JP2020164980A - アルミニウム合金押出材からなる自動車のドアビーム - Google Patents

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Abstract

【課題】自動車のドアビームの素材として、これまでより高い強度領域(耐力が460MPa以上)において優れた耐SCC性を備えた7000系アルミニウム合金押出材を提供する。【解決手段】7000系アルミニウム合金押出材が、Zn:7.5〜9.0質量%、Mg:1.3〜2.0質量%、Cu:0.1〜0.7質量%、Si:0.15質量%以下、Fe:0.3質量%以下、Ti:0.005〜0.2質量%、さらにMn,Cr,Zrの1種以上をMn:0.3質量%以下、Cr:0.25質量%以下、Zr:0.25質量%以下の範囲内で0.1〜0.5質量%、残部Al及び不純物からなり、Fe系晶出物を含み、その平均Cu含有量が5.0質量%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、7000系アルミニウム合金押出材からなる自動車のドアビームに関する。
自動車のドアビームは、車体の側面衝突から乗員を守るためにドア内部に前後方向に装着される。このドアビームには耐衝撃吸収性能が要求され、例えばFMVSS(アメリカ連邦自動車安全基準)などの法規では、ドアビームの三点曲げ試験により求められる最大荷重値とエネルギー吸収量に一定の基準が設けられている。
耐衝撃吸収性能の高度化と自動車部品の軽量化を両立させる目的で、ドアビームの材料として、7000系(Al−Zn−Mg系)の高強度アルミニウム合金押出材が用いられている。
特許文献1〜7には、ドアビーム用材料として、高強度で、かつ優れた耐応力腐食割れ性を有するとされる7000系アルミニウム合金押出材が提案されている。しかし、7000系アルミニウム合金押出材は、高強度化するほど応力腐食割れ(以下、SCC)を起こす危険が高くなる。
そのため、現状では、ドアビームの素材として、Zn及びMgを余り高濃度化せず、耐力430MPa程度とした7000系アルミニウム合金押出材が用いられている。しかし、前記FMVSSなどの法規において自動車のドアに対する側突規制がさらに厳格化される中、現行レベルの強度の7000系アルミニウム合金押出材を用いてより高度な耐衝撃吸収性能を実現しようとすると、ドアビームの重量が増加してしまう。
特開平9−268342号公報 特開2007−119904号公報 特開2008−274441号公報 特開2011−144396号公報 特開2014−105389号公報 特開2014−145119号公報 特開2018−90839号公報
ドアビームの重量増加を抑え、かつ耐衝撃吸収性能をより高度化するため、実用可能なドアビームの素材として、より高強度の7000系アルミニウム合金押出材が求められている。
本発明の目的は、自動車のドアビームの素材として、これまでより高い強度領域において優れた耐SCC性を備えた7000系アルミニウム合金押出材を提供することである。
7000系アルミニウム合金には、不純物として少量のFeが混入している。Feは鋳造時に合金中の他の元素と金属間化合物を形成し、鋳塊中にFe系晶出物を生成する。鋳塊中に生成したFe系晶出物は、押出後の材料中にも消滅することなく存在する。
本発明者らは、応力が負荷された状態で腐食環境下で種々の時間保持された7000系アルミニウム合金押出材の表面を顕微鏡観察したところ、Fe系晶出物の周辺のAl母材部分に発生する孔食がSCC発生の要因であるとの知見を得た。Fe系晶出物は粒界にも多く存在し、時間経過に伴い、前記孔食から亀裂が発生し、その亀裂が粒界に伝播し、SCCが進行する。
上記の知見によれば、7000系アルミニウム合金押出材の耐SCC性を改善するには、Fe系晶出物の周辺で孔食の発生を抑制する必要がある。
