JP2012201788A - ポリアクリロニトリル系重合体修飾カーボンナノチューブおよびその製造方法、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体、ポリアクリロニトリル系繊維束、炭素繊維の製造方法 - Google Patents

ポリアクリロニトリル系重合体修飾カーボンナノチューブおよびその製造方法、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体、ポリアクリロニトリル系繊維束、炭素繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリアクリロニトリルへの分散性に優れた、ポリアクリロニトリル系重合体をグラフト化したカーボンナノチューブを提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブにポリアクリロニトリル系重合体(A)がグラフト重合されたポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブであって、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ中のポリアクリロニトリル系重合体成分の比率が25〜99質量%であり、かつポリアクリロニトリル系重合体部分の数平均分子量が0.3万〜10万g/molであることを特徴とする、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアクリロニトリル系重合体がグラフト重合されたカーボンナノチューブ(以下、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブと称する。)に関する。さらに詳しくは、本発明は、ポリアクリロニトリル系繊維束および炭素繊維の製造に好適な原料として用いられるポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブに関する。
カーボンナノチューブは機械強度、熱伝導性、電気伝導性、化学的安定性などの物理特性に優れるため、実用化を意図した応用研究が近年ますます盛んになっている。カーボンナノチューブと総称されるものには、グラファイト面を筒状に一枚巻いた単層カーボンナノチューブ、複数枚巻いた多層カーボンナノチューブ、その中でも特に積層枚数が二枚である二層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、底の空いたカップが積層した構造をとるカップスタック型カーボンナノチューブなどが知られている。
個々のカーボンナノチューブは非常に小さく、ポリマーや無機のマトリックス中に分散させて、マトリックスの特性向上を図るために用いられることが多い。例えば電子放出電極や燃料電池用電極、あるいは導電性コンポジット(特許文献1)などでは、多数のカーボンナノチューブをマトリックス中に分散して使用する。この様な態様においては、カーボンナノチューブがマトリックスとなる材質中に均一かつバンドルを組むことなく単分散している方が、カーボンナノチューブ添加効果を十分に引き出すことができる。
炭素繊維は、その優れた力学特性および電気特性から、さまざまな用途に利用されている。近年では、従来のゴルフクラブや釣竿などのスポーツ用途や航空機用途に加え、自動車部材、圧縮天然ガス(CNG)用タンク、建造物の耐震補強部材および船舶部材などいわゆる一般産業用途への展開が進みつつある。それに伴い、さらなる高性能化の要請が高い。
近年、炭素繊維の性能を向上させるために炭素繊維の前駆体であるポリアクリロニトリル繊維にカーボンナノチューブをフィラーとして混合させる技術が開示されている(特許文献2、非特許文献1,2)。
しかし、一般にカーボンナノチューブは比表面積が大きいため容易に凝集してバンドルを形成しやすく、均一に単分散させることが難しい。したがって、通常入手できるカーボンナノチューブを単にポリマー溶液と混ぜ合わせるだけではカーボンナノチューブの分散が不完全となることが多い。そのため、ポリマー溶液とカーボンナノチューブを混合後、超音波照射によるカーボンナノチューブ分散手法が採られることも多いが、仮に一旦単分散したとしても比較的短時間で容易に再凝集することも多い。カーボンナノチューブの分散しにくさと分散液の安定性の悪さから、コンポジットにした時点ではカーボンナノチューブの分散が不完全となることが多い。
このため、カーボンナノチューブの凝集を解く方法として、界面活性剤、共役系高分子、糖類などを分散剤として使用した溶液中で超音波照射する方法、有機溶媒中でカーボンナノチューブをミリングする方法、カーボンナノチューブ表面の改質、化学修飾などによって分散性を向上する方法などが検討されている(非特許文献3)。しかし、分散剤を使用する方法は分散剤が最終的に不純物となる場合が多く、ミリングによる分散性向上方法はカーボンナノチューブの特徴である高アスペクト比を低下させ、カーボンナノチューブ表面の改質、化学修飾などによる分散性向上方法はカーボンナノチューブを構成するπ共役系が破壊されるためカーボンナノチューブの特性が損なわれるという問題点がある。
また、例えば非特許文献4において、単層、二層、多層カーボンナノチューブのジメチルアセトアミド中での分散性の比較と樹脂への添加効果が比較されており、二層カーボンナノチューブが単層、多層カーボンナノチューブに比べて分散させるのが困難であったことを述べられているが、分散性や添加効果に影響を与える、直径、グラファイト化度、純度等が統一されていない状態での比較にとどまっている。
カーボンナノチューブの分散性を高める方法として、カーボンナノチューブ表面へのポリマーのグラフト化が近年報告されている(非特許文献5)。カーボンナノチューブ表面の置換基とポリマー上の置換基とを反応させる方法、カーボンナノチューブ表面の重合開始剤部位からポリマーを形成する方法、カーボンナノチューブ表面にポリマーラジカルをラジカル付加させる方法などが知られている。一方、ポリアクリロニトリル系重合体は通常置換基同士のカップリングなどの極性反応を実施する多くの非極性溶媒には不溶であるため、分子修飾が難しく、ポリアクリロニトリル系重合体を簡便にグラフト化することのできる方法は未だ報告されていない。
上記した3つ目の方法は、特別な置換基を必要とせず、ポリアクリロニトリル系重合体以外のいくつかのポリマーで報告されている。たとえば、非特許文献6では末端にTEMPOを有するポリスチレンと多層カーボンナノチューブとをトルエン中で加熱して、ポリスチレンのグラフト化に成功している。また、非特許文献7では原子移動ラジカル重合法で合成した末端が臭素化されたポリスチレンと多層カーボンナノチューブとを銅錯体存在下で加熱して、ポリスチレンのグラフト化を行っている。しかしながら、分散性の評価は広く行っておらず、また分散性に対するグラフト構造の寄与についても明確ではない。
以上みてきたように、ポリアクリロニトリル系重合体中にカーボンナノチューブを均一に分散させる普遍的な方法が求められている。
特開2007−154007号公報 特開2006−200114号公報
ミン(Min),「カーボン(Carbon)」,第43巻,2005年,P.599 チェ(Chae),「ポリマー(Polymer)」,第48巻,2007年,P.3781 中嶋,高分子論文集,第64巻,第9号,2007年,P.539 クマール(Kumar),「ポリマー(Polymer)」,第46巻,2005年,P.10925 リュウ(Liu),「ヨーロピアン・ポリマー・ジャーナル(European Polymer Journal)」,第41巻,2005年,P.2693 ジェロム(Jerome),「ポリマー(Polymer)」,第45巻,2004年,P.6097 ウー(Wu),「カーボン(Carbon)」,第45巻,2007年,P.152
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、ポリアクリロニトリル系重合体への分散性に優れた、カーボンナノチューブを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、カーボンナノチューブにポリアクリロニトリル系重合体(A)がグラフト重合されたポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブであって、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ中のポリアクリロニトリル系重合体成分の比率が25〜99質量%であり、かつポリアクリロニトリル系重合体部分の数平均分子量が0.3万〜10万g/molであることを特徴とするポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブが、ポリアクリロニトリル系重合体(B)への分散性が良好であることを見出し、本発明に至った。
本発明により、カーボンナノチューブの特性を損なうことなく、ポリアクリロニトリル系重合体へのカーボンナノチューブの分散性を高められる。また、本発明に係るポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブが、ポリアクリロニトリル系重合体中に分散された分散液を用いることによって、カーボンナノチューブが均一に分散したポリアクリロニトリル系繊維束を得ることができる。
1.カーボンナノチューブについて
