本発明による固形筆記体は、固形筆記体の内芯の後端を、外形を構成する外軸の後端よりも前方へ位置させ、外軸の後方に空間部を設けることを一つの特徴的としたものである。
本発明による固形筆記体の構成を図2と共に説明する。本発明の固形筆記体(1)は、外軸(3)と内芯(2)を設けた構成となっている。そして、内芯の後端(2a)を、外軸の後端(3a)より前方へ位置させ、外軸の後方に空間部(4)を設けた構成となっている。前記構成とせずに、内芯と外軸の後端が同じ位置にあると、内芯の前端(2b)を下にして、陳列、保管などをした場合に、固形筆記体の後端に直接光が当たることとなる。その際、内芯が長時間光に晒されることで、退色してしまうことがあるが、本発明の構成とすることで、着色剤に影響を与える紫外線が内芯に直接当たることを防ぐことが出来、その結果、耐候性が向上する。
また、本発明の固形筆記体は、従来の色鉛筆などと同様に、外軸と内芯を同時に削ることによって使用するが、従来の鉛筆や色鉛筆と同様に最後まで芯を使用出来ない課題があるが、本発明による固形筆記体の構成とすることで、従来使用されることなく廃棄されていた内芯を節減することが出来、材料費の節減を図ることが出来る。
さらに、本発明の固形筆記体に方向性の決まった加飾をする際や、後述する、摩擦部材を具備した固形筆記体に加工する際に、方向性を間違えることなく加工することが出来、生産性を向上することが出来る。
また、本発明の固形筆記体は、外軸の後方に空間部を形成するが、空間部としては、内芯の後端を外軸の後端より、1〜20mm程度前方へ位置させることが好ましい。この範囲より小さいと、内芯に直接光が当たる可能性があり、内芯が退色する恐れがあり、この範囲より大きいと外軸の内芯に対する保持力が低下する傾向が見られ、筆記時の荷重によって内芯が抜けやすくなる恐れがある。より好ましくは、3〜10mmであり、この範囲であると、耐光性や、内芯の保持力を維持しつつ、通常の色鉛筆などと同様の使用感が得られたまま、材料の節約が可能となるためである。従来の色鉛筆などと同様に、外軸と内芯を同時に削ることによって使用するが、従来の鉛筆や色鉛筆と同様に最後まで芯を使用出来ない課題があるが、本発明による固形筆記体の構成とすることで、従来使用されることなく廃棄されていた内芯の節減することが出来、材料費の節減を図ることが出来るためである。
本発明による固形筆記体は、前記外軸の後端の空間部に蓋することで、さらに耐光性を向上することが出来る。また、本発明による固形筆記体は、前記外軸の後端に摩擦部材を具備した構成とすることが好ましい。前記構成は、外軸の後方に空間部を設け、摩擦部材が具備された構成となる(以下、摩擦部材を具備した固形筆記体と言うことがある)。
前記外軸の後端に摩擦部材を具備した構成の一例を図4と共に説明する。摩擦部材を具備した固形筆記体(11)は、外軸(3)と内芯(2)を設けた構成となっている。そして、内芯の後端(2a)を、外軸の後端(3a)より前方へ位置させ、外軸の後方に空間部(4)を設けた構成となっている。さらに、前記外軸の後端(3a)に摩擦部材(5)が、連結部材(6)を介して具備された構成となる。前記構成とすることで、摩擦部材を設けていない構成に比べ、内芯に、より光が当たらなくなるため、耐光性がさらに向上するため、好ましい。
また、摩擦部材を具備したことで、筆記と筆記された筆跡の消色が簡便に行うことができると同時に、携帯性に優れる。さらに、摩擦部材で筆跡を擦過する際に、外軸の後方に応力が掛かるが、空間部が設けられている。そして、内芯に対して応力がかからないため、芯折れを防ぐことが出来る。さらに、摩擦部材で筆跡を擦過する際に発生する摩擦熱が、空間部を設けたことにより、内芯へ直接熱が伝わることがないため、内芯が変色することなどを防ぐことができる。また、空間部に耐応力性のある補強材料などを充填することで、応力による固形筆記体が折れることなどを防ぐことが可能となる。
さらに、摩擦部材の擦過による摩擦熱が、空間部が断熱効果を持つことにより、内芯に直接熱が伝わらないため、内芯の無用な消色を防ぐことも可能となる。
本発明による固形筆記体は、摩擦部材を着色した構成としても良い。摩擦部材を着色することで、摩擦部材の汚れや光による変色などを目立たなくすることが出来るため好ましい。
さらに、摩擦部材を着色する際に、後述する第一の発色状態または第二の発色状態の色に着色することが好ましい。前記構成とすることで、筆記する際の色または、摩擦部材で擦過した後の色が認識することが可能となる。
より好ましくは、摩擦部材を着色する際に、筆記した際の色と同じにすることが好ましい。前記構成とすることで、筆記する際の色を摩擦部材で確認できるため、外軸に加飾する際に内芯に囚われることなく様々な加飾が可能となる。
前記着色剤の添加量としては、摩擦部材全質量中0.01〜1.0質量%含有されることが好ましい。0.01%以下では摩擦部材を鮮明に着色することができず、1.0%より多いと擦過した際に筆跡周辺に着色剤が色移りする場合がある。好ましくは0.1〜1.0質量%である。
前記着色剤としては一般に汎用の染料、顔料等を適宜使用でき、例えば、酸性染料、塩基性染料、直接染料、蛍光染顔料、カーボンブラック、群青、二酸化チタン顔料等の無機顔料、有機顔料の他、アルミ粉や各種パール顔料等が用いられる。
