本発明の実施形態のセンサ基板を添付の図面を参照して説明する。以下の説明における上下の区別は便宜的なものであり、実際にセンサ基板等が使用される際の上下を限定するものではない。
センサ基板1は、絶縁基板2と、絶縁基板2の主面例えば上面に設けられた電極3aおよび接続パッド3cを含む配線導体3とを有している。なお、電極3aおよび接続パッド3cは絶縁基板2の上面だけでなく、下面に形成されていてもよい。
絶縁基板2は、例えば四角板状等の平板状であり、電極3aおよび接続パッド3cを含む配線導体3を電気的に絶縁して設けるための基体部分である。絶縁基板2は、例えば酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、ガラスセラミック焼結体、ジルコニア系セラミック(酸化ジルコニウム質焼結体)等のセラミック焼結体によって形成されている。絶縁基板2は、このようなセラミック焼結体からなる複数の絶縁層が積層されて形成されていてもよい。
絶縁基板2は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体からなる複数の絶縁層2aが積層されて形成されている場合であれば、以下の方法で製作することができる。まず、無機粒子となる、酸化アルミニウム(Al2O3)の粉末に焼結助材として酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化マンガン(Mn2O3)等の原料粉末を添加し、さらに適当なバインダ、溶剤および可塑剤を添加し、次にこれらの混合物を混錬してスラリー状となす。その後、従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等によってシート状に成形してセラミックグリーンシートを得て、セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともにこれを必要に応じて複数枚積層し、高温(約1300〜1600℃)で焼成することによって製作される。
なお、絶縁基板2は、アルミナおよびマンガンを含む結晶相と、マンガンを含有するガラス相とを含んでいる。
結晶相には、アルミナ以外に、ムライト、ジルコニア、窒化アルミニウムまたはガラスセラミックスなどの各種セラミックスを含んでいてもよい。
ガラス相は、少なくともMn2O3を含む非晶質相であり、Si、Mg、Ca、Sr、B、Nb、CrおよびCoから選ばれる1種以上の酸化物をさらに含んでいる。ガラス相は、好ましくはMn2O3、SiO2およびMgOを含む非晶質相である。
マンガンを含むガラス相は、アルミナ結晶相に対する濡れ性が良いため、焼成後の加熱処理で、ガラス相が結晶粒子表面を被覆しようとして、絶縁基板2の表層に浸み出し、ガラス相の多くが表層に存在するものと考えられる。
このようにマンガンを含有するガラス相が、電極3aが設けられた主面に露出するように存在することで、クラックの起点となる欠陥が少ない割れの生じにくい絶縁基板2が得
られる。アルミナを含む結晶相よりもガラス相のほうが、ヤング率が低いので、例えば排気ガスと接触したときに、絶縁基板2への水滴の付着による熱衝撃が緩和され、割れの発生を抑制できる。
なお、マンガンを含有するガラス相が、電極3aが設けられた主面に露出して存在することは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)によるセンサ基板1の表面および断面写真やX線光電子分光分析(XPS)によるセンサ基板1の主面の分析等で確認することができる。
図3(a)および(b)に示されるように、絶縁基板2と配線導体3との接触部における無機粒子2bの粒径が、配線導体3との非接触部における無機粒子2cの粒径よりも大きくなっている。このような構成を有することによって、絶縁基板2の無機粒子2bと配線導体3との接触部分が大きいものとなり、絶縁基板2と配線導体3との接合強度が向上されたものとなって、配線導体3の接合信頼性に優れるものとすることが可能となる。
なお、絶縁基板2と配線導体3との接触部における無機粒子2bの粒径、および配線導体3との非接触部における無機粒子2cの粒径の測定は、例えば、配線導体3が設けられた部分でセンサ基板1を縦断面視可能なように切断し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて1000〜3000倍の倍率で撮影して、画像解析装置(例えば三谷商事製WinROOF)を用いて
