JP2005052984A - インクジェット記録方法及び記録物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】記録方法は、(1)水系顔料インク組成物から構成されるインクセットと、(2)水とポリマー微粒子とを含むが着色剤成分を含まないクリアインクとを用い、前記クリアインクを記録媒体の記録表面側全体に吐出するインクジェット記録方法であって、
前記インクセットが、カーボンブラック濃度が低い薄いブラックインクと、カーボンブラック濃度が中間的な中間階調用ブラックインクと、カーボンブラック濃度が高い濃いブラックインクとを含むことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方法及び記録物に関する。本発明のインクジェット記録方法によると、3種以上のブラックインクを有するインクセットを用いて記録した記録像において、光沢ムラが解消された高光沢記録物を得ることができる。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法等によって、良好な黒白モノクロ画像やグレースケールを得る目的で、カーボンブラック濃度が異なる2種類又は3種類以上のブラックインクを含むインクセットを用いることがある。例えば、黒白モノクロ画像記録用インクセットとして、ブラックインクとライトブラックインクとからなる2色インクセットを用いることがある。また、カラー記録用インクセットにおいても、カラー画像の無彩色部分(黒色、灰色及び白色の部分)の高品位化の要求に応じるために、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクからなる4色インクセット(あるいは、それらにライトシアンインク及びライトマゼンタインクを追加した6色インクセット)に、更にライトブラックインクを加えて5色インクセット(あるいは、7色インクセット)とすることがある。なお、ライトブラックインクとは、ブラックインクよりもそのカーボンブラック濃度を低くしたものであり、前記の通り、シャドー部等の暗色に対する色再現性やグレーの階調性を向上させる目的で使用する。
【0003】
例えば、カーボンブラック濃度が異なる3種のブラックインクを用いることにより、グレーバランスの安定性とメタメリズムが飛躍的に向上する。特にグレーバランスの点で、その効果が非常に大きい。
すなわち、グレーバランスを、1種類又は2種類のブラックインクだけで出力すると、ハイトーン領域(明るい領域)での粒状性が問題となる。この粒状性を解消する手段としては、例えば、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクの混合によってハイトーン無彩色領域を出力する方法がある。しかしながら、無彩色領域を複数種の有彩色で出力する方式を採用すると、出力色の管理に非常に高い技術が必要となり、出力色がばらつく危険性がある。
【0004】
前記の出力色のばらつきには、種々の要因があり、その一つとして、シアンインク(ライトシアンインク)、マゼンタインク(ライトマゼンタインク)、及びイエローインク間でのインク重量のばらつきがある。すなわち、インク重量がばらつくと出力色がばらつく要因となる。例えば、シアンインクの吐出量が10%増加して、イエローインクの吐出量が10%減少すると、全体としての出力色は青味側にシフトする。もちろん、インクジェットプリンタは、常に全く同じ出力が得られるように設計されている。しかしながら、インクは液体であるため、外部環境の変化による影響を受ける。例えば、温度変化によりインクの粘度が変化する。インクジェットヘッドから圧力を与えることによって吐出させるインクジェット方式では、インク液の粘度が変化すると当然にインク吐出量も変化してしまう。インクジェットプリンタでは、こうした影響を小さくさせるために、例えば、ヘッド駆動には出力時の温度補正機能を備えているが、わずかなインク重量変化さえも完全に消失させることは現実には困難であり、わずかなインク重量変化が発生する可能性は存在する。更に、実際には、温度による出力色の変化以外にも、湿度も要因となり得るし、記録媒体(インクジェットメディア)もこれら環境の影響を受けて、微妙な色変化の要因となる。
【0005】
ハイトーン領域(明るい領域)を複数種の有彩色で出力する方式における前記の欠点は、カーボンブラック濃度が低い第3のブラックインクを用いることによって解消する。すなわち、カーボンブラック濃度が低い第3のブラックインクを用いると、仮にインクの吐出量にばらつきが発生しても、無彩色の色相の変化としては影響を受けず、結果として色相が安定することになる。
【0006】
また、ブラックインクはドットの視認性が最も高い色である。このドット視認性を、例えばハイトーン領域で、軽減させるためには、インクに含まれるカーボンブラックの濃度を低下させる必要がある。その一方で「黒味」をしっかり表現させるためにはカーボンブラック濃度を一定レベル以上に保持する必要もある。そのためには、ドットが見えない(あるいは、見えにくい)濃度のインクと、黒味をしっかりと表現させるためのカーボンブラック濃度のインクとが必要となる。こうした観点では、2種のブラックインクだけでは中間階調が表現しにくいため、中間濃度インクが必要となる。以上のように、カーボンブラック濃度が低いブラックインクと中間濃度インクとを含む3種以上のブラックインクを有するインクセットは非常に有意義となる。
【0007】
しかしながら、2種又は3種以上のブラックインクを有するインクセットを用いて記録した場合の効果や欠点について研究し、その結果を報告した例は、現在のところほとんど知られていない。
例えば、特開平6−226998号公報(特許文献1)には、濃度の異なる複数種類のインクを使用する画像記録装置及び記録ヘッドが記載されている。しかしながら、この特開平6−226998号公報には、濃度の異なるそれぞれ2〜4種類の濃度のブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンを備えた記録装置が記載されているに過ぎない。
また、特開平11−320924号公報(特許文献2)には、カーボンブラック濃度の異なる複数種類のブラックインクをカラーインクのセットと組み合わせて使用する画像記録装置及びその制御方法が記載されている。しかしながら、この特開平11−320924号公報に記載の技術は、同一の記録媒体上にカラー画像とは別に、モノクロ高階調画像を形成することを目的としており、そのモノクロ高階調画像形成のために複数種類のブラックインクを用いることが記載されているのみである。
【0008】
ところで、記録物には、記録部(印字部)と非記録部分(非印字部)が存在し、記録部(印字部)には、デューティー(duty)の高い部分とデューティーの低い部分が存在する。特に光沢のある記録媒体に対して顔料インクによる記録を行うと、記録部(印字部)においては、デューティーによって光沢感が異なるという問題があった。すなわち、デューティーが低いところでは光沢が高くなるのに対し、デューティーが高いところでは光沢が低くなる傾向がある。これは、低デューティー領域では顔料粒子が比較的平滑に記録媒体上に定着しているために、光沢が高くなるのに対し、高デューティー領域では顔料粒子が記録媒体上に厚みをもって重なり、微細な凹凸が形成されるために、光沢が低くなるためと推定される。また、非記録部は、記録媒体それ自体の光沢を有するのに対し、記録部では、記録媒体それ自体の光沢が覆われるために光沢差が発生する。こうして、低デューティー部、高デューティー部、そして非記録部の間で生じる光沢のムラが技術的な課題であった。
【0009】
このような光沢ムラを解消するには、記録操作後に記録像の上から樹脂皮膜をオーバーコートして、光沢性を付与することが考えられる。しかしながら、前記のような光沢ムラの解消を主要な目的として、インクジェット記録方式による記録物にオーバーコート層を設ける技術はほとんど提案されていない。
【0010】
もっとも、前記のような光沢ムラの解消を直接の目的とする技術でなければ、インクジェット記録方式による記録物にオーバーコート層を設けること自体は、従来から種々知られている。例えば、特開平8−174989号公報(特許文献3)には、画像品質及び耐候性に優れた印刷画像を実現する目的で、高光沢インクジェット記録方法用記録媒体にインクジェット記録後、そのインク受容層上に耐熱性フィルムを介して、溶融転写された熱可塑性樹脂を主成分とする転写オーバーコート層を設ける技術が開示されている。しかし、この技術は、コストアップや、フィルムにシワが入ったり、記録媒体とフィルムとの間に空気が混入する等の問題があった。また、充分な光沢を得ることもできなかった。
【0011】
更に、特開平11−277724号公報(特許文献4)及び特開2000−141708号公報(特許文献5)には、プラスチック製品や金属製品等のインク吸収性のない記録媒体上に形成された記録画像の耐スクラッチ性の向上を目的として、インクジェット記録後に、記録画像上に紫外線硬化性のコーティング剤を塗布し、これに紫外線を照射して硬化させる技術が開示されている。しかし、この技術は、コストアップや、工程の煩雑さ、人体に有害な紫外線の利用等の問題があるだけでなく、充分な光沢を得ることもできなかった。
【0012】
また、特開平11−263052号公報(特許文献6)には、記録画像の保護方法として、インクジェット記録時に、記録画像上に、皮膜形成能を有する固形の透明樹脂を加熱溶融したものをノズルから吐出し、前記透明樹脂の皮膜で前記記録画像を被覆する技術が開示されている。しかし、この技術は、いわゆるソリッドインクジェット記録方法を前提としており、通常のインクジェット記録方法には適していない。また、仮に、この技術を通常のインクジェット記録方法に応用したとしても、通常のインクジェット記録装置に搭載されているインクタンクでは前記透明樹脂の液状物を収容しきれず、装置の変更、大型化を余儀なくされる、等の問題があった。また、充分な光沢を得ることもできなかった。
【0013】
