JP4052641B2 - 衝撃吸収特性に優れ、かつ良好な焼き入れ性と押出性を有するアルミニウム合金及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する分野】
本発明は、Al−Mg−Si合金押出材からなり、圧縮応力がかかる衝突衝撃を受けたときにその衝撃荷重を吸収する作用を持つ衝撃吸収部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、例えば自動車のフレーム構造において、サイドメンバーやバンパーステイなどの衝撃吸収部材等の軽量化のためアルミニウム合金中空押出材の適用が検討されている。これらの衝撃吸収部材は自動車の衝突の際、押出軸方向に荷重をうけたとき圧壊割れを生じることなく蛇腹状に変形して、安定した高いエネルギー吸収を得ること、及び自動車フレーム構造材として必要な強度(耐力)を有することが要求される。
【0003】
これまで、衝撃吸収部材として利用できるアルミ合金として、Al−Mg−Si系アルニミウム合金押出材が多く提案されている。
そのような合金押出材の例としては、Al−Mg−Si系合金を加熱後押出成形し、次いで1000℃/分以上の平均冷却速度で空冷し、その後人工時効処理を施すもの(特許文献1〜3参照)、Al−Mg−Si系合金を均質化熱処理した後、前記溶体化処理温度にて熱間直接押出法にて押し出すと同時に常温水を用いて焼入れを行い、次いで人工時効処理を施したもの(特許文献4参照)を挙げることができる。
【0004】
上記公報にも記載されているように、Al−Mg−Si系アルミニウム合金押出材を衝撃吸収部材に適用する場合、一般にオンラインによるプレス焼入れ又はオフラインによる溶体化・焼入れ処理を行った後、時効処理を施している。ここで時効処理を施すのは、押出材の強度を向上させ、かつ組織を安定化し使用中に自然時効が進行して圧壊割れ性が劣化するのを防止するためである。
【0005】
水冷によるプレス焼入れは、押出後再加熱する溶体化・焼入れ処理とほぼ同等の特性が得られる利点があるが、押出材の断面形状や肉厚の差等に基づいて断面で冷却速度に差が生じ、冷却中に温度分布が不均一となって歪みが発生し、寸法精度が悪くかつ断面形状の薄肉化が難しくなり、また、そのような歪みの発生を防止しようとすれば、断面形状の自由度が小さくなるという問題がある。さらに、空冷に比べ高コストであるという問題がある。
【0006】
一方、空冷による焼入れは、水冷によるプレス焼入れに比べ低コストであるという利点があるが、冷却速度に限りがあるため合金組成によっては高い強度(特に耐力)が得られず、高い強度が得られた場合でもエネルギー吸収や耐圧壊割れ性に劣るという問題があった。
【0007】
上記の問題を改善したものとして、Al−Mg−Si系アルミニウム合金を均熱処理した後押出加工を行い、押出直後の位置で空冷によるプレス焼入れを行い、次いでこの押出材に対し時効処理を施した押出合金材が提案されている(特許文献5参照)。
しかし、前記特許文献5記載の合金材は、組織が繊維状組織であるため、衝撃吸収特性、曲げ特性には優れているが、繊維状組織であるため材料特性の方向依存性が強いといった問題がある。また繊維状の組織を安定して得るためには押出時の加工歪量や加工発熱量を抑える必要があるため、高速での押出成形ができず生産性が悪い。上記内容から加工歪量が多くなる複雑形状や薄肉形材への対応が難しく、押出材の特徴が十分生かされない。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−25783号公報
【特許文献2】
特開平7−54090号公報
【特許文献3】
特開平7−118782号公報
【特許文献4】
特開平9−256096号公報
【特許文献5】
特開2000−345270号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、Al−Mg−Si系アルミニウム合金押出材において、寸法精度やコスト面で有利な空冷による焼入れを前提とし高強度でかつ押出軸方向に圧縮したときに優れた衝撃吸収特性を示す押出材を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、空冷による焼き入れによって良好な衝撃吸収特性と押出性が得られる最適な合金組成、熱処理条件を見出して、本発明を完成させたものであり、本発明は次の態様からなる。