撮影した画像を解析することにより、無機粒子2b、および無機粒子2cの各粒子の面積を求め、この面積と等しい面積の円であるときの直径(円相当径)を算出すればよい。
また、焼結時に配線導体3表面の酸化物を無機粒子に固溶させることにより、絶縁基板2と配線導体3との接触部における無機粒子2bの粒径が、配線導体3との非接触部における無機粒子2cの粒径よりも大きいものとなる。
なお、絶縁基板2と配線導体3との接触部における無機粒子2bは、粒径が5μm〜15μmであることがより有効である。無機粒子2bの粒径が5μm以上であると、配線導体3と接触面積が大きくなるため、絶縁基板2と配線導体3との接合強度が向上されたものとなって、配線導体3の接合信頼性に優れたセンサ基板1を得ることができる。また、無機粒子2bの粒径が15μm以下であると、配線導体3からの酸化物の移動が少ないため、その結果、配線導体3の変形が抑制されたセンサ基板1を得ることができる。
また、絶縁基板2と配線導体3との非接触部における無機粒子2cは、粒径が0.3μm〜3.0μmとなっている。無機粒子2cの粒径が0.3μm以上であると、グリーンシート形成時に無機粒子2cが分散されやすく、その結果、密度の高い焼結体となって、強度や熱衝撃性に優れたセンサ基板1を得ることができる。また、無機粒子2cの粒径が3μm以下であると、絶縁基板2の無機粒子2cが均一な組織となりボイド等が減少するため、その結果、強度や熱衝撃性に優れたセンサ基板1を得ることができる。
なお、無機粒子2bの粒径が大きくなっているのが、絶縁基板2と電極3aとの接触部であると、電極3aの接合強度が向上されたものとなっているため、センサ基板1の検知における特性、信頼性が向上されたものとすることができ、好ましい。
また、無機粒子2bの粒径が大きくなっているのが、配線導体3が絶縁基板2から露出した部分、例えば、電極3aおよび後述する接続パッド3cと、絶縁基板2との接触部であると、センサ基板1が配置される環境において外力等の応力が加わりやすい、電極3aおよび接続パッド3cの接合強度が向上されたものとなっているため、外力等の応力が加わったとしても、電極3aおよび接続パッド3cが絶縁基板2から剥がれにくいものとなって、センサ基板1の信頼性が向上されたものとすることができ、好ましい。
また、無機粒子2bの粒径が大きくなっているのが、電極3a、後述する内部配線3bおよび接続パッド3cを有する配線導体3のすべてと、絶縁基板2との接触部であると、配線導体3のすべての接合強度が向上されたものとなっているため、上述の効果を含め、センサ基板1の検知における特性、信頼性がより向上されたものとすることができ、好ましい。
また、図3(b)に示されるように、接触部における無機粒子2bが配線導体3側に突出していると、絶縁基板2と配線導体3との接触部に沿って、外力等や絶縁基板2と配線導体3との熱収縮差による応力が配線導体3に加わったとしても、応力が無機粒子2bの突出した部分により分散され、配線導体3の接合信頼性が向上されたものとなり、センサ基板1の検知における信頼性がより向上されたものとすることができ、好ましい。
また、図3(a)および(b)に示されるように、接触部における無機粒子2bが、配線導体3の端部から配線導体3の端部の外側にかけて設けられていると、配線導体3の端部の接合強度がより向上され、配線導体3の剥がれの起点となる、配線導体3の端部が剥がれにくいものとなり、センサ基板1の信頼性がより向上されたものとすることができ、好ましい。
電極3aは、センサ基板1が配置される環境における、すす等の微粒子の含有量を測定するための部分である。すす等の微粒子が電極3aに付着したときに一対の電極3a間の電気抵抗が変化する。この電気抵抗の変化を検知することによって、電極3aが存在している環境中の微粒子の質量が算出され、検知される。この微粒子の質量、および電極3aが存在している環境におけるガスの流量(体積)により、そのガス中の微粒子の含有率が算出され、検知される。
センサ基板1が配置される環境とは、例えば自動車の排気ガスの排気通路である。センサ基板1で検知される微粒子の量が多くなれば、排気通路を流れる微粒子の含有量が大きくなったことが検知される。これにより、例えば排気ガスからすす等の微粒子を除去するDPF(Diesel Particulate Filter)の故障が検知できる。
