JP6475316B2 - インクセット及び画像形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インクセット及び画像形成方法に関する。
インクジェット法を利用した記録方法は、インクジェットヘッドに設けられた多数のノズルからインクを液滴状に吐出することにより、多種多様な基材に対して高品位の画像を記録できること等から広く利用されている。
インクジェット法による画像形成では、着色剤を含むインクとインク中の成分を凝集させる化合物を含む処理液とを接触させて画像を形成する画像形成方法が用いられることがある。このようなインクと処理液とは、インクセットとして利用されている。
例えば、特開2013−18948号公報には、樹脂粒子及び顔料を含有するインク組成物と、特定の構造の有機酸性化合物を含有する処理液と、を含むインクセットが開示されている。このインクセットを用いることでざらつきが抑制された画像を形成できるとされている。
また、特開2013−72045号公報には、顔料及び水を含有するインク組成物と、水溶性高分子化合物、有機酸性化合物、シリコーンオイル、及び水を含有する処理液と、を含むインクセットが開示されている。このインクセットを用いることで処理液の塗布ムラを抑制できるとともに、ざらつきが抑制された画像を形成できるとされている。
しかしながら、特開2013−18948号公報及び特開2013−72045号公報に記載のインクセットを用いて、撥水性の高い表面(例えば、水との接触角が70°以上の表面)を有する基材に画像を形成しようとすると、基材表面の水に対する濡れ性が低いことから、着滴したインクの液滴は普通紙などに着滴した場合と比べて小さくなる。このような状態で、ざらつき抑制のために使用する処理液がさらにインクを凝集させるため、画像を形成するインクの液滴の大きさが小さくなりすぎ、ベタ画像を形成した場合に濃度低下と筋状のムラが発生しやすくなることがある。
本発明の一実施形態は上記に鑑みなされたものであり、ベタ画像部の濃度低下、筋状のムラ(以下、筋ムラともいう)及びざらつきが抑制された画像が形成されるインクセット及び画像形成方法を提供することを目的とし、目的を達成することを課題とする。
本明細書における「ベタ画像(Solid image)」とは、ある特定の網点率(濃度)でインク組成物を付与して形成された面画像を意味する。「ベタ画像部の濃度低下」とは、基材にベタ画像が形成された場合において、基材に着滴したインク組成物の液滴の大きさが小さいために、画像が基材の色の影響を受け、目的とした色濃度より数値が低下する現象、又は、インク組成物の着滴干渉によりインク組成物が移動し、画像が基材の色の影響を受け、目的とした色濃度より数値が低下する現象を意味する。
「筋ムラ」とは、画像形成の際に吐出曲がり等が発生し、インク組成物が所定の位置からずれて着滴することで、筋状に濃淡が発生する現象、又は、インク組成物の着滴干渉によりインク組成物が移動し、筋状に濃淡が発生する現象を意味する。
「ざらつき(graininess)」とは、インク組成物が基材に着滴した後、液滴同士が合一することで、画像中に微小な濃度ムラが発生し、画素の均一性が低下する現象を意味する。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 着色剤と水とを含むインク組成物と、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有量が、水不溶性樹脂粒子1g当り1.0mmol以上7.0mmol以下である水不溶性樹脂粒子とインク組成物中の着色剤を凝集させる化合物と水とを含む処理液と、を有するインクセット。
<2> 水不溶性樹脂粒子は、さらにスルホ基又はスルホ基の塩を有する<1>に記載のインクセット。
<3> 水不溶性樹脂粒子は、水不溶性樹脂の末端に少なくとも1つのスルホ基又はスルホ基の塩を有する<2>に記載のインクセット。
<4> スルホ基又はスルホ基の塩の水不溶性樹脂粒子中における含有量が、水不溶性樹脂粒子1g当り0.1mmol以上1.2mmol以下である<2>又は<3>に記載のインクセット。
<5> 水不溶性樹脂粒子1g当りの、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の合計量に対するスルホ基又はスルホ基の塩の合計量の比が、モル基準で0.08以上2.0以下である<2>〜<4>のいずれか1つに記載のインクセット。
<6> 水不溶性樹脂粒子は、下記一般式1又は下記一般式2で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を含み、一般式1で表される構成単位の含有量及び一般式2で表される構成単位の含有量の合計が水不溶性樹脂粒子の全質量に対して10質量%〜50質量%である<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクセット。
一般式1中、Rはメチル基又は水素原子を表し、Lは単結合又は炭素数1〜12の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−、−C(=O)−、もしくは、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を表し、Mは水素原子又は陽イオンを表す。
一般式2中、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又はメチレン基を表し、Mは水素原子又は陽イオンを表す。
<7> 水不溶性樹脂粒子は、下記一般式3で表される構成単位を含み、一般式3で表される構成単位の含有量が水不溶性樹脂粒子の全質量に対して5質量%〜25質量%である<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクセット。
一般式3中、Rはメチル基又は水素原子を表し、Lは単結合又は炭素数1〜10の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−、−C(=O)−、−CH(−OH)−、もしくは、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を表し、Mは水素原子又は陽イオンを表す。
<8> 水不溶性樹脂粒子は、疎水性基を有する構成単位を含み、疎水性基を有する構成単位の含有量が水不溶性樹脂粒子の全質量に対して5質量%〜40質量%である<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクセット。
<9> 水不溶性樹脂粒子は、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体に由来する構成単位の含有量に対する疎水性基を有する構成単位の含有量の比率が、質量基準で0.2〜1.4である<8>に記載のインクセット。
<10> 疎水性基を有する構成単位が、下記一般式A〜一般式Fで表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位である<8>又は<9>に記載のインクセット。
一般式A〜一般式F中、R11はメチル基又は水素原子を表し、R12及びR13は、それぞれ独立に鎖状又は分岐状の炭素数が4以上のアルキル基を表し、nは0から6までの整数を表し、L11は単結合又は炭素数1〜18の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−、−C(=O)−、もしくは、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を表す。
<11> 水不溶性樹脂粒子の含有量が、処理液の全質量に対して0.5質量%〜20質量%である<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインクセット。
<12> 水不溶性樹脂粒子の体積平均粒子径が、1μm以下である<1>〜<11>のいずれか1つに記載のインクセット。
<13> 水不溶性樹脂粒子のガラス転移温度が、100℃以上250℃以下である<1>〜<12>のいずれか1つに記載のインクセット。
<14> 水不溶性樹脂粒子の重量平均分子量が、5,000以上50,000以下である<1>〜<13>のいずれか1つに記載のインクセット。
<15> インク組成物中の着色剤を凝集させる化合物は、有機酸性化合物である<1>〜<14>のいずれか1つに記載のインクセット。
<16> インク組成物中の着色剤を凝集させる化合物に対する水不溶性樹脂粒子の含有比が質量基準で0.01〜2.0である<1>〜<15>のいずれか1つに記載のインクセット。
<17> 表面に水滴を付与して3秒経過したときの接触角が70°以上である基材の少なくとも一方の面に、<1>〜<16>のいずれか1つに記載のインクセットの処理液を付与する前処理工程と、基材の処理液が付与された面に、<1>〜<16>のいずれか1つに記載のインクセットのインク組成物をインクジェット法により吐出して画像を形成する画像形成工程と、を含む画像形成方法。
<18> 基材は、塗工層を有する紙基材である<17>に記載の画像形成方法。
本発明の一実施形態によれば、ベタ画像部の濃度低下、筋状のムラ(筋ムラ)、及びざらつきが抑制された画像が形成されるインクセット及び画像形成方法が提供される。
以下、インクセット及び画像形成方法について詳細に説明する。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
≪インクセット≫
インクセットは、着色剤と水とを含むインク組成物と、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有量が、水不溶性樹脂粒子1g当り1.0mml以上7.0mmol以下である水不溶性樹脂粒子(以下、単に水不溶性樹脂粒子ともいう)とインク組成物中の着色剤を凝集させる化合物(以下、凝集性化合物ともいう)と水とを含む処理液と、を有する。
本発明の一実施形態における作用機構の詳細は不明であるが、以下のように推測される。
従来のインクセットにおける処理液に用いられていた水溶性樹脂は粒子状態ではないために基材内部に浸透しやすく、基材表面の濡れ性が改善される効果は期待されない。また、基材表面の濡れ性を改善するため界面活性剤を用いることがあるが、界面活性剤による濡れ性の改善効果では充分でない場合がある。
これに対し、本発明の一実施形態は、処理液が、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有量が水不溶性樹脂粒子1g当り1.0mmol以上7.0mmol以下である水不溶性樹脂粒子を含む。処理液が基材に付与された場合、処理液中に含まれる水不溶性樹脂粒子は、基材の内部に浸透しにくく基材の表面に偏在すると考えられる。特に、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する水不溶性樹脂粒子が基材の表面に偏在することで、疎水的な表面を有する基材(例えば、水滴を付与して3秒経過したときの接触角が70°以上の基材)において表面の濡れ性が著しく改善される。
このような特定の樹脂粒子が付与された基材の表面にインク組成物が着滴することで、着滴したインク組成物の液滴の大きさは小さくなりすぎないので、処理液に含まれる凝集性化合物がインク組成物中の着色剤を凝集させた場合に、液滴同士の合一を防止しつつ、液滴の大きさが目的とする大きさになると考えられる。
その結果、インク組成物の液滴が基材の所望の位置及び大きさで配置され、ベタ画像部の濃度低下、筋ムラ及びざらつきが抑制された画像が形成されると考えられる。
以下、インクセットにおける処理液及びインク組成物について説明する。
<処理液>
処理液は、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有量が水不溶性樹脂粒子1g当り1.0mmol以上7.0mmol以下である水不溶性樹脂粒子とインク組成物中の着色剤を凝集させる化合物(凝集性化合物)と水とを含む。
処理液は、本発明の一実施形態の効果を奏する範囲において、水不溶性樹脂粒子、凝集性化合物及び水以外の成分を含んでもよい。
[水不溶性樹脂粒子]
処理液は、水不溶性樹脂粒子の少なくとも1種を含む。
水不溶性樹脂粒子は、構造中に水不溶性樹脂粒子1g当り1.0mmol以上7.0mmol以下の量でカルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有し、水不溶性の樹脂粒子を適宜選択して用いることができる。
処理液は、水不溶性樹脂粒子1g当り1.0mmol以上7.0mmol以下の量でカルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する水不溶性樹脂粒子を含むことで、処理液付与後の基材において水不溶性樹脂粒子の大部分が表面に偏在し、基材表面の濡れ性を改善する。そのため、後述のインク組成物がこの表面に着滴すると液滴が基材表面で濡れ広がる一方で、処理液に含まれる凝集性化合物がインク組成物中の着色剤を凝集させるため、液滴同士の合一を防止し、かつ、液滴の大きさが目的とする大きさになる。その結果、ベタ画像部の濃度低下、筋ムラ及びざらつきが抑制された画像が形成される。
水不溶性樹脂粒子は、後述の凝集性化合物と接触しても、処理液中において分散状態を維持する。
水不溶性樹脂粒子の「水不溶性」とは、固形分濃度が1質量%〜2質量%になるように調整した樹脂粒子の水分散液を用いて、液温25℃で、体積平均粒子径測定を行い、粒子が検出可能で、体積平均粒子径が測定できる場合をいう。なお、粒子が検出されず体積平均粒子径を測定できない場合は、樹脂は水に溶解している状態にあり、この状態を一般に「水溶性」という。
体積平均粒子径は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により測定することで求められる。
基材が塗工層を有する紙基材の場合、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する水不溶性樹脂粒子を用いることで、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩が紙基材の塗工層の成分(例えば、炭酸カルシウム)と相互作用し、水不溶性樹脂粒子が基材の表面により偏在しやすくなる。そのため、基材表面の濡れ性をより向上させることができ、ベタ画像部の濃度低下及び筋ムラ発生を抑止する効果が顕著に現れる。
水不溶性樹脂粒子におけるカルボキシ基の塩としては、カルボキシ基における水素原子が陽イオンに置換した構造が挙げられる。陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンなどのイオンが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
水不溶性樹脂粒子は、ベタ画像部の濃度低下及び筋ムラの発生がより抑制される点から、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩と、さらにスルホ基又はスルホ基の塩と、を有することがより好ましい。
カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する水不溶性樹脂粒子は、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体を重合した重合体で形成された水不溶性樹脂粒子であることが好ましい。すなわち、水不溶性樹脂粒子は構成単位としてカルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体に由来する構成単位としては、下記一般式1で表される構成単位及び下記一般式2で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
一般式1中、Rはメチル基又は水素原子を表す。
一般式1中、Lは単結合又は炭素数1〜12の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−、−C(=O)−、もしくは、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を表す。Lは、下記群aから選ばれる少なくとも1つの基であることが好ましい。
一般式1中、Mは水素原子又は陽イオンを表す。陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びリチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、並びにアンモニウムイオンなどのイオンが挙げられる。
群aに示す基中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、mは1から5までの整数を表し、*は結合位置を表す。
一般式2中、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又はメチレン基を表す。
一般式2中、Mは水素原子又は陽イオンを表す。陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びリチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、並びにアンモニウムイオンなどのイオンが挙げられる。
上記の一般式1で表される構成単位又は一般式2で表される構成単位としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート(アクリル酸ダイマー)、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、1−メチル−2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、ビニルフェニル酢酸、ω−カルボキシポリカプロラクトン(n=2)モノアクリレート、p−ビニル安息香酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、イタコン酸モノナトリウム、モノブチルマレート、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、エタクリル酸、桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;及び、これらの塩を有する単量体に由来する構成単位が挙げられる。
また、塩の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びリチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、並びにアンモニウムイオンなどのイオンが挙げられる。
以下にカルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体に由来する構成単位の具体例を示すが、本発明の一実施形態は以下の具体例に限定されるものではない。
なお、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体として、無水マレイン酸などの無水カルボン酸を用いる場合は、無水カルボン酸を共重合して重合体を合成した後、加水分解し、続けて強酸を添加することでカルボキシ基を再生させる方法で、構成単位にカルボキシ基を導入してもよい。
カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体に由来する上記の一般式1で表される構成単位又は一般式2で表される構成単位以外にも、例えば、3価以上の不飽和多価カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位などを用いることができる。
これらのカルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体に由来する構成単位の中でも、酸価が大きいものが基材の表面の濡れ性を改善する効果が発現しやすく、この点から、分子量の小さいアクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、マレイン酸、イタコン酸及びこれらの塩を有する単量体に由来する構成単位が好ましい。塩の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン及びアンモニウムイオンが好ましい。
さらに重合性の点では、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、及びβ−カルボキシエチルアクリレートがより好ましい。
水不溶性樹脂粒子は、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩に加えて、さらにスルホ基又はスルホ基の塩を含むことが好ましい。
水不溶性樹脂粒子がスルホ基又はスルホ基の塩を有することで、ベタ画像部の濃度低下及び筋ムラ発生を抑制する効果に優れる。また、後述の凝集性化合物として酸性化合物を用いた場合、水不溶性樹脂粒子がスルホ基又はスルホ基の塩を有することで、水不溶性樹脂粒子の処理液中における分散安定性がより向上する。
水不溶性樹脂粒子が構造中にスルホ基又はスルホ基の塩を有する場合、スルホ基又はスルホ基の塩を有する単量体を重合した重合体で形成された水不溶性樹脂粒子であることが好ましい。すなわち、水不溶性樹脂粒子は構成単位としてスルホ基又はスルホ基の塩を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
スルホ基又はスルホ基の塩を有する単量体に由来する構成単位としては、下記一般式3で表される構成単位を含むことが好ましい。
一般式3中、Rはメチル基又は水素原子を表す。
一般式3中、Lは単結合又は炭素数1〜10の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−、−C(=O)−、−CH(−OH)−、もしくは、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を表す。Lは、下記群bから選ばれる少なくとも1つの基であることが好ましい。
一般式3中、Mは水素原子又は陽イオンを表す。陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びリチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、並びにアンモニウムイオンなどのイオンが挙げられる。
群bに示す基中、nは1から5までの整数を表し、*は結合位置を表す。
上記の一般式3で表される構成単位としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、1−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アリロキシポリエチレングリコール(エチレングリコール部分の重合度:10)スルホン酸、及びこれらの塩を有する単量体に由来する構成単位が挙げられる。
また、塩の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びリチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、並びにアンモニウムイオンなどのイオンが挙げられる。
なお、スルホ基又はスルホ基の塩を有する水不溶性樹脂粒子の合成法として、スルホ基又はスルホ基の塩を有する単量体を共重合してもよいし、スルホ基を有する単量体を共重合して水不溶性樹脂粒子を合成後、塩基で中和してスルホ基の塩にしてもよい。
これらのスルホ基又はスルホ基の塩を有する単量体に由来する構成単位の中でも、アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸又はアクリルアミド−2−プロパンスルホン酸の塩、及び3−スルホプロピル(メタ)アクリレートを有する単量体に由来する構成単位が好ましい。塩の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン及びアンモニウムイオンが好ましく、アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、及びアクリルアミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
以下にスルホ基又はスルホ基の塩を有する単量体に由来する構成単位の具体例を示すが、本発明の一実施形態は以下の具体例に限定されるものではない。
水不溶性樹脂粒子は、リン酸基又はリン酸基の塩とホスホン酸基又はホスホン酸基の塩とから選ばれる少なくとも一種を有していてもよい。
すなわち、水不溶性樹脂粒子は構成単位として、リン酸基又はリン酸基の塩を有する単量体に由来する構成単位と、ホスホン酸基又はホスホン酸基の塩を有する単量体に由来する構成単位と、から選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。
リン酸基又はリン酸基の塩を有する単量体に由来する構成単位としては、下記一般式4で表される構成単位が好ましく、ホスホン酸基又はホスホン酸基の塩を有する単量体に由来する構成単位としては、下記一般式5で表される構成単位が好ましい。
一般式4及び一般式5中、Rは、メチル基又は水素原子を表し、Lは単結合もしくは下記群cから選ばれる基を表す。
一般式4及び一般式5中、M、Mは、それぞれ独立に、水素原子又は陽イオンを表す。陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びリチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、並びにアンモニウムイオン、及びモノエタノールアンモニウムイオンなどのイオンが挙げられる。
群cで示す基中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、lは1から10までの整数を表し、*は結合位置を表す。
上記の一般式4で表される構成単位又は一般式5で表される構成単位を形成する単量体としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(例えば、共栄社化学社製のライトエステルP−1M、ユニケミカル社製のホスマーM)、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート(例えば、共栄社化学社製のライトエステルP−2M)、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート(例えば、ユニケミカル社製のホスマーPE)、3−クロロアシッドホスホオキシプロピルメタクリレート(例えば、ユニケミカル社製のホスマーCL)、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート(例えば、ユニケミカル社製のホスマーPP)、ビニルホスホン酸、及びこれらの塩が挙げられる。
また、塩の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びリチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、並びにアンモニウムイオンなどのイオンが挙げられる。
また、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートのジメチルアミノエチルメタクリレートハーフ塩(ホスマーMH)も好ましく用いられる。
なお、ホスホン酸基又はホスホン酸基の塩を有する水不溶性樹脂粒子、リン酸基又はリン酸基の塩を有する水不溶性樹脂粒子の合成法としては、ホスホン酸基又はホスホン酸基の塩を有する単量体、リン酸基又はリン酸基の塩を有する単量体を共重合してもよいし、ホスホン酸基、リン酸基を有する単量体を共重合して水不溶性樹脂粒子を合成後、塩基で中和してホスホン酸基の塩、リン酸基の塩にしてもよい。
水不溶性樹脂粒子におけるカルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有量は、水不溶性樹脂粒子1g当り1.0mmol以上7.0mmol以下であり、1.0mmol以上6.0mmol以下が好ましく、1.0mmol以上5.0mmol以下がより好ましく、1.5mmol以上4.5mmol以下がさらに好ましい。カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有が1.0mmol以上であることで、ベタ画像部の濃度低下及び筋ムラの発生の抑制の効果に優れる。一方、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有量が7.0mmol以下であることで、水不溶性樹脂粒子の分散安定性が良好となる。
カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有量は、水不溶性樹脂粒子を形成している重合成分、具体的には、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体に由来する構成単位の重合比率から換算して求めることができる。
なお、処理液中において、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩が解離している場合、カルボキシ基から水素原子が外れた構造(−COO)及びカルボキシ基の塩から塩が外れた構造(例えば、−COONaであれば−COO)の量を「カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有量」とすることができる。
なお、スルホ基又はスルホ基の塩、ホスホン酸基又はホスホン酸基の塩、及びリン酸基又はリン酸基の塩などの酸性基又は酸性基の塩についても上記と同様の方法で含有量を求めることができる。
水不溶性樹脂粒子は、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩とスルホ基又はスルホ基の塩とを共に有することがより好ましい。水不溶性樹脂粒子は、構造中に、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩に加え、樹脂粒子が水溶化しない程度のスルホ基又はスルホ基の塩を有することで、相乗的に親水性を高めることができる。そのため、ベタ画像部の濃度低下及び筋ムラ発生をより抑制できる。
水不溶性樹脂粒子がカルボキシ基又はカルボキシ基の塩を含み、さらにスルホ基又はスルホ基の塩を有する場合、スルホ基又はスルホ基の塩の水不溶性樹脂粒子中における含有量は、水不溶性樹脂粒子1g当り0.005mmol以上2.6mmol以下が好ましく、0.1mmol以上1.4mmol以下がより好ましく、0.1mmol以上1.2mmol以下がさらに好ましく、0.2mmol以上1.2mmol以下が特に好ましく、0.4mmol以上0.8mmol以下が最も好ましい。
スルホ基又はスルホ基の塩の含有量が0.005mmol以上であることで、水不溶性樹脂粒子の分散安定性が良好となり、2.6mmol以下であることで、水不溶性が良好となる。
水不溶性樹脂粒子は、凝集性化合物との接触による凝集を抑止する観点から、スルホ基又はスルホ基の塩を水不溶性樹脂粒子1g当り0.005mmol以上含むことが好ましく、0.1mmol以上含むことがより好ましい。また、上記と同様の観点から、水不溶性樹脂粒子は、スルホ基又はスルホ基の塩を水不溶性樹脂のポリマーの少なくとも一方の鎖末端に有することが好ましい。
水不溶性樹脂粒子は、カルボキシ基の塩を有する場合、凝集性化合物とカルボキシ基の塩が相互作用し、粒子が凝集しやすいところ、スルホ基又はスルホ基の塩を有することで、粒子は分散性を失わず、凝集を抑制できる。
水不溶性樹脂粒子のポリマー鎖末端にスルホ基又はスルホ基の塩を導入する方法としては、例えば、重合により水不溶性樹脂粒子を作製する際に、重合開始剤として後述のペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、及びペルオキソ二硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩を用いる方法が挙げられる。
水不溶性樹脂粒子が、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩とスルホ基又はスルホ基の塩とを有する場合、水不溶性樹脂粒子1g当りの、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の合計量に対するスルホ基又はスルホ基の塩の合計量の比[スルホ基又はスルホ基の塩の量(mmol)]/[カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の量(mmol)]は、モル基準で0.001以上2.6以下が好ましく、画質に対する効果に優れる観点から0.08以上2.3以下が好ましく、0.08以上2.0以下がより好ましく、0.08以上0.6以下がさらに好ましい。
また、水不溶性樹脂粒子におけるカルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体に由来する構成単位(好ましくは上記一般式1及び一般式2で表される構成単位)の含有量は、水不溶性樹脂粒子の全質量に対して10質量%〜60質量%が好ましく、10質量%〜50質量%がより好ましく、25質量%〜40質量%がさらに好ましい。
また、水不溶性樹脂粒子がスルホ基又はスルホ基の塩を有する単量体に由来する構成単位(好ましくは上記一般式3で表される構成単位)を含む場合、スルホ基又はスルホ基の塩を有する単量体に由来する構成単位の含有量は、水不溶性樹脂粒子の全質量に対して5質量%〜25質量%が好ましく、10質量%〜25質量%がより好ましく、10質量%〜20質量%がさらに好ましい。
水不溶性樹脂粒子を、構成単位を共重合することで合成する場合、水不溶性樹脂粒子は、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩などの酸性基又は酸性基の塩を有する単量体に由来する構成単位以外にも、疎水性基を有する構成単位及びその他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。処理液の再分散性の観点から、疎水性基を有する構成単位を含んでいることが好ましい。
「再分散性」とは、処理液に含まれた水が蒸発し、水不溶性樹脂粒子が析出して固化した際に、固化物に新たな処理液が供給されることで、水不溶性樹脂粒子が処理液中に再び分散する性質を意味する。
疎水性基を有する構成単位における疎水性基とは、炭素原子が4つ以上結合した炭化水素基を意味する。すなわち、ここでは側鎖に炭素原子が4つ以上結合した炭化水素基を有する構成単位を、疎水性基を有する構成単位とする。
なお、疎水性基を有する構成単位は、酸性基又は酸性基の塩を有さない点で、上述の酸性基又は酸性基の塩を有する単量体に由来する構成単位とは区別される。
水不溶性樹脂粒子が疎水性基を有する構成単位を含むことで、処理液の乾燥後の再分散性に優れる。
疎水性基を有する構成単位としては、下記一般式A〜一般式Fで表される構成単位が挙げられる。
水不溶性樹脂粒子は、疎水性基を有する構成単位として、下記一般式A〜一般式Fで表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を含むことが好ましい。
一般式A〜一般式F中、R11はメチル基又は水素原子を表す。
一般式A〜一般式F中、R12及びR13は、それぞれ独立に鎖状又は分岐状の炭素数が4以上のアルキル基を表す。R12及びR13は、それぞれ独立に鎖状又は分岐状の炭素数が4以上20以下のアルキル基が好ましい。
一般式A〜一般式F中、nは0から6までの整数を表す。
一般式A〜一般式F中、L11は単結合又は炭素数1〜18の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−、−C(=O)−、もしくは、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を表す。L11は以下の構造であることが好ましい。
21は、それぞれ独立に、メチル基もしくは水素原子を表す。
nは1から8までの整数を表す。
以下に疎水性基を有する構成単位の具体例を示すが、本発明の一実施形態は以下の具体例に限定されるものではない。
水不溶性樹脂粒子が疎水性基を有する構成単位を含む場合、疎水性基を有する構成単位の含有量は、水不溶性樹脂粒子の全質量に対して5質量%〜40質量%が好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましく、20質量%〜40質量%がさらに好ましい。
また、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体に由来する構成単位(好ましくは上記一般式1及び一般式2で表される構成単位の少なくとも1種)の含有量(構成単位を複数含む場合は合計含有量)に対する疎水性基を有する構成単位(好ましくは上記一般式A〜一般式Fで表される構成単位)の含有量(構成単位を複数含む場合は合計含有量)の比率が、質量基準で0.15〜1.4であることが好ましく、0.2〜1.4であることがより好ましく、0.4〜1.1であることがさらに好ましい。
上記の比率が上記の範囲内であると、処理液のより再分散性に優れる。
水不溶性樹脂粒子の構成単位としては、上記以外のその他の単量体に由来する構成単位を用いてもよい。
その他の単量体に由来する構成単位は、酸性基又は酸性基の塩、並びに疎水性基(炭素原子が4つ以上結合した炭化水素基)を有さない点で、上述の酸性基又は酸性基の塩を有する単量体に由来する構成単位及び上述の疎水性基を有する構成単位とは区別される。
その他の単量体に由来する構成単位としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシメチル)アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系単量体アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのエチレン系不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノ‐2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩;並びにジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩などのカチオン性単量体に由来する構成単位が挙げられるが、これらに限られない。また、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールメタアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールメタアクリレートなどの2官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位を用いることができる。
これらは、それぞれ1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。また、水不溶性樹脂粒子の親水性を維持する観点から、疎水性でない単量体が好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
これらのその他の単量体に由来する構成単位の中でも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、及びエチルアクリレートに由来する構成単位が好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルに由来する構成単位がより好ましく、メタクリル酸メチルに由来する構成単位が最も好ましい。