本発明においてカーボンナノチューブとは、主として炭素原子で構成され、直径がサブナノ〜サブミクロンの大きさのチューブ状である一連の無機物質のことを指し、グラフェンのシートを筒状に一枚巻いた単層カーボンナノチューブ(以降、SWNTと呼称することがある)、複数枚巻いた多層カーボンナノチューブ(以降、MWNTと呼称することがある)、その中でも特に積層枚数が二枚である二層カーボンナノチューブ(以降、DWNTと呼称することがある)、気相成長炭素繊維(以降、VGCFと呼称することがある)、底の空いたカップが積層した構造をとるカップスタック型カーボンナノチューブである。カーボンナノチューブの形態は、たとえば高分解能透過型電子顕微鏡による実空間像の観察により直接調べることができる他、電子線回折などの逆空間観察によってもより平均的な構造を知ることができる。また、構造に関する情報を得る別の方法としてRaman散乱法が用いられることも多く、電子顕微鏡観察と相補的に用いることができる。グラフェンの層は、透過型電子顕微鏡でまっすぐにはっきりと見えるほど好ましいが、グラフェンの層は乱れている部分があっても構わない。
カーボンナノチューブの製造方法としてはアーク放電法、CVD法、DIPS法、HiPco法、スーパーグロースCVD法などを挙げることができる。製造方法により主生成物はある程度制御できることが多いが、複数種類のカーボンナノチューブの混合体として得られる場合も多い。
本発明で用いるカーボンナノチューブは、表面処理を施されたものであることが好ましい。これにより溶媒中での分散性を高めることができ、例えば超音波処理をした際の均一分散性、分散速度が向上する。また、一旦分散したのちに再凝集しにくくなる。表面処理の種類としては、硝酸あるいは過マンガン酸などの酸化剤と反応させ表面を酸化させる方法、フッ素ガスにより表面をフッ素化する方法、あるいは導入された官能基を、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、スルホキシル基等、あるいはそれらから誘導された活性な官能基を有する化合物で処理する方法などが挙げられる。表面処理の程度はカーボンナノチューブの表面分析によって知ることができる。例えば、Raman散乱法により構造の乱れを表すパラメーターであるID/IGを評価することもできるし、表面処理の程度が高すぎる場合、カーボンナノチューブの構造欠陥の数が増大し、物理特性の低下を招いたり形態を保つのが困難になる場合がある。
2.グラフト化させるポリアクリロニトリル系重合体(A)について
本発明でカーボンナノチューブへのグラフト化に用いられるポリアクリロニトリル系重合体(A)の組成としては、アクリロニトリル(以下、ANと記述する。)を90モル%以上含むことが好ましい。ANと共重合可能な単量体を10モル%以下なら共重合させてもよいが、共重合成分が多くなるとマトリックスであるポリアクリロニトリル系重合体(B)との相溶性が低下し、分散性が悪化することがある。ANと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などを用いることができる。アクリロニトリルの比率は90モル%〜99.9モル%であることが好ましく、95モル%〜99.9モル%であることがより好ましい。
本発明においてポリアクリロニトリル系重合体(A)のポリスチレン換算(以降、特に断らない限り分子量はポリスチレン換算分子量のことを指す)の数平均分子量Mnは0.3万〜10万g/molである。Mnが0.3万よりも小さいと、分散性を高めるためにポリアクリロニトリル系重合体(A)を大量にグラフト化する必要があり、カーボンナノチューブの表面の構造欠陥の増大を招く。Mnが10万より大きいと、グラフト化されるポリアクリロニトリル系重合体(A)の数が少なく、グラフト化が不均一となりやすい。ポリアクリロニトリル系重合体(A)のMnは1万〜10万であることが好ましく、1万〜8万であることがより好ましい。
本発明においてポリアクリロニトリル系重合体(A)は、分子鎖末端にラジカル前駆体構造を有することが好ましい。ラジカル前駆体構造としては、ニトロキシド基、チオエステルおよびチオカーボネート類、ハロゲンあるいは擬ハロゲン部位、有機金属部位などから選択できる。有機金属部位の中心金属としては金属−ポリマー末端炭素原子間の結合がラジカル開裂しやすいテルル、鉄、ルテニウム、ロジウム、銅、コバルト、パラジウム、などに代表される遷移金属から選択できる。とりわけ、分子鎖末端への導入のしやすさおよびラジカル開裂の容易性からハロゲンあるいは擬ハロゲン部位を用いることが好ましく、コスト面などからハロゲン部位を用いることがより好ましい。ハロゲン部位としては塩化物、臭化物、ヨウ化物から選択できるが、安定性と反応性との兼ね合いから臭化物とすることが好ましい。また、擬ハロゲン部位としてはチオシアネート、イソチオシアネート、スルホニルクロリドなどを用いることができる。
本発明においてポリアクリロニトリル系重合体(A)の製造方法としては、簡便で制御の容易なフリーラジカル重合法を用いることもできるが、分子内にカーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブの表面に存在する官能基と反応する部位を導入するために多段の操作を必要とするため、必ずしも現実的ではない。一方、近年注目を集めている制御ラジカル重合は少ステップでの置換基の選択的な導入が可能であることから、本発明のポリアクリロニトリル系重合体(A)の製造方法として有用である。制御ラジカル重合法としては公知の手法、例えばニトロキシド媒介ラジカル重合法(NMP)、イニファーター法、可逆的付加脱離連鎖移動重合法(RAFT)、また有機テルル媒介リビングラジカル重合法(TERP)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)を初めとする種々の遷移金属媒介ラジカル重合法などが利用可能である。一般的にリビングラジカル重合法はフリーラジカル重合法と比較して反応速度が遅いため高分子量のポリマーが得にくいことが短所であることは広く認められているが、本発明においてポリアクリロニトリル系重合体(A)は特に高分子量である必要はないため問題なく採用できる。とりわけ高価な触媒を必要とせず、比較的安全であり、反応の選択性が高い原子移動ラジカル重合法を用いることが好ましい。
以下、ポリアクリロニトリル系重合体(A)を原子移動ラジカル重合法により製造する場合について述べる。
本発明において原子移動ラジカル重合法は、反応の均一性の観点から溶液中で実施することが好ましい。反応溶媒は、重合触媒、重合開始剤、アクリロニトリル、共重合成分、生成するポリアクリロニトリル系重合体(A)、その他の反応促進成分を溶解するものであれば公知の溶媒の中から適宜選択でき、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、塩化亜鉛水溶液、ロダン酸ソーダ水溶液、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどを用いることができるが、反応性および反応選択性の観点からジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートを用いることが好ましい。
本発明において原子移動ラジカル重合法の重合触媒は金属錯体と配位子とから成る。金属錯体および配位子は原子移動ラジカル重合法の重合触媒として公知であるものを適宜組合せて用いることができるが、特に中心金属としては銅を用いることが好ましい。銅錯体を用いる場合、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、三価第一銅、過塩素酸第一銅などを用いることが好ましい。また、低酸化状態の遷移金属錯体は容易に酸化されることから取り扱いが困難であるため、反応溶液内で高酸化状態の遷移金属錯体を還元して低酸化状態の遷移金属錯体を生成する各種手法が開発されており、これらの方法を用いることも好ましい。例えば反応溶液内にアスコルビン酸やグルコース、有機スズ化合物などの還元剤を添加してリビングラジカル重合を開始する方法(AGET−ATRP、ARGET−ATRPと呼称される)や、通常のフリーラジカル重合に用いられる重合開始剤を用いてラジカル重合を開始し、生成するラジカル種により遷移金属錯体を還元してリビングラジカル重合を開始させる方法(Reverse−ATRPと呼称される)を初めとした種々の方法が提案されており、好ましく使用することができる。配位子は特に限定されないが含窒素化合物、特にキレート型の含窒素化合物を用いることが好ましい。例えば、2,2’−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(2−(ピリジル)メチル)アミンなどを好ましく用いることができる。
原子移動ラジカル重合法の重合開始剤は公知のものを適宜用いることができるが、例えば1−フェニルエチルクロリド、1−フェニルエチルブロミド、クロロホルム、四塩化炭素、2−ブロモプロピオニトリル、2−クロロプロピオン酸およびその誘導体、2−ブロモプロピオン酸およびその誘導体、2−クロロイソ酪酸およびその誘導体、2−ブロモイソ酪酸およびその誘導体などを好適に用いることができる。とりわけ反応性の観点から、エステル部分がメチルあるいはエチル、または他の低級アルキル誘導体である2−ブロモイソ酪酸エステルまたは2−ブロモプロピオン酸エステルを用いることがより好ましい。
