以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る単結晶製造装置を示す概略構成図である。
本実施形態では、図1に示す単結晶製造装置1を用いて、昇華再結晶法(改良レーリー法)により窒化アルミニウム単結晶5(以下、単に「単結晶5」と称する。)を製造する。具体的には、高温領域でアルミニウムを含む原料2を加熱して昇華させ、低温領域に設けられた種結晶3上で昇華ガスを凝結させることにより単結晶5を製造する。この単結晶製造装置1は、坩堝10と、断熱材20と、結晶成長炉30と、ガス供給装置40と、減圧装置50と、誘導コイル60と、第1及び第2の温度計71,72と、を備えている。
坩堝10は、原料2を収容すると共に種結晶3を内部に保持するものである。この坩堝10は、円形状とされた上部開口111を有する容器本体11と、当該上部開口111を覆う蓋体12と、を有している。蓋体12は、容器本体11に載置されているだけであり、この坩堝10内は流体の出入りが容易な準密閉的な構造となっているので、ガス供給装置40によって結晶成長炉30内に導入された窒素ガスが坩堝10内に流入することが可能となっている。
容器本体11は、有底の円筒形状を有しており、その内部下方には原料2が収容(保持)されている。この原料2の具体例としては、たとえば、窒化アルミニウムの粉末、ペレット、焼結体等を例示することができる。本実施形態における「容器本体11」が本発明における「容器本体」の一例に相当し、本実施形態における「原料2」が本発明における「原料」の一例に相当する。
蓋体12は、容器本体11の上部開口111の外形よりも大きな外形の円板形状を有しており、容器本体11の上部開口111を覆うように当該容器本体11の上端に載置されている。この蓋体12は、坩堝10の内部空間A1(後述)に臨む下面121を有している。
下面121は、略平坦な面とされ、たとえば、Ra0.2〜Ra25の表面粗さを有していることが好ましい。なお、本明細書における表面粗さとは、日本工業規格の「JIS B 0601:2013」に基づいて測定を行った算術平均粗さRa値である。上記「JIS B 0601:2013」は、「ISO 4287:1997」に準拠している。下面121は、研削加工や研磨加工を用いることで上述の表面粗さを得ることができるが、特にこれに限定されず、公知の方法を採用してもよい。
本実施形態では、この下面121上に、種結晶3が接合層4(後述)を介して保持されている。蓋体12を容器本体11の上部開口111を覆うように載置すると、下面121及び種結晶3が容器本体11内に収容された原料2に対向するようになる。本実施形態における「蓋体12」が本発明における「保持体」の一例に相当する。
因みに、種結晶3の具体例としては、例えば、サファイヤ、SiC単結晶又はAlN単結晶等から構成される板状又は円板状のものを例示することができるが、AlN単結晶から構成される基板を用いることが好ましい。
本実施形態では、種結晶3は円板状とされるものを用いており、このような種結晶3を、その中心が円板形状とされた蓋体12の下面121の中心と実質的に一致するように配置する。なお、種結晶3の位置は、特に上述に限定されない。たとえば、種結晶3の中心が、蓋体12の下面121の中心に対して偏心していてもよい。
本実施形態では、種結晶3の上方(+Z方向側)の面が当該種結晶3を蓋体12によって保持される保持面31であり、種結晶3の下方(−Z方向側)の面が単結晶5の成長する成長面32となる。
保持面31は、Ra0.2〜Ra25の表面粗さを有していることが好ましく、接合層4を介して種結晶3と蓋体12との密着性の向上の観点から、蓋体12の下面121の表面粗さと実質的に同一の表面粗さを有していることがより好ましい。一方、成長面32は、均一な結晶成長を促す観点から、鏡面研磨仕上げされた面であることが好ましく、たとえば、Ra0.2以下の表面粗さを有していることが好ましい。
なお、種結晶3として、窒化アルミニウム単結晶を用いる場合、成長面32が+c面、−c面、m面、又はa面等であることが好ましい。+c面とは、種結晶3を構成する六方晶の{0001}面であり、−c面とは、種結晶3を構成する六方晶の{000−1}面であり、m面とは、種結晶3を構成する六方晶の{10−10}面であり、a面とは、種結晶3を構成する六方晶の{11−20}面である。
