JP6480667B2 - 魚節微粉末入り液体調味料及びその風味改善方法、その製造方法 - Google Patents

魚節微粉末入り液体調味料及びその風味改善方法、その製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、魚節微粉末入り液体調味料及びその風味改善方法、その製造方法に関するものである。
近年、液体調味料には幅広い用途が求められており、一つの液体調味料であっても多くの用途に用いることが可能なものは多い。例えば、市販のつゆ商品は、1つの商品であっても水との配合率(希釈率)を変えるのみで、素麺などの冷たい素材に対して「つけつゆ」として使用でき、うどんやそばなどの温かい素材に対する「かけつゆ」として使用できるため、多種の用途に使用可能である。
これらの液体調味料については、希釈率を変更しても美味しいばかりでなく、喫食時の温度が変わってもその美味しさが維持されることが求められているが、当業者においてはその処方の設計の難易度が高い。
また、「鍋つゆ」等についても、食事の途中で水分を含む多様な食材(野菜類や魚肉類)が追加され液が次第に希釈されるが、食事の開始から終了まで美味しく食べ続けられることが望まれている。鍋つゆのフレーバーは近年多様化が進んでおり、鍋の用途のみならず、つゆ同様に冷たい素材にかけて夏場でも美味しく食べられる用途の消費者への提案は、当業者において当然考えられるべきところである。
しかしながら、上記のようにあらゆる用途に対応可能な液体調味料であっても、その処方の設計により、冷料理に対する適性は高いが温料理に対する適性が低い場合や、液体調味料の中味成分が濃い状態では適性が高いが、希釈されてくると極端に適性が低下する場合などがあり、いくつかの課題を抱えているという実情がある。
さらに、液体調味料は、マイクロフィルトレーションや加熱殺菌などの工程を経て製造されることにより、微生物汚染のリスクを低減したうえで消費者に届けられている。しかし、最も簡単に利用できる加熱殺菌工程は、美味しさの観点で品質の劣化を伴い、液体調味料の多用途へのニーズへの対応を阻害する一因となっている。
特に、うどんやそば、鍋などの温料理に上記のような液体調味料を使用する場合、冷料理に使用する場合に比較して、甘味を中心とした風味バランスが崩れて後味が悪化しやすいほか、香りの立ちやすさに起因して劣化臭をより感じやすいという問題点がある。
ところで、「つゆ」においては、魚節粉末を含有させることで香りや旨味を補ったつゆが従来提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。なお、特許文献1においては、粒径が60μm以上である粗い魚節粉末を含有させた場合につゆの食感がざらつくことを指摘しており(段落0005参照)、この点を考慮して粒径が50μm以下である細かい魚節微粉末を含有させることが提案されている。具体的にいうと、例えば特許文献3においては、粒径が50μm以下の部分が100%で、かつ粒径4μm以上の部分が80%以上からなる魚節微粉末を含有させたつゆが開示されている。そして特許文献3によると、つゆの風味が向上する旨が記載されている。しかしながら、これら微粉末において、上記のような問題を解決しうる方法が記載されているわけではない。
特開平8−308526号公報 実開平1−134484号公報 特許第3397936号公報
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、用途に応じて希釈率を変更したときでも、べたついた甘味や加熱劣化臭が抑制されるとともに魚節の香味や旨味を充分に味わうことができるため、風味に優れかつ多用途化に向いた魚節微粉末入り液体調味料及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、液体調味料の風味を改善するのに有効な方法を提供することにある。
そこで本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、液体調味料に魚節を利用する場合において、魚節を微細化するとともにその粒度及び含有量を糖類の含有量との比率を考慮して適正化すること、さらにはpH条件を適正化することで、あらゆる用途において、糖類に由来するべたついた甘味による後味の低下といった問題が起こりにくくなることを新規に知見した。また、魚節微粉末を利用することで加熱殺菌時の品質の劣化が抑制されることを見出し、特に糖類と醤油とを併用する場合に起こりやすい風味の劣化といった問題に対して有効であることを新規に知見した。そして、本発明者らは上記の知見に基づいてさらに鋭意研究を進めることにより、幸いにも下記の発明を完成させるに至ったのである。
上記の課題を解決するための手段[1]〜[11]を以下に列挙する。
[1]糖類及び魚節微粉末を含有し加熱殺菌工程を経て製造される液体調味料であって、前記魚節微粉末は、50%積算径(d50;メジアン径)が0.05μm以上15μm以下であるという条件、及び、90%積算径(d90)が0.2μm以上90μm以下であるという条件のうちの少なくとも一方を満たすとともに、 前記魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が0.001質量%以上0.05質量%未満であり、前記魚節微粉末1質量部当たりの前記糖類の含有量が160質量部以上16000質量部以下であり、pHが4.0以上6.8以下であることを特徴とする魚節微粉末入り液体調味料。
]前記糖類が砂糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、水あめ、異性化糖、転化糖、キシリトール、ソルビトール及びパラチノースから選択される少なくとも1種類であり、前記糖類の液体調味料当たりの含有比率が2質量%以上30質量%以下であることを特徴とする手段に記載の魚節微粉末入り液体調味料。
