JP6470044B2 - がんに対する免疫療法の有効性の予測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、がんに対する免疫療法の有効性の予測方法に関する。
がんに対する免疫療法は、腫瘍の縮小効果に加えて、がん患者の生存期間及び無増悪生存期間を延長する延命効果を有することが報告されている。特に、この延命効果は、抗がん剤が効かなくなった末期のがん患者にも有効性が示されており、末期のがん患者の生活の質を向上させる治療法として免疫療法が注目されている。
免疫療法は、個人差の大きい免疫機能を活性化させる治療法なので、一部のがん患者に期待された効果が得られないことがある。このため、がん患者に免疫療法を行う前に、治療効果を予測できれば、がん患者に対する治療法の選択に有用な情報を提供できる。
特許文献1には、がん患者に対する免疫療法の治療効果を、所定の遺伝子の発現量から予測する方法が開示されている。この方法によれば、がん患者に対する免疫療法の治療効果を事前に予測することができる。
国際公開第2012/002011号
しかし、遺伝子の発現量は、服用した抗がん剤等の治療履歴、健康状態、環境等の様々な要因で変化することがある。このため、試料を採取したときの患者の状態によって予測結果が左右され、予測精度がばらつくことがある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、がんに対する免疫療法の有効性をより高い精度で予測できるがんに対する免疫療法の有効性の予測方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者は、標準治療抵抗性の再燃前立腺がん患者から免疫療法を受ける前に採取された末梢血を用いて遺伝子多型解析を行った。その結果、ハプトグロビン(以下、単に「HP」とする)遺伝子の転写開始点から55塩基上流の塩基に係る一塩基多型(米国バイオテクノロジー情報センター(以下、単に「NCBI」とすることもある)のSNPデータベースにおけるrs5472)が免疫療法の有効性に関連することを見出した。免疫療法後の予後が良好だった患者は、予後が不良だった患者と比較して、当該一塩基多型の遺伝子型が統計的に有意に高い頻度でグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体であることが示された。この知見に基づいて、本発明者は本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の観点に係るがんに対する免疫療法の有効性の予測方法は、
被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型を決定する決定ステップと、
前記決定ステップで決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対するペプチドワクチン療法の有効性を予測する予測ステップと、
を含み、
前記予測ステップでは、
前記決定ステップで決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合には、前記遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法が前記被検者に有効であると予測し、
前記決定ステップで決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、前記遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法が前記被検者に有効でないと予測する
本発明の第2の観点に係るがんに対する免疫療法の有効性の予測方法は、
被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型を決定する決定ステップと、
前記決定ステップで決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対するペプチドワクチン療法の有効性を予測する予測ステップと、
を含み、
記予測ステップでは、
前記決定ステップで決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合には、前記遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法後の前記被検者の生存期間が長いと予測し、
前記決定ステップで決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、前記遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法後の前記被検者の生存期間が短いと予測する。
また、前記がんは、
前立腺がん又は消化器がんである、
こととしてもよい。
また、前記試料は、
血液である、
こととしてもよい。
また、前記予測ステップでは、
前記決定ステップで決定された遺伝子型に対応する、前記ペプチドワクチン療法の統計的に有意な有効性を予測する、
こととしてもよい。
また、本発明の第の観点に係る上記の予測方法に用いるプライマー対は、
ゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の部位を含む連続する少なくとも10塩基を、PCR産物の塩基配列中に含むように設計されたものである。
また、本発明の第の観点に係る上記の予測方法に用いるプローブは、
ゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の部位を含む連続する少なくとも10塩基を塩基配列中に含む核酸、又はその核酸を増幅したPCR産物に相補的な核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするものである。
この場合、前記一塩基多型の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がグアニン、アデニン又はチミンである、
こととしてもよい。
また、本発明の第の観点に係るがんに対する免疫療法の有効性の予測用キットは、
本発明の第の観点に係るプライマー対及び本発明の第の観点に係るプローブの少なくとも一つを含む。
また、本発明の第の観点に係るマイクロチップは、
がんに対するペプチドワクチン療法の有効性を予測するために使用されるマイクロチップであって、
被検者から採取されたゲノムDNAを含む試料が注入される注入部と、
前記注入部に注入された試料からゲノムDNAを抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出されたゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の部位を含む領域を増幅する増幅部と、
を備える。
また、本発明の第の観点に係る解析装置は、
本発明の第の観点に係るマイクロチップと、
前記マイクロチップで増幅された領域に含まれる前記一塩基多型の遺伝子型を決定する決定部と、
前記決定部で決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対するペプチドワクチン療法の有効性を予測する予測部と、
を備える。
た、本発明の第の観点に係るがんに対する免疫療法の有効性の予測用キットは、
被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型を決定する決定手段と、
前記決定手段で決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対するペプチドワクチン療法の有効性を予測する予測手段と、
を備える。
この場合、前記予測手段は、
前記決定手段で決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合には、前記遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法が前記被検者に有効であると予測し、
前記決定手段で決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、前記遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法が前記被検者に有効でないと予測する、
こととしてもよい。
また、前記予測手段は、
前記決定手段で決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合には、前記遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法後の前記被検者の生存期間が長いと予測し、
前記決定手段で決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、前記遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法後の前記被検者の生存期間が短いと予測する、
こととしてもよい。
また、前記がんは、
前立腺がん又は消化器がんである、
こととしてもよい。
また、前記試料は、
血液である、
こととしてもよい。
また、前記予測手段は、
前記決定手段で決定された遺伝子型に対応する、前記ペプチドワクチン療法の統計的に有意な有効性を予測する、
こととしてもよい。
また、本発明の第の観点に係るがんに対する免疫療法の有効性の予測用キットは、
被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型を決定する決定手段と、
前記決定手段で決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対する免疫療法の有効性を予測する予測手段と、
を備えるがんに対する免疫療法の有効性の予測用キットであって、
前記決定手段は、
前記ゲノムDNAにおける前記一塩基多型の部位を含む連続する少なくとも10塩基を塩基配列中に含む核酸、又はその核酸に相補的な核酸を増幅したPCR産物にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプローブを備え、
前記プローブは、
前記一塩基多型の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がグアニン、アデニン又はチミンである。
また、本発明の第1の観点に係るプローブは、
被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型を決定する決定ステップと、
前記決定ステップで決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対する免疫療法の有効性を予測する予測ステップと、
を含むがんに対する免疫療法の有効性の予測方法に用いるプローブであって、
前記ゲノムDNAにおける前記一塩基多型の部位を含む連続する少なくとも10塩基を塩基配列中に含む核酸、又はその核酸に相補的な核酸を増幅したPCR産物にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、
