JP2000345272A - 衝撃吸収部材 - Google Patents
衝撃吸収部材Info
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- JP2000345272A JP2000345272A JP2000076724A JP2000076724A JP2000345272A JP 2000345272 A JP2000345272 A JP 2000345272A JP 2000076724 A JP2000076724 A JP 2000076724A JP 2000076724 A JP2000076724 A JP 2000076724A JP 2000345272 A JP2000345272 A JP 2000345272A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 Al−Mg−Si系アルミニウム合金押出材
について、寸法精度やコスト面で有利な空冷によるプレ
ス焼入れを前提とし、高強度で、押出軸方向に圧縮した
ときに優れたエネルギー吸収特性を示す衝撃吸収部材を
得る。 【解決手段】 Mg含有量が0.30〜0.70%、M
g2Siのバランス組成よりも過剰のSi含有量が0.
10〜0.50%、総Si量が0.50〜0.70%、
Mn、Cr、Zrのいずれか1種又は2種以上の含有量
が合計で0.10〜0.40%であり、繊維状組織を有
するAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材からな
り、210N/mm2以上の耐力を有し、空冷によるプ
レス焼入れ後時効処理を行ったことを特徴とする衝撃吸
収部材。軸方向に圧縮荷重を受ける自動車フレーム構造
におけるサイドメンバやバンパーステイなどとして好適
である。
について、寸法精度やコスト面で有利な空冷によるプレ
ス焼入れを前提とし、高強度で、押出軸方向に圧縮した
ときに優れたエネルギー吸収特性を示す衝撃吸収部材を
得る。 【解決手段】 Mg含有量が0.30〜0.70%、M
g2Siのバランス組成よりも過剰のSi含有量が0.
10〜0.50%、総Si量が0.50〜0.70%、
Mn、Cr、Zrのいずれか1種又は2種以上の含有量
が合計で0.10〜0.40%であり、繊維状組織を有
するAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材からな
り、210N/mm2以上の耐力を有し、空冷によるプ
レス焼入れ後時効処理を行ったことを特徴とする衝撃吸
収部材。軸方向に圧縮荷重を受ける自動車フレーム構造
におけるサイドメンバやバンパーステイなどとして好適
である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Al−Mg−Si
系アルミニウム合金押出材からなり、圧縮の衝撃荷重を
受けたとき、その衝撃荷重を吸収する作用を持つ衝撃吸
収部材に関し、特に自動車のフレーム構造におけるサイ
ドメンバやバンパーステイなどとして好適な衝撃吸収部
材に関する。
系アルミニウム合金押出材からなり、圧縮の衝撃荷重を
受けたとき、その衝撃荷重を吸収する作用を持つ衝撃吸
収部材に関し、特に自動車のフレーム構造におけるサイ
ドメンバやバンパーステイなどとして好適な衝撃吸収部
材に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車のフレーム構造において、サイド
メンバやバンパーステイなどの衝撃吸収部材として、軽
量化のためアルミニウム合金中空押出材の適用が検討さ
れている。軸方向に圧縮の衝撃荷重を受けるこれらの衝
撃吸収部材には、押出軸方向に荷重を受けたとき形材全
体がオイラー座屈(形材全体がくの字形に曲がる座屈)
を起こさず、かつ圧壊割れを発生することなく蛇腹状に
収縮変形して、安定した高いエネルギー吸収を得るこ
と、及び自動車フレーム構造材として必要な強度(耐
力)を有することが要求される。
メンバやバンパーステイなどの衝撃吸収部材として、軽
量化のためアルミニウム合金中空押出材の適用が検討さ
