JP2011001563A - 耐衝撃割れ性に優れたアルミニウム合金押出材 - Google Patents
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Abstract
【課題】Al−Zn−Mg系アルミニウム合金であって、強度が高く、靭性にも優れ、押出生産性がよい押出材の提供を目的とし、特に軸圧壊特性の改善に効果的である。
【解決手段】Mg:0.50〜0.75質量%、Zn:4.5〜6.5質量%、Cu:0.10〜0.20質量%、Zr:0.17〜0.23質量%、Ti:0.005〜0.05質量%、Mn:0.05質量%以下、Cr:0.03質量%以下、Fe:0.20質量%以下、Si:0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を用いたものであって、耐衝撃割れ性に優れていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】Mg:0.50〜0.75質量%、Zn:4.5〜6.5質量%、Cu:0.10〜0.20質量%、Zr:0.17〜0.23質量%、Ti:0.005〜0.05質量%、Mn:0.05質量%以下、Cr:0.03質量%以下、Fe:0.20質量%以下、Si:0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を用いたものであって、耐衝撃割れ性に優れていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明はAl−Zn−Mg系アルミニウム合金からなる押出材に関し、特に動的荷重や静的荷重等の衝撃に対して靭性に優れたアルミニウム合金押出材に係る。
本発明に係るアルミニウム合金押出材は高い衝撃エネルギー吸収性が要求される車両部品等に適用するのに好適である。
本発明に係るアルミニウム合金押出材は高い衝撃エネルギー吸収性が要求される車両部品等に適用するのに好適である。
車両の分野においては、乗員保護の観点から衝突安全性及び燃費向上の観点から軽量化が強く要求されている。
衝突安全性の向上を図る手段としては、車両を構成するフレーム部材等が軽衝突時にはフレーム剛性を確保しつつ、所定以上の衝撃が加わると変形して衝撃エネルギーを吸収する方法が公知である。
衝撃エネルギーを吸収するためにフレーム部材等が変形するパターンにはフレーム部材が横方向に変形する横圧壊と縦方向に変形する軸圧壊とがあるが、いずれの場合にも圧壊変形時に割れが発生しにくい靭性の高い材料が要求される。
衝突安全性の向上を図る手段としては、車両を構成するフレーム部材等が軽衝突時にはフレーム剛性を確保しつつ、所定以上の衝撃が加わると変形して衝撃エネルギーを吸収する方法が公知である。
衝撃エネルギーを吸収するためにフレーム部材等が変形するパターンにはフレーム部材が横方向に変形する横圧壊と縦方向に変形する軸圧壊とがあるが、いずれの場合にも圧壊変形時に割れが発生しにくい靭性の高い材料が要求される。
特許第3772962号公報にはAl−Zn−Mg系アルミニウム合金押出材であって、繊維状組織を有し、過時効処理したことで横圧壊特性を向上させたバンパー補強材を開示する。
しかし、車両部材であっては、軽衝突時には剛性を確保して車両の軽量化にも寄与しなければならないのに過時効処理を行うと、材料強度、特に耐力値がその材料が本来有している最大強度よりも低下してしまう技術的課題がある。
また、同公報の記載によると押出軸方向に圧縮荷重を受けて蛇腹状に収縮変形する場合と、横方向に圧縮荷重を受けて変形する場合とでは変形形態が異なり、同公報に記載の発明に係るアルミニウム合金押出材は横圧壊特性を改善したものと特定されている。