これらのその他の単量体に由来する構成単位の含有量は、水不溶性樹脂粒子の全質量に対して20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜75質量%がより好ましく、30質量%〜60質量%がさらに好ましい。
以下に水不溶性樹脂粒子の具体例を示す。但し、本発明の一実施形態は以下の具体例に限定されるものではない。なお、各構成単位の添え字は質量基準(質量%)による組成比を表す。なお、水不溶性樹脂粒子は、いわゆるラテックスと称される水性分散物の形態で用いてもよい。
水不溶性樹脂粒子の作製方法としては、特に限定されず、バッチ重合、セミバッチ重合、及びシード重合などを用いることができる。水不溶性樹脂粒子としては、コア−シェル粒子なども好適に用いることができる。コア−シェル粒子の場合、シェル側に酸性基を有することが好ましい。
水不溶性樹脂粒子を作製する際、乳化剤を用いてもよい。乳化剤としては、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型界面活性剤、アルキルフェニルエーテル型界面活性剤、及びアルキルエーテル型界面活性剤などのノニオン性界面活性剤;ロジン酸塩、脂肪酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、ノニオン性界面活性剤の硫酸エステル塩、及びナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物などのアニオン性界面活性剤が挙げられる。
これらの乳化剤の中でも、アニオン性界面活性剤が好ましく、ロジン酸塩、及びナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物がより好ましい。
乳化剤は、1種単独又は2種以上使用することができる。
水不溶性樹脂粒子を作製する際、重合開始剤を用いることが好ましい。
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤の中でも、過硫酸塩を用いることで、水不溶性樹脂粒子の末端(ポリマー鎖末端)にスルホ基又はスルホ基の塩を導入できる。水不溶性樹脂粒子のポリマー鎖末端にスルホ基又はスルホ基の塩を導入することで、水不溶性樹脂粒子の凝集性化合物に対する安定性を付与できる。
すなわち、水不溶性樹脂粒子は、重合開始剤としてラジカル過硫酸塩を用いて重合された水不溶性樹脂粒子であることが好ましく、水不溶性樹脂粒子の少なくとも一方のポリマー鎖末端がスルホ基又はスルホ基の塩であることが好ましい。
重合開始剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)、及びペルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)などの過硫酸塩;2,2−アゾビス−(2−アミノジプロン)ジヒドロクロライド、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドキシム)ジヒドロクロライド、及び4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などのアゾ開始剤;クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。
これらの重合開始剤の中でも、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、及びクメンハイドロパーオキサイドが好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムがより好ましい。
また、必要に応じて、還元剤及び連鎖移動剤を用いてもよい。
還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜チオン酸塩、チオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩、カルボン酸類及びカルボン酸類の塩(例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸)、還元糖類(例えば、デキストロース、サッカロース)、アミン類(例えば、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン)が挙げられる。好ましくは、カルボン酸類及びカルボン酸類の塩が挙げられ、より好ましくは、L−アスコルビン酸、及びエリソルビン酸が挙げられる。
水不溶性樹脂粒子の体積平均粒子径としては、処理液の粘度を下げる観点から、1μm以下が好ましく、処理液の安定性の観点から300nm以下がより好ましい。上記の観点から、水不溶性樹脂粒子の体積平均粒子径は、150nm以下がさらに好ましく、80nm以下が特に好ましい。
体積平均粒子径の下限は、粒径測定装置の検出限界から0.8nm以上である。
体積平均粒子径は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により測定することにより求められる。
体積平均粒子径の測定は、固形分濃度が1質量%〜2質量%になるよう調整した水分散液を用いて、液温25℃で行う。
水不溶性樹脂粒子の重量平均分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、5,000〜500,000がより好ましく、5,000〜300,000がさらに好ましく、再分散性の点では5,000〜50,000がさらに好ましい。
重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により測定することができる。
GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、示屈折率(RI)検出器を用いて行なう。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
水不溶性樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、処理液の熱安定性を良好に維持する観点から、100℃以上250℃以下であることが好ましい。
水不溶性樹脂粒子のTgはエスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220により測定した。
処理液中における水不溶性樹脂粒子の含有量としては、処理液の全質量に対して0.5質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましく、3質量%〜5質量%がさらに好ましい。水不溶性樹脂粒子の含有量が0.5質量%以上であると、基材の濡れ性改善の効果が大きく、一方、含有量が20質量%以下であると、処理液の粘度が適正な範囲に維持され、処理液の安定性が向上する。
[凝集性化合物]
処理液は、インク組成物中の着色剤を凝集させる化合物(凝集性化合物)の少なくとも一種を含む。
「着色剤を凝集させる」とは、インク組成物中に分散された着色剤の分散状態を不安定化させることで、着色剤で形成される二次粒子の粒子径を増大させることをいう。なお、粒子径の変化は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)などの動的光散乱法により体積平均粒径を測定することで確認できる。
処理液が着色剤を凝集させる化合物を含むことで、後述のインク組成物に含まれる着色剤を凝集させることができ、高精細な画像を形成できる。
凝集性化合物としては、インク組成物中のスルホ基以外のアニオン性の解離基を有する樹脂粒子及びアニオン性着色剤の少なくとも一方を凝集させる化合物が好ましい。
着色剤を凝集させる化合物としては、例えば、有機酸性化合物及び無機酸性化合物などの酸性化合物、多価金属塩、カチオン性化合物が挙げられる。中でも、凝集速度の観点から、酸性化合物が好ましく、有機酸性化合物がより好ましい。
酸性化合物としては、インク組成物のpHを低下させ得る酸性物質が挙げられ、有機酸性化合物及び無機酸性化合物のいずれを用いてもよく、有機酸性化合物及び無機酸性化合物を2種以上併用してもよい。
(有機酸性化合物)
処理液に有機酸性化合物が含まれる場合、有機酸性化合物は、インク組成物中の成分を凝集させることができる。
処理液に含まれる有機酸性化合物としては、特に制限はない。有機酸性化合物としては、例えば、リン酸基を有する化合物、ホスホン酸基を有する化合物、ホスフィン酸基を有する化合物、硫酸基を有する化合物、スルホン酸基を有する化合物、スルフィン酸基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物が挙げられる。
有機酸性化合物は、インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシ基を有する化合物が好ましく、カルボキシ基を有する化合物がより好ましい。
カルボキシ基を有する化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸(好ましくは、DL−リンゴ酸)、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸、4−メチルフタル酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩(例えば多価金属塩)等が好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
カルボキシ基を有する化合物としては、インク組成物の凝集速度の観点から、2価以上のカルボン酸(以下、多価カルボン酸ともいう)が好ましく、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、4−メチルフタル酸、及びクエン酸がより好ましく、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びクエン酸が特に好ましい。
処理液に含まれる有機酸性化合物は、pKaが低いことが好ましい。カルボキシ基等の弱酸性の官能基で分散安定化しているインク組成物中の顔料やポリマー粒子などの粒子の表面電荷を、よりpKaの低い有機酸性化合物と接触させることにより減じ、分散安定性を低下させることができる。
処理液に含まれる有機酸性化合物は、pKaが低く、水に対する溶解度が高く、価数が2価以上であることが好ましく、インク組成物中の粒子を分散安定化させている官能基(例えば、カルボキシ基)のpKaよりも低いpH領域に高い緩衝能を有する2価又は3価の酸性物質であることがより好ましい。
(無機酸性化合物)
処理液に無機酸性化合物が含まれる場合、無機酸性化合物は、インク組成物中の成分を凝集させることができる。
処理液に含まれる無機酸性化合物としては、例えば、リン酸、リン酸化合物、硝酸、亜硝酸、硫酸、塩酸が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。無機酸性化合物としては、画像のざらつき抑制とインクの凝集速度の観点から、リン酸及びリン酸化合物が好ましい。
リン酸は、カルシウム塩(リン酸カルシウム)としたときの水への溶解度(25℃)が0.0018g/水100gと小さい。したがって、処理液に含まれる無機酸性化合物がリン酸であると、カルシウム塩が溶解せず固定化され、画像部表面に発生するざらつきの発生を抑制する効果が高い。特に、記録媒体として炭酸カルシウムを含有する塗工層を有する記録媒体を使用した際、処理液に含まれる無機酸性化合物としてはリン酸が有利である。
リン酸化合物としては、例えば、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、又はこれらの塩を用いることができる。
(多価金属塩)
多価金属塩としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3族の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13族からのカチオン(例えば、アルミニウム)、及びランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。
金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、及び安息香酸など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好ましい。中でも、カルボン酸(蟻酸、酢酸、及び安息香酸など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩がより好ましい。
(カチオン性化合物)
カチオン性化合物としては、カチオン性樹脂、及びカチオン性界面活性剤が好適に挙げられる。
カチオン性樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリン・ジメチルアミン付加重合物、ジシアンジアミドとホルマリンもしくはジエチレントリアミンとの重縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・SO共重合物、ジアリルアミン塩・SO共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、ポリアリルアミン、カチオンエポキシ、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ビニルホルムアミド、カチオン性樹脂エマルジョン、カチオン性樹脂多価金属塩が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、1級、2級、又は3級アミン塩型の化合物が好ましい。このアミン塩型の化合物の例として、塩酸塩もしくは酢酸塩等の化合物(例えば、ラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミン)、第4級アンモニウム塩型化合物(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム)、ピリジニウム塩型化合物(例えば、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド)、イミダゾリン型カチオン性化合物(例えば、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン)、及び高級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物(例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン)が挙られる。
また、ポリアリルアミン類を用いてもよい。これらのほか、所望のpH領域でカチオン性を示す両性界面活性剤も使用可能であり、例えば、アミノ酸型の両性界面活性剤、R−NH−CHCH−COOH型の化合物(Rはアルキル基等を表す)、カルボン酸塩型両性界面活性剤(例えば、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン)、硫酸エステル型、スルホン酸型、又はリン酸エステル型等の両性界面活性剤が挙げられる。
処理液の全質量中における凝集性化合物の含有量(総含有量)には特に限定はないが、含有量は処理液の全量に対し、5質量%〜40質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましい。含有量が5質量%以上であると画像のざらつきを抑制でき、含有量が40質量%以下であると画像の耐擦性が向上する。
凝集性化合物として、有機酸性化合物と無機酸性化合物とを併用する場合、有機酸性化合物と無機酸性化合物との含有比は、凝集速度とざらつき抑制の観点から、有機酸性化合物の含有量に対する無機酸性化合物の含有量が、5mol%〜50mol%であることが好ましく、10mol%〜40mol%であることがより好ましく、15mol%〜35mol%であることがさらに好ましい。
処理液における着色剤を凝集させる化合物(凝集性化合物)に対する水不溶性樹脂粒子の含有量の比([水不溶性樹脂粒子(質量%)]/[凝集性化合物(質量%)])は、ベタ画像部の濃度低下、筋ムラ発生及びざらつきの抑制の効果の観点から、質量基準で0.01〜2.0が好ましく、0.01〜1.0がより好ましく、0.04〜0.5がさらに好ましく、0.1〜0.3が特に好ましい。
[水]
処理液は、水を含有する。水の含有量は、特に制限はないが、処理液の全質量に対して、10質量%〜99質量%の範囲が好ましく、より好ましくは50質量%〜90質量%であり、更に好ましくは60質量%〜80質量%である。
[有機溶剤]
処理液は、有機溶剤から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
有機溶剤としては、20℃で100gの水に5g以上溶解する有機溶剤(以下、「水溶性有機溶剤」ともいう。)であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、後述するインク組成物に含まれる水溶性有機溶剤と同様のものを用いることができる。これらの有機溶剤の中でも、カール抑制の観点から、ポリアルキレングリコール又はその誘導体が好ましく、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールがより好ましい。
有機溶剤の処理液中における含有量としては、特に制限はされないが、カール抑制の観点から、処理液全体に対して1質量%〜30質量%であることが好ましく、5質量%〜15質量%であることがより好ましい。
[含窒素ヘテロ環化合物]
処理液は、含窒素ヘテロ環化合物を含有してもよい。これにより、画像の耐擦性及び基材の搬送性が向上する。
含窒素ヘテロ環化合物のヘテロ環構造としては、含窒素5員環構造又は6員環構造が好ましく、中でも含窒素5員環構造が好ましい。
含窒素5員環構造又は含窒素6員環構造の中でも、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びセレン原子の少なくとも一種の原子を含む5又は6員のヘテロ環の構造が好ましい。なお、このヘテロ環は炭素芳香環又は複素芳香環で縮合していてもよい。
ヘテロ環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、セレナジアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリミジン環、トリアザインデン環、テトラアザインデン環、ペンタアザインデン環が挙げられる。
これらの環は、置換基を有してもよく、置換基としては、ニトロ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、メルカプト基、シアノ基、それぞれ置換もしくは無置換のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、t−ブチル、シアノエチルの各基)、アリール基(例えば、フェニル、4−メタンスルホンアミドフェニル、4−メチルフェニル、3,4−ジクロルフェニル、ナフチルの各基)、アルケニル基(例えば、アリル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル、4−メチルベンジル、フェネチルの各基)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、p−トルエンスルホニルの各基)、カルバモイル基(例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイルの各基)、スルファモイル基(例えば、無置換スルファモイル、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイルの各基)、カルボンアミド基(例えば、アセトアミド、ベンズアミドの各基)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミドの各基)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシの各基)、スルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ)、ウレイド基(例えば、無置換ウレイド、メチルウレイド、エチルウレイド、フェニルウレイドの各基)、アシル基(例えば、アセチル、ベンゾイルの各基)、オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニルの各基)、オキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、2−エチルヘキシルオキシカルボニルアミノの各基)、ヒドロキシル基が挙げられる。置換基は、一つの環に複数置換してもよい。
