以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、基材層/インキ層/アンカーコート層/シーラント層が少なくともこの順に積層されてなる包装材料である。
初めに本発明における基材層について説明する。
基材層に用いられる材料は、バリア材料、熱可塑性樹脂、紙、ゴム、不織布、織編物などの本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体を塗布できるものであれば構わない。中でも包装材料としての機能の観点から、バリア材料、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と示すことがある)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、およびこれらの混合物などのポリエステル樹脂;ポリカプロンアミド(ナイロン6、以下、「Ny6」と示すことがある)、ポリへキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリ−p−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)、およびこれらの混合物などのポリアミド樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、およびこれらの混和物などのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、包装材料としたときの力学特性に優れるPET、Ny6、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
基材層における熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の形態は、フィルムが好ましく、熱可塑性樹脂フィルムとしては、通常公知の方法で製造されたものを用いることができ、無延伸フィルムまたは延伸フィルムのどちらであってもよいが、透明性や光沢性付与の点から一軸または二軸延伸フィルムが好ましく、二軸延伸フィルムがより好ましい。フィルムの厚みは特に限定されず、通常5〜500μmのものが用いられる。
バリア材料は、液体や気体を遮断できる材料であればどのような材料から構成されていてもよい。例えば、アルミニウム箔などの軟質金属箔、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着などの蒸着膜、塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロンなどからなる有機バリア材料などが挙げられる。
基材層におけるバリア層を構成するバリア材料の形態は、金属箔、フィルム、蒸着膜などの薄膜であることが好ましい。
バリア層として金属箔を適用する場合には、アルミニウム箔が安価で加工性に優れ好ましい。金属箔の厚みは3〜50μmの範囲が好ましい。
バリア層として蒸着膜を適用する場合には、市販の蒸着層を有するフィルムを使用することが簡便である。そのような蒸着膜を有するフィルムとしては、例えば、大日本印刷社製の「IBシリーズ」、凸版印刷社製の「GL、GXシリーズ」、東レフィルム加工社製の「バリアロックス」、「VM−PET」、「YM−CPP」、「VM−OPP」、三菱樹脂社製の「テックバリア」、東セロ社製の「メタライン」、尾池工業社製の「MOS」、「テトライト」、「ビーブライト」、麗光社「ダイアラスター」、「サンミラー」、「ハイラスター」、「ファインバリアー」などを例示できる。これらは蒸着層膜の表面上に保護コート層が設けられていてもよい。
バリア層として有機バリア材料を適用する場合には、有機バリア材料からなるフィルムや有機バリア材料を有する積層フィルムを使用することが簡便である。有機バリア材料を有する積層フィルムの場合、当該フィルムとして、バリア性を有する樹脂を含む塗剤をフィルムにコーティングしたもの、前記樹脂を共押し出し法により積層したものなどの、特別に作製したものを用いることができる。しかし、有機バリア材料を有する市販のフィルムを使用することが簡便であり好ましい。そのような有機バリア層を有するフィルムとしては、クラレ社製の「クラリスタ」、「エバール」、呉羽化学工業社製の「ベセーラ」、三菱樹脂社製の「スーパーニール」、興人社製の「コーバリア」、ユニチカ社製の「セービックス(登録商標)」、「エンブロンM」、「エンブロンE」、「エンブレムDC」、「エンブレットDC」、「NV」、東セロ社製の「K−OP」、「A−OP」、ダイセル社製の「セネシ」などを例示することができる。
バリア層におけるバリア性については、包装する内容物や保存期間などに応じて最適範囲を適宜選択すればよい。なかでも、水蒸気透過度として、おおむね、100g/m2・day(40℃、90%RH)以下が好ましく、20g/m2・day以下がより好ましく、10g/m2・day以下がさらに好ましく、1g/m2・day以下が特に好ましい。酸素透過度としては、100ml/m2・day・MPa(20℃、90%RH)以下が好ましく、20ml/m2・day・MPa以下がより好ましく、10ml/m2・day・MPa以下がさらに好ましく、1ml/m2・day・MPa以下が特に好ましい。
基材 層は、接着性向上のために、インキ層を設ける面に表面活性化処理がなされていても構わない。表面活性化処理としては、例えば、コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、オゾン処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、薬品処理、溶剤処理、化成化処理などが挙げられ、簡便さと接着効果のバランスからコロナ放電処理が好ましい 。
次に本発明におけるインキ層について説明する。インキ層としては、少なくとも着色した顔料及び/又は染料とバインダ(ビヒクルともいう)を有し、安定剤、光安定剤、硬化剤、架橋剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤を必要に応じて適宜添加してもよい。これら添加剤は複数用いても構わない。また、着色した顔料及び/又は染料としては、特に限定されるものではなく、1つ又は複数を用いても構わない。
バインダとしては、公知のもの、例えば、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、硝化綿、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油などが挙げられ、1種または2種以上を併用することができる。
上記のバインダ、着色した顔料及び/又は染料、さらに、必要に応じて添加剤を添加し、溶媒、希釈剤等で分散、混練してインキ組成物とする。該インキ組成物を用いて、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、その他の従来の印刷方式で、基材層の少なくとも片面に形成することが可能である。また、インキ組成物は、基材層の全面に形成しても構わないし、所望個所に形成しても構わない、また他の絵柄と共用してもよい。
基材層に形成されたインキ組成物は、蒸発乾燥、浸透乾燥、UV硬化、酸化重合などの工程によって、基材層に印刷することが可能である。
インキ層厚さとしては、特に限定されるものではなく、1〜20μm程度、より好ましくは2〜10μmである。また、インキ層は1回印刷(1度刷り)でも、複数回の印刷(多色刷り)でもよいが、印刷回数は1〜3回が好ましく、4回以上の場合ではコスト面で不利となる。