なお、ミラー指数の負の数字は数字の上にバーを付けて表すのが一般的であるが、本明細書においては、これをマイナス符号で代用する。すなわち、結晶面{000−1}や{10−10}の「−1」は、「バー1」を表す。本実施形態におけ「種結晶3」が本発明における「種結晶」の一例に相当する。
ここで、接合層4について、詳細に説明する。接合層4は、種結晶3の保持面31の全面に一様に付与された略均一な膜厚を有する層である。この接合層4の外形は、平面視において、種結晶3の外形に対応して略円形状とされている。
接合層4の一方の主面41は、種結晶3の保持面31と対向して、当該保持面31と直接接触している。これに対し、他方の主面42は、蓋体12の下面121と対向して、当該下面121と直接接触している。結果として、この接合層4は、蓋体12と種結晶3の間に介装されている。
この接合層4は、蓋体12と種結晶3とを相互に接合する機能を有している。このような接合層4の平均厚さとしては、10nm〜50μmであることが好ましい。接合層の平均厚さが、上述の下限値未満であると、接合層による接合力が低くなり、蓋体と種結晶とを相互に接合する機能が低下する。一方、接合層の平均厚さが、上述の上限値超であると、接合層の剛性が低くなり、蓋体と種結晶との接合に破断が生じ易くなる。
接合層4としては、高融点を有する金属材料が用いられ、導電性はあるが比較的内部抵抗の大きい材料により構成されている。このような接合層4を構成する材料
としては、具体的には、タングステン、タンタル、炭化タンタルから選択される少なくとも一種類の材料を例示することができるが、蓋体12を構成する材料と実質的に同一の組成を有することが好ましい。詳細は後述するが、本実施形態では、加熱による拡散接合(換言すると、焼結)により蓋体12と接合層4とを接合させるため、当該蓋体12を構成する材料と接合層4を構成する材料とが実質的に同一の組成を有していることで、これらの接合が促進され易くなる。これにより、接合層4を介して種結晶3を蓋体12に強固に保持させることができる。
ここで、「高融点」とは、単結晶の結晶成長時の温度雰囲気において固体が融解しない温度であり、窒化アルミニウム単結晶5を成長させる場合においては、結晶成長時の温度雰囲気である2000℃を超える融点であることをいう。本実施形態における「接合層4」が本発明における「接合層」の一例に相当する。
坩堝10では、上述の容器本体11上に蓋体12が載置されることで内部空間A1が画定される。この内部空間A1は、原料2が収容される原料収容部と、加熱された原料2が昇華し、発生する昇華ガスが流れる流路部と、流下した昇華ガスが凝結する結晶成長部と、から構成されている。結晶成長部は、原料収容部及び流路部に比べて低温な領域として構成されており、当該結晶成長部に臨むように種結晶3が配置される。
原料収容部と流路部との境界は、たとえば、原料収容部に収容される原料2の上面となる。また、流路部と結晶成長部との境界は、たとえば、縦断面視において、坩堝10に対して上下動する誘導コイル60が下降した際の、当該誘導コイル60上端に相当する部分となる。因みに、原料収容部、流路部、及び結晶成長部は、坩堝10の内部空間A1における原料2及び種結晶3の位置関係を説明することを主な目的として便宜的に命名したものであり、それら部分の境界の厳密な位置は、特に限定されない。
坩堝10は、窒化アルミニウム単結晶5の結晶成長時(2000℃程度)での耐熱性を有する材料から構成されている。具体的には、この坩堝10の容器本体11は、黒鉛、窒化硼素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、炭化珪素、窒化珪素、モリブデン、タングステン、タンタル、炭化モリブデン、炭化ジルコニウム、炭化タングステン、炭化タンタル、窒化モリブデン、窒化ジルコニウム、窒化タングステン、及び、窒化タンタルからなる群から選択される少なくとも一種類の材料から構成されている。
特に、窒化アルミニウム単結晶5への汚染(固溶による汚染)を防止する観点から、アルミニウムのイオン半径と大きく異なる金属の単体、又は、その窒化物若しくは炭化物から構成されていることが好ましい。具体的には、上述の材料の中でも、容器本体11が、モリブデン、タングステン、タンタル、窒化モリブデン、窒化タングステン、窒化タンタル、炭化モリブデン、炭化タングステン、及び、炭化タンタルからなる群から選択される少なくとも一種類の材料から構成されていることが好ましい。なお、上述の窒化アルミニウム単結晶5の汚染は、窒化アルミニウムから生じた昇華ガスにより坩堝10がエッチングされ、当該微粒子が窒化アルミニウム単結晶5に混入することで発生するものである。