更にまた、特開平11−335604号公報(特許文献7)には、フッ素系エマルジョン樹脂とその分散液媒体とを含有するインクジェット記録用液体組成物が記載されており、前記液体組成物により耐水性が得られるとされている。しかし、この技術では、充分な光沢を得ることはできない。
【0014】
また更に、特開2000−1640号公報(特許文献8)には、硬化剤を含んでなる溶液をインクジェット用インク画像に適用することを含む画像の耐久性の改良方法が記載されており、前記溶液を適用することにより優れた耐水堅牢度及び湿潤接着性が得られるとされている。しかし、この技術では、充分な光沢を得ることはできない。
【0015】
【特許文献1】
特開平6−226998号公報
【特許文献2】
特開平11−320924号公報
【特許文献3】
特開平8−174989号公報
【特許文献4】
特開平11−277724号公報
【特許文献5】
特開2000−141708号公報
【特許文献6】
特開平11−263052号公報
【特許文献7】
特開平11−335604号公報
【特許文献8】
特開2000−1640号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下で、本発明者は、3種以上のブラックインクを有するインクセットを用いて記録した場合の効果や欠点について研究していたところ、特に、光沢系記録媒体に対して前記インクセットによる印字を行うと、記録表面全体においては、非記録部分(非印字部)と記録部分(印字部)との間に光沢ムラが発生し、更に、記録部分(印字部)における低デューティー部分と高デューティー部分との間にも光沢ムラが発生することを見出した。従って、本発明の課題は、3種以上のブラックインクを有する前記のインクセットを用いる場合に発生する前記の光沢ムラを解消することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記の課題は、本発明により、(1)水系顔料インク組成物から構成されるインクセットと、(2)水とポリマー微粒子とを含むが着色剤成分を含まないクリアインクとを用い、前記クリアインクを記録媒体の記録表面側全体に吐出するインクジェット記録方法であって、
前記インクセットが、カーボンブラック濃度が低い薄いブラックインクと、カーボンブラック濃度が中間的な中間階調用ブラックインクと、カーボンブラック濃度が高い濃いブラックインクとを含むこと
を特徴とする、前記のインクジェット記録方法によって解消することができる。
本発明の好ましい態様によれば、光沢系記録媒体に対して実施する。
また、本発明の別の好ましい態様によれば、前記水系顔料インク組成物による記録部における前記クリアインクの第1の吐出量が、前記水系顔料インク組成物による非記録部での前記クリアインクの第2の吐出量よりも少なくなるように設定する。
【0018】
更に、本発明の別の好ましい態様によれば、前記のポリマー微粒子が、アニオン性ポリマー微粒子、ノニオン性ポリマー微粒子、又はそれらの組み合わせである。
更に、本発明の別の好ましい態様によれば、前記のクリアインクが、そのクリアインクの全重量に対してポリマー微粒子を0.1重量%〜20重量%の量で含有する。
更に、本発明の別の好ましい態様によれば、前記のクリアインクがポリアリルアミン又はその誘導体を含む。
更に、本発明の別の好ましい態様によれば、前記の薄いブラックインクにおけるカーボンブラック含有量がそのブラックインクの全重量に対して0.01重量%〜0.4重量%であり、前記の中間階調用ブラックインクにおけるカーボンブラック含有量がそのブラックインクの全重量に対して0.4重量%〜1.5重量%であり、そして前記の濃いブラックインクにおけるカーボンブラック含有量がそのブラックインクの全重量に対して1.5重量%〜10重量%である。
更に、本発明の別の好ましい態様によれば、前記の中間階調用ブラックインクが、カーボンブラック含有量0.4重量%〜1重量%のブラックインク及び/又はカーボンブラック含有量1重量%〜1.5重量%のブラックインクである。
また、本発明は、前記のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする記録物にも関する。
【0019】
【発明の実施の形態】
(A)クリアインクの吐出方法
本発明方法においては、前記クリアインクを記録媒体の記録表面側全体に吐出する。すなわち、インクセットを構成する有色インクによる記録部(印字部)及び有色インクの非記録部(非印字部)の両方に吐出することにより、非記録部分(非印字部)と記録部分(印字部)との間の光沢ムラ、及び記録部分(印字部)における低デューティー部分と高デューティー部分との間の光沢ムラを同時に解消し、高品質の記録画像を形成することができる。
【0020】
本発明方法は、特には光沢系記録媒体に適用するのが好ましい。本発明方法においては、光沢系記録媒体の記録表面側全体にクリアインクを吐出する限り、その吐出方法は限定されるものではなく、具体的には、光沢系記録媒体それ自体の光沢を有する非記録部と、光沢系記録媒体それ自体の光沢が覆われる記録部との間に発生する光沢差を解消し、更に、顔料粒子が比較的平滑に記録媒体上に定着する低デューティー領域と、顔料粒子が記録媒体上に厚みをもって重なるために形成される微細な凹凸構造を有する高デューティー領域との間に発生する光沢差を解消するように、記録表面側全体にクリアインクを吐出する。
【0021】
本発明方法におけるクリアインク吐出方法の具体的態様を、図1及び図2に基づいて説明する。
図1及び図2は、有色インクの吐出量とクリアインクの吐出量との関係を説明するグラフである。図1及び図2において、(a)は有色インクの吐出量VSと、クリアインクの吐出量VCLの関係を示し、(b)は有色インクの吐出量VSと、有色インクとクリアインクの吐出量の合計値VT(=VS+VCL)との関係を示している。横軸は有色インクの吐出量VSであり、縦軸は、凡例で示されたインクの吐出量である。
【0022】
吐出量としては、全ての画素にいずれかのインクを吐出する場合を100%とする記録率を用いている。一つの画素の領域にサイズの異なるドットを形成することが可能な場合には、吐出したインクの容量を吐出量として用いて、吐出量の関係を設定することが好ましい。有色インクの吐出量VSは、有色インクとして使用することが可能なインクの吐出量の合計値である。従って、同じ画素位置に複数種類のインクが吐出される場合には、有色インク吐出量VSや合計吐出量VTは100%よりも大きな値となる。インク毎に光沢が異なる場合には、インク毎に異なる係数で重みをつけて合計値を計算することが好ましい。
【0023】
図1に示す態様において、有色インクの吐出量VSが0%の領域(すなわち、非記録部)で、クリアインクの吐出量VCLは、最も高い一定値A〔図1〔b〕参照〕となるように設定される。そして、有色インクの吐出量VSが低い領域(すなわち、低デューティー記録部)では、有色インク吐出量VSとクリアインク吐出量VCLとの合計吐出量VTが、前記の最高値Aとなるように設定される。続いて、有色インクの吐出量VSが高い領域(すなわち、高デューティー記録部)では、クリアインクの吐出量VCLは、最も低い一定値B〔図1〔a〕参照〕となるように設定される。これによって、有色インクの吐出量VSが0%の領域(非記録部)及び低デューティー領域の光沢を、クリアインクによって強くすることができ、有色インクの吐出量VSが多い領域(高デューティー領域)との光沢の差を小さくすることができる。また、有色インクの吐出量VSが多い領域ではクリアインクの吐出量VCLを少なくすることで、必要以上のクリアインクを吐出しないように設定されている。これによって、印刷媒体が波打つことを防止したり、吐出したインクが乾くのに必要な時間が長くなることを防止したり、クリアインクの使用量を節約したりすることができる。図1に示す態様では、所定の最高値Aは40%であり、所定の最低値Bは5%であるが、これらの値A,Bは使用するインクの種類や印刷媒体の種類に応じて決めることができる。
【0024】
図2に示す態様では、クリアインク吐出量VCLの値は、有色インクの吐出量VSが0%の領域(すなわち、非記録部)で最も高い値Cとなり、有色インクの吐出量VSが高い領域(すなわち、高デューティー記録部)で最も低い値となるように設定され、しかも、前記の最高値Cから最低値まで、連続的に一定の割合で低下するように設定される。これによって、記録媒体それ自体の光沢が弱い場合でも、有色インク吐出量VSの値によらずに、光沢差を安定して小さくすることができる。さらに、クリアインク吐出量VCLの値は、合計吐出量VTの値が有色インク吐出量VSの値の増加に伴って減少する領域が無いように設定されているので、印刷画像において有色インク吐出量VSの値が連続的に増加する領域、例えばグラデーション領域においても、光沢の異なる境界が目立たないように、光沢のムラを改善することができる。図2に示す実施態様では、前記の最高値Cは30%であるが、この値Cは、使用するインクの種類や印刷媒体の種類に応じて決めることができる。
【0025】
クリアインクの吐出量は、使用することのできる有色インク全ての吐出量の合計値ではなく、一部の有色インクの吐出量の合計値に基づいて調整することもできる。例えば、各有色インクを吐出して光沢を比較し、光沢の比較的強い有色インクのみの吐出量に基づいて、クリアインクの吐出量を調整することもできる。具体的には、有色インクの中のブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、又はイエローインクの吐出量に基づいてクリアインクの吐出量を調整することで、光沢のムラを改善することができる。更に、クリアインクの吐出量は、他のインクの吐出量に応じて連続的に変化させずに、複数の段階に分けて階段状に不連続に変化させることもできる。こうすることで、クリアインクの吐出量の制御を簡単なものにすることができる。
【0026】
(B)クリアインク
本発明方法で用いることのできるクリアインクについて以下に説明する。