原子移動ラジカル重合法においては酸素雰囲気下で実施できる反応系も見いだされているものの、一般的なフリーラジカル重合法と同様、酸素により重合反応が阻害されることが多い。よって、重合反応を開始する前に反応容器の気相部を不活性気体で置換する、または重合反応を通じて気相部に不活性気体をフローさせておく、などの処置が重合反応を安定に進行させるために有効である。不活性気体で置換する方法としては、減圧−不活性気体導入を数回繰り返す、凍結融解脱気(Freeze−thaw cycle)後に不活性気体を導入する、など公知の方法から選択できる。不活性気体をフローさせる方法としては、気相部に不活性気体を連続的に導入する他、反応溶液中に不活性気体をバブリングする方法も好ましく用いることができる。
原子移動ラジカル重合法によるポリアクリロニトリル系重合体(A)の重合反応は30〜120℃の温度で行うことが好ましく、30〜90℃の温度で行うことがより好ましく、50〜90℃の温度で行うことがさらに好ましい。反応温度が30℃より低い場合、重合反応に非常に時間がかかり、逆に120℃よりも高い場合には、得られるポリアクリロニトリル系重合体(A)が副反応を起こして変色することがある。また、アクリロニトリルの沸点以上で反応を行う場合、加圧系にする必要があることから、90℃以下の温度で重合反応を行うことがより好ましい。反応時間としては0.1時間〜20時間であることが好ましく、0.5時間〜10時間であることがより好ましい。原子移動ラジカル重合法では、重合度は時間に比例して上昇する。したがって得られるポリアクリロニトリル系重合体(A)の分子量は、反応時間を適宜設定することで調節することができる。
3.グラフト化について
カーボンナノチューブへのポリアクリロニトリル系重合体(A)のグラフト化は、カーボンナノチューブあるいはカーボンナノチューブ上の置換基とポリアクリロニトリル系重合体(A)の反応性部位との反応により行う。このような反応として、分子鎖末端にアミノ基あるいはヒドロキシ基を有するようなポリマーの場合、カーボンナノチューブ上のカルボキシ基を予め酸ハロゲン化物あるいは酸無水物に誘導しておいたものとの間でアミド化あるいはエステル化反応により共有結合を生成させる方法が知られている。また別の方法として、分子鎖末端の置換基をアジド化した後にカーボンナノチューブと反応させ、グラフェン網面との間で共有結合を生成させる方法が知られている。ポリマーの反応性部位は必ずしも分子鎖末端である必要はなく、分子内の任意の場所に存在していても構わない。しかしながら、これらの既知の方法では以下に記載するいくつかの理由からポリアクリロニトリル系重合体(A)をカーボンナノチューブにグラフト化させることが難しい。すなわち、ポリアクリロニトリル系重合体(A)は限られた極性溶媒にのみ可溶であるため、アミド化反応やエステル化反応などの極性有機反応を行った場合、副生成物が多くなるばかりでなく、反応が進行しないことがある。また、同様の理由からポリアクリロニトリル系重合体にアジド基に代表されるような反応性の高い置換基を導入することが難しい。したがって、極性反応によるカーボンナノチューブへのポリアクリロニトリル系重合体のグラフト化は困難である。
一方、本発明者らは原子移動ラジカル重合法で合成したポリアクリロニトリル系重合体(A)とカーボンナノチューブとを、原子移動ラジカル重合反応の触媒下で混合加熱することで、カーボンナノチューブにポリアクリロニトリル系重合体(A)がグラフト化され、さらにグラフト条件を特定の範囲とすることで分散性の高いポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブが得られることを見出した。詳細な反応機構は不明であるが、グラファイト構造のラジカルトラップ能力、すなわち連鎖移動効果が高いことから、ポリアクリロニトリル系重合体(A)の末端置換基、より具体的には重合開始剤由来のハロゲン部位が金属触媒下でラジカル開裂して反応性の分子鎖末端ラジカルが生じ、これがカーボンナノチューブのグラファイト構造にトラップされることでグラフト化されたと推定される。
本発明のグラフト化反応は、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、塩化亜鉛水溶液、ロダン酸ソーダ水溶液、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの極性有機溶媒中で行うことができる。取り扱いの簡便性から、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。
グラフト化反応に先駆けて、あるいはグラフト化反応の全体を通じてカーボンナノチューブは反応溶媒中に均一分散された状態で維持される。分散は公知の方法を用いればよいが、とりわけ超音波照射を用いることが好ましい態様である。また、カーボンナノチューブの溶媒中への分散性を向上させる目的で第3成分を添加することもできる。第3成分としては例えば、界面活性剤、共役系高分子、糖類などを用いることができる。また、カーボンナノチューブの分散性は、カーボンナノチューブとポリアクリロニトリル系重合体(A)とを前記溶媒に導入した溶液の粘度とも関係が深く、超音波照射する際の溶液粘度は0.1〜10Pa・sであることが好ましい。そのため、ポリアクリロニトリル系重合体(A)の一部または全量を予め溶媒に溶解しておくことも好ましい。溶液粘度を上記範囲内とするために溶液の温度を20〜120℃の範囲で制御することも好ましく、ポリアクリロニトリル系重合体(A)の副反応による着色を避けるために20〜90℃の範囲とすることがより好ましい。
グラフト化反応に用いる触媒としては、先述した原子移動ラジカル重合法の重合触媒と同様のものを用いることができる。先述したとおり、原子移動ラジカル重合法の重合触媒は金属錯体と配位子とから成る。グラフト化反応の触媒は、ポリアクリロニトリル系重合体(A)を重合する際に用いた重合触媒と同一のものであってもよいし、異なるものを選択してもよい。金属錯体および配位子は原子移動ラジカル重合法の重合触媒として公知であるものを適宜組合せて用いることができるが、特に中心金属としては銅を用いることが好ましい。銅錯体を用いる場合、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、三価第一銅、過塩素酸第一銅などを用いることが好ましい。また、低酸化状態の遷移金属錯体は容易に酸化されることから取り扱いが困難であるため、反応溶液内で高酸化状態の遷移金属錯体を還元して低酸化状態の遷移金属錯体を生成する各種手法が開発されており、これらの方法を用いることも好ましい。例えば反応溶液内にアスコルビン酸やグルコース、有機スズ化合物などの還元剤を添加して低酸化状態の遷移金属錯体を生成したり、通常のフリーラジカル重合に用いられる重合開始剤の分解により生成するラジカル種により遷移金属錯体を還元して低酸化状態の遷移金属錯体を生成させることができる。具体的に、ポリアクリロニトリル系重合体(A)とカーボンナノチューブとが均一分散した溶液を調製し、かかる溶液に高酸化状態の遷移金属塩および配位子を添加し、気相部を不活性気体で置換した後に、還元剤を添加して低酸化状態の遷移金属塩を生成させることによりグラフト化反応を開始させることも好ましい態様である。
配位子は特に限定されないが含窒素化合物、特にキレート型の含窒素化合物を用いることが好ましい。例えば、2,2’−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(2−(ピリジル)メチル)アミンなどを好ましく用いることができる。
反応温度は30〜120℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。30℃より低い場合、グラフト化反応が遅く、120℃よりも高温ではグラフト化するポリアクリロニトリル系重合体(A)が副反応により着色する。反応時間は0.1〜10時間とすることが好ましい。反応率はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等の方法で、未反応のポリアクリロニトリル系重合体(A)の濃度を測定して追跡することができる。所望の反応率が得られるように反応時間を設定すればよい。
グラフト化反応の結果得られるポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ中のポリアクリロニトリル系重合体(A)の比率は25〜99質量%である。25質量%より小さいとカーボンナノチューブの分散性が不十分となり、99質量%よりも大きいとカーボンナノチューブの体積分率が低すぎることによりマトリックスの特性向上は限定的なものとなる。分散性の観点からポリアクリロニトリル系重合体(A)の比率は50〜99質量%であることが好ましい。
4.混合するポリアクリロニトリル系重合体(B)について
本発明においてマトリックスとして用いるポリアクリロニトリル系重合体(B)は、上述のグラフト化させるポリアクリロニトリル系重合体(A)と同じであってもよいし異なっていてもよい。なお、ポリアクリロニトリル系重合体(B)中のアクリロニトリルの割合は90〜100モル%であることが好ましい。アクリロニトリルと共重合可能な単量体を10モル%以下なら共重合させてもよいが、共重合成分の連鎖移動定数がANより小さく、必要とするMwを得にくい場合は、共重合成分の量をなるべく減らすことが好ましい。また、アクリロニトリルの割合は95〜99.9モル%であることが好ましく、97〜99.9モル%であることがさらに好ましい。アクリロニトリルと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などを用いることができる。得られる炭素繊維の引張強度を低下させない観点から、共重合成分の量は耐炎化を促進するために必要な最低限の量に設定する。かかる観点から、共重合成分としては耐炎化促進効果の高いイタコン酸が特に好ましく用いられる。