れている。軸方向に圧縮の衝撃荷重を受けるこれらの衝
撃吸収部材には、押出軸方向に荷重を受けたとき形材全
体がオイラー座屈(形材全体がくの字形に曲がる座屈)
を起こさず、かつ圧壊割れを発生することなく蛇腹状に
収縮変形して、安定した高いエネルギー吸収を得るこ
と、及び自動車フレーム構造材として必要な強度(耐
力)を有することが要求される。
【0003】これまで、衝撃吸収部材として利用できる
アルミニウム合金押出材として、高強度アルミニウム合
金の中では比較的耐食性に優れ、リサイクル性の面でも
他の系のアルミニウム合金より優れているAl−Mg−
Si系アルミニウム合金押出材が多く検討されている
(例えば特開平6−25783号公報、特開平7−54
090号公報、特開平7−118782号公報、特開平
9−256096号公報等)。
アルミニウム合金押出材として、高強度アルミニウム合
金の中では比較的耐食性に優れ、リサイクル性の面でも
他の系のアルミニウム合金より優れているAl−Mg−
Si系アルミニウム合金押出材が多く検討されている
(例えば特開平6−25783号公報、特開平7−54
090号公報、特開平7−118782号公報、特開平
9−256096号公報等)。
【0004】上記公報にも記載されているように、Al
−Mg−Si系アルミニウム合金押出材を衝撃吸収部材
に適用する場合、一般にオンラインによるプレス焼入れ
又はオフラインによる溶体化・焼入れ処理を行った後、
時効処理を施している。ここで時効処理を施すのは、押
出材の強度を向上させ、かつ組織を安定化し使用中に自
然時効が進行して圧壊割れ性が劣化するのを防止するた
めである。
−Mg−Si系アルミニウム合金押出材を衝撃吸収部材
に適用する場合、一般にオンラインによるプレス焼入れ
又はオフラインによる溶体化・焼入れ処理を行った後、
時効処理を施している。ここで時効処理を施すのは、押
出材の強度を向上させ、かつ組織を安定化し使用中に自
然時効が進行して圧壊割れ性が劣化するのを防止するた
めである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】水冷によるプレス焼入
れは、押出後再加熱する溶体化・焼入れ処理とほぼ同等
の特性が得られる利点があるが、押出材の断面形状や肉
厚の差等に基づいて断面で冷却速度に差が生じ、冷却中
に温度分布が不均一となって歪みが発生し、寸法精度が
悪くかつ断面形状の薄肉化が難しくなり、また、そのよ
うな歪みの発生を防止しようとすれば、断面形状の自由
度が小さくなるという問題がある。さらに、空冷に比べ
高コストであるという問題がある。
れは、押出後再加熱する溶体化・焼入れ処理とほぼ同等
の特性が得られる利点があるが、押出材の断面形状や肉
厚の差等に基づいて断面で冷却速度に差が生じ、冷却中
に温度分布が不均一となって歪みが発生し、寸法精度が
悪くかつ断面形状の薄肉化が難しくなり、また、そのよ
うな歪みの発生を防止しようとすれば、断面形状の自由
度が小さくなるという問題がある。さらに、空冷に比べ
高コストであるという問題がある。
【0006】一方、空冷によるプレス焼入れは、水冷に
よるプレス焼入れに比べ低コストであるという利点があ
るが、冷却速度に限りがあるため合金組成によっては高
い強度(特に耐力)が得られず、高い強度が得られた場
合でもエネルギー吸収や耐圧壊割れ性に劣るという問題
があった。そこで、本発明者らは、Al−Mg−Si系
アルミニウム合金押出材について、寸法精度やコスト面
で有利な空冷によるプレス焼入れを前提とし、高強度
(耐力)で、押出軸方向に圧縮したときに優れたエネル
ギー吸収特性を示す(圧壊割れの発生がなく高いエネル
ギー吸収を示す)衝撃吸収部材を得ることを目的として
研究を重ねた結果、空冷によるプレス焼入れに最適な合
金組成を見いだした。
よるプレス焼入れに比べ低コストであるという利点があ
るが、冷却速度に限りがあるため合金組成によっては高
い強度(特に耐力)が得られず、高い強度が得られた場
合でもエネルギー吸収や耐圧壊割れ性に劣るという問題
があった。そこで、本発明者らは、Al−Mg−Si系
アルミニウム合金押出材について、寸法精度やコスト面