]前記加熱殺菌工程は、60℃以上かつ10秒以上の条件で加熱殺菌を行うものであることを特徴とする手段1または2に記載の魚節微粉末入り液体調味料。
]前記液体調味料は、さらに醤油を含有することを特徴とする手段に記載の魚節微粉末入り液体調味料。
]前記液体調味料は、レトルト調味料であることを特徴とする手段3または4に記載の魚節微粉末入り液体調味料。
]前記液体調味料は、温料理用であることを特徴とする手段1乃至のいずれか1項に記載の魚節微粉末入り液体調味料。
]糖類及び魚節微粉末を含有し加熱殺菌工程を経て製造される液体調味料において、50%積算径(d50;メジアン径)が0.05μm以上15μm以下であるという条件、及び、90%積算径(d90)が0.2μm以上90μm以下であるという条件のうちの少なくとも一方を満たすように前記魚節微粉末を含有させるとともに、前記魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が0.001質量%以上0.05質量%未満、前記魚節微粉末1質量部当たりの前記糖類の含有量が160質量部以上16000質量部以下、pHが4.0以上6.8以下となるように設定することで、前記糖類に由来するべたついた甘味を抑制して後味を向上させることを特徴とする、魚節微粉末入り液体調味料の風味改善方法。
]糖類及び魚節微粉末を含有し加熱殺菌工程を経て製造される液体調味料において、50%積算径(d50;メジアン径)が0.05μm以上15μm以下であるという条件、及び、90%積算径(d90)が0.2μm以上90μm以下であるという条件のうちの少なくとも一方を満たすように前記魚節微粉末を含有させるとともに、前記魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が0.001質量%以上0.05質量%未満、前記魚節微粉末1質量部当たりの前記糖類の含有量が160質量部以上16000質量部以下、pHが4.0以上6.8以下となるように設定することで、加熱劣化臭を抑制することを特徴とする、魚節微粉末入り液体調味料の風味改善方法。
]魚節を湿式微粉砕機により微粉砕化し魚節微粉末を得る微粉砕化処理工程と、糖類及び前記魚節微粉末を含む混合物を加熱殺菌する加熱殺菌工程とを含み、前記微粉砕化処理工程では、50%積算径(d50;メジアン径)が0.05μm以上15μm以下であるという条件、及び、90%積算径(d90)が0.2μm以上90μm以下であるという条件のうちの少なくとも一方を満たす前記魚節微粉末を作製し、前記加熱殺菌工程では、前記魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が0.001質量%以上0.05質量%未満であり、前記魚節微粉末1質量部当たりの前記糖類の含有量が160質量部以上16000質量部以下であり、pHが4.0以上6.8以下である前記混合物を加熱殺菌することを特徴とする魚節微粉末入り液体調味料の製造方法。
10]前記湿式微粉砕機がビーズミルであることを特徴とする手段に記載の魚節微粉末入り液体調味料の製造方法。
11]前記加熱殺菌工程では、60℃以上かつ10秒以上の条件で加熱殺菌を行うことを特徴とする手段9または10に記載の魚節微粉末入り液体調味料の製造方法。
以上詳述したように、請求項1〜6、9〜11に記載の発明によると、用途に応じて希釈率を変更したときでも、べたついた甘味や加熱劣化臭が抑制されるとともに魚節の香味や旨味を充分に味わうことができるため、風味に優れかつ多用途化に向いた魚節微粉末入り液体調味料及びその製造方法を提供することができる。請求項に記載の発明によると、糖類に由来するべたついた甘味を抑制して後味を向上させることで、液体調味料の風味を改善することができる方法を提供することができる。また、請求項に記載の発明によると、加熱劣化臭を抑制することで、液体調味料の風味を改善することができる方法を提供することができる。
本発明を具体化した実施形態にて行った評価試験の結果を示す表1 同じく評価試験の結果を示す表2。 同じく評価試験の結果を示す表3。
以下、本発明の魚節微粉末入り液体調味料及びその風味改善方法について詳細に説明する。
本発明の「液体調味料」は、糖類を含有する液体調味料に魚節微粉末を添加してなる液体調味料(魚節微粉末入り液体調味料)である。本発明の液体調味料の具体例としては、つゆ類、たれ類、鍋用つゆ、その他の麺用つゆなどを挙げることができる。また、本発明の液体調味料は、上記のようなつゆ類、たれ類等のほか、具材入り米飯用調味料などにも適用可能である。特に、つゆ類や鍋つゆ類は、使用者のニーズに応じて、その希釈率や温度を変化させることが多く、その変化に伴い風味適正の問題が起こりやすいため、この種の液体調味料に本発明を適用することが好ましい。
ここで、液体調味料を構成しうる成分としては、例えば、旨味成分、塩味成分、甘味成分、酸味成分などがあり、具体的には出汁抽出液、食塩、糖類、醤油、食酢、油脂類、柑橘類、エキス類などがある。とりわけ、つゆ類や鍋つゆ類に代表される醤油入りの液体調味料においては、保存中に出汁の風味が徐々に減少していくという傾向があるので、本発明はこの種の液体調味料として具体化されるのが好適である。なお、醤油入りの液体調味料における醤油の含有量は特に限定されず使用時の希釈率に応じて適宜選択されうるが、例えば液体調味料当たり5質量%以上、好ましくは10質量%以上であることがよい。ちなみに、醤油としては、例えば、濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、再仕込醤油、白醤油等が好適例として挙げられる。
ところで、本発明の魚節微粉末入り液体調味料は、温かい料理及び冷たい料理の如何を問わず使用されることができる。ただし、温料理においては、希釈などの影響による風味バランスの崩れに由来し、甘味が強くなりすぎるという問題が発生するほか、料理の温度が高いことに起因して劣化臭が喫食時に感知されやすくなるという問題が発生する。このような事情から、本発明の魚節微粉末入り液体調味料は、とりわけ温料理に利用されることが好適である。ここでいう「温料理」とは、一般的に、30℃以上の温度で提供されるものをいう。その具体例としては、うどんやそば等の麺類のかけ汁として提供されるつゆ類、通常火にかけて温めながら喫食する鍋つゆ類などが挙げられる。