本発明はこの考え方に基づいてなされたもので、ドアビームの素材が7000系アルミニウム合金押出材であり、Zn:7.5〜9.0質量%、Mg:1.3〜2.0質量%、Cu:0.1〜0.7質量%、Si:0.15質量%以下、Fe:0.3質量%以下、Ti:0.005〜0.2質量%、さらにMn,Cr,Zrの1種以上をMn:0.3質量%以下、Cr:0.25質量%以下、Zr:0.25質量%以下の範囲内で0.1〜0.5質量%、残部Al及び不純物からなり、Fe系晶出物を含み、その平均Cu含有量が5.0質量%以下であることを特徴とする。
上記7000系アルミニウム合金押出材は、Zn及びMgが高濃度化されたことにより、人工時効処理後に高強度(460MPa以上の耐力)を示す。また、Fe系晶出物の平均Cu含有量が5.0質量%以下であり、Fe系晶出物とAl母材部分との間の電位差が抑えられていることにより、Fe系晶出物の周辺に孔食が生じにくく、耐SCC性が改善されている。従って、上記7000系アルミニウム合金押出材からなるドアビームは、Zn及びMgが高濃度化され、高強度を有するにも関わらず、優れた耐SCC性を有する。これにより、ドアビームの重量増加を抑え、かつ耐衝撃吸収性能をより高度化し、又は耐衝撃吸収性能を低下させることなく、さらなる軽量化を達成することができる。
以下、本発明に係るドアビームについて、より具体的に説明する。
ドアビームの素材として用いられる7000系アルミニウム合金押出材の組成は、Zn:7.5〜9.0質量%、Mg:1.3〜2.0質量%、Cu:0.1〜0.7質量%、Si:0.15質量%以下、Fe:0.3質量%以下、Ti:0.005〜0.2質量%、さらにMn,Cr,Zrの1種以上をMn:0.3質量%以下、Cr:0.25質量%以下、Zr:0.25質量%以下の範囲内で0.1〜0.5質量%、残部Al及び不純物からなる。この組成自体は、Zn及びMgが高濃度化されている点を除いて、従来の7000系アルミニウム合金押出材のものと特に変わるところはない。
続いて、この7000系アルミニウム合金押出材に含まれる個々の元素について説明する。
Zn:
ZnはMgとともにMgZnを形成し、7000系アルミニウム合金押出材の強度を向上させる。7000系アルミニウム合金押出材において時効処理後に高い耐力(0.2%耐力)を得るには、Zn含有量は7.5質量%以上が必要である。一方、Zn含有量が9.0質量%を超えると、耐SCC性の低下を抑制できない。従って、Zn含有量は7.5〜9.0質量%の範囲内とする。Zn含有量の下限値は好ましくは7.7質量%、より好ましくは8.0質量%、さらに好ましくは8.1質量%であり、上限値は好ましくは8.8質量%である。
Mg:
MgはZnとともにMgZnを形成し、7000系アルミニウム合金押出材の強度を向上させる。7000系アルミニウム合金押出材において時効処理後に高い耐力を得るには、Mg含有量は1.3質量%以上が必要である。一方、Mg含有量が2.0質量%を超えると、耐SCC性の低下を抑制できず、また変形抵抗の増加により押出性を劣化させる。従って、Mg含有量は1.3〜2.0質量%の範囲内とする。Mg含有量の下限値は好ましくは1.4質量%、上限値は好ましくは1.8質量%である。
MgZnを構成するMgとZnの化学量論比(質量比)は1:5.38である。7000系アルミニウム合金押出材のZn含有量(質量%)をCZnとし、Mg含有量(質量%)をCMgとすると、ZnとMgが化学量論比で存在するとき、CZn=5.38×CMgが成立する。一方、Znが化学量論比より過剰に存在するとき、CZn>5.38×CMgが成立し、そのときの過剰Zn量(EZn)はEZn=CZn−5.38×CMgで計算される。また、Mgが化学量論比より過剰に存在するとき、CZn<5.38×CMgが成立し、そのときの過剰Mg量(EMg)はEMg=CMg−0.186×CZnで計算される。