で有利な空冷によるプレス焼入れを前提とし、高強度
(耐力)で、押出軸方向に圧縮したときに優れたエネル
ギー吸収特性を示す(圧壊割れの発生がなく高いエネル
ギー吸収を示す)衝撃吸収部材を得ることを目的として
研究を重ねた結果、空冷によるプレス焼入れに最適な合
金組成を見いだした。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る衝撃吸収部
材は、Mg含有量が0.30〜0.70%、Mg2Si
のバランス組成よりも過剰のSi含有量が0.10〜
0.50%、Mn、Cr、Zrのいずれか1種又は2種
以上の含有量が0.1〜0.4%であり、繊維状組織を
有するAl−Mg−Si系合金押出材からなり、210
N/mm2以上の耐力を有し、空冷によるプレス焼入れ
後時効処理を行ったことを特徴とする。なお、上記Al
−Mg−Si系合金は必要に応じてTi:0.005〜
0.2%、Cu:0.10〜0.40%等を含有し、不
可避不純物としてFe、その他の元素を含む。この衝撃
吸収部材は、押出軸方向に衝撃荷重を受けるサイドメン
バやバンパーステイに特に好適であり、また横方向に衝
撃荷重を受けるサイドフレームなど、その他の自動車フ
レーム構造材等としても利用できる。
材は、Mg含有量が0.30〜0.70%、Mg2Si
のバランス組成よりも過剰のSi含有量が0.10〜
0.50%、Mn、Cr、Zrのいずれか1種又は2種
以上の含有量が0.1〜0.4%であり、繊維状組織を
有するAl−Mg−Si系合金押出材からなり、210
N/mm2以上の耐力を有し、空冷によるプレス焼入れ
後時効処理を行ったことを特徴とする。なお、上記Al
−Mg−Si系合金は必要に応じてTi:0.005〜
0.2%、Cu:0.10〜0.40%等を含有し、不
可避不純物としてFe、その他の元素を含む。この衝撃
吸収部材は、押出軸方向に衝撃荷重を受けるサイドメン
バやバンパーステイに特に好適であり、また横方向に衝
撃荷重を受けるサイドフレームなど、その他の自動車フ
レーム構造材等としても利用できる。
【0008】
【発明の実施の形態】衝撃吸収部材として高い強度と優
れたエネルギー吸収特性を得るため、押出材の組織は繊
維状組織(押出による繊維状組織が押出工程以降の熱処
理工程の間においても再結晶することなく、そのまま残
った状態の組織)とするのが望ましく、そのため衝撃吸
収部材に用いるAl−Mg−Si系アルミニウム合金に
は、一般にMn、Cr、Zrなどの遷移元素が添加され
ているが、これらの遷移元素を添加すると合金の焼入れ
感受性が鋭くなる。また、Mg及び過剰Siの量が多く
なると合金の強度が向上するが、やはり焼入れ感受性が
鋭くなる。
れたエネルギー吸収特性を得るため、押出材の組織は繊
維状組織(押出による繊維状組織が押出工程以降の熱処
理工程の間においても再結晶することなく、そのまま残
った状態の組織)とするのが望ましく、そのため衝撃吸
収部材に用いるAl−Mg−Si系アルミニウム合金に
は、一般にMn、Cr、Zrなどの遷移元素が添加され
ているが、これらの遷移元素を添加すると合金の焼入れ
感受性が鋭くなる。また、Mg及び過剰Siの量が多く
なると合金の強度が向上するが、やはり焼入れ感受性が
鋭くなる。
【0009】水冷によるプレス焼入れや溶体化・焼入れ
処理を行う場合は、多少焼入れ感受性が鋭くても問題な
く焼きが入り、その後の時効処理により高い強度を得る
ことができる。しかし、空冷によるプレス焼入れでは、
焼入れ感受性が鋭くなるとその後の時効処理を行っても
高い強度が得られなくなる。つまり、強度向上を目的と
して合金元素を添加しても、それが逆に強度を低下させ
ることにもなりかねない。本発明では、空冷によるプレ
ス焼入れを行った後、時効処理により高い強度と優れた
エネルギー吸収特性を得るには、上記各元素を添加する
ことによるプラスの作用効果は必要であるが、同時に焼
入れ感受性を鋭くさせないことが必須であるとの観点か
ら、特に空冷によるプレス焼入れを行う衝撃吸収部材に
ついて最適の合金組成を定めたものである。以下、本発
明に係る衝撃吸収部材を構成する押出材の組成等につい
て説明する。