本発明は、糖類を含有する液体調味料に広く適用されるが、甘味に影響を与えやすい砂糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、水あめ、異性化糖、転化糖、キシリトール、ソルビトール、パラチノース等といった低甘味度甘味料のうちから選択される少なくとも1種類の糖類を含有する液体調味料に適用されることが好ましい。先に挙げた糖類は、他の糖類に比較してべたついた甘味となる性質があり、調味料の風味バランスが崩れると、後味の悪化を招くので、本発明はこれら糖類を含有する液体調味料に適用されることがより好ましい。
ここで「甘味度」とは、砂糖(ショ糖)1gを1とした場合の甘味料1g当りの甘味強度をいうと定義する。「低甘味度甘味料」とは、甘味度の低い甘味料のことを指し、具体的には砂糖の甘さと比較して同程度あるいはそれ以下のものを指す。なお、糖類の有効量は、この甘味度を指標として、適宜設計すればよい。糖類としての低甘味度甘味料の含有量は特に限定されず、用途に応じて任意に変更可能であるが、例えば糖類の液体調味料当たりの含有比率は、2質量%以上30質量%以下であることが好適であり、特に6質量%以上20質量%以下であることがより好適である。即ち、当該含有比率が2質量%未満であると、そもそも甘味が足りず好ましい後味を付与できないからであり、30質量%超であると、元々の甘味が強すぎて甘味を十分に抑制できないからである。
本発明の液体調味料に添加されている「魚節微粉末」は、通常よくある魚節粉末と比べてかなり粒子径の小さい微細な粉末の集合体からなる。このような粉末の集合体としての大きさ(粒子径)を論ずるにあたり、本発明ではその大きさ(粒子径)毎の存在比率の分布(即ち粒度分布)をもって表現している。ここで「n%積算径」といった場合には、例えば従来公知のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて、魚節微粉末を含むスラリー中の固形分の粒子径分布を測定したときに、粒子径の頻度(%)を小さいほうから累積してその累積がn%であるときの粒子径のことを意味する。
本発明では、魚節微粉末の粒度分布を表すものとして、具体的には「50%積算径(d50;メジアン径)」、あるいは「90%積算径(d90)」という指標を用いて規定している。なお、必須ではないが、当該魚節微粉末の粒度分布を規定するにあたり、上記2つの指標を用いたり、上記2つの指標に加えて「10%積算径(d10)」を用いたり、「MV(体積平均径あるいは算術平均径)」を用いたり、「モード径」を用いたりしても構わない。
本発明において魚節微粉末の50%積算径は、0.05μm以上15μm以下という条件を満たす必要があり、好ましくは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上8.5μm以下である。ちなみに、液体調味料に添加される従来の魚節微粉末の場合、非常に細かいものであっても、一般的に50%積算径の値は15μm超である。そしてこの値が15μm超の場合には、生臭みが増し、ざらつきによる食感の低下を来し、濁り等による外観の悪化を来す等の不具合が生じやすくなる。
また、本発明において魚節微粉末の90%積算径は、0.2μm以上90μm以下という条件を満たす必要があり、好ましくは0.5μm以上75μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上42.5μm以下である。ちなみに、液体調味料に添加される従来の魚節微粉末の場合、非常に細かいものであっても、一般的に90%積算径の値は90μm超である。そしてこの値が90μm超の場合には、生臭みが増し、ざらつきによる食感の低下を来し、濁り等による外観の悪化を来す等の不具合が生じやすくなる。
魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率(質量比)は、0.001質量%以上である必要があり、好ましくは0.001質量%以上0.1質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上0.05質量%以下である。本発明が例えば出汁抽出液を含有する液体調味料である場合、上述した出汁抽出液の液体調味料当たりの含有比率に対し、魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率は極めて少なくてよく、例えば1/50以下、好ましくは1/100以下、さらに好ましくは1/200以下でよいことになる。なお、魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が上記好適範囲よりも少ないと、力価が不十分になり、風味や香味の向上につながらない可能性がある。逆に、当該含有比率が上記好適範囲よりも多いと、液の濁りや沈澱が発生しやすくなり、外観の低下につながってしまう。
魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率(質量比)は、配合する糖類との比率を調整することにより規定することができる。魚節微粉末は、糖類に由来するべたついた甘味を抑制することに寄与し、後味をマイルドにすることに貢献する。具体的には、魚節微粉末1質量部当たりの前記糖類の含有量は160質量部以上16000質量部以下となるように調整されることが好ましく、320質量部以上16000質量部以下となるように調整されることがより好ましく、640質量部以上3200質量部以下となるように調整されることが特に好ましい。