【0011】
(1)Mgを0.45%〜0.75%(質量%、以下同じ)、Siを0.45%〜0.80%、Mg2Siのバランス組成よりも過剰のSiを0.10%〜0.40%、Mnを0.15%〜0.40%、Crを0〜0.1%の範囲で含有し、残部が不可避的不純物及びAlからなる組成を有し、その組織が、Al相に針状のMg2Siが析出した組織をベースとして断面積0.003μm2以上のMnまたは/及びCr系化合物が分布密度0.2〜1.0個/μm2で材料の結晶粒内に分散し、該Mn、Cr系化合物の周りに前記針状のMg2Si組織が析出しない母相領域を有すると共にAl相の粒界においても前記針状のMg2Si組織が析出しない母相領域を有する組織であることを特徴とするアルミニウム合金押出材。
(2)前記アルミニウム合金の組成が、Mgを0.47〜0.58%、Siを0.60〜0.68%、Mg2Siのバランス組成よりも過剰のSiを0.25〜0.40%、Mnを0.15〜0.30%、Crを0〜0.05%の範囲で含有し、残部が不可避的不純物及びAlからなる組成であることを特徴とする上記(1)記載のアルミニウム合金押出材。
【0012】
(3)耐力値が220MPa以上、伸び10%以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のアルミニウム合金押出材。
【0013】
(4) Mgを0.45%〜0.75%(質量%、以下同じ)、Siを0.45%〜0.80%、Mg2Siのバランス組成よりも過剰のSiを0.10%〜0.40%、Mnを0.15%〜0.40%、Crを0〜0.1%の範囲で含有し、残部が不可避的不純物及びAlからなる組成を有するアルミニウム合金のビレットを、昇温速度3〜5℃/分、処理温度570℃〜600℃の範囲で2〜10時間均質化処理した後、押出直後の形材温度が540℃以上になるように押出成形し、空冷による焼入れを行い、その後最大強度もしくは過時効状態まで時効処理を行うことを特徴とする上記(1)記載のアルミニウム合金押出材の製造方法。
(5)前記アルミニウム合金のビレットの組成が、Mgを0.47〜0.58%、Siを0.60〜0.68%、Mg2Siのバランス組成よりも過剰のSi量が0.25〜0.40%、Mnを0.15〜0.30%、Crを0〜0.05%の範囲で含有し、残部が不可避的不純物及びAlからなる組成であることを特徴とする上記(4)記載のアルミニウム合金押出材の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の合金は、上記したような組成及び組織とすることにより、本発明の目的を達成できるものである。
そこで、まず、本発明の衝撃吸収特性に優れ、かつ良好な焼入れ性と押出性を有するアルミニウム合金を構成する各成分組成について説明する。
なお、本明細書では、「%」は「質量%」を意味する。
【0015】
<Mg>:Mgは本発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素の一つであり、Siとともに化合物を形成して強度の向上に寄与する。Mg量が0.45%未満では析出硬化によって強度の向上に寄与するMg2Si量の生成量が少なくなるため、十分な強度が得られず、一方0.75%を超えれば焼き入れ性が低下する上に押出加工性も低下することからMgは0.45〜0.75%とする。また、良好な強度と焼き入れ性とをバランスよく備えた衝撃吸収部材を得るためには、Mgを0.47%〜0.58%とすることが好ましい。
【0016】
<Si>:Siも本発明の系の合金で基本となる合金元素であって、Mgとともに化合物を形成して強度の向上に寄与する。Siが0.45%未満では硬化に寄与するMg2Si量の生成量が少なくなるため十分な強度が得られず、一方0.80%を超えると、押出加工性や曲げ加工性を低下させる。従って、Si量は0.45〜0.80%とする。また、良好な強度と焼き入れ性とをバランスよく備えた衝撃吸収部材を得るためには、Siを0.60〜0.68%とすることが好ましい。
【0017】