次に本発明におけるアンカーコート層について説明する。アンカーコート層は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有するものである。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、主成分としてオレフィン成分を含有するものであり、オレフィン成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜6のアルケンが好ましく、これらの混合物を用いてもよい。中でも、接着性を向上させる観点から、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテンなどの炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましく、エチレンがさらに好ましい。
オレフィン成分の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の45〜99.9質量%であることが好ましく、55〜99.8質量%であることがより好ましく、60〜99.7質量%であることがさらに好ましく、70〜99.5質量%であることが特に好ましく、80〜99.0質量%であることが最も好ましい。オレフィン成分の含有量が45〜99.9質量%の範囲を外れる場合は、接着性や耐内容物性が低下する傾向があったり、後述する水性分散化が困難となったりする。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、インキ層やシーラント層との接着性や、耐内容物性を向上させる観点から、不飽和カルボン酸成分を含有することが必要である。
不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸、クロトン酸などのほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミドなどが挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましく、特に(無水)マレイン酸が好ましい。なお、「(無水)〜酸」とは、「〜酸または無水〜酸」を意味する。すなわち、(無水)マレイン酸とは、マレイン酸または無水マレイン酸を意味する。
不飽和カルボン酸成分は、オレフィン成分と共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
不飽和カルボン酸成分の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。含有量の下限としては0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、1質量%以上が特に好ましく、2質量%以上が最も好ましい。含有量の上限としては8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、4質量%以下が特に好ましく、3質量%以下が最も好ましい。不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%未満の場合は、接着性が低下したり、水性分散体とすることが困難であり、一方、含有量が10質量%を超える場合は、接着性や耐内容物性が低下する傾向がある。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、上記オレフィン成分や不飽和カルボン酸成分以外の他の成分がさらに共重合されることで、より優れた接着性を付与できる。
そのような他の成分として、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸ジエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル類、並びにビニルエステル類を塩基性化合物などでケン化して得られるビニルアルコール、(メタ)アクリル酸アミド類などやこれらの混和物が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル類成分が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。
これらの他の成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
これら他の成分の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の1〜45質量%であることが好ましく、2〜35質量%であることがより好ましく、3〜25質量%であることがさらに好ましく、4〜18質量%であることが特に好ましい。他の成分の含有量が1質量%未満の場合は、接着性向上の効果が小さく、含有量が45質量%を超える場合は、耐水接着性や耐熱接着性(加熱雰囲気下での熱間接着性)が低下する傾向にある。
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の具体例としては、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(無水)マレイン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル−(無水)マレイン共重合体などが挙げられ、中でも、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体が接着性の観点から好ましい。
なお、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(無水)マレイン酸共重合体は、例えば、英国特許第2091745号明細書、米国特許第4617366号明細書及び米国特許第4644044号明細書などに記載された方法を参照することで、当業者であれば容易に製造することができる。
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の融点は、50℃以上であることが好ましく、60〜250℃であることがより好ましく、80〜200℃であることが特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の融点が50℃未満であると、耐熱接着性が低下する傾向にある。
また、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の重量平均分子量は、20000〜100000であることが好ましく、25000〜70000であることがより好ましく、30000〜50000であることがさらに好ましく、35000〜50000であることが特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の重量平均分子量が20000未満であると、接着性が低下する傾向にある。一方、重量平均分子量が100000を超えると、水性分散体が得難くなる傾向にある。
ただし、一般にポリオレフィン樹脂は、溶剤に対して難溶であり、このため分子量測定が困難となる場合がある。そのような場合には、溶融樹脂の流動性を示すメルトフローレート(MFR)値を分子量の目安とするのがよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレート値(ISO1133に準ずる190℃、21.2N荷重)は、1〜300g/10分であることが好ましく、2〜200g/10分であることがより好ましく、3〜100g/10分であることがさらに好ましく、3〜80g/10分であることが特に好ましい。メルトフローレート値が300g/10分を超えると、接着性が低下する傾向にある。一方、メルトフローレート値が1g/10分未満であると、水性分散体が得難くなる傾向にある。