さらには、同公報にはアルミニウム合金押出材を繊維状組織にするために質量%で、Mn:0.2〜0.7%、Cr:0.03〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%のうち1種又は2種以上を添加する必要があると記載されているが、Mn及びCrは焼入れ感受性を高める要因となり、また晶出物を形成して靭性を悪化させたり強度低下や押出性の低下を招きやすい問題があった。
しかし、車両部材であっては、軽衝突時には剛性を確保して車両の軽量化にも寄与しなければならないのに過時効処理を行うと、材料強度、特に耐力値がその材料が本来有している最大強度よりも低下してしまう技術的課題がある。
また、同公報の記載によると押出軸方向に圧縮荷重を受けて蛇腹状に収縮変形する場合と、横方向に圧縮荷重を受けて変形する場合とでは変形形態が異なり、同公報に記載の発明に係るアルミニウム合金押出材は横圧壊特性を改善したものと特定されている。
さらには、同公報にはアルミニウム合金押出材を繊維状組織にするために質量%で、Mn:0.2〜0.7%、Cr:0.03〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%のうち1種又は2種以上を添加する必要があると記載されているが、Mn及びCrは焼入れ感受性を高める要因となり、また晶出物を形成して靭性を悪化させたり強度低下や押出性の低下を招きやすい問題があった。
本発明は、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金であって、強度が高く、靭性にも優れ、押出生産性がよい押出材の提供を目的とし、特に軸圧壊特性の改善に効果的である。
Al−Zn−Mg系アルミニウム合金は高強度が得られるアルミニウム合金として各種検討されている。
従来から開発されている合金は、一般的にはMgの成分量が0.8〜1.6%レベルであり、比較的高い耐力値が得られやすい反面、靭性及び押出性が悪い問題があった。
そこで本願発明者は、Mg:0.50〜0.75質量%(以下単に%と表示する)と相対的に低く抑えつつ、高強度、優れた靭性及び高い生産性を得ることを目的に誠意検討して本発明に至ったものである。
従来から開発されている合金は、一般的にはMgの成分量が0.8〜1.6%レベルであり、比較的高い耐力値が得られやすい反面、靭性及び押出性が悪い問題があった。
そこで本願発明者は、Mg:0.50〜0.75質量%(以下単に%と表示する)と相対的に低く抑えつつ、高強度、優れた靭性及び高い生産性を得ることを目的に誠意検討して本発明に至ったものである。
本発明に係るアルミニウム合金押出材は、Mg:0.50〜0.75質量%、Zn:4.5〜6.5質量%、Cu:0.10〜0.20質量%、Zr:0.17〜0.23質量%、Ti:0.005〜0.05質量%、Mn:0.05質量%以下、Cr:0.03質量%以下、Fe:0.20質量%以下、Si:0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を用いたものであって、耐衝撃割れ性に優れていることを特徴とする。
Mgは、アルミニウム合金の強度を高めるのに主要な成分であるがMg成分量が高いと圧壊変形時に割れやすくなり、押出性も低下する。
そこで本発明においては耐力を維持するためにMg成分を0.50%以上に設定し、割れを抑え、押出性の低下を防ぐべく上限を0.75%以下に設定したものである。
そこで本発明においては耐力を維持するためにMg成分を0.50%以上に設定し、割れを抑え、押出性の低下を防ぐべく上限を0.75%以下に設定したものである。
Znは、Mgの存在の下に時効性を有し、耐力を確保すべくZn成分を4.5%以上に設定した。
また、Zn成分が6.5%を超えると耐食性が悪くなる。
また、Zn成分が6.5%を超えると耐食性が悪くなる。
Cuは、微量添加により一般耐食性が向上するとともに、結晶粒内外の電位差を緩和し、耐応力腐食割れ性が向上する。
従って、Cu成分を0.10%以上とした。
Cu成分が0.20%を超えると極部電位により耐食性が悪化する。
なお、Cu成分0.10〜0.20%の範囲では耐力向上にも寄与する。