処理を行う場合は、多少焼入れ感受性が鋭くても問題な
く焼きが入り、その後の時効処理により高い強度を得る
ことができる。しかし、空冷によるプレス焼入れでは、
焼入れ感受性が鋭くなるとその後の時効処理を行っても
高い強度が得られなくなる。つまり、強度向上を目的と
して合金元素を添加しても、それが逆に強度を低下させ
ることにもなりかねない。本発明では、空冷によるプレ
ス焼入れを行った後、時効処理により高い強度と優れた
エネルギー吸収特性を得るには、上記各元素を添加する
ことによるプラスの作用効果は必要であるが、同時に焼
入れ感受性を鋭くさせないことが必須であるとの観点か
ら、特に空冷によるプレス焼入れを行う衝撃吸収部材に
ついて最適の合金組成を定めたものである。以下、本発
明に係る衝撃吸収部材を構成する押出材の組成等につい
て説明する。
【0010】Mg、Si MgとSiは結合してMg2Siを形成し、合金強度を
向上させる。自動車フレーム構造材として必要な強度を
得るためには、Mgは0.30%以上の添加が必要であ
る。しかし、0.70%を越えて添加されると焼入れ感
受性が鋭くなり、空冷によるプレス焼入れで焼きが入ら
ず、必要な強度が出なくなる。従って、Mg含有量は
0.30〜0.70%とする。より望ましい範囲は0.
40〜0.60%、さらに望ましくは0.45〜0.5
5%である。一方、過剰Si量(Mg2Siのバランス
組成よりも過剰のSiであり、「過剰Si量(%)=総
Si量−0.578×Mg量」で定義される)が0.10%
より少ないと必要な強度が得られず、これが0.50%
を越えると焼入れ感受性が鋭くなり、空冷によるプレス
焼入れで焼きが入らず、必要な強度が出なくなる。従っ
て、過剰Siの含有量は0.10〜0.50%とする。
このMg量及び過剰Siの範囲内で、高い強度が得られ
焼入れ感受性が余り鋭くならない範囲として、総Si量
は0.5〜0.7%が特に望ましい。また、過剰Si量
のより望ましい範囲は0.22〜0.40%である。
向上させる。自動車フレーム構造材として必要な強度を
得るためには、Mgは0.30%以上の添加が必要であ
る。しかし、0.70%を越えて添加されると焼入れ感
受性が鋭くなり、空冷によるプレス焼入れで焼きが入ら
ず、必要な強度が出なくなる。従って、Mg含有量は
0.30〜0.70%とする。より望ましい範囲は0.
40〜0.60%、さらに望ましくは0.45〜0.5
5%である。一方、過剰Si量(Mg2Siのバランス
組成よりも過剰のSiであり、「過剰Si量(%)=総
Si量−0.578×Mg量」で定義される)が0.10%
より少ないと必要な強度が得られず、これが0.50%
を越えると焼入れ感受性が鋭くなり、空冷によるプレス
焼入れで焼きが入らず、必要な強度が出なくなる。従っ
て、過剰Siの含有量は0.10〜0.50%とする。
このMg量及び過剰Siの範囲内で、高い強度が得られ
焼入れ感受性が余り鋭くならない範囲として、総Si量
は0.5〜0.7%が特に望ましい。また、過剰Si量
のより望ましい範囲は0.22〜0.40%である。
【0011】Mn、Cr、Zr Mn、Cr、Zrは押出材に繊維状組織を形成して耐圧
壊割れ性を向上させる作用があり、これらの中から1種
又は2種以上が合計で0.10〜0.40%の範囲で添
加される。これらの遷移元素の添加量が0.10%未満
では繊維状組織とならないか、表面再結晶層が厚く出て
圧壊割れが発生し、0.40%を越えると空冷によるプ
レス焼入れで焼きが入らず、自動車フレーム構造材とし
て必要な強度が出なくなる。このとき各元素の望ましい
範囲は、Mn:0.001〜0.35%、Cr:0.0
01〜0.20%、Zr:0.001〜0.20%であ
る。また、これらの遷移元素の合計添加量のより望まし
い範囲は0.20〜0.30%、このとき各元素の望ま
しい範囲はMn:0.05〜0.25%、Cr:0.0
01〜0.15%、Zr:0.05〜0.18%、遷移
元素の合計添加量のさらに望ましい範囲は0.22〜
0.28%、このとき各元素の望ましい範囲はMn:
0.10〜0.20%、Cr:0.001〜0.10
%、Zr:0.07〜0.14%である。