上記の魚節微粉末は、所定範囲にて配合された糖類に由来する加熱による風味劣化を抑制することもできるため、基本的に加熱殺菌工程を経て製造される本発明のような液体調味料に適用される。例えば、60℃以上かつ10秒以上の加熱殺菌を伴う場合、液体調味料の中味成分に由来して、設計者の意図しないメイラード反応やカラメル化反応が促進され、風味が劣化するという問題がある。魚節微粉末は、本発明のように糖類を配合する加熱殺菌調味料に適用することで、風味劣化抑制効果を顕著に発揮することができる。つまり、高温で10秒以上の殺菌条件を経て製造される糖類含有の液体調味料であって、その温度が60℃以上、さらに好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上のレトルト加熱殺菌条件を経て製造される液体調味料に適用されることが好ましい。また、糖類に加えて醤油が配合されている場合、特にこの加熱殺菌工程による品質劣化の問題が起こりやすい。そして本発明はこのような場合に適用することがさらに好ましい。
本発明の魚節微粉末入り液体調味料は、酸性液体調味料であって、具体的にはpHが4.0以上6.8以下の範囲に調整される。pHが4.0よりも低いと、風味バランスの崩れの解消、べたついた甘味の抑制といった効果が得られにくくなるほか、加熱殺菌時の劣化の問題も起こりにくくなる。逆に、pHが6.8よりも高いと、魚節微粉末と糖類との相互作用は維持されるものの、加熱殺菌時の劣化の度合いが高すぎて、加熱劣化臭の抑制効果が十分に発揮できなくなる。なお、液体調味料のpHは4.0以上6.0以下の範囲に調整されることがより好ましい。
本発明の魚節微粉末に使用する魚節としては特に限定されず、例えば、鰹節、宗田節、まぐろ節、鯖節、枯節、むろ節、うるめ節、いわし節、さんま節、煮干類などを広く用いることができる。この場合、外観の悪化や脂分による酸化劣化を裂ける目的で、できるだけ脂質含有量が少ない魚節を用いることが好ましい。具体的には、上述したように脂質含有量が15質量%未満の魚節(好ましくは12質量%未満の魚節)の微粉末を用いることがよく、この場合には液中に脂分が溶出しにくくなる。このような低脂質含有量の魚節微粉末の具体例としては、例えば、鰹節、枯節、まぐろ節などの微粉末が挙げられ、これらを用いると上品な風味に仕上げることができる。
本発明の魚節微粉末は、原料である魚節を被粉砕物としてこれを粉砕して微粉末化することにより得ることができる。具体的には、ピンミル、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、ローラーミル、ハンマーミル、ディスクミル等といった各種の粉砕機を用いた粉砕方式が適用可能である。より詳しくいうと、上記魚節微粉末は、容器内に球状の無機粉砕媒体とともに被粉砕物を収納して回転させる湿式微粉砕機を用いて微粉砕化することにより得られたものであることが好ましい。このような湿式微粉砕機の好適例としては、いわゆるビーズミルを挙げることができる。なお、湿式微粉砕機を用いた微粉砕化処理によれば、所望とする微粉末を確実にかつ効率よく得ることができるばかりでなく、微粉末の温度をあまり上昇させることなく得ることができるという利点がある。
ビーズミルとは、液体中の粒子をナノメートルサイズまで粉砕・分散する装置のことをいう。処理室とも呼ばれる容器の中には、直径1mm以下の酸化物セラミック製ビーズ(粉砕メディア)が70%〜95%程度充填される。この状態で、処理室の回転子を5m/秒〜15m/秒程度の速度で回転させることにより、ビーズに運動を与える。そして、液体に被粉砕物である粗粉末を混ぜたスラリーをあらかじめ作製しておき、そのスラリーを容器内にポンプで順次送り込むようにする。すると、容器内でのビーズ同士の衝突により、被粉砕物がさらに細かく微粉砕されてスラリー中に分散する。微粉砕処理の後、スラリーとビーズとは、処理室の出口にある分離手段等により分離される。
微粉砕処理の際には、常時冷却水を流通させるなどの方法により、被粉砕物を含むスラリーの温度の上昇を抑制することが好ましい。具体的には、スラリーの温度が40℃以下を保つようにすることが好ましく、特には35℃以下を保つようにすることがより好ましい。このようにすると、熱による風味の劣化が抑えられるとともに、生臭くなることも防ぐことができるため、生臭みが少なくて風味のよい魚節微粉末が得やすくなるからである。
本発明において必須ではないが、例えば液体調味料には出汁抽出液が含有されていてもよい。出汁抽出液とは、肉類、魚介類、野菜類、キノコ類、海藻類などに含まれる旨味成分(アミノ酸や核酸など)を抽出した液体のことを指すものであって、一般的には調味料に旨味や香味を与えるために添加される。好適な出汁抽出液としては、魚節から抽出した液体を挙げることができる。出汁抽出液に使用される「魚節」としては、特に限定されず、原料である魚肉を煮て乾燥させた保存性のある物を広く指す。魚節としては、例えば、鰹節、宗田節、まぐろ節、鯖節、むろ節、枯節、うるめ節、いわし節、さんま節、煮干類などを用いることができる。この場合の液体調味料としては、できるだけ脂質含有量が少ない魚節を用いることが好ましい。その理由は、脂質含有量が多い魚節の粉末を用いると、液中に脂分が溶出する結果、外観の悪化や、脂分による酸化劣化が起こるからである。具体的には、例えば脂質含有量が15質量%未満の魚節(好ましくは12質量%未満の魚節)の粉末を用いることがよく、この場合には液中に脂分が溶出しにくくなる。
液体調味料に出汁抽出液を含有させた場合において、出汁抽出液の液体調味料当たりの含有比率(質量比)は特に限定されず、液体調味料の種類や用途に応じて適宜設定することが可能であるが、例えば1質量%以上50質量%以下としてもよく、さらには10質量%以上40質量%以下としてもよく、特には20質量%以上40質量%以下としてもよい。