従って、Cu成分を0.10%以上とした。
Cu成分が0.20%を超えると極部電位により耐食性が悪化する。
なお、Cu成分0.10〜0.20%の範囲では耐力向上にも寄与する。
Tiは、アルミニウム合金鋳塊中の結晶粒を微細化するので0.005%以上添加するのがよく、0.05%でその効果が飽和する。
遷移元素であるMn、Cr、ZrはAlと結合して微細な化合物を形成することによって再結晶を抑制し、金属組織を繊維状にすることは公知である。
しかし、Mn及びCrはプレス端焼入れ時の焼入れ感受性に大きな影響を与え、プレス端焼入れを強制空冷にて実施し、その後の人工時効処理にて安定した高強度を得るにはMn及びCrは極力少ない方がよい。
これに対してZrはMn、Crと比較して焼入れ感受性への影響が少ないのでZrのみで金属組織を繊維状にできないか検討した結果、Zr成分量を0.17%〜0.23%,好ましくは0.19%〜0.23%の範囲に制御すればよいことが明らかになった。
この場合にMn成分は0.05%以下、好ましくは0.03%以下、理想的には0.01%以下である。
また、Cr成分は0.03%以下、好ましくは0.01%以下である。
しかし、Mn及びCrはプレス端焼入れ時の焼入れ感受性に大きな影響を与え、プレス端焼入れを強制空冷にて実施し、その後の人工時効処理にて安定した高強度を得るにはMn及びCrは極力少ない方がよい。
これに対してZrはMn、Crと比較して焼入れ感受性への影響が少ないのでZrのみで金属組織を繊維状にできないか検討した結果、Zr成分量を0.17%〜0.23%,好ましくは0.19%〜0.23%の範囲に制御すればよいことが明らかになった。
この場合にMn成分は0.05%以下、好ましくは0.03%以下、理想的には0.01%以下である。
また、Cr成分は0.03%以下、好ましくは0.01%以下である。
Fe及びSiはアルミニウム地金に不純物として含まれやすい成分であるが、Al−Fe、Al−Fe−Si、Al−Mn−Fe、Al−Cr−Fe系晶出物を形成しやすく、これらの晶出物は靭性を悪化するのでFe成分は0.20%以下に抑えるのがよく、Si成分は0.10%以下に抑えるのがよい。
上記のようにアルミニウム合金の成分を調整すると、押出直後に強制空冷するプレス端焼入れにて靭性に優れたアルミニウム合金押出材が得られ、押出直後に、30℃/分以上の冷却速度にて材料表面温度が100℃以下になるまで強制空冷し、その後に人工時効処理したものであることを特徴とする。
この場合に耐力値において、その押出材が有している最大強度の0.9倍以上の概ねピーク強度になるように人工時効処理することで最大強度にしても優れた靭性を有し、特に中空断面形状の押出材を用いた軸圧壊では蛇腹状に圧壊するがそのような軸方向の変形パターンにおいても割れの少ない高いエネルギー吸収性を示す。
軸圧壊性を向上するにはPFZ(precipitate free zone)の影響もあり、PFZが100nm以下になるように制御するのがよい。
アルミニウム合金の金属組織においては、結晶粒内に析出物、晶出物が多数生成しているが、結晶粒界の両側には、析出物や晶出物の生成が極めて少ない無析出物帯PFZが存在する。
このPFZの幅(結晶粒界を横切る方向の幅)は電子顕微鏡で撮影した組織写真において析出物、晶出物等の存在頻度が極めて少ない領域と析出物や晶出物等が存在している領域との境界をつなぐ仮想線により区画して判定することができる。
このPFZの幅を100nm以下、望ましくは60nm以下に設定すると、軸圧壊変形時に割れが発生しにくくなる。
アルミニウム合金の金属組織においては、結晶粒内に析出物、晶出物が多数生成しているが、結晶粒界の両側には、析出物や晶出物の生成が極めて少ない無析出物帯PFZが存在する。
このPFZの幅(結晶粒界を横切る方向の幅)は電子顕微鏡で撮影した組織写真において析出物、晶出物等の存在頻度が極めて少ない領域と析出物や晶出物等が存在している領域との境界をつなぐ仮想線により区画して判定することができる。
