JP5123992B2 - 高炉用出銑孔閉塞材 - Google Patents

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Description

本発明は、高炉の出銑孔に充填され閉塞するために用いられる出銑孔閉塞材に関する。
従来、高炉用出銑孔閉塞材(マッド材)として、アルミナ質原料、シリカ質原料、炭化珪素質原料、窒化珪素質原料、炭素質原料、粘土質原料、金属粉末等の耐火原料を、コールタールあるいはフェノールレジンなどのバインダー(結合剤)で混練したものが使用されている。
上記粘土質原料は、出銑孔閉塞材に必要とされる出銑孔への充填性を確保するため、可塑性を付与する目的で使用されている。しかし、この粘土質原料の添加量が増えるとバインダー添加量が増大し、また粘土鉱物の結晶構造中の含有水分やアルカリ成分などが低融点化合物を形成してスラグに対する耐食性が低下する。
近年、粘土質原料に替わる可塑性付与目的の原料としてカーボンブラックが使用されてきている(例えば、特許文献1〜3参照。)。カーボンブラックとは、天然ガス、炭化水素などの熱分解や不完全燃焼によって生成する微細な球状の炭素であり、製法によりチャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどの種類に分類される。これらの各種カーボンブラックは、粒径、比表面積、ストラクチャーなどが異なり、特性も大きく異なる。
特開平08−119754号公報 特開平10−36177号公報 特開2008−105891公報
最近の高炉の大型化、高圧操業による出銑量の増大、微粉炭等の吹き込みによるコークス比の大幅な低減、さらには高炉稼働年数の大幅な延長に伴い、高炉出銑孔閉塞材の使用条件は苛酷なものとなっている。そのため、高炉における出銑孔閉塞材に要求される特性も厳しくなってきている。特に重要な特性としては下記の3点が挙げられる。
(1)マッドガンによる出銑孔への充填が容易に行える施工時の押出性を有し、かつ開孔性が良いこと。
(2)出銑孔閉塞材を充填後、出銑孔閉塞材が短時間で焼結し、出銑孔開孔時に亀裂(横穴)が発生し難いこと。
(3)使用時の溶銑およびスラグによる化学的侵食に耐え、出銑孔径の拡大がなく、安定した出銑が長時間可能である耐食性を有すること。
上記特許文献1は、3%以下の粘土成分と、2〜20重量%のカーボンブラックを含有する出銑孔閉塞材を開示している。また、粘土成分を少なくしても良好なすべり性を確保するために、カーボンブラックの粒径は200nm以下が望ましいと開示している。しかしながら、特許文献1も開示しているように、市場で流通しているカーボンブラックの粒径は通常200nm以下である。したがって、特許文献1が望ましいと開示する粒径は、好適なカーボンブラックの特徴を実質的に規定するものではなく、特許文献1は、単に、カーボンブラックを添加した出銑孔閉塞材を開示しているといえる。この構成により、特許文献1は、カーボンブラックの添加により充填性および開孔性を損なうことなく耐食性が向上するとしているが、本願発明者らの検討によれば、添加されるカーボンブラックの種類(粒径を含む)によりその効果が大きく異なる。すなわち、このような特許文献1の開示内容に基づいて、上述の(1)〜(3)の特性を満足する出銑孔閉塞材を得ることはできない。
また、特許文献2は、結合材添加量の低減を目的として、DBP吸油量が100ml/100g以下のカーボンブラックを2〜15重量%含有する出銑孔閉塞材を開示している。結合材添加量が少なくなると、出銑孔閉塞材の材質強度が高まり耐食性が向上する。しかしながら、閉塞材が高強度になると、開孔し難くなるとともに開孔時に「横穴」が発生しやすくなるという問題がある。横穴とは、出銑孔に充填され、高炉内の熱によって硬化した閉塞材を開孔機(ドリル)により開孔するときに、高炉内の閉塞材に形成される亀裂を意味する。この横穴が発生すると、その横穴に溶銑や溶滓が侵入して開孔機のドリルを溶損させてしまうため、スムーズな開孔作業ができなくなる。