壊割れ性を向上させる作用があり、これらの中から1種
又は2種以上が合計で0.10〜0.40%の範囲で添
加される。これらの遷移元素の添加量が0.10%未満
では繊維状組織とならないか、表面再結晶層が厚く出て
圧壊割れが発生し、0.40%を越えると空冷によるプ
レス焼入れで焼きが入らず、自動車フレーム構造材とし
て必要な強度が出なくなる。このとき各元素の望ましい
範囲は、Mn:0.001〜0.35%、Cr:0.0
01〜0.20%、Zr:0.001〜0.20%であ
る。また、これらの遷移元素の合計添加量のより望まし
い範囲は0.20〜0.30%、このとき各元素の望ま
しい範囲はMn:0.05〜0.25%、Cr:0.0
01〜0.15%、Zr:0.05〜0.18%、遷移
元素の合計添加量のさらに望ましい範囲は0.22〜
0.28%、このとき各元素の望ましい範囲はMn:
0.10〜0.20%、Cr:0.001〜0.10
%、Zr:0.07〜0.14%である。
【0012】本発明合金では焼入れ感受性を鋭くさせな
いため、これらの遷移元素の添加量は空冷によるプレス
焼入れで押出材に繊維状組織が維持できるぎりぎりの量
としている。そのため、もしプレス焼入れでなくオフラ
インでの溶体化・焼入れ処理を行った場合は、溶体化処
理時の加熱により再結晶化が進んでしまう。つまり、本
発明の合金組成にとって、プレス焼入れは繊維状組織を
形成させるための必須の要件である。そして、この繊維
状組織は押出材の断面全体に形成されているのが望まし
く、表面再結晶層が形成された場合でも、自動車フレー
ム構造材のように厚さ1〜5mmの押出材であれば、押
出材表面から深さ500μm程度(望ましくは300μ
m)以下とし、かつ繊維状組織の厚みが全体厚さの1/
2程度以上とする必要がある。これは、再結晶粒は繊維
状組織に比べて結晶粒径が大きいことと、特に空冷によ
るプレス焼入れの場合は冷却速度が水冷に比べて小さ
く、冷却過程で結晶粒界に析出する析出物が多くなるこ
とから、表面再結晶粒の粒界に歪みが集中して割れが発
生しやすくなるためである。なお、Mn等の遷移元素の
添加量が上記範囲より少ないと、空冷によるプレス焼入
れでは表面再結晶層の厚さを500μm以下にすること
が難しくなる。
いため、これらの遷移元素の添加量は空冷によるプレス
焼入れで押出材に繊維状組織が維持できるぎりぎりの量
としている。そのため、もしプレス焼入れでなくオフラ
インでの溶体化・焼入れ処理を行った場合は、溶体化処
理時の加熱により再結晶化が進んでしまう。つまり、本
発明の合金組成にとって、プレス焼入れは繊維状組織を
形成させるための必須の要件である。そして、この繊維
状組織は押出材の断面全体に形成されているのが望まし
く、表面再結晶層が形成された場合でも、自動車フレー
ム構造材のように厚さ1〜5mmの押出材であれば、押
出材表面から深さ500μm程度(望ましくは300μ
m)以下とし、かつ繊維状組織の厚みが全体厚さの1/
2程度以上とする必要がある。これは、再結晶粒は繊維
状組織に比べて結晶粒径が大きいことと、特に空冷によ
るプレス焼入れの場合は冷却速度が水冷に比べて小さ
く、冷却過程で結晶粒界に析出する析出物が多くなるこ
とから、表面再結晶粒の粒界に歪みが集中して割れが発
生しやすくなるためである。なお、Mn等の遷移元素の
添加量が上記範囲より少ないと、空冷によるプレス焼入
れでは表面再結晶層の厚さを500μm以下にすること
が難しくなる。
【0013】Cu CuはAl−Mg−Si系アルミニウム合金の強度を高
め、耐応力腐食割れ性を改善する作用があり、必要に応
じて添加される。しかし、0.10%未満では作用が不
十分であり、0.40%を越えると押出性及び一般耐食
性が低下するので、含有量は0.10〜0.40%が望
ましい。より望ましい範囲は0.15〜0.35%、さ
らに望ましい範囲は0.18〜0.30%である。 Ti Tiは、鋳塊組織を微細化する作用があり、適宜添加さ
れる。しかし、0.005%より少ないと微細化の効果
が十分でなく、0.2%より多いと飽和して巨大化合物
が発生してしまう。従って、Tiの含有量は0.005
〜0.2%とする。より望ましい範囲は0.01〜0.