本発明における固形筆記体は、外軸の後端に摩擦部材を具備することができるが、前記摩擦部材を具備する方法としては特に限定はないが、連結部材を介して具備することが好ましい。連結部材としては、金属などで作られた連結筒を用い、連結筒と外軸、連結筒と摩擦部材をかしめることによって具備することが、簡便な方法であるため好ましい。さらに、擦過部材の抜け力は、2N以上とすることで、摩擦部材が容易に外すことが出来なくなるため、幼児などの誤飲を防止できるほか、筆跡を擦過している際に摩擦部材が外れることがないため好ましい。さらに好ましくは、5N以上である。さらに摩擦部材に通気孔や通気溝を貫設することで、幼児等が誤飲した場合にもより安全性の高いものとなる。
前記摩擦部材としては、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体などの弾性体が好ましく用いられる。また、前記した摩擦部材は、筆記用紙(JIS P 3201)に固形筆記体の内芯(外径φ2.5mm×全長60mm)終了まで筆跡が重ならないように筆記し、外径φ7mm×全長14mmの摩擦部材を用いて、前記筆跡を熱変色(例えば、消色の場合、目視にて変色前の筆跡を確認できない状態)したさせた際に、摩擦部材の体積減少率が10%未満、好ましくは5%未満となる材質を用いることが、摩擦による摩擦熱の発生効率を考慮すると好ましい。前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂、ポリエステル系樹脂などを用いることができる。
尚、前記摩擦部材は、固形筆記体と別体であってもよいが、前記のとおり、外軸に摩擦部材を付設する場合には、摩擦部材の体積減少率が10%未満、好ましくは5%未満となる材質とすることで、固形筆記体の内芯使用終了時まで、外部に露出する摩擦部材の体積変化も少ないため、摩擦時における感覚が変化することなく摩擦を行うことが出来るので好ましい。また、前記した摩擦部材を着脱自在に付設することで、他の固形筆記体の摩擦部材として使用することができるので、好ましい。
本発明による固形筆記体は、内芯で筆記した際にその筆跡が、第1の発色状態と第2の発色状態を互変的に呈することができる。本発明で言う、第1の発色状態と第2の発色状態を互変的に呈するとは、有色(1)と有色(2)の二つの発色した状態、発色状態と消色状態または消色状態と発色状態を互変的に呈することを意味する。即ち、第1の発色状態から温度が上昇して第2の発色状態へ変化する場合、有色(1)から有色(2)への変化、発色状態から消色状態への変化、即ち、加熱消色型の変化を含んでいる。
前記の通り、本発明による固形筆記体は、内芯で筆記した際にその筆跡が、第1の発色状態から第2の発色状態を互変的に呈することが出来るが、前記筆跡は、摩擦部材による擦過により生じる摩擦熱で、第1の発色状態から第2の発色状態へ変化させることが出来る。
本発明の固形筆記体で筆記した際の筆跡の変色挙動について、加熱消色型を例に、図5と共に説明する。図5において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t4(以下、完全消色温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t2(以下、発色開始温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t1(以下、完全発色温度ということがある)における濃度を示す点である。変色温度域は前記t1とt4間の温度域であり、発色状態と消色状態の両状態が共存でき、t2とt3の間の温度域において完全発色状態と完全消色状態を選択的に呈することができる温度域となる。また、線分EFの長さが変色の割合を示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅( 以下、ΔHと言うことがある)である。本発明において、このΔH値を有することで、一定の温度域で第1の発色状態と第2の発色状態が選択的に保持されるヒステリシス特性を示すこととなる。
本発明による固形筆記体は、第1の発色状態と第2の発色状態が、有色(1)と有色(2)の変化をする場合、内芯に染料や顔料などの非熱変色性の着色剤を配合することで達成できる。
本発明の固形筆記体の内芯は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と賦形材とを含んでなるが、マイクロカプセル顔料に内包する(イ)成分としては、通常、感熱紙などの感熱材料に用いられる、所謂ロイコ染料を用いることができる。具体的には、ジフェニルメタンフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類などが挙げられる。
より具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3´,6´−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、3´,6´−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、3´,6´−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
本発明の固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群などがある。活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂などが挙げられる。また、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩を用いることもできる。
