JP6471295B2 - 炭素繊維前駆体繊維の製造方法と、炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
(i)炭素化収率が十分に高いとは言えない。
(ii)前駆体繊維を大量に仕込んで耐炎化工程に供すると、耐炎化反応が急激な発熱を伴うため、前駆体繊維の束内部に蓄熱して発火する場合がある。
(iii)耐炎化反応開始温度が高温であるため、耐炎化処理に大量の熱エネルギーを必要とする。
以上から、PAN系炭素繊維の生産効率は必ずしも十分とは言えず、コストを重視する産業用途分野では多角化が十分に実現できていない。
これらの技術は耐炎化工程や炭素化工程の生産性向上に一定の効果を有するが、炭素繊維の物性や品質を維持するには、PAN系重合体の分子構造に導入できる官能基の量には限界があった。
しかしながら、エチニル基は加熱下で分子間架橋構造を形成する特徴があるため、溶融紡糸法で連続的に安定して前駆体繊維を得ることが困難であった。
しかしながら、この難燃繊維は、1000℃以上で炭素化処理すると有機ケイ素基が脱離するため、炭素化収率が著しく低下しやすかった。
[1] 下記一般式(1)で表される構造単位(A)を1.0〜99.0モル%、および下記一般式(2)で表される構造単位(B)を1.0〜99.0モル%含むポリビニルアセチレン系重合体からなる、炭素繊維前駆体繊維。
[6] 前記重合体溶液が、該重合体溶液中に含まれるポリビニルアセチレン系重合体100質量部に対して、一価のアルカリ金属塩を0.1〜10質量部含有する、[3]〜[5]のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
[7] 湿式紡糸法および乾湿式紡糸法で用いる凝固浴溶液が、該凝固浴溶液100質量%中、二価のアルカリ金属塩を1〜30質量%含有する、[3]〜[6]のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
[8] [1]または[2]に記載の炭素繊維前駆体繊維を酸化性雰囲気下、200〜400℃で耐炎化処理する耐炎化工程を含む、炭素繊維の製造方法。
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法によれば、耐炎化反応時の発熱量が少なく、耐炎化反応開始温度が低く、かつ炭素化収率が高い炭素繊維前駆体繊維を連続的に安定して製造できる。
本発明の炭素繊維の製造方法によれば、低コストで炭素繊維を製造できる。
[炭素繊維前駆体繊維の製造方法]
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法は、以下に説明するポリビニルアセチレン系重合体を非プロトン性極性溶媒に溶解して重合体溶液を調製する調製工程と、該重合体溶液から湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により前駆体繊維を得る紡糸工程とを含む。
ポリビニルアセチレン系重合体は、以下に説明する構造単位(A)を含む。また、後述する構造単位(B)を含むことが好ましい。
構造単位(A)は、下記一般式(1)で表される、アセチレン基を側鎖に有する構造単位である。
ここで、「アセチレン基」とは、アルキン、アルカジイン、アルカトリイン等の炭素−炭素三重結合を1つ以上持つ官能基(下記一般式(1)中の−C≡C−に相当)のことである。
なお、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基は、アルキル基等の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。
ここで、「ラダー構造が形成される」とは、先ず2つ以上の構造単位(A)の間で、局所的な共役構造をもつ縮合系六員環構造(初期耐炎化構造)が形成された後に、水素脱離反応や側鎖脱離反応が起こり、より大きな共役構造をもつ縮合系芳香族環構造(耐炎化構造)が形成される反応のことである。
第一の特長は、上述した初期耐炎化構造の形成開始温度の低温化に関する。
ポリビニルアセチレン系重合体のアセチレン基は、PAN系重合体が有するシアノ基より約100℃低い温度において、初期耐炎化構造の形成を開始する。すなわち、ポリビニルアセチレン系重合体からなる炭素繊維前駆体繊維は、耐炎化反応開始温度が低い。これにより、従来のPAN系炭素繊維で課題であった、耐炎化処理に大量の熱エネルギーを必要とする問題が解決される。
第二の特長は、耐炎化処理中に生じる環化反応の発熱量の低減に関する。
本発明者の検討によれば、ポリビニルアセチレン系重合体のアセチレン基が環化縮合反応する際の発熱量は、PAN系重合体のシアノ基の同発熱量より低い特長があることが分かった。すなわち、ポリビニルアセチレン系重合体からなる炭素繊維前駆体繊維は、耐炎化反応時の発熱量が少ない。これにより、従来のPAN系炭素繊維で課題であった、耐炎化処理中に急激に発熱するという問題が解決される。その結果、耐炎化処理の生産性が向上する。