前記一塩基多型の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がグアニン、アデニン又はチミンである。
本発明によれば、NCBIのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型に基づいて、がんに対する免疫療法の有効性を予測する。遺伝子型は、試料を採取したときの被検者の状態に影響されないため、がんに対する免疫療法の有効性をより高い精度で予測できる。
本発明の実施の形態5に係るマイクロチップ及び解析装置の構成を示す図である。 図1に示すマイクロチップの構成を示す図である。 実施例2に係る前立腺がん患者のカプランマイヤー曲線を示す図である。 実施例3に係る胃がん患者のカプランマイヤー曲線を示す図である。 実施例4に係るPCRサンプルに対する各プローブの共鳴角変化量を示す図である。 実施例4に係る合成核酸サンプルAに対する各プローブの共鳴角変化量を示す図である。 実施例4に係る合成核酸サンプルGに対する各プローブの共鳴角変化量を示す図である。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
本発明の実施の形態1に係るがんに対する免疫療法の有効性の予測方法は、被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおける、NCBIのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型を決定する決定ステップと、決定ステップで決定された遺伝子型に基づいて被検者のがんに対する免疫療法の有効性を予測する予測ステップと、を含む。
まず、決定ステップについて詳細に説明する。決定ステップでは、被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおけるrs5472の遺伝子型を決定する。被検者とは、ヒトである。人種は限定されないが、本発明は、日本人のがん患者を対象とする遺伝子多型解析に基づいてなされたため、被検者は、アジア人であることが好ましく、より好ましくは、日本人である。
試料とは、任意の生物学的試料であって、ゲノムDNAを含むものであればよい。試料は、例えば、ヒトの血液、血清、骨髄液、精液、腹腔液、尿等の体液、肝臓、皮膚等の細胞、毛髪等の体毛等である。ゲノムDNAは、公知の方法によって、試料から抽出し、精製し、調製することができる。
下記実施例に示すように、HP遺伝子の転写開始点から55塩基上流の位置には一塩基多型(single nucleotide polymorphism、以下、単に「SNP」とする)が存在する。HP遺伝子の転写開始点を+1として−697から+148までの塩基配列を配列番号1に示す。当該SNPは、NCBIのSNPデータベースにおいて「rs5472」として登録されている。なお、HP遺伝子の転写開始点は、Nobuyo Maeda, DNA Polymorphisms in the Controlling Region of the Human Haptoglobin Genes: A Molecular Explanation for the Haptoglobin 2-1 Modified Phenotype.,Am. J. Hum. Genet., 1991, 49:158-166に基づく。
ここで、SNPは、生物の集団において、ゲノムDNAの塩基配列中で1つの塩基の置換、欠失、挿入、転位、逆位等の変異であって、その変異が集団内で1%以上の頻度で現れるものをいう。本明細書においてSNPという場合には、HP遺伝子のコーディング鎖側の多型および非コーディング鎖側の多型のいずれかまたは両方を意味するが、SNPを記載する場合には、特に言及する場合を除いてコーディング鎖側の塩基で記載する。
HP遺伝子は、16番染色体上に存在する。HP遺伝子は、肝実質細胞やリンパ節等の成熟顆粒白血球(特に好酸球)で生合成されるHPをコードする。HPは、急性期反応タンパク質の特性を有している。感染症、炎症、組織崩壊、悪性腫瘍等において、HPは血清中で著しく増加することが報告されている。
rs5472の遺伝子型の決定では、SNPデータベースにrs5472として登録されたSNPの部位の塩基(以下、単に「標的塩基」とする)がグアニンであるかアデニンであるかを決定すればよい。標的塩基の決定は、例えば、ダイレクトシークエンス法によって行うことができる。ダイレクトシークエンス法では、ゲノムDNAを鋳型にして標的塩基を含む領域の核酸をPCR(polymerase chain reaction)法で増幅し、PCR法で増幅された核酸の塩基配列を解析する。
PCR法では、DNAポリメラーゼが核酸の断片であるプライマーを伸長することによって目的の核酸を増幅する。プライマーは、DNAポリメラーゼによって、鋳型となるDNAに相補的なデオキシヌクレオチド三リン酸がその3’末端に付加されて、5’末端から3’末端の方向に伸長される。PCR法では、反応温度の変化により、2本鎖の鋳型のDNAが1本鎖にほどかれ、プライマーが鋳型のDNAにアニーリングされ、DNAポリメラーゼによる伸長反応が行われ、伸長されたプライマーと鋳型のDNAとがほどかれる。これを繰り返すことにより、目的の核酸を増幅することができる。
PCR法で用いるプライマーは、例えば、標的塩基を含むゲノムDNAの連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列の核酸、好ましくは10塩基から100塩基の塩基配列の核酸、より好ましくは、10塩基から50塩基の塩基配列の核酸、及びそれらに相補的な核酸の少なくとも1つを増幅するように設計される。例えば、増幅の対象となる標的塩基を含むゲノムDNAの連続する10塩基の核酸の塩基配列は、標的塩基がアデニンの場合、5’末端から3’末端に向かって「ggagAagggg」である。なお、「A」は標的塩基を示す。これに対して、標的塩基を含むゲノムDNAの連続する少なくとも10塩基の核酸に相補的な核酸の塩基配列は、例えば、5’末端から3’末端に向かって「ccccttctcc」である。より具体的には、プライマーとして、例えば、配列番号2及び配列番号3に示す塩基配列のオリゴヌクレオチドを用いることができる。
PCR法で増幅された核酸の塩基配列の解析は、例えば、Applied Biosystems 3130(アプライドバイオシステムズ社)等の配列解析装置を用いて行うことができる。また、核酸の塩基配列の解析は、例えば、ジデオキシ法、Maxam−Gilbert法等の公知の方法により行うことができる。
PCR法で増幅された核酸の標的塩基の種類は、例えば、標的塩基が一の種類の塩基の場合に、特異的にハイブリダイゼーションするプローブを利用して決定してもよい。プローブとは、核酸の相補性に基づいたハイブリダイゼーション等を利用して核酸又はその塩基配列中の特定の部位について解析するための核酸の断片をいう。プローブは、例えば、標的塩基を含むゲノムDNAの連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列の核酸、好ましくは10塩基から100塩基の塩基配列の核酸、より好ましくは、10塩基から50塩基の塩基配列の核酸、又はそれらの核酸に相補的な核酸にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。この場合、プローブのほぼ中心部位の塩基が、標的塩基に相補的であるのが好ましい。プローブは、標的塩基が一の種類である核酸とはハイブリダイズするが、標的塩基が他の種類である核酸とはハイブリダイズしないものであれば、その塩基配列において1又は複数の置換、欠失、付加を含んでいてもよい。プローブは、必要に応じて、蛍光物質や放射性物質等によって標識されたものであってもよい。
ハイブリダイゼーションの条件は、標的塩基を区別するのに十分な条件であればよい。例えば、ハイブリダイゼーションの条件は、プローブが、標的塩基が一の種類である核酸とはハイブリダイズするが、標的塩基が他の種類である核酸とはハイブリダイズしないストリンジェントな条件である。ストリンジェントな条件は、例えば、モレキュラークローニング・ア・ラボラトリーマニュアル第3版(2001年)等に基づき適宜決定でき、例えば、0.2×SSC、0.1%SDS、65℃で保温、である。
より具体的には、プローブを用いた標的塩基の種類の決定は、例えば、インベーダー(登録商標)法で行うことができる。この方法では、試料中の核酸に対して相補的なインベーダープローブと、5’のフラップ構造を有しており、核酸に相補的なシグナルプローブとを使用する。シグナルプローブは、標的塩基の種類それぞれに相補的な塩基を含む。シグナルプローブは、核酸上の標的塩基の部位で、インベーダープローブとオーバーラップするように設計される。
インベーダー(登録商標)法では、まず、試料中の核酸に対してインベーダープローブとシグナルプローブとをハイブリダイズさせる。次に、インベーダープローブとシグナルプローブとがオーバーラップする部位にフラップ・エンドヌクレアーゼを作用させる。標的塩基とその塩基に対応するシグナルプローブの塩基とが相補的である場合には、シグナルプローブのフラップがフラップ・エンドヌクレアーゼによって切断される。切断されたフラップが、蛍光色素で標識された検出用のDNA基質とハイブリダイズして新たなフラップを形成する。このフラップをフラップ・エンドヌクレアーゼが認識し、切断することで蛍光色素が遊離する。シグナルプローブを異なる蛍光色素で標識しておくことによって、蛍光色素に基づく蛍光シグナルを検出することにより、標的塩基を含む領域の塩基配列情報に基づき、常套的方法で合成することができる。
この他、標的塩基の種類の決定に用いるプローブは、TaqMan(登録商標)法に用いられるもの等であってもよい。なお、決定ステップでは、ゲノムDNAと同一又は完全に相補的なcDNAやmRNAについて、標的塩基に対応する塩基の種類を決定することで、ゲノムDNAにおける標的塩基の遺伝子型を決定してもよい。
次に、予測ステップについて詳細に説明する。予測ステップでは、決定ステップで決定された遺伝子型に基づいて被検者のがんに対する免疫療法の有効性を予測する。
がんの種類は、特に限定されず、固形がんであっても液性がんであってもよい。例えば、がんの種類は、前立腺がん、消化器がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、乳がん等である。がんの種類としては、特に前立腺がん及び消化器がんが好ましく、消化器がんにおいては、胃がんが特に好ましい。がんの進行度は、特に限定されず、再燃したがんであってもよい。例えば、前立腺がんにおいては、ホルモン療法が効かなくなった状態である再燃前立腺がんであってもよく、標準治療に対して抵抗性を示す標準治療抵抗性であってもよい。