より具体的には、フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナンなどが挙げられる。
また、前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物なども用いることができる。
さらに、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特許文献4)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特許文献5)、没食子酸エステル(特許文献6)などを用いた加熱発色型の可逆熱変色性組成物を適用することもできる
本発明の固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分としては、具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリンなどを用いることができる。
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10〜16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17〜23の脂肪酸エステル化合物を用いてもよい。
具体的には、エステル類としては、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシルなどが挙げられる。
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロンなどが挙げられる。
さらに、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類としては、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトンなどが挙げられる。
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
さらに、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X1、X2のいずれか一方は−(CH2)nOCOR2又は−(CH2)nCOOR2、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y1及びY2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。)
前記(化1)で示される化合物のうち、R1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、さらにR1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、(化1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(化2)で示される化合物が用いられる。
(式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルなどを例示できる。
さらに、前記(ハ)成分として、下記一般式(化3)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルなどを例示できる。
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(化4)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルなどを例示できる。
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(化5)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルなどを例示できる。
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、こはく酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステルなどが挙げられる。
本発明の固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(イ)、(ロ)、(ハ)の3成分の配合比としては、濃度、変色温度変色形態や各成分の種類により決まるが、一般的に所望の特性が得られる配合比は、質量比で、(イ)成分:(ロ)成分:(ハ)成分=1:0.1〜50:1〜800であり、好ましくは、(イ)成分:(ロ)成分:(ハ)成分=1:0.5〜20:5〜200である。これらの各成分は、各々二種類以上を混合して用いてもよい。
本発明の固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料には、その機能に影響を及ぼさない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤、防腐・防黴剤などの各種添加剤を添加することができる。
本発明の固形筆記体は、第1の発色状態と第2の発色状態が、有色(1)と有色(2)の変化をする場合、染料や顔料などの非熱変色性の着色剤を配合することで達成できる。