好ましい含窒素ヘテロ環化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられる。
即ち、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾインダゾール、ベンゾトリアゾール、テトラゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ピリジン、キノリン、ピリミジン、ピペリジン、ピペラジン、キノキサリン、及びモルホリンなどが挙げられ、これらは、上記のアルキル基、カルボキシ基、及びスルホ基などの置換基を有していてもよい。
好ましい含窒素6員環化合物としては、トリアジン環、ピリミジン環、ピリジン環、ピロリン環、ピペリジン環、ピリダジン環、又はピラジン環を有する化合物が挙げられ、中でもトリアジン環、又はピリミジン環を有する化合物が好ましい。これらの含窒素6員環化合物は置換基を有していてもよく、その場合の置換基としては炭素数1〜6のアルキル基(より好ましくは1〜3のアルキル基)、炭素数1〜6のアルコキシ基(より好ましくは1〜3のアルコキシ基)、水酸基、カルボキシ基、メルカプト基、炭素数1〜6のアルコキシアルキル基(より好ましくは1〜3のアルコキシアルキル基)、炭素数1〜6ヒドロキシアルキル基(より好ましくは1〜3のヒドロキシアルキル基)が挙げられる。
好ましい含窒素6員環化合物の具体例としては、トリアジン、メチルトリアジン、ジメチルトリアジン、ヒドロキシエチルトリアジン環、ピリミジン、4−メチルピリミジン、ピリジン、及びピロリンが挙げられる。
[消泡剤]
処理液は、必要に応じ、消泡剤を少なくとも1種含有していてもよい。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物(シリコーン系消泡剤)、プルロニック系化合物(プルロニック系消泡剤)が挙げられ、中でも、シリコーン系消泡剤が好ましい。
シリコーン系消泡剤としては、ポリシロキサン構造を有するシリコーン系消泡剤が好ましい。
消泡剤としては、市販品を用いることができる。市販品としては、BYK−012、017、021、022、024、025、038、094(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KS−537、KS−604、KM−72F(以上、信越化学工業(株)製)、TSA−739(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、及びオルフィンAF104(日信化学工業(株)製)等が挙げられる。
中でも、シリコーン系消泡剤である、BYK−017、021、022、024、025、094、KS−537、KS−604、KM−72F、及びTSA−739が好ましく、中でも、インクの吐出安定性の点でBYK−024が最も好ましい。
処理液が消泡剤を含有する場合、消泡剤の含有量は、処理液の全質量に対し、0.0001質量%〜1質量%が好ましく、0.001質量%〜0.1質量%がより好ましい。
[その他の添加剤]
処理液は、成分に加えて、その他の添加剤を含むことができる。処理液におけるその他の添加剤としては、後述のインク組成物中におけるその他の添加剤と同様である。
処理液の表面張力としては、特に制限はなく、例えば、20mN/m以上とすることができる。基材に対する塗布性の観点から、20mN/m〜60mN/mであることがより好ましく、25mN/m〜45mN/mであることがさらに好ましい。
処理液の表面張力は、例えば、界面活性剤を添加することで調整することができる。処理液の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を用い、プレート法により25℃の条件下で測定することができる。
処理液は、インク組成物の凝集速度の観点から、pH(25℃±1℃)が7.0以下であることが好ましく、0.5〜3.5であることがより好ましく、0.5〜2.0であることがさらに好ましい。pHは、25℃環境下において、pHメータWM−50EG(東亜DK(株)製)を用いて測定することができる。
処理液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、1mPa・s〜30mPa・sの範囲が好ましく、1mPa・s〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2mPa・s〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2mPa・s〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて25℃の条件下で測定することができる。
<インク組成物>
インク組成物は、着色剤と水とを含む。
インク組成物は、必要に応じ、樹脂粒子、顔料分散剤(ポリマー分散剤)、有機溶剤、中和剤、及びその他の成分を含んでもよい。
[着色剤]
インク組成物は、着色剤を少なくとも1種含む。着色剤としては特に制限されず、顔料であっても染料であってもよい。
また、着色剤は、前述の凝集性化合物と接触した際の凝集性に優れる点から、アニオン性着色剤が好ましい。
なお、ここでいう「アニオン性着色剤」とは、構造中(着色剤が後述の分散剤で被覆される場合は、分散剤の構造中)に、カルボキシ基、スルホン酸基、及びリン酸基等のアニオン性基を有する着色剤を示す。
(顔料)
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。顔料は、例えば、有機顔料、及び無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。
有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、及びキノフタロン顔料等の多環式顔料、塩基性染料型レーキ、及び酸性染料型レーキ等の染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラックが挙げられる。
また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても、水相に分散可能であればいずれも使用できる。更に、界面活性剤や高分子分散剤等で表面処理した顔料、及びグラフトカーボン等も使用可能である。
これら顔料のうち、特に、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、及びカーボンブラック顔料が好ましく、アニオン性のアゾ顔料、アニオン性のフタロシアニン顔料、及びアニオン性のキナクリドン顔料がより好ましい。
〜分散剤〜
インク組成物では、顔料が分散剤によって分散されている形態が好ましい。この形態の中でも、特に、顔料がポリマー分散剤によって分散されている形態、即ち、顔料の少なくとも一部がポリマー分散剤により被覆されている形態が好ましい。少なくとも一部がポリマー分散剤により被覆されている顔料を、以下、「樹脂被覆顔料」という。
分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては、架橋されていないポリマー分散剤(非架橋ポリマー分散剤)でもよく、架橋剤により架橋されたポリマー分散剤(架橋ポリマー分散剤)でもよい。
非架橋ポリマー分散剤としては、水溶性の非架橋ポリマー分散剤でも非水溶性の非架橋ポリマー分散剤でもよい。
低分子の界面活性剤型分散剤としては、特開2010−188661号公報の段落0016〜0020に記載の界面活性剤型分散剤を用いることができる
非架橋ポリマー分散剤のうち、水溶性の非架橋ポリマー分散剤としては、親水性高分子化合物を用いることができる。
水溶性の非架橋ポリマー分散剤としては、例えば、特開2010−188661号公報の段落0021〜0022に記載の天然の親水性高分子化合物を用いることができる。
また、水溶性の非架橋ポリマー分散剤としては、合成系の親水性高分子化合物を用いることもできる。
合成系の親水性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物が挙げられる。
中でも、顔料の分散安定性と凝集性の観点から、カルボキシ基を含む高分子化合物が好ましく、例えば、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、及び水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂等のカルボキシ基を含む高分子化合物が特に好ましい。
非架橋ポリマー分散剤のうち非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部との両方を有するポリマーを用いることができる。非水溶性分散剤としては、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体が挙げられる。
スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、及びスチレン−マレイン酸共重合体は、2元共重合体であってもよく、3元以上の共重合体であってもよい。
非架橋ポリマー分散剤としては、これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸−メチル(メタ)アクリレート3元共重合体が特に好ましい。
(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を指し、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを指す。
なお、共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよく、グラフト共重合体でもよい。
非架橋ポリマー分散剤の重量平均分子量としては、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
なお、重量平均分子量は既述の方法により測定することができる。
非架橋ポリマー分散剤の酸価には特に限定はないが、凝集性の観点から、非架橋ポリマー分散剤の酸価は後述する樹脂粒子(好ましくは自己分散性樹脂粒子)の酸価よりも大きいことが好ましい。
架橋ポリマー分散剤は、架橋剤によりポリマー(未架橋のポリマー)が架橋されることで形成される。
ポリマーとしては、特に制限されず、種々のポリマーを用いることができるが、中でも、水溶性分散剤として機能し得るポリビニル類、ポリウレタン類、及びポリエステル類等が好ましく、ポリビニル類がより好ましい。
ポリマーは、共重合成分としてカルボキシ基含有モノマーを用いて得られる共重合体であることが好ましい。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシ基を含有するモノマーが挙げられる。これらのモノマーの中でも、ポリマーの架橋性及び分散安定性の観点から、(メタ)アクリル酸、及びβ−カルボキシエチルアクリレートが好ましい。
ポリマーは、架橋剤により架橋されるため、架橋剤により架橋可能な官能基を有する。架橋可能な官能基としては、特に限定されず、例えば、カルボキシ基又はその塩、イソシアネート基、エポキシ基が挙げられるが、分散性向上の観点からカルボキシ基又はその塩が好ましい。
ポリマーの酸価は、ポリマーの水溶性の観点から、90mgKOH/g以上であることが好ましく、95mgKOH/g以上であることがより好ましい。
さらには、顔料の分散性、及び分散安定性の観点から、100mgKOH/g〜180mgKOH/gであることが好ましく、100mgKOH/g〜170mgKOH/gであることがより好ましく、100mgKOH/g〜160mgKOH/gがさらに好ましい。
なお、酸価はJIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により測定することができる。
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、50,000〜120,000が好ましく、60,000〜120,000がより好ましく、60,000〜100,000がさらに好ましく、60,000〜90,000が特に好ましい。
なお、重量平均分子量は既述の方法により測定することができる。
ポリマーは、さらに、疎水性モノマーの少なくとも1種を共重合成分として有していることが好ましい。疎水性モノマーとしては、例えば、炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環基を有する(メタ)アクリレート、スチレン及びその誘導体が挙げられる。
ポリマーの共重合形態は特に制限されず、ポリマーは、ランダムポリマーでもよく、ブロックポリマーでもよく、グラフトポリマーでもよい。
ポリマーの合成方法は、特に限定されないが、ビニルモノマーのランダム重合が分散安定性の点で好ましい。
架橋剤は、ポリマーと反応する部位を2つ以上有している化合物であれば、特に限定されないが、中でもカルボキシ基との反応性に優れている点から、2つ以上のエポキシ基を有する化合物(2官能以上のエポキシ化合物)が好ましい。
架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられる。中でも、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが好ましい。
顔料に架橋ポリマー分散剤を被覆する方法としては、例えば、顔料を水溶性又は水不溶性のポリマーを用いて分散した後に、架橋剤によりポリマーを架橋することで顔料分散物を作製する方法が挙げられる。
インク組成物において、顔料と分散剤との質量比(顔料:分散剤)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:1.5である。
顔料の平均粒子径(樹脂被覆顔料である場合には樹脂被覆顔料の平均粒子径。以下、同じ。)としては、10nm〜200nmが好ましく、10nm〜150nmがより好ましく、10nm〜100nmがさらに好ましい。平均粒子径は、200nm以下であると色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好になり、10nm以上であると耐光性が良好になる。また、顔料の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ顔料を2種以上混合して使用してもよい。
なお、顔料の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定することにより求められるものである。
顔料のインク組成物中における含有量としては、画像濃度の観点から、インク組成物全質量に対して、1質量%〜25質量%であることが好ましく、2質量%〜20質量%がより好ましく、2質量%〜10質量%が特に好ましい。
顔料は、1種単独で又は2種以上を組合せて使用してもよい。
(染料)
染料としては公知の染料を特に制限なく用いることができ、例えば、特開2001−115066号公報、特開2001−335714号公報、特開2002−249677号公報に記載の染料を本発明の一実施形態においても好適に用いることができる。
また、染料を用いる場合には、染料を水不溶性の担体に保持したものを用いてもよい。染料を保持した担体(水不溶性着色粒子)は、分散剤を用いて水系分散物として用いることができる。担体としては、水に不溶又は水に難溶であれば特に制限なく、無機材料、有機材料及びこれらの複合材料を用いることができる。具体的には、特開2001−181549号公報、及び特開2007−169418号公報等に記載の担体を本発明の一実施形態においても好適に用いることができる。
[樹脂粒子]
インク組成物は、樹脂粒子の少なくとも1種を含むことが好ましい。
樹脂粒子は、前述のポリマー分散剤(顔料の少なくとも一部を覆うポリマー分散剤)とは異なり、顔料とは別に存在している粒子である。
インク組成物に樹脂粒子を含む場合、樹脂粒子は、前述の凝集性化合物と接触することで凝集する。
また、樹脂粒子は、前述の凝集性化合物と接触した際の凝集性に優れる点から、スルホ基以外のアニオン性の解離基を有する樹脂粒子が好ましい。スルホ基以外のアニオン性の解離基を有する樹脂粒子の詳細は後述する。
アニオン性解離基としてスルホ基を有する樹脂粒子は、樹脂粒子自体の分散安定性が大きく向上するため、処理液の凝集性化合物と接触しても凝集せず、画像形成が困難となるため好ましくない。
樹脂粒子は、非水溶性又は難水溶性の樹脂粒子であることが好ましい。
「非水溶性又は難水溶性」であるとは、樹脂を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させた際に、その溶解量が15g以下であることをいう。インクの連続吐出性及び吐出安定性が向上する観点から、溶解量は好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下であり、更に好ましくは1g以下である。溶解量は、非水溶性又は難水溶性の樹脂粒子の塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した際の溶解量である。
樹脂粒子としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれの粒子であってもよく、例えば、変性のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニル系樹脂(例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール)、ポリエステル系樹脂(例えば、アルキド樹脂、フタル酸樹脂)、アミノ系樹脂(例えば、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、尿素樹脂)、又はこれらの共重合体若しくは混合物などのアニオン性基を有する樹脂の粒子が挙げられる。これらの樹脂粒子のうち、変性のアクリル系樹脂(アニオン性のアクリル系樹脂)は、例えば、スルホ基以外のアニオン性の解離性基を有するアクリルモノマー(アニオン性基含有アクリルモノマー)及び必要に応じてアニオン性の解離性基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーを溶剤中で重合して得られる。アニオン性の解離性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシ基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる1以上を有するアクリルモノマーが挙げられる。中でもカルボキシ基を有するアクリルモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸)が好ましく、特にはアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