第三の特長は、炭素化収率に関する。
ポリビニルアセチレン系重合体からなる炭素繊維前駆体繊維は、PAN系重合体からなる前駆体繊維より耐炎化処理と炭素化処理の後の炭素化収率が高い。これは炭素化処理中に、PAN系重合体ではニトリル基(−C≡N)で窒素脱離反応が起こるのに対して、アセチレン基(−C≡C−)では脱離反応を伴わず、効率良く炭素化が進むためであると考えられる。これにより、従来のPAN系炭素繊維の製造においてコストアップの原因となっていた炭素化収率の低下の問題が解決される。
R1、R2、R3の少なくとも1つがハロゲン原子やヒドロキシ基のような電子性供与基であれば、耐炎化反応時のポリビニルアセチレン系重合体の主鎖の熱分解を抑制できる。
R4が芳香族炭化水素基や脂肪族炭化水素基(特に不飽和炭化水素基)であれば、耐炎化反応時の重合体側鎖の間で架橋構造が形成され、炭素収率が向上すると共に、耐炎化構造の形成が促進される。
R4がカルボキシ基、スルホン酸基、スルホン酸基の金属塩、アミノ基のような極性官能基、または脂肪族炭化水素基(不飽和炭化水素基、飽和炭化水素基)であれば、紡糸原液を調製する際に、ポリビニルアセチレン系重合体の溶媒への溶解性が良好となり、さらに湿式紡糸法や乾湿式紡糸法でポリビニルアセチレン系重合体を紡糸する際の凝固性や紡糸安定性が高まる。
これら官能基の持つ効果は、特定の1つの機能に限定されるものではない。
なお、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基は、アルキル基等の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。
「CH2=CH−C≡C−H」、「CH2=CH−C≡C−C≡C−H」等で表されるエチニル基を末端にもつ化合物(例えば1―ブテン−3−インなど)。
「CH2=CH−C≡C−Si(CH3)nH3−n」、「CH2=CH−C≡C−Si(CH2CH3)nH3−n」、「CH2=CH−C≡C−Si(CH2CH2CH3)nH3−n」等で表される化合物(ただし、nは0〜3の整数である。)(例えば4−アルキルシリル−1−ブテン−3−インなど)。
「CH2=CH−C≡C−φ」、「CH2=CH−C≡C−φ−OCH3」、「CH2=CH−C≡C−φ―Cl」、「CH2=CH−C≡C−φ−CH3」、「CH2=CH−C≡C−φ−Si(CH3)nH3−n」、「CH2=CH−C≡C−φ−COOH」等で表される化合物(ただし、「φ」は置換基(アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、シリル基、カルボキシ基など)を有していてもよいフェニル基であり、該置換基の位置はオルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよい。また、nは0〜3の整数である。)(例えば4−フェニル−1−ブテン−3−インなど)。
「CH2=CH−C≡C−nBu」、「CH2=CH−C≡C−tBu」等で表される化合物(例えば4−アルキル−1−ブテン−3−インなど)。
「CH2=C(Cl)−C≡C−H」、「CH2=C(Cl)−C≡C−Si(CH3)nH3−n」等で表される化合物(ただし、nは0〜3の整数である。)(例えば2−クロロ−1−ブテン−3−インなど)。
「CH2=C(OH)−C≡C−H」、「CH2=C(OH)−C≡C−Si(CH3)nH3−n」等で表される化合物(ただし、nは0〜3の整数である。)(例えば2−ヒドロキシ−1−ブテン−3−インなど)。
「CH2=C(CH3)−C≡C−H」、「CH2=C(CH3)−C≡C−Si(CH3)nH3−n」等で表される化合物(ただし、nは0〜3の整数である。)(例えば2−メチル−1−ブテン−3−インなど)。
なお、シリル基を含むビニルアセチレン化合物(a)を用いる場合には、ビニル重合した後、シリル基を除去する。シリル基を除去する方法としては、公知の脱保護反応を採用できる。
構造単位(B)は、下記一般式(2)で表される構造単位である。
なお、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基は、アルキル基等の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。ただし、脂肪族炭化水素基の場合は、アセチレン基を置換基として有するものを除く。
R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがハロゲン原子やヒドロキシ基のような電子性供与基であれば、耐炎化反応時のポリビニルアセチレン系重合体の主鎖の熱分解を抑制できる。
