10の内側に芯金1を挿入し、クランプ型2、圧力型
3、ワイパー(しわ防止当て金)4及び曲げ型5により
構成されるベンダーにより、供試材10を曲げた。そし
て、ベンダーの曲げ半径Rを200mm、250mm及
び300mm(以下、夫々200R、250R及び30
0Rという)とし、30°曲げを行って、最大しわが2
mmを超えた場合を限界曲げ半径とし、この限界曲げ半
径で曲げ加工性を評価した。その結果を表2に併せて示
す。但し、限界曲げ半径が300Rの場合は×、250
Rの場合は△、200Rの場合は○で示した。
【0032】図2は圧壊試験方法を示す模式図である。
固定部12a及び可動部12bにより構成される圧壊試
験機により、供試材11にその軸に垂直な方向から加重
を加えた。その試験結果に基づいて変位−荷重線図を作
成し、この変位−荷重線図からエネルギー吸収量を求め
た。そして、変位量が50mmまでの範囲におけるエネ
ルギー吸収性を評価した。その結果も表2に併せて示し
た。但し、エネルギー吸収性は、エネルギー吸収量が2
45N・m未満の場合を×、245乃至274N・m
場合を△、274N・mを超える場合を○で示した。
【0033】更に、これらの結果から、バンパー及びサ
イドメンバー等の自動車用部品の材料としての適性を総
合評価した。その結果も、表2に併せて示した。但し、
サイドメンバー及びバンパー等の自動車用部品の材料と
して適している場合を○、適していない場合を×で示し
た。
【0034】
【表2】
【0035】この表2から明らかなように、実施例1,
2はいずれも曲げ加工性及び圧壊特性(エネルギー吸収
性)が良好であり、バンパー及びサイドメンバー等の自
動車用部品の材料として極めて好適である。一方、比較
例1〜7は、いずれも曲げ加工性又は衝撃特性が満足で
きるものではなかった。
【0036】なお、上述の実施例においては、Mg,S
i,Cuを含有し残部がAl及び不可避的不純物からな
るアルミニウム合金の場合について説明したが、これら
の元素の外に、例えばMn,Cr及びZr等の元素を総
量で0.7重量%以下の含有量で含有していてもよい。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係るアルミ
ニウム合金材は、少なくともMg,Si及びCuを所定
量含有し、引張強さと耐力との差、n値及び局部伸びを
所定の範囲に規制しているから、曲げ加工性及び衝撃吸
収性が極めて優れており、自動車のバンパー及びサイド
メンバー等の材料として極めて好適である。
【0038】また、本発明方法によれば、少なくともM
g,Si及びCuを所定量含有するアルミニウム合金を
押出加工及び冷却した後、所定の条件で時効処理するか
ら、上述の曲げ加工性及び衝撃吸収性が優れ、バンパー
及びサイドメンバー等の自動車部品に好適のアルミニウ
ム合金材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】曲げ試験方法を示す模式図である。
【図2】圧壊試験方法を示す模式図である。
【符号の説明】
1;芯金 2;クランプ型 3;圧力型 4;ワイパー 5;曲げ型 10,11;供試材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−25783(JP,A) 特開 平2−122045(JP,A) 特開 昭58−167757(JP,A) 森ら”自動車用アルミニウム合金板の プレス成形性”神戸製鋼技報Vol.42 No.1 P.33−36 吉田ら”自動車ボディ用アルミニウム 合金板の特性”住友金属技報Vol32 No.1 P.20−29 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 21/00 - 21/18 JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 g:0.4乃至1.0質量%、Si:
    0.5乃至1.2質量%及びCu:0.3乃至0.6質
    量%を含有し、残部が実質的にAlからなるAl−Mg
    −Si系アルミニウム合金により構成され、下記(1)
    式で規定されるn値が0.10乃至0.20であると共
    に、引張強さと耐力との差が49MPa以上であり、局
    部伸びが2.5%以上であるAl−Mg−Si系アルミ
    ニウム合金押出材からなることを特徴とする曲げ加工性
    及び衝撃吸収性が優れた衝撃吸収部材。 n=log[{P1(1+e1)}/{P2(1+e2)}]/log[{log( 1+e1)}/{log(1+e2)}] ・・・(1) 但し、P1,P2:荷重 e1,e2:P1,P2に対応する伸び歪み
  2. 【請求項2】 前記Al−Mg−Si系アルミニウム合
    金が、更にMn、Cr及びZrを総量で0.7質量%以
    下含有することを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工
    性及び衝撃吸収性が優れた衝撃吸収部材。
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吉田ら"自動車ボディ用アルミニウム合金板の特性"住友金属技報Vol32 No.1 P.20−29
森ら"自動車用アルミニウム合金板のプレス成形性"神戸製鋼技報Vol.42 No.1 P.33−36

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