樹脂粒子としては、吐出安定性及び着色剤を含む系の液安定性(特に分散安定性)の観点から、自己分散性樹脂の粒子(自己分散性樹脂粒子)であること好ましい。自己分散性樹脂とは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態とした際、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーをいう。
分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルジョン)、及び水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含む。
また、水性媒体は水を含む媒体を指す。水性媒体は、必要に応じて親水性有機溶剤を含んでいてもよい。水性媒体は、水と水に対して0.2質量%以下の親水性有機溶剤とが含まれることが好ましく、水のみであることがより好ましい。
自己分散性樹脂としては、インク組成物に含有された場合の凝集速度と定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる自己分散性樹脂粒子であることが好ましい。
自己分散性樹脂の乳化又は分散状態を得る方法、すなわち自己分散性樹脂粒子の水性分散物の調製方法としては、転相乳化法が挙げられる。
転相乳化法としては、例えば、自己分散性樹脂を、溶媒(例えば、水溶性有機溶剤)中に溶解又は分散させた後、界面活性剤を添加せずにそのまま水中に投入し、自己分散性樹脂が有する塩生成基(例えば、酸性基)を中和した状態で、攪拌及び混合し、溶媒を除去した後、乳化又は分散状態となった水性分散物を得る方法が挙げられる。
また、自己分散性樹脂における安定な乳化又は分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性の場合は水酸化ナトリウム、カチオン性の場合は酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、混合液から有機溶剤を除去した後でも、乳化又は分散状態が、25℃で少なくとも1週間安定に存在する状態(即ち、沈殿を目視で確認できない状態)であることをいう。
また、自己分散性樹脂における乳化又は分散状態の安定性は、遠心分離による沈降の加速試験によっても確認することができる。遠心分離による、沈降の加速試験による安定性は、例えば、上記の方法により得られた樹脂粒子の水性分散物を、固形分濃度25質量%に調整した後、12000rpmで一時間遠心分離し、遠心分離後の上澄みの固形分濃度を測定することによって評価できる。
遠心分離前の固形分濃度に対する遠心分離後の固形分濃度の比が大きければ(1に近い数値であれば)、遠心分離による樹脂粒子の沈降が生じない、すなわち、樹脂粒子の水性分散物がより安定であることを意味する。遠心分離前後での固形分濃度の比が0.8以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。
自己分散性樹脂は、分散状態としたときに水溶性を示す水溶性成分の含有量が10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。水溶性成分を10質量%以下とすることで、樹脂粒子の膨潤及び樹脂粒子同士の融着を効果的に抑制し、より安定な分散状態を維持することができる。また、インク組成物の粘度上昇を抑制でき、例えば、インク組成物をインクジェット法に適用する場合に、吐出安定性がより良好になる。
水溶性成分とは、自己分散性樹脂に含有される化合物であって、自己分散性樹脂を分散状態にした場合に水に溶解する化合物をいう。水溶性成分は自己分散性樹脂を製造する際に、副生又は混入する水溶性の化合物である。
水不溶性ポリマーの主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート)を用いることができる。中で、特にビニルポリマーが好ましい。
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(又は解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤、重合開始剤、及びイニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合、開始剤又は停止剤のどちらかに解離性基(又は解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
樹脂粒子は、分散安定性の観点から、親水性の構成単位と、芳香族基含有モノマー又は環状脂肪族基含有モノマーに由来する構成単位と、を含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
「親水性の構成単位」は、親水性基含有モノマーに由来する構成単であれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来する構成単位であってもよく、2種以上の親水性基含有モノマーに由来する構成単位であってもよい。親水性基としては、スルホ基を除いては特に制限はなく、解離性基であってもよく、ノニオン性親水性基であってもよい。
親水性基は、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。
すなわち、樹脂粒子としては、アニオン性の解離基を有する樹脂粒子であることが好ましい。
解離性基としては、カルボキシ基、及びリン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシ基が好ましい。
親水性基含有モノマーは、分散安定性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマーが挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとして、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、及び2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリルオキシエチルホスフェート、及びジブチル−2−アクリルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、及び吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
樹脂粒子は、分散安定性及び処理液と接触した際の凝集速度の観点から、カルボキシ基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシ基を有し、酸価が25mgKOH/g〜100mgKOH/gであるポリマーを含むことがより好ましい。更に、酸価は、自己分散性と処理液と接触した際の凝集速度の観点から、25mgKOH/g〜80mgKOH/gであることがより好ましく、30mgKOH/g〜65mgKOHであることが特に好ましい。
特に、酸価は、25mgKOH/g以上であると分散安定性が良好になり、100mgKOH/g以下であると凝集性が向上する。
なお、酸価は既述の方法により測定することができる。
芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であってもよく、芳香族複素環に由来する基であってもよい。芳香族基は、水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また重合性基は、縮重合性の重合性基であってもよく、付加重合性の重合性基であってもよい。重合性基は、水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましい。芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマーが挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートがより好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
環状脂肪族基含有モノマーは、環状脂肪族炭化水素に由来する環状脂肪族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましく、環状脂肪族基含有(メタ)アクリレートモノマー(以下、脂環式(メタ)アクリレートということがある)がより好ましい。
脂環式(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル酸に由来する構成部位とアルコールに由来する構成部位とを含み、アルコールに由来する構成部位に、無置換又は置換された脂環式炭化水素基(環状脂肪族基)を少なくとも1つ含む構造を有している化合物である。尚、脂環式炭化水素基は、アルコールに由来する構成部位そのものであってもよく、連結基を介してアルコールに由来する構成部位に結合していてもよい。
脂環式炭化水素基としては、環状の非芳香族炭化水素基を含む炭化水素基であれば特に限定はなく、単環式炭化水素基、2環式炭化水素基、及び3環式以上の多環式炭化水素基が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ビシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、デカヒドロナフタレニル基、ペルヒドロフルオレニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、ビシクロ[4.3.0]ノニル基が挙げられる。
脂環式炭化水素基は、更に置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルキル又はアリールカルボニル基、シアノ基が挙げられる。また、脂環式炭化水素基は、さらに縮合環を形成していてもよい。脂環式炭化水素基としては、粘度や溶解性の観点から、脂環式炭化水素基部分の炭素数が5〜20であることが好ましい。
脂環式(メタ)アクリレートの具体例を以下に示すが、本発明の一実施形態はこれらに限定されるものではない。
単環式(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、及びシクロデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基の炭素数が3〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3環式(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、それぞれ1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらのうち、脂環式(メタ)アクリレートとしては、樹脂粒子の分散安定性、定着性、及びブロッキング耐性の観点から、2環式(メタ)アクリレート、及び3環式以上の多環式(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
樹脂粒子の形成に用いる樹脂としては、(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含むアクリル系樹脂が好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマー又は脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系樹脂がより好ましい。更には、樹脂粒子は、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマー又は脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含み、その含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマー又は脂環式(メタ)アクリレートの含有量が10質量%〜95質量%であることで、乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。
分散状態の安定性、芳香環同士又は脂環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマー又は脂環式(メタ)アクリレートの含有量が15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
樹脂粒子の形成に用いる樹脂は、例えば、芳香族基含有モノマー又は環状脂肪族基含有モノマーに由来する構成単位と解離性基含有モノマーに由来する構成単位とを用いて形成することができる。更に、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んでいてもよい。
その他の構成単位を形成するモノマーとしては、芳香族基含有モノマーと解離性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーが好ましい。
アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
樹脂粒子を形成する水不溶性ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で3,000〜200,000であることが好ましく、5,000〜150,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることが更に好ましい。重量平均分子量を3,000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を200,000以下とすることで、分散安定性を高めることができる。
なお、重量平均分子量は、既述の方法で測定することができる。
樹脂粒子を形成する水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位(好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位)又は環状脂肪族基含有モノマー(好ましくは脂環式(メタ)アクリレート)を共重合比率として樹脂粒子の全質量の15質量%〜80質量%を含むことが好ましい。
また、水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマー又は脂環式(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を共重合比率として15質量%〜80質量%と、カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルに由来する構成単位)と、を含むことが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を共重合比率として15質量%〜80質量%と、カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構成単位)と、を含むことがより好ましい。
また、水不溶性ポリマーは、酸価が25mgKOH/g〜100mgKOH/gであって重量平均分子量が3,000〜200,000であることが好ましく、酸価が25mgKOH/g〜95mgKOH/gであって重量平均分子量が5,000〜150,000であることがより好ましい。酸価及び重量平均分子量は、既述の方法で測定することができる。
以下に、樹脂粒子を構成する水不溶性ポリマーの具体例として、例示化合物B−01〜B−23を挙げるが、本発明の一実施形態はこれらに限定されるものではない。尚、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
B−01:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(50/45/5)
B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/35/29/6)
B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/44/6)
B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(30/55/10/5)
B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/59/6)
B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(10/50/35/5)
B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(55/40/5)
B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸共重合体(45/47/8)
B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(5/48/40/7)
B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/30/30/5)
B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体(12/50/30/8)
B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(93/2/5)
B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(50/5/20/25)
B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(62/35/3)
B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/51/4)
B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/49/6)
B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/48/7)
B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/47/8)
B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/45/10)
B−20:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/72/8)
B−21:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(40/52/8)
B−22:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/62/10/8)
B−23:メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/72/8)
樹脂粒子に含まれる水不溶性ポリマーの製造方法としては特に制限はなく、例えば、重合性界面活性剤の存在下に、乳化重合を行い、界面活性剤と水不溶性ポリマーとを共有結合させる方法、上記親水性基含有モノマーと芳香族基含有モノマー又は脂環基含有モノマーとを含むモノマー混合物を溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法により、共重合させる方法を挙げることができる。これの重合法の中でも、凝集速度とインク組成物とした際の打滴安定性の観点から、溶液重合法が好ましく、有機溶剤を用いた溶液重合法がより好ましい。
樹脂粒子は、凝集速度の観点から、有機溶剤中で合成されたポリマーを含み、ポリマーはアニオン性基(好ましくはカルボキシ基)を有し、(好ましくは酸価が20mgKOH/g〜100mgKOH/gであって)ポリマーのアニオン性基(好ましくはカルボキシ基)の一部又は全部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物として調製されたものであることが好ましい。
