JP7045903B2 - 前処理剤組成物、前処理剤組成物の製造方法、記録媒体、記録媒体の製造方法および記録方法 - Google Patents
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Description
先ず、本実施の形態の前処理剤組成物について、以下に説明する。
本実施の形態の前処理剤組成物は、画像が印刷(形成)される前の基材に対して、前処理を行うために用いられるものである。即ち、前処理剤組成物は、前処理により基材上に形成される前処理層の構成材料として用いられるものである(基材および前処理層の詳細については、後述する。)。基材に前処理を施して前処理層を形成することにより、記録媒体に対する水性インクの定着性の向上を可能にする。ここでの「定着性」とは、記録媒体に画像形成後の水性インクの定着安定性を意味し、定着性が良好であると画像のビーディングや滲み、色ムラ等の発生を抑制することができる。また、前処理層の基材に対する密着性が高いほど、記録媒体における前処理層の耐剥離性および耐擦過性の向上を可能にする。ここでの「耐剥離性」とは、記録媒体の表面に形成された前処理層の一部又は全部が、当該記録媒体表面から剥離するのを抑制し得ることを意味する。「耐擦過性」とは、記録媒体の表面に形成された前処理層に傷が付くのを抑制し得ることを意味する。記録媒体における前処理層の耐剥離性および耐擦過性が高いことは、当該記録媒体上に形成された印刷画像においても記録媒体に対する耐剥離性および耐擦過性が向上することを意味する。さらに、前処理剤組成物そのものが耐水性を有する場合、基材に形成された前処理層が水分による影響を受けず、すなわち、記録媒体上に形成された印刷画像が変質するのを抑制することが可能となる。
前処理剤組成物は以下に記載の製造方法で製造される。
まず、アルコール類に対して少なくとも一種の樹脂材料を溶解させた樹脂材料溶解液と、水に対して少なくとも一種の多価金属塩を溶解させた多価金属塩溶解液を作成する。各溶解液の作成方法としては特に限定されず、各材料を混合し、その混合物を撹拌することによって作成することができる。そして、作成した樹脂材料溶解液、多価金属塩溶解液、必要に応じて表面張力調整剤、およびその他の添加剤を任意の順番で加え、撹拌・混合することで前処理剤組成物を製造することができる。撹拌・混合に際しての混合物の温度、並びに撹拌時間は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
本実施の形態の記録媒体は、基材と、当該基材の少なくとも一方の面に設けられた前処理層とを少なくとも有し、例えば、インクジェット記録方法による画像印刷等に用いられるものである。
本実施の形態の記録媒体への記録方法は、記録媒体上に水性インクを用いて画像を印刷するだけでなく、当該画像の印刷前に基材に施される前処理も含むものである。
本実施の形態の記録媒体の製造方法は、前述の前処理剤付与工程と、前処理層形成工程とを少なくとも含むものである。これにより、インクの滲みやビーディングの発生を抑制しつつ、インクを良好に定着して画像を形成することが可能、かつ、印刷画像の耐剥離性、耐擦過性および耐水性を有する記録媒体を製造することができる。尚、前処理剤付与工程および前処理層形成工程の詳細については、前述の通りであるので、その説明は省略する。
各実施例1~8においては、樹脂材料としてのセラック(商品名;乾燥透明白ラック、日本シェラック工業(株)製)、樹脂材料の溶媒としてのエタノール(商品名;エタノール(99.5)、和光純薬工業(株)製)、多価金属塩としての乳酸カルシウム(商品名;DL-乳酸カルシウム五水和物、和光純薬工業(株)製)、多価金属塩の溶媒としての純水、および表面張力調整剤(商品名;SYグリスターMCA-750、阪本薬品工業(株)製)を、それぞれ表1に示す配合割合となる様に前述した前処理剤組成物の製造方法に従って混合・撹拌し、それぞれの前処理剤組成物を作製した。
比較例1および比較例2においては、実施例1~8と同じ材料を用いて、表1に示す配合割合にて、比較例1および比較例2に係る前処理剤組成物を作製した。