過剰Zn量(EZn)が多いと、MgZnを形成しないZnが合金中に多く存在することになり、押出材の耐SCC性が低下する。一方、過剰Mg量(EMg)が多いと、MgZnを形成しないMgが合金中に多く存在することになり、変形抵抗の増加により押出性が低下する。上記の観点から、7000系アルミニウム合金押出材において、Zn及びMgは化学量論比に近い含有量であることが好ましく、より具体的には、過剰Zn量(EZn)は1.0質量%以下、過剰Mg量(EMg)は0.5質量%以下であることが好ましい。過剰Zn量(EZn)はより好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。過剰Mg量(EMg)はより好ましくは0.4質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
Cu:
Cuは粒界析出物(MgZn)に固溶することで、粒界析出物とPFZ(無析出帯)との電位差を小さくし、腐食環境下で粒界析出物の優先溶解を抑制し、これにより7000系アルミニウム合金押出材の耐SCC性を改善する。また、Cuは7000系アルミニウム合金押出材の強度を向上させる。しかし、Cu含有量が0.1質量%未満では上記作用が不十分である。一方、Cu含有量が0.7質量%を超えると、逆に耐SCC性を劣化させ、また、変形抵抗の増加により押出性を劣化させ、押出材の溶接割れ性も劣化させる。従って、Cu含有量は0.1〜0.7質量%の範囲とする。Cu含有量の下限値は好ましくは0.2質量%、上限値は好ましくは0.5質量%である。
Ti:
Tiは7000系アルミニウム合金の鋳造時に結晶粒を微細化させる作用がある。しかし、Ti含有量が0.005質量%未満ではその作用が不十分であり、一方、0.2質量%を超えるとその作用が飽和し、かつ粗大な金属間化合物が晶出して押出材の成形性を低下させる。従って、Ti含有量は0.005〜0.2質量%とする。Ti含有量の好ましい上限値は0.05質量%である。
Mn,Cr,Zr:
Mn,Cr,Zrは、均質化処理によってアルミニウム中に微細分散粒子として析出し、再結晶を抑制する効果があり、また再結晶を抑制することで耐SCC性を向上させる効果があり、1種以上が合計で0.1質量%以上添加される。Mn,Cr,Zrの1種以上として、(1)3元素のうちいずれか1種のみ、(2)3元素のうち2種の組み合わせ(MnとCr、MnとZr、又はCrとZr)、又は(3)3元素全ての組み合わせが考えられ、前記(1)〜(3)のいずれでも選択できる。しかし、Mn,Cr,Zrの含有量がそれぞれ0.3質量%、0.25質量%、0.25質量%を超え、又は1種以上の合計含有量が0.5質量%を超えると、押出性が悪くなり、また、押出材の焼き入れ感受性が鋭くなる。従って、Mn,Cr,Zrの1種以上の含有量は、Mn:0.3質量%以下、Cr:0.25質量%以下、Zr:0.25質量%以下の範囲内で、合計が0.1〜0.5質量%の範囲内とする。
このうちZrは、Mn及びCrに比べて7000系アルミニウム合金押出材の焼き入れ感受性を鋭くする作用が小さいことから、0.1〜0.25質量%の範囲で優先的に添加し、必要に応じて補完的にMn及び/又はCrを添加することが好ましい。Zr含有量の好ましい下限値は0.12質量%,より好ましい下限値は0.14質量%であり、好ましい上限値は0.23質量%、より好ましい上限値は0.20質量%である。Cr含有量の好ましい上限値は0.1質量%、より好ましい上限値は0.06質量%である。Mn含有量の好ましい上限値は0.1質量%、より好ましい上限値は0.06質量%である。
Si:
