JP6462445B2 - 消臭性フロアマット用シート - Google Patents

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Description

本発明は、建造物の床面に貼り合せたり敷設したりする消臭性フロアマット用シートに関するものである。
建造物の屋内の床面は、多種多様の素材が使用されている。その中には、擦過や引き摺り、荷重等により傷が付きやすい素材も使用されている。そのため、床面を保護する目的で、柔軟性、衝撃吸収性を有する塩化ビニル系樹脂からなるシートを床面に貼り合せたり敷設したりするなどの対応がされている。
一方、近年、ペットブームによる人間と同じ居住空間で生活するペットの増大、またペット同伴の宿泊施設や多目的施設利用の拡大、生活の成熟化に伴う生活空間の気密性のアップ、アメニティー志向の生活スタイルの普及等により、ペットに起因する臭気への対応が必要となっているため、消臭性を有するシートが求められている。
フロアマットに消臭性を付与する方法としては、フロアマットを構成する材に消臭剤を練り込む方法とフロアマットを構成する材の表面に消臭剤を含有する塗膜を形成する方法とが挙げられるが、消臭性能の発現性から後者が優れているといえる。また、塩化ビニル系樹脂からなるシートは、塩化ビニル樹脂の特性により極性が高いため、基本的には塗工性(濡れ性)や密着性に優れている。そのため、フロアマットに消臭性を付与する方法としては、フロアマットを構成する材の表面に消臭剤を含有する塗膜を形成する方法が好適である。例えば、特許文献1には、基材シートに消臭性能を有する複合水酸化物縮合珪酸塩を含有する塗膜を設けたシートが開示されている。
一方、消臭剤としては経時変性が少ないことから無機系消臭剤が有用であるが、無機系消臭剤を含有する塗膜をフロアマットに設けると、フロアマットの透明性が低下して床材の視認性や意匠性(色味や質感など)を損なう傾向にある。塗膜を薄くしたり無機系消臭剤の添加量を抑えたりすることで透明性の低下は抑制することができるが、そうすると本来の目的である消臭性能が付与できないという問題があった。
特開2010−65101号公報
そこで本発明は、床面に貼り合せたり敷設したりするフロアマット用シートにおいて、フロアマット本来の柔軟性、衝撃吸収性、床面保護機能および視認性を有しながら、消臭性を有するフロアマット用シートを提供することを目的とする。
本発明は、このような知見の下、成し得たものであり、以下を要旨とする。
(1)塩化ビニル系樹脂からなる基材上に、シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂と無機系消臭剤とを含む塗膜が形成される消臭性フロアマット用シートであって、シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100重量部に対して無機系消臭剤が10〜50重量部含有されており、塗膜の厚みが0.5〜30μmであることを特徴とする消臭性フロアマット用シート。
(2)無機系消臭剤がリン酸ジルコニウムであることを特徴とする(1)に記載の消臭性フロアマット用シート。
本発明の消臭性フロアマット用シートは、フロアマット本来の柔軟性、衝撃吸収性、床面保護機能および視認性を有しながら、消臭性を付与することが可能であるため、様々な施設で好適に使用される。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の消臭性フロアマット用シートは、塩化ビニル系樹脂からなる基材に、シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂と無機系消臭剤とを含んでなる塗膜が設けられてなる。
なお、本明細書中において、「消臭性フロアマット用シート」を、単に「シート」と記載することもある。
本発明において、基材は、消臭性フロアマット用シートの柔軟性および衝撃吸収性を担うものである。
本発明の消臭性フロアマット用シートの基材を構成する塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル単独重合体や、塩化ビニルモノマーと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、塩化ビニルモノマーと高級ビニルエーテルとの共重合体、またはこれらの混合物が挙げられる。塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、マレイン酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、アクリル酸、酢酸ビニル等のオレフィン系モノマーやアクリル系モノマーが挙げられる。
塩化ビニル系樹脂は、単独で使用してもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