R6、R8の少なくとも1つがニトリル基、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基(特に不飽和炭化水素基)であれば、耐炎化反応時の重合体側鎖の間で架橋構造が形成され、炭素収率が向上すると共に、耐炎化構造の形成が促進される。
R6、R8の少なくとも1つがカルボキシ基、スルホン酸基、スルホン酸基の金属塩、アミノ基、アセチル基、アルキルエステル基のような極性官能基、または脂肪族炭化水素基(不飽和炭化水素基、飽和炭化水素基)であれば、紡糸原液を調製する際に、ポリビニルアセチレン系重合体の溶媒への溶解性が良好となり、さらに湿式紡糸法や乾湿式紡糸法でポリビニルアセチレン系重合体を紡糸する際の凝固性や紡糸安定性が高まる。
これら官能基の持つ効果は、特定の1つの機能に限定されるものではない。
ここで、「炭素不飽和結合をもつ官能基」とは、例えばニトリル基(−C≡N)、アセチレン基を含まない脂肪族炭化水素基のうちの炭素−炭素二重結合を持つ非環式または環式のオレフィン基(例えばアルケン、アルカジエン、アルカトリエン、ジエン、ヘテロジエン、ポリエン、アルケニル、シクロアルケンなどの構造単位)や芳香族炭化水素基のことをいうが、これらに限定されるものではない。
また、ここでの「ラダー構造が形成される」とは、構造単位(A)のアセチレン基と構造単位(B)の炭素不飽和結合を有する官能基との間で、局所的な共役構造をもつ縮合系六員環構造(初期耐炎化構造)が形成された後に、水素脱離や側鎖脱離が起こり、より大きな共役構造をもつ縮合系芳香族環構造(耐炎化構造)が形成される反応のことをいう。
エチレン性不飽和化合物とは、具体的にはアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の酸類及びそれらの塩類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;アリルスルホン酸等の酸類及びそれらの塩類;4−ビニルベンゼンスルホン酸等の酸類及びそれらの塩類;(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類などが挙げられる。
これらエチレン性不飽和化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、「(メタ)アクリル」とは、メタクリルとアクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート」とはメタクリレートとアクリレートの総称である。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、側鎖中に分岐が少ないことによる製糸時の延伸性向上などの観点から、ポリビニルアセチレン系重合体の構成成分として好適である。
アリルスルホン酸等の酸類及びそれらの塩類、4−ビニルベンゼンスルホン酸等の酸類及びそれらの塩類は、十分な親水性を有している。そのため、湿式紡糸法や乾湿式紡糸法でポリビニルアセチレン系重合体を紡糸する工程において、凝固時の繊維内部への水の拡散速度が緩やかに進行し、緻密な又は均質な前駆体繊維が得られる点で好適である。
(メタ)アクリル酸、イタコン酸は、側鎖のカルボキシ基が耐炎化反応を促進するため、耐炎化工程および炭素化工程の生産性と、炭素化収率を向上できる点で好適である。
本発明の炭素繊維前駆体繊維を構成するポリビニルアセチレン系重合体は、構造単位(A)、構造単位(B)以外の他の構造単位を含んでいてもよい。
他の構造単位の由来となるモノマーとしては、例えば上述したビニルアセチレン化合物(a)とエチレン性不飽和化合物と共重合可能なビニル系モノマーが好ましい。具体的には、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;マレイン酸イミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
これらビニル系モノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリビニルアセチレン系重合体は、構造単位(A)のみから構成される単独重合体であってもよいし、構造単位(A)と構造単位(B)と必要に応じて他の構造単位とで構成される共重合体であってもよい。
ポリビニルアセチレン系重合体が共重合体である場合、該ポリビニルアセチレン系重合体を構成する全単位(100モル%)のうち、構造単位(A)を1.0〜99.0モル%、構造単位(B)を1.0〜99.0モル%含むことが好ましい。
一方、構造単位(B)の含有率の上限は99.0モル%以下である。99.0モル%以下であれば、構造単位(A)の割合を十分に確保できるため、耐炎化反応を促進する効果が得られやすくなる。構造単位(B)の含有率は、90モル%以下が好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。