免疫療法とは、がん患者における腫瘍抗原タンパク質に対する免疫応答を活性化することによりがんを治療する方法である。免疫療法として、具体的には、腫瘍抗原ペプチドを接種するペプチドワクチン療法、患者由来の傷害性T細胞やナチュラルキラー細胞を利用する活性化自己リンパ球移入療法、腫瘍抗原タンパク質や腫瘍抗原ペプチドを発現するウイルスベクターを投与するDNAワクチン療法、腫瘍抗原ペプチドを提示する樹状細胞を投与する樹状細胞ワクチン療法等が挙げられる。これらの中でも、下記実施例に示すように、免疫療法としてはペプチドワクチン療法が好ましい。
例えば、予測ステップでは、決定ステップで決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合には、遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合よりも、免疫療法が被検者に有効であると予測する。また、決定ステップで決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合よりも、免疫療法が被検者に有効でないと予測する。
遺伝子型がグアニンのホモ接合体とは、遺伝子座における対立遺伝子の標的塩基が両方ともグアニン(G)であるということである。これに対し、遺伝子座における対立遺伝子の標的塩基が両方ともアデニン(A)の場合、遺伝子型がアデニンのホモ接合体であるという。また、遺伝子型がヘテロ接合体とは、遺伝子座における対立遺伝子の標的塩基が相違し、一方がグアニン(G)、他方がアデニン(A)であるということである。
免疫療法の有効性は、例えば、免疫療法を開始してから死亡するまでの期間である全生存期間、あるいは免疫療法後の生存期間等で評価できる。例えば、予測ステップでは、決定ステップで決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合には、遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合よりも、免疫療法後の被検者の生存期間が長いと予測してもよい。一方、決定ステップで決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合よりも、免疫療法後の被検者の生存期間が短いと予測してもよい。
より具体的には、下記実施例1に基づいて、決定ステップで決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体の場合には、免疫療法開始後の被検者の生存期間が900日以上であると予測し、決定ステップで決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、免疫療法開始後の被検者の生存期間が300日以下であると予測するようにしてもよい。こうすることで、被検者の生存期間をより具体的に予測できる。この場合、生存期間が900日以上の被検者は、生存期間が300日以下の被検者よりも免疫療法が有効であったと言える。なお、生存期間に関する上記閾値は、がんの種類、進行度、既往歴等に応じて決めることができる。
この他、免疫療法の有効性は、手術等でがんがいったん完治した被検者において免疫療法を開始してから再発又は死亡するまでの期間である無病生存期間、所定レベル以上の腫瘍縮小が認められた患者の割合である奏功率、免疫療法を開始してからがんが進行または死亡するまでの期間である無増悪生存期間、免疫療法を開始してからがんが進行するまでの期間である無増悪期間、免疫療法を開始して1年、3年あるいは5年後の生存患者又は再発患者の割合である1年、3年あるいは5年生存率又は再発率、免疫療法後の生活の質(QOL)に関する指標等で評価できる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るがんに対する免疫療法の有効性の予測方法によれば、rs5472の遺伝子型に基づいて、がんに対する免疫療法の有効性を予測する。遺伝子型は、試料を採取したときの被検者の状態に影響されないため、がんに対する免疫療法の有効性をより高い精度で予測できる。
また、本実施の形態に係るがんに対する免疫療法の有効性の予測方法によれば、1塩基の種類を決定するだけで、被検者に対する免疫療法の有効性が予測できるので、がんに対する免疫療法の有効性を簡便かつ迅速に予測できる。
なお、本実施の形態に係る予測方法によれば、免疫療法の効果が期待できる被検者、免疫療法の効果が期待できない被検者、免疫療法に対して治療抵抗性を示す被検者を予測できる。このため、当該予測方法は、治療方法の選択における意思決定に有用である。
また、本実施の形態では、予測ステップにおいて、決定ステップで決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合には、遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合よりも、免疫療法後の被検者の生存期間が長いと予測し、決定ステップで決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合よりも、免疫療法後の被検者の生存期間が短いと予測してもよいこととした。生存期間は、がん治療における重要な評価項目であり、この点でも、治療方法の選択における意思決定に有用である。
また、本実施の形態に係る予測方法において、がんは前立腺がん又は消化器がんであってもよいこととした。前立腺がんには、再燃前立腺がん及び標準治療抵抗性前立腺がん等、いわゆる難治性の前立腺がんが含まれる。また、消化器がんには、標準治療抵抗性消化器がん等の難治性の消化器がんが含まれる。本実施の形態に係る予測方法を、このような難治性の前立腺がん又は消化器がんの患者に適用することで、選択できる治療方法が限られた中での免疫療法の適用または不適用を決定する方法として利用することができる。
なお、本実施の形態に係る予測方法において、免疫療法は、ペプチドワクチン療法であってもよいこととした。ペプチドワクチン療法によって、前立腺がん、胃がん、脳腫瘍、子宮頚がん、大腸がんなどでがんが縮小したり、長期間に渡ってがんの進行が抑えられ、より長い生存期間が得られたりした症例が報告されている。本実施の形態に係る予測方法を適用して患者を選択することによって、がん縮小効果、進行抑制効果、延命効果などのペプチドワクチン療法の効果が得られる確率を高めることができる。
また、本実施の形態に係る予測方法において、被検者から採取される試料は、血液であってもよいこととした。通常、血液はがんの検査、治療、予後観察において採取されるため、容易に入手できる。
なお、下記実施例に示すように、rs5472の部位を含むポリヌクレオチドは、がんに対する免疫療法の有効性の予測用又は診断用マーカーとして有用である。例えば、がんに対する免疫療法の有効性の予測用マーカーは、rs5472の部位の塩基を含むゲノムDNAの10〜100の連続した塩基配列からなるポリヌクレオチドである。当該ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1で示される塩基配列において、643番目の塩基を含む10〜100の連続した塩基配列からなる。また、下記実施例によれば、被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおけるrs5472の遺伝子型を決定し、決定された遺伝子型に基づいて被検者のがんに対する免疫療法の有効性を診断することもできる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本発明の実施の形態2は、標的塩基を含むゲノムDNAの連続する少なくとも10塩基を、PCR産物の塩基配列中に含むように設計された、上記がんに対する免疫療法の有効性の予測方法に用いるプライマー対である。
標的塩基を含むゲノムDNAの連続する少なくとも10塩基とは、例えば、塩基配列が上記した「ggagAagggg」で示される10塩基である。PCR産物は、PCR法によって増幅された核酸である。ここで、プライマー対とは、例えば、2本鎖の鋳型DNAのコーディング鎖側を5’末端から3’末端の方向に伸長するためのフォワードプライマーと、非コーディング鎖側を5’末端から3’末端の方向に伸長するためのリバースプライマーとの対をいう。例えば、フォワードプライマーによるPCR産物の塩基配列に上記「ggagAagggg」が含まれる場合、リバースプライマーによるPCR産物の塩基配列には、「ccccttctcc」が含まれる。
フォワードプライマーは、例えば、配列番号2に示す塩基配列のオリゴヌクレオチドであることが好ましい。また、リバースプライマーは、例えば、配列番号3に示す塩基配列のオリゴヌクレオチドであることが好ましい。この他、フォワードプライマーとリバースプライマーの組み合わせとしては、配列番号4に示す塩基配列のオリゴヌクレオチドと配列番号5に示す塩基配列のオリゴヌクレオチドとの組み合わせ、及び配列番号6に示す塩基配列のオリゴヌクレオチドと配列番号7に示す塩基配列のオリゴヌクレオチドとの組み合わせ等がある。
プライマーとしてのオリゴヌクレオチドは、既知の方法で合成することができる。オリゴヌクレオチドは、例えば、固相ホスホルアミダイト法等を含む任意の核酸合成法により化学的に合成される。オリゴヌクレオチドは、トリエステル法でも合成できる。また、種々の自動オリゴヌクレオチド合成装置が市販されており、オリゴヌクレオチドは、当該自動オリゴヌクレオチド合成装置で合成することもできる。また、マルチヌクレオチド合成法も適宜使用することができる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るプライマー対によれば、標的塩基を含むゲノムDNAの連続する少なくとも10塩基を塩基配列中に含む塩基配列の核酸が増幅されるので、標的塩基の種類を効率よく決定できる。このため、上記がんに対する免疫療法の有効性の予測方法に好適である。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、標的塩基を含むゲノムDNAの連続する少なくとも10塩基を塩基配列中に含む核酸、又はその核酸に相補的な核酸にハイブリダイズし、上記がんに対する免疫療法の有効性の予測方法に用いるプローブである。
プローブは、例えば、上記インベーダー(登録商標)法に用いられるものであってもよい。また、プローブは、例えば、TaqMan(登録商標)法に用いられるものであってもよい。
また、プローブは、標的塩基を含む核酸とのハイブリダイズを定量することで、標的塩基の遺伝子型の決定に使用することができる。
ハイブリダイゼーションを定量する方法として、例えば、SPR(表面プラズモン共鳴)法及び金の異常反射を用いる方法等が挙げられる。SPR法等を用いることで、ハイブリダイゼーションをリアルタイムに、かつ精度よく定量できる。SPR法を用いる場合、例えば、プローブの3’末端にリンカーを付加し、リンカーの3’末端にビオチンをさらに付加することで、表面にアビジンを有するセンサチップに、当該プローブを固定化できる。
