JP5344855B2 - 圧壊特性に優れるアルミニウム合金押出材 - Google Patents
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Description
図1は中空矩形断面(フランジ部1a、1b及びウエブ部1c、1d)を有するバンパー補強材1の変形過程を示すもので、バンパー補強材1の外側フランジ部1a側に対し垂直に圧縮荷重が加えられると、主として対向するウエブ部1c、1dが変形することにより中空矩形断面が変形し(仮想線参照)、その変形の過程で荷重によるエネルギーが吸収される。
すなわち、アルミニウム合金押出材のエネルギー吸収力と軽量化のための高強度化は相矛盾する課題であり、これまで、これを合金成分、組織等、冶金的に解決することは難しかった。
このアルミニウム合金押出材は圧壊特性に優れ、特に横方向の圧縮荷重を受けるバンパー補強材、フレーム、ドアビーム等の自動車用部材として好適である。
本発明に係るアルミニウム合金押出材は、例えば、バンパー補強材、ドアビーム(ドア内の前後方向等に配置され、側方からの衝撃荷重を受け止めるエネルギー吸収部材)、インパクトビーム(ドアの前後方向に配置され、軸方向の衝撃荷重を受け止めるエネルギー吸収部材)、ステアリングメンバー(車体幅方向に配置されるインストルメントパネルの補強材)、自動車フレーム(サイドメンバー、クロスメンバー、バンパーステイ、サイドフレーム等)、鉄道車両、船舶等のフレーム等の用途に用いることができる。
Zn
ZnはMgと共存して合金に時効性を与え、人工時効により強度を向上させる作用を有する。Znの含有量が4.0%未満では強度の向上が十分でなく、エネルギー吸収量が少なくなる。一方、8.0%を超えると押出性が低下するとともに、伸び及び曲げ加工性が低下する。さらに耐SCC性及び一般耐食性が低下する。従って、Znの含有量は4.0〜8.0%とし、なかでも6.0〜7.0%がより好ましい。
Mgはアルミニウム合金の強度を高める主要な元素である。しかし、Mgの含有量が0.5%未満では強度を向上させる効果を十分に得ることができず、エネルギー吸収量が少なくなる。一方、1.8%を超えると押出性が低下するとともに伸びも低下する。さらに耐SCC性、曲げ加工性が低下する。従って、Mgの含有量は0.5〜1.8%とし、0.6〜1.0%がより好ましく、さらに0.7〜0.9%がより好ましい。
Tiはアルミニウム合金鋳塊中の結晶粒を微細化する効果がある。しかし、含有量が0.005%未満ではその効果を十分得ることができず、また0.3%を超えると結晶粒微細化効果が飽和して巨大化合物が発生してしまう。従って、Tiの含有量は0.005〜0.3%とする。
Cu
Cuはアルミニウム合金の強度を高める作用があり、目標とする高強度を得るため添加される。また、Cuは耐SCC性を改善する作用がある。しかし、Cu含有量が0.05%未満ではその効果が不十分で、エネルギー吸収量が少なく、耐SCC性に劣るようになる。一方、0.6%を超えると押出性が悪くなり、さらに焼入れ感受性を高め強度低下を招くとともに、曲げ加工性及び一般耐食性を劣化させる。また、溶接性も悪くなる。従って、Cuの含有量は0.05〜0.6%、望ましくは0.1〜0.2%である。
これらの元素はアルミニウム合金押出材に繊維状組織を形成し、合金を強化する作用があるため、1種又は2種以上が添加される。しかし、それぞれ、0.1%、0.03%、0.05%未満ではその効果が不十分であり、一方、それぞれ0.7%、0.3%、0.25%を超えると押出性が悪くなり、さらに焼入れ感受性を高め強度低下を招く。従って、Mn:0.1〜0.7%、Cr:0.03〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%の範囲とする。Zrは0.1〜0.2%が望ましい。繊維状組織を形成するためには1種又は2種以上を合計で0.1%以上含有することが望ましく、特に空冷によるプレス焼入れを行う場合、焼入れ感受性が高まるのを防ぐため合計で0.4%以下が望ましい。