ポリビニルアセチレン系重合体は、例えば上述したビニルアセチレン化合物(a)と、必要に応じてエチレン性不飽和化合物と、ビニル系モノマーとをビニル重合することで得られる。ビニル重合は、操作が容易である点から好適である。
ビニル重合の方法は特に限定されず、ラジカル重合やアニオン重合など公知の方法の何れをも採用することができるが、ラジカル重合の方が、重合操作が容易であるために好ましい。
ラジカル重合に用いる重合開始剤や触媒としては特に限定されず、例えばアゾ系化合物、有機過酸化物、または過硫酸/亜硫酸、塩素酸/亜硫酸あるいはそれらのアンモニウム塩等のレドックス触媒などが挙げられる。
アニオン重合でポリビニルアセチレン系重合体中に構造単位(B)を導入する場合は、構造単位(A)と構造単位(B)の共重合性を考慮して、重合開始剤や触媒を選定する必要がある。
ポリビニルアセチレン系重合体の粘度数(ηsp/C)は、紡糸延伸性を容易に確保できる点で、0.5〜5.0dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは1.0〜3.0dl/gである。ηsp/Cが0.5dl/g以上であれば、安定に紡糸を続けるための適度な曳糸性を容易に確保することができ、凝固浴での引き取りが困難になることを容易に防ぐことができる。一方、ηsp/Cが5.0dl/g以下であれば、紡糸原液の粘度を紡糸最適範囲に保つために、紡糸原液中の共重合体濃度を高く保持することができる。その結果、炭素繊維性能(CF性能)の保持に必要な緻密性が容易に保持できると共に、紡糸工程の生産性が低下することを容易に防ぐことができる。
一般にポリビニル系重合体を繊維に賦型する際に用いる紡糸原液は、安定に紡糸を続けるために最適な曳糸性を有することが求められる。曳糸性は、用いる重合体の分子量と、紡糸原液の重合体濃度に関連があり、一般に重合体の分子量が低くなると紡糸原液中の重合体濃度を高くすることが求められる。
ポリビニルアセチレン系重合体の質量平均分子量が5万以上であれば、十分に高い重合体濃度まで曳糸性を維持することが可能となる。一方、質量平均分子量が70万以下であれば、十分に共重合体濃度を下げる必要なく、曳糸性を維持することできる。紡糸原液の重合体濃度を維持できれば、CF性能の保持に必要な緻密性を保持でき、紡糸工程の生産性を保持できる。
なお、ポリビニルアセチレン系重合体の質量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定し、ポリスチレン換算分子量から得られた値である。
調製工程は、上述したポリビニルアセチレン系重合体を非プロトン性極性溶媒に溶解して重合体溶液を調製する工程である。すなわち、本発明に用いる紡糸原液は、ポリビニルアセチレン系重合体と溶剤とを含む重合体溶液である。
また、上述した構造単位(A)のアセチレン基の特長を効率よく発現するには、構造単位(A)が、上記一般式(3)で表される構造単位であることが好ましい。
上述した非プロトン性極性溶媒は、ポリビニルアセチレン系重合体の溶解性に優れる。その中でも特に、凝固糸および湿熱延伸糸の緻密性が高いという点で、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドが好ましい。
紡糸原液中のポリビニルアセチレン系重合体の濃度は、3〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%であり、さらに好ましくは15〜20質量%である。ポリビニルアセチレン系重合体の濃度が3質量%以上であれば、紡糸原液が十分な曳糸性を有するため安定して紡糸を行なうことができ、その結果、緻密で均質な凝固糸を得ることができる。一方、ポリビニルアセチレン系重合体の濃度が40質量%以下であれば、ポリビニルアセチレン系重合体を溶媒に短時間で均一に溶解することができ、また紡糸原液を長時間放置しても急激な粘度上昇が起きにくい。
一価のアルカリ金属塩の添加量は、ポリビニルアセチレン系重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましく、1〜3質量部がさらに好ましい。一価のアルカリ金属塩の添加量が0.1質量部以上であれば重合体溶液の粘度を適度に下げることができ、10質量部以下であれば炭素繊維の物性が影響されにくい。
紡糸工程は、調製工程で調製した重合体溶液から、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により前駆体繊維を得る工程である。
本発明者は、上述したポリビニルアセチレン系重合体の繊維化の検討を行う中で、同重合体が非プロトン性極性溶媒(良溶媒)に溶解することに着目した。そして、重合体溶液を紡糸原液として、ある特定の溶媒(貧溶媒)に吐出すると凝固作用により繊維状物を形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