このPFZの幅を100nm以下、望ましくは60nm以下に設定すると、軸圧壊変形時に割れが発生しにくくなる。
圧壊特性を向上させるには、押出用のビレットを鋳造した際に晶出した粗大な化合物を分断、微細化することも寄与する。
Al−Zn−Mg系の7000系合金において、従来は、鋳造ビレットの均質化処理温度は450℃〜480℃レベルであったが、この温度では鋳造時に晶出した粗大な化合物の分断、微細化が不充分であることも明らかになった。
晶出物を充分に分断、微細化するには、ビレットの均質化処理温度を480℃〜550度に設定するのがよく、好ましくは520℃〜550℃の範囲である。
480℃未満では、晶出物の分断、微細化が不充分であり、550℃を超えて所定時間保持すると局部溶解が生じる恐れがある。
Al−Zn−Mg系の7000系合金において、従来は、鋳造ビレットの均質化処理温度は450℃〜480℃レベルであったが、この温度では鋳造時に晶出した粗大な化合物の分断、微細化が不充分であることも明らかになった。
晶出物を充分に分断、微細化するには、ビレットの均質化処理温度を480℃〜550度に設定するのがよく、好ましくは520℃〜550℃の範囲である。
480℃未満では、晶出物の分断、微細化が不充分であり、550℃を超えて所定時間保持すると局部溶解が生じる恐れがある。
本発明においては、Mg成分及びZn成分の適正化により高い耐力を維持しつつ、Mn及びCrの添加量を少なく制御し、理想的にはMn、Crを不可避的不純物レベルまで少なくし、且つZrの成分を0.17〜0.23%の範囲に制御したことで、圧壊時に割れが少ない押出材を得ることができる。
特に軸圧壊に対して効果的であり、車両のサイドメンバー前に取り付けられる衝撃吸収用クラッシュ部材に適用できる。
特に軸圧壊に対して効果的であり、車両のサイドメンバー前に取り付けられる衝撃吸収用クラッシュ部材に適用できる。
本発明に係るアルミニウム合金押出材について、比較例と比較しながら以下説明する。
図1の表に示したような化学成分量に調整した直径204mmの円柱ビレットを鋳造し、520℃×12時間均質化処理した。
なお、図1の表に示した化学成分量は質量%であり、分析値を示す。
このようにして得られたビレットを用いて、図7に示したトリプルホロー断面の押出材を押出加工した。
図7に示した押出材は車両サイドメンバー前に取り付けるクラッシュ部材の例であり、a=150mm、b=80mm、肉厚t=2mmである。
図1の表に示したような化学成分量に調整した直径204mmの円柱ビレットを鋳造し、520℃×12時間均質化処理した。
なお、図1の表に示した化学成分量は質量%であり、分析値を示す。
このようにして得られたビレットを用いて、図7に示したトリプルホロー断面の押出材を押出加工した。
図7に示した押出材は車両サイドメンバー前に取り付けるクラッシュ部材の例であり、a=150mm、b=80mm、肉厚t=2mmである。
図2の表に押出直後の強制空冷による形材冷却速度、その後の人工時効(T5)条件及び押出材の評価結果を示す。
実施例1〜6が本発明に係る押出材である。
実施例1については人工時効が靭性に与える影響を見るため、時効条件を2水準振ってPFZを調査し、各特性を比較した。また比較例1は供試合金の成分は実施例1と同じで、押出後のプレス焼入の冷却速度を30℃/min以下の15℃/minまで遅くし、この焼入速度がPFZ及び靭性に与える影響を調査した。
図2の表中、形材冷却速度は、押出プレス端から押し出されてくる形材を強制空冷にて冷却し、プレス端焼入れする冷却速度を意味する。
T5条件は、プレス端焼入れ後の人工時効条件を意味し、低温長時間(90℃×4時間+145℃×9時間)と高温短時間(100℃×4時間+160℃×4時間)とを比較評価した。
ここで人工時効条件が低温長時間であるとは85〜95℃×4〜8時間+130〜150℃×6〜15時間の二段時効をいい、高温短時間は95〜105℃×3〜6時間+150〜170℃×3〜7時間の二段時効をいう。