電極3aは、微粒子の付着による抵抗値の変化を効果的に検知するためには、例えばくし歯状のパターン、または細長い長方形状(帯状)のパターンを含む線状のパターン等の、長さを長くすることが容易なパターンで形成されていることが好ましい。図1に示す実施形態では、電極3aが細長い長方形状のパターンである例を示している。
電極3aは、電極3a間の電気抵抗の変化を検知する金属材料として後述する第1金属材料を含有している。
この第1金属材料は、微粒子の分解反応に対して触媒不活性(以下、単に触媒不活性という)な卑金属系材料を主成分として含有している。微粒子は、例えばすす(カーボンの微粒子)である。なお、この第1金属材料の主成分である卑金属系材料は、その不動態膜を電極3aの表面(外部に露出した表面)に形成できるようなものとしてもよい。このような卑金属系材料としては、例えば鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロムおよびケイ素等を含む材料が挙げられる。
第1金属材料は、例えば電極3aに約80質量%以上含有され、電極3aの主成分となっている。電極3aは、この第1金属材料以外に、ガラスまたはセラミック等の無機成分が含有されていてもよい。これらの無機成分は、例えば絶縁基板2との同時焼成で電極3aを形成するときの、焼成収縮の調整用等の成分である。
センサ基板1が配置される環境とは、例えば自動車の排気ガスの排気通路である。センサ基板1で検知される微粒子の量が多くなれば、排気通路を流れる微粒子の含有量が大きくなったことが検知される。これにより、例えば排気ガスからすす等の微粒子を除去するDPF(デーゼルパーティキュレートフィルター)の故障が検知できる。
電極3aは、微粒子の付着による抵抗値の変化を効果的に検知するためには、例えばくし歯状のパターン、または細長い長方形状(帯状)のパターンを含む線状のパターン等の、長さを長くすることが容易なパターンで形成されていることが好ましい。
配線導体3は、電極3a、内部配線3bおよび後述する接続パッド3cを有している。内部配線3bは、絶縁基板2の内部に形成されており、例えば、絶縁基板2の上面の電極3aと後述する下面の接続パッド3cとを電気的に接続するための導電路である。内部配線3bは、絶縁基板2の内部に配置されたヒータを含むものでも構わない。図1(b)では、内部配線3bの一部が、絶縁基板2の主面に平行に配置されたヒータであるときの一例を示している。ヒータとしての内部配線3bは、例えば電極3aを予備加熱するための部分である。電極3aが予備加熱されている場合には、微粒子の付着に対して電極3aの抵抗値の変化がより鋭敏であり、微粒子の検知の精度が向上する。
また、内部配線3bは、例えば絶縁基板2の上面の電極3aから、絶縁基板2のうち電極3aが設けられている主面と反対側の他の主面(図1の例では下面)にかけて設けられている部分(図示せず)を含んでいてもよい。この場合には、電極3aが絶縁基板2の下面に電気的に導出される。なお、内部配線3bは、絶縁基板2の厚み方向の少なくとも一部を貫通する貫通導体(符号なし)を含んでいてもよい。また、内部配線3bは、絶縁層の層間に設けられた回路パターン状等の内部配線導体(図示せず)を含んでいてもよい。
センサ基板1において、絶縁基板2の上面および下面に外部接続用の接続パッド3cが設けられている。絶縁基板2の上面の接続パッド3cは、電極3aの端部に直接に接続されている。接続パッド3cは、この例では長方形状のパターンであり、短辺の長さ(幅)が電極3aの幅よりも大きい。接続パッド3cの幅が電極3aの幅よりも大きいため、電極3aの外部電気回路との電気的な接続が容易になっている。接続パッド3cを介して、外部電気回路(図示せず)と電極3aとが電気的に接続される。電極3aで検知された電気抵抗の変化等の信号が外部電気回路に伝送され、微粒子の検知および表示等の所定の処理が行なわれる。
また、絶縁基板2の下面の接続パッド3cは、内部配線3bのうち絶縁基板2の下面に電気的に導出された部分と直接に接続されている。これによって、内部配線3bと接続パッド3cとを互いに電気的に接続する導電路(符号なし)が形成されている。この導電路は、例えばヒータとしての内部配線3bと外部電気回路とを電気的に接続させるためのものであり、例えば、外部電気回路からヒータ(内部配線3b)に所定の電力が供給される。