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、接着性や水分散性を向上させるなどの目的で塩素化する必要は特になく、環境保全や製造工程簡略化の観点から塩素を含まないことが好ましい。しかしその使用目的において必要とした場合は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は塩素化されてもかまわない。塩素化の方法としては、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を塩素系溶剤に溶解させた後、紫外線を照射しながら、あるいは、ラジカル発生剤の存在下、ガス状の塩素を吹き込むことにより行うことができる。
本発明におけるアンカーコート層は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有するものであるが、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と水性媒体とを含有する水性分散体の塗膜であることが好ましい。
以下、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体について説明する。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体の含有する水性媒体は、水または、水を含む液体からなる媒体である。これらには、後述する有機溶媒や塩基性化合物などを含有しても構わない。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体;3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられる。なお、これら有機溶媒は2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、沸点が140℃以下の揮発性の水溶性有機溶媒を用いることが、アンカーコート層を形成する際に残存を少なくするために好ましい。このような有機溶媒として、具体的には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられる。
水溶性有機溶媒の含有量は、水性分散体全体に対し、5〜95質量%の範囲であることが好ましく、含有量の下限としては10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましく、50質量%以上が最も好ましい。含有量の上限としては90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下が特に好ましく、70質量%以下が最も好ましい。含有量が5質量%未満の場合は、濡れ性、透明な塗膜を形成させる効果が悪化する。含有量が95質量%を超えた場合は、水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の分散安定性が悪化する傾向にある。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の不飽和カルボン酸成分を中和するのに用いられる塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属等が挙げられる。なお、塩基性化合物は2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、沸点が140℃以下の揮発性の塩基性化合物を用いることが、接着層を形成する際に残存を少なくするために好ましい。具体的には、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどが挙げられる。
塩基性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましく、0.8〜5倍当量であることがより好ましく、0.9〜3.0倍当量であることが特に好ましく、0.9〜2.0倍当量であることが最も好ましい。塩基性化合物の含有量が0.5倍当量未満であると、塩基性化合物の添加効果が認められず、一方、含有量が10倍当量を超えると、水性分散体より塗膜を形成する際の乾燥時間が長くなったり、水性分散体の安定性が低下することがある。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有する水性分散体は、不揮発性の水性分散化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明は、不揮発性水性分散化助剤の使用を排除するものではないが、水性分散化助剤を用いずとも、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を水性分散体中に均一に、溶解および/または分散することができる。前記水性分散体は、不揮発性の水性分散化助剤を実質的に含有しないため、接着性や耐内容物性、耐水性に優れており、これらの性能は長期的にもほとんど変化しない。
ここで、「水性分散化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性分散化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
「不揮発性水性分散化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を水性分散体の製造時に用いず、得られる水性分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、こうした水性分散化助剤は、含有量がゼロであることが最も好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で含有しても構わず、例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下程度含まれていても差し支えない。
本発明でいう不揮発性水性分散化助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物などが挙げられる。
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
水性分散体中の分散粒子の数平均粒子径は、任意である。なかでも500nm以下であることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。数平均粒子径が500nmを超えると、水性分散体の保存安定性が低下する傾向が生じたり、均一な厚みの塗布が困難となりその結果安定した効果が得られなくなる場合がある。なお、水性分散体中の分散粒子とは、通常、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の分散粒子のことを意味する。
水性分散体の固形分濃度(不揮発成分濃度)は、任意である。なかでも、水性分散体全体に対して1〜50質量%の範囲であることが好ましい。
水性分散体の粘度は特に限定されないが、B型粘度計で20℃条件下にて測定した粘度は、4〜10000mPa・sの範囲が好ましく、5〜1000mPa・sの範囲がより好ましく、5〜300mPa・sの範囲がさらに好ましい。
また、水性分散体のpHも特に限定されないが、pH6〜12であることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、水性媒体中に分散させることで水性分散体に加工することが可能である。分散させる方法としては、自己乳化法や強制乳化法など公知の分散方法を採用することが可能である。公知の方法の中でも、不揮発性水性分散化助剤を実質的に使用しない方法を採用することが好ましい。具体的には、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、水性媒体とを、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法などが知られている。