本発明の液状調味料において必須ではないが、上記の出汁抽出液のほか、食酢、柑橘類、調味料類、増粘剤、香料、香辛料、酒類、油脂などが適宜配合されていてもよい。食酢としては、例えば、穀物酢、米酢、米黒酢、りんご酢、醸造アルコールを原料に製造される醸造酢や、合成酢等が挙げられる。柑橘類としては、例えば、ゆず、すだち、レモン、ミカン、カボス等が挙げられる。調味料類としては、例えば、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等が挙げられる。増粘剤としては、例えば、グアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、アラビアガム、モナトウガム、トラガントガム等といった増粘多糖類が挙げられる。香料としては、ごま香料や柑橘類の香気を付与する目的の香料など、必要に応じて種々のものが使用できる。香辛料としては、ニンニク、唐辛子、胡椒、山椒などが挙げられる。酒類としては、日本酒、紹興酒、焼酎、ワイン等が挙げられる。油脂としては液状油脂原料が好適であり、例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、コーン油、ひまわり油、米油、綿実油、パーム油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、ごま油などといった植物由来の油脂などが挙げられる。また、本発明の液状調味料には、みりん、つゆ、ケチャップ、マヨネーズ、ソース等が配合されていてもよい。
以下、実施形態の魚節微粉末入り液体調味料及びその製造方法をより具体化して行った試験例について説明する。
[試験例]
(1)試験例1(魚節微粉末の好ましい粒度及び含有量、糖類と魚節微粉末との含有比率を決める試験)
A.魚節微粉末サンプルの調製
本試験例では以下の手順で魚節微粉末を調製した。ここでは、湿式微粉砕機として、直径0.5mmのジルコニア製ビーズを原料加工処理室に85%充填したビ−ズミル(アシザワ・ファインテック社製、商品名「スターミル ラボスターミニ LMZ015」)を用いた。そして、回転子を13m/sの速度で回転させながら、あらかじめ粗粉砕した魚節としての鰹節0.14kgを、0.2kg/分程度の速度で原料加工処理室に順次導入し、まず1回目の微粉砕加工処理を90分間行った。次いで、2回目の微粉砕加工処理として、直径0.2mmのジルコニア製ビ−ズを用いて、同ビ−ズミルに同じ条件でスラリーを導入して微粉砕を180分間行った。この操作中に、魚節スラリーを経時的にサンプリングし、魚節微粉末サンプルA〜Gの7種類とした。この魚節スラリーの固形分の粒子径分布については、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名「マイクロトラックMT3300」)にて測定を行った。なお、微粉砕加工処理を通じて15℃程度の冷却水を常時流すことにより、魚節スラリーの温度上昇を抑制した。実際に2回目微粉砕処理時における魚節スラリーの温度を測定したところ、32℃程度に保たれていた。
魚節スラリーの固形分の粒子径分布に関しては、魚節微粉末サンプルA〜Gの各々についての50%積算径(d50)及び90%積算径(d90)を測定した。1回目微粉砕処理を開始してから10分後にサンプリングした魚節微粉末サンプルGは、d50=15μm、d90=90μmの粒度分布を有していた。1回目微粉砕処理を開始してから15分後にサンプリングした魚節微粉末サンプルFは、d50=8.49μm、d90=42.50μmの粒度分布を有していた。1回目微粉砕処理を開始してから30分後にサンプリングした魚節微粉末サンプルEは、d50=5.54μm、d90=19.67μmの粒度分布を有していた。1回目微粉砕処理を開始してから60分後にサンプリングした魚節微粉末サンプルDは、d50=2.07μm、d90=10.90μmの粒度分布を有していた。1回目微粉砕処理を開始してから90分後にサンプリングした魚節微粉末サンプルCは、d50=1.07μm、d90=4.63μmの粒度分布を有していた。2回目微粉砕処理を開始してから60分後にサンプリングした魚節微粉末サンプルBは、d50=0.64μm、d90=1.44μmの粒度分布を有していた。そして、2回目微粉砕処理を開始してから180分後にサンプリングした魚節微粉末サンプルAは、d50=0.37μm、d90=0.74μmの粒度分布を有していた。
B.液体調味料の製品サンプルの作製
液体調味料サンプルの作製においては、下記方法により、まず濃縮つゆを作製し、各試験区に応じて適宜希釈して使用することとした。液体調味料の製品サンプルの作製においては、原料を全量で2kgになるように、それぞれ表1に示す割合(質量%)で用意し、最終塩分濃度が7質量%となるように均一に混合した。ここでいう「塩分濃度」とは、単に食塩のみの濃度をいうものではなく、醤油等における塩分も含めた濃度のことをいう。魚節微粉末としては、同ロットで粒子サイズの異なる鰹節微粉末(即ち上記の魚節微粉末サンプルA〜Gの7種類)を使用した。得られた各液体調味料サンプルは、各試験区に応じて所定温度(℃)で所定時間(分)だけ加熱殺菌し、常温まで自然冷却させた。殺菌温度が100℃未満のものについては、500mLのPETボトルに充填してサンプルを作製し、100℃以上のものについては、レトルト用のパウチに充填してサンプルを作製した。
上記方法によって得たサンプルは、いわゆる濃縮つゆであり、希釈しないもしくは2倍程度に希釈して使用する場合、冷やし素麺や冷や麦など冷たい料理のつけつゆとして適した組成であり、これを4倍程度希釈(つゆ1:水3)すると、温うどんや温そばなどのいわゆるかけ汁として適した組成のものとなる。各試験区に応じて、この希釈率(倍)、またサンプルの試食温度(℃)を変更し、評価を行った。