絶縁基板2の上面および下面の接続パッド3cが、それぞれはんだまたは導電性接着剤等の導電性の接合材によって外部電気回路の所定部位に接合されれば、電極3aおよび内部配線3bと外部電気回路とが互いに電気的に接続される。
接続パッド3cと外部電気回路との電気的な接続は、例えばはんだ等の導電性接続材を介して行なわれる。また、接続パッド3cにあらかじめリード端子(図1および図2では図示せず)を接合しておいて、このリード端子を介して外部電気回路との電気的な接続を行なうようにしてもよい。
センサ基板1は、電極3aの表面部が白金を含んでいないため、例えばすすの酸化等の、被検知物の化学反応に対する触媒作用が、白金が含まれている場合に比べて効果的に低減されている。そのため、検知電極に付着した被検知物の酸化等が生じにくい。したがって、検知の精度が高いセンサ基板1を提供することができる。
また、電極3aの表面部が不動態膜3aaを含んでいる。そのため、電極3a全体が酸化する可能性が低減されている。したがって、検知の精度および長期信頼性が高いセンサ基板1を提供することができる。
電極3aに含有されている第1金属材料は、上記のように、不動態膜3aaの形成が容易な鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロムおよびケイ素の少なくとも一種を含む卑金属系材料を主成分としている。これらの卑金属系材料は触媒不活性であり、微粒子の分解等に対して触媒作用を有していない。電極3aを形成している第1金属材料は、例えばこのような卑金属系材料の少なくとも一種を約80質量%以上の割合で含有している。
電極3aを形成している第1金属材料の主成分が上記卑金属系材料であるときに、第1金属材料が他の金属成分を含有していても構わない。また、この他の金属材料は、必ずしも不動態膜を形成しやすい金属材料である必要はなく、他の金属材料(例えばタングステン等)であってもよい。
電極3aは、例えば次のようにして形成されている。すなわち、上記の卑金属系材料の粉末を有機溶剤およびバインダとともに混練して金属ペーストを作製して、この金属ペーストを、絶縁基板2となるセラミックグリーンシートの主面等に所定パターンで塗布する。金属ペーストの塗布は、例えばスクリーン印刷法によって行なう。その後、これらの金属ペーストとセラミックグリーンシートとを同時焼成する。以上の工程によって電極3aを有する絶縁基板2を作製することができる。
不動態膜3aaの厚みは、例えば0.1〜5μm程度に設定される。この程度の厚みであ
れば、電極3aの表面部が効果的に不動態膜3aaで覆われ、その全体または大部分が酸化するような可能性が効果的に低減される。
電極3aの表面部は、面積の割合で、その90%程度が不動態膜3aaを含んでいることが好ましい。言い換えれば、電極3aの露出表面のうち90%以上が不動態膜3aaで覆われていることが好ましい。これにより、電極3a全体に酸化が進行する可能性が効果的に低減される。
また、電極3aの表面部は、その全体が不動態膜3aaを含んでいることがより好ましい。言い換えれば、電極3aの露出表面の全域が不動態膜3aaで覆われていることがより好ましい。これにより、電極3a全体に酸化が進行する可能性がより効果的に低減される。
なお、不動態膜3aaが厚過ぎれば、電極3aの表面部の初期の抵抗(微粒子を含む環境中にセットされる前の抵抗)が大きくなり、微粒子の付着による電極3aの抵抗値の変化が検知されにくくなる。
電極3aの表面部に不動態膜3aaを形成するには、例えば上記の焼成を、微量の酸素および水分を含有する雰囲気で行なえばよい。焼成時に、卑金属系材料を含む金属材料の露出表面に不動態膜が生じる。また、上記金属材料で電極3aを形成した後、微量の酸素および水分を含む環境中で電極3aを含むセンサ基板1を熱処理するようにしてもよい。
この熱処理によって、金属材料の露出した表面部分が酸化し、不動態膜3aaが生じる。
一般には、このようなセンサ基板1の焼成工程では還元雰囲気または不活性雰囲気等の非酸化性雰囲気が用いられるが、非酸化性雰囲気による焼成では不動態膜3aaが効果的に形成されない。これに対して、上記のように雰囲気等の焼成条件を設定することによって不動態膜3aaを効果的に形成することができる。
不動態膜3aaは、例えば電極3aが主成分として鉄−ニッケル−クロム合金を含有する物である場合には、酸化鉄、酸化クロムおよび酸化クロムのうち少なくとも一種を含む酸化物層である。このように表面部に不動態膜3aaが存在することによって、電極3aの不動態膜3aaよりも内部に存在している鉄−ニッケル−クロム合金まで酸化が進行することが抑制される。
