本発明の固形筆記体は、少なくとも(イ)、(ロ)、(ハ)成分からなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と賦形材を含む筆記可能な内芯に外周面を被覆する外芯を設け、該外芯中のフィラーの配合割合を特定の範囲としたことが特徴的である。
本発明の固形筆記体の構成を図1と共に説明する。本発明の固形筆記体は、筆記可能な内芯(2)の外周面を被覆する外芯(3)を設けた構成となっている。さらに、外芯(3)が賦形材と特定の配合割合のフィラーを含む構成となっている。本発明の構成とすることで、筆跡の変色性もしくは消色性、及び発色性を良好に保つことができ、固形筆記体の耐光性が向上するのは、以下の理由によると考えている。即ち、固形筆記体にフィラーを配合することで、成形性や固形筆記体の強度を向上することができるが、マイクロカプセル顔料を着色剤として用いた固形筆記体においては、用いるフィラーによっては、マイクロカプセル顔料に作用し、筆跡の変色や消色などの、変色性もしくは消色性に影響を及ぼすことがある。本発明の構成とすることで、フィラーが直接マイクロカプセル顔料に作用することがなくなり、変色性もしくは消色性を良好に保つことが可能となるのである。また、従来の固形筆記体は、着色剤が固形筆記体全体に分散された構成になっていたため、長時間光にさらされることで、固形筆記体が退色してしまうことがあったが、外芯を設け、そこにフィラーを含んでいることにより、着色剤に影響を与える紫外線が、着色剤を含む内芯に直接当たることを防ぐことが可能となるため、固形筆記体の耐光性が向上するのである。さらに、外芯にフィラーを含んでいるため、成形性も向上し、固形筆記体の強度を落とすことがないのである。
さらに、外芯のフィラーの配合割合が多いと外芯の物理的強度が強くなる傾向にあり、例えば筆記可能な内芯で筆記した筆跡を誤って外芯が擦過するなどした場合、擦過する際の抵抗が大きくなる。擦過時の抵抗が大きくなることで擦過する際、紙などの擦過面との間に生じる摩擦が大きくなり、その際生じる熱エネルギーの影響により、筆跡が薄くなってしまうが、本発明の配合割合とすることで、無用な筆跡の消去を防ぐことが出来るのである。
本発明の固形筆記体の外芯に用いることができるフィラーとしては、体質剤などに用いられる炭酸カルシウム、粘土、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、マグネシウムオキシサルフェートウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、ワラストナイト、アタパルジャイト、セピオライト、シリカなど、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化ホウ素、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックス類、天然黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛類、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック類などが挙げられる。
前記フィラーの配合割合としては、外芯全質量に対して、10質量%以上であり、50質量%以下である。フィラーの配合割合が10質量%より小さいと、固形筆記体の耐光性や成形性、固形筆記体の強度が劣る。フィラーの配合割合が50質量%より大きいと、筆記可能な内芯で筆記した筆跡を誤って外芯が擦過するなどした場合の抵抗が大きくなり、固形筆記体と被筆記面での摩擦熱が生じ、筆跡の一部を固形筆記体が消去してしまい、その発色性が劣ることがある。より好ましくは、フィラーの配合割合が30質量%〜50質量%である。この範囲にあると、固形筆記体の耐光性、成形性、固形筆記体の強度、筆跡の発色性の全てが向上するのでより好ましい。
本発明の固形筆記体の外芯に、フィラーと共に賦形材を配合する。賦形材としては、例えばワックス、ゲル化剤などを用いることが出来る。ワックスとしては、従来公知のものであればいずれを用いてもよく、具体的にはカルナバワックス、木ろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、スチレン変性ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。ゲル化剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば12ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油、高級脂肪酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。賦形材としては、ポリオレフィンワックス、ショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルの少なくとも一種を含有していることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、αオレフィン重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のワックスなどが挙げられ、内芯に用いることができる賦形材を用いることができる。さらに、内芯に用いた賦形材と同じ材料を用いると、内芯と外芯の界面が適度に融合し、無用な界面剥離を起こさないため好ましい。外芯に用いる賦形材の配合割合としては、フィラーの配合量から、外芯全質量に対して、10質量%〜90質量%であると好ましい。この範囲にあると、成形性が良くなるため好ましい。より好ましくは、40質量%〜70質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の成形性、固形筆記体の耐光性が向上するのでより好ましい。
本発明の固形筆記体の外芯に、さらに、フィラー、賦形材と共に樹脂を配合しても良い。外芯に樹脂を用いると、固形筆記体の成形性と強度が向上することができる。樹脂の配合割合としては、フィラーと賦形材の配合割合から決まるが、外芯全質量に対して、1質量%〜10質量%であると前記の通り、固形筆記体の性能が向上するため、好ましい。
本発明の固形筆記体に用いる外芯は、必要に応じて、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、着色剤、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、香料などが挙げられる。