一方、坩堝10の蓋体12は、接合層4を介して種結晶3を強固に保持させる観点から、タングステン、タンタル、炭化タンタルから選択される少なくとも一種類の材料から構成されている。また、上述したが、蓋体12を構成する材料が接合層4を構成する材料と実質的に同一の組成を有していることが好ましい。因みに、容器本体11を構成する材料と、蓋体12を構成する材料とについても、実質的に同一の組成を有していることが好ましい。
断熱材20は、図1に示すように、坩堝10の全体を覆うように設けられている。このように断熱材20が坩堝10の周囲を覆うことで、外部への放熱が抑制される。この断熱材20は、筒状部21と、蓋部22と、底部23と、を有している。
筒状部21は、外形が筒形状とされ、坩堝10の周囲を包囲している。この筒状部21は、Z方向において、少なくとも坩堝10の容器本体11を包囲している。この筒状部21は、当該筒状部21の上端で開口する上部開口211と、当該筒状部21の下端で開口する下部開口212と、を有している。
蓋部22は、上部開口211に嵌め込まれており、坩堝10の蓋体12と対向するように設けられている。この蓋部22の略中心には、当該蓋部22をZ方向に貫通する開口221が設けられている。このような開口221は、外部への放熱を抑制するために、できる限り小さい内径(たとえば、10mm程度)とされている。
底部23は、下部開口212に嵌め込まれており、坩堝10の容器本体11の底面と対向するように設けられている。この底部23の略中心には、当該底部23をZ方向に貫通する開口231が設けられている。このような開口231は、外部への放熱を抑制するために、できる限り小さい内径(たとえば、10mm程度)とされている。
以上に説明した坩堝10及び断熱材20は、固定部301を介して結晶成長炉30内に固定されている。この結晶成長炉30は、例えば二重構造の透明な石英管から構成されており、その上部にガス導入口302が設けられていると共に、その下部にガス排出口303が設けられている。ガス導入口302には、窒素ガスを供給可能なガス供給装置40が接続されている。一方、ガス排出口303には、真空ポンプ等の減圧装置50が接続されている。このガス供給装置40や減圧装置50を駆動させることで、結晶成長炉30内の雰囲気を所定の圧力に調整することが可能となっている。
結晶成長炉30の外側周囲には誘導コイル60が配置されている。この誘導コイル60は、結晶成長炉30内の坩堝10を取り囲んでおり、この誘導コイル60に高周波電流を通電することで坩堝10が自己発熱し、これにより原料2が所望の温度(たとえば、融点以上の温度)に加熱される。本実施形態における「結晶成長炉30」及び「誘導コイル60」が本発明における「加熱炉」の一例に相当する。
第1及び第2の温度計71,72の具体例としては、例えば放射温度計等を例示することができる。結晶成長炉30には、この温度計71,72により坩堝10の温度を計測可能なように、石英製の窓部304,305が設けられている。温度計71,72は、坩堝10から放射される赤外線や可視光線の強度を測定することで坩堝10の温度を検出する。
第1の温度計71は、断熱材20の蓋部22に設けられた開口221を介して坩堝10の蓋体12の上面(坩堝10の上部)に対向するように配置されており、当該坩堝10の上部の温度を測定することが可能となっている。一方、第2の温度計72は、断熱材20の底部23に設けられた開口231を介して坩堝10の容器本体11の底面(坩堝10の下部)に対向するように配置されており、当該坩堝10の下部の温度を測定することが可能となっている。つまり、本実施形態では、第1の温度計71によって種結晶3の温度を測定し、第2の温度計72によって原料2の温度を測定する。
次に、以上に説明した単結晶製造装置1を用いた単結晶の製造方法について説明する。
図2は本発明の一実施の形態に係る単結晶の製造方法を示す工程図である。
本実施形態の単結晶の製造方法は、図2に示すように、保持工程S1と、配置工程S2と、成長工程S3と、を備えている。また、保持工程S1は、付与工程S11と、配置工程S12と、接合工程S13と、を含んでいる。