さらに、特許文献3は、DBP(フタル酸ジブチル)吸油量が10〜80ml/100gのカーボンブラック3〜10重量%とシリカ超微粉を使用し、有機バインダーを外掛けで10〜17重量%の割合で配合した出銑孔閉塞材を開示している。この構成によれば、出銑孔閉塞材の耐食性は向上するが、材質強度が高くなるため、特許文献2の技術と同様、横穴が発生しやすくなる。
以上のように、従来技術では、出銑孔閉塞材に求められる上述の(1)〜(3)の特性のすべてを満足できるものはなかった。
本発明は、上記従来の事情を鑑みて提案されたものであって、開孔時の横穴発生の抑制と、溶銑やスラグに対する優れた耐食性とを両立でき、安定した出銑が可能な高炉用出銑孔閉塞材を提供することを目的とする。
本願発明者らは溶銑やスラグに対する耐食性を維持しつつ、横穴発生を抑えるための出銑孔閉塞材の材料強度を抑制する方法を鋭意研究し、本発明に至った。従来は上記各特許文献が開示するように、粒径範囲が1種類のカーボンブラック原料を使用していたが、本願発明者らは、少なくとも2種類の粒径の異なるカーボンブラック原料を組み合わせることが、耐食性を維持しながらも、材質強度を抑制した出銑孔閉塞材の実現に有効であることを見い出した。
すなわち、本発明に係る高炉用出銑孔閉塞材は、粒径が60〜120nm、かつDBP吸油量が10〜50ml/100gの第1のカーボンブラック2〜10質量%と、粒径が10〜50nm、かつDBP吸油量が100ml/100g以下(ただし、80ml/100g以上を除く)の第2のカーボンブラック0.5〜6.0質量%とを含有する。
なお、本願明細書において、粒径は、一般的なメーカーカタログ値として採用されている、電子顕微鏡による観察に基づいて求めた算術平均径を意味する。一般的に市場に流通しており、容易に入手可能なカーボンブラックの粒径は10〜150nmである。また、DBP吸油量は、JISK6221に準拠して測定される値である。
本発明によれば、粒径の異なる少なくとも2種類のカーボンブラックを使用することにより、バインダー添加量が少なく、かつ、耐食性と開孔性を両立できる出銑孔閉塞材を提供することが可能となる。
押し出し抵抗圧力を測定するために使用したステンレス製試料ホルダーの形状を説明するための図。 押し出し抵抗圧力を測定するために使用した測定装置を説明するための図。
本発明に係る高炉用出銑孔閉塞材は、粒径が60〜120nm、かつDBP吸油量が10〜50ml/100gの第1のカーボンブラック2〜10質量%と、粒径が10〜50nm、かつDBP吸油量が100ml/100g以下(ただし、80ml/100g以上を除く)の第2のカーボンブラック0.5〜6.0質量%とを含有することを特徴とする。
まず、第1のカーボンブラックについて説明する。上述のように、カーボンブラックは、粘土質原料と同等の可塑性を高炉用出銑孔閉塞材に付与することができる。そのため、第1のカーボンブラックの使用によっても、可塑性付与を目的として添加する粘土質原料を低減でき、耐食性の低下を抑制することができる。また、この第1のカーボンブラックは、DBP吸油量が10〜50ml/100gと比較的少ないので混練時にタールといった結合剤の添加量を減らすこともできる。
なお、当該第1のカーボンブラックの粒径が60nm未満であると、比表面積の増大よりDBP吸油量が相対的に大きくなり、添加すべき結合材の量が増大して耐食性が低下するため好ましくない。また、第1のカーボンブラックの粒径が120nmを超えると、焼結抑制効果が小さくなり、横穴が発生しやすくなるため好ましくない。第1のカーボンブラックのより好ましい粒径の範囲は70〜90nmである。また、第1のカーボンブラックのDBP吸油量が10ml/100g未満であると焼結抑制効果が小さくなるため好ましくない。一方、第1のカーボンブラックのDBP吸油量が50ml/100gを超えると耐食性が低下するため好ましくない。本発明に使用するカーボンブラックのDBP吸油量は20〜35ml/100gの範囲がより好ましい。さらに、第1のカーボンブラックの添加量が2質量%未満だと、添加効果が小さくなるため好ましくない。また、第1のカーボンブラックの添加量が10質量%を超えると、強度低下が著しくなるため好ましくない。第1のカーボンブラックの添加量は、3〜6質量%がより好ましい。