ここで、「湿式紡糸法」とは、所定の孔径を有する口金から紡糸原液を凝固浴溶液に吐出して凝固糸(前駆体繊維)を得る方法のことである。一方、「乾湿式紡糸法」とは、所定の孔径を有する口金から紡糸原液を一旦空気中に吐出した後、凝固浴溶液中に導入して凝固糸を得る方法のことである。
本発明に用いる凝固浴溶液としては、水(水道水、純水、イオン交換水など)が好ましい。
そこで、凝固糸の繊維1mm当たりのマクロボイドの数が1個未満となるように、紡糸するのが好ましい。繊維1mm当たりのマクロボイドの数が1個未満であれば、緻密で均質な前駆体繊維が得られやすくなる。
ここで、「マクロボイド」とは、最大径が0.1〜数μmの大きさを有する球形、紡錘形、円筒形などの形状の空隙を総称したものである。
二価のアルカリ金属塩の添加量は、凝固浴溶液100質量%中、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、10〜15質量%がさらに好ましい。二価のアルカリ金属塩の添加量が1質量%以上であれば凝固性の向上に十分な効果が得られ、30質量%以下であれば炭素繊維の物性が影響されにくい。
凝固浴溶液100質量%中の非プロトン性極性溶媒の濃度は5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましく、15〜20質量%がさらに好ましい。非プロトン性極性溶媒の濃度が5質量%以上であれば、凝固速度が上昇することを容易に防ぎ、凝固糸が急激に収縮したり、糸緻密性が低下したりすることを容易に防ぐことができる。一方、非プロトン性極性溶媒の濃度が40質量%以下であれば、凝固速度が低下することを容易に防ぎ、得られる前駆体繊維の単糸間の接着を抑制できる。
このようにして得られる炭素繊維前駆体繊維は、上記一般式(1)で表される構造単位(A)を少なくとも含むポリビニルアセチレン系重合体からなる。炭素繊維前駆体繊維は、構造単位(A)および上記一般式(2)で表される構造単位(B)を含むポリビニルアセチレン系重合体からなることが好ましく、特に、構造単位(A)を1.0〜99.0モル%、および構造単位(B)を1.0〜99.0モル%含むポリビニルアセチレン系重合体からなることが好ましい。また、構造単位(A)のアセチレン基の特長を効率よく発現するには、構造単位(A)が、上記一般式(3)で表される構造単位であることが好ましい。
以上説明した本発明の炭素繊維前駆体繊維は、上述した特定のポリビニルアセチレン系重合体からなるものであり、耐炎化反応時の発熱量が少なく、耐炎化反応開始温度が低く、かつ炭素化収率が高い。
また、本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法によれば、ポリビニルアセチレン系重合体を非プロトン性極性溶媒に溶解させ、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により紡糸するので、耐炎化反応時の発熱量が少なく、耐炎化反応開始温度が低く、かつ炭素化収率が高い炭素繊維前駆体繊維を連続的に安定して製造できる。
従って、本発明の炭素繊維前駆体繊維を用いれば、低温かつ少ない熱供給量で、安定して耐炎化繊維を製造でき、しかも、炭素化工程においても炭素化収率が高い。よって、炭素繊維を製造する際のコストを削減できる。
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維の製造方法は、上述した炭素繊維前駆体繊維を酸化性雰囲気下、200〜400℃で耐炎化処理する耐炎化工程を含む。なお、炭素繊維前駆体繊維を製造する工程(前駆体製造工程)は、上述した本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法と同じであるため、説明を省略する。
ここで、「酸化性雰囲気」とは、空気、酸素、二酸化窒素などの公知の酸化性物質を含む雰囲気のことである。中でも、経済性の面から空気雰囲気が好ましい。
ここで、「不活性雰囲気」とは、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの公知の不活性物質を含む雰囲気のことである。中でも、経済性の面から窒素雰囲気が好ましい。窒素純度としては、99%以上が好ましい。
以上説明したように、本発明の炭素繊維の製造方法によれば、上述した本発明の炭素繊維前駆体繊維を用いるので、低コストで炭素繊維を製造できる。
本発明により得られる炭素繊維は、防炎材料、断熱材料等に好適である。また該浄水、空気浄化、ガス吸着、水処理、脱色、タバコフィルター、クリーンルーム用フィルター等の用途や、二次電池用、電解コンデンサー用、電気二重層キャパシタ用等の電極材料にも有用である。
本実施例における各測定・評価方法は以下の通りである。
<重合体の組成測定>