本発明に用いるマイクロカプセル顔料は、内包物と壁膜の質量比が、内包物:壁膜=1:1〜7:1であることが好ましい。この範囲より内包物の比率が大きくなると、壁膜の厚みが薄くなり、圧力や熱に対して弱くなりマイクロカプセルが破壊される傾向があり、この範囲より小さいと、発色状態での濃度や視認性が低下する傾向がある。より好ましくは、内包物:壁膜=1:1〜6:1であり、この範囲にあると、発色状態での濃度や視認性が高く、マイクロカプセルが破壊されることがない。
本発明の固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料は、特に限定されないが平均粒子径が0.1〜50μmであることが好ましい。この範囲より小さいと、発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと固形筆記体の内芯に用いる際に、分散安定性や加工性が劣る傾向が見られる。より好ましくは、0.3〜30μmである。この範囲にあると、発色状態も良好で、分散安定性や加工性がよくなる。
本発明でいうマイクロカプセル顔料の平均粒子径とは、粒子径を測定したときの体積基準で表わしたD50の値で表される。測定の一例としては、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置((株)堀場製作所製;LA−300)を用いて測定してその数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出した値を用いる。
本発明の固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料の配合割合としては、前記固形筆記体の内芯全質量に対し、1〜70質量%が好ましい。この範囲より小さいと発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと固形筆記体の内芯の強度が低下する傾向が見られる。好ましくは、5〜50質量%、さらに好ましくは、10〜40質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の強度と筆跡濃度を両立することができる。
前記マイクロカプセル顔料は、製造方法としては、例えば、非特許文献1(近藤保、小石真純共著、「マイクロカプセル−その製法・性質・応用−」三共出版(株)、1977年)に記載されているような一般的に知られている方法を用いることができる。具体的には、コアセルベート法、界面重合法、界面重縮合法、in−situ重合法、液中乾燥法、液中硬化法、懸濁重合法、乳化重合法、気中懸濁被覆法、スプレードライ法などが挙げられ、適宜選択される。
本発明の固形筆記体の内芯に用いる賦形材としては、例えばワックス、ゲル化剤、粘土などを用いることが出来る。ワックスとしては、従来公知のものであればいずれを用いてもよく、具体的にはカルナバワックス、木ろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、スチレン変性ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。ゲル化剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば12ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油、高級脂肪酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイトなどが挙げられる。賦形材としては、ポリオレフィンワックス、ショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルの少なくとも一種を含有していることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、αオレフィン重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のワックスなどが挙げられる。
特に、前記ポリオレフィンワックスの軟化点が100℃〜130℃の範囲にあるとともに、針入度が10以下であるものは、筆記感が高いために、好ましく用いられる。針入度が10を越えると、固形筆記体の内芯が柔らかすぎて筆記し難くなる傾向が見られ、しかも、摩擦部材を用いて擦過して筆跡を消色する際に、筆跡が紙面上で伸びてしまう(ワックスが薄層化される)ために筆記面の空白部分を汚染したり、他の紙への色移りや汚れを生じる。
尚、前記ポリオレフィンワックスの軟化点、針入度の測定方法は、JIS K2207に規格化されており、針入度の値は、0.1mmを針入度1と表す。従って、数字が小さいほど硬く、大きいほど柔らかい固形筆記体の内芯である。
具体的には、ネオワックスシリーズ(ヤスハラケミカル(株)製 ポリエチレン)、サンワックスシリーズ(三洋化成工業(株)製 ポリエチレン)、ハイワックスシリーズ(三井化学(株)製 ポリオレフィン)、A−Cポリエチレン(Honeywell社製 ポリエチレン)等が挙げられる。
