JP3073197B1 - 自動車のフレーム構造における衝撃吸収部材 - Google Patents
自動車のフレーム構造における衝撃吸収部材Info
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Abstract
について、寸法精度やコスト面で有利な空冷によるプレ
ス焼入れを前提とし、高強度で、押出軸方向に圧縮した
ときに優れたエネルギー吸収特性を示す衝撃吸収部材を
得る。 【解決手段】 Mg含有量が0.30〜0.70%、M
g2Siのバランス組成よりも過剰のSi含有量が0.
10〜0.50%、総Si量が0.50〜0.70%、
Mn、Cr、Zrのいずれか1種又は2種以上の含有量
が合計で0.10〜0.40%であり、繊維状組織を有
するAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材からな
り、210N/mm2以上の耐力を有し、空冷によるプ
レス焼入れ後時効処理を行ったことを特徴とする衝撃吸
収部材。軸方向に圧縮荷重を受ける自動車フレーム構造
におけるサイドメンバやバンパーステイなどとして好適
である。
Description
系アルミニウム合金押出材からなり、圧縮の衝撃荷重を
受けたとき、その衝撃荷重を吸収する作用を持つ衝撃吸
収部材に関し、特に自動車のフレーム構造におけるサイ
ドメンバやバンパーステイなどとして好適な衝撃吸収部
材に関する。
メンバやバンパーステイなどの衝撃吸収部材として、軽
量化のためアルミニウム合金中空押出材の適用が検討さ
れている。軸方向に圧縮の衝撃荷重を受けるこれらの衝
撃吸収部材には、押出軸方向に荷重を受けたとき形材全
体がオイラー座屈(形材全体がくの字形に曲がる座屈)
を起こさず、かつ圧壊割れを発生することなく蛇腹状に
収縮変形して、安定した高いエネルギー吸収を得るこ
と、及び自動車フレーム構造材として必要な強度(耐
力)を有することが要求される。
アルミニウム合金押出材として、高強度アルミニウム合
金の中では比較的耐食性に優れ、リサイクル性の面でも
他の系のアルミニウム合金より優れているAl−Mg−
Si系アルミニウム合金押出材が多く検討されている
(例えば特開平6−25783号公報、特開平7−54
090号公報、特開平7−118782号公報、特開平
9−256096号公報等)。
−Mg−Si系アルミニウム合金押出材を衝撃吸収部材
に適用する場合、一般にオンラインによるプレス焼入れ
又はオフラインによる溶体化・焼入れ処理を行った後、
時効処理を施している。ここで時効処理を施すのは、押
出材の強度を向上させ、かつ組織を安定化し使用中に自
然時効が進行して圧壊割れ性が劣化するのを防止するた
めである。
れは、押出後再加熱する溶体化・焼入れ処理とほぼ同等
の特性が得られる利点があるが、押出材の断面形状や肉
厚の差等に基づいて断面で冷却速度に差が生じ、冷却中
に温度分布が不均一となって歪みが発生し、寸法精度が
悪くかつ断面形状の薄肉化が難しくなり、また、そのよ
うな歪みの発生を防止しようとすれば、断面形状の自由
度が小さくなるという問題がある。さらに、空冷に比べ
高コストであるという問題がある。
よるプレス焼入れに比べ低コストであるという利点があ
るが、冷却速度に限りがあるため合金組成によっては高
い強度(特に耐力)が得られず、高い強度が得られた場
合でもエネルギー吸収や耐圧壊割れ性に劣るという問題
があった。そこで、本発明者らは、Al−Mg−Si系
アルミニウム合金押出材について、寸法精度やコスト面
で有利な空冷によるプレス焼入れを前提とし、高強度
(耐力)で、押出軸方向に圧縮したときに優れたエネル
ギー吸収特性を示す(圧壊割れの発生がなく高いエネル
ギー吸収を示す)衝撃吸収部材を得ることを目的として
研究を重ねた結果、空冷によるプレス焼入れに最適な合
金組成を見いだした。
材は、Mg含有量が0.30〜0.70%、Mg2Si
のバランス組成よりも過剰のSi含有量が0.10〜
0.50%、Mn、Cr、Zrのいずれか1種又は2種
以上の含有量が0.1〜0.4%であり、繊維状組織を
有するAl−Mg−Si系合金押出材からなり、210
N/mm2以上の耐力を有し、空冷によるプレス焼入れ
後時効処理を行ったことを特徴とする。なお、上記Al
−Mg−Si系合金は必要に応じてTi:0.005〜
0.2%、Cu:0.10〜0.40%等を含有し、不
可避不純物としてFe、その他の元素を含む。この衝撃
吸収部材は自動車のフレーム構造における衝撃吸収部材
であり、押出軸方向に衝撃荷重を受けるサイドメンバや
バンパーステイに特に好適であり、また横方向に衝撃荷
重を受けるサイドフレームなど、その他の自動車フレー
ム構造材等としても利用できる。
れたエネルギー吸収特性を得るため、押出材の組織は繊
維状組織(押出による繊維状組織が押出工程以降の熱処
理工程の間においても再結晶することなく、そのまま残
った状態の組織)とするのが望ましく、そのため衝撃吸
収部材に用いるAl−Mg−Si系アルミニウム合金に