前記クリアインクは、水とポリマー微粒子とを含み、着色剤成分を含まない。前記クリアインクは、水とポリマー微粒子以外に、ポリアリルアミン又はその誘導体、及び/又は水溶性有機溶剤を含むことができる。
(1)ポリアリルアミン及びその誘導体
本発明方法で用いるクリアインクが含むことのできるポリアリルアミン又はその誘導体は、一般式(1):
―[CH2CH(CH2NR1R2)]― (1)
(式中、R1及びR2は、独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいアルキルアミノ基、置換されていてもよいヒドラジノ基、置換されていてもよいアルコキシ基、又は置換されていてもよいハイドロキシアルキル基である)で表される繰り返し単位を少なくとも一種含んでなる高分子化合物である。
【0027】
前記のクリアインクがポリアリルアミン又はその誘導体を含むと、良好な発色性及び光沢性を維持しながら、保存安定性に優れた記録物を実現することができる。より具体的には、変色し難い画像を実現することができる。
【0028】
ポリアリルアミン又はその誘導体の含有量は、発色性及び光沢性向上の観点から適宜決定されてよいが、本発明の好ましい態様によれば、クリアインク全量に対して、好ましくは0.1重量%以上、30重量%以下、より好ましくは下限が0.1重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上であり、より好ましくは上限が10重量%以下であり、更に好ましくは5重量%以下である。
本発明で用いるクリアインクに含まれるポリアリルアミン又はその誘導体の重量平均分子量は、5,000以上であることが好ましい。好ましい態様によれば、前記のクリアインクは、重量平均分子量が5,000未満のポリアリルアミン又はその誘導体を更に含むのが好ましい。重量平均分子量が5,000未満のポリアリルアミン又はその誘導体は、式(1)で表される繰り返し単位を少なくとも一種含んでなる高分子化合物であることが好ましい。
【0029】
ポリアリルアミン又はその誘導体は、二種以上混合して添加してもよい。混合して添加する場合には、これらの合計含有量がクリアインク全量に対して、好ましくは0.1重量%以上、30重量%以下、より好ましくは下限が0.1重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上であり、より好ましくは上限が10重量%以下であり、更に好ましくは5重量%以下である。本明細書中において、ポリアリルアミン又はその誘導体の含有量は固形分換算量である。
【0030】
ポリアリルアミン又はその誘導体を、二種以上混合して添加する場合には、重量平均分子量が5,000以上のポリアリルアミン又はその誘導体と、重量平均分子量が5,000未満のポリアリルアミン又はその誘導体とを含むのが好ましい。このような分子量の異なるポリアリルアミンを含むことで、良好な発色性及び光沢性を維持しながら、クリーニングキャップにクリアインクが滞留することなく、良好なクリーニング操作を可能とするとの利点を有する。
【0031】
クリアインクは、重量平均分子量が5,000以上の高分子量ポリアリルアミン又はその誘導体と、重量平均分子量が5,000未満の低分子量ポリアリルアミン又はその誘導体とを、1:0.25〜1:4の割合で含んでなることが好ましく、より好ましくは1:0.5〜1:2の割合で含んでなることが好ましい。
【0032】
(2)ポリマー微粒子
本発明で用いるクリアインクに含まれるポリマー微粒子としては、インクジェット記録法用インクに通常用いられている任意のポリマー微粒子を利用することができるが、好ましくはアニオン性ポリマー微粒子及び/又はノニオン性ポリマー微粒子を利用することができ、より好ましくは一種以上のアニオン性ポリマー微粒子と一種以上のノニオン性ポリマー微粒子との組合せを利用することができる。
【0033】
好ましい態様のクリアインクでは、ポリマー微粒子を水性媒体中で分散(混合)させて得たエマルジョンの形態でクリアインクに添加することができる。エマルジョンの形態で添加されることにより、クリアインクの製造時安定性及び貯蔵安定性が向上し、より信頼性が高まり、高品位な記録画像が得られる。
【0034】
前記のエマルジョンとしては、乳化型エマルジョン、ゾル型エマルジョン、アニオン性ポリエチレンエマルジョン又はその変性物、アニオン性ポリプロピレンエマルジョン又はその変性物、及びこれらの混合物からなる群から選択されるエマルジョンが好ましい。アニオン性ポリエチレンエマルジョン又はアニオン性ポリプロピレンエマルジョンは、カルボン酸化又はスルホン酸化等の変性体であることが好ましい。
【0035】
ポリマー微粒子は、平均粒子径が10nm以上、200nm以下であり、ガラス転移温度(Tg;JIS K6900に従い測定)が50℃以下であり、最低造膜温度(MFT)が20℃以下であり、重量平均分子量(Mw)が5,000以上、1,000,000以下であり、好ましくは下限が6,000以上であり、上限が600,000以下である。
【0036】
ポリマー微粒子の含有量は、クリアインク全量に対して、好ましくは0.1重量%以上、20.0重量%以下、より好ましくは下限が0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上であり、より好ましくは上限が5.0重量%以下、更に好ましくは3.0重量%以下である。本明細書中において、ポリマー微粒子の含有量は固形分換算量である。
なお、クリアインクにおいて、ポリマー微粒子の含有量が0.1重量%未満になると、光沢ムラを改善する効果が実質的に得られないことがある。逆に、ポリマー微粒子の含有量が20重量%を超えると、インクジェットプリンタの安定的な動作を妨げることがある。
【0037】
上記ポリマー微粒子と、クリアインク全量に対して0.1重量%以上30.0重量%以下のポリエチレンイミン又はポリアリルアミンとを含んでなるクリアインクによれば、記録画像の非印刷部分における光沢性の向上を顕著に実現することができる。
【0038】
(a)アニオン性ポリマー微粒子
アニオン性ポリマー微粒子を水性媒体中で混合分散させて得たエマルジョンの好ましい具体例としては、乳化型エマルジョン、ゾル型エマルジョン、アニオン性ポリエチレンエマルジョン又はその変性物、アニオン性ポリプロピレンエマルジョン又はその変性物、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0039】
(a1)乳化型エマルジョン
乳化型エマルジョンのガラス転移温度(Tg;JIS K6900に従い測定)は、光沢性及び記録画像の安定性向上の観点から、好ましくは30℃以下であり、より好ましくは10℃以下である。
【0040】
乳化型エマルジョンの重量平均分子量(Mw)は、光沢性及び記録画像の安定性向上の観点からは、好ましくは100,000以上、1,000,000以下であり、より好ましくは400,000以上、600,000以下である。重量平均分子量(Mw)がこの範囲内であることで、貯蔵安定性が高まり、更に記録画像の非印刷部分における光沢性の向上を図ることができる。
【0041】
乳化型エマルジョンを構成するアニオン性ポリマー微粒子の平均粒子径は、70nm以上であることが好ましく、より好ましくは100nm以上、200nm以下であり、特に好ましくは110nm以上、150nm以下である。アニオン性ポリマー微粒子の平均粒子径がこの範囲内であると、水中においてアニオン性ポリマー微粒子がエマルジョンを形成し易くなり、貯蔵安定性が高まり、高品位な記録画像が得られる。
【0042】
乳化型エマルジョンの最低造膜温度(MFT)は、光沢性向上及び記録画像の安定性向上の観点からは、好ましくは20℃以下、より好ましくは0℃以下である。最低造膜温度(MFT)がこの範囲内であると、更に記録画像の非印刷部分における光沢性の向上を図ることができる。
【0043】
(a2)ゾル型エマルジョン
ゾル型エマルジョンのガラス転移温度(Tg;JIS K6900に従い測定)は、光沢性及び記録画像の安定性向上の観点から、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは30℃以下であり、更に好ましくは20℃以下である。
【0044】
ゾル型エマルジョンの重量平均分子量(Mw)は、光沢性向上及び記録画像の安定性向上の観点からは、好ましくは1,000以上、1,000,000以下であり、より好ましくは3,000以上、500,000以下であり、特に好ましくは5,000以上、15,000以下である。重量平均分子量(Mw)がこの範囲内であることで、吐出安定性が高まり、更に記録画像の非印刷部分における光沢性の向上を図ることができる。
【0045】
ゾル型エマルジョンを構成するアニオン性ポリマー微粒子の平均粒子径は、70nm以下であることが好ましく、更に好ましくは50nm以下である。アニオン性ポリマー微粒子の平均粒子径がこの範囲内であると、水中においてアニオン性ポリマー微粒子がエマルジョンを形成し易くなりゾル型分散状態が安定化し、貯蔵安定性が高まり、高品位な記録画像が得られる。
【0046】
ゾル型エマルジョンの最低造膜温度(MFT)は、光沢性向上及び記録画像の安定性向上の観点からは、好ましくは20℃以下、より好ましくは0℃以下である。最低造膜温度(MFT)がこの範囲内であると、更に記録画像の非印刷部分における光沢性の向上を図ることができる。
【0047】
ゾル型エマルジョンの好ましい具体例としては、アルカリ可溶性エマルジョン又はスルホン基含有エマルジョンが挙げられる。
(a2−1)アルカリ可溶性エマルジョン
アルカリ可溶性エマルジョンは、塩基、好ましくは無機塩基、より好ましくはアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物により、pHが調整されたものが好ましい。このエマルジョンの酸価は40以下であることが好ましい。