公知のSPR測定装置に上記センサチップをセットし、センサチップに核酸を含む溶液を接触させる前後の共鳴角の差としてハイブリダイゼーションの強さを定量できる。この場合、標的塩基に対応する塩基がチミンであるアデニン検出用プローブは、標的塩基がアデニンである核酸とより強くハイブリダイズする。一方、標的塩基に対応する塩基がシトシンであるグアニン検出用プローブは、標的塩基がグアニンである核酸とより強くハイブリダイズする。ここで、下記実施例4のように、標的塩基に対応する塩基がアデニンであるチミン検出用プローブを用いることで、アデニン検出用プローブ又はグアニン検出用プローブと標的塩基を含む核酸とのハイブリダイゼーションの強さを補正して定量できる。
アデニン検出用プローブ、グアニン検出用プローブ及びチミン検出用プローブの塩基配列は、例えば、それぞれ配列番号8、配列番号9及び配列番号10で示される。
また、本実施の形態に係るプローブは、標的塩基を含む核酸にハイブリダイズする限り、1又は複数塩基の変異があってもよい。例えば、プローブは、rs5472の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がグアニン、アデニン又はチミンであってもよい。rs5472の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がグアニンの場合、アデニン検出用プローブ、グアニン検出用プローブ及びチミン検出用プローブの塩基配列は、それぞれ配列番号11、配列番号12及び配列番号13で示される。rs5472の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がアデニンの場合、アデニン検出用プローブ、グアニン検出用プローブ及びチミン検出用プローブの塩基配列は、それぞれ配列番号14、配列番号15及び配列番号16で示される。rs5472の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がチミンの場合、アデニン検出用プローブ、グアニン検出用プローブ及びチミン検出用プローブの塩基配列は、それぞれ配列番号17、配列番号18及び配列番号19で示される。
プローブとしてのオリゴヌクレオチドは、上記したプライマーの合成等と同様に既知の方法で合成することができる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るプローブは、標的塩基を含むゲノムDNAの連続する少なくとも10塩基を塩基配列中に含む核酸にハイブリダイズするので、標的塩基の種類を効率よく決定できる。このため、上記がんに対する免疫療法の有効性の予測方法に好適である。
また、本実施の形態に係るプローブは、rs5472の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がグアニン、アデニン又はチミンであってもよいこととした。下記実施例4に示すように、当該プローブによれば、rs5472の遺伝子型をより高い精度で決定できる。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4は、上記プライマー対及び上記プローブの少なくとも一方を含む、がんに対する免疫療法の有効性の予測用キットである。
がんに対する免疫療法の有効性の予測用キットに含まれるプライマー対は、標的塩基を含むゲノムDNAの連続する少なくとも10塩基を、PCR産物の塩基配列中に含むように設計されたものであればよい。例えば、がんに対する免疫療法の有効性の予測用キットは、プライマー対として、配列番号2に示す塩基配列のオリゴヌクレオチド及び配列番号3に示す塩基配列のオリゴヌクレオチドを含むのが好ましい。
また、がんに対する免疫療法の有効性の予測用キットに含まれるプローブは、標的塩基を含むゲノムDNAの連続する少なくとも10塩基を塩基配列中に含む核酸、又はその核酸に相補的な核酸にハイブリダイズするものであればよい。
がんに対する免疫療法の有効性の予測用キットに含まれるプライマー対及びプローブとしてのオリゴヌクレオチドは、上記の既知の方法で合成することができる。なお、がんに対する免疫療法の有効性の予測用キットは、上記がんに対する免疫療法の有効性の予測方法における決定ステップで使用される制限酵素、ポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、標識、緩衝液等を含んでもよい。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るがんに対する免疫療法の有効性の予測用キットによれば、標的塩基の種類をより迅速に決定できるので、上記がんに対する免疫療法の有効性の予測方法に好適である。
なお、上記実施の形態1における標的塩基の種類の決定は、既知の制限酵素断片長多型(RFLP:restriction fragment length polymorphism)分析法で行ってもよい。この方法では、標的塩基の種類に応じて核酸を切断するか否かが異なる制限酵素で試料中の核酸を処理する。続いて、処理された核酸の断片の大きさを調べることによって、核酸が切断されたか否かがわかるため、標的塩基の種類を決定することができる。
また、上記実施の形態1における標的塩基の種類の決定は、既知の方法である変性勾配ゲル電気泳動法(DGGE:denaturing gradient gel electrophoresis)、一本鎖コンフォメーション多型解析(SSCP:single strandconformation polymorphism)、対立遺伝子特異的PCR(allele−specific PCR)、ASO(allele−specific oligonucleotide)によるハイブリダイゼーション法、ミスマッチ部位の化学的切断(CCM:chemical cleavage of mismatches)、heteroduplex法、PEX(primer extension)法、RCA(rolling circle amplification)法、LAMP法(特許第3313358号明細書)、NASBA法(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification;特許第2843586号明細書)、ICAN法(特開2002−233379号公報)等を用いて行ってもよい。
また、上記実施の形態1における標的塩基の種類の決定では、標的塩基と連鎖不平衡にある塩基の種類を決定してもよい。ここで「標的塩基と連鎖不平衡にある塩基」とは、標的塩基との連鎖不平衡係数r>0.5、好ましくはr>0.8、さらに好ましくはr>0.9を満たす塩基をいう。標的塩基と連鎖不平衡にある塩基は、例えば、HapMapデータベース(http://www.hapmap.org/index.html.ja)等を用いて同定することができる。また、標的塩基と連鎖不平衡にある塩基は、複数人(通常は20−40人程度)から採取したDNAの配列を解析し、連鎖不平衡にあるSNPを探索することにより同定することもできる。
なお、上記実施の形態1、3、4におけるプローブは、RCA(Rolling Circle Amplification)法による増幅に用いられる一本鎖プローブ(パドロックプローブ)のように、ゲノムDNAとアニールし、環状になることによって上記プローブの条件を満たすものでもよい。また、プローブは、一端を基板に固定してDNAチップとして用いてもよい。この場合、DNAチップには、標的塩基が一の種類である核酸に相補的なプローブのみが固定されていてもよいし、このプローブに加えて、標的塩基が他の種類である核酸に相補的なプローブが固定されていてもよい。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5に係るマイクロチップ100及び解析装置200について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係るマイクロチップ100及び解析装置200の装置構成を示す斜視図である。マイクロチップ100は、複数のプレートを積層して構成される多層構造である。マイクロチップ100の複数のプレートは、その一部を貫通させることで試料槽及び反応槽を形成する。マイクロチップ100には、ピン穴10a、10bが設けられている。ピン穴10a、10bは、マイクロチップ100を解析装置200に配置する際、解析装置200に対するマイクロチップ100の位置を決める。
図2を参照して、マイクロチップ100を詳細に説明する。マイクロチップ100は、注入部としての試料注入部101と、洗浄バッファ注入部102と、PCR試薬注入部103と、抽出部104と、排出口105と、増幅部としてのPCR部106と、流路107とを備える。
試料注入部101には、被検者から採取されたゲノムDNAを含む試料が注入される。試料注入部101は窪み状に形成されているため、ユーザは、被検者から採取されたゲノムDNAを含む試料を試料注入部101に注入できる。試料は、リシスバッファ(例えば、SDS/LiOAc溶液(ドデシル硫酸ナトリウム/酢酸リチウム溶液))に被検者から採取した試料(例えば、口腔内粘膜、血液、体液など)を懸濁した溶液である。
洗浄バッファ注入部102は窪み状に形成されているため、ユーザは、洗浄バッファを注入できる。洗浄バッファは、例えば、Trisバッファであり、DNAの磁性ビーズ(シリカ)への結合を維持するために高塩濃度に調製される。
PCR試薬注入部103は窪み状に形成されているため、ユーザは、PCR試薬を注入できる。PCR試薬は、例えば、ポリメラーゼ、蛍光ラベル化されたddNTP、マグネシウム等を含む。
なお、リシスバッファ、洗浄バッファ及びPCR試薬は市販のものを利用できるし、必要に応じて組成を改変して調製することもできる。また、洗浄バッファ及びPCR試薬は、上記のようにユーザが注入してもよいが、マイクロチップ100に予め封入しておいてもよい。
抽出部104は、試料注入部101に注入された試料からゲノムDNAを抽出する。抽出部104は、試料からゲノムDNAを抽出するために設けられた反応槽である。抽出部104には、ゲノムDNAを抽出するための磁性ビーズが封入されている。以下では、試料から抽出されるゲノムDNAを、テンプレートDNAともいう。
排出口105は、抽出部104においてテンプレートDNAが抽出された後に残る洗浄バッファ等の排液を排出する。
PCR部106は、抽出部104で抽出されたテンプレートDNAにおける、NCBIのSNPデータベースにrs5472として登録されたSNPの部位を含む領域を増幅する。PCR部106は、テンプレートDNAのrs5472の部位を含む領域を増幅するための反応槽である。PCR部106は、PCRを行うことで当該領域を増幅する。PCRを行うために、PCR部106は、解析装置200によって温度が調整される。PCR部106には、テンプレートDNAのrs5472の部位を含む領域を増幅するように設計されたプライマーが封入される。
流路107は、例えば管であって、管内を液体が流れるように形成される。流路107は、試料注入部101、洗浄バッファ注入部102、PCR試薬注入部103、抽出部104、排出口105、PCR部106を図2に示すように連結する。流路107内の液体の流れは、解析装置200によって制御される。
次に、図1に戻って、解析装置200を詳細に説明する。解析装置200は、台座1と、テーブル2と、制御部3と、蓋4と、蓄圧器5と、電磁弁6と、チューブ7と、電源部8と、解析部9とを備える。