7000系アルミニウム合金には、少量のSiが混入している。SiはMgとともにMgSiを形成し、粒界に析出する。Si含有量が0.15質量%を超えると、MgSiが過剰に形成されてMgが消費され、押出材の強度不足の原因となる。また、Si含有量が0.15質量%を超えると、押出材の表面に焼き付きが生じやすく、押出性を劣化させる。従って、Si含有量は0.15質量%以下(下限値は0質量%)とする。
Fe:
7000系アルミニウム合金には、不純物として少量のFeが混入している。Feは鋳造時に合金中の他の元素と金属間化合物を形成し、鋳塊中に晶出物(Fe系晶出物)を生成する。本発明においてFe系晶出物とは、Al−Fe系、Al−Fe−Si系、Al−Mn−Fe系、A1−Fe−Mn−Si系、Al−Cr−Fe系等、Feを含む晶出物(金属間化合物)を総称する用語である。鋳塊中に生成したFe系晶出物は、押出後の材料(押出材)中にも消滅することなく存在する。
Fe系晶出物が多く晶出すると、7000系アルミニウム合金押出材の靱性が低下する。そのため、Fe含有量は0.3質量%以下とする。Fe含有量の好ましい上限値は0.15質量%である。Fe含有量を制限することでFe系晶出物が減少し、後述するようにFe系晶出物を原因とする孔食を抑制する効果も期待できる。
その他の不純物:
7000系アルミニウム合金を鋳造する際、主要不純物であるSi、Fe以外にも、地金、添加元素の中間合金等、様々な経路から不可避的に不純物が混入する。これらの不純物の混入についても、7000系アルミニウム合金のJIS規格等に基づき、本発明の効果を阻害しない範囲で許容され、好ましくは、個々の元素の含有量が0.05質量%以下、合計含有量が0.15質量%以下である。なお、不純物のうちBについては、Tiの添加に伴いアルミニウム合金中にTi含有量の1/5程度の量で混入するが、含有量は好ましくは0.02質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
Fe系晶出物の平均Cu含有量:
ここで、本発明に係る7000系アルミニウム合金押出材を最も特徴付けるFe系晶出物中の平均Cu含有量について説明する。
先に述べたとおり、7000系アルミニウム合金押出材が腐食環境下に置かれると、Fe系晶出物の周辺のAl母材部分に孔食が発生し、前記孔食から亀裂が発生し、その亀裂が粒界に伝播することで、SCCが進行する。
孔食が発生した7000系アルミニウム合金押出材のFe系晶出物をEDX(エネルギー分散型X線分析装置)で分析し、元素同定を行ったところ、合金成分であるCuがFe系晶出物中に高濃度で含まれていた。Fe系晶出物中にCuが濃縮することでFe系晶出物の電位が上がり、Al母材部分との間で電位差が広がり、それにより腐食環境下でFe系晶出物の周辺に前記孔食が発生しやすい状況となったものと推察される。
一方、SCCの元々の要因である孔食の発生を抑制することで、結果的にSCCの発生を抑制することができると考えられる。そこで、本発明では、Fe系晶出物中の平均Cu含有量を5.0質量%以下に抑制することとした。これにより、Fe系晶出物とAl母材部分との間の電位差を小さくし、Fe系晶出物周辺において孔食の発生を抑制し、ひいてはSCCの発生を抑制することができた。本発明において、Fe系晶出物中のCu含有量(CCu/(Fe+Cu))とは、Fe系晶出物中のFe含有量(CFe)とCu含有量(CCu)の合計を基準(100%)としたときのCu含有量の100分率、すなわちCCu/(CFe+CCu)×100(質量%)を意味する。