本発明においてポリアクリロニトリル系重合体(B)の重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法および乳化重合法などから選択することができるが、アクリロニトリルおよび共重合成分を均一に溶解し重合する目的からは、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いて重合する場合、溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、塩化亜鉛水溶液、ロダン酸ソーダ水溶液、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの極性有機溶媒を好適に用いることができる。
重合開始剤としては、油溶性アゾ系化合物、水溶性アゾ系化合物および過酸化物などが好ましく、安全面からの取り扱い性および工業的に効率よく重合を行うという観点から、ラジカル発生温度が30〜150℃の範囲であり、40〜100℃の範囲であることがより好ましい。中でも、分解時に重合を阻害する酸素発生の懸念がないアゾ系化合物が好ましく用いられ、溶液重合で重合する場合には、溶解性の観点から油溶性アゾ化合物が好ましく用いられる。重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(ラジカル発生温度30℃)、2,2’−アゾビス (2,4’−ジメチルバレロニトリル) (ラジカル発生温度51℃)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(ラジカル発生温度65℃)などが挙げられる。複数の重合開始剤と重合温度を組み合わせることで重合開始剤が発生させるラジカル量を調整することもできる。また、過酸化物を用いる場合、還元剤を共存させラジカル発生を促進させてもよい。
重合温度は、重合開始剤の種類と量によっても好ましい範囲は変化するが、30℃以上90℃以下であることが好ましい。重合温度が30℃未満では重合開始剤が発生させるラジカル量が少なくなり、ラジカル発生温度の低い重合開始剤を用いると保管が困難となることが多く、重合温度が90℃を超えるとANの沸点よりも高くなり、生産管理が困難になることが多い。
本発明においてポリアクリロニトリル系重合体(B)は、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが5万〜500万である。Mwが5万より小さい場合、紡糸工程での毛羽や糸切れ回数が増加し、生産性が低下することに加えて、得られる炭素繊維の品位ならびに品質が低下する。Mwが500万より大きい場合、製糸工程でプロセス可能な粘度とするためには紡糸原液の重合体濃度を低下させる必要があり、溶媒の使用量が増加することによる採算性の悪化を招く。乾湿式紡糸、湿式紡糸で用いる紡糸原液粘度とするためにはMwが5万〜100万の範囲が好ましく、10万〜50万の範囲がより好ましい。分子量を狙った値にするためには、ラジカル重合時に系内に発生するラジカル濃度を制御する。具体的には、反応温度が高いほど、重合開始剤濃度が高いほどラジカル濃度は高くなる。また、分子量を調節する目的で連鎖移動剤を添加することも好ましい態様である。連鎖移動剤としてはオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動効果の大きいメルカプタン類を用いることが好ましい。好ましい量は、使用する連鎖移動剤の連鎖移動係数やその他の試薬濃度によるため一概に記述できないが、当業者は適宜設定することができる。
5.ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体の調製方法
紡糸に先駆けて、上記の方法で得られたポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブが均一分散したポリアクリロニトリル系重合体組成物(以降、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体と呼称する。)からなる紡糸原液を調製する。
紡糸原液の調製法としては、(1)ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブとポリアクリロニトリル系重合体(B)とをそれぞれ固体状態で溶媒中に分散、溶解させる方法、あるいは(2)別個に調製した両成分の溶液を混合する方法、さらに(3)ポリアクリロニトリル系重合体(B)の溶液中にポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブを固体状態で添加して分散させる方法など、種々の方法で調製が可能である。また、紡糸原液中の重合体濃度が、15〜25質量%となるように固形成分と溶媒との量比を予め設定してもよい。
方法(1)によると、混合前の溶液粘度が低いためポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブを分散させるのに好適である。すなわち溶媒に添加したポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブとポリアクリロニトリル系重合体とは、それぞれ同時に溶解を開始する。また、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブを均一に分散させる目的から、より希薄な条件で均一溶液を作製したのちに溶媒を揮発除去して、重合体濃度を15〜25質量%の範囲に収まるように調整することも好ましい態様である。
方法(2)では、まずポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブと紡糸に用いる溶媒とを計量し慣用の混合分散機(例えばメカニカルスターラー、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)、超音波照射あるいは両者を組み合わせた方法で分散させる。ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの溶液中での濃度は、0.1〜10質量%とすることが好ましい。0.1質量%よりも低い場合、フィラーの添加効果が低く、10質量%よりも高い場合、均一に分散させることが難しい。ひきつづいて、かかる溶液とポリアクリロニトリル系重合体(B)の溶液とを計量し、再び前記した混合分散機、超音波照射あるいは両者を組み合わせた方法で混合する。混合する際の温度は特に制限しないが、溶媒の凝固点以上の温度で、かつ120℃を超えない範囲で一連の操作を行うことが好ましい。
また方法(3)によると、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブは溶媒に均質に溶解するだけでなく、マトリックスであるポリアクリロニトリル系重合体(B)のニトリル基と相互作用しやすいので、極めて混合しやすく、先述した慣用の混合分散機を用いて混合し、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体を製造する事ができる。なかでも超音波分散によってポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブを分散させるのが、分散性のよいポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体溶液を得られるため好適である。超音波が十分透過してポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブが分散し易いという点で、ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液の濃度は0.1〜10質量%であることが好ましい。
紡糸原液中の重合体濃度は15〜25質量%の範囲とすることが好ましく、17〜23質量%とすることがより好ましく、19〜21質量%とすることが最も好ましい。重合体濃度が15質量%以下であると溶剤使用量が多くなり経済的でないし、凝固浴内での凝固速度を低下させ、内部にボイドが生じて緻密な構造が得られないことがある。一方、重合体濃度が25質量%を超えると粘度が上昇し、紡糸が困難となる傾向を示す。ここで説明される重合体濃度とは、紡糸原液全体の重量に対する、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブとポリアクリロニトリル系重合体(B)との合計重量の割合である。具体的な算出方法は以下の通りである。紡糸原液を計量した後、ポリアクリロニトリルを溶解せずかつ紡糸原液中の溶媒を自由に混和する溶媒に、計量した紡糸原液を脱溶媒させた後、固形物を濾過、絶乾し重量を計量する。重合体濃度は、絶乾した固形物の重量を、脱溶媒する前の紡糸原液の重量で割ることにより算出する。