この様な方法で得られる酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体は、水性媒体中で酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の不飽和カルボン酸成分を塩基性化合物によって中和することで得られるアニオン性の水性分散体である。
なお、水性分散体の製造時に、水溶性有機溶媒などの有機溶媒を用いた場合には、水性分散化の後に、有機溶媒の一部またはすべてを、一般に「ストリッピング」と呼ばれる脱溶媒処理によって系外へ留去させ、有機溶媒の含有量を低減させることも可能である。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶媒を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、不揮発成分濃度が高くなるので、水性分散体の不揮発成分濃度は、このようなストリッピングによって有機溶媒を留去することや、水性媒体で希釈することにより調整することができる。
上記のような好ましい方法により、水性媒体中に酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を、未分散樹脂がほとんどまたは全く残存することなく、分散することが可能となる。しかし、容器内の異物や少量の未分散樹脂を除くために、水性分散体を装置から払い出す際に、濾過工程を設けてもよい。濾過方法は限定されないが、例えば、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(例えば空気圧0.5MPa)する方法が挙げられる。このような濾過工程を設けることで、異物や未分散樹脂が存在した場合であってもそれらを除去できるので、得られた水性分散体は実用上問題なく使用することができる。なお、通常酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体の外観は、乳白色の液体である。
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有する水性分散体は、さらにポリビニルアルコール(B)を含有していることが好ましい。ポリビニルアルコール(B)を含有することで耐内容物性をさらに向上させることが可能である。ポリビニルアルコール(B)の含有量は、水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲が好ましく、0.1〜5質量部の範囲がより好ましく、0.1〜3質量部の範囲がさらに好ましく、0.2〜2質量部の範囲が特に好ましく、0.3〜1質量部の範囲が最も好ましい。上記好ましい範囲を外れると、耐内容物性を向上させる効果が低下する。
ポリビニルアルコール(B)としては、任意のポリビニルアルコールを用いることができる。なかでも、ビニルエステルの重合体を完全ケン化または部分ケン化したものなどを、好ましく使用することができる。ケン化方法としては、公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を採用することができる。中でも、メタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。
ビニルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどがあげられ、これらを任意に用いることができる。なかでも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
本発明の効果を損ねない範囲で、ビニルエステルに対し他のビニル化合物を共重合することが可能である。他のビニル化合物であるビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩や;エチレンなど炭素数2〜30のα−オレフィン類や;アルキルビニルエーテル類や;ビニルピロリドン類や;ジアセトンアクリルアミドなどがあげられる。
エチレンを共重合した場合、即ち、エチレン−ビニルアルコール共重合体の場合は、エチレンの含有量としては、耐内容物性の観点から50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。
ポリビニルアルコール(B)のケン化度は、任意の値を採用することができる。なかでも、塗膜の耐薬品性向上の観点から、80〜99.9モル%が好ましく、90〜99.9モル%がより好ましく、95〜99.9モル%がさらに好ましい。80モル%未満であると、耐内容物性が低下する傾向にある。
ポリビニルアルコール(B)の平均重合度としては、任意の値を採用することができる。なかでも、100〜3000が好ましく、300〜2000がより好ましく、500〜1500がさらに好ましく、500〜1000が特に好ましい。ポリビニルアルコール(B)の平均重合度が、100未満であると耐内容物性が悪化する傾向が生じることがあり、3000を超えると水性分散体とした場合の粘度が高くなりすぎる傾向が生じることがある。
ポリビニルアルコール(B)としては、市販のものを使用できる。具体的には、日本酢ビ・ポバール社製の「J−ポバール」、クラレ社製の「クラレポバール」「エクセバール」、電気化学工業社製の「デンカ ポバール」などを好適に用いることができる。
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有する水性分散体は、さらにポリウレタン樹脂(C)を含有していることが好ましい。ポリウレタン樹脂(C)を含有することで接着性や耐内容物性などを向上させることが可能である。ポリウレタン樹脂(C)の含有量は、水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して0.1〜100質量部の範囲が好ましく、1〜50質量部の範囲がより好ましく、3〜30質量部の範囲がさらに好ましい。
ポリウレタン樹脂(C)としては、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子であり、例えばポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られるものである。
ポリウレタン樹脂(C)は、接着性や水性媒体への分散性の点から陰イオン性基を有していることが好ましい。陰イオン性基とは水性媒体中で陰イオンとなる官能基のことであり、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基などである。この中でもカルボキシル基を有していることが好ましい。
ポリウレタン樹脂(C)としては、接着性や耐内容物性の観点から、ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂、ポリエステル型ポリウレタン樹脂が好ましく、ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂がより好ましく、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有する水性分散体は、さらに架橋剤(D)を含有していることが好ましい。架橋剤(D)を含有することで接着性や耐内容物性をさらに向上させることが可能である。架橋剤(D)の含有量は、水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲が好ましく、0.5〜20質量部の範囲がより好ましく、1〜10質量部の範囲がさらに好ましい。上記好ましい範囲を外れると、接着性や耐内容物性を向上させる効果が低下する場合がある。