は、一般にMn、Cr、Zrなどの遷移元素が添加され
ているが、これらの遷移元素を添加すると合金の焼入れ
感受性が鋭くなる。また、Mg及び過剰Siの量が多く
なると合金の強度が向上するが、やはり焼入れ感受性が
鋭くなる。
処理を行う場合は、多少焼入れ感受性が鋭くても問題な
く焼きが入り、その後の時効処理により高い強度を得る
ことができる。しかし、空冷によるプレス焼入れでは、
焼入れ感受性が鋭くなるとその後の時効処理を行っても
高い強度が得られなくなる。つまり、強度向上を目的と
して合金元素を添加しても、それが逆に強度を低下させ
ることにもなりかねない。本発明では、空冷によるプレ
ス焼入れを行った後、時効処理により高い強度と優れた
エネルギー吸収特性を得るには、上記各元素を添加する
ことによるプラスの作用効果は必要であるが、同時に焼
入れ感受性を鋭くさせないことが必須であるとの観点か
ら、特に空冷によるプレス焼入れを行う衝撃吸収部材に
ついて最適の合金組成を定めたものである。以下、本発
明に係る衝撃吸収部材を構成する押出材の組成等につい
て説明する。
向上させる。自動車フレーム構造材として必要な強度を
得るためには、Mgは0.30%以上の添加が必要であ
る。しかし、0.70%を越えて添加されると焼入れ感
受性が鋭くなり、空冷によるプレス焼入れで焼きが入ら
ず、必要な強度が出なくなる。従って、Mg含有量は
0.30〜0.70%とする。より望ましい範囲は0.
40〜0.60%、さらに望ましくは0.45〜0.5
5%である。一方、過剰Si量(Mg2Siのバランス
組成よりも過剰のSiであり、「過剰Si量(%)=総
Si量−0.578×Mg量」で定義される)が0.10%
より少ないと必要な強度が得られず、これが0.50%
を越えると焼入れ感受性が鋭くなり、空冷によるプレス
焼入れで焼きが入らず、必要な強度が出なくなる。従っ
て、過剰Siの含有量は0.10〜0.50%とする。
このMg量及び過剰Siの範囲内で、高い強度が得られ
焼入れ感受性が余り鋭くならない範囲として、総Si量
は0.5〜0.7%が特に望ましい。また、過剰Si量
のより望ましい範囲は0.22〜0.40%である。
壊割れ性を向上させる作用があり、これらの中から1種
又は2種以上が合計で0.10〜0.40%の範囲で添
加される。これらの遷移元素の添加量が0.10%未満
では繊維状組織とならないか、表面再結晶層が厚く出て
圧壊割れが発生し、0.40%を越えると空冷によるプ
レス焼入れで焼きが入らず、自動車フレーム構造材とし
て必要な強度が出なくなる。このとき各元素の望ましい
範囲は、Mn:0.001〜0.35%、Cr:0.0
01〜0.20%、Zr:0.001〜0.20%であ
る。また、これらの遷移元素の合計添加量のより望まし
い範囲は0.20〜0.30%、このとき各元素の望ま
しい範囲はMn:0.05〜0.25%、Cr:0.0
01〜0.15%、Zr:0.05〜0.18%、遷移
元素の合計添加量のさらに望ましい範囲は0.22〜
0.28%、このとき各元素の望ましい範囲はMn:
0.10〜0.20%、Cr:0.001〜0.10
%、Zr:0.07〜0.14%である。
いため、これらの遷移元素の添加量は空冷によるプレス
焼入れで押出材に繊維状組織が維持できるぎりぎりの量
としている。そのため、もしプレス焼入れでなくオフラ
インでの溶体化・焼入れ処理を行った場合は、溶体化処
理時の加熱により再結晶化が進んでしまう。つまり、本
発明の合金組成にとって、プレス焼入れは繊維状組織を
形成させるための必須の要件である。そして、この繊維
状組織は押出材の断面全体に形成されているのが望まし
く、表面再結晶層が形成された場合でも、自動車フレー
ム構造材のように厚さ1〜5mmの押出材であれば、押
出材表面から深さ500μm程度(望ましくは300μ
m)以下とし、かつ繊維状組織の厚みが全体厚さの1/
2程度以上とする必要がある。これは、再結晶粒は繊維
状組織に比べて結晶粒径が大きいことと、特に空冷によ
るプレス焼入れの場合は冷却速度が水冷に比べて小さ
く、冷却過程で結晶粒界に析出する析出物が多くなるこ
とから、表面再結晶粒の粒界に歪みが集中して割れが発
生しやすくなるためである。なお、Mn等の遷移元素の
添加量が上記範囲より少ないと、空冷によるプレス焼入
れでは表面再結晶層の厚さを500μm以下にすること
が難しくなる。
め、耐応力腐食割れ性を改善する作用があり、必要に応
じて添加される。しかし、0.10%未満では作用が不
十分であり、0.40%を越えると押出性及び一般耐食
性が低下するので、含有量は0.10〜0.40%が望
ましい。より望ましい範囲は0.15〜0.35%、さ
らに望ましい範囲は0.18〜0.30%である。 Ti Tiは、鋳塊組織を微細化する作用があり、適宜添加さ
れる。しかし、0.005%より少ないと微細化の効果
が十分でなく、0.2%より多いと飽和して巨大化合物
が発生してしまう。従って、Tiの含有量は0.005
〜0.2%とする。より望ましい範囲は0.01〜0.