試験例1においては、好ましい魚節微粉末の粒度及びその含有量、ならびにこれら魚節微粉末と糖類との含有比率を調べるため、魚節微粉末サンプルA〜Gを使用した実施例1−1〜1−13の13種類の液体調味料製品サンプルと、魚節微粉末を添加しない比較例1(コントロール)の1つの比較サンプルを作製した。出汁抽出物の液体調味料当たりの含有比率については、比較サンプルでは40質量%に設定する一方、実施例1−1〜1−13の製品サンプルではそれよりも2割少ない32質量%に設定した。なお、比較サンプルについては、具体的には40質量%相当の水を使用して2質量%相当の鰹節(3mmメッシュパス破砕品)から出汁を取り、40μm のフィルターにて濾過した出汁抽出液を使用して液体調味料とした。比較サンプルには、前記出汁抽出液を含めて60質量%の水を用いた。なお、試験例1では、各サンプルに対する加熱殺菌工程として90℃かつ1分の条件を設定した。また、温料理提供時の効果を確認するため、上記濃縮つゆを4倍希釈し、なおかつ提供温度を80℃に調整して評価を行った。さらに、この試験例1では、従来公知のpH測定器により各サンプルのpHを測定するとともに、魚節微粉末の含有量及び糖類の含有量から「砂糖/魚節微粉末」の質量比率(即ち、魚節微粉末1質量部当たりの糖類の含有量)を計算した。その結果、pHはいずれも4.5であった。「砂糖/魚節微粉末」は80〜16000の範囲内の値となった。
C.サンプルの評価
作製した液体調味料の製品サンプルについては、訓練された5名の官能検査パネルによる官能検査を用いて、後味の好ましさ、加熱劣化臭、出汁風味(鰹風味)を評価し、全体バランスを含めた総合評価を行った。その結果を表1に示す(図1参照)。
後味の好ましさ(甘味抑制効果)の項目については、コントロール(比較例1)と比較して評価した。具体的には、◎(コントロール品に比べて甘味が少なく、高い甘味抑制効果を有する)、○(コントロール品と甘味が同等であり、甘味抑制効果を有する)、△(コントロール品に比べてやや甘味があり、やや甘味抑制効果を有する)、×(コントロール品と比較して非常に甘味があり、甘味抑制効果を有しない)の4段階で評価した。
加熱劣化臭(レトルト耐性)の項目については、コントロール(比較例1)と比較して評価した。具体的には、◎(劣化臭が非常に抑制されている)、○(劣化臭が抑制されている)、△(劣化臭がやや抑制されている)、×(劣化臭が抑制されていない)の4段階で評価した。
出汁風味(鰹風味の好ましさ)の項目については、絶対評価として、◎(抜群の鰹風味が感じられ、とても好ましい鰹風味を有する)、○(強い鰹風味が感じられ、好ましい鰹風味を有する)、△(わずかな鰹風味を感じる程度であり、やや好ましい鰹風味を有する)、×(鰹風味をあまり感じないため、好ましい鰹風味を有していない)の4段階で評価した。
そして、総合評価の項目については、上記3つの評価結果に基づいて、◎(とても良い)、○(良い)、△(やや良い)、×(悪い)の4段階で評価することとした。
D.評価結果
後味の好ましさ(甘味抑制効果)の項目について、実施例1−3〜1−9のなかで比較すると、魚節微粉末の粒度がd50=0.37μm〜15μmの範囲内、d90=0.74μm〜90μmの範囲内で有効(即ち△以上の評価)であることが確認された。なお、粒度がd50=0.37μm〜8.5μmの範囲内、d90=0.74μm〜42.5μmの範囲内でより高評価(即ち〇以上の評価)となり、さらには粒度がd50=0.37μm〜2.1μmの範囲内、d90=0.74μm〜10.9μmの範囲内で最も高評価(即ち◎の評価)となることが確認された。次に、実施例1−1、1−2、1−10〜1−13のなかで比較すると、魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が0.001質量%〜0.2質量%の範囲内で有効(即ち〇以上の評価)であり、特に0.025質量%付近(例えば0.01質量%〜0.04質量%の範囲内)で最も高評価(即ち◎の評価)となることが確認された。また、「砂糖/魚節微粉末」の質量比率が80〜16000の範囲内で有効(即ち〇以上の評価)であり、特に640付近で最も高評価(即ち◎の評価)となることが確認された。
加熱劣化臭(レトルト耐性)の項目については、実施例1−3〜1−9のなかで比較すると、魚節微粉末の粒度がd50=0.37μm〜15μmの範囲内、d90=0.74μm〜90μmの範囲内で有効(即ち△以上の評価)であることが確認された。なお、粒度がd50=0.37μm〜8.5μmの範囲内、d90=0.74μm〜42.5μmの範囲内でより高評価(即ち〇以上の評価)となり、さらには粒度がd50=0.37μm〜2.1μmの範囲内、d90=0.74μm〜10.9μmの範囲内で最も高評価(即ち◎の評価)となることが確認された。次に、実施例1−1、1−2、1−10〜1−13のなかで比較すると、魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が0.001質量%〜0.2質量%の範囲内で有効(即ち〇以上の評価)であり、特に0.025質量%付近(例えば0.01質量%〜0.04質量%の範囲内)で最も高評価(即ち◎の評価)となることが確認された。また、「砂糖/魚節微粉末」の質量比率が80〜16000の範囲内で有効(即ち〇以上の評価)であり、特に640付近で最も高評価(即ち◎の評価)となることが確認された。
出汁風味(鰹風味の好ましさ)の項目については、実施例1−3〜1−9のなかで比較すると、魚節微粉末の粒度がd50=0.37μm〜15μmの範囲内、d90=0.74μm〜90μmの範囲内で有効(即ち〇以上の評価)であることが確認された。なお、粒度がd50=0.37μm〜1.1μmの範囲内、d90=0.74μm〜4.6μmの範囲内で最も高評価(即ち◎の評価)となることが確認された。次に、実施例1−1、1−2、1−10〜1−13のなかで比較すると、魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が0.001質量%〜0.1質量%の範囲内で有効(即ち〇以上の評価)であり、特に0.025質量%付近(例えば0.01質量%〜0.04質量%の範囲内)で最も高評価(即ち◎の評価)となることが確認された。また、「砂糖/魚節微粉末」の質量比率が160〜16000の範囲内で有効(即ち〇以上の評価)であり、特に640付近で最も高評価(即ち◎の評価)となることが確認された。