不動態膜3aaを形成する金属材料は、鉄−ニッケル−クロム合金を主成分として含むものであることが好ましい。すなわち、卑金属系材料が鉄−ニッケル−クロム合金であることが好ましい。これは、次のような理由による。すなわち、このような卑金属系材料を含む不動態膜3aaは、鉄、ニッケルおよびクロムを含む金属材料の酸化によって形成される。そのためには、電極3aに含有される金属材料が、鉄、ニッケルおよびクロムを含むものとされる。これらの金属材料は、例えば上記のように金属ペーストとして絶縁基板2(セラミックグリーンシート)との同時焼成によって電極3aを形成することが容易である。また、不動態膜3aaの形成が容易であり、電極3aの内部への酸化の進行もより効果的に抑制される。また、これらの卑金属は触媒作用を有していない、触媒不活性な金属である。
したがって、不動態膜3aaの形成の容易さ、つまりセンサ基板1としての測定の精度、信頼性および生産性等を考慮すれば、電極3aを形成する金属材料は、鉄−ニッケル−クロムを主成分とする合金材料であることが好ましい。
主成分の卑金属系材料として鉄−ニッケル−クロム合金を含有する金属材料の具体的な組成としては、例えば、鉄(Fe)1〜55質量%、ニッケル(Ni)20〜80質量%、クロム(Cr)10〜25質量%、チタン(Ti)0.1〜5質量%およびアルミニウム(Ai)0.1〜5質量であるものが挙げられる。
また、不動態膜3aaを形成する金属材料の主成分である卑金属系材料は、鉄およびクロムを含むものであってもよい。この場合にも、このような卑金属系材料を含む不動態膜3aaは、鉄およびクロムを含む金属材料の酸化によって形成され、電極3aに含有される金属材料が、鉄およびクロムを含むものとされる。この金属材料についても、金属ペーストとして絶縁基板2との同時焼成によって電極3aを形成することが容易である。また、不動態膜3aaの形成が容易であり、電極3aの内部への酸化の進行もより効果的に抑制される。また、これらの卑金属は触媒作用を有していない、触媒不活性な金属である。
したがって、不動態膜3aaの形成の容易さ、つまりセンサ基板1としての測定の精度、信頼性および生産性等を考慮したときに、電極3aを形成する金属材料は、鉄−クロムを主成分とする合金材料であってもよい。なお、鉄−クロム合金は、前述した鉄−ニッケル−クロム合金からニッケル成分が抜けたものとみなすこともできる。鉄−クロム合金は、鉄−ニッケル−クロム合金に比べて不動態化がより容易であるため、電極3aの表面部分に不動態膜3aaを形成することがより容易である。
なお、不動態膜3aaは、図2に示すように、電極3aの外気等の環境中に露出した表面部に設けられていればよい。電極3aのうち絶縁基板2と接する表面部には、必ずしも
不動態膜3aaが設けられている必要はない。
また、電極3aのうち内部配線3bと接する表面部に不動態膜3aaが設けられていない場合には、電極3aと内部配線3bとの間の接触抵抗を小さく抑えることが容易である。この場合には、センサ基板1としての電気特性を高める上で有利な構成の内部配線3bとすることができる。
不動態膜3aaは、例えば、電極3aが設けられた部分でセンサ基板1を縦断面視可能なように切断し、電極3aの表面部を電子線マイクロアナライザ(EPMA)分析またはX線回折分析等の方法で分析することによって検出することができる。また、この方法で、不動態膜3aaの厚みを測定することもできる。
内部配線3bは、例えば電極3aと同様の金属材料からなるものであり、その表面部に不動態膜(図示せず)を有するものであってもよい。また、内部配線3bは、白金または金等の酸化しにくい金属からなるものであってもよい。
また、接続パッド3cについても、例えば電極3aと同様の金属材料を用い、同様の方法で作製することができる。ただし、センサ基板1のうち電極3aおよびその周辺(例えば絶縁基板2の上面)のみが、微粒子等が含有されるガスの流路内に露出して用いられる場合であれば、接続パッド3cは、上記のような不動態膜を形成しやすい金属材料を含むものでなくても構わない。すなわち、このような場合には、接続パッド3cについて、高温のガス等によって酸化する可能性が小さいため、必ずしも電極3aのような耐酸化性を有するものである必要はない。