機械的性質はJISZ2241に基づいて評価し、耐力値は0.2%耐力値を示す。
靭性はシャルピー衝撃試験機(JTトーシ社製)を用いてJISB7722に基づいて評価した。
エネルギー吸収量及び割れの良否は、図8に示すように、押出方向の軸圧縮荷重を負荷し、図9に示すようにL=170mmの押出形材を120mm圧縮変形させ変位ストロークと荷重KNとのグラフから面積計算にて求めた(図9のグラフは実施例1−1に対応する)。
そのときの押出形材の外観を図10に示す。
実施例のものは図10(b)のように割れが生じなかったが、図2の表中「×」と評価したものは図10(a)に示すように割れが生じた。
図11にPFZの評価例を示し、図11(a)は実施例1−1、(b)は実施例1−2、(c)は比較例1の押出材である。
次に表中の「○」「×」の判定基準を説明する。
機械的性質は、この分野で一般的に要求される200MPa以上を○、200MPa未満を×とした。
同じ理由で、シャルピー衝撃値も37J/cm2以上を○、37J/cm2未満を×とした。
形材表面からの再結晶厚さは、再結晶するとこの再結晶層で割れが伝播しやすく、また著しい割れが発生しなくても、この再結晶層で微小割れが発生しやすいので、100μm以下を○、100μm超を×とした。
エネルギー吸収量は自動車のクラッシュ部材の場合、一般的な車両で約11000J要求されているので11000J以上を○、11000J未満を×とした。
実施例1〜6が本発明に係る押出材である。
実施例1については人工時効が靭性に与える影響を見るため、時効条件を2水準振ってPFZを調査し、各特性を比較した。また比較例1は供試合金の成分は実施例1と同じで、押出後のプレス焼入の冷却速度を30℃/min以下の15℃/minまで遅くし、この焼入速度がPFZ及び靭性に与える影響を調査した。
図2の表中、形材冷却速度は、押出プレス端から押し出されてくる形材を強制空冷にて冷却し、プレス端焼入れする冷却速度を意味する。
T5条件は、プレス端焼入れ後の人工時効条件を意味し、低温長時間(90℃×4時間+145℃×9時間)と高温短時間(100℃×4時間+160℃×4時間)とを比較評価した。
ここで人工時効条件が低温長時間であるとは85〜95℃×4〜8時間+130〜150℃×6〜15時間の二段時効をいい、高温短時間は95〜105℃×3〜6時間+150〜170℃×3〜7時間の二段時効をいう。
機械的性質はJISZ2241に基づいて評価し、耐力値は0.2%耐力値を示す。
靭性はシャルピー衝撃試験機(JTトーシ社製)を用いてJISB7722に基づいて評価した。
エネルギー吸収量及び割れの良否は、図8に示すように、押出方向の軸圧縮荷重を負荷し、図9に示すようにL=170mmの押出形材を120mm圧縮変形させ変位ストロークと荷重KNとのグラフから面積計算にて求めた(図9のグラフは実施例1−1に対応する)。
そのときの押出形材の外観を図10に示す。
実施例のものは図10(b)のように割れが生じなかったが、図2の表中「×」と評価したものは図10(a)に示すように割れが生じた。
図11にPFZの評価例を示し、図11(a)は実施例1−1、(b)は実施例1−2、(c)は比較例1の押出材である。
次に表中の「○」「×」の判定基準を説明する。
機械的性質は、この分野で一般的に要求される200MPa以上を○、200MPa未満を×とした。
同じ理由で、シャルピー衝撃値も37J/cm2以上を○、37J/cm2未満を×とした。
形材表面からの再結晶厚さは、再結晶するとこの再結晶層で割れが伝播しやすく、また著しい割れが発生しなくても、この再結晶層で微小割れが発生しやすいので、100μm以下を○、100μm超を×とした。
エネルギー吸収量は自動車のクラッシュ部材の場合、一般的な車両で約11000J要求されているので11000J以上を○、11000J未満を×とした。