架橋剤(D)としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤、多価の配位座を有する金属錯体などを用いることができる。具体的には、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)、アミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、エポキシ系架橋剤、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤、有機過酸化物などが挙げられる。
中でも、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤がより好ましい。このような架橋剤としては、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤などが挙げられる。これらは複数を組み合わせて使用してもよい。
本発明の水性分散体中に、ポリビニルアルコール(B)、ポリウレタン樹脂(C)、架橋剤(D)などを含有させる方法は特に限定されないが、これらの水性分散体または水溶液をあらかじめ調整しておき、それらを目的の含有量となるように、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体に混合する方法が採用できる。
本発明の水性分散体は、目的に応じて性能をさらに向上させるために、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、ポリビニルアルコール(B)、ポリウレタン樹脂(C)、架橋剤(D)以外に、その他の樹脂(以下、「他の樹脂」と称すことがある)、無機粒子、顔料、染料等の添加剤を混合することができる。
他の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン 樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、ロジン系やテルペン系などの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。他の樹脂の添加量としては、本発明の効果と添加目的の効果とを共慮し適宜選択すれば良いが、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して、1〜100質量部の範囲が好ましく、1〜50質量部がより好ましい
無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化すず等の金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカ 、バーミキュライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ハイドロタルサイト、合成雲母等が挙げられる。これらの無機粒子の平均粒子径は、水性分散体の安定性の面から、0.005〜10μmであることが好ましく、0.005〜5μmであることがより好ましい。なお、無機粒子として複数のものを混合して使用してもよい。酸化亜鉛は紫外線遮蔽の目的に、酸化すずは帯電防止の目的にそれぞれ使用できるものである。
顔料、染料としては、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等が挙げられ、分散染料、酸性染料、カチオン染料、反応染料等、いずれのものも使用することが可能である。
本発明で用いる水性分散体 には、さらに必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤、耐候剤、難燃剤等の各種薬剤を混合することも可能である。
前記のような添加剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また添加剤は、水性分散体への添加、混合のしやすさの観点から、水溶性または水性分散性のものを用いることが好ましい。
本発明において、アンカーコート層は、予めインキで形成された基材層のインキ層面の少なくとも一部に酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有する水性分散体を塗布、乾燥して形成された塗膜であることが好ましい。該アンカーコート層を有することによって、基材層とシーラント層とはインキ層を介しても良好に接着することが可能となり、本発明の効果が発現される。
本発明におけるアンカーコート層は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有する水性分散体を、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法などの方法により、基材層のインキ層面表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理または乾燥のための加熱処理に供し、水性媒体の一部または全てを乾燥することにより、均一な塗膜として、基材層のインキ層面表面に密着させて形成することができる。
本発明では、水性分散体を塗布した後、水性媒体の殆どまたは全てを乾燥させることが、接着性や耐内容物性を良好にする観点から好ましい。乾燥条件は特に限定されないが、40〜200℃の乾燥温度で、1〜600秒の乾燥時間が好ましく、乾燥性や性能を考慮して適宜選択すればよい。
本発明におけるアンカーコート層の厚みは、0.001〜5μmであることが好ましく、0.01〜3μmであることがより好ましく、0.02〜2μmであることがさらに好ましく、0.03〜1μmであることが特に好ましく、0.05〜0.5μmであることが最も好ましい。アンカーコート層の厚みが0.001μm未満では、十分な接着性や耐内容物性が得られない傾向にあり、一方、5μmを超える場合には、経済的に不利となる傾向にある。
前記の方法で得られた、基材層/インキ層/アンカーコート層が少なくともこの順に積層されてなる積層体は、直接インラインで後述するようなシーラント層のラミネート工程に供してもよいし、一旦ロールに巻き取った後、巻出しながらラミネート工程に供してもよい。
次に本発明におけるシーラント層について説明する。シーラント層は、インキ層上のアンカーコート層に、ポリオレフィン樹脂をラミネートすることによって積層された層であり、通常ヒートシール層としての役割を果たす。シーラント層には、従来から知られたポリオレフィン樹脂を使用できる。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂、酸変性ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレン系アイオノマーなどのエチレン系共重合体、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどのポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ターポリマーなどのポリプロピレン系共重合体、環状ポリオレフィン(COP)、環状ポリオレフィン共重合体(COC)などが挙げられる。これらは単独でも複数を併用しても構わない。
なかでも低温シール性とコストの観点からポリエチレン樹脂が好ましい。さらに低温シール性を必要とする場合は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体などのエチレン系共重合体が好ましい。