<Mg2Si>:MgとSiとは結合して析出し合金強度を向上させる。自動車フレーム構造材への使用を想定した場合、T5処理で必要な強度(耐力)を得るためにはMg+Si量で最低1.0%程度必要となる。しかし焼入れ性を考慮した場合Mg2Si量が多くなると焼き入れ性が悪くなり、Mg量が多くなると押出性が悪くなる。従ってMg+Si量は1.0〜1.3%の範囲がよい。一方Mg2Siバランス組成に過剰に添加したSiはMg量を多くした材料に比べ焼入れ性を阻害する影響が小さく、材料強度を高くすることができる。但し過剰Si量が多すぎると焼き入れ性が悪くなる。適正な過剰Si量としては0.10%〜0.40%が好ましく、良好な押出性と焼き入れ性とをバランスよく備えた衝撃吸収部材を得るためには0.25%〜0.40%とすることがより好ましい。
【0018】
<Mn>:Mnはビレットの均質化処理においてAl、Siと結合し、Al−Mn−Si系の化合物をつくり、この化合物の分散によって材料の粒内変形を促進し衝撃吸収特性を向上させる効果がある。添加量が0.15%未満では粒内変形を促進させる効果が小さく、0.40%を超えると焼き入れ性が鋭くなりすぎ、空冷による焼き入れでは焼きが入らず必要な強度が得られなかったり、粗大な化合物を形成しこの化合物相が微小な破壊の起点として働くため、成形性を低下させると共に圧壊性も低下させてしまう。従って、Mn量は0.15〜0.40%、より好ましくは0.15〜0.30%とした。
【0019】
<Cr>:Crは必要に応じて添加される成分であり、Mnと同じく結晶粒を微細化、安定化するとともに強度を上昇させる。またCrはMn同様Al−Cr−Si系などの化合物が結晶粒内に分散して析出するために粒内変形が促進されるので衝撃吸収性が向上する。しかしCrは焼き入れ性に及ぼす影響が大きく、Crが0.1%を超えると材料の焼き入れ性が悪くなり、空冷による焼き入れでは十分な強度が得られない。よってCrを添加する量は0%〜0.1%、より好ましくは0%〜0.05%の範囲である。
Mn及びCrの添加量は粒内変形を促進させるMn、Cr系化合物の析出量に影響するため、上記のMn、Crの組成範囲を限定した理由と同様の理由により、Mn+Crの添加量は0.2〜0.3%の範囲で含有するのが好ましい。
【0020】
<不可避不純物>:不可避不純物のうちFeはアルミニウム地金に最も多く含まれる不純物であり、0.35%を超えて合金中に存在すると製造時に粗大な金属間化合物を晶出し、合金の機械的性質を損なう。従って、Feの含有量は0.35%以下に規制する。望ましくは0.30%以下でありさらに0.25%以下が望ましい。またアルミニウム合金を鋳造する際には地金、添加元素の中間合金等様々な経路より不純物が混入する。混入する元素は様々であるが、Fe以外の不純物は単体で0.05%以下、総量で0.15%以下であれば合金の特性にほとんど影響を及ぼさない。従ってこれらの不純物は単体で0.05%以下、総量で0.15%以下とする。なお、不純物のうち、Tiについては鋳造材の組織を微細化する効果があり添加される場合がある。このTiの含有量は単体で0.1%以下とする。
【0021】
次に、本発明の衝撃吸収特性に優れ、かつ良好な焼入れ性と押出性を有するアルミニウム合金における組織について説明する。
<ミクロ組織>:本発明のアルミニウム合金の組織を図1、図2に示す。図1(a)は組織を示す図であり、図1(b)はその模式図である。図2はAl相の粒界部分を含めて示した模式図である。図1、2に示すように、Al相に針状のMg2Si(1)が析出した組織をベースとしてMn、Cr系化合物(2)が材料の結晶粒内に均一に分散しており、さらにその化合物の周りに上記針状のMg2Si組織が析出しない母相領域(3)をもつ組織であることを特徴とする。さらに図2に示すように、Al相の粒界においても実質的に上記針状のMg2Si組織が析出しない母相領域[PFZ幅](4)を有している。このような組織を有していることで、粒内に変形を吸収する領域を造りだし、粒内変形を促進させている。これにより、変形応力が分散し衝撃吸収特性(圧壊特性)や曲げ特性に優れた材料となる。すなわち、応力が加えられたときには、Mn、Cr系化合物(2)の界面が破壊の起点となり、破壊挙動が従来の粒界破断から粒内破断(5)へと変化する。
【0022】
<Mn、Cr系化合物の分散密度>:本合金では均質化処理でMn、Cr系の化合物を結晶粒内に分散させることにより衝撃吸収特性を向上させており、その分散状態は材料の焼入れ性や衝撃吸収特性に大きな影響を与える。材料中に存在する断面積0.003μm2以上のMn、Cr系化合物の分布密度が0.2個/μm2より少ないと十分な衝撃吸収特性が得られず1.0個/μm2を超えると焼き入れ性が鋭くなりすぎる。焼き入れ性と衝撃吸収特性を良好に保つためMn、Cr系化合物の分布密度が0.2個/μm2以上好ましくは0.3〜0.8個/μm2とする。