特に限定されないが、このような第1のカーボンブラックとして、例えば、サーマルブラックを使用することができる。粒径が60nm以上と比較的大きなカーボンブラックの1種であるサーマルブラックは、蓄熱した炉でガスの燃焼と分解とを繰り返して製造される。サーマルブラックは、流通しているカーボンブラックの多数を占めるファーネスブラックよりも粗粒形状である。また、サーマルブラックはDBP吸油量が他のカーボンブラック(ファーネスブラック等)よりも少なく、ストラクチャーが発達していないため孤立した球状粒子として存在しやすい。そのため、出銑孔閉塞材のスベリ性(充填性)を確保するための、タールなどの結合剤の添加量をより抑えることができるとともに、出銑孔閉塞材の気孔率を低下させることができ、耐食性の向上がより期待できる。なお、粒径が60〜120nm、かつDBP吸油量が10〜50ml/100gを満たす限り、サーマルブラック以外のカーボンブラックを用いることができる。
続いて、第2のカーボンブラックについて説明する。第1のカーボンブラックと同様、第2のカーボンブラックの使用によっても、耐食性を低下させる粘土質原料を低減することができる。また、第2のカーボンブラックの少量の添加は、出銑孔閉塞材の組織の焼結を抑制し、かつ出銑孔閉塞材組織の気孔を塞ぎ、気孔率を低減させる効果を奏する。すなわち、上述した第1のカーボンブラックは、第2のカーボンブラックのような、粒径のより細かいカーボンブラックと比較すると焼結抑制効果が低い。そのため、第1のカーボンブラックのみの使用では過焼結により高強度となり、開孔難となる可能性がある。しかしながら、第2のカーボンブラックを使用することにより、これを防止することができる。つまり、タール添加量を削減でき耐食性の向上に効果を奏する第1のカーボンブラックと、閉塞材組織との間の気孔を塞ぎ気孔率を低減する効果を奏する第2のカーボンブラックを併用することにより、開孔しやすい低強度材質でありかつ耐食性に優れる出銑孔閉塞材の提供を可能にしている。
第2のカーボンブラックは、第1のカーボンブラックと比較すると比表面積が大きいため、逆に、第2のカーボンブラックのみの使用では、タールといった結合剤の添加量が著しく増加する。結合剤添加量が増加すると気孔率が上昇し、耐食性が低下する。しかし、第1および第2のカーボンブラックを併用することで、結合材添加量の増大を抑制しつつ、出銑孔閉塞材の組織の焼結を抑制することができる。特に、20〜30nmのカーボンブラックは粒径の細かさから出銑孔閉塞材組織に分布する気孔を塞いで、気孔率を低下させ、スラグに対する耐食性の向上に極めて有効である。
なお、第2のカーボンブラックの粒径が10nm未満であるとタール添加量が著しく増えるため好ましくなく、また、粒径が50nmを超えると気孔率低減効果が小さくなるため好ましくない。この第2のカーボンブラックの粒径は20〜30nmであるのがより好ましい。また、第2のカーボンブラックのDBP吸油量が100ml/100gを超えると、タール添加量が著しく増えるため好ましくない。第2のカーボンブラックのDBP吸油量は40〜60ml/100gであることがより好ましい。さらに、第2のカーボンブラックの添加量は0.5質量%未満であると、添加効果が少なくなるため好ましくない。一方、第2のカーボンブラックの添加量が6.0質量%を超えるとタール添加量が著しく増えるため好ましくない。第2のカーボンブラックの添加量は1〜3質量%がより好ましい。