本発明の固形筆記体は、第1の発色状態と第2の発色状態を互変的に呈することができる。本発明で言う、第1の発色状態と第2の発色状態を互変的に呈するとは、有色(1)と有色(2)の二つの発色した状態、発色状態と消色状態または消色状態と発色状態を互変的に呈することを意味する。即ち、第1の発色状態から温度が上昇して第2の発色状態へ変化する場合、有色(1)から有色(2)への変化、発色状態から消色状態への変化、即ち、加熱消色型の変化を含んでいる。
本発明の固形筆記体で筆記した際の筆跡の変色挙動について、加熱消色型を例に、図3と共に説明する。図3において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t4(以下、完全消色温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t2(以下、発色開始温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t1(以下、完全発色温度ということがある)における濃度を示す点である。変色温度域は前記t1とt4間の温度域であり、発色状態と消色状態の両状態が共存でき、t2とt3の間の温度域において完全発色状態と完全消色状態を選択的に呈することができる温度域となる。また、線分EFの長さが変色の割合を示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅( 以下、ΔHと言うことがある)である。本発明において、このΔH値を有することで、一定の温度域で第1の発色状態と第2の発色状態が選択的に保持されるヒステリシス特性を示すこととなる。
本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(イ)成分としては、通常、感熱紙などの感熱材料に用いられる、所謂ロイコ染料を用いることができる。具体的には、ジフェニルメタンフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類などが挙げられる。
より具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3´,6´−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、3´,6´−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、3´,6´−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群などがある。活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂などが挙げられる。また、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩を用いることもできる。
より具体的には、フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナンなどが挙げられる。
また、前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物なども用いることができる。
さらに、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特開平11−129623号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル(特開2003−253149号公報)等を用いた加熱発色型の可逆熱変色性組成物を適用することもできる
本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分としては、具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリンなどを用いることができる。
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10〜16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17〜23の脂肪酸エステル化合物を用いてもよい。
具体的には、エステル類としては、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシルなどが挙げられる。
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロンなどが挙げられる。
さらに、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類としては、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトンなどが挙げられる。
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
さらに、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X1、X2のいずれか一方は−(CH2)nOCOR2又は−(CH2)nCOOR2、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y1及びY2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。)
前記(化1)で示される化合物のうち、R1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、さらにR1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、(化1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(化2)で示される化合物が用いられる。
(式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルなどを例示できる。
さらに、前記(ハ)成分として、下記一般式(化3)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルなどを例示できる。
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(化4)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルなどを例示できる。