【0023】
次に、本発明の衝撃吸収特性に優れ、かつ良好な焼入れ性と押出性を有するアルミニウム合金における製造方法について詳細に説明する。
【0024】
<均質化処理>:本合金では均質化処理で析出するMn、Cr系化合物の分散状態により、衝撃吸収特性、焼き入れ性を制御している。Mn、Cr系化合物は均質化処理温度により析出量が決まり、処理時間、昇温速度により分散状態が決定される。処理温度が高すぎると析出量が減少し衝撃吸収特性が悪化する。処理時間が短かすぎたり昇温速度が遅すぎたりすると焼入れ性が悪化する。本合金において良好な衝撃吸収特性と、焼入れ性が得られる均質化処理条件としては、昇温速度3〜5℃/分、処理温度500〜600℃、好ましくは570〜600℃、処理時間2〜48時間、時間効率を考えた場合、好ましくは2〜10時間の範囲がよい。
【0025】
<押出加工>
押出加工は通常熱間において行われ、加工熱を利用して溶体化を兼ねる。本発明においては必要十分な材料強度を得るために押出直後の形材温度は540℃以上になることが望ましい。また、押出時に材料内に繊維状の組織が残存しているとその後異常粒成長が起きて、材料内での特性が大きく変化する場合がある。そのため材料内の組織は全面等軸再結晶粒組織か、もしくは押出方向にやや伸びた伸長粒組織であることが望ましい。また、押出後の熱処理で十分な強度を得るためには押出後の形材の冷却速度を60℃/分以上にすることが望ましい。
【0026】
<熱処理>
本発明合金において形材の衝撃吸収特性(エネルギー吸収量)は材料の耐力値によって変化する。また、割れ性は耐力値、引張り強度いずれかが高くなると悪くなる傾向があり、耐力値/引張り強度比は大きい(1に近い)方が効率的にエネルギーを吸収できる。耐力値/引張り強度比を大きくするには、時効最高強度前のいわゆる亜時効状態よりも、ピーク時効、過時効状態が適している。ここで時効温度が低いと、強度は高くなるがピーク時効状態まで時間がかかりすぎ、時効温度が高すぎると十分な強度が得られないという問題がある。本発明合金において、望ましい時効熱処理温度は生産性を考慮すると、180〜210℃の範囲である。
【0027】
本合金では、自動車用構造部材として必要な強度、衝撃吸収特性を有し、かつ均質化処理時間を極力短くすることを目的に材料組成の最適化を行っており、押出後の組織が安定な等軸粒、もしくは伸長粒組織であることから押出速度を早くすることが可能である。また複雑形状の形材や押出比50を超える形材にも対応できるという生産性に優れた材料である。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例について比較例と比較して説明する。表1に本実験で用いたアルミニウム鋳塊の合金組成を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
これらの鋳塊に対して表2中に示した条件で均質化処理を行い、その後450℃まで加熱したビレットを押出速度20〜28m/分の条件で押出加工し、続いてファンによる強制空冷を行い、表2に示す時効処理を行い角パイプ(形材断面、縦×横×厚=50mm×50mm×2.5mm、コーナ部R=0.3、長さ=300mm)を作製した。
【0031】
【表2】
【0032】
上記のようにして得られた材料について透過型電子顕微鏡により組織観察を行ったところ、以下のような組織が得られた。
【0033】
(実施例品)
Al相に針状のMg2Siが析出した組織をベースとしてMnCr系化合物が材料の結晶粒内に分散しており、さらにその化合物の周りに上記針状のMg2Si組織が析出しない母相領域をもち、さらにAl相の結晶粒界において針状のMg2Si組織が析出しない母相領域を持った組織であった。
【0034】
(比較例品)
実施例品と似たような組織を有しているが、Mn、Cr系化合物が析出しない組織であったり、また析出していても不均一に析出している組織であったり、また針状のMg2Siが不均一に析出している組織であった。
【0035】