10%、さらに望ましい範囲は0.015〜0.050
%である。
め、耐応力腐食割れ性を改善する作用があり、必要に応
じて添加される。しかし、0.10%未満では作用が不
十分であり、0.40%を越えると押出性及び一般耐食
性が低下するので、含有量は0.10〜0.40%が望
ましい。より望ましい範囲は0.15〜0.35%、さ
らに望ましい範囲は0.18〜0.30%である。 Ti Tiは、鋳塊組織を微細化する作用があり、適宜添加さ
れる。しかし、0.005%より少ないと微細化の効果
が十分でなく、0.2%より多いと飽和して巨大化合物
が発生してしまう。従って、Tiの含有量は0.005
〜0.2%とする。より望ましい範囲は0.01〜0.
10%、さらに望ましい範囲は0.015〜0.050
%である。
【0014】不可避不純物 不可避不純物のうちFeはアルミニウム地金に最も多く
含まれる不純物であり、0.35%を超えて合金中に存
在すると鋳造時に粗大な金属間化合物を晶出し、合金の
機械的性質を損なう。従って、Feの含有量は0.35
%以下に規制する。望ましくは0.30%以下であり、
さらに0.25%以下が望ましい。また、アルミニウム
合金を鋳造する際には地金、添加元素の中間合金等様々
な経路より不純物が混入する。混入する元素は様々であ
るが、Fe以外の不純物は単体で0.05%以下、総量
で0.15%以下であれば合金の特性にほとんど影響を
及ぼさない。従って、これらの不純物は単体で0.05
%以下、総量で0.15%以下とする。なお、不純物の
うちBについてはTiの添加に伴い合金中にTi含有量
の1/5程度の量で混入するが、より望ましい範囲は
0.02%以下、さらに0.01%以下が望ましい。
含まれる不純物であり、0.35%を超えて合金中に存
在すると鋳造時に粗大な金属間化合物を晶出し、合金の
機械的性質を損なう。従って、Feの含有量は0.35
%以下に規制する。望ましくは0.30%以下であり、
さらに0.25%以下が望ましい。また、アルミニウム
合金を鋳造する際には地金、添加元素の中間合金等様々
な経路より不純物が混入する。混入する元素は様々であ
るが、Fe以外の不純物は単体で0.05%以下、総量
で0.15%以下であれば合金の特性にほとんど影響を
及ぼさない。従って、これらの不純物は単体で0.05
%以下、総量で0.15%以下とする。なお、不純物の
うちBについてはTiの添加に伴い合金中にTi含有量
の1/5程度の量で混入するが、より望ましい範囲は
0.02%以下、さらに0.01%以下が望ましい。
【0015】本発明では、上記の組成を有する押出材に
ついて、空冷によるプレス焼入れ後時効処理を行う。時
効処理後の強度(耐力)は自動車フレーム構造材として
必要な強度である210N/mm2以上とする。この強
度は上記組成の押出材であれば、空冷によるプレス焼入
れ後時効処理を行って出せる強度であるが、上記組成を
外れるとその強度が出なくなるか(エネルギー吸収も低
下する)、繊維状組織が形成されずエネルギー吸収特性
に劣るようになる。耐力の望ましい範囲は220N/m
m2以上である。
ついて、空冷によるプレス焼入れ後時効処理を行う。時
効処理後の強度(耐力)は自動車フレーム構造材として
必要な強度である210N/mm2以上とする。この強
度は上記組成の押出材であれば、空冷によるプレス焼入
れ後時効処理を行って出せる強度であるが、上記組成を
外れるとその強度が出なくなるか(エネルギー吸収も低
下する)、繊維状組織が形成されずエネルギー吸収特性
に劣るようになる。耐力の望ましい範囲は220N/m
m2以上である。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。D
C鋳造により、表1に示す成分組成のAl−Mg−Si
系アルミニウム合金ビレットを溶製し、550℃×4h
rの均熱処理を行った。続いて、押出温度500℃、押
出速度5m/分の条件で押出加工を行い、押出直後位置
で空冷によるプレス焼入れ(ファン空冷(冷却速度:約
190℃/min))を行い、図1に示すような中空断
面の押出材(長辺が70mm、短辺が50mm、肉厚が
2mm)を得た。ついで、この押出材に対し190℃×
3時間の時効処理を施し、供試材とした。この供試材の
断面の長辺側及び短辺側の中央部の外側表面及び内側表
面からの再結晶層厚を測定して8箇所の平均値を求め
た。その結果を表1にあわせて示す。
C鋳造により、表1に示す成分組成のAl−Mg−Si