シーラント層を形成する方法としては、基材層のインキ層面にアンカーコート層を形成した後、アンカーコート層の上に、溶融したポリオレフィン樹脂を押出しラミネートする方法が挙げられる。
溶融したポリオレフィン樹脂を押出しラミネートした直後は、冷却ロールを設け、冷却固化させることが好ましい。押出しの際の、溶融ポリオレフィン樹脂の温度としては、接着性や耐内容物性を良好にする観点から、150〜400℃の範囲であることが好ましい。溶融ポリオレフィン樹脂の温度の下限としては200℃以上がより好ましく、250℃以上がさらに好ましく、280℃以上が特に好ましく、300℃以上が最も好ましい。上限としては、380℃未満がより好ましく、360℃未満がさらに好ましく、340℃未満がより好ましく、320℃未満が特に好ましい。150℃未満であると加工性が悪くさらに接着性が不十分となる傾向があり、400℃以上であると、加工性が悪くさらに発煙や臭気の問題が発生する場合がある。
押出しの際の溶融ポリオレフィン樹脂には、オゾン処理などの処理を施しても構わない。また、押出しラミネートの際は、シーラント層のさらに内側に、別の層を設けることを目的としたサンドラミネート法や共押出しラミネート法を併用してもよい。
ポリオレフィン樹脂を押出しラミネートする際のライン速度(ラミネートされた積層体の巻き取り速度)は、50〜250m/分であることが好ましく、70〜200m/分であることがより好ましく、90〜180m/分であることがさらに好ましい。ライン速度が50m/分未満の場合は生産性が低く、250m/分を超えた場合は、ラミネートが困難となる。
シーラント層の厚みは、特に限定されないが、包装材料への加工性やヒートシール性などを考慮して10〜60μmの範囲が好ましく、15〜40μmの範囲がより好ましい。また、シーラント層に高低差5〜20μmの凸凹を設けることで、シーラント層に滑り性や包装材料の引き裂き性を付与することが可能である。
上記の様にして得られる基材層/インキ層/アンカーコート層/シーラント層が少なくともこの順に積層された積層体は、通常、基材層を外側、シーラント層を内側(内容物側)として包装材料として使用することができる。また、包装材料としての用途、必要な性能(易引裂性やハンドカット性)、包装材料として要求される剛性や耐久性(例えば、耐衝撃性や耐ピンホール性など)などを考慮した場合、必要に応じて基材層の外側または内側に別の層を積層することもできる。基材層に金属箔または有機バリア層を採用した場合は、金属箔または有機バリア層の外側に熱可塑性樹脂層、紙層、第2のシーラント層、不職布層などを伴って使用することが可能である。基材層に蒸着層を採用した場合は、蒸着層の外側に熱可塑性樹脂層、紙層、第2のシーラント層、不職布層などを伴って使用することが可能である。基材層に熱可塑性樹脂層を採用した場合は、熱可塑性樹脂層の外側にバリア層、熱可塑性樹脂層、紙層、第2のシーラント層、不職布層などを伴って使用することが可能である。
この様な、基材層、インキ層、アンカーコート層、シーラント層以外に別の層を積層する方法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、他の層との層間に接着剤層を設けてドライラミネート法、熱ラミネート法、ヒートシール法、押出しラミネート法などにより積層すればよい。接着剤としては、1液タイプのウレタン系接着剤、2液タイプのウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酸変性ポリオレフィンの水性分散体などを用いることが可能である。本発明の包装材料用接着剤を用いても特に構わない。
具体的な積層体構成としては、一般の包装材料や蓋材、詰め替え容器などに好適に用いることが可能な、熱可塑性樹脂層/バリア層/インキ層/アンカーコート層/シーラント層や;紙容器、紙カップなどに好適に用いることが可能な、第1のシーラント層/紙層/バリア層/インキ層/アンカーコート層/第2のシーラント層、第1のシーラント層/紙層/ポリオレフィン樹脂層/熱可塑性樹脂層/バリア層/インキ層/アンカーコート層/第2のシーラント層、紙層/バリア層/インキ層/アンカーコート層/シーラント層、熱可塑性樹脂層/紙層/バリア層/熱可塑性樹脂層/インキ層/アンカーコート層/シーラント層や;チューブ容器などに好適に用いることが可能な、第1のシーラント層/バリア層/インキ層/アンカーコート層/第2のシーラント層などが挙げられる。これら積層体は、上記の様な層構成を少なくともこの順に積層されていればよく、例えば必要に応じて、最外層、最内層や層間にインキ層層やトップコート層などのその他の層を有していても構わない。
紙層としては、天然紙や合成紙などが挙げられる。第1および第2のシーラント層は、上述のシーラント層と同様の材料で形成することができる。基材層および紙層の外表面または内面側には、必要に応じてインキ層を設けてもよい。
これら基材層、インキ層、アンカーコート層、シーラント層以外の各層は、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、易接着コート剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。また各層は、その他の材料と積層する場合の密着性を向上させるために、前処理としてフィルムの表面をコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理などしたものであってもよい。また各層の厚さは、包装材料としての適性、積層する場合の加工性を考慮して決定すればよく、特に制限されない。実用的には1〜300μmの範囲が好ましい。ただし、用途によっては300μmを超えるものを採用してもよい。
本発明の包装材料の態様としては、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラッシク、ブリュックタイプ、チューブ容器、紙カップ、蓋材、など種々ある。このうち、紙カップとしては、胴部と底部のブランク板を作製し、該ブランク板を用いて、カップ成形機で、筒状の胴部を成形するとともに、該胴部の一方の開口端に底部を成形して熱接着した紙カップなどをあげることができる。
また、本発明の包装材料に易開封処理を施してもよい。具体的には、切れ込み線、ハーフカット線、ミシン目などの処理を施してもよい。また、開封位置に適宜切れ目(ノッチ)を設けてもよい。また、再封性手段を適宜設けてもよい。具体的には、最内層のシーラント層に粘着剤を塗布して再封可能としてもよいし、ポリエチレン樹脂製やポリプロピレン樹脂製のチャックを設けて、チャック付き包装袋としてもよい。本発明の包装材料用接着剤は、そのようなチャックとの接着性にも優れる。さらに本発明の包装材料用接着剤は、深絞り成型にも適している。
チャック付き包装袋は、包装袋の一端に開口部を有し、その開口部の近傍における最内層のシーラント層に樹脂製のチャックを設けた構成とすることが好適である。本発明の包装材料の内容物がアルコール飲料、入浴剤、香辛料、湿布剤、貼付剤などである場合には、開封後の長期間保存の観点から、チャックが設けられていることが好都合である。チャックが設けられていることで、便利よく内容物を出し入れできる。チャックは一般に一対のチャック体にて構成され、一方のチャック体の雄型部と他方のチャック体の雌型部とが嵌合し、これにより包装袋が密封される。雄型部および雌型部は、通常、それぞれ対向する包装材料のシーラント層と接合される。本発明の包装材料用接着剤は、このようなチャックとの接着性にも優れている。また、チャック付き包装袋は、内容物を収容したうえで、チャックが設けられた開口部の外側が封止された状態で製造されることで、内容物の長期間保存に対応することが可能である。そして、このような包装袋では、封止部とチャックとの間に、内容物使用時に切断もしくは引裂くことが可能な引裂部が設けられていることが好ましい。