アルカリ可溶性エマルジョンは、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、この単量体と共重合可能な単量体とを、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物又は共重合性界面活性剤の存在下で重合して得られた重合体を水性媒体中で分散させて得るエマルジョンであることが好ましい。
【0048】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテントリカルボン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル単量体;無水マレイン酸、無水シストラコン酸等の多価カルボン酸無水物等を挙げることができ、これらの一種又は二種以上の混合物が利用できる。これらの中では、アクリル酸又はメタクリル酸が特に好ましい。
【0049】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な単量体は、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体;アリルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和グリシジルエーテル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン単量体;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体などが挙げられ、これらの一種又は二種以上の混合物が利用できる。これらの中でも、画像の耐光性及び光沢性に優れる点で、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体が好ましく、特に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体がより好ましい。
【0050】
アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物は、ビニルアルコール系重合体であることが好ましく、具体的には、分子量1,000当たりアルコール性水酸基を5〜25個含有しているも水溶性高分子化合物が好ましい。例えば、ポリビニルアルコールやその各種変性物等のビニルアルコール系重合体;酢酸ビニルとアクリル酸、メタクリル酸又は無水マレイン酸との共重合体の鹸化物;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース等のセルロース誘導体;アルキル澱粉、カルボキシメチル澱粉、等の澱粉誘導体;アラビアゴム、トラガントゴム;ポリアルキレングリコール等を挙げることができ、これらの一種又は二種以上の混合物を利用できる。
【0051】
共重合性界面活性剤は、分子中に1個以上の重合可能なビニル基を有する界面活性剤であり、例えば、プロペニル−2−エチルヘキシルスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステル燐酸エステル等のアニオン性重合性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステル等のアニオン性重合性界面活性剤を挙げることでき、これらの一種又は二種以上の混合物を利用できる。これらの中で、単量体の乳化分散性能及び単量体との共重合性のバランスが優れている点で、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩が好ましい。
【0052】
(a2−2)スルホン酸基含有エマルジョン
スルホン酸基含有エマルジョンは、ジエン系スルホン酸基含有エマルジョン又は非ジエン系スルホン酸基含有エマルジョンであることが好ましい。
前記スルホン酸基含有エマルジョンは、後記するモノマーを単独又は共重合して得た重合体又は共重合体をスルホン化処理して得たもの(特開平11−217525号公報を参照)、又はスルホン化されたモノマーを単独又は共重合して得た重合体を水性媒体中で分散させて得たエマルジョンが挙げられ、ジエン系モノマーを必須成分とするジエン系スルホン酸基含有エマルジョン又はジエンモノマーを必須成分としない非ジエン系スルホン酸基含有エマルジョンとが挙げられる。
ジエン系スルホン酸基含有エマルジョンを得るために使用されるモノマーとしては、ジエン系モノマーと、ジエン系モノマーと併用できる他のモノマーが挙げられる。
【0053】
ジエン系モノマーの具体例としては、炭素数4〜10のジエン系化合物であり、例えば、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,2−ペンタジエン、2,3−ペンタジエン、イソプレン、1,2−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,2−ヘプタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、2,3−ヘプタジエン、2,5−ヘプタジエン、3,4−ヘプタジエン、3,5−ヘプタジエン、シクロヘプタジエン等を挙げることができ、これらの一種又は二種以上の混合物を利用できる。
【0054】
ジエン系モノマーと併用できる他のモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、O−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等のモノ或いはジカルボン酸又はジカルボン酸の無水物、(メタ)アクリロニトリルなどのビニルシアン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルメチルエチルケトン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和化合物が挙げられ、これらの一種又は二種以上の混合物を利用できる。
これらの他のモノマーを併用する場合には、ジエン系モノマーの使用量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは5重量%以上である。
【0055】
上記のジエン系モノマー又はジエン系モノマーと併用できる他のモノマーとを共重合して得られるジエン系共エマルジョンは、ランダム共重合体、ブロック共重合体を含め如何なる共重合体であってもよい。
好ましい重合体としては、例えば、イソプレン単独重合体、ブタジエン単独重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元ブロック共重合体等が挙げられる。より好ましい共重合体としては、例えば、イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体等が挙げられる。
【0056】
前記のスルホン酸基含有エマルジョンに含まれるジエン系スルホン酸基含有重合体は、上記のジエン系重合体及び/又はその前駆モノマーに基づく残存二重結合の一部又は全部を水添して得られる重合体を、公知のスルホン化方法、例えば、日本化学会編集、新実験化学講座(14巻III.1773頁)又は特開平2−227403号公報等に記載された方法によってスルホン化したものであってもよい。
スルホン化剤としては、無水硫酸、硫酸、クロルスルホン酸、発煙硫酸、亜硫酸水素塩(Li塩,Na塩,K塩,Rb塩,Cs塩等)等が挙げられる。スルホン化剤の量は、上記重合体1モルに対して、好ましくは、無水硫酸換算で0.005〜1.5モル、より好ましくは、0.01〜1.0モルである。
【0057】
前記ジエン系スルホン酸基含有エマルジョンは、上記のようにしてスルホン化された生成物に水及び/又は塩基性化合物を作用させて得られた状態で使用されるのが好ましい。塩基性化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属の炭酸塩、アンモニア水、有機金属化合物、アミン類などが挙げられる。塩基性化合物は、一種又は二種以上を併用して用いることができる。塩基性化合物の使用量は、使用したスルホン化剤1モルに対して、2モル以下、好ましくは、1.3モル以下である。
【0058】
非ジエン系スルホン酸基含有エマルジョンを得るために使用されるモノマーとしては、例えば、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、又はイソブチレンと三酸化イオウとを反応させて得られるメタクリルスルホン酸等のビニルモノマー、あるいはp−スチレンスルホン酸ナトリウム等のスチレン系単量体〔例えば、東ソ(株)製、スピロマー〕、あるいは一般式CH2=C(CH3)−COO(AO)nSO3Na(A:低級アルキレン基)で表わされるメタクリル酸エステル系単量体〔例えば、三洋化成(株)製、エレミノールRS−30〕のようなスルホニル基を有するモノマー、及び前記モノマーのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
非ジエン系スルホン酸基含有エマルジョンは、上記スルホン酸基を有するモノマーにスルホン酸基を含有しないモノマーを共重合させることによっても得られる。
【0059】
共重合可能な他のモノマーとしては、スチレン、エチルビニルベンゼン、α−メチルスチレン、フルオロスチレン、ビニルピリン等の芳香族モノビニル化合物、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジエンフタレート、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアクリル酸エステルモノマー、2−エチルヘキシルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステルモノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、シリコン変性モノマー、マクロモノマー等を挙げることができる。更に、ブタジエン、イソプレンなどの共役二重結合化合物や酢酸ビニル等のビニルエステル化合物、4−メチル−1−ペンテン、その他のα−オレフィン化合物が挙げられる。共重合可能なモノマーのうちでは、スチレン、メチルメタクリレート、アクリロニトリルが好ましい。