また、内部配線3bおよび接続パッド3cは、被検知物であるすす等の微粒子を検知するものではないため、触媒作用を有する金属材料からなるものであってもよく、それ以外の金属材料からなるものであっても、いずれでも構わない。すなわち、内部配線3bおよび接続パッド3cは、例えばタングステン、マンガン、コバルト、銅または金、もしくはこれらの金属材料を含む合金(例えばニッケル−コバルト合金等)であってもよい。内部配線3bおよび接続パッド3cについて、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなる絶縁基板2との同時焼成による形成の容易さ、絶縁基板2の対する接合の強度、および電気抵抗等の特性を考慮すれば、タングステンを主成分として含有するものが用いられてもよい。
また、接続パッド3cの露出表面に、ニッケルおよび金等のめっき層が被着されていてもよい。めっき層の被着によって、例えば接続パッド3cの酸化、腐食の抑制、および接続パッド3cと外部電気回路とを接続するはんだの濡れ性等の特性の向上が可能であり、センサ基板1としての信頼性等が向上する。
また、電極3aは、ケイ化モリブデン(例えばMoSi2)を主成分とする金属材料からなるものであってもよい。この場合、ケイ化モリブデンが上記卑金属系材料である。また、電極3aは、鉄−ニッケル−クロム合金とケイ化モリブデンとを主成分として含有するものであってもよい。
この場合には、例えば前述したガラス成分が電極3aに含まれているときに、鉄−ニッケル−クロム粒子およびケイ化モリブデンの粒子の間にガラス成分が入りにくくなる。そのため、この粒子間へのガラス成分の浸入による過焼結が発生しにくくなる。これにより、電極3aの耐酸化性がさらに向上する。
電極3aがケイ化モリブデンを含有する場合の含有量は、例えば約90〜100質量%に設
定される。これによって、上記の効果をより確実に得ることができる。
図4は、前述のセンサ基板1の変形例で、センサ基板1における要部を示す断面図であり、接続パッド3cおよびその周辺を示している。図4において図1と同様の部位には同様の符号を付している。なお、図4では絶縁基板2の下面側の接続パッド3cを例として挙げているが、以下に説明する事項は、絶縁基板2の上面の接続パッド3cに関しても同様である。なお、この変形例のセンサ基板1は、この要部以外は前述の実施形態のセンサ基板1と同様であり、同様の事項については説明を省略する。
変形例のセンサ基板1は、接続パッド3cは電極3aと同じ金属材料からなる。すなわち、接続パッド3cは、鉄−ニッケル−クロム合金または鉄−クロム合金等の鉄−クロム系合金を主成分とする第1金属材料によって形成されている。また、この接続パッド3cの表面にリード端子6が配置されている。このリード端子6は、接続パッド3cの露出表面の少なくとも一部に設けられた接合層7を介して接続パッド3cに接合されている。リード端子6、およびリード端子6とセンサ基板1とを含むリード付きセンサ基板9の詳細については後述する。なお、図4において、矢印の方向にリード端子6が位置合わせされ、接続パッド3cに接合される。
接合層7は、接続パッド3cと同じ金属材料を主成分として含有し、アルミニウムおよびケイ素の少なくとも一方を添加材としてさらに含有している第2金属材料によって形成されている。すなわち、接合層7は、鉄−ニッケル−クロム合金または鉄−クロム合金といった鉄−クロム系合金(第1金属材料)に、アルミニウムおよびケイ素の少なくとも一方が添加された第2金属材料によって形成されている。接合層7を形成している第2金属材料は、添加材の作用によって第1金属材料よりも融点が低くなっている。
そのため、接続パッド3c上にリード端子6を接合するときに、接続パッド3cを溶融させることなく接合層7のみを溶融させることができる。これによって、接続パッド3cにリード端子6を容易に接合することができる。
また、このリード端子6接合時に接続パッド3cの部分的な溶融等が生じる可能性が低減されるため、接続パッド3cとしてのパターンを所定のパターンに維持することが容易である。
また、接続パッド3cと同じ金属材料で電極3aが形成されているときに、電極3aの部分的な溶融等によるパターン変形を効果的に抑制することができる。さらに、このパターン変形に起因した電極3a同士の間の電気絶縁性の低下等を抑制することができる。
なお、接続パッド3cは、鉄−クロム合金を主成分としているとともに、アルミニウムを例えば0.1〜5質量程度含有しているものであってもよい。すなわち、接合層7におけ