すなわち、樹脂粒子の製造は、有機溶剤中でポリマーを合成する工程と、ポリマーのアニオン性基(好ましくはカルボキシ基)の少なくとも一部が中和された水性分散物とする分散工程と、を設けて行なうことが好ましい。
分散工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。
工程(1):ポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶剤、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程
工程(2):混合物から有機溶剤を除去する工程
工程(1)は、まずポリマー(水不溶性ポリマー)を有機溶剤に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶剤中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い樹脂粒子を得ることができる。
混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置、並びに必要に応じて超音波分散機及び高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
また、工程(2)においては、工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで樹脂粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶剤は実質的に除去されており、有機溶剤の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、及びエーテル系溶剤が好ましく挙げられる。有機溶剤としては、特開2010−188661号公報の段落0059に例示された有機溶剤を用いることができる。
中和剤としては、特開2010−188661号公報の段落0060〜0061に例示された中和剤を用いることができる。
樹脂粒子(特に自己分散性樹脂粒子)の平均粒子径は、体積平均粒子径で10nm〜400nmの範囲が好ましく、10nm〜200nmの範囲がより好ましく、10nm〜100nmの範囲が更に好ましく、10nm〜50nmの範囲が特に好ましい。体積平均粒子径が10nm以上であると製造適性が向上する。また、体積平均粒子径が400nm以下であると保存安定性が向上する。また、樹脂粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つ樹脂粒子又は単分散の粒径分布を持つ樹脂粒子のいずれでもよい。また、樹脂粒子を2種以上混合して使用してもよい。
樹脂粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められる。
インク組成物は、樹脂粒子(好ましくは自己分散性樹脂粒子)を1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
樹脂粒子(好ましくは自己分散性樹脂粒子)のインク組成物中における含有量(総含有量)としては、画像の光沢性などの観点から、インク組成物全量に対して、1質量%〜30質量%であることが好ましく、3質量%〜15質量%であることがより好ましい。
[水]
インク組成物は、水を含有する。水の含有量は、特に制限はないが、インク組成物の全質量に対して、10質量%〜99質量%の範囲が好ましく、より好ましくは30質量%〜80質量%であり、更に好ましくは50質量%〜80質量%である。
[有機溶剤]
インク組成物は、有機溶剤(好ましくは水溶性有機溶剤)の少なくとも1種を更に含有することがより好ましい。有機溶剤、特に、水溶性有機溶剤を含有することで、乾燥防止、浸透促進を図ることができる。
水溶性有機溶剤を乾燥防止剤として用いる場合、インク組成物をインクジェット法で吐出して画像形成する際に、インク吐出口でのインクの乾燥によって発生し得るノズルの目詰まりを効果的に防止することができる。
乾燥防止のためには、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。乾燥防止に好適な水溶性有機溶剤の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、及びトリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及びN−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、及び3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、及びジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。
これらの水溶性有機溶剤の中でも、グリセリン、及びジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。また、これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの水溶性有機溶剤は、インク組成物中に10質量%〜50質量%含有されることが好ましい。
また、浸透促進のためには、インク組成物を基材により浸透させる観点から水溶性有機溶剤が好適に用いられる。浸透促進に好適な水溶性有機溶剤の具体的な例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、及び1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらは、インク組成物中に5質量%〜30質量%含有されることで良好な効果が得られる。また、これらの水溶性有機溶剤は、印字・画像の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲内で用いられるのが好ましい。
また、水溶性有機溶剤は、上記以外にも粘度の調整に用いることができる。粘度の調整に用いることができる水溶性有機溶剤の具体的な例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、及びその他の極性溶剤(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が挙げられる。
なお、水溶性有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
[界面活性剤]
インク組成物は、界面活性剤の少なくとも1種を含有していてもよい。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びベタイン界面活性剤等が挙げられる。凝集速度の観点からは、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤が好ましい。
界面活性剤は、インク組成物をインクジェット法で良好に打滴する観点から、インク組成物の表面張力を25mN/m以上40mN/m以下に調整できる量で、インク組成物に含有させることが好ましい。中でも、界面活性剤の含有量は、表面張力を27mN/m〜37mN/mに調整できる量が好ましい。
また、これら界面活性剤は、消泡剤としても使用することができる。界面活性剤としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)に代表されるキレート剤等も使用することができる。
[その他の添加剤]
インク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を更に含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物を調製後に直接添加してもよく、インク組成物の調製の際に添加してもよい。
pH調整剤としては、中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。pH調整剤は、インク組成物の保存安定性を向上させる観点から、インク組成物のpHが6〜10となるように、インク組成物に添加することが好ましく、pHが7〜10となるように添加することがより好ましい。
インク組成物の粘度は、インクジェット法で吐出する場合の吐出安定性、及び後述の処理液を用いた際の凝集速度の観点から、1mPa・s〜30mPa・sの範囲が好ましく、1mPa・s〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2mPa・s〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2mPa・s〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定されるものである。
インク組成物は、カルボキシ基を有するポリマー分散剤で被覆された顔料と樹脂粒子とを含み、固形分含有率が7質量%〜10質量%であって、顔料に対する顔料以外の固形分の含有比が0.8〜1.6であることが好ましく、アクリル系ポリマーで被覆された顔料と自己分散性樹脂粒子とを含み、固形分含有率が7質量%〜9質量%であって、顔料に対する顔料以外の固形分の含有比が1.0〜1.4であることがより好ましい。
以上、インクセットについて説明したが、本発明の一実施形態のインクセットは、インク組成物の少なくとも1種と、処理液と、の組み合わせを含んでいれば、具体的な構成には特に限定はない。
インクセットにおいて、処理液の全質量中における凝集性化合物の含有量に対するインク組成物中の着色剤の含有比は、特に限定されないが、質量基準で0.1〜50が好ましく、0.15〜10がより好ましく、0.25〜5がさらに好ましい。
上記の含有比が50以下であると画像のざらつきを抑制でき、0.1以上であると画像の耐擦性が向上する。
また、インクセットの好適な態様としては、インク組成物であるシアンインクと、インク組成物であるマゼンタインクと、インク組成物であるイエローインクと、処理液と、の組み合わせからなる構成(3色構成)、インク組成物であるブラックインクと、インク組成物であるシアンインクと、インク組成物であるマゼンタインクと、インク組成物であるイエローインクと、処理液と、の組み合わせからなる構成(4色構成)が挙げられる。
但し、インクセットは、必要に応じ、1種又は2種のインク組成物と処理液とからなる1色構成又は2色構成のインクセットであってもよい。
また、インクセットは、上述のインク組成物に加え、必要に応じ、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、及びライトイエローインクから選択される少なくとも1つのインク等、その他のインク組成物を有していてもよい。上述のその他のインク組成物としては、公知のインク組成物を特に制限無く使用することができる。
また、インクセットは、必要に応じ、2種以上の処理液を含んでいてもよい。
インクセットが2種以上のインク組成物を含む場合、インク組成物の少なくとも1種が、樹脂粒子及び顔料を含有するインク組成物であればよい。また、インクセットが2種以上の処理液を含む場合、処理液の少なくとも1種が、凝集性化合物及びアニオン性界面活性剤を含有する処理液であればよい。
インクセットは、下記の画像形成方法に好適に用いられるものである。
≪画像形成方法≫
画像形成方法は、表面に水滴を付与して3秒経過したときの接触角が70°以上である基材の少なくとも一方の面に、前述の本発明の一実施形態のインクセットの処理液を付与する前処理工程と、基材の処理液が付与された面に、前述の本発明の一実施形態のインクセットのインク組成物をインクジェット法により吐出して画像を形成する画像形成工程と、を含む。
[前処理工程]
前処理工程は、表面に水滴を付与して3秒経過したときの接触角が70°以上である基材の少なくとも一方の面に、前述の本発明の一実施形態のインクセットの処理液を付与する工程である。
処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、及びバーコーター等を用いた公知の塗布方法が挙げられる。インクジェット法の詳細については、後述する。
前処理工程は、インク組成物を用いた画像形成工程前に設けられる。
すなわち、基材上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物中の成分(着色剤など)を凝集させるための処理液を付与しておき、基材上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する。
これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
また本発明の一実施形態においては、処理液を基材上に付与した後、インク組成物が付与されるまでの間に、基材上の処理液を加熱乾燥することが好ましい。これにより、にじみ防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
加熱乾燥は、ヒーター等の公知の加熱手段やドライヤー等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。
加熱方法としては、例えば、基材の処理液の付与面と反対側からヒーター等で熱を与える方法、基材の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒーターを用いた加熱法が挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
[画像形成工程]
画像形成工程は、基材の処理液が付与された面に、前述の本発明の一実施形態のインクセットが有するインク組成物をインクジェット法により吐出して画像を形成する工程である。
インクジェット法は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式のいずれであってもよい。インクジェット法としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
尚、インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式及び無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型)及び放電方式(例えば、スパークジェット型)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
なお、インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
インクジェットヘッドとしては、尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを基材の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に基材を走査させることで基材の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と基材との複雑な走査制御が不要になり、基材だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度及び画像の耐擦性の向上効果が大きい。
画像形成工程は、前処理工程の後、10秒以内に開始されることが好ましく、0.1秒以上10秒以内に開始されることがより好ましい。これにより高速に画像を形成することができる。
また、画像形成方法は、既述のインクセットを用いることで、高速に画像を記録した場合でも、着滴干渉が抑制され、高精細な画像を形成することができる。
「前処理工程の後、10秒以内に開始」とは、処理液の付与及び乾燥終了から、最初のインク滴が基材上に着滴するまでの時間が10秒以内であることを意味する。
また、画像形成工程は、高精細印画の観点から、付与(打滴)されるインク滴の液滴量が1.5pL(ピコリットル)〜3.0pLであることが好ましく、1.5pL〜2.5pLであることがより好ましい。
尚、インク滴の液滴量は、打滴するインク組成物に応じて、インクジェット法における吐出条件を適宜選択することで調整することができる。
[加熱定着工程]
本発明の一実施形態においては、処理液付与工程及びインク付与工程によって形成された画像を加熱定着する加熱定着工程を更に設けることが好ましい。
かかる加熱定着により、基材上の画像の定着が施され、画像の耐擦性がより向上する。
インク組成物が樹脂粒子を含む場合、加熱定着工程における加熱は、画像中の樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)以上の温度で行なうことが好ましい。MFT以上に加熱されることで、樹脂粒子が皮膜化して画像の耐擦性が向上する。
加熱と共に加圧する場合、加圧時における圧力は、表面平滑化の点で、0.1MPa〜3.0MPaの範囲が好ましく、0.1MPa〜1.0MPaの範囲がより好ましく、0.1MPa〜0.5MPaの範囲が更に好ましい。
加熱の方法は特に制限されないが、ニクロム線ヒーター等の発熱体で加熱する方法、温風又は熱風を供給する方法、並びにハロゲンランプ及び赤外線ランプ等で加熱する方法など、非接触で乾燥させる方法を好適に挙げることができる。
また、加熱加圧の方法は、特に制限はないが、例えば、熱板を基材の画像形成面に押圧する方法、一対の加熱加圧ローラ、若しくは一対の加熱加圧ベルト、又は基材の画像形成面側に配された加熱加圧ベルトとその反対側に配された保持ローラとを備えた加熱加圧装置を用い、対をなすローラ等を通過させる方法など、接触させて加熱定着を行なう方法が好適に挙げられる。
加熱加圧する場合、好ましいニップ時間は、1ミリ秒〜10秒であり、より好ましくは2ミリ秒〜1秒であり、更に好ましくは4ミリ秒〜100ミリ秒である。また、好ましいニップ幅は、0.1mm〜100mmであり、より好ましくは0.5mm〜50mmであり、更に好ましくは1mm〜10mmである。
加熱加圧ローラとしては、金属製の金属ローラでもよく、金属製の芯金の周囲に弾性体を有する被覆層及び必要に応じて表面層(又は離型層ともいう)が設けられたローラでもよい。後者の芯金は、例えば、鉄製、アルミニウム製、及びステンレス(SUS)製等の円筒体で構成することができ、芯金の表面は被覆層で少なくとも一部が覆われていることが好ましい。被覆層は、特に、離型性を有するシリコーン樹脂又はフッ素樹脂で形成されることが好ましい。また、加熱加圧ローラの一方の芯金内部には、発熱体が内蔵されていることが好ましく、ローラ間に基材を通すことによって、加熱処理と加圧処理とを同時に施したり、必要に応じて2つの加熱ローラを用いて基材を挟んで加熱してもよい。発熱体としては、例えば、ハロゲンランプヒーター、セラミックヒーター、ニクロム線が好ましい。
加熱加圧装置に用いられる加熱加圧ベルトを形成するベルト基材としては、シームレスのニッケル電鍮が好ましく、基材の厚さは10μm〜100μmが好ましい。また、ベルト基材の材質としては、ニッケル以外にもアルミニウム、鉄、及びポリエチレン等を用いることができる。シリコーン樹脂あるいはフッ素樹脂を設ける場合は、これら樹脂を用いて形成される層の厚みは、1μm〜50μmが好ましく、更に好ましくは10μm〜30μmである。
また、圧力(ニップ圧)を実現するには、例えば、加熱加圧ローラ等のローラ両端に、ニップ間隙を考慮して所望のニップ圧が得られるように、張力を有するバネ等の弾性部材を選択して設置すればよい。
加熱加圧ローラ、又は加熱加圧ベルトを用いる場合の基材の搬送速度は、200mm/秒〜700mm/秒が好ましく、300mm/秒〜650mm/秒がより好ましく、400mm/秒〜600mm/秒が更に好ましい。
(基材)
画像形成方法では、上述のとおり、表面に水滴を付与して3秒経過したときの接触角が70°以上である基材上に処理液が付与された後、処理液を付与した面に画像が形成される。