共重合可能なモノマーの使用量は、重合性モノマーの通常1〜93重量%、好ましくは、5重量%〜80重量%である。
【0060】
非ジエン系スルホン酸基含有エマルジョンは、上記のスルホン酸基含有モノマー又は、スルホン酸基含有モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、例えば、水あるいは有機溶媒などの重合用溶媒の中で、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等を使用してラジカル重合する。
【0061】
上記の非ジエン系モノマーを共重合して得られる非ジエン系スルホン酸基含有エマルジョンは、ランダム共重合体、ブロック共重合体を含め如何なる共重合体であってもよい。
【0062】
アニオン性ポリエチレンエマルジョン又はその変性物、及びアニオン性ポリプロピレンエマルジョン又はその変性物の融点は、光沢性及び記録画像の安定性向上の観点からは、好ましくは70℃以上である。また、これらの粒子径は200nm以下が好ましく、平均粒子径は160nm以下が好ましい。
アニオン性ポリエチレンエマルジョンは市販品を利用でき、例えばビックケミー・ジャパン社から、AQUACER507等として入手できる。AQUACER507は、アニオン性の酸化高密度ポリエチレンエマルジョンで、融点が130℃、pHが10、粒子径が100nm〜200nmであり、平均粒子径は150nmである。
【0063】
(b)ノニオン性ポリマー微粒子
ノニオン性ポリマー微粒子を水性媒体中で混合分散させて得たエマルジョンの具体例としては、ノニオン性ポリエチレンエマルジョン又はその変性物、ノニオン性ポリプロピレンエマルジョン又はその変性物、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0064】
ノニオン性ポリエチレンエマルジョン又はその変性物、あるいはポリプロピレンエマルジョン又はその変性物の融点は、光沢性向上及び記録画像の安定性向上の観点からは、好ましくは70℃以上である。また、粒子径は200nm以下が好ましく、平均粒子径は160nm以下が好ましい。
これらのエマルジョンは市販品を利用でき、例えばビックケミー・ジャパン社から、AQUACER513、AQUACER593、AQUACER543等として入手できる。
AQUACER513は、ノニオン性の酸化高密度ポリエチレンエマルジョンで、融点が130℃、pHが9、粒子径が100nm〜200nmであり、平均粒子径は150nmである。また、AQUACER593は、ノニオン性の酸化高密度ポリプロピレンエマルジョンで、融点が160℃、pHが9、粒子径が100nm〜200nmであり、平均粒子径は150nmである。また、AQUACER543は、AQUACER593にノニルフェノールが配合されているものである。
【0065】
(C)水、水溶性有機溶剤、及びその他の成分
本発明方法で用いることのできるクリアインクに含まれる水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水が挙げられる。また、紫外線照射、又は過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、クリアインクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0066】
本発明方法で用いることのできるクリアインクに含まれる水溶性有機溶剤としては、グリコールエーテル系化合物、アルキルジオール系化合物、又は多価アルコール系化合物等及びこれらの混合物が挙げられる。
これら化合物を水溶性有機溶剤として用いることにより、目詰まり及び吐出安定性に優れ、発色性及び光沢性を維持し、記録画像の画像品質を向上させることができる。水溶性有機溶媒の含有量(複数種を混合する場合にはその総量)は、画像品質の向上の観点から、クリアインク全量に対して、好ましくは1.0重量%以上、70重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上、50重量%以下である。
【0067】
グリコールエーテル系化合物としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。特に、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好適である。
グリコールエーテル系化合物の含有量は、クリアインク中好ましくは0.1重量%以上、30.0重量%以下であり、より好ましくは1.0重量%以上、20.0重量%以下であり、特に好ましくは、2.0重量%以上、10.0重量%以下である。
【0068】
アルキルジオール系化合物としては、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。特に、1,2−ヘキサンジオールが好適である。
アルキルジオール系化合物の含有量は、クリアインク中好ましくは0.1重量%以上、30.0重量%以下であり、より好ましくは1.0重量%以上、20.0重量%以下であり、特に好ましくは、2.0重量%以上、10.0重量%以下である。
【0069】
多価アルコール系化合物としては、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール等の水溶性の水溶性有機溶剤が挙げられる。特に、グリセリンが好適である。
多価アルコール系化合物の含有量は、クリアインク中好ましくは0.1重量%以上、50.0重量%以下であり、より好ましくは1.0重量%以上、40.0重量%以下であり、特に好ましくは、8.0重量%以上、30.0重量%以下である。
【0070】
本発明方法で用いることのできるクリアインクは、界面活性剤を含むことができ、例えばアセチレングリコール系化合物、アセチレンアルコール系化合物、若しくはポリシロキサン系化合物及びこれらの混合物を含有することができる。これにより、発色性及び光沢性を維持しつつ、クリアインクの吐出安定性を高めることができる。
【0071】
界面活性剤の含有量は、クリアインクの全重量に対して、好ましくは0.1重量%以上、10.0重量%以下であり、より好ましくは0.1重量%以上、3.0重量%以下であり、特に好ましくは、0.3重量%以上、2.0重量%以下である。また、界面活性剤の添加の結果、クリアインクの表面張力は、吐出安定性向上の観点から、好ましくは15dyn/cm以上、45dyn/cm以下であり、より好ましくは20dyn/cm以上、35dyn/cm以下であり、特に好ましくは、25dyn/cm以上、30dyn/cm以下である。
【0072】
本発明方法で好ましく用いられるアセチレングリコール系化合物としては、オルフィンE1010、STG、Y(何れも商品名、日信化学社製)、サーフィノール82、104、440、465、485(何れも商品名、Air Products and Chemicals Inc.製)等の市販品を挙げることができる。
【0073】
本発明方法で好ましく用いられるアセチレンアルコール系化合物としては、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール、サーフィノール61(商品名、Air Products andChemicals Inc.製)等を挙げることができる。
【0074】
本発明方法で好ましく用いられるポリシロキサン系化合物としては、一般式(2):
【化1】
(式中、R11〜R17は、独立して、C1−6アルキル基を表し、j及びkは、独立して、1以上の整数を表し、EOはエチレンオキシ基を表し、POはプロピレンオキシ基を表し、s及びtは0以上の整数を表すが、但しs+tは1以上の整数を表し、EO及びPOは、[ ]内においてその順序は問わず、ランダムであってもブロックであってもよい)
で表されるシリコーン系界面活性剤を用いることができる。一般式(2)で表される化合物は市販されており、それを利用することが可能である。例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社より、BYK−347、BYK−348(商品名)の名称で市販されている化合物の利用が可能である。
【0075】
本発明方法で用いるクリアインクは、必要に応じてインクジェット記録用の水性インク組成物に一般的に用いられている溶媒や糖を更に含むことができる。そのような溶媒としては、2−ピロリドン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0076】
糖の具体例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、等が挙げられる。ここで多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロース等自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH(ここで、n=2〜5の整数を表す)で表わされる)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸等)、アミノ酸、チオ糖等が挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビット等が挙げられる。また市販品としては、HS−300、500(登録商標;林原商事)等を用いることができる。
【0077】
本発明方法で用いるクリアインクは、ノズルの目詰まり防止剤、防腐剤、酸化防止剤、導電率調整剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤、紫外線吸収剤、キレート剤などを更に添加することができる。防腐剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)などが挙げられる。
