JP6458553B2 - 高炉出銑孔閉塞用マッド材 - Google Patents
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第1の問題点は、マッド材の流動性の温度依存性が大きいことである。従来のマッド材は、バインダーとしてコールタールを添加している。コールタールの粘性は温度依存性が高く、常温では見掛け上、固体のようにみえる。温度が数十℃以上に上がると適度な流動性を持つようになる。この温度依存性の高いコールタールと上述のような耐火原料を混合しているため、高炉出銑孔への良好な充填性を得るためには製造時に細やかな調整が必要となる。しかし、製造時に調整して出荷したとしても、実機である圧入機内の温度が異なれば、マッド材の流動性が変化する。例えば、待機時の温度が低い時にはマッド材の流動性が悪いためにマッドガンの圧入能力を超えてしまう振り切りと呼ばれる現象を引き起こすことがある。マッドガンの圧入能力を超えてしまうとそれ以上マッド材を充填できないために規定量のマッド材を炉内に充填できなくなってしまう。その場合、出銑口深度の低下、あるいは炉内の堆積基盤の形成を阻害するため炉底温度の上昇を招き、減風、減産など多大な被害を引き起こしてしまう可能性がある。逆に、温度が高すぎる場合、マッド材の流動性が良すぎてマッド材の可塑性が失われ高炉内への充填性が損なわれるとされる。このようなマッド材の温度によるバラつきは、マッドガンで待機している時の雰囲気温度や作業者のマッドガンの保温方法等により往々にして生じるため、温度管理が難しいという側面がある。それに対する対策としては、マッド材の流動性の温度依存性は小さいものが好ましく、その対策が望まれてきた。
例えば、特許文献1には、耐火骨材、耐火粘土及び焼結剤からなる閉塞材原料100重量部に対し、シリコンオイル0.01〜5重量部及びタール15〜40重量部を配合したことを特徴とする出銑口及び出湯口の閉塞材が開示されている。この閉塞材は、タールをバインダーとして用いたマッド材にシリコンオイルを配合することによって、マッド材の充填性能、乾燥性能および耐食性能を向上させようとするものである。ここで、シリコンオイルは、耐火材料粒子とタールとの界面に膜を形成し、タールの粘性が変化しても当初の可塑性を維持し且つタールの低分子量成分の耐火材料粒子への吸着あるいは浸透を防止し、更に、耐火材料粒子の潤滑剤としても作用する。このように、シリコンオイルは優れた効果を示すため、タールの配合量を少なくしても、マッド材の充填性能が低下する恐れはない。
また、非特許文献1のようにシリカ超微粉を配合すると、他の超微粉原料に比べて焼結性が高く加熱後の強度が高くなり、閉塞、待機時に焼成されたマッド材の強度が高くなりすぎて開孔時に横穴が発生する点が問題点があった。
更に、特許文献2に開示されるような変性ピッチ(固体ピッチ)と、常温で液体の油とを混合したバインダーでは、温度依存性は低減できるものの、残炭が少なく加熱後の強度が低く、閉塞、待機時にマッド材の強度が不十分となりマッド材が溶損、摩耗してしまい炉内の堆積基盤を形成することができないという問題点があった。また、コールタールを一度加熱することによってマッド材の流動性に影響する液分が蒸発してしまうためにマッド材の流動性が低下してしまうという問題点もあった。
上述のように、上記3つの問題点を同時に対策することは難しいと考えられてきたものの、依然としてその改善が求められていた。
ここで、前記バインダーの配合量は、耐火骨材100質量%に対し、外掛け10〜30質量%の範囲内であり、好ましくは12〜25質量%の範囲内である。該バインダーの配合量が、外掛けで10質量%未満では、十分に耐火骨材の隙間にバインダーが行き届かず、耐火骨材どうしが滑らず、充填性能が低下するため好ましくない。一方、該バインダーの配合量が、外掛けで30質量%を超えると、マッド材の強度の低下が著しく好ましくない。
本発明のマッド材の耐火骨材は、例えばアルミナ質、アルミナ・シリカ質、粘土質原料およびシリカ質原料から選択される1種または2種以上の耐火原料;炭素質原料;炭化珪素;窒化珪素系原料などから構成される。
耐火骨材:粗粒部および中粒部には、礬土頁岩を用い、微粉部には、仮焼アルミナ、ボールクレー、シリカヒューム、炭素原料としてコークス粉と黒鉛、並びに炭化珪素、フェロ窒化珪素を用いた;
低粘性タール:60℃での粘性が250cP、残留炭素が32質量%の無水タール;
高粘性タール:60℃での粘性が1100cP、残留炭素が35質量%の無水タール;
シリコンオイル:分子量74のメチルポリシロキサン。
「マッド材の流動性」:押し出し抵抗値(マーシャル値)の測定によって評価した。入口径φ60mm、出口径φ20mmのモールドに、温度を60℃に保持したマッド材を投入し、体積速度2.82cm3/秒で押し出した際の押し出し荷重(kgf)を測定し、押し出し抵抗値とした。押し出し抵抗値が大きい場合には、マッド材は変形し難く流動性が悪く、逆に、押し出し抵抗値が小さい場合は、変形し易い流動性の良いマッド材であると評価した。実機においては、マッド材の流動性が良すぎても、また悪すぎても好ましくないが、特に低温での流動性の劣るマッド材は振り切れが発生し易くトラブルを起こし易い。押し出し抵抗値は、1000kgf以上となるとマッド材として流動性が悪く、充填不良が発生するリスクが高まることから押し出し抵抗値は1000kgf未満となることが好ましい。なお、より好ましくは800kgf未満である。また押し出し抵抗は、100kgf未満となると流動性が良すぎるため可塑性がなく充填性が低下することから押し出し抵抗値は100kgf以上が好ましくない。なお、より好ましくは150kgf以上である;