本発明の固形筆記体に用いる内芯の賦形材として、ショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルの少なくとも一種を含有していると、筆跡濃度の向上を図ることが出来るため好ましく用いられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、特にC12〜C22の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好ましく、より好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸が有用である。具体的には、三菱化学フーズ(株)製:リョートーシュガーエステルシリーズ、第一工業製薬(株)製:シュガーワックスシリーズ等が挙げられる。
また、デキストリン脂肪酸エステルとしては、特にC14〜C18の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好適であり、より好ましくは、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸が有用である。具体的には、千葉製粉(株)製:レオパールシリーズ等が挙げられる。
前記賦形材の配合割合としては、内芯全質量に対し0.2〜70質量%、が好ましい。この範囲より小さいと固形筆記体の内芯としての形状を得られ難くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと十分な筆記濃度が得られにくくなる傾向が見られる。好ましくは、0.5〜40質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の内芯の形状と筆跡濃度を両立することができる。
本発明の固形筆記体に用いる内芯は、必要に応じて、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、樹脂、フィラー、粘度調整剤、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、紫外線防止剤、光安定材、香料などが挙げられる。前記樹脂としては、固形筆記体の内芯の強度などを向上する目的で配合されるが、天然樹脂、合成樹脂を用いることができる。具体的には、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ピロリドン系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、塩基性基含有樹脂などが挙げられる。前記フィラーとしては、例えばタルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、窒化硼素、チタン酸カリウム、ガラスフレークなどが挙げられ、特にマイクロカプセル顔料に対する変色性能への影響などや成形性の点からタルク、炭酸カルシウムが好ましい。フィラーは、本発明の固形筆記体の内芯の強度の向上や書き味を調整する目的で配合される。本発明の固形筆記体の内芯に用いるフィラーの配合割合としては、内芯全質量に対し、10〜55質量%が好ましい。この範囲より小さいと内芯の強度が低下する傾向がみられ、この範囲より大きいと、発色性が低下したり、書き味が劣る傾向がみられる。
本発明の固形筆記体の外形を構成する外軸としては、内芯が摩耗した際に内芯と一緒に削ることが出来、内芯を露出することが出来れば特に限定はない。具体的には、木や紙、樹脂、ワックスなどを用いることができる。簡便な材料としては、従来の鉛筆や色鉛筆などに用いられている木軸を用いると、特殊な製造方法を用いることなく固形筆記体を製造できるので好ましい。
本発明の固形筆記体に用いる内芯の製造方法としては、押出成形や、圧縮成形を用いて製造することができる。具体的に一例を挙げると、内芯をプレスにて圧縮成形をするなどして、内芯を得ることができる。
本発明の固形筆記体の製造方法としては、平板に前記内芯を配設する溝を設けた後、平板の溝の後端より前方に、前記内芯の後端が来るように内芯を配設する。内芯が配設された平板に、前記平板と同一形状の平板を溝の部分が内芯を覆うように配設し、断面形状が円、三角、六角など所望の形状に加工することにより、外軸の後方に空間部が形成された固形筆記体を得ることが出来る。
平板で内芯を挟みこむ際には板を圧着する他、接着剤なども用いることも出来る。このような構成にすることで平板の接着力はより強固になるため好ましい。
他の方法としては、円柱状の外軸の中心部に、前後方向に伸びる孔を形成し、その孔に前記内芯を挿入することによっても、外軸の後方に空間部が形成された固形筆記体を得ることが出来る。
本発明による固形筆記体は、各種被筆記面に対して、筆記することが可能である。さらに、その筆跡は、指による擦過や加熱具又は冷熱具の適用により変色させることができる。
前記冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片などの冷媒を充填した冷熱変色具や保冷剤、冷蔵庫や冷凍庫の適用などが挙げられる。
(マイクロカプセル顔料Aの製造)
(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0質量部からなる感温変色性色彩記憶組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0質量部、助溶剤40.0質量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に攪拌を続けて熱変色マイクロカプセル懸濁液を得た。前記懸濁液を遠心分離して熱変色マイクロカプセルを単離した。なお、前記マイクロカプセルの平均粒子径は2.3μmであり、t1:−20℃、t2:−10℃、t3:48℃、t4:58℃、ΔH:68℃、感温変色性色彩記憶組成物:壁膜=2.6:1.0のヒステリシス特性を有する挙動を示し、ピンク色から無色、無色からピンク色へ可逆的に色変化した。