本発明に係る出銑孔閉塞材に使用される、第1および第2のカーボンブラック以外の耐火原料の種類は従来の出銑孔閉塞材と同様である。主材として、例えば、アルミナ質原料、粘土質原料、炭化珪素質原料、窒化珪素質原料、炭素質原料等を用いることができる。また、所望の特性が得られる範囲であれば、閉塞充填時の可塑性をさらに付与するために、シリカフューム、粘土質原料等を添加することも可能である。なお、本発明では、後述のように、バインダーの添加量を、バインダーを除く他の原料に対して外掛けで規定するため、便宜上、耐火原料にバインダーは含まないものとする。
アルミナ原料としては、耐食性向上のためにAl含有量が80質量%以上のボーキサイト、礬土頁岩、あるいはAl含有量が95質量%以上の電融アルミナ、焼結アルミナ、仮焼アルミナ等を使用する。アルミナ質原料は耐火原料中30質量%以下で添加されることが好ましい。30質量%を超えるとスラグに対する耐食性が低下するため好ましくない。特に、好ましい範囲は、20〜30重量%である。なお、耐食性を確保するために耐火原料としてアルミナ原料を使用することが好ましいが、耐火原料の配合としてアルミナ原料無添加を採用することもできる。この場合、アルミナ原料に代えてシリカ質原料であるロー石を使用することができる。また、ロー石は、上述の範囲のアルミナ原料に加えて、耐火原料に添加してもよい。
粘土質原料は、ここでは、主として、出銑孔閉塞材を高炉出銑孔へ充填するときの作業性に要求されるすべり性を付与する目的で使用される。粘土質原料は、耐火原料中2〜10質量%の範囲で添加されるのが好ましい。粘土質原料が2質量%未満であると出銑孔閉塞材を出銑孔に充填するときのすべり性が低下し、10質量%を超えると耐食性が低下するため好ましくない。
炭化珪素質原料は必要に応じて使用することができる。炭化珪素質原料の使用は、特に、スラグへの耐食性に有効であるため使用することが好ましい。炭化珪素質原料は耐火原料中30質量%以下で添加されるのが好ましい。30質量%を超えると溶銑に対する耐食性が劣る傾向にあるためである。
窒化珪素質原料には、窒化珪素、窒化珪素鉄が挙げられ、どちらか単品、または両方を混合したものを使用することができる。窒化珪素質原料は耐火原料中10質量%以上添加するのが好ましい。窒化珪素質原料が10質量%未満であると添加効果が小さく、本来の窒化珪素質原料の添加効果(SiCボンドの形成)を発揮できない。
炭素質原料としては、本発明に挙げたカーボンブラックの他に、炭素含有量が80質量%以上の石油コークス、石炭コークス、無煙炭、天然黒鉛、人工黒鉛等の1種または2種以上を炭素源として、必要に応じて使用することが可能である。
さらに、強度発現効果を図るため必要に応じて各種金属粉末を添加してもよい。金属源としては、アルミニウム、シリコン、フェロシリコン、チタン、Al−Si合金、二硼化マグネシウム(MgB)等が適用可能である。
バインダー(結合剤)はタール類、ピッチ類、フェノール樹脂類などの熱可塑性炭素質樹脂を用いることができる。その添加量は耐火原料に対し外掛けで5〜30質量%の範囲が好ましい。また、必要によってはこれらのバインダーに対し、クレオソート等の溶剤を添加することも可能である。
なお、上述した第1および第2のカーボンブラック以外の耐火原料の配合は、特に好ましい配合の例示であり、本発明の効果を奏する範囲において、適宜、変更可能である。
以下に実施例および比較例を提示して、本発明の出銑孔閉塞材を説明する。