10%、さらに望ましい範囲は0.015〜0.050
%である。
含まれる不純物であり、0.35%を超えて合金中に存
在すると鋳造時に粗大な金属間化合物を晶出し、合金の
機械的性質を損なう。従って、Feの含有量は0.35
%以下に規制する。望ましくは0.30%以下であり、
さらに0.25%以下が望ましい。また、アルミニウム
合金を鋳造する際には地金、添加元素の中間合金等様々
な経路より不純物が混入する。混入する元素は様々であ
るが、Fe以外の不純物は単体で0.05%以下、総量
で0.15%以下であれば合金の特性にほとんど影響を
及ぼさない。従って、これらの不純物は単体で0.05
%以下、総量で0.15%以下とする。なお、不純物の
うちBについてはTiの添加に伴い合金中にTi含有量
の1/5程度の量で混入するが、より望ましい範囲は
0.02%以下、さらに0.01%以下が望ましい。
ついて、空冷によるプレス焼入れ後時効処理を行う。時
効処理後の強度(耐力)は自動車フレーム構造材として
必要な強度である210N/mm2以上とする。この強
度は上記組成の押出材であれば、空冷によるプレス焼入
れ後時効処理を行って出せる強度であるが、上記組成を
外れるとその強度が出なくなるか(エネルギー吸収も低
下する)、繊維状組織が形成されずエネルギー吸収特性
に劣るようになる。耐力の望ましい範囲は220N/m
m2以上である。
C鋳造により、表1に示す成分組成のAl−Mg−Si
系アルミニウム合金ビレットを溶製し、550℃×4h
rの均熱処理を行った。続いて、押出温度500℃、押
出速度5m/分の条件で押出加工を行い、押出直後位置
で空冷によるプレス焼入れ(ファン空冷(冷却速度:約
190℃/min))を行い、図1に示すような中空断
面の押出材(長辺が70mm、短辺が50mm、肉厚が
2mm)を得た。ついで、この押出材に対し190℃×
3時間の時効処理を施し、供試材とした。この供試材の
断面の長辺側及び短辺側の中央部の外側表面及び内側表
面からの再結晶層厚を測定して8箇所の平均値を求め
た。その結果を表1にあわせて示す。
IS Z 2241に準拠して引張試験を行った。その結
果を表2に示す。また、供試材の静的な軸圧壊試験を行
った。供試材の長さは200mmで、アムスラー試験機
にて図2に示すように軸方向に静的圧縮荷重を加え、こ
れを100mm圧縮して荷重−変位曲線を得、最大荷重
と100mmまでの吸収エネルギーを求めた。その試験
結果も表2にあわせて示す。なお、圧壊割れ性の評価は
目視にて行い、開口割れの発生していないものを○、開
口割れの発生したものを×と評価した。また、総合評価
として、耐力(σ0.2)が210N/mm2以上、か
つ圧壊割れ性にも優れるものを○、いずれかが劣るもの
を×と評価した。
範囲内の合金(No.1〜4)は、空冷によるプレス焼
入れであっても高い耐力、優れたエネルギー吸収特性
(圧壊割れなし、高いエネルギー吸収)を示す。一方、
組成が本発明の規定を満たさない合金(No.5〜1
0)は、耐力が自動車フレーム構造材として必要な強度
である210N/mm2に達しないか、達したもの(N
o.10)は圧壊割れ性が劣り、耐力が高い割りにエネ
ルギー吸収が低くなっている。
ルミニウム合金押出材について空冷によるプレス焼入れ
後時効処理を行うことで、高強度(耐力)で、優れたエ
ネルギー吸収特性を示す衝撃吸収部材を得ることができ
る。また、本発明によれば、空冷によるプレス焼入れで
あるため、水冷に比べ、寸法精度やコスト面で有利な衝
撃吸収部材を得ることができる。
ある。
圧壊後)である。
Claims (2)
- 【請求項1】 Mg含有量が0.30〜0.70%(質
量%、以下同じ)、Mg2Siのバランス組成よりも過
剰のSi含有量が0.10〜0.50%、Mn、Cr、
Zrのいずれか1種又は2種以上の含有量が合計で0.
10〜0.40%であり、繊維状組織を有するAl−M
g−Si系アルミニウム合金押出材からなり、210N
/mm2以上の耐力を有し、空冷によるプレス焼入れ後
時効処理を行ったことを特徴とする自動車のフレーム構
造における衝撃吸収部材。 - 【請求項2】 総Si量が0.50〜0.70%である
ことを特徴とする請求項1に記載された自動車のフレー
ム構造における衝撃吸収部材。
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-
1999
- 1999-04-06 JP JP11098613A patent/JP3073197B1/ja not_active Expired - Lifetime
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