以上の3項目の評価結果を総合すると、13種類ある実施例のうち、実施例1−13以外のものについて△(やや良い)以上の評価となることがわかった。よって、少なくとも、魚節微粉末の粒度をd50=0.37μm〜15μmの範囲内、d90=0.74μm〜90μmの範囲内とし、魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率を0.001質量%〜0.1質量%の範囲内とし、「砂糖/魚節微粉末」の質量比率を160〜16000の範囲内とすべきであることがわかった。
(2)試験例2(好ましい糖類の含有量を決める試験)
試験例2においては、濃縮つゆにおける糖類の有効な含有量の範囲を調べるために、魚節微粉末をサンプルD(d50=2.1μm、d90=10.9μm)1種類に固定し、加熱殺菌工程時の温度(℃)及び時間(分)の条件と、砂糖の含有量(質量%)とを適宜変更した。これら以外については、基本的に試験例1と同じ方法にてサンプルを作製した。具体的にいうと試験例2では、各サンプルに対する加熱殺菌工程として65℃かつ30分という条件を設定するとともに、砂糖の含有量を2質量%〜20質量%の範囲内で変更して試験を行った。このように作製した濃縮つゆは、試験例1と同様、温料理提供時の効果を確認するために4倍希釈し、なおかつ提供温度を80℃に調整して評価を行った。なお、各サンプルのpHの測定値はいずれも4.5であり、「砂糖/魚節微粉末」の質量比率は80〜640の範囲内の値となった。作製した液体調味料の5種類の製品サンプルについては、試験例1のときと同様の手法により、後味の好ましさ、加熱劣化臭、出汁風味(鰹風味)を評価し、全体バランスを含めた総合評価を行った。その結果を表2に示す(図2参照)。
以下、評価結果について説明する。後味の好ましさ(甘味抑制効果)の項目については、実施例2−1〜2−5の全てで(砂糖の含有量を2質量%〜20質量%の範囲内としたときに)有効(即ち△以上の評価)であることが確認された。なお、砂糖の含有量を6質量%〜20質量%の範囲内としたときにより高評価(即ち〇以上の評価)となり、10質量%〜20質量%の範囲内としたときに最も高評価(即ち〇以上の評価)となることが確認された。
加熱劣化臭(レトルト耐性)の項目については、実施例2−1〜2−5の全てで(砂糖の含有量を2質量%〜20質量%の範囲内としたときに)いずれも評価が◎となることが確認された。
出汁風味(鰹風味の好ましさ)の項目については、実施例2−1〜2−5の全てで(砂糖の含有量を2質量%〜20質量%の範囲内としたときに)いずれも評価が〇となることが確認された。
以上の3項目の評価結果を総合すると、5種類ある実施例のうち、実施例2−1〜2−5の全てについて△(やや良い)以上の評価となることがわかった。よって、少なくとも、砂糖の含有量を2質量%〜20質量%の範囲内とすべきであることがわかった。また、◎以上の評価を得るためには、砂糖の含有量を6質量%〜20質量%の範囲内とすべきであることがわかった。ちなみに、実施例2−1〜2−5の製品サンプルは、本明細書中には具体的に示さないが、希釈前の濃縮つゆの状態であっても風味に優れたつゆであった。
(3)試験例3(好ましいpHの範囲を決める試験)
試験例3においては、濃縮つゆにおけるpHの有効な範囲を調べるために、魚節微粉末をサンプルA(d50=0.37μm、d90=0.74μm)1種類に固定し、加熱殺菌工程時の温度(℃)及び時間(分)の条件と、pH条件とを適宜変更した。これら以外については、基本的に試験例1と同じ方法にてサンプルを作製した。具体的にいうと試験例3では、各サンプルに対する加熱殺菌工程として115℃かつ20分という条件を設定するとともに、pHを4.0〜6.8の範囲内で変更して試験を行った。なお、pH調整には、水酸化ナトリウムまたは食酢を用いた。このように作製した濃縮つゆは、試験例1と同様、温料理提供時の効果を確認するために4倍希釈し、なおかつ提供温度を80℃に調整して評価を行った。作製した液体調味料の6種類の製品サンプルについては、試験例1のときと同様の手法により、後味の好ましさ、加熱劣化臭、出汁風味(鰹風味)を評価し、全体バランスを含めた総合評価を行った。その結果を表3に示す(図3参照)。
以下、評価結果について説明する。後味の好ましさ(甘味抑制効果)の項目については、実施例3−1〜3−6の全てで(pH=4.0〜6.8の範囲内としたときに)有効(即ち〇以上の評価)であることが確認された。なお、pH=4.0〜6.0の範囲内としたときにより有効(即ち◎以上の評価)であることが確認された。
加熱劣化臭(レトルト耐性)の項目については、実施例3−1〜3−6の全てで(pH=4.0〜6.8の範囲内としたときに)有効(即ち〇以上の評価)であることが確認された。なお、pH=4.0〜6.0の範囲内としたときにより有効(即ち◎以上の評価)であることが確認された。
出汁風味(鰹風味の好ましさ)の項目については、実施例3−1〜3−6の全てで(pH=4.0〜6.8の範囲内としたときに)有効(即ち◎以上の評価)であることが確認された。
以上の3項目の評価結果を総合すると、6種類ある実施例のうち、実施例3−1〜3−6の全てについて〇(良い)以上の評価となることがわかった。よって、少なくとも、pH=4.0〜6.8の範囲内とすべきであることがわかった。また、◎以上の評価を得るためには、pH=4.0〜6.0の範囲内とすべきであることがわかった。ちなみに、実施例3−1〜3−6の製品サンプルは、本明細書中には具体的に示さないが、希釈前の濃縮つゆの状態であっても風味に優れたつゆであった。
(4)まとめ
上述したように、本実施形態の上記実施例によると、用途に応じて希釈率を変更したときでも、べたついた甘味や加熱劣化臭が抑制されるとともに魚節の香味や旨味を充分に味わうことができるため、風味に優れかつ多用途化に向いた魚節微粉末入り液体調味料を提供することができることが実証された。