次にこれらの供試材からJIS5号試験片を採取し、0.2%耐力値、破断伸びを測定した。材料の焼入れ性については、押出後の形材の冷却速度の差(60℃/分〜100℃/分)による焼き戻し後材料強度の差から判断し、耐力値の最大値と最小値の差が10MPa以内のものを○、15MPa以内のものを△と評価した。割れ性については、軸圧壊試験により蛇腹状に変形したときに開口割れがないものを○とし、亀裂の発生の多いものは△、開口割れが発生したものについては×と評価した。総合評価は材料強度、焼入れ性、割れ性、均質化処理条件などを総合評価し、衝撃吸収部材として量産に適している場合を◎、製造は可能だが◎より特性が多少劣る点があるものを○と評価した。
【0036】
表2に示したように、実施例1から4は焼入れ性、割れ性ともに良好で、0.2%耐力も220MPaを超えており、衝撃吸収部材としての特性に優れる。実施例5、6は1〜4に比べ焼入れ性、割れ性に劣る点があるが衝撃吸収部材としての特性を十分に持つ。比較例1は規定よりMnを多く含み焼入れ性に劣る。比較例2から4はMn、Crを含まない合金であり、割れ性に劣る。比較例5はMn量が規定より少なく割れ性に劣る。比較例6はCrを規定より多く含むため焼入れ性に劣った材料である。
【0037】
【発明の効果】
本発明の合金材料は、良好な軸圧壊特性を有する形材を強制空冷により作製することが可能であり、また焼入れ性に優れ材料特性が安定であること、高い押出速度、押出比の形材が作製可能であることから、複雑中空断面を持つフロントサイドメンバー、バンパーサポートなどの自動車用構造部材を製造するのに好適な材料である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルミニウム合金の組織を示す図である。
【図2】本発明のアルミニウム合金の、粒界領域を含めた組織を示す模式図である。
【符号の説明】
1 母相に針状のMg2Siが析出した組織
2 Mn、Cr系化合物
3 針状のMg2Si組織が析出しない母相領域
4 針状のMg2Si組織が析出しない母相領域
5 粒内破断
Claims (5)
- Mgを0.45%〜0.75%(質量%、以下同じ)、Siを0.45%〜0.80%、Mg2Siのバランス組成よりも過剰のSiを0.10%〜0.40%、Mnを0.15%〜0.40%、Crを0〜0.1%の範囲で含有し、残部が不可避的不純物及びAlからなる組成を有し、その組織が、Al相に針状のMg2Siが析出した組織をベースとして断面積0.003μm2以上のMnまたは/及びCr系化合物が分布密度0.2〜1.0個/μm2で材料の結晶粒内に分散し、該Mn,Cr系化合物の周りに前記針状のMg2Si組織が析出しない母相領域を有すると共にAl相の粒界においても前記針状のMg2Si組織が析出しない母相領域を有する組織であることを特徴とするアルミニウム合金押出材。
- 前記アルミニウム合金の組成が、Mgを0.47〜0.58%、Siを0.60〜0.68%、Mg2Siのバランス組成よりも過剰のSiを0.25〜0.40%、Mnを0.15〜0.30%、Crを0〜0.05%の範囲で含有し、残部が不可避的不純物及びAlからなる組成であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金押出材。
- 耐力値が220MPa以上、伸び10%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム合金押出材。
- Mgを0.45%〜0.75%(質量%、以下同じ)、Siを0.45%〜0.80%、Mg2Siのバランス組成よりも過剰のSiを0.10%〜0.40%、Mnを0.15%〜0.40%、Crを0〜0.1%の範囲で含有し、残部が不可避的不純物及びAlからなる組成を有するアルミニウム合金のビレットを、昇温速度3〜5℃/分、処理温度570℃〜600℃の範囲で2〜10時間均質化処理した後、押出直後の形材温度が540℃以上になるように押出成形し、空冷による焼入れを行い、その後最大強度もしくは過時効状態まで時効処理を行うことを特徴とする、請求項1記載のアルミニウム合金押出材の製造方法。
- 前記アルミニウム合金のビレットの組成が、Mgを0.47〜0.58%、Siを0.60〜0.68%、Mg2Siのバランス組成よりも過剰のSi量が0.25〜0.40%、Mnを0.15〜0.30%、Crを0〜0.05%の範囲で含有し、残部が不可避的不純物及びAlからなる組成であることを特徴とする請求項4記載のアルミニウム合金押出材の製造方法。
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