チャックを構成する材料としては、ポリオレフィン樹脂が好ましく、中でも、安価である点から、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂を主成分とするものがより好ましく、ポリエチレン樹脂を主成分とするものが特に好ましい。中でもLDPE、LLDPEが特に好ましい。
チャック体の雄型部および雌型部は、それぞれ別々に押出成型によって作製されたものであって、曲げ弾性率が50〜500MPaのLDPEにて形成されたものであることが好ましい。曲げ弾性率が50MPa未満であると、チャックの嵌合強度が弱くなったり、製袋時の繰り出しが困難となったりする。一方、500MPaを超えると、繰り返しの開封時の強度や再封後の強度が低下したり、チャックの破損が生じたりする。
LDPEは190℃、21.2N荷重におけるメルトフローレート (MFR)値が1〜15g/10分のものが好ましく、より好ましくは2〜8g/10分のものである。MFRが1g/10分未満であるとメルトフラクチャーが発生し易くなり、15g/10分を超えると成形性(型保持性)が悪くなる。なお、チャック体には、LDPE以外のポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体なども使用可能である。
本発明の包装材料は、様々な内容物に対して良好な耐性を有している。このため本発明の包装材料は、特に、揮発性を有する内容物や刺激性の強い内容物の包装材料として好適である。なかでも、香り成分、香辛料成分、薬効成分を有する製品の包装材料として最適である。具体的には、アルコール(例えばアルコール濃度が50質量%以上の高濃度アルコール)、赤ワイン、白ワイン、日本酒、焼酎などのアルコール飲料、酸化防止剤、亜硫酸塩、芳香剤、香料、入浴剤(液体タイプ、粉末タイプ)、香辛料(チョウジ、唐辛子)、湿布剤、貼付剤、医薬品、電池電解液、トイレタリー製品、界面活性剤、シャンプー、リンス、洗剤、車用洗浄剤、パーマ液、防虫剤、殺虫剤、消毒液、消臭剤、育毛剤、食酢、歯磨き剤、化粧品、現像液、毛染め剤、歯磨き粉、マスタード、食酢、油、カレー、粉末キムチの素、タバスコ(キダチトウガラシを原料とした香辛料、登録商標)、塩基性物質を含んだ物、酸性物物質を含んだ物の包装材料として好適に使用される。
本発明の包装材料は、上記の内容物のうち、浸透性成分含有液状物質を包装するために好適に用いることができる。ここで浸透性成分含有液状物質とは、シーラント層および/またはアンカーコート層に浸透し接着性を悪化させうる刺激性成分、香リ成分、薬効成分、高揮発性成分、油成分等を含有する液状物質を意味する。詳細には、ワインなどのアルコール飲料、液体洗剤、シャンプー、リンス、電池電解液、酢、油などを挙げることができる。
また本発明の包装材料は、上記の内容物のうち、化粧品、医薬品、調味料、食品などの、浸透性成分含有ペースト状物質を包装するためにも、好適に用いることができる。この用途に供される包装材料は、内容物の浸透性成分含有ペースト状物質の取り扱い性の観点から、チューブ容器とすることが好適である。チューブ容器は、例えば、本発明の包装材料を筒状に形成し、その一方の開口部にヒートシール等で封をし、他方の開口部に、肩部と口部とを備えた頭部を設けることにより製造することができる。口部にはノズル、ヒンジキャップ、逆止弁、シール材などを設けても良い。
さらに本発明の包装材料は、上記の内容物のうち、香辛料、入浴剤などの揮発性成分含有固体を包装するためにも、好適に用いることができる。内容物の形状としては、パウダー状、フレーク状、ペレット状、ブロック状、キューブ状、タブレット状、クランブル状、ホール状、粒状、顆粒状、板状、球状、糸状などを例示することができる。
本発明の包装材料は、容器への詰め替えに供される内容物を包装するための、詰め替え用包装材料として、好適に用いることができる。その場合は、詰め替えの際に、内容物を簡便にボトルなどの別の容器に移し替えるために、包装材料の一部に注出口が設けられていることが好ましい。注出口の取り付け位置は、特に限定されないが、包装材料の上部中央や、コーナー部分に設けることが、内容物の注出操作を容易にするという観点から好ましい。注出口の形状は特に限定されず、袋本体と切れ目なく突出する形で設けられていてもよく、袋本体とは別の材料から構成されていてもよい。また、注出口にネジ付キャップなどが取り付けられていてもよい。
内容物を長期間保存する観点から、注出口の先端の外周はヒートシールされていることが好ましい。そして、注出口先端のヒートシール部分には、開封を容易なものとするために、易開封処理が施されていることが好ましい。具体的には、切れ込み線、ハーフカット線、ミシン目などの処理を施してもよい。また、開封位置に適宜切れ目(ノッチ)を設けてもよい。
本発明の包装材料は、基材層とシーラント層との層間接着性に優れている。基材層とシーラント層との層間における好ましい接着強度としては、基材層やシーラント層で採用される材料によって様々であり一概にはいえないが、一般的に包装材料としての適性を考慮すると、15mm幅に切り出された試験片の基材層とシーラント層との層間を200mm/分の速度でT型剥離した際の剥離強度が、1.0N/15mm以上であることが好ましく、2.0N/15mm以上がより好ましく、3.0N/15mm以上がさらに好ましく、5.0N/15mm以上が特に好ましく、剥離不可であることが最も好ましい。なお、剥離不可とは、層間接着強度が強すぎるため、基材層とシーラント層の界面とを剥離することができない状態または、剥離試験中に基材層またはシーラント層が切断してしまう状態をいう。また、本発明の包装材料は、内容物を内封してもその接着性の保持性が高く、内容物を内封した後であっても、以上のような接着強度を有していることが好ましい。
以下に実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の特性
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂の組成、構造
1H−NMR分析装置(日本電子社製、ECA500、500MHz)より求めた。テ
トラクロロエタン(d2)を溶媒とし、120℃で測定した。
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)値
ISO1133記載の方法に準じ、190℃、21.2N荷重で測定した。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の融点
パーキンエルマー社製DSC7を用いてDSC法にて測定した。測定条件は、20℃から150℃に20℃/分で昇温し、150℃で5分間維持した。その後20℃まで20℃/分で降温し、20℃で5分間維持し、再び150℃まで20℃/分で昇温した。
2.水性分散体の特性
(1)水性分散体中の分散粒子の数平均粒子径
マイクロトラック粒度分布計(日機装社製、UPA150、MODEL No.9340、動的光散乱法)を用いて求めた。粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
3.包装材料の特性
(1)剥離強度(初期強度)
各実施例で得られた積層体から、幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度200mm/分の条件で、試験片の基材層とシーラント層との界面を剥離するのに必要な強度を、T型剥離試験により測定した。測定はサンプル数10で行い、その平均値を剥離強度とした。
(2)耐内容物性(耐内容物試験後の剥離強度)