1H−NMR測定装置(日本電子株式会社製、「JEOL Lambda 500型」)を用いて、重合体の組成を以下の手順で実施した。
濃度が約5質量%になるように、重合体をジメチルスルホキシド−d6溶媒に溶解させ、積算回数64回、測定温度80℃の条件で測定を行った。ケミカルシフトの積分比から各単量体単位(構造単位)の比率(モル%)を求めた。
オストワルド粘度計を用いて、重合体の粘度数(ηsp/C:Viscosity Number)の測定を以下の手順で実施した。
重合体0.5gを100mLのジメチルスルホキシド中に分散させ、60℃で40分間撹拌溶解して重合体溶液を得た。この重合体溶液の粘度ηと溶媒(ジメチルスルホキシド)の粘度η0を、オストワルド粘度計を用いて温度30℃で測定し、下記式(I)より粘度数(ηsp/C)を求めた。
粘度数(dl/g)=((η−η0)/η0)/0.5 ・・・(I)
示差走査型熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、「DSC220」)を用いて、DSC測定を以下の手順で実施した。
炭素繊維前駆体繊維2mg±0.5mgをサンプル容器に入れ、30℃で30分間保持した。次いで、30℃から400℃まで昇温速度10℃/分で昇温した。DSC測定においては、若干の誘導期間の後、発熱が始まり、発熱量がピークに達した後発熱量が減衰してゆく。発熱ピークが頂点に達した時の温度を最大発熱温度とした。発熱ピークの頂点の発熱量を測定に用いた炭素繊維前駆体繊維の質量重さで割った値を最大発熱量とした。
炭素繊維前駆体繊維の質量、および炭素繊維前駆体繊維から得られた炭素繊維の質量を測定し、下記式(II)より炭素化収率を求めた。
炭素化収率(%)=(炭素繊維の質量/炭素繊維前駆体繊維の質量)×100 ・・・(II)
重合体を所定の溶媒に、濃度が10質量%となるように溶解して重合体溶液を調製した。得られた重合体溶液を30℃に温度調節し、30℃に温調した凝固浴溶液中に、0.1mmの孔径を有する口金から1.0m/分の速度で吐出した。これにより賦形された凝固糸を駆動ローラーにて1.5m/分の速度で30分間巻き取った。この時間中に凝固浴溶液中で糸切れした回数を数え、以下の評価基準より紡糸性を評価した。
◎:糸切れ回数が5回以下である。
○:糸切れ回数が6回以上10回以下である。
△:糸切れ回数が11回以上であるが、凝固糸を巻き取ることはできた。
×:凝固糸を巻き取ること困難である。
ビニルアセチレン化合物(a)として4−トリメチルシリル−1−ブテン−3イン(別名:トリメチルシリルビニルアセチレン:TMSVA)を用いて重合を行い、まずポリトリメチルシリルビニルアセチレン重合体(pTMSVA)を得た後、トリメチルシリル基を除去して、ポリビニルアセチレン系重合体(pVA)を得た。
得られた重合体を溶媒に溶解して重合体溶液を調製した後、湿式紡糸法により炭素繊維前駆体繊維を得た。
次いで、この炭素繊維前駆体繊維に耐炎化処理と炭素化処理を施して炭素繊維を得た。
以下、各工程について詳細に説明する。
窒素置換した容量300mLの丸底フラスコに、純水とラウリル硫酸ナトリウムと過硫酸カリウム(KPS)を入れて溶解した。引き続き、TMSVAを67g仕込んで乳化させ、窒素流下でマグネチックスターラーにて撹拌しながら50℃で12時間から16時間以上反応させた。TMSVAに対するKPSの濃度は0.5mol%とした。
重合終了後、乳化反応液をメタノール中に投入して、沈殿物(トリメチルシリルビニルアセチレンの重合体)を得た。この重合体を濾過して取り出した後、固形分濃度が10質量%になるようにトルエンに溶解した。この重合体のトルエン溶液を、再度メタノール中に投入して、沈殿物(重合体)を得た。この操作を3回繰り返して得られた重合体を30℃で24時間減圧乾燥させ、pTMSVAを47.6g得た。収率(重合率)は71%であった。
得られたpTMSVAは、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルムに可溶性であった。
冷却管を取り付けた容量1000mLの丸底フラスコに、10gのpTMSVAと200mLのTHFを加え溶解した。そこに、予めメタノール66.7mLと純粋33.3mLの混合溶液に水酸化カリウム66.7gを溶解させて調製した水酸化カリウム溶液を添加して、窒素流下、マグネッチクスターラーで撹拌しながら、60℃に加熱して12時間から16時間反応させた。
反応終了後、エバポレーターを用いて30℃(−0.09MPa)で溶媒を留去した後、析出した沈殿物を濾過して取り出した。得られた沈殿物をアセトンに適当な濃度になるように溶解した後、水/メタノール混合溶液(質量比:4/1)に滴下して沈殿物を得た。得られた沈殿物を水/メタノール混合溶液(質量比:4/1)で数回洗浄して、最後に30℃で24時間減圧乾燥させ、ポリビニルアセチレン系重合体(pVA)を5.1g得た。