台座1の上にはテーブル2が配置される。テーブル2は、その上面にピン21a、21bと、温度調整部22と、測定部23とが配設される。ピン21a、21bは、マイクロチップ100に設けられたピン穴10a、10bにそれぞれ挿入されることで、マイクロチップ100がテーブル2の所定の位置に配置される。マイクロチップ100がテーブル2の所定の位置に配置されると、マイクロチップ100のPCR部106が温度調整部22及び測定部23と接触する。
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリ(いずれも不図示)を備え、CPUがメモリに格納されたプログラムを実行する。制御部3は、温度調整部22、測定部23、電磁弁6及び電源部8を制御する。
台座1と蓋4とは、ヒンジ41を介して開閉可能に接続されている。蓋4には、蓋4を貫通する複数の加圧穴42が設けられている。蓄圧器5には、圧縮空気等が封入されている。蓄圧器5の内部圧力は、図示しない圧力センサ及びポンプ等により、所定の圧力の大きさを維持するように制御される。
電磁弁6は、加圧穴42と蓄圧器5との間に介在し、加圧穴42と蓄圧器5とチューブ7で接続されている。電磁弁6が開閉することで加圧穴42にかかる圧力が制御される。電磁弁6が開くと、加圧穴42から圧縮空気が放出される。
マイクロチップ100をテーブル2の所定の位置に配置した状態で蓋4を閉じると、マイクロチップ100の所定の領域が加圧穴42と接触する。加圧穴42と接触するマイクロチップ100の領域は、加圧穴42から放出された圧縮空気で加圧される。このため、マイクロチップ100の流路107は開閉機能を実現する。より詳細には、例えば、抽出部104からPCR部106へ液体を移送する場合には、抽出部104とPCR部106との間を除く流路107に加圧した状態で抽出部104に加圧する。こうすることで、抽出部104内の液体は、抽出部104とPCR部106との間の流路107に押し出され、PCR部106に流入する。なお、図1には、加圧穴42、チューブ7及び電磁弁6が2組しか記載されていないが、流路107の構成に応じて加圧穴42、チューブ7及び電磁弁6を増減させてもよい。
蓋4の内部には、電磁石43が配置されている。電磁石43は、電源部8と接続されている。電源部8は、電磁石43に電力を供給する。制御部3が電源部8に対して電磁石43への電力の供給及び供給の停止を指示することで、電磁石43の励磁が制御される。マイクロチップ100をテーブル2の所定の位置に配置した状態で蓋4を閉じると、電磁石43によって発生した磁場がマイクロチップ100の抽出部104に及ぶようになる。
ここで、抽出部104におけるテンプレートDNAの抽出について詳細に説明する。解析装置200は、試料注入部101に注入された試料を抽出部104に移送する。抽出部104に移送された試料に含まれるテンプレートDNAは、抽出部104に封入された磁性ビーズに吸着する。試料を抽出部104に移送後、解析装置200は、洗浄バッファ注入部102の洗浄バッファを抽出部104に移送し、磁性ビーズを洗浄する。抽出部104には、電磁石43によって発生した磁場を及ぼすことができるため、解析装置200は、電磁石43に磁性ビーズを吸着させることで抽出部104にテンプレートDNAを残し、試料及び洗浄バッファを排出口105から排出する。このようにして、抽出部104は、テンプレートDNAを抽出することができる。
なお、磁性ビーズを用いたテンプレートDNAの抽出には、例えば、東洋紡社のMagExtractor(登録商標)、タカラバイオ社のNucleoMag(登録商標)等を利用できる。テンプレートDNAの抽出方法は、例えば、洗浄の回数を増やすなど、必要に応じて改変することもできる。また、テンプレートDNAの抽出方法は、磁性ビーズを用いた方法に限定されず、キアゲン社のQIAamp等のようにシリカビーズカラムを用いてテンプレートDNAを抽出してもよい。
温度調整部22は、伝熱材等を備え、テーブル2の所定の位置に配置されたマイクロチップ100のPCR部106の温度を調整する。温度調整部22による温度の調整によって、PCR部106は、テンプレートDNAのrs5472の部位を含む領域を増幅する。
PCR部106におけるrs5472の部位を含む領域の増幅について詳細に説明する。解析装置200は、PCR試薬注入部103からPCR試薬を、抽出部104に移送する。PCR試薬は、磁性ビーズからテンプレートDNAを溶出する溶出バッファとしての役割も果たすため、低塩濃度に調製されている。溶出されたテンプレートDNA及びPCR試薬は、さらにPCR部106に移送される。温度調整部22は、伝熱材を介して、制御部3による制御の下、予めプログラムされたようにPCR部106の温度を調整する。PCR部106の温度は、例えば、95℃に5分間維持され、94℃に30秒→55℃に30秒→72℃に20秒を30サイクル繰り返した後、72℃に3分間を経て4℃に制御される。PCRの温度条件及びサイクル数等は、Tm値(melting temperature)及びプライマーセットの長さ等に基づいて変更可能である。
ここで、例えば、SNaPshot(登録商標)法のように、増幅するためのフォワードプライマーだけがPCR部106にプライマーセットとして封入されてもよい。当該フォワードプライマーの3’末端は、rs5472の部位のすぐ隣の塩基に対応するように設計されている。PCR部106の溶液中にはdNTPが含まれないため、当該フォワードプライマーの3’末端は、塩基の種類に対応する蛍光で標識されたddNTPで1塩基のみ伸長される。この結果、PCRによって増幅されたDNAであるアンプリコンに、蛍光ラベルされたddNTPが取り込まれる。なお、SNaPshot(登録商標)法に用いる試薬は、ライフテクノロジーズ社から入手可能である。
測定部23は、レーザを照射する発光素子と、当該発光素子から照射されたレーザによる励起によって発光した蛍光を受光する受光素子とを備える(いずれも不図示)。測定部23は、PCR部106にレーザを照射することで、アンプリコンに取り込まれたddNTPから発光される蛍光を受光する。測定部23は、受光した蛍光に応じた信号を出力する。
解析部9は、決定部として機能する。解析部9は、マイクロチップ100で増幅された領域に含まれるrs5472の遺伝子型を決定する。より具体的には、例えば、解析部9は、アンプリコンに取り込まれたddNTPから発光される蛍光に応じて出力された信号を受信し、塩基の種類に基づいてrs5472の遺伝子型を決定する。
また、解析部9は、予測部として機能する。解析部9は、決定したrs5472の遺伝子型に基づいて被検者のがんに対する免疫療法の有効性を予測する。
以上、詳細に説明したように、本実施の形態に係るマイクロチップ100は、被検者から採取された試料からゲノムDNAを抽出し、抽出されたゲノムDNAにおけるrs5472の部位を含む領域を増幅する。このため、増幅した核酸に種々の方法を適用することでrs5472の遺伝子型を決定することができる。また、マイクロチップ100は、小型で軽量なため、取り扱いが容易で簡便にrs5472の部位を含む領域を増幅することができる。
なお、本実施の形態におけるrs5472の遺伝子型の決定には、PCRを利用した他の方法を用いることができる。例えば、PCR部106は、インベーダー(登録商標)法や、TaqMan(登録商標)法を用いてもよい。各方法に応じたプライマーを合成し、PCR部106に封入することで、その方法に応じたアンプリコンを得ることができる。
また、本実施の形態におけるrs5472の遺伝子型の決定には、電気泳動法を用いることもできる。この場合、マイクロチップ100に泳動ポリマを充填したキャピラリ内に、ホルムアミドで一本鎖DNAに変性させたアンプリコンをインジェクションし、キャピラリに接続した電極を用いて直流電圧を印加すればよい。なお、電気泳動法を用いる場合は、PCR試薬にdNTPを加えておき、PCR部106でrs5472の部位を含む領域を増幅させる。こうすることで、分子ふるい効果によってアンプリコンが塩基配列長に応じて分離するため、遺伝子型を識別できるように塩基配列長が異なるプライマーセット等を用いることで、rs5472の遺伝子型を決定できる。
本実施の形態に係る解析装置200は、マイクロチップ100で増幅されたrs5472の遺伝子型を決定し、決定された遺伝子型に基づいて被検者のがんに対する免疫療法の有効性を予測する。解析装置200によれば、遺伝子型の決定にピペット等を用いた作業が不要になるため、操作性が向上し、迅速にがんに対する免疫療法の有効性を予測することができる。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(実施例1:遺伝子発現プロファイルの解析及びHP遺伝子のSNP解析)
本実施例では、ペプチドワクチン療法前の患者について、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現プロファイルを解析した。次に、各遺伝子の発現量に基づいて遺伝子を選択した。続いて、選択された遺伝子から免疫又はがんに関連する遺伝子として選択されたHP遺伝子に着目し、HP遺伝子のSNPを解析した。以下実施例について詳細に説明する。
標準治療抵抗性の再燃前立腺がん患者から再燃前立腺がんと診断された時点に採取した末梢血を患者試料として用いた。DNAマイクロアレイ(Ilumina社製、HumanWG−6 v3.0 Expression BeadChip)を用いて、以下の手順に従って、患者試料についてペプチドワクチン療法前の遺伝子発現プロファイルを解析した。
(1)患者試料からのRNAの抽出及び精製
1.患者試料にTRIzol(登録商標) LS(インビトロジェン社製)を3倍量添加し、混濁した。
2.得られた溶液750μlに、200μlのクロロホルムを加え、混濁後、遠心分離した。
3.上清を新しいチューブに移し、上清の0.55倍量のエタノールを添加した。
4.得られた溶液をSV Total RNA Isolation System(プロメガ社製)のカラムにアプライし、フィルターを通した。
5.フィルターを500μlのWashバッファで洗浄した。
6.80μlのヌクレアーゼフリー水でフィルターからRNAを溶出した。
7.分光光度計を用いて、RNAの濃度を測定した。
8.Experionシステム(バイオラッド社製)を用いて、電気泳動によりRNAの質をチェックした。
上記のようにして、予後良好群(ペプチドワクチン療法後の生存期間が900日以上)の患者18名、予後不良群(ペプチドワクチン療法後の生存期間が300日以下)の患者19名から遺伝子発現プロファイルの解析が可能なRNAが得られた。
(2)Ilumina TotalPrep RNA Amplification Kit(アンビオン社製)を用いたマイクロアレイ用cRNAの合成
逆転写による一本鎖cDNAの合成
1.各500μgのRNAを含むチューブにヌクレアーゼフリー水を加え、11μlの溶液を調製した。
2.調製した溶液に9μlのReverse Transcription Master Mixを加え、チューブを42℃で2時間インキュベートした。
二本鎖cDNAの合成
1.インキュベート後、80μlのSecond Strand Master Mixをチューブに添加した。