まず、保持工程S1について、図3(a)〜図3(f)、図4、及び図5を参照しながら、詳細に説明する。図3(a)〜図3(f)は本発明の一実施の形態に係る単結晶の製造方法を示す図であり、保持工程の詳細を説明するための断面図、図4は本発明の一実施の形態に係る中間体を単結晶製造装置に設置した状態を示す概略構成図、図5は本発明の一実施の形態に係る単結晶の製造方法を示す図であり、収容空間内の温度勾配を説明するための断面図である。
本実施形態における「保持工程S1」が本発明における「保持工程」の一例に相当し、本実施形態における「配置工程S2」が本発明における「配置工程」の一例に相当し、本実施形態における「成長工程S3」が本発明における「成長工程」の一例に相当し、本実施形態における「付与工程S11」が本発明における「第1の工程」の一例に相当し、本実施形態における「配置工程S12」が本発明における「第2の工程」の一例に相当し、本実施形態における「接合工程S13」が本発明における「第3の工程」の一例に相当する。
保持工程S1では、まず、付与工程S11として、図3(a)に示すように、種結晶3を準備する。種結晶3の保持面31は、たとえば、研削加工や研磨加工を行うことにより、所定の表面粗さとなるように表面処理する。一方、成長面32は、たとえば、CMP(化学的機械的研磨)処理により、鏡面仕上げする。なお、種結晶3の両主面31,32の表面処理方法は、特に上述に限定されない。
そして、図3(b)に示すように、種結晶3の保持面31上に接合層4を付与する。この接合層4の形成方法としては、種結晶3と接合層4との密着性を向上させるという観点より、たとえば、抵抗加熱を用いた蒸着法、スパッタ蒸着法、真空蒸着法等といった物理気相成長法(物理的蒸着法、PVD法:Physical Vapor Deposition)や化学気相成長法(CVD法:Chemical Vapor Deposition)を例示することができる。これらの方法により接合層4を形成することで、種結晶3と接合層4との密着性が向上する。
次いで、配置工程S12として、図3(c)に示すように、接合層4が付与された種結晶3を、当該接合層4の主面42が下面121と直接接触するように、蓋体12上に配置する。蓋体12の下面121は、予め研削加工や研磨加工を行うことで、所定の表面粗さを有しているように表面処理が施されている。本実施形態では、種結晶3を蓋体12の下面121の略中央に配置する。
そして、図3(d)に示すように、蓋体12上に位置する種結晶3を包囲するように、キャップ80を被せる。キャップ80は、略円形とされた下部開口81を有する有底の筒状体である。下部開口81の外形は、少なくとも種結晶3の外形よりも大きく、平面視において、当該下部開口81により種結晶3が包囲されている。このようなキャップ80を構成する材料としては、たとえば、容器本体11を構成する材料と同様の材料を例示することができるが、蓋体12を構成する材料と同一の材料により構成されていることが好ましい。
蓋体12上にキャップ80を被せることで、収容空間A2が画定される。そして、この収容空間A2に種結晶3が収容される。なお、このキャップ80は、蓋体12に載置されているだけであり、この収容空間A2内は流体の出入りが容易な準密閉的な構造となっているので、ガス供給装置40によって結晶成長炉30内に導入された窒素ガスが収容空間A2内に流入することが可能となっている。
本実施形態のキャップ80は、収容空間A2に種結晶3を収容することで、断熱材20等が脱落して不純物が種結晶3に混入することを防ぎ、当該種結晶3の汚染を防止している。また、後の接合工程S13では、種結晶3が加熱され昇華ガスが発生するが、この際、キャップ80を被せることで、収容空間A2内を平衡状態となる圧力(昇華ガスの分圧)に保持して、当該種結晶3の昇華を抑制している。本実施形態における「キャップ80」が本発明における「有底の筒体」の一例に相当する。
なお、以下の説明において、下面121上に接合層4を介して種結晶3を配置させた蓋体12上にキャップ80を被せ、画定された収容空間A2に当該種結晶3を収容させたものを中間体Mとも称する。