各実施例9~13においては、樹脂材料としてのセラック(商品名;乾燥透明白ラック、日本シェラック工業(株)製)、樹脂材料の溶媒としてのエタノール(商品名;エタノール(99.5)、和光純薬工業(株)製)、多価金属塩としての酢酸カルシウム、多価金属塩の溶媒としての純水、および表面張力調整剤(商品名;SYグリスターMCA-750、阪本薬品工業(株)製)を、それぞれ表2に示す配合割合となる様に前述した前処理剤組成物の製造方法に従って混合・撹拌し、それぞれの前処理剤組成物を作製した。
比較例3~5においては、実施例9~13と同じ材料を用いて、表2に示す配合割合にて、比較例3~5に係る前処理剤組成物を作製した。
まず、基材としてPETフィルム(商品名:E5100、東洋紡(株)製)およびアルミ基材(商品名:UG-8495、キャプテンスタッグ(株)販売)を準備し、当該基材の一方の面に各実施例1~13、比較例1および比較例3の前処理剤組成物からなる前処理剤を用いてそれぞれ前処理を施した。前処理は、先ずバーコーター(商品名;バーコーターNo.3、アズワン(株)製)を用いて、PETフィルム上およびアルミ基材上に前処理剤を塗布して行った。塗布量は固形分換算で0.6cc/m2とした。次いで、PETフィルム上に塗布した前処理剤は、加熱温度70℃、加熱時間1minの条件下で加熱乾燥し、前処理層を形成した。また、アルミ基材上に塗布した前処理剤は、加熱温度70℃、加熱時間1minの条件下で加熱乾燥し、前処理層を形成した。これにより、各実施例1~13ならびに比較例1および3に係る記録媒体を作製した。
次に、水性インク組成物からなる水性インクを用いて、各実施例1~13、比較例1および比較例3に係る記録媒体に対しインクジェット方式により印刷を行った。印刷には、インクジェットプリンター(商品名:PX-105 、EPSON(株)製)を用いた。
各実施例および比較例に係る前処理層の耐テープ剥離性については、各実施例および比較例に係る記録媒体の前処理層に対して、粘着テープ(商品名:セロテープ(登録商標)No.405、ニチバン(株))を貼り付け、その後粘着テープを剥がしたときの前処理層の剥がれやテープへの移り状態を確認することにより、テープ剥離性を目視で評価した。結果を表1、表2に示す。
○:粘着テープへの前処理層の付着なし
×:粘着テープへの前処理層の付着あり
各実施例および比較例に係る前処理層の耐擦過性については、各実施例および比較例に係る記録媒体の前処理層を爪で2回擦り、前処理層の剥がれ状態を確認することにより、耐擦過性を目視で評価した。結果を表1、表2に示す。
○:前処理層の剥がれなし
×:前処理層の剥がれあり
各実施例および比較例に係る前処理層の耐水性については、各実施例および比較例に係る記録媒体の前処理層に対して、濡らしたガーゼでワイプを行い、ワイプ後の前処理層の剥がれ状態を確認することにより、耐水性を目視で評価した。結果を表1、表2に示す。
○:前処理層の剥がれなし
×:前処理層の剥がれあり
各実施例および比較例に係る記録媒体に、水性インク組成物からなる水性インクで画像を印刷した後のインク定着性については、次の評価基準に基づき評価を行った。結果を表1、表2に示す。
○:印刷画像にビーディング、滲みおよび色ムラの発生なし
×:印刷画像にビーディング、滲みおよび色ムラの発生あり
Claims (17)
- 基材の少なくとも一方の面に対し、前処理を行うための前処理剤組成物であって、
少なくとも一種の難水溶性および/又は非水溶性の樹脂と、アルコール類と、少なくとも1種の多価金属塩と、を少なくとも含み、
前記樹脂の含有量が、前処理剤組成物の全質量に対し0.1質量%~30質量%であり、
前記多価金属塩の含有量が、前処理剤組成物の全質量に対し0.1質量%~10質量%であり、
前記樹脂が、セラック樹脂およびロジン樹脂の少なくとも何れかであり、
前記多価金属塩が、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、チタン塩、マンガン塩、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩、スズ塩およびバリウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記カルシウム塩が、乳酸カルシウムおよび酢酸カルシウムであり、
前記乳酸カルシウムの含有量が、前処理剤組成物の全質量に対し5質量%未満であり、