2.チューブを16℃で2時間インキュベートした。
cDNAの精製
1.インキュベート後、250μlのcDNA Bindingバッファをチューブに添加した。
2.得られた溶液を、cDNA Filter Cartridgeを用いて、遠心によりフィルターに通した。
3.フィルターを500μlのWashバッファで洗浄した。
4.cDNAを、19μlの50〜55℃に予熱しておいたヌクレアーゼフリー水でフィルターから溶出した。
転写反応によるcRNAの合成
1.7.5μlのIVT Master Mixを、溶出したcDNA溶液を含むチューブに添加した。
2.チューブを37℃で14時間インキュベートした。
3.インキュベート後、75μlのヌクレアーゼフリー水をチューブに添加した。
cRNAの精製
1.350μlのcRNA Bindingバッファをチューブに添加した。
2.250μlの100%エタノールをチューブに加え、混濁した。
3.得られた溶液を、cRNA Filter Cartridgeを用いて、遠心によりフィルターに通した。
4.フィルターを650μlのWashバッファで洗浄した。
5.cRNAを、100μlの50〜55℃に予熱しておいたヌクレアーゼフリー水でフィルターから溶出した。
6.cRNAの濃度を吸光度で測定後、ハイブリダイゼーション用試料とした。
(3)DNAマイクロアレイにおけるハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション用cRNAの調製
1.500μgのcRNAを含むハイブリダイゼーション用試料にヌクレアーゼフリー水を加え、10μlに調製した。
2.得られた溶液に20μlのGEX‐HYBを加え、65℃で5分間インキュベートした。
ハイブリダイゼーション
1.専用チャンバーにセットしたHumanWG‐6 v3.0 Expression BeadChip(マイクロアレイ)に上記調製済みのcRNA溶液をアプライした。
2.専用チャンバーの蓋を閉めて、55℃で18時間インキュベートした。
(4)マイクロアレイの洗浄及び染色
1.Wash E1BC溶液中で、マイクロアレイのカバーを外した。
2.マイクロアレイを速やかにスライドラックにセットし、55℃に予熱しておいた1×High‐Temp Washバッファで10分間洗浄した。
3.マイクロアレイをWash E1BC溶液で5分間洗浄した。
4.マイクロアレイをエタノールで5分間洗浄した。
5.マイクロアレイをWash E1BC溶液で5分間洗浄した。
6.染色専用トレイに4mlのブロックE1バッファを入れ、マイクロアレイを1枚ずつセットし、室温で10分間ブロッキングを行った。
7.2mlのブロックE1バッファに対して2μlのストレプトアビジン‐Cy3を、染色専用トレイに加え、マイクロアレイを1枚ずつセットし、室温で10分間染色を行った。
8.マイクロアレイをWash E1BC溶液で5分間洗浄後、遠心により乾燥させた。
(5)スキャン及び数値化
1.Ilumina社専用スキャナにマイクロアレイをセットし、標準モードでスキャンを行った。
2.スキャン終了後、専用ソフトウェアBeadStudioを用いて、マイクロアレイ上の各スポットのシグナル強度を数値化した。
得られたデータは、VST(Variance Stabilizing Transformation)及びRSN(Robust Spline Normalization)を用いて正規化を行った。マイクロアレイ上に存在しない遺伝子に対するプローブにより測定される遺伝子の発現量である陰性対照に対するPresence Probabilityが0.05未満の遺伝子の発現量を有意と判断した。37名中、70%以上の患者でPresence Probabilityが0.05未満の遺伝子を以下の解析に用いた。
(6)遺伝子セットの選択
各遺伝子の発現量と生存期間との相関及び予後良好群と予後不良群との間の発現変動を基準として遺伝子を選択した。発現変動は、予後良好群の平均発現量を対照として、予後不良群の平均発現量の増加又は減少を評価した。遺伝子の発現量と生存期間との相関の統計学的解析には、Pearsonの積率相関係数、Spearmanの順位和係数を用いた。一方、予後良好群と予後不良群との間の発現変動の統計学解析には、3つの方法、Limma(Tusher VG et al. Significance analysis of microarrays applied to the ionizing radiation response, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2001, 98, 5116-5121)、SAM(Smyth GK, Linear models and empirical bayes methods for assessing differential expression in microarray experiments, Stat Appl. Genet. Mol. Biol., 2004, 3, Article3)、Rank Prod(Breitling R et al. Rank products: a simple, yet powerful,new method to detect differentially regulated genes in replicated microarray experiments, FEBS Lett, 2004, 573, 83-92)を用いた。
上記5つの方法で選択された上位300個の遺伝子から免疫又はがんに関連する遺伝子として選択した39個の遺伝子の遺伝子シンボルを表1に示す。
Figure 0006470044
(7)ゲノムDNAの抽出
上記で選択された遺伝子を対象としてSNP解析を行うために、各患者から採取されたヒト末梢血単核球をTrizol(インビトロジェン社)で処理することで得た有機溶媒層から以下の処理によりゲノムDNAを抽出した。
1.有機溶媒層100μlにエタノール100μlを加えて混合し、室温で5分間静置した。
2.4℃、20,000rpmで30分間の遠心後、上清を除去した。
3.沈殿を150μlの0.1Mクエン酸ナトリウム溶液に懸濁し、室温で30分間静置した後、4℃、20,000rpmで20分間の遠心後、上清を除去した。
4.上記3の操作を繰り返した。
5.沈殿を200μlの75%エタノールに懸濁し、室温で20分間静置した後、4℃、20,000rpmで10分間の遠心後、上清を除去した。
6.沈殿を完全に乾燥させた後、15μlの8mM水酸化ナトリウム溶液に溶解し、4℃で15時間静置した後、4℃、1,200rpmで10分間の遠心後、上清を回収してゲノムDNA溶液とした。
上記処理の結果、予後良好群の患者17名、予後不良群の患者21名から配列解析が可能なゲノムDNAが得られ、以下のDNA塩基配列の決定に用いた。
(8)HPのSNP解析
上記で選択された39個の遺伝子の内、HPのプロモータ領域に着目し、以下のダイレクトシークエンス法によりSNPを同定した。
1.まず、ゲノムDNA溶液を鋳型として、PCRによる増幅反応を行った。増幅反応は、2μlのゲノムDNA溶液を用いて、25μlの反応系で行った。増幅反応の条件は、94℃で3分→94℃で30秒→56℃で40秒→72℃で80秒を35サイクル繰り返した後、72℃で3分間とした。反応液の組成を次に示す。
1×Ex Taq Buffer
200μM dNTP Mixture
200nM HP‐F1 primer
200nM HP‐R1 primer
1U TaKaRa Ex Taq HS DNA polymerase(タカラバイオ社)
なお、Hp‐F1 primerの塩基配列は、tcagtgtcaccatgattatcca(配列番号2)、Hp‐R1 primerの塩基配列は、gatttaacacactaagccctttgg(配列番号3)である。
2.増幅反応後のDNA溶液9μlに、1μlのEo‐SAP(GEhealthcare社)を加え、37℃で30分間と80℃で30分間処理した後、BigDye(登録商標) Terminator v3.1 Cycle Sequence Kit(ライフテクノロジーズジャパン社)を用いて配列解析反応を行った。反応系は、当該キットによって提供されたプロトコルに従って調製した。配列解析用のプライマーは、HP‐R1 primerを用いた。
3.配列解析反応によって得られた溶液を用いて、Applied Biosystems 3130によって塩基配列を決定した。
(結果)
配列決定の結果、HP遺伝子の転写開始点から55塩基上流の塩基にSNP(rs5472)を同定した。同定したSNPの遺伝子型の分布を表2に示す。なお、以下では、rs5472の遺伝子型として、アデニンのホモ接合体を「AA」、グアニンのホモ接合体を「GG」及びアデニンとグアニンのヘテロ接合体を「AG」と省略することもある。
Figure 0006470044
遺伝子型がGGの患者5名全員が予後良好であった。一方、遺伝子型がAAの患者12名の内、11名が予後不良であった。なお、遺伝子型がAGの患者21名の内、11名が予後良好、10名が予後不良であった。
この結果により、当該SNPの遺伝子型がGGの場合には、AG又はAAである場合よりも、ペプチドワクチン療法後の生存期間が長く、ペプチドワクチン療法がより有効であったと言える。その逆に、当該SNPの遺伝子型がAAの場合には、AG又はGGである場合よりも、ペプチドワクチン療法後の生存期間が短く、ペプチドワクチン療法の有効性が乏しい傾向にあると言える。
(実施例2:rs5472の遺伝子型と再燃前立腺がん患者の生存期間との関係)
上記実施例1における予後良好群の患者及び予後不良群の患者に、さらに35名を加えた73名の再燃前立腺がん患者のゲノムDNAにおけるrs5472の遺伝子型を上記実施例1と同様に決定した。
(結果)
図3は、rs5472の各遺伝子型におけるペプチドワクチン療法開始後の日数に対する前立腺がん患者の生存率を示す。なお、本実施例でのp値は、ログランク検定で算出した。遺伝子型がGGの患者群は、AAの患者群と比較して、有意に生存期間が長かった(p=0.00114、ハザード比=0.4861)。また、AGの患者群は、AAの患者群と比較して、有意に生存期間が長かった(p=0.0259、ハザード比=0.5078)。
(実施例3:rs5472の遺伝子型と胃がん患者の生存期間との関係)
ペプチドワクチン療法を受けた胃がん患者43名について、ペプチドワクチン療法の開始後の生存期間とrs5472の遺伝子型との相関について調べた。胃がん患者のヒト末梢血単核球から、上記実施例1と同様にゲノムDNAを抽出し、rs5472の遺伝子型を決定した。
(結果)
図4は、rs5472の各遺伝子型におけるペプチドワクチン療法開始後の日数に対する胃がん患者の生存率を示す。遺伝子型がGGの患者群は、AAの患者群と比較して、有意に生存期間が長かった(p=0.0444、ハザード比=0.5681)。
(実施例4:表面プラズモン共鳴法によるSNPの遺伝子型の決定)