Fe系晶出物中の平均Cu含有量を5.0質量%以下に抑制する手段として、7000系アルミニウム合金鋳塊の均質化処理を高温長時間の条件で行うことが挙げられる。490〜550℃の温度条件で4時間以上の均質化処理を行うことで、Fe系晶出物中に高濃度で存在していたCuがAl母材に拡散し、Fe系晶出物中のCu含有量が低下する。Fe系晶出物中の平均Cu含有量を低減するには、均質化処理温度は高温ほど好ましい。しかし、余りに高温では再結晶を抑制する元素(Zr、Cr、Mn)の粒界に対するピン止め作用が低下し、押出材組織の粗大化が生じるおそれがある。従って、均質化処理の温度は500〜540℃の範囲が好ましく、510〜530℃の範囲がより好ましい。また、均質化処理の時間は、Fe系晶出物中の平均Cu含有量を低減するには長いほど好ましいが、余り長いと押出材組織の粗大化が生じるおそれがある。従って、均質化処理の時間は10時間以下が好ましい。従来一般に行われている均質化処理条件(470℃×6時間)では、Fe系晶出物中のCu含有量が十分低下しない。均質化処理後の冷却は、特に限定的ではないが、例えば100〜200℃/hの範囲内の冷却速度で行えばよい。
また、本発明では、7000系アルミニウム合金自体のCu含有量が0.7質量%以下に制限されているが、この点もFe系晶出物中のCu含有量の上昇を抑制し、耐SCC性を改善するのに有効である。
本発明に係る7000系アルミニウム合金押出材は、均質化処理の条件を上記のとおり設定する他は、通常の7000系アルミニウム合金押出材の製造方法で製造できる。本発明に係る7000系アルミニウム合金押出材は、時効処理後に高強度を示すにも関わらず、優れた耐SCC性を示し、ドアビームの高強度化(耐衝撃吸収性能の高度化)、軽量化に貢献し得る。
半連続鋳造して得られた直径155mmの7000系アルミニウム合金ビレットを均熱処理した後、再加熱し、押出温度500℃、押出速度3m/分で押出成形し、押出直後からファン空冷を施し、7000系アルミニウム合金押出材(No.1〜7)を製造した。各押出材の断面形状は厚さ3mm×幅110mmの長方形であり、押出材の冷却速度は、約290℃/分であった。押出材が室温に冷却後、90℃×3時間+140℃×8時間の時効処理を施した。
表1にNo.1〜7の押出材の合金組成、均熱条件を示す。なお、No.1〜6の押出材は、Mgが化学量論比より過剰に存在し、このうちNo.1〜4の押出材はEMg=0.075(質量%)、No.5,6の押出材はEMg=0.203(質量%)である。No.7の押出材は、Znが化学量論比より過剰に存在し、EZn=0.298(質量%)である。
No.1〜7の各押出材を用いて以下の測定を行った。その結果を表1に示す。
耐力の測定:
No.1〜7の各押出材の幅方向中央部から、長手方向が押出方向に平行となるようにJIS13B引張試験片を機械加工により採取した。採取した試験片は各押出材で2個ずつとした。この試験片を用いてJISZ2241の規定に準拠して引張試験を行い、耐力(0.2%耐力)を測定した。クロスヘッドスピードは耐力値に達するまで5.0mm/分とし、その後、10.0mm/分とした。表1に記載したNo.1〜7の耐力値は、2個の試験片で測定された耐力値の平均値とした。耐力値は460MPa以上を合格と評価した。
耐SCC臨界応力の測定:
No.1〜7の各押出材の幅方向中央部から、長手方向が押出方向に垂直となるように幅10mm×長さ50mmのSCC試験片を機械加工で採取した。採取した試験片は、次に説明するSCC試験の各負荷応力ごとに2個ずつとした。
SCC試験は板曲げ試験(JISH8711:2001)の3点負荷方式を採用し、No.1〜7の試験片への負荷応力は90MPa、100MPa、110MPa、120MPaの4段階とした。板曲げ試験に際し、引張応力が最大となる試験片の長手方向中央部凸面にひずみゲージを貼り付け、ヤング率を70×10Paとして、前記負荷応力に対応する歪みを試験片に付加した。
SCC試験に用いる腐食液はCr酸水溶液(蒸留水1リットル当たりNaCl:3g、KCr:30g、CrO:36g)とし、SCCを促進させるため、試験の間、温度を90℃以上に保持した。