(実施例1)
(内芯の製造)
マイクロカプセル顔料A 40質量部
ポリオレフィンワックス 10質量部
(三洋化成工業(株)製 サンワックス131−P 軟化点110℃ 針入度3.5)
ショ糖脂肪酸エステル 10質量部
(三菱化学フーズ(株)製 リョートーシュガーエステルP−170)
ポリビニルアルコール 2質量部
タルク 38質量部
上記配合物をニーダーにて混練し、プレスにて圧縮成形を行い、外径φ3mm、長さ150mm内芯を得た。得られた芯を冷却し、ピンク色に発色した内芯を得た。
(固形筆記体の製造)
外軸として長さ160mmの丸形木軸を用い、基軸の中心部に、前後方向に延びるφ3mmの貫通孔を形成した。前記貫通孔に、前記により得られた内芯を収納することで固形筆記体を得た。前記外軸の後方には、約10mmの長さの空間部が形成されていた。
得られた固形筆記体の前端部を鉛筆削りにて削り、内芯を露出させた後、筆記用紙(JIS P 3201)に筆記したところ、ピンク色の筆跡が得られた。得られた筆跡をSEBS樹脂からなる摩擦部材で擦過したところ、生じた摩擦熱により、筆跡を消色することができた。
(実施例2)
(固形筆記体の製造)
実施例1と同じ方法で固形筆記体を得た。前記外軸の後方には、約10mmの長さの空間部が形成されていた。
さらに、外径φ7mm、長さ14mmの円柱状に成形されたSEBS樹脂(アロン化成(株)製、商品名:AR−885C、ショアA硬度:88)からなる摩擦部材を、内径φ7.5mm、長さ14mmの金属の連結筒を用い、外軸の後端に具備した。この時、連結筒と外軸、連結筒と摩擦部材をそれぞれ、かしめることにより抜け力5Nになるように固定し、摩擦部材を外軸にの後端に具備した固形筆記体(以下、摩擦部材を具備した固形筆記体と言うことがある)を得た。
得られた摩擦部材を具備した固形筆記体を、前端部を鉛筆削りにて削り、内芯を露出させた後、筆記用紙(JIS P 3201)に筆記したところ、ピンク色の筆跡が得られた。得られた筆跡を外軸の後端に具備した摩擦部材で擦過したところ、生じた摩擦熱により、筆跡を消色することができた。前記摩擦部材を具備した固形筆記体を用いると、筆記と消色が簡便に行えた。前記固形筆記体は摩擦部材を具備しているため携帯性にも優れているものであった。
(実施例3)
(固形筆記体の製造)
桃色顔料(大日精化工業(株)製)0.125部をSEBS樹脂(アロン化成(株)製、商品名:AR−885C、ショアA硬度:88)100部に添加し、混練した後、成型して得た摩擦部材を用いた以外は、実施例2と同じ方法で、摩擦部材を具備した固形筆記体を得た。
得られた摩擦部材を具備した固形筆記体を、前端部を鉛筆削りにて削り、内芯を露出させた後、筆記用紙(JIS P 3201)に筆記したところ、ピンク色の筆跡が得られた。得られた筆跡を外軸の後端に具備した摩擦部材で擦過したところ、生じた摩擦熱により、筆跡を消色することができた。前記摩擦部材を具備した固形筆記体を用いると、筆記と消色が簡便に行えた。また、摩擦部材の色と筆跡の色が同じであったため、内芯を確認することなく、筆記する際の色を摩擦部材で確認することが出来た。
(比較例1)
(固形筆記体の製造)
外軸として外径φ7.5mm、長さ150mmの丸形木軸を用い、実施例1と同じ方法で固形筆記体を得た。前記外軸の後方には、空間部が形成されていなかった。
得られた固形筆記体の前端部を鉛筆削りにて削り、内芯を露出させた後、筆記用紙(JIS P 3201)に筆記したところ、ピンク色の筆跡が得られた。得られた筆跡をSEBS樹脂からなる摩擦部材で擦過したところ、生じた摩擦熱により、筆跡を消色することができた。
実施例1〜3及び比較例1で得られた固形筆記体を後端が上に来るように什器に収め、上から蛍光灯で2週間暴露した後、実施例1および比較例1は、そのまま、実施例2、3については、摩擦部材を外した後、内芯の状態を目視にて評価した。その結果を(表1)に示した。
◎:内芯の退色は見られない。
○:内芯の退色が若干見られる。
△:内芯の退色が見られる。
×:内芯の著しい退色が見られる。
前記の評価結果からも明らかなように、本発明の固形筆記体は、従来と比較して、固形筆記体としての性能が優れていることが明らかである。
(応用例A)(図6、図7参照)
(塗り絵セットの作製)
実施例2で得た摩擦部材を具備した固形筆記体と白色上質紙製シートの半分に自動車を薄青色で印刷した塗り絵とを組み合わせて塗り絵セットとした。
前記塗り絵は、前記固形筆記体を用いて輪郭をなぞったり、絵を塗りつぶしたり、輪郭線内部を塗ることで完成することが出来た。その際、間違えて塗った箇所やはみ出した箇所を前記摩擦部材で擦過すると、生じた摩擦熱により消色して視認されなくなった。
また、完成した塗り絵を、前記摩擦部材で擦過すると生じた摩擦熱により絵を消色することができた。絵を塗ったり、消色したりすることは、繰返し行うことができ、この操作は、摩擦部材を具備した固形筆記体を用いて簡便に行えることができた。
さらに、前記摩擦部材を具備した固形筆記体を用いて、塗り絵用シートに形成された空白部に任意の像を描画したり、像を塗ったり、消色したりすることで、塗り絵をさらに楽しむことが出来るものとなった。