なお、本発明の実施形態は発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて任意に変更することができる。
・例えば、上記実施形態では本発明の魚節微粉末入り液体調味料は醤油を含有するものであったが、醤油を含有しないものとして具体化してもよい。
・上記実施形態では本発明の魚節微粉末入り液体調味料は砂糖を含有するものであったが、砂糖以外の糖類(例えば、ブドウ糖、果糖など)を含有するものとして具体化してもよい。
・本発明の魚節微粉末入り液体調味料は、レトルト調味料として具体化されてもよいが、それよりも加熱殺菌条件を弱くしたものとして具体化されてもよい。
・本発明の魚節微粉末入り液体調味料は、温料理用調味料として具体化されてもよいが、冷料理用調味料として具体化されてもよい。
・上記実施形態の魚節微粉末入り液体調味料は、旨味香味付与成分として「出汁抽出液」を含有させたものであったが、例えば出汁抽出液に代わる当該成分として「エキス類」を含有させたものとしてもよいほか、「出汁抽出液」及び「エキス類」の両方を含有させたものとしてもよい。あるいは、出汁抽出液もエキス類も含有せず、魚節微粉末のみで旨味や香味を付与するようにした液体調味料としてもよい。

Claims (11)

  1. 糖類及び魚節微粉末を含有し加熱殺菌工程を経て製造される液体調味料であって、
    前記魚節微粉末は、50%積算径(d50;メジアン径)が0.05μm以上15μm以下であるという条件、及び、90%積算径(d90)が0.2μm以上90μm以下であるという条件のうちの少なくとも一方を満たすとともに、
    前記魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が0.001質量%以上0.05質量%未満であり、
    前記魚節微粉末1質量部当たりの前記糖類の含有量が160質量部以上16000質量部以下であり、
    pHが4.0以上6.8以下である
    ことを特徴とする魚節微粉末入り液体調味料。
  2. 前記糖類が砂糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、水あめ、異性化糖、転化糖、キシリトール、ソルビトール及びパラチノースから選択される少なくとも1種類であり、前記糖類の液体調味料当たりの含有比率が2質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項に記載の魚節微粉末入り液体調味料。
  3. 前記加熱殺菌工程は、60℃以上かつ10秒以上の条件で加熱殺菌を行うものであることを特徴とする請求項1または2に記載の魚節微粉末入り液体調味料。
  4. 前記液体調味料は、さらに醤油を含有することを特徴とする請求項に記載の魚節微粉末入り液体調味料。
  5. 前記液体調味料は、レトルト調味料であることを特徴とする請求項3または4に記載の魚節微粉末入り液体調味料。
  6. 前記液体調味料は、温料理用であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の魚節微粉末入り液体調味料。
  7. 糖類及び魚節微粉末を含有し加熱殺菌工程を経て製造される液体調味料において、50%積算径(d50;メジアン径)が0.05μm以上15μm以下であるという条件、及び、90%積算径(d90)が0.2μm以上90μm以下であるという条件のうちの少なくとも一方を満たすように前記魚節微粉末を含有させるとともに、前記魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が0.001質量%以上0.05質量%未満、前記魚節微粉末1質量部当たりの前記糖類の含有量が160質量部以上16000質量部以下、pHが4.0以上6.8以下となるように設定することで、前記糖類に由来するべたついた甘味を抑制して後味を向上させることを特徴とする、魚節微粉末入り液体調味料の風味改善方法。
  8. 糖類及び魚節微粉末を含有し加熱殺菌工程を経て製造される液体調味料において、50%積算径(d50;メジアン径)が0.05μm以上15μm以下であるという条件、及び、90%積算径(d90)が0.2μm以上90μm以下であるという条件のうちの少なくとも一方を満たすように前記魚節微粉末を含有させるとともに、前記魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が0.001質量%以上0.05質量%未満、前記魚節微粉末1質量部当たりの前記糖類の含有量が160質量部以上16000質量部以下、pHが4.0以上6.8以下となるように設定することで、加熱劣化臭を抑制することを特徴とする、魚節微粉末入り液体調味料の風味改善方法。
  9. 魚節を湿式微粉砕機により微粉砕化し魚節微粉末を得る微粉砕化処理工程と、糖類及び前記魚節微粉末を含む混合物を加熱殺菌する加熱殺菌工程とを含み、
    前記微粉砕化処理工程では、50%積算径(d50;メジアン径)が0.05μm以上15μm以下であるという条件、及び、90%積算径(d90)が0.2μm以上90μm以下であるという条件のうちの少なくとも一方を満たす前記魚節微粉末を作製し、
    前記加熱殺菌工程では、前記魚節微粉末の液体調味料当たりの含有比率が0.001質量%以上0.05質量%未満であり、前記魚節微粉末1質量部当たりの前記糖類の含有量が160質量部以上16000質量部以下であり、pHが4.0以上6.8以下である前記混合物を加熱殺菌する
    ことを特徴とする魚節微粉末入り液体調味料の製造方法。
  10. 前記湿式微粉砕機がビーズミルであることを特徴とする請求項に記載の魚節微粉末入り液体調味料の製造方法。
  11. 前記加熱殺菌工程では、60℃以上かつ10秒以上の条件で加熱殺菌を行うことを特徴とする請求項9または10に記載の魚節微粉末入り液体調味料の製造方法。
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