本発明のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体に含まれるポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの配合量は、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体全体に対して0.01〜25質量%の範囲とすることが好ましい。ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの配合量が少なすぎる場合は、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体を成形した際にカーボンナノチューブ添加効果が現れない。また、カーボンナノチューブが多すぎる場合はカーボンナノチューブが均一に分散せず、成形体を形成した際に成形体の強度・弾性率が低下する。配合量は0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
いずれの方法においても、混合物の濃度が必要とする紡糸原液濃度の範囲に収まるように、溶媒を揮発除去あるいは添加することによって濃度を微調整することができる。また、紡糸原液中の均一分散性を高めるために濾過精度が0.5〜5μmの範囲のフィルターを用いて濾過をすることも好ましい態様である。紡糸原液の濃度を調節するために減圧濃縮を行う場合、濾過は減圧濃縮の前に実施することが濾圧の観点から好ましい。濾過に用いるフィルターとしては、公知のものが用いられる。たとえば金属不織布フィルター、金属微粒子焼結フィルター、金属メッシュフィルター、およびそれらを積層した複合フィルターなどを好ましく用いることができる。
6.ポリアクリロニトリル系繊維束の紡糸について
次に、本発明のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体を紡糸してポリアクリロニトリル系繊維束を得る方法について説明する。
本発明において、45℃における紡糸原液の粘度は、15〜200Pa・sの範囲であることが好ましく、20〜150Pa・sであることがより好ましく、30〜100Pa・sであることが最も好ましい。紡糸原液の粘度が15Pa・s未満では、凝固糸の賦形性が低下するため、口金から出た糸条を引き取る速度、すなわち可紡性が低下する傾向を示す。また、溶液粘度は200Pa・sを超えるとゲル化し易くなり、安定した紡糸が困難になる傾向を示す。紡糸原液の粘度は、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの組成、配合量およびポリアクリロニトリル系重合体の分子量および紡糸原液濃度によって決まるが、各パラメーターをこれまで説明した範囲内とすることで紡糸原液の粘度を目標とする範囲に概ね収めることができる。紡糸原液の粘度が高い場合は、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブにグラフトするポリアクリロニトリル系重合体の分子量を低下させる、グラフト量を低下させる、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの配合量を低下させる、マトリックスであるポリアクリロニトリル系重合体の分子量を低下させる、紡糸原液濃度を低下させる、などの方法により調整することができる。特にマトリックスであるポリアクリロニトリル系重合体の分子量を低下させることが最も簡便で効果が高いため好ましい。
ポリアクリロニトリル系繊維束の製造方法としては湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法が挙げられるが、特に乾湿式紡糸法が好ましい。
乾湿式紡糸は、紡糸工程において用いられる凝固浴には、紡糸原液の溶媒として用いたジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどの溶媒と、いわゆる凝固促進成分を含ませることが好ましい。凝固促進成分としては、ポリアクリロニトリル系重合体を溶解せず、かつ、紡糸原液に用いる溶媒と相溶性があるものを使用することができる。具体的には、凝固促進成分として水を使用することが好ましい。
紡糸原液は、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの分散不良またはその他異物を除くために濾過することが好ましい。フィルターの公称濾過精度は0.5〜30μmが好ましく、0.5〜15μmがより好ましい。フィルターとしては、金属繊維不織布または金属繊維金網をそれぞれ単独で、または組み合わせて形成したものを用いることが好ましい。目開きの異なる複数のフィルターを組み合わせて用いることも好ましい態様である。
乾湿式紡糸では紡糸原液をノズル孔より一旦空気中に吐出しその後直ちに凝固浴にて凝固糸とする。凝固浴は、上記のように細径化した凝固糸を引き取るに十分余裕がある条件に設定することが好ましく、これらの要件を満たすよう凝固浴濃度、温度を設定することが好ましい。凝固浴には、紡糸原液に用いられる溶剤を含む水溶液が好適に使用され、含まれる溶剤の濃度を適宜調節する。また、凝固浴の温度は、凝固糸の緻密性の観点からは温度が低い方が好ましいが、温度を下げすぎると凝固糸の引き取り速度が低下し生産性が低下する点を考慮し、30℃以下が好ましく、さらに好ましくは0〜20℃である。
前記の通り、得られた凝固糸を沸水中で凝固糸に含まれている溶媒を洗浄しながら延伸する湿熱延伸を行う。湿熱延伸における延伸浴温度は、単糸同士が融着しない範囲でできるだけ高温にすることが効果的である。この観点から、延伸浴の温度は70℃以上の高温とすることが好ましい。湿熱延伸方法として、2段以上の多段延伸方法を用いることも可能である。多段延伸法で行う場合は、最終浴を90℃以上の高温にすることが好ましい。
浴中延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する目的から、繊維束にシリコーン等からなる油剤を付与することが好ましい。かかるシリコーン油剤は、変性されたシリコーンを用いることが好ましい。シリコーン油剤として、耐熱性の高いアミノ変性シリコーンを含有する油剤を用いることが好ましい。
乾燥熱処理の温度は、120〜200℃であることが好ましく、130〜198℃であることがより好ましく、140〜195℃であることがさらに好ましい。乾燥熱処理の温度が160℃を下回ると、得られる炭素繊維製造用ポリアクリロニトリル系前駆体繊維の緻密性が不十分となり、本発明の効果が得にくくなる場合がある。また、乾燥熱処理の温度が200℃を超えると、単繊維間の融着が顕著となり、得られる炭素繊維の引張強度が低下する場合がある。
乾燥熱処理は、繊維束を加熱されたローラーに接触させて行っても、加熱された雰囲気中を走行させて行っても良いが、乾燥効率と云う観点からは、加熱されたローラーに接触させ行うのが好ましい。
炭素繊維製造用ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を形成するフィラメントの本数は、好ましくは1,000〜3,000,000、より好ましくは3,000〜3,000,000、さらに好ましくは6,000〜480,000、最も好ましくは12,000〜240,000である。フィラメントの本数は、生産性の向上の目的からは、1,000以上で多い方が好ましいが、3,000,000を超えると炭素繊維製造用ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の内部まで均一に耐炎化処理できないことがある。
7.炭素繊維の製造方法について
本発明のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体を紡糸してなるポリアクリロニトリル系繊維束は、200〜300℃の温度の酸化性雰囲気中において耐炎化した後、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化し、1,000〜3,000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化することにより、炭素繊維とすることができる。
200〜300℃の温度の酸化性雰囲気中において耐炎化する際の延伸比は、0.80〜1.20であることが好ましく、0.85〜1.20であることがより好ましく、0.90〜1.10であることがさらに好ましい。延伸比が0.80を下回ると、得られる耐炎化繊維の配向度が不十分となり、また、得られる炭素繊維のストランド引張弾性率が低下する場合がある。また、延伸比が1.20を超えると、毛羽発生、糸切れ発生により、プロセス性が低下する場合がある。
前記耐炎化の処理時間は、10〜100分の範囲で適宜選択することができるが、続く予備炭化のプロセス性、および、得られる炭素繊維の力学物性向上の目的から、得られる耐炎化繊維の比重が1.3〜1.4の範囲となるように設定することが好ましい。
予備炭化、および、炭化は、不活性雰囲気中で行なわれるが、用いられる不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、および、キセノンなどが用いられる。経済的な観点からは、窒素が好ましく用いられる。
予備炭化工程は炉外温度から予備炭化炉内の最高温度までの温度勾配を有するが、該最高温度は、700〜800℃であることが好ましく、本工程における300℃から500℃までの温度領域では、被熱処理糸条の昇温速度が、500℃/分以下に設定されることが好ましい。