「マッド材流動性の温度依存性」:60℃の押し出し抵抗値を100℃の押し出し抵抗値で割った数値とした。マッド材流動性の温度依存性が大きいほど使用時の温度のバラついた場合に振り切れを発生させ易い。マッド材流動性の温度依存性は、1.4未満が良好である。なお、より好ましくは1.2未満である;
「加熱後圧縮強さ」:混練後のマッド材を成形圧5MPaで160mm×40mm×40mmの金枠に成形し、300℃で24時間乾燥して硬化することにより試験片を作成した。試験片を電気炉に入れ、5℃/分で昇温して1500℃で3時間加熱した。冷却後、圧縮強度を、JIS R 2553「キャスタブル耐火物の強さ試験方法」に準拠して測定し、加熱後圧縮強さの測定方法とした。加熱後圧縮強さはマッド材を高炉に充填後した後に溶損、摩耗によって損傷されないように5MPa以上とする必要がある。なお、さらに好ましくは7MPa以上である。
「総合評価」:マッド材の流動性、マッド材流動性の温度依存性、焼結後の圧縮強さの評価において、3項目共により好ましい値にあるものを○、いずれも好ましい範囲にあるが、一つでもより好ましい範囲にないものを△、一つでも好ましい範囲に満たないものを×とした。
本発明品6〜10は、耐火骨材100質量%に対するバインダーの配合量を外掛けで20質量%に固定し、 バインダーとして低粘性タールとひまし油を使用し、バインダー中のひまし油の比率を20質量%から80質量%まで変化させたものである。いずれの場合も、60℃でのマーシャル値は1000kgf未満100kgf以上で、温度依存性は1.4未満で、加熱後圧縮強度も5MPa以上で、良好な結果が得られた。
本発明品11は、バインダーとして高粘性タールとあまに油を使用し、バインダー中のあまに油の比率を50質量%とし、耐火骨材100質量%に対するバインダーの配合量を外掛けで20質量%としたものである。60℃でのマーシャル値は1000kgf未満100kgf以上で、温度依存性は1.4未満で、加熱後圧縮強度も5MPa以上で、良好な結果が得られた。
本発明品12は、バインダーとして低粘性コールタールと菜種油を使用し、バインダー中の菜種油の比率を50質量%とし、耐火骨材100質量%に対するバインダーの配合量を外掛けで20質量%としたものである。60℃でのマーシャル値は1000kgf未満100kgf以上で、温度依存性は1.4未満で、加熱後圧縮強度も5MPa以上で、良好な結果が得られた。
本発明品13および14は、バインダーとして低粘性コールタールとひまし油を使用し、バインダー中のひまし油の比率を50質量%とし、耐火骨材100質量%に対するバインダーの配合量を外掛けで20質量%とし、更に、本発明品1〜12とは異なる耐火骨材の粒度構成としたものである。いずれの場合も、60℃でのマーシャル値は1000kgf未満100kgf以上で、温度依存性は1.4未満で、加熱後圧縮強度は5MPa以上で、良好な結果が得られた。
上述のように、本発明品は、いずれもマッド材の流動性が適正値であり、マッド材の流動性の温度依存性が低く、焼成後の圧縮強さが十分に高い、優れたものであることが解る。
比較品2は、バインダーの配合量が多いことから、加熱時の揮発分が多くなり、高気孔率となることによって十分な強度が確保できていない。
比較品3は、従来型のマッド材でバインダーに低粘性タールのみを使用した例である。マッド材流動性の温度依存性が大きいという問題点がある。
比較品4は、バインダー中のひまし油の比率が低いことから、マッド材流動性の温度依存性が大きくなっていた。
比較品5および6は、バインダー中の植物油の比率が高いことから、加熱時の揮発分が多くなり、高気孔率となることによって十分な強度が確保できなかった。
比較品7〜9は、低粘性タールとシリコンオイルを併用したものであるが、低粘性タールの温度依存性の影響が大きくマッド材流動性の温度依存性が大きくなっていた。
Claims (1)
- 耐火骨材及びバインダーからなる高炉出銑孔閉塞用マッド材において、耐火骨材100質量%に対し、ひまし油および菜種油からなる群から選択される1種または2種の植物油とコールタールの割合が植物油20〜80質量%、コールタール80〜20質量%で、植物油とコールタールを混合したバインダーを外掛けで10〜30質量%配合したことを特徴とする高炉出銑孔閉塞用マッド材。
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JP2015036559A JP6458553B2 (ja) | 2015-02-26 | 2015-02-26 | 高炉出銑孔閉塞用マッド材 |
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JP2015036559A JP6458553B2 (ja) | 2015-02-26 | 2015-02-26 | 高炉出銑孔閉塞用マッド材 |
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