JP6456606B2 - 固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セット - Google Patents
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Description
(1)(イ)電子供与性呈色性有機化合物からなる成分と、
(ロ)電子受容性化合物からなる成分と、
(ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体と、
を含んでなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と
(2)賦形材と
(3)フィラーと
を含んでなる固形筆記体であって、前記固形筆記体の熱容量Q1が2.6〜30.0J/gであることを特徴とするものである。
[固形筆記体のヒステリシス特性]
本発明による固形筆記体は、
(1)可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、
(2)賦形材と、
(3)フィラーと
を含んでなる固形筆記体であって、前記固形筆記体の熱容量分析を行った場合の賦形材に対応する熱容量Q1が2.6〜30.0J/gであることを特徴とするものである。この賦形材に対応する熱容量Q1は、固形筆記体を構成する各成分の特性や含有量によって影響を受けるが、通常は賦形材の種類や配合量によって調整が可能である。Q1は3.0J/g以上であることが好ましく、5.5J/g以上であることがより好ましく、また25.0J/g以下であることが好ましく、15J/g以下であることがより好ましい。Q1がこのような範囲にあることによって、筆跡が自己消色すること無く、機械的な強度を維持したまま、筆跡の濃度を改良することができるので好ましい。
よって、前記温度設定は筆記面に変色状態の筆跡を選択して択一的に視認させる熱消去性筆記具には重要な要件であり、利便性と実用性を満足させることができる。前述の完全消色温度(T4)の温度設定において、発色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより高い温度であることが好ましく、しかも、摩擦による摩擦熱が完全消色温度(T4)を越えるようにするためには低い温度であることが好ましい。よって、完全消色温度(T4)は、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃である。
本発明においてマイクロカプセル顔料は、前記したように変色特性を実現するために可逆熱変色性組成物を内包している。この可逆熱変色性組成物を構成する各成分について具体的に化合物を例示すると以下の通りである。
前記化合物としては、
Q=Q1/Q2×W
で表されるQが0.2以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、各成分の配合比から一般にQは2.2以下である。Qがこの範囲にあることで、機械的な強度を維持したまま、筆跡の濃度を改良することができる。
本発明による固形筆記体は賦形材を含んでなる。前記賦形材としては、前記したように固形筆記体としたときに、特定の熱容量を有するものが選択される。ただし、賦形材の種類や含有量によって固形筆記体の機械的特性や固形筆記体中に含まれるマイクロカプセル顔料が影響を受けるので適切なものを選択することが必要である。
本発明による固形筆記体はフィラーを含んでなる。フィラーは、固形筆記体の強度の向上や書き味を調整する目的で配合される。本発明において用いることができるフィラーとしては、例えばタルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、窒化硼素、チタン酸カリウム、およびガラスフレークなどが挙げられ、特に成形性の点からタルク、炭酸カルシウムがこのましい。
本発明の固形筆記体に用いるマイクロカプセル顔料の配合割合としては、前記固形筆記体全質量に対し、1〜70質量%が好ましい。この範囲より小さいと発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと固形筆記体の強度が低下する傾向が見られる。好ましくは3〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の強度と筆跡濃度を両立することができる。本発明によれば、従来の固形筆記体と比較して、固形筆記体の強度を落とすこと無く、発色性を向上することが出来るので、従来の固形筆記体と比較して、マイクロカプセル顔料の配合割合を減らした際にも、従来と同様の発色濃度が得られるなどの効果も得られる。
本発明による固形筆記体は、必要に応じて、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、樹脂、フィラー、粘度調整剤、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、紫外線防止剤、光安定剤、香料などが挙げられる。前記樹脂としては、固形筆記体の強度などを向上する目的で配合されるが、天然樹脂、合成樹脂を用いることができる。具体的には、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ピロリドン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アミド系樹脂、塩基性基含有樹脂などが挙げられる。
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート
2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、
テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1、2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンとの混合エステル化物、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び1−トリデカノールとの混合エステル化物、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−メタクリレート、
N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、
N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペレジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、
ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ})、
コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、
コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物とN,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−
(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミンとの1対1の反応生成物、
ジブチルアミン・1,3−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、
デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル(1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシド)とオクタンとの反応生成物、