リアルタイムかつ高感度でrs5472の遺伝子型を決定するために、表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いた。SPR法によるSNPの遺伝子型の決定では、表面にプローブを固定したセンサチップに、標的核酸を含む試料溶液を接触させ、プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションを計測した。
まず、標的核酸を含む試料溶液として、PCR産物と合成核酸の溶液を調製した。PCRで増幅する対象は、rs5472の遺伝子型がAA、GG又はAGであるゲノムDNAを使用した。
(PCRサンプルの調製)
1.まず、rs5472の遺伝子型がAA、GG又はAGであるゲノムDNA溶液(10ng/μl)を鋳型として、PCRによる1次増幅反応を行い、763塩基のPCR産物を得た。1次増幅反応は、1μlのゲノムDNA溶液を用いて、20μlの反応系で行った。増幅反応の条件は、95℃で5分の後、94℃で30秒→59℃で30秒→72℃で20秒を35サイクル繰り返した後、72℃で3分間を経て4℃で終了とした。PCRの反応液の組成を次に示す。
Ex Taq(タカラバイオ社):10.0μl
5μM LEFT Primer:0.4μl
5μM RIGHT Primer:0.4μl
蒸留水:8.2μl
ゲノムDNA溶液:1.0μl
なお、ここでのフォワードプライマーの塩基配列は、agatggccacacacaaggtg(配列番号4)、リバースプライマーの塩基配列は、ccacgggagctgatgacata(配列番号5)である。
2.次に、763塩基のPCR産物の溶液を10000倍希釈した溶液を用いてPCRによる2次増幅反応を行い、rs5472の部位を含む90塩基のPCR産物を得た。2次増幅反応は、60μlの反応系で行った。増幅反応の条件は、95℃で5分の後、94℃で30秒→55℃で30秒→72℃で20秒を30サイクル繰り返した後、72℃で3分間を経て4℃で終了とした。PCRの反応液の組成を次に示す。
Ex Taq(タカラバイオ社):30.0μl
5μM LEFT Primer:12.0μl
0.5μM RIGHT Primer:3.0μl
蒸留水:13.5μl
763塩基のPCR産物の溶液(10000倍希釈):1.5μl
なお、ここでのフォワードプライマーの塩基配列は、ccagggccaaagtttgtaga(配列番号6)、リバースプライマーの塩基配列は、gggcatctgctggtcttttt(配列番号7)である。
3.そして、90塩基のPCR産物の溶液50μlに、2倍濃度のランニングバッファ(2倍希釈のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、0.1%TW20、3000mMの塩化ナトリウム及び2mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA))50μlと、50μMのLブロッカーを1μlと、50μMのRブロッカーを1μlとを加え、PCRサンプルとした。
なお、Lブロッカーの塩基配列は、cgtaattcctgtgtctacaa(配列番号20)であって、Rブロッカーの塩基配列は、ttatgctgccactagctcac(配列番号21)である。
(合成核酸サンプルの調製)
1.まず、rs5472の部位がアデニン又はグアニンである90塩基の核酸を合成した。rs5472の部位がアデニンである合成核酸の塩基配列は、ccagggccaaagtttgtagacacaggaattacgaaatggagaagggggagaagtgagctagtggcagcataaaaagaccagcagatgccc(配列番号22)である。一方、rs5472の部位がグアニンである合成核酸の塩基配列は、ccagggccaaagtttgtagacacaggaattacgaaatggaggagggggagaagtgagctagtggcagcataaaaagaccagcagatgccc(配列番号23)である。
2.次に、5μMの合成核酸溶液に、50μMのLブロッカー及びRブロッカー(いずれも合成核酸溶液の3倍量)を加え、12.5、25、50又は100nMになるようにランニングバッファ(1倍希釈のPBS、0.05%TW20、1500mMの塩化ナトリウム及び1mMのEDTA)で希釈して、rs5472の部位がアデニンである合成核酸を含む合成核酸サンプルA及びrs5472の部位がグアニンである合成核酸を含む合成核酸サンプルGを得た。
(プローブの固定化)
BiotinSAM膜を形成したセンサチップに、5チャンネル構成のポリジメチルシロキサン(PDMS)を装着しSPR装置にセットした。PBS−T溶液(1倍希釈のPBS及び0.05%TW20)で各チャンネルを十分に洗浄し、各チャンネルにPBS−T溶液を15μl入れ、1分間静置した。PBS−T溶液を取り除き、PBS−T溶液で希釈した0.025mg/mlのAvidin溶液を各チャンネルに15μl入れ、30分間静置した。途中、15分間経過後にピペッティングを行った。Avidin溶液を取り除き、PBS−T溶液で洗浄を行い、PBS−T溶液を15μl入れ、1分間静置した。各チャンネルのPBS−T溶液を取り除き、チャンネルに対応させてアデニン検出用プローブ、グアニン検出用プローブ又はチミン検出用プローブの溶液を15μl入れ、30分間静置した。途中、15分間経過後にピペッティングを行った。各チャンネルの溶液を取り除き、PBS−T溶液で洗浄を行い、PBS−T溶液を15μl入れ、1分間静置した。
アデニン検出用プローブの塩基配列は、ccccttctcca(配列番号8)である。グアニン検出用プローブの塩基配列は、cccctcctcca(配列番号9)である。チミン検出用プローブの塩基配列は、cccctactcca(配列番号10)である。
また、ハイブリダイズした場合に、rs5472の部位から1塩基5’末端側の部位(G)に対応する塩基(C)をグアニン、アデニン又はチミンに変更したプローブを設計した。すなわち、当該塩基をグアニンに変更したアデニン検出用プローブ、グアニン検出用プローブ及びチミン検出用プローブの塩基配列は、ccccttgtcca(配列番号11)、cccctcgtcca(配列番号12)及びcccctagtcca(配列番号13)である。当該塩基をアデニンに変更したアデニン検出用プローブ、グアニン検出用プローブ及びチミン検出用プローブの塩基配列は、ccccttatcca(配列番号14)、cccctcatcca(配列番号15)及びcccctaatcca(配列番号16)である。また、当該塩基をチミンに変更したアデニン検出用プローブ、グアニン検出用プローブ及びチミン検出用プローブの塩基配列は、ccccttttcca(配列番号17)、cccctcttcca(配列番号18)及びcccctattcca(配列番号19)である。
なお、実際には、上記各プローブの3’末端にリンカーとして3つのアデニンを付加し、リンカーの3’末端のアデニンには、センサチップに固定化するためのビオチンをさらに付加した。プローブは、50μMのTE溶液をPBS−T溶液で10μMに希釈して用いた。
(共鳴角の測定)
プローブを固定後、5チャンネル構成のPDMSを測定用PDMSに取り替え、センサチップ上に形成された反応槽を200μlのランニングバッファで洗浄し、200μlのランニングバッファを反応槽に入れ、ランニングバッファを反応槽に入れて45秒後の共鳴角を測定し、反応前の共鳴角とした。ランニングバッファを取り除き、上記で調製した100μlのPCRサンプル、合成核酸サンプルA又は合成核酸サンプルGを反応槽に入れ、ピペッティングし、5分間静置した。その後、PCRサンプル等を取り除き、反応槽を200μlのランニングバッファで洗浄し、200μlのランニングバッファを反応槽に入れ、ランニングバッファを反応槽に入れて45秒後の共鳴角を測定し、反応後の共鳴角とした。なお、測定後は、ランニングバッファを取り除き、20mMの水酸化ナトリウム溶液を反応槽に入れてピペッティングし、ランニングバッファで洗浄して、次のサンプルの測定を行った。
(結果)
反応前後の共鳴角の差である共鳴角の変化の大きさ(以下、単に「共鳴角変化量」とする)としてハイブリダイゼーションの強さを定量した。なお、共鳴角変化量は、単位をRUとする共鳴信号の強度で表され、1000RU=0.1°である。
図5は、rs5472の遺伝子型がAG、AA又はGGであるPCRサンプルの結果を示し、左側は補正なしの結果で、右側はチミン検出用プローブにおける共鳴角変化量をアデニン検出用プローブ及びグアニン検出用プローブの変化量それぞれから減じた結果である。(A)に示すように、塩基を変更していないプローブを用いた場合、アデニン検出用プローブのAAに対する共鳴角変化量は、GGに対する共鳴角変化量よりも大きいものの、グアニン検出用プローブのGGに対する共鳴角変化量は、AAに対する共鳴角変化量よりも小さかった。
一方、(B)、(C)及び(D)に示すように、グアニン、アデニン又はチミンに変更したプローブを用いた場合、アデニン検出用プローブ及びグアニン検出用プローブでは、それぞれAA及びGGにおける共鳴角変化量が特異的に大きかった。また、アデニン検出用プローブ及びグアニン検出用プローブでは、AGにおける共鳴角変化量が同程度であった。
図6は、合成核酸サンプルAの結果を示し、左側は補正なしの結果で、右側はチミン検出用プローブにおける共鳴角変化量をアデニン検出用プローブ及びグアニン検出用プローブの変化量から減じた結果である。(A)に示すように、塩基を変更していないアデニン検出用プローブを用いた場合の共鳴角変化量は、合成核酸サンプルAの濃度に依存して大きくなった。塩基を変更していないグアニン検出用プローブ及びチミン検出用プローブを用いた場合の共鳴角変化量は、アデニン検出用プローブの共鳴角変化量よりは小さかった。
一方、(B)、(C)及び(D)に示すように、グアニン、アデニン又はチミンに変更したプローブを用いた場合、グアニン検出用プローブ及びチミン検出用プローブにおける共鳴角変化量の上昇が抑制され、アデニン検出用プローブを用いた場合の共鳴角変化量を、より明確に識別できるようになった。
同様に、図7は、合成核酸サンプルGの結果を示す。(A)に示すように、塩基を変更していないグアニン検出用プローブを用いた場合の共鳴角変化量は、合成核酸サンプルGの濃度に依存して大きくなった。しかし、グアニン検出用プローブを用いた場合の共鳴角変化量は、アデニン検出用プローブ及びチミン検出用プローブを用いた場合の共鳴角変化量と、100nMの濃度を除いて同程度であった。
一方、(B)、(C)及び(D)に示すように、グアニン、アデニン又はチミンに変更したプローブを用いた場合、グアニン検出用プローブを用いた場合の共鳴角変化量を、より明確に識別できるようになった。
本実施例の結果より、rs5472の遺伝子型の決定は、SPR法を用いて可能である。特に、ハイブリダイズした場合に、rs5472の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がグアニン、アデニン又はチミンに変更されたプローブは、rs5472の遺伝子型をより高い精度で決定できる。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