基材としては、表面に水滴を付与して3秒経過したときの接触角が70°以上である基材から選択される。具体的には、例えば、塗工紙等の紙基材、合成紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリマー基材が挙げられる。これらの基材の中でも、処理液に含まれる水不溶性樹脂の酸性基又は酸性基の塩と相互作用し、ベタ画像部の濃度低下、筋ムラ、及びざらつきを抑制する効果が顕著に現れる点で紙基材が好ましく、塗工層を有する紙基材(塗工紙)がより好ましい。
なお、基材の水との接触角は、接触角計ドロップマスターDM700(協和界面科学(株)製)を用いて、JIS R3257に記載の方法に準拠し常温常湿下で測定することができる。
紙基材としては、いわゆる塗工紙が好適である。塗工紙は、支持体となるセルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙及び中性紙等の表面に、無機顔料などを含有する塗工層を設けた紙基材である。塗工紙は画像部の光沢ムラが発生しやすい傾向があるが、処理液にリン酸又はリン酸化合物を含む場合、画像部の光沢ムラの発生を効果的に抑制することができる。紙基材としては、具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、及び微塗工紙が好ましい。
塗工層に含有される無機顔料としては特に制限はないが、シリカ、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化錫、硫酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、スメクタイト、ゼオライト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、及び珪藻土から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、炭酸カルシウム、シリカ、及びカオリンがより好ましい。
基材としては、一般に市販されている市販品を使用することができ、例えば、Sappi社製の「MagnoStarGloss」、International社製の「CarolinaC2S」、Metsaboard社製の「CartaIntegra」、YUPO社製の「VJFPシリーズ」が挙げられる。
本発明の一実施形態において、処理液の付与量、及びインク組成物の付与量は、必要に応じて調節することが好ましい。例えば、基材に応じて、処理液とインク組成物とが混合してできる凝集物の粘弾性等の物性を調節する等のために、処理液の付与量を変えてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明の一実施形態を更に具体的に説明する。本発明の一実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。尚、特に断りの無い限り、「部」は質量基準である。
(水不溶性樹脂粒子A−1の合成例)
攪拌機、及び冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの62質量%水溶液(東京化成工業(株)製)1.5gと水350gを加えて窒素雰囲気下で80℃に加熱し、ここに水20gに重合開始剤としてペルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)(和光純薬工業(株)製)0.85g、原料モノマーとしてアクリルアミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(Aldrich社製)12.41gを溶解した溶液Aと、原料モノマーとしてメチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)22.75g、及びメタクリル酸(和光純薬工業(株)製)12.41gを混合した溶液Bと、を3時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、さらに3時間反応した後、水不溶性樹脂粒子A−1の水分散液を412g得た。水不溶性樹脂粒子A−1の体積平均粒子径は30nmであった。水不溶性樹脂粒子A−1の重量平均分子量は、115,000であった。
体積平均粒子径は、固形分濃度が2質量%になるように調整した水不溶性樹脂粒子の水分散液を用い、液温25℃で、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定することで求めた。
重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により測定した。
GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。また、条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、示屈折率(RI)検出器を用いて行なった。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製した。
(水不溶性樹脂粒子A−2〜A−11、A−13、A−16〜A−18、A−20〜A−23、A−26〜A−36の合成例)
水不溶性樹脂粒子A−1における原料モノマーを、表1に示すモノマーに変更した以外は、水不溶性樹脂粒子A−1と同様の方法で水不溶性樹脂粒子A−2〜A−11、A−13、A−16〜A−18、A20〜A−23、A−26〜A―36の水分散液を得た。また、各水不溶性樹脂粒子の重量平均分子量は、表1にまとめて示す。
(水不溶性樹脂粒子A−12合成例)
水不溶性樹脂粒子A−1における原料モノマーを、表1に示すモノマーに変更し、水不溶性樹脂粒子A−1と同様の方法で水不溶性樹脂粒子の水分散液を得た後、50質量%水酸化ナトリウム水溶液を1.78g加え、40℃で2時間攪拌し、水不溶性樹脂粒子A−12の水分散液を得た。
(水不溶性樹脂粒子A−14合成例)
水不溶性樹脂粒子A−1における重合開始剤であるペルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)を2,2−アゾビス[2−メチルーN−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](和光純薬工業社製)に変更した以外は、A−1同様の方法で水不溶性樹脂粒子A−14の水分散液を得た。
(水不溶性樹脂粒子A−15合成例)
水不溶性樹脂粒子A−1における原料モノマーを、表1に示すモノマーに変更し、A−1と同様の方法で水不溶性樹脂粒子の水分散液を得た後、50質量%水酸化ナトリウム水溶液を1.78g加え、40℃で2時間攪拌し、水不溶性樹脂粒子A−15の水分散液を得た。
(ラテックスA−24の合成例)
攪拌機、及び冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(62質量%水溶液、東京化成工業(株)製)1.5gと水350gを加えて窒素雰囲気下で90℃に加熱し、ここに水20gにアクリルアミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウム(50質量%水溶液、Aldrich社製)12.41gを溶解した溶液Aと、メチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)12.41g、メタクリル酸(和光純薬工業(株)製)12.41g、スチレン10.34g、及びドデカンチオール0.708gを混合した溶液Bと、水20gに過硫酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)1.10gを溶解した溶液Cと、を3時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、さらに3時間反応した後、ラテックスA−24水分散液を410g得た。ラテックスA−24の体積平均粒子径は30nmであった。ラテックスA−24の重量平均分子量は、12,500であった。なお、体積平均粒子径及び重量平均分子量は既述の方法で測定した。
(ラテックスA−25の合成例)
ラテックスA−24合成において、モノマーとして、アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウム(50質量%水溶液)12.41g、メチルメタクリレート10.34g、メタクリル酸12.41g、及びスチレン12.41gを用いたことと、ドデカンチオールの代わりにメルカプトプロピオン酸1.32g用いたこと以外は、ラテックスA−24の合成と同様の方法でラテックスA−25水分散液を得た。ラテックスA−25の体積平均粒子径は30nmであった。ラテックスA−25の重量平均分子量は、25,800であった。なお、体積平均粒子径及び重量平均分子量は既述の方法で測定した。
(ラテックスA−37の合成例)
ラテックスA−24の合成において、モノマーとして、アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウム(50質量%水溶液)8.28g、メチルメタクリレート9.10g、メタクリル酸15.72g、及びスチレン12.41gを用いたこと以外は、ラテックスA−24の合成と同様の方法でラテックスA−37水分散液を得た。ラテックスA−37の体積平均粒子径は60nmであった。ラテックスA−37の重量平均分子量は、22,800であった。なお、体積平均粒子径及び重量平均分子量は既述の方法で測定した。
(水溶性樹脂X−1の合成例)
攪拌機、冷却管を備えた500mlの三口フラスコに水90gを加えて窒素雰囲気下で80℃に加熱し、ここに水45g、過硫酸カリウム0.85g、及びアクリルアミド−2−プロパンスルホン酸ナトリウム(50質量%水溶液)107.06gを溶解した溶液Aと、メタクリル酸22.94g、を混合した溶液Bを2時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、さらに3時間反応させ、水溶性樹脂X−1(下記構造)の水溶液を得た。水溶性樹脂X−1の重量平均分子量は78,000であった。なお、水溶性樹脂X−1は、体積平均粒子径測定において粒子径が検出されなかった。
(水不溶性樹脂粒子X−2の合成例)
水不溶性樹脂粒子A−1における原料モノマーを、メチルメタクリレート35.16g、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.21gに変更した以外は、A−1と同様の方法で水不溶性樹脂粒子X−2(下記構造)の水分散液を得た。
(水不溶性樹脂粒子X−3及びX−4の合成例)
水不溶性樹脂粒子A−1における原料モノマーを、表1に示すモノマーに変更した以外は、水不溶性樹脂粒子A−1と同様の方法で水不溶性樹脂粒子X−3(下記構造)及びX−4(下記構造)の水分散液を得た。

<処理液の調製>
(処理液Aの調製)
下記組成となるように各成分を混合し、処理液Aを調製した。
−処理液Aの組成−
ジエチレングリコールモノエチルエーテル … 4質量%
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル … 4質量%
マロン酸 … 17.3質量%
(着色剤を凝集させる化合物、有機酸性化合物)
プロパントリカルボン酸 … 4.3質量%
(着色剤を凝集させる化合物、有機酸性化合物)
リン酸 … 4.3質量%
(着色剤を凝集させる化合物、無機酸性化合物)
表3〜表4に記載の水不溶性樹脂粒子 … 表3〜表4に記載の量
ベンゾトリアゾール … 1質量%
消泡剤 … シリコーンオイルの量として100ppm
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、TSA−739(固形分15質量%)、エマルジョン型シリコーン消泡剤)
イオン交換水 … 合計で100質量%となる残量
(処理液Bの調製)
下記組成となるように各成分を混合し、処理液Bを調製した。
−処理液Bの組成−
ジシアンジアミド・ホルマリン重縮合物 … 10質量%
(重合平均分子量3000、着色剤を凝集させる化合物)
グリセリン … 5質量%
エチレングリコール … 15質量%
イオネットD46 … 1質量%
(三洋化成工業(株)製、4級アンモニウム型カチオン界面活性剤)
安息香酸ナトリウム … 1質量%
トリエタノールアミン … 適当量
表3に記載の水不溶性樹脂粒子 … 表3に記載の量
イオン交換水 … 合計で100質量%となる残量
(処理液Cの調製)
下記組成となるように各成分を混合し、処理液Cを調製した。
−処理液Cの組成−
塩化カルシウム … 10質量%
(着色剤を凝集させる化合物)
3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール … 5質量%
グリセリン … 30質量%
エマルゲン108 … 1質量%
(花王社製、界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル)
プロキセルxl−2(s) … 0.2質量%
(Lonza社製、防腐剤)
表3に示す水不溶性樹脂粒子 … 表3に記載の量
イオン交換水 … 合計で100質量%となる残量
(処理液Dの調製)
下記組成となるように各成分を混合し、処理液Dを調製した。
−処理液Dの組成−
ジエチレングリコールモノエチルエーテル … 4質量%
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル … 4質量%
マロン酸 … 10質量%
(着色剤を凝集させる化合物、有機酸性化合物)
ベンゾトリアゾール … 1質量%
消泡剤 … シリコーンオイルの量として100ppm
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、TSA−739(固形分15質量%)、エマルジョン型シリコーン消泡剤)
表3に記載の水不溶性樹脂粒子 … 表3に記載の量
イオン交換水 … 合計で100質量%となる残量
(処理液Eの調製)
下記組成となるように各成分を混合し、処理液Eを調製した。
−処理液Eの組成−
ジエチレングリコールモノエチルエーテル … 4質量%
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル … 4質量%
マロン酸 … 5質量%
(着色剤を凝集させる化合物、有機酸性化合物)
ベンゾトリアゾール … 1質量%
消泡剤 … シリコーンオイルの量として100ppm
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、TSA−739(固形分15質量%)、エマルジョン型シリコーン消泡剤)
表3に記載の水不溶性樹脂粒子 … 表3に記載の量
イオン交換水 … 合計で100質量%となる残量
(処理液Fの調製)
下記組成となるように各成分を混合し、処理液Fを調製した。
−処理液Fの組成−
ジエチレングリコールモノエチルエーテル … 4質量%
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル … 4質量%
マロン酸 … 3質量%
(着色剤を凝集させる化合物、有機酸性化合物)
ベンゾトリアゾール … 1質量%
消泡剤 … シリコーンオイルの量として100ppm
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、TSA−739(固形分15質量%)、エマルジョン型シリコーン消泡剤)
表3に記載の水不溶性樹脂粒子 … 表3に記載の量
イオン交換水 … 合計で100質量%となる残量
(処理液Gの調製)
下記組成となるように各成分を混合し、処理液Gを調製した。
−処理液Gの組成−
ジエチレングリコールモノエチルエーテル … 6.1質量%
1,4−ブタンジオール… 2.5質量%
マロン酸 … 9.07質量%
(着色剤を凝集させる化合物、有機酸性化合物)
DL−リンゴ酸 … 7.66質量%
(着色剤を凝集させる化合物、有機酸性化合物)
プロパントリカルボン酸 … 2.4質量%
(着色剤を凝集させる化合物、有機酸性化合物)
リン酸 … 6.73質量%
(着色剤を凝集させる化合物、無機酸性化合物)
表4に記載の水不溶性樹脂粒子 … 表4に記載の量
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム … 0.5質量%
消泡剤 … シリコーンオイルの量として100ppm
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、TSA−739(固形分15質量%)、エマルジョン型シリコーン消泡剤)
イオン交換水 … 合計で100質量%となる残量
<インク組成物の調製>
(ポリマー分散剤P−1の合成)
下記スキームにしたがって、以下に示すようにしてポリマー分散剤P−1を合成した。
攪拌機、及び冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥し、ポリマー分散剤P−1を96g得た。なお、上記に示したポリマー分散剤P−1の各構成単位の数字は質量比を表す。
得られた樹脂の組成は、プロトン核磁気共鳴分光法(H−NMR)で確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44,600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
(顔料分散液の調製)
−シアン分散液の調製−
シアン顔料であるピグメント・ブルー15:3(フタロシアニンブル−A220、大日精化(株)製)10部と、ポリマー分散剤P−1を5部と、メチルエチルケトン42部と、1×10mol/L NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部と、を混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて2時間〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去した後、更に、高速遠心冷却機7550((株)久保田製作所製)を用いて、50ml遠心管を使用し、8000rpmで30分間遠心処理を行なった。延伸処理後、沈殿物以外の上澄み液を回収した。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、顔料濃度が10.2質量%の樹脂被覆顔料粒子(ポリマー分散剤で被覆された顔料)の分散物(シアン分散液C)を得た。得られたシアン分散液Cの樹脂被覆顔料粒子の平均粒子径は105nmであった。なお、平均粒子径は既述の方法で測定した。
−マゼンタ分散液の調製−
シアン分散液の調製において、ピグメント・ブルー15:3(フタロシアニンブル−A220、大日精化(株)製)の代わりに、マゼンタ顔料であるピグメント・レッド122を用いた以外はシアン分散液の調製と同様にして、樹脂被覆顔料粒子(ポリマー分散剤で被覆された顔料)の分散物(マゼンタ分散液M)を調製した。得られたマゼンタ分散液Mの樹脂被覆顔料粒子の平均粒子径は85nmであった。なお、平均粒子径は既述の方法で測定した。
−イエロー分散液の調製−
シアン分散液の調製において、ピグメント・ブルー15:3(フタロシアニンブル−A220、大日精化(株)製)の代わりに、イエロー顔料であるピグメントイエロー74を用いた以外は、同様の方法で樹脂被覆顔料粒子(ポリマー分散剤で被覆された顔料)の分散物(イエロー分散液Y)を調製した。得られたイエロー分散液Yの樹脂被覆顔料粒子の平均粒子径は82nmであった。なお、平均粒子径は既述の方法で測定した。
−ブラック分散液の調製−
シアン分散液の調製において、ピグメント・ブルー15:3(フタロシアニンブル−A220、大日精化(株)製)の代わりに、ブラック顔料であるカーボンブラック(オリオンエンジニアドカーボンズ社製、NIPEX160−IQ)を用いた以外は、同様の方法で樹脂被覆顔料粒子(ポリマー分散剤で被覆された顔料)の分散物(ブラック分散液K)を調製した。得られたブラック分散液Kの樹脂被覆顔料粒子の平均粒子径は130nmであった。なお、平均粒子径は既述の方法で測定した。