得られたpVAは、ビニルアセチレン単位(上記一般式(3)で表される構造単位(A)に相当)100モル%からなる単独重合体であり、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドンに可溶性であった。また、得られたpVAについて粘度数(ηsp/C)を測定したところ、2.10dl/gであった。
得られたpVAの重合率、組成、粘度数を表1に示す。
また、得られたpVAについて、上述した最大発熱量および最大発熱温度の測定方法と同様にしてDSC測定を行った。発熱曲線を図1に示す。
先に得られたpVAを濃度10質量%になるようにDMSOに溶解し、重合体溶液を調製した。この重合体溶液を紡糸溶液として用い、純水を凝固浴として用い、上述した紡糸性の評価方法に従い凝固糸を得た。なお、30分間の糸切れ回数は20回以上であったが、凝固糸を巻き取ることはできた。
得られた凝固糸を回収した後に水洗、乾燥して炭素繊維前駆体繊維を得た。
示差走査型熱量測定装置を用いて測定した炭素繊維前駆体繊維の最大発熱量は7.0mW/mg、最大発熱温度は225℃であった。
紡糸性の評価結果と、最大発熱量および最大発熱温度の測定結果を表1に示す。
得られた炭素繊維前駆体繊維を空気中において250℃で60分間加熱し、耐炎化処理した。次いで、窒素雰囲気に切り替え、昇温速度10℃/分で1400℃まで昇温加熱して炭素化処理した後、室温まで冷却して炭素繊維を得た。
炭素化収率を測定したところ、60%であった。結果を表1に示す。
トリメチルシリルビニルアセチレンの重合における仕込み組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を製造した。
得られた炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維等について、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1に示す仕込み組成について、例えば実施例2の場合、「TMSVA:AN=80:20」とは、TMSVAとアクリロニトリル(AN)との比率(モル%)がTMSVA:AN=80:20となるように、TMSVAとANの混合物を67g仕込んだことを意味する。
また、表1に示す重合体の組成について、例えば実施例2の場合、「VA単位/AN単位=90/10」とは、ビニルアセチレン単位(上記一般式(3)で表される構造単位(A)に相当)を90モル%と、アクリロニトリル単位(構造単位(B)に相当)を10モル%とからなる共重合体を意味する。
表1〜4中の他の実施例についても同様である。
pVAの代わりに、アクリロニトリルを単独で重合して得られたポリアクリロニトリル重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を製造した。
得られた炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維等について、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
また、ポリアクリロニトリル単独重合体について、上述した最大発熱量および最大発熱温度の測定方法と同様にしてDSC測定を行った。発熱曲線を図1に示す。
底部に直径0.5mmの穴を1つ空けた内径10mmの真鍮製ノズル付の筒に、実施例1で得られたpVA(VA単位=100モル%)5gを充填した。容器上部から窒素を流しながら、ノズルの内温を150℃まで加熱した後、30分間保持してpVAを溶融した。その後、筒の上部からピストンでpVAを押し出して溶融紡糸を試みた。
しかし、pVAがゲル化していたため、ノズル孔から安定に吐出できず、炭素繊維前駆体繊維は得られなかった。筒内部から取り出したpVAは、DMSOに不溶であった。これは、pVAがゲル化したためと考えられる。
実施例4で得られたpVA(VA単位/AN単位=35/65)を用いた以外は、比較例2と同様にして溶融紡糸を試みた。
しかし、pVAがゲル化していたため、ノズル孔から安定に吐出できず、炭素繊維前駆体繊維は得られなかった。筒内部から取り出したpVAは、DMSOに不溶であった。これは、pVAがゲル化したためと考えられる。
実施例1で得られたpVA(VA単位=100モル%)を用い、重合体溶液に用いた溶媒の種類と、凝固浴溶液の組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を製造し、紡糸性を評価し、炭素化収率を測定した。結果を表2に示す。また、実施例1の結果も表2に示す。
なお、表2に示す重合体溶液の溶媒について、例えば実施例10、12の場合、「DMSO+LiCl(1.0部)」とは、重合体溶液中の重合体100質量部に対して1.0質量部に相当する塩化リチウム(LiCl)がDMSOに含まれていることを意味する。