る添加材に相当する成分が接続パッド3cに含有されていてもよい。このような場合には、接合層7におけるアルミニウム等の添加材の含有率を、接続パッド3cにおけるアルミニウム等の含有率よりも0.1〜5.0質量%程度大きくすればよい。
具体例を挙げれば、電極3aおよび接続パッド3cがともに鉄−クロム−アルミニウム合金であり、アルミニウムの含有率が5質量%程度であるときに、接合層7が、鉄−クロム−アルミニウム合金100質量部に外添加でアルミニウムが5質量%添加されたものであ
るときに、電極3aおよび接続パッド3cの融点はともに約1550℃程度である。これに対して、接合層7の融点は約1450℃程度である。したがって、リード端子6のろう付け温度(ピーク温度等)を約1480℃程度に設定すればよい。
第2金属材料における添加材の含有率は、主成分である鉄−クロム系合金100質量部に
対して外添加で0.1〜5.0質量部程度であることが好ましい。添加材の含有率が上記程度であれば、接合層7の融点を、第1金属材料からなる接続パッド3cの融点に比べて効果的に低くすることができる。
接合層7は、接続パッド3cの露出表面から絶縁基板2の主面にかけて設けられていてもよい。言い換えれば、絶縁基板2の主面から接続パッド3cの露出表面(例えば側面および上面)にかけて連続して接合層7が被着されていてもよい。接合層7は、絶縁基板2の主面から接続パッド3cの露出表面の全面にかけて連続して覆うものであってもよい。
この場合には、接合層7の添加材であるアルミニウムおよびケイ素が活性な材料であるため、絶縁基板2のアルミナやガラス成分と反応しやすく、互いの化学的な親和性が高い。そのため、接合層7と絶縁基板2とがより強固に接合する。したがって、この場合には、接合層7を介したリード端子6と接続パッド3cとの接合の強度の向上に対してより有効である。
なお、アルミニウムの方が、ケイ素に比べて酸化アルミニウム質焼結体等からなる絶縁基板2に対する接合の活性度がより高い。したがって、接合層7が絶縁基板2の主面まで設けられているときには、上記のような絶縁基板2に対する接合の強度の向上の観点からは、アルミニウムの方が添加材として好ましい。
例えば上記のセンサ基板1と、電極3aに電位を供給する電源部11とによって、実施形態の検出装置10が形成されている。なお、変形例のセンサ基板1を用いた場合でも、以下の例と同様の効果を有する検出装置10を、同様の方法で製作することができる。
電源部11の異なる電極(正極および負極等)は、互いに異なるリード端子6に接続されている。検出装置10について、電源部11から電極3aに約50ボルト(V)の電位が供給され、この電位による漏れ電流が検知される。この漏れ電流の値によって電極3aの抵抗値が検出される。電極3aの抵抗値は、例えば外部の測定検知回路(図示せず)によって測定される。また、この絶縁基板2に、電極3aの抵抗値の測定用回路(図示せず)が配置されていてもよい。
電源部11は、例えばすす検出回路としては、外部電源(図示せず)と電気的に接続された端子および整流器、変圧回路等であり、外部電源から所定の電力が伝送される部分である。伝送された電力が電源部11において、電極3aの抵抗値の測定に適した条件に整えられ、電極3aに伝送される。
電源部11と電極3aとの電気的な接続は、例えば前述した接続パッド3cと内部配線3bとを介して行なわれる。なお、図1においては、接続パッド3cと電源部11とを電気的に接続する導電性接続材等の接続用の導体を仮想線(二点鎖線)で模式的に示している。
上記実施形態の検出装置10は、上記構成のセンサ基板1を有していることから、検知の精度が高い。例えば、電極3aが白金からなる場合であり、微粒子であるすすが検知される雰囲気(排気ガス)の温度が約550℃程度の場合には、白金の触媒反応によってすすが
分解してしまい、すすが有効に検知されない。これに対して、実施形態のセンサ基板1であれば、電極3aが触媒不活性であるため、すすの分解が抑制され、微粒子としてのすすの含有率が高い精度で検知される。
図5(a)は図1に示すセンサ基板1および検出装置10の他の変形例を示す上面図であり、図5(b)は図1に示すセンサ基板1および検出装置10の他の変形例等を示す断面図
である。図5において図1および図4と同様の部位には同様の符号を付している。