前記酢酸カルシウムの含有量が、前処理剤組成物の全質量に対し2質量%未満である、前処理剤組成物。 - 前記アルコール類が、第1級アルコールである請求項1に記載の前処理剤組成物。
- 前記第1級アルコールが、メタノール又はエタノールを含む請求項2に記載の前処理剤組成物。
- 前記基材が、疎水性の基材である請求項1~3のいずれか1項に記載の前処理剤組成物。
- 基材の少なくとも一方の面に対し、前処理を行うための前処理剤組成物の製造方法であって、
少なくとも一種の難水溶性および/又は非水溶性の樹脂をアルコール類に溶解させて樹脂溶解液を作製する工程と、
少なくとも一種の多価金属塩を溶媒に対して溶解させて多価金属塩溶解液を作製する工程と、
前記樹脂溶解液と前記多価金属塩溶解液とを混合する工程と、を含み、
前記樹脂が、セラック樹脂およびロジン樹脂の少なくとも何れかであり、
前記多価金属塩が、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、チタン塩、マンガン塩、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩、スズ塩およびバリウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記カルシウム塩が、乳酸カルシウムおよび酢酸カルシウムであり、
前記乳酸カルシウムの含有量が、前処理剤組成物の全質量に対し5質量%未満であり、
前記酢酸カルシウムの含有量が、前処理剤組成物の全質量に対し2質量%未満である、前処理剤組成物の製造方法。 - 前記溶媒が、水である請求項5に記載の前処理剤組成物の製造方法。
- 前記アルコール類が、第1級アルコールである請求項5または6に記載の前処理剤組成物の製造方法。
- 前記第1級アルコールが、メタノール又はエタノールを含む請求項7に記載の前処理剤組成物の製造方法。
- 基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に設けられた前処理層とを含む記録媒体であって、
前記前処理層の少なくとも一部は前処理剤の乾燥皮膜からなり、
前記前処理剤は、請求項1~4の何れか1項に記載の前処理剤組成物からなるものである記録媒体。 - 前記基材が、疎水性の基材である請求項9に記載の記録媒体。
- 基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に設けられた前処理層とを含む記録媒体の製造方法であって、
前記基材の少なくとも一方の面上に、請求項1~4の何れか1項に記載の前処理剤組成物からなる前処理剤を付与する前処理剤付与工程と、
前記前処理剤付与工程において付与された前記前処理剤を乾燥させて、前処理層を形成する前処理層形成工程と、
を含む記録媒体の製造方法。 - 前記基材として、疎水性の基材を用いる請求項11に記載の記録媒体の製造方法。
- 基材に画像を形成する記録方法であって、
基材の少なくとも一方の面上に、請求項1~4の何れか1項に記載の前処理剤組成物からなる前処理剤を付与する前処理剤付与工程と、
前記前処理剤付与工程において付与された前記前処理剤上にインクを付与する第1インク付与工程と、
前記第1インク付与工程後に、前記前処理剤と前記インクを乾燥させて前記画像を形成する画像形成工程と、
を含む記録方法。 - 基材に画像を形成する記録方法であって、
基材の少なくとも一方の面上に、請求項1~4の何れか1項に記載の前処理剤組成物からなる前処理剤を付与する前処理剤付与工程と、
前記前処理剤付与工程において付与された前記前処理剤を乾燥させて、前処理層を形成する前処理層形成工程と、
前記前処理層形成工程により形成された前記前処理層にインクを付与する第2インク付与工程と、
前記第2インク付与工程において付与された前記インクを乾燥させて前記画像を形成する画像形成工程と、
を含む記録方法。 - 前記基材が、疎水性の基材である請求項13または請求項14に記載の記録方法。
- 前記前処理剤付与工程、前記第1インク付与工程又は前記第2インク付与工程の少なくとも何れかの工程を、インクジェット記録方式により行う請求項13~15の何れか1項に記載の記録方法。
- 前記インクとして水性インクを用いる請求項13~16の何れか1項に記載の記録方法。
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