実施例の押出材と比較例の押出材とを比較すると、比較例AはZr成分量が0.13%と0.17%以下であるために、形材の表面再結晶厚さが実施例と比較して厚く、Si成分量が0.15%と0.10%以上あり、Fe成分量が0.28%と0.20%以上なので靭性も悪い。
比較例Bは、Mg成分量が0.45%と0.50%以下であり、Zn成分量が4.42%と4.5%以下であるために耐力が188MPaと低い。
また、比較例BはZr成分量が0.14%と0.17%より低いので表面再結晶厚さも大きい。
比較例Cは、Mg成分量が0.83%と0.75%よりも多く、Zn成分量が6.61%と6.5%よりも多いので耐力が339MPaと比較的高くても靭性が悪い。
なお、実施例の範囲では耐力は200〜310MPaの範囲にある。
比較例Dは、Mn成分量が0.41%と0.05%よりも多く、Cr成分量が0.25%と0.05%よりも多いのでZr成分量が0.18%であっても軸圧壊試験にて表面の再結晶部分に割れが生じたために図2の表では「△」と評価した。
比較例EはJIS7003合金の代表的な成分組成例であり、靭性が悪く、軸圧壊試験にて割れが発生した。
図2の表に示した結果に基づいて図3は、機械的性質(耐力)と靭性(シャルピー衝撃値)とをプロットしたもので耐力と靭性は耐力180〜350MPaの大きな範囲では負の相関があることが確認できた。
比較例Bは、Mg成分量が0.45%と0.50%以下であり、Zn成分量が4.42%と4.5%以下であるために耐力が188MPaと低い。
また、比較例BはZr成分量が0.14%と0.17%より低いので表面再結晶厚さも大きい。
比較例Cは、Mg成分量が0.83%と0.75%よりも多く、Zn成分量が6.61%と6.5%よりも多いので耐力が339MPaと比較的高くても靭性が悪い。
なお、実施例の範囲では耐力は200〜310MPaの範囲にある。
比較例Dは、Mn成分量が0.41%と0.05%よりも多く、Cr成分量が0.25%と0.05%よりも多いのでZr成分量が0.18%であっても軸圧壊試験にて表面の再結晶部分に割れが生じたために図2の表では「△」と評価した。
比較例EはJIS7003合金の代表的な成分組成例であり、靭性が悪く、軸圧壊試験にて割れが発生した。
図2の表に示した結果に基づいて図3は、機械的性質(耐力)と靭性(シャルピー衝撃値)とをプロットしたもので耐力と靭性は耐力180〜350MPaの大きな範囲では負の相関があることが確認できた。
図4のグラフは耐力230〜280MPa付近の値をプロットしたものであり、実施例1−1(低温時効、高速焼入)に対し、高温時効を行った実施例1−2はシャルピー値が40.1J/cm2から39.1J/cm2に低下(▲2.5%)した。
また、比較例1(低温時効、低速焼入)はシャルピー値が40.1J/cm2から36.9J/cm2に低下(▲8.0%)した。
また、この3種についてPFZを調査した結果、「図11(a)実施例1−1、(b)実施例1−2、(c)比較例1」PFZもシャルピー値の低下と付随するように、51nm→88nm→109nmと広くなり、靭性に影響していることがわかる。
つまり、耐力230〜280MPaの範囲にて靭性を向上させるには低温長時間の時効と冷却速度30℃/min以上の高速焼入が良いということが分かる。
また、比較例1(低温時効、低速焼入)はシャルピー値が40.1J/cm2から36.9J/cm2に低下(▲8.0%)した。
また、この3種についてPFZを調査した結果、「図11(a)実施例1−1、(b)実施例1−2、(c)比較例1」PFZもシャルピー値の低下と付随するように、51nm→88nm→109nmと広くなり、靭性に影響していることがわかる。
つまり、耐力230〜280MPaの範囲にて靭性を向上させるには低温長時間の時効と冷却速度30℃/min以上の高速焼入が良いということが分かる。
図5は耐力とエネルギー吸収量の関係をプロットしたものであり、ほぼ正の相関があり、耐力が強くなるとエネルギー吸収量も増加する。