本出願は、2012年9月3日に出願された日本国特許出願2012−193618号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2012−193618号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
本発明は、がんに対する免疫療法の有効性の予測に好適である。本発明を適用することにより、臨床現場においてがん患者に対する有効な治療方法としての免疫療法の選択に寄与するとともに、免疫療法の治療成績の向上にも貢献することが期待される。
1 台座
2 テーブル
3 制御部
4 蓋
5 蓄圧器
6 電磁弁
7 チューブ
8 電源部
9 解析部
10a、10b ピン穴
21a、21b ピン
22 温度調整部
23 測定部
41 ヒンジ
42 加圧穴
43 電磁石
100 マイクロチップ
101 試料注入部
102 洗浄バッファ注入部
103 PCR試薬注入部
104 抽出部
105 排出口
106 PCR部
107 流路
200 解析装置

Claims (19)

  1. 被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型を決定する決定ステップと、
    前記決定ステップで決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対するペプチドワクチン療法の有効性を予測する予測ステップと、
    を含み、
    前記予測ステップでは、
    前記決定ステップで決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合には、前記遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法が前記被検者に有効であると予測し、
    前記決定ステップで決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、前記遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法が前記被検者に有効でないと予測する、
    がんに対する免疫療法の有効性の予測方法。
  2. 被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型を決定する決定ステップと、
    前記決定ステップで決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対するペプチドワクチン療法の有効性を予測する予測ステップと、
    を含み、
    前記予測ステップでは、
    前記決定ステップで決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合には、前記遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法後の前記被検者の生存期間が長いと予測し、
    前記決定ステップで決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、前記遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法後の前記被検者の生存期間が短いと予測する、
    がんに対する免疫療法の有効性の予測方法。
  3. 前記がんは、
    前立腺がん又は消化器がんである、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のがんに対する免疫療法の有効性の予測方法。
  4. 前記試料は、
    血液である、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のがんに対する免疫療法の有効性の予測方法。
  5. 前記予測ステップでは、
    前記決定ステップで決定された遺伝子型に対応する、前記ペプチドワクチン療法の統計的に有意な有効性を予測する、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のがんに対する免疫療法の有効性の予測方法。
  6. ゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の部位を含む連続する少なくとも10塩基を、PCR産物の塩基配列中に含むように設計された、
    請求項1乃至5のいずれか一項に記載のがんに対する免疫療法の有効性の予測方法に用いるプライマー対。
  7. ゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の部位を含む連続する少なくとも10塩基を塩基配列中に含む核酸、又はその核酸に相補的な核酸を増幅したPCR産物にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、
    請求項1乃至5のいずれか一項に記載のがんに対する免疫療法の有効性の予測方法に用いるプローブ。
  8. 前記一塩基多型の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がグアニン、アデニン又はチミンである、
    ことを特徴とする請求項7に記載のプローブ。
  9. 請求項6に記載のプライマー対、請求項7に記載のプローブ及び請求項8に記載のプローブの少なくとも一つを含む、
    がんに対する免疫療法の有効性の予測用キット。
  10. がんに対するペプチドワクチン療法の有効性を予測するために使用されるマイクロチップであって、
    被検者から採取されたゲノムDNAを含む試料が注入される注入部と、
    前記注入部に注入された試料からゲノムDNAを抽出する抽出部と、
    前記抽出部で抽出されたゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の部位を含む領域を増幅する増幅部と、
    を備えるマイクロチップ。
  11. 請求項10に記載のマイクロチップと、
    前記マイクロチップで増幅された領域に含まれる前記一塩基多型の遺伝子型を決定する決定部と、
    前記決定部で決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対するペプチドワクチン療法の有効性を予測する予測部と、
    を備える解析装置。
  12. 被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型を決定する決定手段と、
    前記決定手段で決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対するペプチドワクチン療法の有効性を予測する予測手段と、
    を備えるがんに対する免疫療法の有効性の予測用キット。
  13. 前記予測手段では、
    前記決定手段で決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合には、前記遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法が前記被検者に有効であると予測し、
    前記決定手段で決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、前記遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法が前記被検者に有効でないと予測する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のがんに対する免疫療法の有効性の予測用キット。
  14. 前記予測手段は、
    前記決定手段で決定された遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合には、前記遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法後の前記被検者の生存期間が長いと予測し、
    前記決定手段で決定された遺伝子型がアデニンのホモ接合体の場合には、前記遺伝子型がグアニンのホモ接合体又はヘテロ接合体の場合よりも、前記ペプチドワクチン療法後の前記被検者の生存期間が短いと予測する、
    ことを特徴とする請求項1又は1に記載のがんに対する免疫療法の有効性の予測用キット。
  15. 前記がんは、
    前立腺がん又は消化器がんである、
    ことを特徴とする請求項1乃至1のいずれか一項に記載のがんに対する免疫療法の有効性の予測用キット。
  16. 前記試料は、
    血液である、
    ことを特徴とする請求項1乃至1のいずれか一項に記載のがんに対する免疫療法の有効性の予測用キット。
  17. 前記予測手段は、
    前記決定手段で決定された遺伝子型に対応する、前記ペプチドワクチン療法の統計的に有意な有効性を予測する、
    ことを特徴とする請求項1乃至1のいずれか一項に記載のがんに対する免疫療法の有効性の予測用キット。
  18. 被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型を決定する決定手段と、
    前記決定手段で決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対する免疫療法の有効性を予測する予測手段と、
    を備えるがんに対する免疫療法の有効性の予測用キットであって、
    前記決定手段は、
    前記ゲノムDNAにおける前記一塩基多型の部位を含む連続する少なくとも10塩基を塩基配列中に含む核酸、又はその核酸に相補的な核酸を増幅したPCR産物にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプローブを備え、
    前記プローブは、
    前記一塩基多型の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がグアニン、アデニン又はチミンである、
    がんに対する免疫療法の有効性の予測用キット。
  19. 被検者から採取された試料に含まれるゲノムDNAにおける、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースにrs5472として登録された一塩基多型の遺伝子型を決定する決定ステップと、
    前記決定ステップで決定された遺伝子型に基づいて前記被検者のがんに対する免疫療法の有効性を予測する予測ステップと、
    を含むがんに対する免疫療法の有効性の予測方法に用いるプローブであって、
    前記ゲノムDNAにおける前記一塩基多型の部位を含む連続する少なくとも10塩基を塩基配列中に含む核酸、又はその核酸に相補的な核酸を増幅したPCR産物にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、
    前記一塩基多型の部位から1塩基5’末端側の部位に対応する塩基がグアニン、アデニン又はチミンである、
    プローブ。
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