次いで、接合工程S13として、図4に示すように、中間体Mを結晶成長炉30内に設置する。本実施形態では、成長工程S3において、原料2を加熱して昇華させる結晶成長炉30と同一の結晶成長炉30を用いて、接合工程S13を実行する。これにより、設備の投資コストの低減を図ると共に、設備スペースの省スペース化を図ることができる。本実施形態では、中間体Mの大きさに対応して断熱材20Bを用いているが、断熱材20を転用してもよい。
結晶成長炉30内に中間体Mを設置した後、減圧装置50を駆動させてガス排出口303を介して結晶成長炉30内の大気を除去して、当該結晶成長炉30内を真空引きし、結晶成長炉内の圧力を5×10−6torr程度とする。
そして、ガス供給装置40を駆動させてガス導入口302を介して結晶成長炉30内に窒素ガスを導入して結晶成長炉30内を500torr程度まで昇圧する。そして、図3(e)に示すように、誘導コイル60に高周波電流を通電して中間体Mを発熱させて、当該中間体Mを加熱する。
この際、第1の温度計71によって中間体Mの上部の温度(すなわち、収容空間A2の上部)を測定すると共に、第2の温度計72によって中間体Mの下部の温度(すなわち、種結晶3廻りの温度)を測定する。誘導コイル60は、この測定結果に基づいて、中間体Mの収容空間A2において、種結晶に接近するに従い漸次的に温度が低くなるような温度勾配を形成するように制御される(図5参照)。この制御は、たとえば、誘導コイル60の位置を坩堝10に対して上下方向に移動することにより行うことができる。
なお、図5において、比較的高温な領域は、ハッチングが濃い領域として図示し、比較的低温な領域は、ハッチングが薄い領域として図示した。また、図5において、中間体Mの温度勾配の理解を容易にするため、等温線を一点鎖線で示し、その他の線を破線で示した。
収容空間A2内の温度条件については、種結晶3の近傍が最も温度が低ければ、特に上述の温度勾配を形成することに限定されない。たとえば、上部温度と下部温度とが実質的に同一の温度とされていてもよい。収容空間A2内の温度条件として、種結晶3の近傍の温度を最も低くすることで、種結晶3の昇華を抑制している。
この際、中間体Mでは、接合層4の主面41と、蓋体12の下面121とが接触した状態で加熱されることで、当該接合層4と蓋体12とが接合される。すなわち、誘導コイル60は、高周波電流が供給されることで、接合層4と蓋体12に誘導電流を生じさせる。誘導電流が生じた接合層4と蓋体12では、これらの内部抵抗によりジュール熱が発生し、この発熱により、接合層4の主面41と蓋体12の下面121との界面(すなわち、接合面)において、これらを構成する粒子間の接触面積が拡大し、当該接合層4と蓋体12とが相互に接合(固相拡散接合)される。以上により、種結晶3が接合層4を介して蓋体12に保持される。
本実施形態では、機械的な保持方法を用いることなく蓋体12に種結晶3を保持させているので、種結晶3の成長面32の全面において単結晶5を成長させることができ、当該単結晶5を効率よく得ることが可能となる。
また、本実施形態では、接着材料を用いることなく蓋体12に種結晶3を保持させているので、接着材料が不純物として混入するのを防ぎ、単結晶の汚染を抑制することができる。
接合層4と蓋体12とが接合し、種結晶3が当該蓋体12に保持されたら、ガス導入口302から窒素ガスを結晶成長炉30内に供給して結晶成長炉30内を700torr程度まで昇圧させた後に、誘導コイル60への通電を停止して中間体Mを室温まで自然冷却する。そして、図3(f)に示すように、キャップ80を蓋体12上から取り外して、種結晶3が下面121に保持された蓋体12を得る。
次いで、配置工程S2として、予め原料2が収容された容器本体11に対して、下面121が上部開口111と対向するように蓋体12を配置する。これにより、内部空間A1を画定される。内部空間A1では、原料2と種結晶3とが相互に対向するように配置される。
そして、坩堝10を結晶成長炉30内に設置した後、減圧装置50を駆動させてガス排出口303を介して結晶成長炉30内の大気を除去して、当該結晶成長炉30内を真空引きし、結晶成長炉30内の圧力を5×10−6torr程度とする。そして、ガス供給装置40を駆動させてガス導入口302を介して結晶成長炉30内に窒素ガスを導入して結晶成長炉30内を500torr程度まで昇圧する。