予備炭化を行う際の延伸比は、1.00〜1.30であることが好ましく、1.10〜1.30であることがより好ましく、1.10〜1.20であることがさらに好ましい。延伸比が1.00を下回ると、得られる予備炭化繊維の配向度が不十分となり、炭素繊維のストランド引張弾性率が低下する場合がある。また、延伸比が1.30を超えると、毛羽発生や糸切れ発生により、プロセス性が低下する場合がある。
炭化の温度は、1,000〜3,000℃であることが好ましく、1,200〜1800℃であることがより好ましく、1,300〜1,600℃であることがさらに好ましい。炭化の最高温度が高いほど、ストランド引張弾性率は高まるものの、黒鉛化が進行し、結晶サイズが高まり、その結果、圧縮強度の低下が生じる場合があるので、両者のバランスを勘案して、炭化の温度を設定する。
炭化を行う際の延伸比は、0.96〜1.05であることが好ましく、0.97〜1.05であることがより好ましく、0.98〜1.03であることがさらに好ましい。延伸比が0.96を下回ると、得られる炭素繊維の配向度や緻密性が不十分となり、ストランド引張弾性率が低下する場合がある。また、延伸比が1.05を超えると、毛羽発生や糸切れ発生により、プロセス性が低下する場合がある。
得られた炭素繊維は、その表面を改質するために、電解処理されても良い。電解処理に用いられる電解液としては、硫酸、硝酸および塩酸等の酸性溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸アンモニウムおよび重炭酸アンモニウムのようなアルカリまたはそれらの塩の水溶液を使用することができる。電解処理に要する電気量は、適用する炭素繊維の炭化度に応じて、適宜選択することができる。
かかる電解処理により、得られる複合材料において、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が適正化でき、接着が強すぎることによる複合材料のブリトルな破壊や、繊維方向の引張強度が低下する問題や、繊維方向における引張強度は高いものの、樹脂との接着性に劣り、非繊維方向における強度特性が発現しないと云うような問題が解消され、得られる複合材料において、繊維方向と非繊維方向の両方向にバランスのとれた強度特性が発現されるようになる。
かかる電解処理の後、得られた炭素繊維に集束性を付与するため、サイジング処理をすることができる。サイジング剤としては、複合材料に使用されるマトリックス樹脂の種類に応じて、マトリックス樹脂との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
本発明により得られる炭素繊維は、高い圧縮強度およびストランド引張弾性率を有する。従って、本発明の炭素繊維は、プリプレグを用いたオートクレーブ成形法、織物などのプリフォームを用いたレジントランスファーモールディング成形法、フィラメントワインディング成形法などの種々の成形法に適用可能であり、これらの成形法を用いた、航空機部材、圧力容器部材、自動車部材、釣り竿およびゴルフシャフトなどのスポーツ部材の成形に、好適に用いられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
評価法について説明する。
[ポリマー修飾カーボンナノチューブのポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験]
ポリアクリロニトリル系重合体(B)をジメチルスルホキシドと混合し、メカニカルスターラーを用いて65℃の温度で4時間加熱攪拌することにより均一に溶解し、ポリマー濃度10質量%のポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液を調製した。ポリマー修飾カーボンナノチューブの濃度が0.5質量%となるように、かかる溶液にポリマー修飾カーボンナノチューブを固体状態で添加し、約65℃の温度でメカニカルスターラーにより攪拌しながら、かつ超音波照射しながら約6時間かけて混合、分散させ、ポリマー修飾カーボンナノチューブ複合体溶液を得た。
つぎに、ポリマー修飾カーボンナノチューブ複合体溶液をパスツールピペットで吸い取り、スライドガラス上に1滴、滴下してカバーガラスを被せた後、1000倍〜3000倍の倍率で株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープ(VHX−100N)で観測し、短径が1μm以上の凝集物の個数を数えた。凝集物の個数が100個以下であれば特に良好、300個以下であれば良好、300個よりも多い場合を不良とした。
[ポリマー修飾カーボンナノチューブのポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散速度]
ポリアクリロニトリル系重合体(B)をジメチルスルホキシドと混合し、メカニカルスターラーを用いて65℃の温度で4時間加熱攪拌することにより均一に溶解し、ポリマー濃度10質量%のポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液を調製した。ポリマー修飾カーボンナノチューブの濃度が0.5質量%となるように、かかる溶液にポリマー修飾カーボンナノチューブを固体状態で添加し、約65℃の温度でメカニカルスターラーにより攪拌しながら、ピペットを用いて定期的にサンプリングし、スライドガラス上に1滴、滴下して目視確認し、目視確認可能であるおおよそ100μm以上の大きさの凝集物が見られなくなるまでの時間を評価した。評価基準は、◎が3分未満、○が3分以上10分未満、×が10分以上あるいは最終的に目視確認可能な凝集物がなくならなかった場合とした。
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)]
測定しようとするポリアクリロニトリル系重合体の濃度0.1質量%のジメチルホルムアミド(0.01N−臭化リチウム添加)に溶解した検体溶液を調製する。調製した検体溶液について、GPC装置を用いて、次の条件で測定したGPC曲線から分子量分布曲線を求め、MwおよびMnを算出する。MwおよびMnの値は3回の測定の平均値を用いた。
・装置:(株)島津製作所製CLASS−LC2010
・カラム:極性有機溶媒系GPC用カラム(東ソー(株)製、TSK−GEL−α―M(×2)+TSK−guard Colume α)
・流速:0.5ml/分
・温度:75℃
・試料濾過 :ミリポアコーポレーション製メンブレンフィルター(0.45μ−FHLP FILTER)
・注入量 :200μl
・検出器 :示差屈折率検出器
・標準 :単分散ポリスチレン(分子量184000、427000、791000および1300000、1810000、4210000)
・展開溶媒 :ジメチルホルムアミド/臭化リチウム(和光純薬工業(株)製)。
[45℃における溶液粘度]
45℃の温度における溶液粘度は、B型粘度計により測定することができる。具体的には、ビーカーに入れた測定対象溶液を、45℃の温度に温度調節された温水浴に浸して調温した後、B型粘度計として、例えば、(株)東京計器製B8L型粘度計を用い、ローターNo.4を使用し、測定対象溶液の粘度が0〜100Pa・sの範囲はローター回転数6r.p.m.で測定し、また粘度が100〜1000Pa・sの範囲はローター回転数0.6r.p.m.で測定する。
<参考例1>ポリアクリロニトリル系重合体(A−1)の重合方法
モノマーとしてアクリロニトリルを100質量部(15.9g)、重合触媒前駆体として塩化銅(II)・2水和物を0.1質量部(13mg)、配位子としてトリス[(2−ピリジル)メチル]アミン(TPMA)を0.1質量部(22mg)、重合開始剤として2−ブロモイソ酪酸エチルを0.3質量部(42mg)、溶媒としてエチレンカーボネート(EC)249質量部(39.7g)を100mLの2口ナス型フラスコに秤り取った。−5℃の冷媒を循環させたジムロート冷却管を接続したのちに反応溶液を80℃に昇温し、100mL/分の流量で窒素を溶液中にバブリングしながら30分間攪拌して脱気した。還元剤としてアスコルビン酸0.1質量部(16mg)を添加して原子移動ラジカル重合を開始した。気相部に1mL/分の流量で窒素ガスを通過させながら80℃で9.5時間加熱攪拌した後、溶液を大過剰のエタノール中に投入して粗生成物を凝固させ、かかる粗生成物を70℃の温度で一晩乾燥させポリアクリロニトリル系重合体(A−1)を収率48%で得た。GPC測定の結果、数平均分子量は15万であった。
<参考例2>ポリアクリロニトリル系重合体(A−2)の重合方法
重合時間を6時間にした以外は参考例1と同様にして重合を行い、ポリアクリロニトリル系重合体(A−2)を収率29%で得た。GPC測定の結果、数平均分子量は9万であった。
<参考例3>ポリアクリロニトリル系重合体(A−3)の重合方法
モノマーとしてアクリロニトリルを100質量部(15.9g)、重合触媒前駆体として塩化銅(II)・2水和物を0.3質量部(51mg)、配位子としてトリス[(2−ピリジル)メチル]アミン(TPMA)を0.5質量部(87mg)、重合開始剤として2−ブロモイソ酪酸エチルを1.1質量部(167mg)、溶媒としてエチレンカーボネート(EC)248質量部(39.4g)を100mLの2口ナス型フラスコに秤り取った。−5℃の冷媒を循環させたジムロート冷却管を接続したのちに反応溶液を80℃に昇温し、100mL/分の流量で窒素を溶液中にバブリングしながら30分間攪拌して脱気した。還元剤としてアスコルビン酸0.4質量部(63mg)を添加して原子移動ラジカル重合を開始した。気相部に1mL/分の流量で窒素ガスを通過させながら80℃で10時間加熱攪拌した後、溶液を大過剰のエタノール中に投入して粗生成物を凝固させ、かかる粗生成物を70℃の温度で一晩乾燥させポリアクリロニトリル系重合体(A−3)を収率71%で得た。GPC測定の結果、数平均分子量は6万であった。