上記塩化ビニル系樹脂の重合度としては、1000〜2000が好ましく、更に好ましくは1000〜1500である。重合度が1000未満であると、溶融張力が低くシート成形が困難となる傾向にあり、重合度2000を越えると、シート加工温度が高くなり樹脂が分解しやすい傾向にある。
上記塩化ビニル系樹脂は、柔軟性を付与するために可塑剤が添加されてなる。可塑剤としては、フタル酸ジオクチルエステル(DOP)、フタル酸ジイソノニルエステル(DINP)、フタル酸ブチルベンジルエステル(BBP)、フタル酸ジイソデシルエステル(DIDP)、フタル酸ジウンデシルエステル(DUP)などに代表される一般のフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジオクチルエステル(DOS)、アゼライン酸ジオクチルエステル(DOZ)に代表される一般の脂肪酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリオクチルエステル系可塑剤、ポリプロピレンアジペート等に代表されるアジピン酸ポリエステル系可塑剤などの高分子系可塑剤、セバシン酸系可塑剤、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤、エポキシ化大豆油等が挙げられる。
可塑剤の添加量としては、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、30〜70重量部程度である。
基材には、上記可塑剤以外にも、必要に応じて光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、充填剤、顔料等を配合することが可能である。
塩化ビニル系樹脂に可塑剤および必要に応じて添加される各種添加剤を含有してなる塩化ビニル系樹脂組成物は、スーパーミキサーやヘンシェルミキサーなどで混合され、カレンダー法、押出法、インフレーション法等の適宜の手段により所定の厚さのシートに成形される。シートの厚さについては特に限定されないが、0.1〜5.0mm程度である。
上記基材上に設けられる塗膜は、シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂と無機系消臭剤を含んでなる。
シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を用いて塗膜を成すと、初期においても経時においても透明性に優れるとともに、無機系消臭剤の添加量が比較的少量であっても十分に消臭性が発現する。
また、シリコーン変性されていることによりタック性が抑制されているため、フロアマット用シートとして非常に好適である。
シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、ポリカーボネートイソシアネート、分子内に活性水素を有するシロキサン化合物からなる。
シロキサン化合物としては、片末端あるいは両末端に活性水素を有するジメチルポリシロキサンジオール、メチルフェニルポリシロキサンジオール、アミノ変性シリコーンオイル、両末端ジアミン変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル等が単独または併用して用いられる。
塗膜には消臭剤が含有されるが、本発明においては、経時変性がないことから無機系消臭剤を用いる。無機系消臭剤としては、シリカゲル、酸化亜鉛、リン酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ゼオライト、セピオライト、及び活性白土等が挙げられる。
本発明においては、この中でもリン酸ジルコニウムが好ましく用いられる。リン酸ジルコニウムは、化学吸着による消臭性能が発現するため、物理吸着によって消臭性能を発現する無機系消臭剤に比べ、臭気を別の物質に変化させるため、極めて消臭性能に優れる。
それ故、リン酸ジルコニウムは、少量の添加であっても十分に消臭性能が発現し、消臭性能に優れるといえる。
さらに、リン酸ジルコニウムは陽イオン交換能を有し塩基性のガスとイオン結合するため、アンモニアに代表される塩基性ガスの消臭効果が非常に高いため、ペットに起因する臭気の対応にも好適である。
上 記無機系消臭剤の添加量は、シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂固形分100重量部に対して、10〜50重量部である。無機系消臭剤の添加量が10重量部未満であると消臭性能が劣り、50重量部を超えると、無機系消臭剤の分散性が悪化したり、塗膜の透明性が悪化したりして床材の視認性や意匠性を損なったりする傾向にある。
無機系消臭剤の平均粒子径は0.5μm〜20μmのものが好ましい。無機系消臭剤は単一の消臭剤を使用してもよいし複数の消臭剤を組み合わせて使用してもよい。