系アルミニウム合金ビレットを溶製し、550℃×4h
rの均熱処理を行った。続いて、押出温度500℃、押
出速度5m/分の条件で押出加工を行い、押出直後位置
で空冷によるプレス焼入れ(ファン空冷(冷却速度:約
190℃/min))を行い、図1に示すような中空断
面の押出材(長辺が70mm、短辺が50mm、肉厚が
2mm)を得た。ついで、この押出材に対し190℃×
3時間の時効処理を施し、供試材とした。この供試材の
断面の長辺側及び短辺側の中央部の外側表面及び内側表
面からの再結晶層厚を測定して8箇所の平均値を求め
た。その結果を表1にあわせて示す。
【0017】
【表1】
【0018】供試材よりJIS5号試験片を採取し、J
IS Z 2241に準拠して引張試験を行った。その結
果を表2に示す。また、供試材の静的な軸圧壊試験を行
った。供試材の長さは200mmで、アムスラー試験機
にて図2に示すように軸方向に静的圧縮荷重を加え、こ
れを100mm圧縮して荷重−変位曲線を得、最大荷重
と100mmまでの吸収エネルギーを求めた。その試験
結果も表2にあわせて示す。なお、圧壊割れ性の評価は
目視にて行い、開口割れの発生していないものを○、開
口割れの発生したものを×と評価した。また、総合評価
として、耐力(σ0.2)が210N/mm2以上、か
つ圧壊割れ性にも優れるものを○、いずれかが劣るもの
を×と評価した。
IS Z 2241に準拠して引張試験を行った。その結
果を表2に示す。また、供試材の静的な軸圧壊試験を行
った。供試材の長さは200mmで、アムスラー試験機
にて図2に示すように軸方向に静的圧縮荷重を加え、こ
れを100mm圧縮して荷重−変位曲線を得、最大荷重
と100mmまでの吸収エネルギーを求めた。その試験
結果も表2にあわせて示す。なお、圧壊割れ性の評価は
目視にて行い、開口割れの発生していないものを○、開
口割れの発生したものを×と評価した。また、総合評価
として、耐力(σ0.2)が210N/mm2以上、か
つ圧壊割れ性にも優れるものを○、いずれかが劣るもの
を×と評価した。
【0019】
【表2】
【0020】表2に示すように、本発明に規定する組成
範囲内の合金(No.1〜4)は、空冷によるプレス焼
入れであっても高い耐力、優れたエネルギー吸収特性
(圧壊割れなし、高いエネルギー吸収)を示す。一方、
組成が本発明の規定を満たさない合金(No.5〜1
0)は、耐力が自動車フレーム構造材として必要な強度
である210N/mm2に達しないか、達したもの(N
o.10)は圧壊割れ性が劣り、耐力が高い割りにエネ
ルギー吸収が低くなっている。
範囲内の合金(No.1〜4)は、空冷によるプレス焼
入れであっても高い耐力、優れたエネルギー吸収特性
(圧壊割れなし、高いエネルギー吸収)を示す。一方、
組成が本発明の規定を満たさない合金(No.5〜1
0)は、耐力が自動車フレーム構造材として必要な強度
である210N/mm2に達しないか、達したもの(N
o.10)は圧壊割れ性が劣り、耐力が高い割りにエネ
ルギー吸収が低くなっている。
【0021】
【発明の効果】本発明によれば、Al−Mg−Si系ア
ルミニウム合金押出材について空冷によるプレス焼入れ
後時効処理を行うことで、高強度(耐力)で、優れたエ
ネルギー吸収特性を示す衝撃吸収部材を得ることができ
る。また、本発明によれば、空冷によるプレス焼入れで
あるため、水冷に比べ、寸法精度やコスト面で有利な衝
撃吸収部材を得ることができる。
ルミニウム合金押出材について空冷によるプレス焼入れ
後時効処理を行うことで、高強度(耐力)で、優れたエ
ネルギー吸収特性を示す衝撃吸収部材を得ることができ
る。また、本発明によれば、空冷によるプレス焼入れで
あるため、水冷に比べ、寸法精度やコスト面で有利な衝
撃吸収部材を得ることができる。
【図1】 実施例に用いた押出材の断面形状を示す図で
ある。
ある。
【図2】 実施例の軸圧壊試験を説明する図(圧壊前、
圧壊後)である。
圧壊後)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C22F 1/00 601 C22F 1/00 601 612 612 624 624 626 626 630 630A 630B 684 684Z 692 692A
Claims (2)
- 【請求項1】 Mg含有量が0.30〜0.70%(質
量%、以下同じ)、Mg2Siのバランス組成よりも過