<参考例4>ポリアクリロニトリル系重合体(A−4)の重合方法
重合時間を1.5時間にした以外は参考例1と同様にして重合を行い、ポリアクリロニトリル系重合体(A−4)を収率11%で得た。GPC測定の結果、数平均分子量は2.5万であった。
<参考例5>ポリアクリロニトリル系重合体(A−5)の重合方法
モノマーとしてアクリロニトリルを100質量部(15.9g)、重合触媒前駆体として塩化銅(II)・2水和物を0.3質量部(51mg)、配位子としてトリス[(2−ピリジル)メチル]アミン(TPMA)を0.5質量部(87mg)、重合開始剤として2−ブロモイソ酪酸エチルを1.1質量部(167mg)、溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)205質量部(32.7g)を100mLの2口ナス型フラスコに秤り取った。−5℃の冷媒を循環させたジムロート冷却管を接続したのちに反応溶液を80℃に昇温し、100mL/分の流量で窒素を溶液中にバブリングしながら30分間攪拌して脱気した。還元剤としてアスコルビン酸0.4質量部(63mg)を添加して原子移動ラジカル重合を開始した。気相部に1mL/分の流量で窒素ガスを通過させながら80℃で4時間加熱攪拌した後、溶液を大過剰のエタノール中に投入して粗生成物を凝固させ、かかる粗生成物を70℃の温度で一晩乾燥させポリアクリロニトリル系重合体(A−5)を収率17%で得た。GPC測定の結果、数平均分子量は1.1万であった。
<参考例6>ポリアクリロニトリル系重合体(A−6)の重合方法
反応溶液温度を65℃にしたことと、重合時間を2.5時間にした以外は参考例5と同様にして重合を行い、ポリアクリロニトリル系重合体(A−6)を収率5%で得た。GPC測定の結果、数平均分子量は0.3万であった。
<参考例7>ポリアクリロニトリル系重合体(A−7)の重合方法
反応溶液温度を65℃にしたことと、重合時間を1時間にした以外は参考例5と同様にして重合を行い、ポリアクリロニトリル系重合体(A−7)を収率1.4%で得た。GPC測定の結果、数平均分子量は0.1万であった。
<参考例8>カーボンナノチューブにグラフト化するポリスチレン系重合体の重合方法
モノマーとしてスチレンを100質量部(30.3g)、重合触媒前駆体として塩化銅(II)・2水和物を0.002質量部(0.5mg)、配位子としてトリス[(2−ピリジル)メチル]アミン(TPMA)を0.03質量部(8.5mg)、重合開始剤として2−ブロモイソ酪酸エチルを0.3質量部(81mg)、溶媒としてアニソール54質量部(16.3g)を100mLの2口ナス型フラスコに秤り取った。−5℃の冷媒を循環させたジムロート冷却管を接続したのちに反応溶液を80℃に昇温し、100mL/分の流量で窒素を溶液中にバブリングしながら30分間攪拌して脱気した。還元剤としてα−D−グルコース0.02質量部(5.2mg)を添加して原子移動ラジカル重合を開始した。気相部に1mL/分の流量で窒素ガスを通過させながら110℃で24時間加熱攪拌した後、溶液を大過剰のエタノール中に投入して粗生成物を凝固させ、かかる粗生成物を70℃の温度で一晩乾燥させポリスチレン系重合体を収率20%で得た。GPC測定の結果、数平均分子量は2万であった。
<参考例9>ポリアクリロニトリル系重合体(B)の重合方法
モノマーとしてアクリロニトリルを100質量部、イタコン酸を1質量部、ラジカル開始剤としてAIBNを0.4質量部、および連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン0.1質量部をジメチルスルホキシド370質量部に均一に溶解し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を酸素濃度が1000ppmになるまで窒素置換した後、撹拌しながら以下の熱処理を行い、溶液重合法により重合して、PAN系重合体溶液を得た。
(1)61℃の温度で4時間保持
(2)61℃から80℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(3)80℃の温度で6時間保持
得られたポリアクリロニトリル系重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は44万g/molであった。次いで、PAN系重合体溶液中にアンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことによりイタコン酸を中和した。
<実施例1>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−4)を5.3質量部(147mg)とジメチルスルホキシド(DMSO)970質量部(27.1g)とを50mLの2口ナス型フラスコに秤り取り、45℃で30分間攪拌して均一溶液とした。かかる溶液に平均繊維径1.4nmの単層カーボンナノチューブ(SWNT)1質量部(28mg)を加え45℃で90分間超音波照射を行った。さらに塩化銅(II)・2水和物を0.01質量部(0.2mg)、配位子としてトリス[(2−ピリジル)メチル]アミン(TPMA)0.1質量部(2.9mg)を計量して加えた。−5℃の冷媒を循環させたジムロート冷却管を接続したのちに反応溶液を80℃に昇温し、100mL/分の流量で窒素を溶液中にバブリングしながら30分間攪拌して脱気した。還元剤としてα−D−グルコース0.1質量部(2.0mg)を添加して、気相部に1mL/分の流量で窒素ガスを通過させながら80℃で8時間加熱攪拌した。溶液を大過剰のエタノール中に投入して粗生成物を凝固させ、かかる粗生成物を70℃の温度で一晩乾燥させ粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<実施例2>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−5)を13.3質量部(371mg)用いた以外は、実施例1と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<実施例3>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−6)を3.5質量部(99mg)用いた以外は、実施例1と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<実施例4>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−3)を6.7質量部(187mg)用いたことと、カーボンナノチューブとして平均繊維径15nmの多層カーボンナノチューブ(MWNT)1質量部(28mg)を用いたこと以外は、実施例1と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<実施例5>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−4)を3.0質量部(84mg)用いた以外は、実施例4と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<実施例6>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−5)を1.1質量部(30mg)用いた以外は、実施例4と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<実施例7>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−6)を6.7質量部(187mg)用いた以外は、実施例4と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<実施例8>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−3)を1.7質量部(48mg)用いたことと、カーボンナノチューブとして平均繊維径1.6nmの二層カーボンナノチューブ(DWNT)1質量部(28mg)を用いた以外は、実施例1と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<実施例9>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−4)を0.6質量部(18mg)用いた以外は、実施例1と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<実施例10>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−2)を1.0質量部(28mg)用いたこと以外は、実施例4と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<実施例11>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−2)を2.1質量部(60mg)用いた以外は、実施例9と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<比較例1>