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(化5)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルなどを例示できる。
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、こはく酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステルなどが挙げられる。
本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(イ)、(ロ)、(ハ)の3成分の配合比としては、濃度、変色温度変色形態や各成分の種類により決まるが、一般的に所望の特性が得られる配合比は、質量比で、(イ)成分:(ロ)成分:(ハ)成分=1:0.1〜50:1〜800であり、好ましくは、(イ)成分:(ロ)成分:(ハ)成分=1:0.5〜20:5〜200である。これらの各成分は、各々二種類以上を混合して用いてもよい。
本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯に用いるマイクロカプセル顔料には、その機能に影響を及ぼさない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤、防腐・防黴剤などの各種添加剤を添加することができる。
本発明の固形筆記体は、第1の発色状態と第2の発色状態が、有色(1)と有色(2)の変化をする場合、染料や顔料などの非熱変色性の着色剤を配合することで達成できる。
本発明に用いるマイクロカプセル顔料は、内包物と壁膜の質量比が、内包物:壁膜=1:1〜7:1であることが好ましい。この範囲より内包物の比率が大きくなると、壁膜の厚みが薄くなり、圧力や熱に対して弱くなりマイクロカプセルが破壊される傾向があり、この範囲より小さいと、発色状態での濃度や視認性が低下する傾向がある。より好ましくは、内包物:壁膜=1:1〜6:1であり、この範囲にあると、発色状態での濃度や視認性が高く、マイクロカプセルが破壊されることがない。
本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯に用いるマイクロカプセル顔料は、特に限定されないが平均粒子径が0.1〜50μmであることが好ましい。この範囲より小さいと、発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと固形筆記体の筆記可能な内芯に用いる際に、分散安定性や加工性が劣る傾向が見られる。より好ましくは、0.3〜30μmである。この範囲にあると、発色状態も良好で、分散安定性や加工性がよくなる。
本発明でいうマイクロカプセル顔料の平均粒子径とは、粒子径を測定したときの体積基準で表わしたD50の値で表される。測定の一例としては、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置((株)堀場製作所製;LA−300)を用いて測定してその数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出した値を用いる。
本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯に用いるマイクロカプセル顔料の配合割合としては、前記固形筆記体の筆記可能な内芯全質量に対し、1〜70質量%が好ましい。この範囲より小さいと発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと固形筆記体の筆記可能な内芯の強度が低下する傾向が見られる。好ましくは、5〜50質量%、さらに好ましくは、10〜40質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の強度と筆跡濃度を両立することができる。
前記マイクロカプセル顔料は、製造方法としては、例えば、非特許文献1(近藤保、小石真純共著、「マイクロカプセル−その製法・性質・応用−」三共出版(株)、1977年)に記載されているような一般的に知られている方法を用いることができる。具体的には、コアセルベート法、界面重合法、界面重縮合法、in−situ重合法、液中乾燥法、液中硬化法、懸濁重合法、乳化重合法、気中懸濁被覆法、スプレードライ法などが挙げられ、適宜選択される。
本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯に用いる賦形材としては、例えばワックス、ゲル化剤、粘土などを用いることが出来る。ワックスとしては、従来公知のものであればいずれを用いてもよく、具体的にはカルナバワックス、木ろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、スチレン変性ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。ゲル化剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば12ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油、高級脂肪酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイトなどが挙げられる。賦形材としては、ポリオレフィンワックス、ショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルの少なくとも一種を含有していることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、αオレフィン重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のワックスなどが挙げられる。
特に、前記ポリオレフィンワックスの軟化点が100℃〜130℃の範囲にあるとともに、針入度が10以下であるものは、筆記感が高いために、好ましく用いられる。針入度が10を越えると、固形筆記体の筆記可能な内芯が柔らかすぎて筆記し難くなる傾向が見られ、しかも、擦過消去時に筆跡が紙面上で伸びてしまう(ワックスが薄層化される)ために筆記面の空白部分を汚染したり、他の紙への色移りや汚れを生じる。
尚、前記ポリオレフィンワックスの軟化点、針入度の測定方法は、JIS K2207に規格化されており、針入度の値は、0.1mmを針入度1と表す。従って、数字が小さいほど硬く、大きいほど柔らかい固形筆記体の筆記可能な内芯である。