しかし、吸収量は十分でも製品に割れが発生すると、特に製品に偏荷重(例:斜めに荷重が入る)が加わると、その割れが起点となり製品がくの字に座屈しやすくなる。
従って単にエネルギー吸収量が大きければ良いというものではなく、割れの有無は重要な評価項目であり、図2の表に示すように比較例はほとんど割れが発生している。
比較例DはMn,Cr以外実施例1とほぼ同一成分であるが、Mn,Crがリッチに添加されているためAl−Mn(Cr)−Fe系の晶出物が生成された影響で微細割れが発生した。
このことから、Mn,Crを添加すると金属組織を微細化する効果はあるものの、不要な晶出物ができるため、添加しないことが望まれる。
しかし、吸収量は十分でも製品に割れが発生すると、特に製品に偏荷重(例:斜めに荷重が入る)が加わると、その割れが起点となり製品がくの字に座屈しやすくなる。
従って単にエネルギー吸収量が大きければ良いというものではなく、割れの有無は重要な評価項目であり、図2の表に示すように比較例はほとんど割れが発生している。
比較例DはMn,Cr以外実施例1とほぼ同一成分であるが、Mn,Crがリッチに添加されているためAl−Mn(Cr)−Fe系の晶出物が生成された影響で微細割れが発生した。
このことから、Mn,Crを添加すると金属組織を微細化する効果はあるものの、不要な晶出物ができるため、添加しないことが望まれる。
図6は、Zr添加量と形材の表面再結晶厚さの関係を示すものであり、図6において再結晶厚さは平均値を示す。
Zrを添加すると再結晶は抑制されることが分かる。
図6から分かるようにZr0.17%以上で再結晶厚さが100μm以下になり残りの部位は繊維状組織であるが、この繊維状組織は結晶粒径が小さいため、衝撃伝播に対し割れを防止する効果がある。
また、再結晶層が薄いため応力腐食割れに対しても、発生しにくくなる付随効果もある。
Zrを添加すると再結晶は抑制されることが分かる。
図6から分かるようにZr0.17%以上で再結晶厚さが100μm以下になり残りの部位は繊維状組織であるが、この繊維状組織は結晶粒径が小さいため、衝撃伝播に対し割れを防止する効果がある。
また、再結晶層が薄いため応力腐食割れに対しても、発生しにくくなる付随効果もある。
Claims (6)
- Mg:0.50〜0.75質量%、Zn:4.5〜6.5質量%、Cu:0.10〜0.20質量%、Zr:0.17〜0.23質量%、Ti:0.005〜0.05質量%、Mn:0.05質量%以下、Cr:0.03質量%以下、Fe:0.20質量%以下、Si:0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を用いたものであって、耐衝撃割れ性に優れていることを特徴とするアルミニウム合金押出材。
- Mn:0.01質量%以下、Cr:0.01質量%以下に制御したことを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金押出材。
- 押出直後に、30℃/分以上の冷却速度にて材料表面温度が100℃以下になるまで強制空冷し、その後に人工時効処理したものであることを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウム合金押出材。
- 耐力値において、その押出材が有している最大強度の0.9倍以上の概ねピーク強度になるように人工時効処理したものであることを特徴とする請求項3記載のアルミニウム合金押出材。
- PFZ(precipitate free zone)が100nm以下になるように制御したものであることを特徴とする請求項4記載のアルミニウム合金押出材。
- 中空断面形状からなり、押出方向に沿った軸圧壊において、耐衝撃割れ性に優れていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアルミニウム合金押出材。
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