(樹脂粒子の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製、重合開始剤)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」0.72g、及びメチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g、及びイソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64,000であり、酸価は38.9mgKOH/gであった。酸価及び重量平均分子量は、既述の方法で測定した。
次に、重合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、及び1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、及び蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0質量%の樹脂粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を得た。なお、下記に示した化合物例(B−01)の各構成単位の数字は質量比を表す。
(インク1の作製)
上記で得られた各顔料分散液(シアン分散液C、マゼンタ分散液M、イエロー分散液Y、ブラック分散液K)及び樹脂粒子B−01を用い、下記表2に示すインク組成となるように各成分を混合し、各インク組成物(マゼンタインク組成物M1、ブラックインク組成物K1、シアンインク組成物C1、イエローインク組成物Y1)をそれぞれ調製した。
調製した各インク組成物をプラスチック製ディスポーサブルシリンジにて、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)5μmフィルター(ミリポア社製Millex SV、直径25mm)で濾過して完成インク(マゼンタインクM1、ブラックインクK1、シアンインクC1、イエローインクY1)とした。
(表2の説明)
・サンニックスGP−250 … 三洋化成工業(株)製の有機溶剤
・オルフィンE1010 … 日信化学工業(株)製のノニオン性界面活性剤
(実施例1〜実施例49、比較例1〜比較例4)
<インクセット>
上記各インク(マゼンタインクM1、ブラックインクK1、シアンインクC1、イエローインクY1)と、各処理液(処理液A〜処理液F)と、を組み合わせたインクセット1〜インクセット54を準備した。これらの各インクセットを用いて、以下の手順により画像を形成し、評価した。
<画像形成>
基材としてコート紙(Metsaboard社製、CartaIntegra、表面に水滴を付与して3秒経過したときの接触角74°)を用い下記条件で画像を形成した。
なお、下記画像形成では、処理液付与工程の後、10秒以内にインク打滴が開始されるようにした。
また、基材の水との接触角は、接触角計ドロップマスターDM700(協和界面科学(株)製)を用いて、JIS R3257に記載の方法に準拠し測定した。滴量を2μLとして、水滴の落滴から3秒経過後の基材の接触角を測定した。
(前処理工程)
基材へのインク付与の直前に、塗布バーを用いて処理液を基材上に付与した。処理液の塗工量は1.7g/mになるように基材に塗設した。
次いで、基材上に付与された処理液を、下記条件で乾燥させた。
〜処理液用乾燥条件(送風乾燥)〜
風速: 15m/s
温度及び加熱方法:基材の表面温度(処理液が付与された側の温度)が60℃となるように基材の背面(処理液が付与されていない側の面)から接触型平面ヒーターで加熱した。
送風領域:450mm(乾燥時間0.7秒)
(画像形成工程)
処理液が付与された基材上に、下記の条件で4色シングルパス画像形成を行った。
具体的には、処理液が付与された基材の処理液上に、下記条件で各色のインクを付与(打滴)して画像を形成した。
ヘッド :1,200dpi(dot per inch)/20inch幅ピエゾフルラインヘッドを4色分配置したヘッドを用いた。
吐出液滴量:2.4pLとした。
駆動周波数:30kHz(基材搬送速度635mm/sec)とした。
次に、基材上に付与されたインクを下記条件で乾燥させた。
〜インク用乾燥条件(送風乾燥)〜
風速 :15m/s
温度 :基材の表面温度(インクが付与された側の温度)が60℃となるように基材の背面(インクが付与されていない側の面)から接触型平面ヒーターで加熱した。
送風領域:640mm(乾燥時間1秒間)
(加熱定着工程)
上記インクの付与により形成された画像を、シリコンゴムローラ(硬度50°、ニップ幅5mm)を用い、下記条件で加熱定着した。
これにより、基材上に画像が形成された試料を得た。
〜加熱定着の条件〜
ローラ温度:90℃
圧力:0.8MPa
<評価>
上記で得られた試料ついて、以下の評価を行なった。評価結果を後述の表3及び表4に示す。
1.ベタ画像部の濃度評価
ブラックインク単色のベタ画像を基材に形成し、記録物を得た。画像が形成された記録物について、ベタ画像部の濃度を測定した。ベタ画像部の濃度は、分光光度計スペクトロアイ(サカタインクス社製)を用いて、ビジュアル(V)濃度で測定した。
ベタ画像部の濃度は、着滴、凝集後のインクドットが小さいと白地の影響を受け濃度が低く現れる。またインクセットの凝集性が低いと隣接するインクドットと着滴干渉を起こし、白地が見えやすく濃度が低く現れる。なお、下記評価基準は、ランク5及び4が実用上許容されるレベルである。
−評価基準−
5:記録物におけるベタ画像部の濃度が1.9を超える。
4:記録物におけるベタ画像部の濃度が1.7を超え1.9以下である。
3:記録物におけるベタ画像部の濃度が1.5を超え1.7以下である。
2:記録物におけるベタ画像部の濃度が1.3を超え1.5以下である。
1:記録物におけるベタ画像部の濃度が1.3以下である。
2.画像のざらつき評価
上記画像形成工程において、処理液上にマゼンタインクをベタ状に付与してマゼンタのベタ画像を形成し、得られたマゼンタのベタ画像上にシアンインクを網点面積率50%〜80%となるように網点状に付与し、2次色画像を得た。得られた2次色画像に対し、上述の加熱定着処理を施した。加熱定着後の2次色画像を目視で観察し、画像のざらつきを下記基準に従って評価した。
−評価基準−
5:全体にざらつきが見られず均一であった。
4:わずかに微小なざらつきが見られるが、全体としてはほぼ均一であった。
3:微小なざらつきが見られ、実用上問題となるレベルであった。
2:ざらつきが目立ち、実用上問題になるレベルであった。
1:強い濃淡をもったざらつきが多く発生し、均一とは言えないレベルであった。
3.筋ムラ評価
ブラックインク単色のベタ画像を基材に形成し、記録物を得た。画像が形成された記録物を目視で観察し、記録物の搬送方向に対する筋ムラの発生の有無を確認した。
画像が形成された記録物における筋ムラの発生度合いを下記基準に従って評価した。
筋ムラはインクジェット吐出ヘッドの吐出曲がりが大きいと発生しやすく、ドットが小さいと吐出曲がりにより生じた筋が視認されやすい。またインクセットの凝集性が低いと隣接するドットと着滴干渉を起こし、基材の色(白地)が見えやすく筋ムラが発生する。
−評価基準−
5:記録物における筋ムラの発生が認められない。
4:記録物にごく細いスジが1本視認されるが、実用上許容されるレベルである。
3:記録物にごく細いスジが2〜4本視認されるが、実用上許容されるレベルである。
2:記録物に容易に視認されるスジが1〜4本発生し、実用上許容されない。
1:記録物に容易に視認されるスジが多数発生し、実用上許容されない。
4.処理液安定性の評価
上記で得られた各実施例及び比較例に対応する処理液を30mlポリビンに25g入れ、このポリビンを、40℃に設定したサーモセルコ(恒温恒室装置(又はインキュベーションチャンバーとも言う。))中で2週間保存した。この保存前後において処理液の粘度を測定し、下記式に従ってΔ粘度を算出した。
Δ粘度 = (40℃2週間保存後の処理液粘度)−(処理液粘度)
得られたΔ粘度に基づき、以下の評価基準により、処理液の経時安定性(40℃経時安定性)を評価した。
Δ粘度が小さいほど処理液の経時安定性に優れる。また、Δ粘度が大きいほど処理液の高温経時安定性に劣る。
下記評価基準において、5又は4であれば実用上の許容範囲内である。
−評価基準−
5: Δ粘度が0.3mPa・s以下である。
4: Δ粘度が0.3mPa・sを超え0.6mPa・s以下である。
3: Δ粘度が0.6mPa・sを超え1.0mPa・s以下である。
2: Δ粘度が1.0mPa・sを超え2.0mPa・s以下である。
1: Δ粘度が2.0mPa・sを超える。
5.乾燥後再分散性の評価
上記で得られた処理液をプラスチック板上に塗布膜厚10μmとなるように塗布し、40℃で6時間乾燥した。乾燥後のプラスチック板を1cm×1cmの正方形に切り取り、バイアル瓶に切り取った板を入れ、水を加えて攪拌し、処理液の塗布膜が再分散するかを以下の評価基準に従い目視で評価した。
プラスチック板上の乾燥後の塗布膜が水で再分散され、固体として残らないことが好ましい。下記評価基準において、6〜3であれば、実用上の許容範囲内である。
−評価基準−
6: 水を加え30秒攪拌後、固形物が全く確認されない。
5: 水を加え30秒攪拌後は長辺0.3cm未満の固形物が観測されるが、1分攪拌後全く確認されない。
4: 水を加え30秒攪拌後は長辺0.3cm未満の固形物が観測されるが、3分攪拌後全く確認されない。
3: 水を加え2分攪拌後は長辺0.3cm未満の固形物が観測されるが、20分攪拌後全く確認されない。
2: 水を加え30分攪拌後、長辺0.3cm未満の固形物が残存する。
1: 水を加え30分攪拌後、長辺0.3cm以上の固形物が残存する。
表3及び表4より、本発明の一実施形態における水不溶性樹脂粒子A−1〜A−37を用いた場合、いずれのインクセットにおいても、ベタ画像部の濃度評価、筋ムラ評価及び画像のざらつき評価の結果が良好であることがわかる。よって、本発明の一実施形態のインクセットは、ベタ画像部の濃度低下、筋ムラの発生及び画像のざらつきが抑制された画像を形成できることがわかる。
比較例1のように水溶性樹脂を用いた場合では、樹脂が基材に浸透するため基材表面に残らず、ベタ画像部の濃度低下及び筋ムラが発生する。また、比較例1のインクセットは、処理液安定性は悪化しないが、初期の粘度が上昇する。
比較例2のように水不溶性樹脂粒子であってもカルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有さない場合は、ベタ画像部の濃度低下及び筋ムラが発生する。
実施例1〜実施例5及び比較例3の比較より、水不溶性樹脂粒子1g当りのカルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有量が1.0mmol以上7.0mmol以下であると、ベタ画像部の濃度評価、筋ムラ評価及び画像のざらつき評価の結果に優れることがわかる。また、これらの効果は、水不溶性樹脂粒子1g当りのカルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有量が1.0mmol以上6.0mmol以下であると、特に優れることがわかる。
実施例1及び実施例13の比較より、水不溶性樹脂粒子が、カルボキシ基及びスルホ基の両方を有することで、ベタ画像部の濃度評価、筋ムラ評価及び処理液の安定性の評価の結果が特に優れることがわかる。さらにこれらの効果は、実施例1、2、4、7〜12と実施例5の比較より、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の合計量に対するスルホ基又はスルホ基の塩の合計量の比が、モル基準で0.08以上2.0以下であると、特に優れることがわかる。
実施例1及び実施例18〜実施例21の比較より、処理液中の凝集性化合物が有機酸性化合物であることで、ベタ画像部の濃度評価、筋ムラ評価及び画像のざらつき評価の結果が優れることがわかる。
2015年2月27日に出願された日本国特許出願2015−039453号及び2015年9月30日に出願された日本国特許出願2015−194355号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。

Claims (23)

  1. 着色剤と水とを含むインク組成物と、
    カルボキシ基又はカルボキシ基の塩の含有量が、水不溶性樹脂粒子1g当り1.0mmol以上7.0mmol以下である水不溶性樹脂粒子と前記インク組成物中の着色剤を凝集させる化合物と水とを含む処理液と、
    を有し、
    前記水不溶性樹脂粒子のガラス転移温度が、100℃以上250℃以下であるインクセット。
  2. 前記水不溶性樹脂粒子のガラス転移温度が、105℃以上250℃以下である請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記水不溶性樹脂粒子は、さらにスルホ基又はスルホ基の塩を有する請求項1又は請求項2に記載のインクセット。
  4. 前記水不溶性樹脂粒子は、水不溶性樹脂の末端に少なくとも1つのスルホ基又はスルホ基の塩を有する請求項に記載のインクセット。
  5. 前記スルホ基又は前記スルホ基の塩の水不溶性樹脂粒子中における含有量が、水不溶性樹脂粒子1g当り0.1mmol以上1.2mmol以下である請求項又は請求項に記載のインクセット。
  6. 前記水不溶性樹脂粒子1g当りの、前記カルボキシ基又は前記カルボキシ基の塩の合計量に対する前記スルホ基又は前記スルホ基の塩の合計量の比が、モル基準で0.001以上2.6以下である請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載のインクセット。
  7. 前記水不溶性樹脂粒子1g当りの、前記カルボキシ基又は前記カルボキシ基の塩の合計量に対する前記スルホ基又は前記スルホ基の塩の合計量の比が、モル基準で0.08以上2.0以下である請求項〜請求項のいずれか1項に記載のインクセット。
  8. 前記水不溶性樹脂粒子1g当りの、前記カルボキシ基又は前記カルボキシ基の塩の合計量に対する前記スルホ基又は前記スルホ基の塩の合計量の比が、モル基準で0.08以上0.6以下である請求項3〜請求項7のいずれか1項に記載のインクセット。
  9. 前記水不溶性樹脂粒子は、下記一般式1又は下記一般式2で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を含み、前記一般式1で表される構成単位の含有量及び前記一般式2で表される構成単位の含有量の合計が水不溶性樹脂粒子の全質量に対して10質量%〜50質量%である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のインクセット。

    一般式1中、Rはメチル基又は水素原子を表し、Lは単結合又は炭素数1〜12の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−、−C(=O)−、もしくは、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を表し、Mは水素原子又は陽イオンを表す。
    一般式2中、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又はメチレン基を表し、Mは水素原子又は陽イオンを表す。
  10. 前記水不溶性樹脂粒子は、下記一般式3で表される構成単位を含み、前記一般式3で表される構成単位の含有量が水不溶性樹脂粒子の全質量に対して5質量%〜25質量%である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のインクセット。

    一般式3中、Rはメチル基又は水素原子を表し、Lは単結合又は炭素数1〜10の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−、−C(=O)−、−CH(−OH)−、もしくは、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を表し、Mは水素原子又は陽イオンを表す。
  11. 前記水不溶性樹脂粒子は、疎水性基を有する構成単位を含み、前記疎水性基を有する構成単位の含有量が水不溶性樹脂粒子の全質量に対して5質量%〜40質量%である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のインクセット。
  12. 前記水不溶性樹脂粒子は、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩を有する単量体に由来する構成単位の含有量に対する前記疎水性基を有する構成単位の含有量が、質量基準で0.2〜1.4である請求項11に記載のインクセット。
  13. 前記疎水性基を有する構成単位が、下記一般式A〜一般式Fで表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位である請求項11又は請求項12に記載のインクセット。

    一般式A〜一般式F中、R11はメチル基又は水素原子を表し、R12及びR13は、それぞれ独立に鎖状又は分岐状の炭素数が4以上のアルキル基を表し、nは0から6までの整数を表し、L11は単結合又は炭素数1〜18の直鎖、分岐もしくは環状アルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−、−C(=O)−、もしくは、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を表す。
  14. 前記水不溶性樹脂粒子の含有量が、前記処理液の全質量に対して0.5質量%〜20質量%である請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のインクセット。
  15. 前記水不溶性樹脂粒子の含有量が、前記処理液の全質量に対して0.5質量%〜5質量%である請求項14に記載のインクセット。
  16. 前記水不溶性樹脂粒子の体積平均粒子径が、1μm以下である請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載のインクセット。
  17. 前記水不溶性樹脂粒子の重量平均分子量が、5,000以上50,000以下である請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載のインクセット。
  18. 前記インク組成物中の着色剤を凝集させる化合物は、有機酸性化合物である請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載のインクセット。
  19. 前記有機酸性化合物が、リン酸基又はカルボキシ基を有する化合物である請求項18に記載のインクセット。
  20. 前記インク組成物中の着色剤を凝集させる化合物に対する前記水不溶性樹脂粒子の含有比が質量基準で0.01〜2.0である請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載のインクセット。
  21. 前記インク組成物において、前記着色剤が顔料であり、前記顔料がカルボキシ基を含有する高分子化合物である分散剤によって分散されている請求項1〜請求項20のいずれか1項に記載のインクセット。
  22. 表面に水滴を付与して3秒経過したときの接触角が70°以上である基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜請求項21のいずれか1項に記載のインクセットの処理液を付与する前処理工程と、
    前記基材の前記処理液が付与された面に、請求項1〜請求項21のいずれか1項に記載のインクセットのインク組成物をインクジェット法により吐出して画像を形成する画像形成工程と、
    を含む画像形成方法。
  23. 前記基材は、塗工層を有する紙基材である請求項22に記載の画像形成方法。
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