また、表2に示す凝固浴溶液について、例えば実施例11、12の場合、「H2O+CaCl2(20%)」とは、純水100質量%中、20質量%の塩化カルシウム(CaCl2)を含有することを意味する。
表2、3中の他の実施例についても同様である。
実施例3で得られたpVA(VA単位/AN単位=45/55)を用い、重合体溶液に用いた溶媒の種類と、凝固浴溶液の組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を製造し、紡糸性を評価し、炭素化収率を測定した。結果を表2に示す。また、実施例3の結果も表2に示す。
実施例7で得られたpVA(VA単位/SAS単位=94/6)を用い、重合体溶液に用いた溶媒の種類と、凝固浴溶液の組成を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を製造し、紡糸性を評価した。また、実施例24、30、31については、炭素化収率を測定した。これらの結果を表3に示す。また、実施例7の結果も表3に示す。
実施例7で得られたpVA(VA単位/SAS単位=94/6)を用い、耐炎化処理温度を表4に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を製造し、炭素化収率を測定した。結果を表4に示す。また、実施例7の結果も表4に示す。
なお、実施例32は耐炎化処理を行わなかった。
実施例4で得られたpVA(VA単位/AN単位=35/65)を用い、耐炎化処理の温度を表4に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を製造し、炭素化収率を測定した。結果を表4に示す。また、実施例4の結果も表4に示す。
なお、実施例38は耐炎化処理を行わなかった。
TMSVAの代わりに、2−クロロ−4−トリメチルシリル−1−ブテン−3イン(別名:α−クロロ−トリメチルシリルビニルアセチレン:Cl−TMSVA)を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を製造した。
得られた炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維等について、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
・TMSVA:4−トリメチルシリル−1−ブテン−3イン(別名:トリメチルシリルビニルアセチレン)
・VA:1−ブテン−3イン(ビニルアセチレン)
・AN:アクリロニトリル
・MAA:メタクリル酸
・VAc:酢酸ビニル
・SAS:アリルスルホン酸ナトリウム
・HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
・ITA:イタコン酸
・Cl−TMSVA:2−クロロ−4−トリメチルシリル−1−ブテン−3イン(別名:α−クロロ−トリメチルシリルビニルアセチレン)
・Cl−VA:2−クロロ−1−ブテン−3イン(2−クロロ−ビニルアセチレン)
・DMSO:ジメチルスルホキシド
・LiCl:塩化リチウム
・CaCl2:塩化カルシウム
・NMP:N−メチルピロリドン
・DMF:ジメチルホルムアミド
・DMAc:ジメチルアセトアミド
特に、ビニル基のα位を塩素化したポリビニルアセチレンの単独重合体から得られた炭素繊維前駆体繊維(実施例44)は、実施例1の炭素繊維前駆体繊維と比較して炭素化収率が高かった。また、耐炎化反応時のさらなる最大発熱量の減少と、最大発熱温度のさらなる低下が見られた。
表4から明らかなように、耐炎化処理の温度範囲には、最適な範囲があることが明らかになった。
Claims (4)
- 下記一般式(1)で表される構造単位(A)を含むポリビニルアセチレン系重合体を非プロトン性極性溶媒に溶解して重合体溶液を調製する調製工程と、該重合体溶液から湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により前駆体繊維を得る紡糸工程とを含み、
湿式紡糸法および乾湿式紡糸法で用いる凝固浴溶液が、該凝固浴溶液100質量%中、二価のアルカリ金属塩を1〜30質量%含有する、炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 前記非プロトン性極性溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、スルホランからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法により製造した炭素繊維前駆体繊維を酸化性雰囲気下、200〜400℃で耐炎化処理する耐炎化工程を含む、炭素繊維の製造方法。
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