具体的には、ネオワックスシリーズ(ヤスハラケミカル(株)製 ポリエチレン)、サンワックスシリーズ(三洋化成工業(株)製 ポリエチレン)、ハイワックスシリーズ(三井化学(株)製 ポリオレフィン)、A−Cポリエチレン(Honeywell社製 ポリエチレン)等が挙げられる。
本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯の賦形材として、ショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルの少なくとも一種を含有していると、筆跡濃度の向上を図ることが出来るため好ましく用いられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、特にC12〜C22の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好ましく、より好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸が有用である。具体的には、三菱化学フーズ(株)製:リョートーシュガーエステルシリーズ、第一工業製薬(株)製:シュガーワックスシリーズ等が挙げられる。
また、本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯に用いるデキストリン脂肪酸エステルとしては、特にC14〜C18の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好適であり、より好ましくは、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸が有用である。具体的には、千葉製粉(株)製:レオパールシリーズ等が挙げられる。
本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯に用いる賦形材の配合割合としては、筆記可能な内芯全質量に対し0.2〜70質量%、が好ましい。この範囲より小さいと固形筆記体の筆記可能な内芯としての形状を得られ難くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと十分な筆記濃度が得られにくくなる傾向が見られる。好ましくは、0.5〜40質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の筆記可能な内芯の形状と筆跡濃度を両立することができる。
本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯は、必要に応じて、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、樹脂、フィラー、粘度調整剤、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、紫外線防止剤、光安定材、香料などが挙げられる。前記樹脂としては、固形筆記体の筆記可能な内芯の強度などを向上する目的で配合されるが、天然樹脂、合成樹脂を用いることができる。具体的には、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ピロリドン系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、塩基性基含有樹脂などが挙げられる。前記フィラーとしては、例えばタルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、窒化硼素、チタン酸カリウム、ガラスフレークなどが挙げられ、特にマイクロカプセル顔料に対する変色性能への影響などや成形性の点からタルク、炭酸カルシウムが好ましい。フィラーは、本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯の強度の向上や書き味を調整する目的で配合される。本発明の固形筆記体の筆記可能な内芯に用いるフィラーの配合割合としては、筆記可能な内芯全質量に対し、10〜55質量%が好ましい。この範囲より小さいと筆記可能な内芯の強度が低下する傾向がみられ、この範囲より大きいと、発色性が低下したり、書き味が劣る傾向がみられる。
本発明の固形筆記体は、第1の発色状態と第2の発色状態が、有色(1)と有色(2)の変化をする場合、染料や顔料などの非熱変色性の着色剤を配合することで達成できる。
本発明の固形筆記体の製造方法としては、押出成形や、圧縮成形を用いて製造することができる。具体的に一例を挙げると、筆記可能な内芯の塊状物の外周面に外芯を配設しプレスにて圧縮成形をするなどして、筆記可能な内芯の外周面を被覆する外芯を設けた固形筆記体を得ることができる。
本発明の固形筆記体は、各種被筆記面に対して、筆記することが可能である。さらに、その筆跡は、指による擦過や加熱具又は冷熱具の適用により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。
前記摩擦部材は、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好ましく用いられる。前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂などを用いることができる。前記摩擦部材は固形筆記体と別体の任意形状の部材である摩擦体とを組み合わせて固形筆記体セットを得ることもできるが、固形筆記体または、固形筆記体を外装収容物に収容した固形筆記具の外装に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れたものとなる。具体的には、外装が木や紙などの鉛筆や、クレヨンなどの形状に、摩擦部材を設けた形態などが挙げられる。
前記冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片などの冷媒を充填した冷熱変色具や保冷剤、冷蔵庫や冷凍庫の適用などが挙げられる。
(マイクロカプセル顔料Aの製造)
(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0質量部からなる感温変色性色彩記憶組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0質量部、助溶剤40.0質量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に攪拌を続けて熱変色マイクロカプセル懸濁液を得た。前記懸濁液を遠心分離して熱変色マイクロカプセルを単離した。なお、前記マイクロカプセルの平均粒子径は2.3μmであり、t1:−20℃、t2:−10℃、t3:48℃、t4:58℃、ΔH:68℃、感温変色性色彩記憶組成物:壁膜=2.6:1.0のヒステリシス特性を有する挙動を示し、ピンク色から無色、無色からピンク色へ可逆的に色変化した。