本発明の消臭性フロアマット用シートの塗膜を構成する溶液(塗工液)を製造する方法としては、溶媒中に予めシリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を溶解して、その溶液中に無機系消臭剤を分散させる方法、溶媒中に予め無機系消臭剤を分散させた後、シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を溶解させる方法などを挙げられる。無機系消臭剤の分散には、例えば、単純なプロペラミキサーや、インクミル、ボールミル、ペイントシェーカー等の分散機を用いることが出来る。
なお、使用する溶媒については特に限定されない。
本発明の消臭性フロアマット用シートの塗膜は、基材フィルム上に積層するものであるが、その積層方法は特に制限されず、どのような方法であってもよい。例えば、グラビアコーター、ロールコーター、バーコーター、ドクターナイフコーター、ロータリスクリーン、ディップコート、スプレーコート、刷毛塗り等種々の方法が利用できる。
また、塗工液の乾燥方法としては、加熱乾燥が好ましく、具体的には熱風乾燥、赤外線乾燥、遠赤外線乾燥などが挙げられるが、熱風乾燥が好適である。熱風乾燥の熱硬化処理条件としては、基材が塩化ビニル系樹脂からなることを考慮して、温度60〜120℃、1〜5分程度が好ましい。
本発明の消臭性フロアマット用シートの塗膜の厚みは、0.5〜30μmである。塗膜厚みが0.5μm未満であると、消臭剤の添加量が上記範囲内にあっても、消臭性能に劣る。反対に塗膜厚みが30μmを超えると、塗膜の透明性が悪化し、床材の視認性や意匠性を損なう傾向にある。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
<実施例1〜8、比較例1〜5>
厚み1.0mmの塩化ビニル樹脂基材シート上に、表1に記載の処方の塗工液を所定量塗工し、60℃、3分加熱乾燥させて塗膜を形成し、消臭性フロアマット用シートを得た。
塗膜を構成する樹脂の固形分に対する消臭剤の添加量および乾燥後の塗膜厚みについては、表中に示すとおりである。
なお、表中の数値は重量部である。
Figure 0006462445
表中;
・ 樹脂1
シリコーン変性無黄変ポリカーボネートウレタン樹脂(樹脂固形分20%)
・ 樹脂2
無黄変ポリカーボネートウレタン樹脂(樹脂固形分25%)
・ 有機溶剤1
DMF
・ 有機溶剤2
酢酸エチル
・ 消臭剤1
シナネンゼオミック社製 ゼオミックHW10N 銀イオン含有ゼオライト
・ 消臭剤2
東亜合成社製 ケスモンNS−10 リン酸ジルコニウム
各実施例、比較例のシートの成形加工時の様子および得られたシートについて、以下の評価を行なった。
評価結果については、表中に示すとおりである。
<分散性>
表中に記載の塗工液を構成するすべての剤を混合した後の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
〇・・・分散状態が良好
×・・・凝集物やゲル化が散見される
<塗工性>
塗工液を基材シートに塗工した際の様子を観察し、以下の基準で評価した。
○・・・良好
×・・・ムラになる、はじく
<透明性>
塗膜形成後の各シートについて、JIS K 7105に準拠して全光線透過率を測定し、以下の基準で評価した。
〇・・・80%以上
×・・・80%未満
<タック性>
塗膜形成後の表面の触感について、以下の基準で評価した。
○・・・ベタツキがない
×・・・ベタツキがある
<消臭性>
得られた各シートについて、以下の方法で消臭性試験を行った。
※ 試験方法
試験容器:5LスマートバッグPA
使用ガス:アンモニア
容器内のガス量:3L
アンモニア初期濃度:100ppm
ガス測定方法:ガス検知管
サンプルサイズ:100cm
サンプリング:120分後のアンモニア濃度を測定
空試験:サンプルを入れずに120分後のアンモニア濃度を測定
上記試験で、アンモニアの減少率(%)を以下の基準で評価した。なお、減少率については、下式で求めた値である。
減少率(%)=(空試験の残存ガス濃度−各試験のサンプルのガス濃度)/空試験×100
◎・・・80%以上
○・・・70%以上80%未満
×・・・70%未満
なお、塗膜を設けていない基材シートのみの場合のアンモニアの減少率は7%であった。

Claims (2)

  1. 塩化ビニル系樹脂からなる基材上に、シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂と無機系消臭剤とを含む塗膜が形成される消臭性フロアマット用シートであって、シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100重量部に対して無機系消臭剤が10〜50重量部含有されており、塗膜の厚みが0.5〜30μmであることを特徴とする消臭性フロアマット用シート。
  2. 無機系消臭剤がリン酸ジルコニウムであることを特徴とする請求項1に記載の消臭性フロアマット用シート。

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