負荷応力を負荷した状態で試験片(各負荷応力について2個ずつ)を腐食液中に浸漬し、2時間ごとに取出して目視により割れ発生の有無を観察し、割れの発生がない試験片については再浸漬を行った。この手順をSCC試験開始後16時間まで繰り返した。2個の試験片が共に試験終了まで割れの発生がない最大負荷応力を、その試験片の耐SCC臨界応力と評価した。耐SCC臨界応力は100MPa以上を合格と評価した。
Fe系晶出物のCu含有量の測定:
No.1〜7の各押出材の幅方向中央付近の押出方向に対し垂直な断面をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察した。倍率1000倍のSEM像において、粒径(長径)1μm以上のFe系晶出物粒子の中から、任意に15個以上を選択し、EDXで点分析した。EDX点分析の結果を基に、各粒子ごとにCu含有量(CCu/(Fe+Cu))を計算し、次いでそれらの平均値(各Fe系晶出物粒子のCu含有量の平均値)を求めた。
なお、SEMの観察位置(視野の中心位置)は、前記断面の表面から約100μmの深さとした。SEMは日本電子株式会社製の「JSM−IT100」、EDXは同SEMに搭載された装置である。
Figure 2020164980
表1に示すNo.1〜6の押出材は、合金組成が本発明の規定範囲内である。このうちNo.1,5の押出材は、ビレットの段階で受けた均熱処理の条件が従来レベルで処理温度が低く、Fe系晶出物の平均Cu含有量が5.0質量%を超える。このため、No.1,5の押出材は、Zn及びMgが高濃度で含有され高強度を示すが、SCC臨界応力が低い。
一方、No.2,3,4,6の押出材は、いずれもビレットの段階で高温長時間の均熱処理を受けており、Fe系晶出物の平均Cu含有量が5質量%以下に低減している。No.2,3,4,6の押出材は、いずれも460MPa以上の耐力を有し、かつ100MPa以上のSCC臨界応力を有し、Zn及びMgが高濃度で含有され高強度であるにも関わらず、No.1,5の押出材に比べて耐SCC性が相当改善されている。
なお、No.4の押出材はFe系晶出物のCu含有量が最も低いが、SCC臨界応力がNo.2,3に比べてやや低くなった。これは、No.4の均熱処理の温度が高く、再結晶を抑制する元素(Zr、Cr、Mn)の作用が低下し、押出材組織の粗大化が進んだためではないかと考えられる。
No.7の押出材は、ビレットの段階で高温長時間の均熱処理を受け、Fe系晶出物の平均Cu含有量が5.0質量%以下に低減している。しかし、Zn含有量が多すぎるため、Fe系晶出物の平均Cu含有量を低減させたことによる耐SCC性改善効果が表れていない。

Claims (2)

  1. 7000系アルミニウム合金押出材からなる自動車のドアビームであり、前記7000系アルミニウム合金押出材が、Zn:7.5〜9.0質量%、Mg:1.3〜2.0質量%、Cu:0.1〜0.7質量%、Si:0.15質量%以下、Fe:0.3質量%以下、Ti:0.005〜0.2質量%、さらにMn,Cr,Zrの1種以上をMn:0.3質量%以下、Cr:0.25質量%以下、Zr:0.25質量%以下の範囲内で0.1〜0.5質量%、残部Al及び不純物からなり、Fe系晶出物を含み、その平均Cu含有量が5.0質量%以下であることを特徴とする自動車のドアビーム。
  2. 前記7000系アルミニウム合金押出材において、MgZnの化学量論比より過剰のZn含有量が1.0質量%以下、又は前記化学量論比より過剰のMg含有量が0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載された自動車のドアビーム。
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