各実施例で得られた包装材料に、内容物として12gのシャンプーまたは12gのサラダ油をそれぞれ仕込み、ヒートシールにより密封した。ヒートシールの際は、包装材料の中に極力空気が入らないように密封した。この各内容物が密封された包装材料を50℃で4週間保存した。その後、内容物を除き、前記(1)と同様にして、剥離強度を測定した。測定はサンプル数10で行い、その平均値を耐内容物試験後の剥離強度とした。
<酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体の製造例>
英国特許2091745、米国特許4617366および米国特許4644044に記載された方法をもとに、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体(MFR値3g/10分、融点80℃)を取得した(以下、「EAM」と示すことがある)。このEAMの、モノマー構成はエチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸=84.5/12.5/3.0(質量%)であった。
次いで、撹拌機とヒーターを備えた1.5リットル容ガラス容器に、上記で得られた「EAM」を150g、イソプロパノールを200g、トリエチルアミンを10g、蒸留水を640g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ約40℃まで冷却したところで、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一なEAMの水性分散体を得た。この水性分散体中の分散粒子の数平均粒子径は82nmであった。
参考例1
基材層として熱可塑性樹脂フィルムである二軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製、エンブレットPET−25、厚さ25μm、コロナ処理品)を用いた。このPETフィルムのコロナ処理面に、インキ組成物としてウレタンバインダ系インキ(DICグラフィックス社製、CLIOS、銀色)を厚み5μmで印刷し、インキ層を設けた。次いで、アンカーコート剤としてEAMの水性分散体を用い、PETフィルムのインキ層面に、乾燥後の塗膜の厚さが0.3μmとなるようにアンカーコート剤を塗布し、100℃で2分間乾燥しアンカーコート層を形成した。次いで、押出機を備えたラミネート装置を用いて、アンカーコート層の表面にシーラント樹脂LDPE(住友化学社製、スミカセンL211)を、ダイス温度320℃で溶融押出して(押出直後の樹脂温度310℃)、40μmのLDPEからなるシーラント層を形成し積層体を得た。
積層体から100mm四方の試験片を2枚切り出し、2枚の試験片のシーラント層面同士を向かい合わせ、ずれのないように重ね、試験片の4辺のうち3辺の端分を幅5mmでヒートシールし、基材層/インキ層/アンカーコート層/シーラント層からなる包装材料を得た。
実施例2
EAMの水性分散体に、添加剤としてポリビニールアルコール(PVA)の水溶液〔日本酢ビ・ポバール社製VC−10(平均重合度1000、ケン化度99.5モル%)を水に溶解し、5質量%の濃度に調整したもの〕を添加し撹拌混合した。添加量は、水性分散体の含有するEAM100質量部に対して、PVAが0.5質量部となるようにした。これをアンカーコート剤として用いた以外は、参考例1と同様の方法で包装材料を得た。
実施例3
EAMの水性分散体に、添加剤としてポリウレタン樹脂の水性分散体(アデカ社製アデカボンタイターHUX380、エステル型ポリウレタン樹脂)を添加し撹拌混合した。添加量は、水性分散体の含有するEAM100質量部に対して、ポリウレタン樹脂が5質量部となるようにした。これをアンカーコート剤として用いた以外は、参考例1と同様の方法で包装材料を得た。
参考例2
EAMの水性分散体に、添加剤としてオキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製、エポクロスWS−700、多価オキサゾリン化合物の水溶液、多価オキサゾリン化合物濃度25質量%)を添加し撹拌混合した。添加量は、水性分散体の含有するEAM100質量部に対して、多価オキサゾリン化合物が5質量部となるようにした。これをアンカーコート剤として用いた以外は、参考例1と同様の方法で包装材料を得た。
参考例3
EAMの水性分散体に、添加剤としてエポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス社製、デナコールEX−411、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、4官能エポキシ化合物、800mPa・s)を添加し撹拌混合した。添加量は、水性分散体の含有するEAM100質量部に対して、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルが5質量部となるようにした。これをアンカーコート剤として用いた以外は、参考例1と同様の方法で包装材料を得た。
実施例7〜8、参考例4〜6
基材層として熱可塑性樹脂フィルムである二軸延伸Ny6フィルム(ユニチカ社製、エンブレムON−15、厚さ15μm、コロナ処理品)を用いた以外は、参考例4は参考例1と同様の方法、実施例7は実施例2と同様の方法、実施例8は実施例3と同様の方法、参考例5は参考例2と同様の方法、参考例6は参考例3と同様の方法で包装材料を得た。
参考例7
インキ組成物として、アクリルバインダ系インキ(DICグラフィックス社製、ACRYDIC A−165に30質量部の酸化チタンを分散させたインキ)を用いた以外は、参考例1と同様の方法で包装材料を得た。
参考例8
インキ組成物として、紫外線硬化型インキ(東洋インキ FDOニュー 藍 HF1)を用い、基材層に形成されたインキ組成物を紫外線照射により印刷した以外は、参考例1と同様の方法で包装材料を得た。
比較例1
アンカーコート剤を用いなかった以外は、参考例1と同様の方法で包装材料を得た。即ち、基材層として熱可塑性樹脂フィルムである二軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製、エンブレットPET−25、厚さ25μm、コロナ処理品)を用いた。このPETフィルムのコロナ処理面に、インキ組成物としてウレタンバインダ系インキ(DICグラフィックス社製、CLIOS、銀色)を厚み5μmで印刷し、インキ層を設けた。次いで、押出機を備えたラミネート装置を用いて、PETフィルムのインキ層面に、シーラント樹脂LDPE(住友化学社製、スミカセンL211)を、ダイス温度320℃で溶融押出して(押出直後の樹脂温度310℃)、40μmのLDPEからなるシーラント層を形成し積層体を得た。
積層体から100mm四方の試験片を2枚切り出し、2枚の試験片のシーラント層面同士を向かい合わせ、ずれのないように重ね、試験片の4辺のうち3辺の端分を幅5mmでヒートシールし、基材層/インキ層/シーラント層からなる包装材料を得た。
比較例2
アンカーコート剤として、ポリエチレンイミン(日本触媒社製、エポミンP−1000、ポリエチレンイミンの水溶液、ポリエチレンイミン濃度30質量%)を用いた以外は、参考例1と同様の方法で包装材料を得た。
比較例3
アンカーコート剤として、ウレタン系ドライラミネート用接着剤(DICグラフィックス社製、ディックドライLX−500/KR−90S=100/5)を用いた以外は、参考例1と同様の方法で包装材料を得た。
実施例2〜3、7〜8、比較例1〜3、および参考例1〜8で得られた包装材料の構成と特性を表1に示す。
実施例2〜3、7〜8で得られた包装材料は、優れた接着性と耐内容物性が確認された。一方、比較例1〜3では、本発明で規定するアンカーコート層が用いられていなかったため、接着性、耐内容物性に劣った。