表1に示す配合割合で耐火原料の配合物を作成し、得られた配合材料を約5分間混練し、60℃に保温したバインダーを添加して約30分間混練した。なお、実施例1〜6および比較例1〜7では、バインダーとして無水コールタールを使用した。無水コールタールの添加量は押し出し抵抗測定(マーシャル試験)により約350kgf(当社試験機による総荷重)になるように調整した。この押し出し抵抗は図1に示す、ステンレス製試料ホルダー1に60℃で保温した練り土を充填し、図2に示す測定装置5を用いて測定したものである。図1に示すように、試料ホルダー1は、下方に向かって内径が縮小する内径テーパ部と、当該内径テーパ部上方の同一内径部とを有し、外径L1=90mm、同一内径部内径L2=60mm、全長L3=260mm、内径テーパ部長さL4=120mm、内径テーパ部下端内径L5=20mmである。図2に示す測定装置5は、上記試料ホルダー1の同一内径部上端側から、試料ホルダー1の同一内径部に嵌合するシリンダーヘッド2を挿入したときの、上記試料ホルダー1の内径テーパ部下端側に台座3を介して対向して配置した試料押し出し用面板4にかかる総荷重として、押し出し抵抗を測定する。なお、シリンダーヘッド2の押し出し速度は10mm/秒である。
また、各実施例および比較例は、約5MPaの成形圧で40×40×160mmに成形し、1500℃で3時間にわたり還元加熱した供試体について曲げ強さおよび見掛気孔率を測定している。さらに、耐食性試験は、回転アーク炉浸食試験法により、銑鉄と高炉スラグを浸食剤として使用し、還元雰囲気、1550℃で6時間にわたり試験を行った後、供試体を切断し、浸食寸法を測定し、比較例1の浸食寸法を100としたときの浸食寸法を指数化して溶損指数としている。溶損指数が小さいほど、耐食性が良いことを示す。これらの結果を表1に示す。表中の◎、○、△、×の記号は、曲げ強さ、見掛気孔率、耐食性の各項目を評価したものである。◎はとても良い、○は良い、△はいま一つ、そして×は不良を示している。
Figure 0005123992
アルミナ、ロー石、炭化珪素、窒化珪素鉄、コークス粉、粘土質原料、および粒径30nm、DBP吸油量110ml/100gのカーボンブラックを含む耐火骨材を使用し、バインダー(結合剤)として無水コールタールを使用した比較例1に対し、実施例1は粒径47nmのカーボンブラック(第2のカーボンブラック)を1質量%、粒径80nmのカーボンブラック(第1のカーボンブラック)を4質量%添加した配合である。実施例1は比較例1と比べ、1500℃加熱後の曲げ強さは同程度であるが、見掛気孔率が低下し、溶損指数も低下している。つまり、実施例1は、高強度となることを抑制しかつ耐食性が向上したことを示している。
実施例2では粒径24nmのカーボンブラック(第2のカーボンブラック)を1質量%、粒径80nmのカーボンブラック(第1のカーボンブラック)を4質量%添加した配合である。実施例2は、実施例1よりさらに気孔率が低下し、耐食性が向上している。
実施例3は、粒径24nmのカーボンブラック(第2のカーボンブラック)を3質量%、粒径80nmのカーボンブラック(第1のカーボンブラック)を6質量%添加した配合である。実施例3は、実施例2よりさらに気孔率が低下し、耐食性が向上している。しかしながら、カーボンブラックは高価であることから、コスト面を考慮した場合には実施例3よりも実施例2の配合の方が有益な場合もあると考えられる。
また、粒径24nmのカーボンブラック(第2のカーボンブラック)を1質量%、粒径80nmのカーボンブラック(第1のカーボンブラック)を2質量%添加した配合である実施例4、粒径24nmのカーボンブラック(第2のカーボンブラック)を1質量%、粒径80nmのカーボンブラック(第1のカーボンブラック)を8質量%添加した配合である実施例5、および粒径24nmのカーボンブラック(第2のカーボンブラック)を5質量%、粒径80nmのカーボンブラック(第1のカーボンブラック)を2質量%添加した配合である実施例6に関しても同様に、2種類のカーボンブラックを添加することにより比較例1と比較して耐食性の向上が認められる。
以下、各比較例1〜7について簡単に説明する。