図5(a)の例では、電極3aがくし歯状パターンである。また、二つの電極3aが、互いにかみ合うような位置関係で配置されている。この場合には、例えば平面視における絶縁基板2の大きさをできるだけ小さく抑えながら、電極3aの長さをより長くすることができる。電極3aの長さが長いほど、電極3aとしての抵抗値の変化が大きくなりやすい。また、ガス中の微粒子の検知が容易になる。すなわち、ガス中の微粒子の含有量が小さい場合でも、その微粒子をより確実に検知することができる。
したがって、この場合には、ガス中の微粒子の検知の精度および感度の向上、および平面視における小型化の点でより有利なセンサ基板1および検出装置10を提供することができる。
なお、図5(a)では、電源部11と電極3aとの電気的な接続を行なう接続パッド3c等の導体を仮想線(二点鎖線)で模式的に示している。
図5(b)の例では、絶縁基板2の上面および下面の接続パッド3cのそれぞれにリード端子6が接合されて、リード付きセンサ基板9が形成されている。リード端子6は、例えば上記のような接合層7を介して接続パッド3cに接合されている。
この場合には、リード端子6のうち接続パッド3cに接合されている端部と反対側の端部が外部電気回路の所定部位に接合され、電気的に接続される。すなわち、リード端子6を介してセンサ基板1(検出装置10)の外部電気回路に対する電気的および機械的な接続が行なわれる。電源部11の異なる電極(正極および負極等)は、互いに異なるリード端子6に接続されている。リード端子6を介したセンサ基板1と外部電気回路との機械的な接続が行なわれる場合には、リード端子6の弾性変形によって、センサ基板1の絶縁基板2と外部電気回路が設けられている樹脂基板等の外部基板(図示せず)との熱膨張差に起因した熱応力等の応力の緩和がより容易になる。したがって、この場合には、外部接続の信頼性等の向上に有利なセンサ基板1および検出装置10を提供することができる。
リード端子6は、接続パッド3cと同様に、微粒子の検知のためのものではない。そのため、リード端子6を形成する材料は、その用いられる環境、センサ基板1としての生産性および経済性等の条件に応じて、適宜選択されて構わない。例えば、リード端子6が白金または金等の耐酸化性に優れた金属材料からなるものであれば、検出装置10としての信頼性の点で有利である。また、リード端子6は、経済性等を重視して、鉄−ニッケル−コバルト合金等の鉄系合金、または銅等からなるもので形成しても構わない。また、リード端子6が鉄系合金からなるときに、その露出する表面が金めっき層等のめっき層で保護されていてもよい。
リード端子6の接続パッド3cに対する接合は、接合層7に限らず、例えば銀ろう(銀銅ろう材)または金ろう等のろう材(符号なし)によって行なわれていてもよい。ろう材についても、リード端子6と同様に、センサ基板1が製造または使用されるときの種々の条件に応じて、適宜その材料が選択される。
なお、リード端子6が接続パッド3cに接合される場合に、リード端子6と接続パッド3cとを接合する材料は、その材料の接続パッド3cに対する接合の強度、作業性および経済性等を考慮すれば、接合層7であることが好ましい。例えば、図5(b)の例のようにセンサ基板1として上記変形例のセンサ基板1を用いることが好ましい。言い換えれば、リード付きセンサ基板9において接続パッド3cとリード端子6とを接合している接合用の材料は、上記変形例における接合層7(溶融した後に固化したもの)であることが好
ましい。
上記のような変形例のセンサ基板1においては、接続パッド3c上に接合層7が設けられているため、接合層7を介してリード端子6を接続パッド3cにより容易に、かつ強固に接合することができる。
リード付きセンサ基板9においては、リード端子6のろう付け時の加熱によって第2金属材料の各成分(鉄、クロムおよびアルミニウム等)はいったん溶融した後に固化、再結晶化している。そのため、鉄−クロム系合金とアルミニウム等の添加材とは、接合層7において、互いに多結晶の構造でほぼ均一に分布し合っている。
また、接続パッド3cが絶縁基板2の下面から側面(端面)まで延びているものであってもよく、リード端子6が絶縁基板2の下面以外の露出表面に設けられているものであってもよい。
また、図5(b)の例では絶縁基板2の上下両面の接続パッド3cに接合層7を介してリード端子6が接合されているが、上面および下面のいずれか一方の面の接続パッド3cのみについてリード端子6の接合に接合層7が用いられていてもよく、上下面のいずれか一方のみにリード端子6が配置されていてもよい。