不可避不純物のうちFeはアルミニウム地金に最も多く含まれる不純物であり、0.35%を超えて合金中に存在すると鋳造時に粗大な金属間化合物を晶出し、合金の機械的性質を損なう。従って、Feの含有量は0.35%以下に規制する。また、アルミニウム合金を鋳造する際には地金、添加元素の中間合金等様々な経路より不純物が混入する。混入する元素は様々であるが、Fe以外の不純物は単体で0.05%以下、総量で0.15%以下であれば合金の特性にほとんど影響を及ぼさない。従って、これらの不純物は単体で0.05%以下、総量で0.15%以下とする。なお、不純物のうちBについてはTiの添加に伴い合金中にTiの1/5程度の量で混入するが、より望ましい範囲は0.02%以下、さらに0.01%以下が望ましい。
Al−Mg−Zn系アルミニウム合金押出材において、本発明で定義された絞りの値が20%以上のとき圧壊割れ特性に優れる理由については、絞りの値は材料の局部的な変形能を示す1つの指標であり、一方、押出材が圧壊変形する場合、材料のごく表面に発生する伸びは30%程度に達し、このような領域では材料は絞りのような局部的な変形をしていると考えられることから、絞りの値が所定値以上の場合に割れの発生が抑制されたものと推測される。
上記組成範囲内において絞りの値を20%以上とするには、例えば空冷によるプレス焼入れであれば焼入れ時の冷却速度を上げることが有効である。下記実施例に示すように、時効処理により高強度化したもので20%以上の絞りを得ることができた。
なお、No.1(No.3、11も同じ)については押出速度を7m/分とし、その他はNo.1と同等の表面品質が得られる限界押出速度を測定し、この押出速度がNo.1に対し同等のもの(No.1の90%以上の場合)を○、70〜89%の場合を△、69%以下の場合を×と評価した。その結果を同じく表2に示す。
クロム酸水溶液(純水1リットル中、無水クロム酸36g、重クロム酸カリ30g、塩化ナトリウム3g)を試験液として用い、各供試材から押出直角方向(LT方向)に応力がかかるように試験片を採取し、試験温度95℃、3点曲げの要領で材料耐力の100%及び75%の負荷を与える条件で実施した。評価基準は、360分浸漬後、拡大鏡にて25倍で観察し、材料表面の亀裂の有無で評価した。亀裂のないものを○、100%負荷試験片のみ亀裂発生の場合は△、75%負荷試験片にも亀裂発生の場合は×と評価した。
一方、組成が本発明の範囲内であるが、絞りが20%未満であるNo.3、4、11、12は耐割れ性に劣る。No.3については時効時間が不足したこと、No.4については再結晶組織であること、No.11、12については空冷によるプレス焼入れの冷却速度が低いことが影響した可能性がある。
また、主要成分が本発明の規定を外れるNo.4〜10は、絞りが20%以上で耐割れ性は比較的よいが、押出性(No.5、9)、耐SCC性(No.5、7、10)、強度(No.6、8、9)、最大荷重及び吸収エネルギー(No.6、8、9)のいずれかの特性が劣っている。
3 供試材
4 剛体
Claims (1)
- Mg:0.5〜1.8%(質量%、以下同じ)、Zn:4.0〜8.0%、Ti:0.005〜0.3%、Cu:0.05〜0.6%を含有し、さらに、Mn:0.1〜0.7%、Cr:0.03〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%のうち1種又は2種以上を合計で0.1〜0.4%含有し(但し、Zrを単独で含有する場合は、Zr:0.1〜0.2%を除く。)、残部Al及び不可避不純物からなり、空冷によるプレス焼き入れ後時効処理されたアルミニウム合金押出材であり、これが繊維状組織を有し、かつJIS5号引張試験片にて引張試験を実施したときの破断面の肉厚減少率が20%以上、26.3%以下であることを特徴とする圧壊特性に優れるアルミニウム合金押出材。
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