剰のSi含有量が0.10〜0.50%、Mn、Cr、
Zrのいずれか1種又は2種以上の含有量が合計で0.
10〜0.40%であり、繊維状組織を有するAl−M
g−Si系アルミニウム合金押出材からなり、210N
/mm2以上の耐力を有し、空冷によるプレス焼入れ後
時効処理を行ったことを特徴とする衝撃吸収部材。 - 【請求項2】 総Si量が0.50〜0.70%である
ことを特徴とする請求項1に記載された衝撃吸収部材。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9662299 | 1999-04-02 | ||
JP11-96622 | 1999-04-02 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP11098613A Division JP3073197B1 (ja) | 1999-04-02 | 1999-04-06 | 自動車のフレーム構造における衝撃吸収部材 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000345272A true JP2000345272A (ja) | 2000-12-12 |
Family
ID=14169953
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000076724A Pending JP2000345272A (ja) | 1999-04-02 | 2000-03-17 | 衝撃吸収部材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2000345272A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
FR2917428A1 (fr) * | 2007-06-18 | 2008-12-19 | Alcan Int Ltd | Procede de fabrication d'un demi-produit en alliage d'aluminium notamment pour structure de vehicule automobile |
EP3097216A4 (en) * | 2014-01-21 | 2017-11-01 | Arconic Inc. | 6xxx aluminum alloys |
-
2000
- 2000-03-17 JP JP2000076724A patent/JP2000345272A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
FR2917428A1 (fr) * | 2007-06-18 | 2008-12-19 | Alcan Int Ltd | Procede de fabrication d'un demi-produit en alliage d'aluminium notamment pour structure de vehicule automobile |
EP2017364A2 (fr) * | 2007-06-18 | 2009-01-21 | Alcan International Ltd. | Procede de fabrication d'un demi-produit en alliage d'aluminium notamment pour structure de vehicule automobile |
EP2017364A3 (fr) * | 2007-06-18 | 2009-06-17 | Alcan International Ltd. | Procede de fabrication d'un demi-produit en alliage d'aluminium notamment pour structure de vehicule automobile |
EP3097216A4 (en) * | 2014-01-21 | 2017-11-01 | Arconic Inc. | 6xxx aluminum alloys |
US10190196B2 (en) | 2014-01-21 | 2019-01-29 | Arconic Inc. | 6XXX aluminum alloys |
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