次いで、誘導コイル60に高周波電流を通電して坩堝10を発熱させて、種結晶3を1000℃程度まで加熱することにより、当該種結晶3の成長面(原料2に対向する面)を清浄化する。続けて、誘導コイル60に高周波電流を通電した坩堝10をさらに発熱させることで、原料2及び種結晶3を加熱する。
この際、第1の温度計71によって坩堝10の上部の温度を測定すると共に、第2の温度計72によって坩堝10の下部の温度を測定する。誘導コイル60は、この測定結果に基づいて、坩堝10の上部温度(すなわち、種結晶3廻りの温度)が2000℃程度とするように制御されると共に、坩堝10の下部温度(すなわち、原料2の温度)が坩堝10の上部温度(種結晶3の温度)よりも50℃程度高い温度となるように制御される。この制御は、たとえば、誘導コイル60の位置を坩堝10に対して上下方向に移動することにより行うことができる。
坩堝10の温度が設定温度に達したら、減圧装置50によって結晶成長炉30内を100torr程度に減圧する。この減圧により、単結晶5の成長が始まる(成長工程S3)。具体的には、下記の(1)式及び(2)式に示すように、原料2から発生した昇華ガスが、種結晶3に向かって移送され、当該種結晶3上で再結晶化し単結晶5が成長する。
2AlN(s) → 2Al(g)+N2(g) ・・・(1)
2Al(g)+N2(g) → 2AlN(s) ・・・(2)
単結晶5の成長を停止させる場合には、ガス導入口302から窒素ガスを結晶成長炉30内に供給して結晶成長炉30内を700torr程度まで昇圧させた後に、誘導コイル60への通電を停止して原料2及び種結晶3を室温まで自然冷却する。
本実施形態の単結晶の製造方法は、以下の効果を奏する。
本実施形態では、機械的な保持方法を用いることなく蓋体12に種結晶3を保持させているので、種結晶3の成長面32の全面において単結晶5を成長させることができ、当該単結晶5を効率よく得ることが可能となる。
また、本実施形態では、接着材料を用いることなく蓋体12に種結晶3を保持させているので、接着材料が不純物として混入するのを防ぎ、単結晶の汚染を抑制することができる。
また、本実施形態では、接合工程S13において、加熱による拡散接合により蓋体12と接合層4とを接合させるため、当該蓋体12を構成する材料と接合層4を構成する材料とを同一の組成を有する材料により構成することで、これらの接合が促進され易くなる。これにより、接合層4を介して種結晶3を蓋体12に強固に保持させることができる。
また、本実施形態では、配置工程S12は、キャップ80を蓋体12上に被せて、種結晶3を収容する収容空間A2を形成することを含んでいる。これにより、断熱材20等が脱落して不純物が種結晶3に混入することを防ぎ、当該種結晶3の汚染を防止している。また、後の接合工程S13において、収容空間A2内を平衡状態となる圧力に保持して、当該種結晶3の昇華を抑制することができる。
また、本実施形態では、収容空間A2内の温度条件として、種結晶3の近傍の温度を最も低くすることで、種結晶3の昇華が一層抑制される。さらに、本実施形態では、接合工程S13における収容空間A2の雰囲気圧力(本実施形態では、500torr)を成長工程S3における内部空間A1の雰囲気圧力(本実施形態では、100torr)に対して相対的に高くすることで、接合工程S13において、種結晶3の昇華をより一層抑制することができる。
また、本実施形態では、接合工程S13と成長工程S3とで、同一の結晶成長炉30及び誘導コイル60を用いており、これにより、設備の投資コストの低減を図ると共に、設備スペースの省スペース化を図ることができる。
また、本実施形態では、種結晶3の保持面31の全面に接合層4が形成されている。すなわち、種結晶3と蓋体12との接合面の全面に亘り、接合層4が介在しているので、成長工程S3において、種結晶3と蓋体12とのわずかな隙間から種結晶3の再昇華が進行し、ボイド等のマクロ欠陥が生じてしまうのを抑制している。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
たとえば、本実施形態では、接合層4と蓋体12は、誘導加熱することにより加熱して、相互に接合しているが、特にこれに限定されず、誘導コイル60に代えて、抵抗加熱や赤外加熱を利用した加熱方法を用いてもよい。
また、坩堝10を第2の坩堝内に収容した二重坩堝構造を採用してもよいし、坩堝10を第2及び第3の坩堝内に収容した三重坩堝構造を採用してもよい。