更に、pH調整剤、溶解助剤、又は酸化防止剤の具体例としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類及びそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸及びその塩を挙げることができる。また、紫外線吸収剤の具体例としては、チバガイギーのTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024、ランタニドの酸化物が挙げられる。
キレート剤の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられる。
【0078】
本発明方法で用いるクリアインクは、粘度及び記録物上での滲みを調整する目的で、高沸点水溶性有機溶剤を含有してもよい。その具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノールなどがあげられる。特に一価アルコールが好ましい。
高沸点水溶性有機溶剤の含有量は、クリアインク中好ましくは、0.1重量%以上、30.0重量%以下であり、より好ましくは1.0重量%以上、10.0重量%以下であり、特に好ましくは、2.0重量%以上、5.0重量%以下である。
【0079】
(D)インクセット
本発明方法では、前記のクリアインクを、有色インクから構成されるインクセットと組み合わせて用いる。本発明方法で用いるインクセットは、モノクロ記録用のインクセット又はカラー記録用のインクセットであることができる。本発明方法で用いるインクセットは、水と顔料とポリマー微粒子とを含む有色インクから構成される。各有色インクにおいて用いる水及びポリマー微粒子としては、前記のクリアインクで述べた水及びポリマー微粒子をそれぞれ用いることができる。また、顔料としても、通常のインクジェット記録方式用インクで用いる顔料をそのまま用いることができる。
【0080】
(1)ブラックインク
また、本発明方法で用いるインクセットは、有色インクに属するブラックインクとして、少なくとも、
(イ)カーボンブラック濃度が低い薄いブラックインクと、
(ロ)カーボンブラック濃度が中間的な中間階調用ブラックインクと、
(ハ)カーボンブラック濃度が高い濃いブラックインクと
を含む。
【0081】
前記の薄いブラックインクにおけるカーボンブラック含有量は、その薄いブラックインクの全重量に対して、好ましくは0.4重量%以下、特には、0.01重量%〜0.4重量%以下、好ましくは0.05重量%〜0.3重量%、より好ましくは、0.1重量%〜0.25重量%である。
【0082】
また、前記の中間階調用ブラックインクにおけるカーボンブラック含有量は、その中間階調用ブラックインクの全重量に対して、好ましくは0.4重量%〜1.5重量%、より好ましくは、0.5重量%〜1.2重量%、特には0.6重量%〜1.0重量%である。なお、前記の中間階調用ブラックインクとしては、カーボンブラック含有量0.4重量%〜1重量%のブラックインク及び/又はカーボンブラック含有量1重量%〜1.5重量%のブラックインクを組み合わせて用いることができる。
【0083】
前記の濃いブラックインクにおけるカーボンブラック含有量は、その濃いブラックインクの全重量に対して、好ましくは1.5重量%〜10重量%、より好ましくは、1.5重量%〜8重量%である。
【0084】
前記の各ブラックインクに用いるカーボンブラックとしては、酸化チタン及び酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネスト法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックとしては、具体的には、三菱化学(株)製のNo.2300,No.900,HCF88,No.33,No.40,No.45,No.52,MA7,MA8,MA100,No2200B等が、コロンビア社製のRaven5750,Raven5250,Raven5000,Raven3500,Raven1255,Raven700等が、キャボット社製のRegal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Monarch700,Monarch800,Monarch880,Monarch900,Monarch1000,Monarch1100,Monarch1300,Monarch1400等が、デグッサ社製のColor Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black FW18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex 35,Printex U,PrintexV,Printex 140U,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,SpecialBlack 4等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
また、本発明方法においては、前記のポリマー微粒子(特には、アルカリ可溶性エマルジョン)とともに、表面を酸化処理したカーボンブラックを用いることができる。この場合は、分散剤を用いる必要はない。酸化処理は公知の方法で行うことができる。酸化処理によって、前記カーボンブラックの表面に、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はスルホン基等の親水性基を導入することができる。
【0086】
カーボンブラックの粒径は、特に限定されるものではないが、10μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下である。
また、本発明方法で用いるインクセットにおいて、各ブラックインクが含有するカーボンブラックは、それぞれ同じであることも異なることもできる。
【0087】
また、本発明方法で用いる各々のブラックインクは、カーボンブラックが本来的に有している帯色性(濃色部における帯赤性、又は、特には淡色部における帯黄性)を無彩色化するための補色用の着色剤を含有することもできる。補色用の着色剤とは、ブラックインクによる記録画像に生じる帯色を低減ないし解消して無彩色の画像を得るためにブラックインク中に含有させる着色剤を意味し、例えば、カラーインデックス・ピグメントブルー60(C.I.PB60)、カラーインデックス・ピグメントブルー15:3、及びカラーインデックス・ピグメントブルー15:4などを挙げることができる。
【0088】
前記ピグメントブルー60は、カーボンブラック含有量0.01重量%〜1重量%のブラックインクに用いることが好ましく、その含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、前記ブラックインクの全重量に対して、0.01重量%〜0.5重量%の量であることが好ましい。また、前記ピグメントブルー15:3及びピグメントブルー15:4は、カーボンブラック含有量1重量%〜10重量%のブラックインクに用いることが好ましく、その含有量も、特に限定されるものではないが、例えば、前記ブラックインクの全重量に対して、0.1重量%〜5重量%の量であることが好ましい。
【0089】
(2)インクセットの構成
本発明方法で用いるインクセットがモノクロ記録用インクセットである場合は、前記の薄いブラックインク(イ)と、前記の中間階調用ブラックインク(ロ)と、前記の濃いブラックインク(ハ)とを含む。前記各ブラックインクは、所望により、それぞれ適切な補色用着色剤を含む。あるいは、前記のモノクロ記録用インクセットは、例えば、前記の薄いブラックインク(イ)、前記の中間階調用ブラックインク(ロ)、及び前記の濃いブラックインク(ハ)、並びに補色を印刷することが可能なカラーインク組成物、例えば、ライトマゼンタとライトシアンの組合せ、ライトマゼンタとライトシアンとイエローの組合せなどを含む。
【0090】
また、本発明方法で用いるインクセットがカラー記録用インクセットである場合、そのインクセットを構成する有色インクの種類や数は、前記の3種のブラックインク(イ)〜(ハ)をインクセット構成員として含む限り特に限定されるものではないが、典型的なインクセットとしては、例えば、イエローインク、シアンインク、マゼンタインク、前記の薄いブラックインク(イ)、前記の中間階調用ブラックインク(ロ)、及び前記の濃いブラックインク(ハ)の6色のインクセット;前記6色インクセットにライトシアンインク及びライトマゼンタインクを加えた8色のインクセット;前記8色インクセットにダークイエローインクを加えた9色のインクセット;前記6色インクセットにレッドインク、グリーンインク、及びブルーインクを加えた9色のインクセット;前記6色インクセットにオレンジインク、グリーンインク、及びブルーインクを加えた9色のインクセット;並びに前記6色インクセットにオレンジインク、グリーンインク、及びバイオレットインクを加えた9色のインクセット;を挙げることができる。
【0091】
なお、「ライトマゼンタ」及び「ライトシアン」の各インクとは、一般的には、濃度変調による記録画像の画質向上を目的に、それぞれマゼンタインク、及びシアンインクの色材濃度を低くしたインクである。また、「ダークイエロー」のインクとは、シャドー部等の暗色に対する色再現性を向上させる目的で、イエローインクよりも明度・彩度の低い色材(顔料)を用いたイエローインクである。そして、「レッド」、「オレンジ」、「グリーン」、「ブルー」、及び「バイオレット」の各インクは、色再現範囲を向上させるために、イエロー、マゼンタ、シアンの中間色を構成する要素として使用されるインクである。
【0092】
(3)各インクの内容