比較例1は粒径30nm、DBP吸油量110ml/100gのカーボンブラックを5質量%添加した配合であり、特許文献1に開示されている2〜20重量%のカーボンブラックを含有するものである。実施例1〜6と比較し、タール添加量が多く、気孔率が高く、耐食性の低下が認められた。したがって、DBP吸油量が100ml/100gより大きなカーボンブラックを使用するとタール添加量が著しく増加するため、使用するカーボンブラックのDBP吸油量は100ml/100g以下であることが望ましいといえる。
比較例2は粒径80nm、DBP吸油量28ml/100gのカーボンブラックのみを5質量%添加した配合である。比較例1に比べて、タール添加量が削減されているが、強度が増大しており、開孔性の低下が懸念される。
比較例3は粒径24nm、DBP吸油量53ml/100gのカーボンブラックのみを5質量%添加した配合であり、特許文献2に開示されている内容に含まれる配合である。このような粒径が24nmと細かいカーボンブラックのみを使用した場合は、タール添加量が多く、実施例1〜6と比較して耐食性も低い。
比較例4は特許文献3に開示されているシリカ超微粉を5重量%と粒径80nm、DBP吸油量28ml/100gのカーボンブラックを5重量%含む配合である。実施例1〜6と比較し強度が高くなっており、開孔性の低下が懸念される。
比較例5は粒径24nm、DBP吸油量53ml/100gのカーボンブラックを4質量%、粒径80nm、DBP吸油量28ml/100のカーボンブラックを1質量%添加した配合である。実施例1〜6と比較すると、タール添加量が多めであり、かつ明らかな耐食性の向上は認められない。
比較例6は粒径24nm、DBP吸油量53ml/100gのカーボンブラックを4質量%、粒径80nm、DBP吸油量28ml/100のカーボンブラックを12質量%添加した配合である。比較例5と同様にタール添加量が多めであり、強度の低下が著しく、また耐食性も低下している。
比較例5、比較例6および実施例1〜6の結果より、粒径80nm、DBP吸油量28ml/100のカーボンブラックの添加量は2〜10質量%が有効であるといえる。
比較例7は粒径24nm、DBP吸油量53ml/100gのカーボンブラックを7質量%、粒径80nm、DBP吸油量28ml/100のカーボンブラックを4質量%添加した配合物である。比較例1と同様に、著しくタール添加量が増大しており、実施例1〜6と比較して明らかな耐食性の低下が認められた。この結果より粒径24nm、DBP吸油量53ml/100gのカーボンブラックの添加量は6質量%以下が有効であるといえる。
以上の結果より、粒径の異なるカーボンブラックを併用し、かつ添加量を規定することで、強度を抑制し(適度な強度を維持)、かつ、タール添加量を削減し、耐食性を向上させることが可能になるものと考えられる。
また、上記実施例においては、バインダーとして無水コールタールを使用した例を説明したが、他のタール類、ピッチ類、フェノール樹脂類などの熱可塑性炭素質樹脂を使用することも可能であり、上記実施例と同様な結果を得ることが可能である。
本発明によって、バインダー添加量が少なく、耐食性に優れ、かつ、開孔性に優れる出銑孔閉塞材が提供でき、出銑時のスムーズな開孔作業が期待できる。
1 試料ホルダー
2 シリンダーヘッド
3 台座
4 試料押し出し用面板
5 押し出し抵抗圧力測定装置

Claims (3)

  1. 粒径が60〜120nm、かつDBP吸油量が10〜50ml/100gの第1のカーボンブラック2〜10質量%と、
    粒径が10〜50nm、かつDBP吸油量が100ml/100g以下(ただし、80ml/100g以上を除く)の第2のカーボンブラック0.5〜6.0質量%と、
    を含有することを特徴とする高炉用出銑孔閉塞材。
  2. 前記第2のカーボンブラックのDBP吸油量が40〜60ml/100gである、請求項1記載の高炉用出銑孔閉塞材。
  3. 前記第1のカーボンブラックがサーマルブラックである、請求項1または請求項2記載の高炉用出銑孔閉塞材。
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