(実施例1)
(筆記可能な内芯の混練物の製造)
マイクロカプセル顔料A 40質量部
ポリオレフィンワックス 10質量部
(三洋化成工業(株)製 サンワックス131−P 軟化点110℃ 針入度3.5)
ショ糖脂肪酸エステル 10質量部
(三菱化学フーズ(株)製 リョートーシュガーエステルP−170)
ポリビニルアルコール 2質量部
タルク 38質量部
上記配合物をニーダーにて混練し、筆記可能な内芯の混練物を得た。
(外芯の混練物の製造)
タルク(フィラー) 50質量部
ポリビニルアルコール 1質量部
ポリオレフィンワックス 24.5質量部
(三洋化成工業(株)製 サンワックス131−P 軟化点110℃ 針入度3.5)
ショ糖脂肪酸エステル 24.5質量部
(三菱化学フーズ(株)製 リョートーシュガーエステルP−170)
上記配合物をニーダーにて混練し、外芯の混練物を得た。
(固形筆記体の製造)
得られた筆記可能な内芯の混練物の外周面に、外芯の混練物を巻き付け、プレスにて圧縮成形を行い、外径φ3mm、長さ60mm(筆記可能な内芯がφ2mmであり、外芯の被覆厚が0.5mm)に成形し筆記可能な内芯の外周面を被覆した外芯を設けた固形筆記体を得た。
(実施例2〜8)
(表1)に示した配合で、実施例1と同じ方法で、固形筆記体を得た。
(比較例1)
(筆記可能な内芯の製造)
マイクロカプセル顔料A 40質量部
ポリオレフィンワックス 10質量部
(三洋化成工業(株)製 サンワックス131−P 軟化点110℃ 針入度3.5)
ショ糖脂肪酸エステル 10質量部
(三菱化学フーズ(株)製 リョートーシュガーエステルP−170)
ポリビニルアルコール 2質量部
カオリン 38質量部
上記配合物をニーダーにて混練し、得られた混練物をプレスにて圧縮成形を行い、外径φ3mm、長さ60mmに成形し筆記可能な内芯を得た。
(比較例2、3)
(表1)に示した配合で、比較例1と同じ方法で、固形筆記体を得た。
比較例1〜3においては、筆記可能な内芯の外周面を被覆する外芯を設けず、筆記可能な内芯を、固形筆記体とした。
(比較例4〜6)
(表1)に示した配合で、実施例1と同じ方法で、固形筆記体を得た。
実施例1〜8及び比較例1〜6で得られた固形筆記体を用いて、下記方法により固形筆記体の変色性能、耐光性、曲げ強度、成形性、書き味について評価を行った。その結果を(表2)に示した。
変色性能:固形筆記体を用いて、中性紙に筆記し、その筆跡を摩擦消去具にて消去して消去跡を作成した。得られた消去跡を5℃にて24h放置し、24h後の消去跡を目視により評価した。
◎:消去跡の再発色は見られず、良好な変色性能が得られた。
○:消去跡の再発色はほとんどなく、良好な変色性能を維持していた。
△:消去跡に一部再発色があり、変色性能に劣化が見られるが、実用上問題のない
レベルであった。
×:消去跡の再発色が確認され、消去性能が劣化していた。
発色性:固形筆記体を用いて、中性紙に筆記し、その筆跡を目視により評価した。。
◎:非常に良好な発色が得られる。
○:良好な発色が得られる。
△:摩擦熱により筆跡が薄くなる傾向が見られる。
×:摩擦熱により筆跡が著しく薄くなる。
耐光性:固形筆記体を蛍光灯下で2週間暴露した後、内芯の外観を目視により評価した。
◎:固形筆記体の退色は見られない。
○:固形筆記体の退色が若干見られる。
△:固形筆記体の退色が見られるが、実用上問題ないレベル。
×:著しい退色が見られる。
曲げ強度の測定:JIS−S6005により測定した。
成形性:固形筆記体の外観を目視により評価した。また、固形筆記体の長手方向における芯の直径のバラツキをマイクロメーターにて測定し、寸法精度を評価した。
◎:成形性、寸法精度共に優れる。
○:成形性に優れる。
△:成型可能であるが寸法精度は落ちる。
×:固形筆記体を成形することができない。
書き味:固形筆記体を用いて、中性紙に筆記し、その時の書き味を官能試験により評価した。
◎:滑らかでに筆記できる。
○:筆感がわずかに重たい。
△:筆感がやや重たい。
×:筆記することができない。
(表2)に示した結果からも明らかなように、本発明の固形筆記体は、実施例1〜8から明らかなように、変色性能、発色性、耐光性、成形性、曲げ強度、書き味の全ての性能が良好であった。実施例1〜8と比較例1〜3との比較において、外芯にフィラーを含んでいる固形筆記体は、耐光性、に優れていることが明らかである。また、比較例1との比較からも明らかなように、従来の固形筆記体では、変色異常などを起こすために用いることができなかったフィラーが適用可能になるなど、固形筆記体として優れている。さらに、フィラーの配合量を特定の範囲としたことにより、比較例4の固形筆記体との比較においては、変色性能、発色性、耐光性、書き味などが優れていることが明らかである。さらに、比較例5、6の固形筆記体との比較においては、筆記した際の筆跡の発色性が優れていることが明らかである。
前記の評価結果からも明らかなように、本発明の固形筆記体は、従来と比較して、固形筆記体としての性能が優れていることが明らかである。
(鉛筆の作製)
得られた実施例1〜8の固形筆記体を用いて、丸形木軸内に収納成形することで鉛筆を得た。中性紙上に筆記すると、いずれも筆跡を形成することができた。また、前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去(消色)された。
(応用例A)
(固形筆記具の作製)
実施例1〜8で得た固形筆記体を繰出し式のプラスチック製円筒状容器にセットして固形筆記具を得た。尚、容器の後端部にSEBS樹脂からなる摩擦体を設けてなる。 前記固形筆記具は、紙面上に筆記すると、鮮明な筆跡を形成することができ、重ね塗りによる濃淡形成も可能であった。また、容器の後端部に設けた摩擦体を用いて筆跡を摩擦することにより残色を生じることなく消去できた。前記固形筆記具は摩擦体を備えているため携帯性に優れた固形筆記体であった。
(応用例B)
(固形筆記具セットの作製)
実施例1〜8で得た固形筆記体を用いた前述の鉛筆と、SEBS樹脂からなる摩擦体を組み合わせて固形筆記具セットを得た。 前記固形筆記具セットは、固形筆記体を用いて紙面上に筆記すると、鮮明な筆跡を形成することができ、重ね塗りによる濃淡形成も可能であった。また、付属の摩擦体を用いて筆跡を摩擦することにより残色を生じることなく消去できた。前記固形筆記具セットは筆記具と摩擦体がセットになっているため、筆記と消去が簡単にできるより利便性の高いものであった。