シクロヘキサンと過酸化N−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの反応生成物と2−アミノエタノールとの反応生成物等を例示することができる。
本発明の固形筆記体は、各種被筆記面に対して、筆記することが可能である。さらに、その筆跡は、指による擦過や加熱具又は冷熱具の適用により変色させることができる。
<マイクロカプセルの製造>
(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部、4,4’−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール3.0部、
(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル 50.0質量部
からなる可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0質量部、助溶剤40.0質量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル懸濁液を得た。前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセルを単離した。なお、前記マイクロカプセルの平均粒子径は2.3μmであり、T1:−20℃、T2:−10℃、T3:48℃、T4:58℃、△H:68℃、可逆熱変色性組成物:壁膜=2.6:1.0であった。このマクロカプセルは温度変化により、黒色から無色、無色から黒色へ可逆的に色変化するヒステリシス特性を示した。
マイクロカプセル顔料 40質量部
タルク 38質量部
側鎖結晶性ポリオレフィン 10質量部
(豊国製油株式会社製 HSクリスタ4100(商品名))
ポリオレフィンワックス 10質量部
(三洋化成工業株式会社製 サンワックス131−P(商品名)、軟化点110℃、針入度3.5))
ポリビニルアルコール 2質量部
上記配合物をニーダーにて混練し、得られた混練物をプレスにて圧縮成形を行い、外径φ3mm、長さ60mmに成形して固形筆記体を得た。
固形筆記体の製造において、各成分の配合量(質量部基準)を表1に示す通りに変更したほかは実施例1と同様にして固形筆記体を得た。
以下の方法により、原料および固形筆記体の物性や、固形筆記体の特性を評価した。
示差走査熱量計DSC−50型(株式会社島津製作所製)により測定した。図2はこの方法より測定された実施例1の固形筆記体のDSC曲線であり、温度40℃近傍に現れる賦形材に対応する吸熱ピークと、温度55℃近傍に現れるマイクロカプセル顔料に対応する吸熱ピークが認められる。
測定条件:昇温速度を以下の通りとして、測定した。1℃/min(20℃〜80℃)、5℃/min(80℃〜100℃)
JIS−S6005により測定した。
固形筆記体を用いて中性紙に筆記し、その筆跡濃度を目視により評価した。評価基準は以下の通りとした。
A:筆跡を視認することができ、その濃度は十分高い。
B:筆跡を視認することができ、その濃度は高い。
C:筆跡を視認することはできるが、その濃度は十分でない。
D:筆跡を視認することが困難である。
発色性で評価した筆跡を摩擦消去具にて消去し、消去跡を作製した。得られた消去跡を−5℃にて、1時間放置し、1時間後の消去跡を目視により評価した。評価基準は以下の通りとした。
A:消去跡の再発色は見られず、良好な変色性能を維持していた。
B:消去跡の再発色はほとんど無く、良好な変色性能を維持していた。
C:消去跡に一部再発色があり、変色性能に劣化が見られるが、実用上問題の無いレベル。
D:消去跡の再発色が確認され、変色性能が劣っていた。
固形筆記体を用いて中性紙に筆記し、筆記時の摩擦熱による影響をその筆跡濃度を目視により評価した。評価基準は以下の通りとした。
A:筆跡が完全に発色しており、非常に濃い筆跡が得られている。
B:筆跡の消色がほとんど無く、濃い筆跡が得られている。
C:筆跡の消色が確認され、濃度が薄い筆跡が得られている。
D:筆跡の消色が顕著であり、筆跡が途切れている。
側鎖結晶性ポリオレフィンA1: 豊国製油株式会社製 HSクリスタ4100(商品名、Mw:16,000、m.p.:44.4℃)
側鎖結晶性ポリオレフィンA2: 豊国製油株式会社製 HSクリスタ6100(商品名、Mw:28,000、m.p.:60.6℃)
高分岐ポリオレフィンB1: ベイカーヒューズ社製 VYBAR260(商品名、Mn:2,600、m.p.:54.7℃)
高分岐ポリオレフィンB2: ベイカーヒューズ社製 VYBAR343(商品名、m.p.:36.0℃)
スチレン変性ポリオレフィンA1−1: 側鎖結晶性ポリオレフィンA1をスチレン変性したもの(変性率小)(Mw:16,000、m.p.:39.4℃)
スチレン変性ポリオレフィンA1−2: 側鎖結晶性ポリオレフィンA1をスチレン変性したもの(変性率中)(Mw:16,000、m.p.:36.8℃)
スチレン変性ポリオレフィンA1−3: 側鎖結晶性ポリオレフィンA1をスチレン変性したもの(変性率大)(Mw:16,000、m.p.:35.3℃)
ショ糖脂肪酸エステルC: 三菱化学フーズ株式会社製 リョートーシュガーエステルP−170(商品名)
ポリオレフィンワックスD: 三洋化成工業株式会社製 サンワックス131−P(商品名)、軟化点110℃、針入度3.5))、ポリオレフィンワックスDの融点は粘度法による測定値。
T2 消色開始温度
T3 発色開始温度
T4 完全発色温度
ΔH ヒステリシス幅
Claims (7)
- (1)(イ)電子供与性呈色性有機化合物からなる成分と、
(ロ)電子受容性化合物からなる成分と、
(ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体と、
を含んでなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と
(2)融点が20〜60.6℃である賦形材と
(3)フィラーと
を含んでなる固形筆記体であって、前記固形筆記体の熱量分析を行った場合の賦形材に対応する熱量Q1が2.6〜30.0J/gであることを特徴とする固形筆記体。 - 前記固形筆記体の熱量分析を行った場合の前記賦形材に対応する吸熱ピークが、前記マイクロカプセル顔料に対応する吸熱ピークよりも低温側にある、請求項1に記載の固形筆記体。
- 前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に対応する熱量をQ2、前記固形筆記体の総質量を基準とした前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の含有率をWとしたとき、下記式:
Q=(Q1/Q2)×W
で表されるQが0.2以上である、請求項1又は2に記載の固形筆記体。 - 前記賦形材の熱量Q3が50〜120J/gである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固形筆記体。
- 前記賦形材が、重量平均分子量が2,000〜50,000である側鎖結晶性ポリオレフィンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固形筆記体。
- 摩擦部材をさらに具備してなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の固形筆記体。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の固形筆記体と、摩擦部材とを具備してなることを特徴とする固形筆記体セット。
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