平均繊維径15nmのMWNTを、ポリアクリロニトリル系重合体をグラフト化せずに用いた。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<比較例2>
グラフトさせるポリスチレン鎖として参考例8で作製したポリスチレン系重合体を5.7質量部(159mg)とアニソール970質量部(27.1g)とを50mLの2口ナス型フラスコに秤り取り、45℃で30分間攪拌して均一溶液とした。かかる溶液に平均繊維径15nmの多層カーボンナノチューブ(MWNT)1質量部(28mg)を加え45℃で90分間超音波照射を行った。さらに塩化銅(II)・2水和物を0.01質量部(0.2mg)、配位子としてトリス[(2−ピリジル)メチル]アミン(TPMA)0.1質量部(2.9mg)を計量して加えた。−5℃の冷媒を循環させたジムロート冷却管を接続したのちに反応溶液を110℃に昇温し、100mL/分の流量で窒素を溶液中にバブリングしながら30分間攪拌して脱気した。還元剤としてα−D−グルコース0.1質量部(2.0mg)を添加して、気相部に1mL/分の流量で窒素ガスを通過させながら110℃で8時間加熱攪拌した。溶液を大過剰のエタノール中に投入して粗生成物を凝固させ、かかる粗生成物を70℃の温度で一晩乾燥させ粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<比較例3>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−5)を0.2質量部(7mg)用いたこと以外は、実施例8と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
<比較例4>
グラフトさせるポリアクリロニトリル鎖としてポリアクリロニトリル系重合体(A−1)を3.8質量部(105mg)用いた以外は、実施例4と同様に反応させ、粗生成物を粗収率約90%で得た。ポリアクリロニトリル系重合体(B)溶液への分散性試験結果は表1に示す。
以上の実施例より、カーボンナノチューブにポリアクリロニトリル系重合体をグラフト化することで、マトリックスであるポリアクリロニトリル系重合体への分散性が向上することが分かる。ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブのポリアクリロニトリル鎖の分子量、質量比率を制御することで、分散速度も大幅に高めることができる。
[ポリアクリロニトリル系重合体組成物成形体製造]
実施例4で得られたポリアクリロニトリル修飾MWNTを2g秤量し、ポリマー濃度10質量%に調節しておいたポリアクリロニトリル系重合体(B)のジメチルスルホキシド溶液990gに少量ずつ添加しながら、約65℃の温度でメカニカルスターラーにより攪拌しながら、かつ超音波照射しながら約12時間かけて混合、分散させた。かかる分散液を目開き0.5μmの金属焼結フィルターを通過させた後、減圧濃縮することにより固形物の濃度が18質量%である紡糸原液を得た。紡糸原液の温度を40℃に維持して、吐出孔数500の紡糸口金から、紡糸原液を温度3℃にコントロールした40質量%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入し、凝固した繊維束を製造した。この際、吐出線速度および引き取り速度を制御する事により凝固浴から引き取った直後の繊維径が18ミクロンであった。この繊維をさらに、常法により水洗した後、温水中で5.0倍に延伸し、さらに、アミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与した。得られた延伸繊維束を、温度140℃に加熱した10個のローラーに接触させて走行させ、乾燥熱処理を行った。この際、第1番目のローラーの回転数と最終の回転ロールの回転数の比を2倍に設定することにより2倍の延伸を行い、単糸径8ミクロンの繊維を得た。製糸工程における糸切れ回数、毛羽数は多くなく、良好に紡糸できることが分かった。
Figure 2012201788
なお、表中のポリアクリロニトリル系重合体(A)のMn、比率の判断は以下のとおりに行われている。
・Mn・・・○:0.3万〜10万g/molの範囲内の例、×:左記範囲外の例。
・比率・・・○:25〜99質量%の範囲内の例、×:左記範囲外の例。

Claims (14)

  1. カーボンナノチューブにポリアクリロニトリル系重合体(A)がグラフト重合されたポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブであって、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ中のポリアクリロニトリル系重合体(A)成分の比率が25〜99質量%であり、かつポリアクリロニトリル系重合体(A)部分の数平均分子量が0.3万〜10万g/molであることを特徴とする、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ。
  2. 前記ポリアクリロニトリル系重合体(A)を構成するモノマーの90モル%以上がアクリロニトリルである、請求項1記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ。
  3. 請求項1または2に記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ、およびポリアクリロニトリル系重合体(B)の混合物からなる複合体であって、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの比率が0.1〜25質量%である、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体。
  4. 前記ポリアクリロニトリル系重合体(B)の重量平均分子量が5万〜500万である、請求項3に記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体。
  5. 前記ポリアクリロニトリル系重合体(B)を構成するモノマーの90モル%以上がアクリロニトリルである、請求項3または4に記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体。
  6. 請求項3〜5のいずれかに記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブ複合体を紡糸してなるポリアクリロニトリル系繊維束。
  7. 請求項1または2に記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの製造方法であって、ポリアクリロニトリル系重合体(A)は分子鎖末端にラジカル前駆体構造を有しており、該ポリアクリロニトリル系重合体(A)とカーボンナノチューブとを反応させる、ポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの製造方法。
  8. カーボンナノチューブへのポリアクリロニトリル系重合体(A)のグラフト化が、極性有機溶媒中で行われる、請求項7に記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの製造方法。
  9. 極性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、およびジメチルスルホキシドの中から選ばれた少なくとも一種の極性有機溶媒である、請求項8に記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの製造方法。
  10. カーボンナノチューブにグラフト化するポリアクリロニトリル系重合体(A)が、原子移動ラジカル重合法で得られるものである、請求項7〜9のいずれかに記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの製造方法。
  11. カーボンナノチューブへのポリアクリロニトリル系重合体(A)のグラフト化が、ポリアクリロニトリル系重合体(A)、カーボンナノチューブ、高酸化状態の遷移金属塩および配位子を含む極性有機溶媒に、還元剤を添加することにより開始される、請求項7〜10のいずれかに記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの製造方法。
  12. カーボンナノチューブとポリアクリロニトリル系重合体(A)とを溶媒に導入した溶液を得た後に、超音波照射によりカーボンナノチューブを均一に分散させる工程を含む、請求項7〜11のいずれかに記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの製造方法。
  13. 超音波照射する際の前記溶液粘度を0.1〜10Pa・sとする、請求項12に記載のポリアクリロニトリル修飾カーボンナノチューブの製造方法。
  14. 請求項6に記載のポリアクリロニトリル系繊維束を、200〜300℃の温度の空気中において耐炎化処理した後、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、次いで1,000〜3,000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化処理する工程を含む、炭素繊維の製造方法。
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