本発明方法で用いる各々のブラックインク及びその他の有色インクは、水系顔料インクである限り、従来公知のインクジェット記録用水系インクと同様の各種配合成分を含むことができる。また、各々のブラックインク及びその他の有色インクは、前記クリアインクで述べたポリマー微粒子を含むこともできる。これらの配合成分としては、例えば、前記クリアインクで述べた各種配合成分を挙げることができ、具体的には、水溶性有機溶剤(例えば、グリコールエーテル系化合物、アルキルジオール系化合物、又は多価アルコール系化合物等及びこれらの混合物)、界面活性剤(例えば、アセチレングリコール系化合物、アセチレンアルコール系化合物、若しくはポリシロキサン系化合物及びこれらの混合物)、一般的溶媒(例えば、2−ピロリドン又はトリエタノールアミン)、あるいは糖(例えば、単糖類、二糖類、三糖類若しくは四糖類などのオリゴ糖類、又は多糖類)、更には、ノズルの目詰まり防止剤、防腐剤、酸化防止剤、導電率調整剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤、紫外線吸収剤、キレート剤、高沸点水溶性有機溶剤を挙げることができる。
【0093】
前記の各々の有色インクは、その有色インクの全重量に対してポリマー微粒子を、好ましくは0.1重量%〜20重量%、より好ましくは0.1重量%〜10重量%の量で含有する。本発明方法で用いるインクセットを構成する各有色インクにおいて、ポリマー微粒子の含有量は、それぞれ異なることもできるが、それぞれの有色インクにおけるポリマー微粒子の含有量がほぼ同一であると、クリアインク吐出量の制御が容易になるので好ましい。
【0094】
本発明方法で用いる各々のブラックインク及びその他の有色インクは、前記クリアインクで述べたポリマー微粒子を含む水系顔料インクである限り、従来公知のインクジェット記録用水系ブラックインクを調製する場合と同様に、従来公知の方法で調製することができる。また、従来公知のインクジェット記録用インクセットを構成するインクとして利用することができる。
【0095】
(E)記録方法
本発明のインクジェット記録方法においては、各有色インクとクリアインクとを、記録媒体に任意の順序で吐出することができる。すなわち、各有色インクを任意の順序で先に吐出し、その後からクリアインクを吐出するか、逆にクリアインクを先に吐出し、その後から各有色インクを任意の順序で吐出することができる。あるいは一部の有色インクを先に吐出し、続いてクリアインクを吐出し、最後に残りの有色インクを吐出することもできる。
【0096】
本発明の記録方法は、前記のインクセットが収容されたインクカートリッジ(各ブラックインク及び各有色インクが個別に収容されたインクカートリッジ)を公知のインクジェット記録装置に搭載させて、記録媒体に対して記録することにより、好適に行うことができる。
ここで、インクジェット記録装置としては、電気信号に基づいて振動可能な電歪素子が搭載されるとともに、前記電歪素子の振動によって、インクセットが含むインクを吐出することができるように構成されたインクジェット記録装置が好ましい。
また、インクセットを収容するインクカートリッジ(収容ケース)としては、公知のものを好適に使用することができる。
【0097】
(F)記録媒体
本発明方法は、記録媒体として、前記有色インクに含まれる顔料と樹脂成分を表面上に実質的に残留させるとともに前記クリアインクに含まれる樹脂成分を表面上に実質的に残留させるが、前記有色インク及び前記クリアインクの液体成分を実質的に吸収する記録媒体を利用するのが特に好ましい。こうした記録媒体は、例えば、表面の平均孔径が、前記顔料の平均粒径よりも小さい。好ましい記録媒体は、前記顔料の平均粒径よりもそれぞれ小さい平均孔径を有するインク受容層を含む記録媒体である。
【0098】
好ましい記録媒体として、多孔質顔料を含有するインク受容層を、基材上に設けた記録媒体を使用することができる。インク受容層は、記録媒体の最上層であるか、あるいはその上に、例えば、光沢層を有する中間層であることもできる。このような記録媒体としては、そのインク受容層中に多孔質顔料及びバインダー樹脂を含有する、いわゆる吸収型(空隙型ともいう)の記録媒体と、前記インク受容層中にカゼイン、変性ポリビニルアルコール(PVA)、ゼラチン、又は変性ウレタン等の樹脂を更に含有する、いわゆる膨潤型の記録媒体とが知られており、本発明の位相ずれ防止用ブラックインク組成物(及び場合により用いるゴールデングロス防止用ブラックインク組成物)はいずれの記録媒体にも使用することができる。
【0099】
本発明方法により、光沢ムラを解消した記録像を得ることのできる記憶媒体としては、インク受容層の上に光沢層を有する記憶媒体を用いることが好ましく、光沢系メディア、すなわち20°及び60°のグロス値が10以上である記録媒体を用いることが好ましい。光沢系メディアとしては、例えば、PM写真用紙(セイコーエプソン株式会社製)、又はスーパーファイン専用光沢フィルム(セイコーエプソン株式会社製)などを挙げることができる。
【0100】
吸収型記録媒体のインク受容層に含有される前記多孔質顔料としては、例えば、沈殿法、ゲルタイプ、又は気相法等のシリカ系、擬ベーマイト等のアルミナ水和物、シリカ/アルミナハイブリッドゾル、スメクタイト粘土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、カオリン、白土、タルク、珪酸マグネシウム、又は珪酸カルシウム等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0101】
また、吸収型記録媒体のインク受容層に含有される前記バインダー樹脂としては、結着能力を有し、インク受容層の強度を高めることのできる化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、澱粉、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、スチレン−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス、アクリル酸及びメタクリル酸の重合体等のアクリル系共重合体ラテックス等を挙げることができる。
【0102】
前記インク受容層には、吸収型記録媒体のインク受容層の場合も、膨潤型の記録媒体のインク受容層の場合も、必要に応じ、定着剤、蛍光増白剤、耐水化剤、防かび剤、防腐剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、消泡剤、及び/又は保水剤等の各種添加剤を含有させることもできる。
前記の各インク受容層が設けられる前記基材としては、紙(サイズ処理紙を含む);ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエステル等を紙にコートしたレジンコート紙;バライタ紙;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、又はポリプロピレン等の熱可塑性樹脂フィルム;合成紙;合成繊維で形成されたシート状物等を挙げることができる。
【0103】
特に好ましい態様の記録媒体は、前記基材と、その上に設けた最上層としての前記インク受容層とを有する記録媒体であり、それらの基材及びインク受容層も、例えば、以下の物性を有するものが好ましい。
前記基材としては、紙(木材パルプを含有するもの)が好ましく、その坪量は、好ましくは100〜350g/m2、更に好ましくは180〜260g/m2である。また、厚みは、好ましくは100〜400μm、更に好ましくは180〜260μmである。前記インク受容層は、インク受容層全体の重量を基準として、固形分換算で、前記多孔質顔料として湿式法シリカゲルを50重量%〜60重量%の量で含有し、前記バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを30重量%〜40重量%の量で含有することが、インク吸収性、及び印字堅牢性等の点で好ましい。また、前記インク受容層の塗工量は、固形分換算で、5〜50g/m2であることが、インク吸収性の点で好ましい。なお、インク受容層自体の厚みとしては、好ましくは10〜40μm、更に好ましくは20〜30μmである。
本発明方法で用いる記録媒体は、前記記録媒体の表面(特には、インク受容層)の平均孔径が50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。平均孔径が300nmを超えると、顔料がインク受容層内部まで浸透し、発色性が低下することがある。
【0104】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものでない。なお、実施例中の「%」及び「部」は特に断らない限り、重量基準である。
<実施例1〜4及び比較例1>
(1)エマルジョンの調製
以下に示す方法で、3種のエマルジョン(E)、エマルジョン(A)、及びエマルジョン(S)を調製した。ポリマー微粒子のガラス転移温度TgはJIS K6900に従い測定し、濁度は濁度計(日本電色工業製WATER−ANALYZER2000)を用いて、セル幅10mmにて測定した。
【0105】
(1a)乳化型樹脂エマルジョン(E)の調製
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム3gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加して、溶解した。続いて、予め、イオン交換水450g及びラウリル硫酸ナトリウム3gに、アクリルアミド20g、スチレン300g、ブチルアクリレート640g、及びメタクリル酸30gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、前記の反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた乳化型エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分40重量%に調整すると共にpH8に調整した。こうして乳化型樹脂エマルジョン(E)を得た。
この乳化型樹脂エマルジョン(E)中のポリマー微粒子について測定したところ、ガラス転移温度Tgは15℃、平均粒子径は130nm、重量平均分子量(Mw)は約50万、最低造膜温度(MFT)は0℃、そして濁度は30mg/L以上であった。
【0106】
(1b)アルカリ可溶型樹脂エマルジョン(A)の調製
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水130部と過硫酸カリウム2部を仕込み、80℃に昇温した。予め、イオン交換水280部、エチルアクリレート55部、メチルアクリレート37部、メタクリル酸6部、分子量調整剤としてチオグリコール酸オクチル3部、及びポリビニルアルコール2.5部を攪拌下に加えて作成した単量体混合物の分散物を4時間かけて連続添加して重合させた。連続添加終了後、80℃で30分間反応を行った。
次いで、仕込みのメタクリル酸と当モルの水酸化ナトリウムに相当する量の10%水酸化ナトリウム水溶液を反応器に添加し、更に80℃で1時間熱処理した後に、適量のイオン交換水を加えて固形分濃度15%のアルカリ可溶型樹脂エマルジョン(A)を得た。このアルカリ可溶型樹脂エマルジョン(A)の酸価は40であり、pHは9.2であった。
このアルカリ可溶型樹脂エマルジョン(A)中のポリマー微粒子について測定したところ、ガラス転移温度Tg(JIS K6900に従い測定)は25℃、平均粒子径は50nm以下、重量平均分子量(Mw)は約1.1万、最低造膜温度(MFT)は15℃、そして濁度は30mg/L以下であった。
【0107】
(1c)スルホン基含有型樹脂エマルジョン(S)の調製
ガラス製反応容器にジオキサン100gを入れ、これに無水硫酸11.8gを25℃の内温を保ちながら添加し、2時間攪拌して、無水硫酸−ジオキサン錯体を得た。
次に、スチレン/イソプレン/スチレン3元ブロック共重合体(重量比=10/80/10;Mw=100000)100gのTHF溶液(濃度=15%)中に、上記で得た錯体全量を、内温25℃に保ちながら添加し、更に2時間攪拌を続けて溶液とした。
水1200g、水酸化ナトリウム7.1g、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gをフラスコに入れ、内温を40℃に保った。この中に、上記溶液の全量を40℃に内温を保ちつつ1時間で滴下した。滴下後、40℃で2時間攪拌した後、減圧蒸留により、水を残しつつ溶剤を除去し、濃度15%のスルホン基含有型樹脂エマルジョン(S)を得た。固形分中のスルホン酸含量は1.2mmo1/gであった。
このスルホン基含有型樹脂エマルジョン(S)中のポリマー微粒子について測定したところ、ガラス転移温度Tgは25℃、平均粒子径は50nm以下、重量平均分子量(Mw)は約1万、最低造膜温度(MFT)は15℃、そして濁度は30mg/L以下であった。
【0108】
(2)クリアインクの調製
以下の表1に示すように、前項(1a)〜(1c)で得られた3種のエマルジョン(E)、エマルジョン(A)、及びエマルジョン(S)と、各種配合成分を用いて、クリアインク1〜4を調製した。
【表1】
前記の表1中、PAAはポリアリルアミンであり、Aquacer593はアニオン性ポリエチレンエマルジョンであり、AQ593は、ポリプロピレン型エマルジョン(ビックケミージャパン株式会社製)である。表1において、単位は重量%である。
【0109】
(3)ブラックインクの調製
以下の表2に記載の各配合成分を混合し、サンドミル(安川製作所製)中でガラスビーズ〔直径=1.7mm;混合物の1.5倍量(重量)〕とともに2時間分散させ、3種のブラックインクを得た。すなわち、1種類の濃いブラックインク組成物K1、1種類の中間階調用ブラックインク組成物K2、及び1種類の薄いブラックインク組成物K3を得た。以下の表2に記載の水溶性樹脂としては、スチレン−アクリル酸共重合体(分子量=15000;酸価=100)を用い、ポリマー微粒子としては、前項(1b)で調製したアルカリ可溶型樹脂エマルジョン(A)を用いた。また、AQ593は、ポリプロピレン型エマルジョン(ビックケミージャパン株式会社製)であり、HS500は、糖を主成分とする溶剤(林原商事)であり、BYK348は、シリコーン系界面活性剤であり、プロキセルGXLは、防腐剤(アヴィシア社製)である。表2において、単位は重量%であり、各インクには、その他に全体を100重量%とする純水が含まれている。
【0110】
【表2】
【0111】
(4)記録手順
印刷は、インクジェットプリンタ(MC2000;セイコーエプソン株式会社製)を用い、1440×720dpiにて出力を行った。
それぞれのインクをインクジェットプリンタ(MC2000)の専用カートリッジのブラックインク室(濃いブラックインクK1)、シアンインク室(中間階調用ブラックインクK2)、及びマゼンタインク室(薄いブラックインクK3)に、それぞれ充填した。同様に、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、及びイエローインクも、表3に示すインク室にそれぞれ充填した。
【表3】
図3に模式的に示すように、濃いブラックインク組成物K1と、中間階調用ブラックインク組成物K2と、薄いブラックインク組成物K3との使用割合を変化させ、更に出力色を調整させるために、カラーインクを適宜分配し、各有色インクの吐出量を制御することによって、黒色から白色に至るグレースケールを適切に作成した。グレースケールとは白から黒へのグレーの階調パターンのことで、階調を区切らずに、無段階で出力した。なお、このような吐出制御を行うことによって、グレースケールだけではなく、モノクロ画像やモノクロから少し色のついた画像(一般的にはセピア調やクール調など)も自由に出力させることができる。
【0112】
(5)クリアインクの吐出手順
続いて、前項(4)で得られたグレースケール全体の上に、前項(2)で得られたクリアインク1〜4を吐出させた(実施例1〜4)。吐出の制御は、図1に示す方法によって実施した。具体的には、非印字部領域のクレアインク吐出量Aを30%とし、高デューティー印字部領域のクレアインク吐出量Bの値を5%とした。また、比較用として、前項(4)で得られたグレースケール全体の上に、クリアインクを吐出しない実験を実施した(比較例1)。
【0113】
(6)光沢評価
クリアインク1〜4を用いた場合(実施例1〜4)は、いずれも、記録部全体にわたって、光沢のムラがなく良好な画像が得られた。また、クリアインクを用いない場合(比較例1)は、画像の薄い部分や濃い部分、また非記録部などの間で光沢感が異なってしまい、ムラとして見えてしまった。
【0114】
【発明の効果】
本発明によれば、3種以上のブラックインクを有するインクセットを用いて記録した場合に、非記録部分(非印字部)と記録部分(印字部)との光沢ムラ、及び低デューティー部分と高デューティー部分との光沢ムラが解消され、高品位の記録が象を獲ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の一実施態様における有色インクの吐出量とクリアインクの吐出量との関係を説明するグラフである。
【図2】本発明方法の別の一実施態様における有色インクの吐出量とクリアインクの吐出量との関係を説明するグラフである。
【図3】3種類のブラックインクを用いてグレースケールを印刷する場合の各インクの使用割合を模式的に示すグラフである。
Claims (9)
- (1)水系顔料インク組成物から構成されるインクセットと、(2)水とポリマー微粒子とを含むが着色剤成分を含まないクリアインクとを用い、前記クリアインクを記録媒体の記録表面側全体に吐出するインクジェット記録方法であって、
前記インクセットが、カーボンブラック濃度が低い薄いブラックインクと、カーボンブラック濃度が中間的な中間階調用ブラックインクと、カーボンブラック濃度が高い濃いブラックインクとを含むこと
を特徴とする、前記のインクジェット記録方法。 - 光沢系記録媒体に対して実施する、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水系顔料インク組成物による記録部における前記クリアインクの第1の吐出量が、前記水系顔料インク組成物による非記録部での前記クリアインクの第2の吐出量よりも少なくなるように設定する、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記のポリマー微粒子が、アニオン性ポリマー微粒子、ノニオン性ポリマー微粒子、又はそれらの組み合わせである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記のクリアインクが、そのクリアインクの全重量に対してポリマー微粒子を0.1重量%〜20重量%の量で含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記のクリアインクがポリアリルアミン又はその誘導体を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記の薄いブラックインクにおけるカーボンブラック含有量がそのブラックインクの全重量に対して0.01重量%〜0.4重量%であり、前記の中間階調用ブラックインクにおけるカーボンブラック含有量がそのブラックインクの全重量に対して0.4重量%〜1.5重量%であり、そして前記の濃いブラックインクにおけるカーボンブラック含有量がそのブラックインクの全重量に対して1.5重量%〜10重量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記の中間階調用ブラックインクが、カーボンブラック含有量0.4重量%〜1重量%のブラックインク及び/又はカーボンブラック含有量1重量%〜1.5重量%のブラックインクである、請求項7に記載のインクジェット記録方法。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする記録物。
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