JP2017043773A - 固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セット - Google Patents

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Abstract

【課題】成形性や寸法安定性、切削性強度や耐衝撃性に優れた固形筆記体の提供。【解決手段】(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、第一の賦形材とを含んでなる内芯2と、第二の賦形材と、有機フィラーとを含んでなり、内芯2の外周面を被覆する外殻3と、を具備する固形筆記体1と、摩擦体とからなる固形筆記体セット。【選択図】図2

Description

本発明は、固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セットに関するものである。さらに詳しくは、可逆熱変色性を有する筆跡を形成することが可能な固形筆記体及び固形筆記体と摩擦部材とを具備してなる固形筆記体セットに関するものである。
従来から、常温域など一定の温度域において、変色前後の状態を互変的に記憶保持できる可逆熱変色性組成物を用いた固形筆記体が提案されている。
前記固形筆記体は、賦形材であるワックス中に添加する着色剤として可逆熱変色性組成物単独又はそのマイクロカプセル封入物を用いることで、温度変化により変色する筆跡を形成するものである。特に、加熱消色タイプの可逆熱変色性組成物を封入するマイクロカプセル顔料を用いた場合、摩擦熱によって筆跡を容易に消去できるため、誤記などの修正などが可能な利便性の高い筆記体となり、例えば、ノートや手帳への筆記や、描画等に適用可能である。
ここで、固形筆記体の強度や耐衝撃性の改善の為に、固形筆記体を、内芯と、内芯の周囲を外殻で包囲する構造、いわゆる多層構造としたものが特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1には、核芯材の外周面に核芯材よりも磨耗しやすい材料で被覆された被覆材を有する多層芯についての記載があり、さらには芯核と周囲を芯外被で包囲された多層芯についての記載がある。さらに、特許文献3には第一の熱可塑性材料と中間層と第二の熱可塑性材料とを同時に押し出した三重押し出しによる多層芯についての記載がある。
しかしながら、これらの特許文献に記載されている被覆材に関わる技術は、本発明者らの検討によれば、単純に可逆熱変色性組成物を用いた固形筆記体に適用することが困難であった。
これは、可逆熱変色性組成物を用いた固形筆記体の製造に必要な特定の工程が影響するためである。
すなわち、固形筆記体は、組成物を高温で押出し、成形することによって製造されるのが一般的であり、このため組成物は高温条件下におかれるが、可逆熱変色性組成物は、この高温下で発色又は消色する。
したがって、固形筆記体を製品として完成させるためには、一般的な冷却工程よりも低い、マイクロカプセル顔料の結晶化が促進される温度条件下で消色又は発色させる必要がある。
このように、可逆熱変色性組成物を温度変化により消色又は発色させる際には、可逆熱変色性組成物を封入されたマイクロカプセルの結晶化に伴う固形筆記体の体積増減が生じる。その結果、多層構造を有する固形筆記体においては、多層構造を形成する内芯と外殻とで温度変化に伴う体積増減の比率が異なるため、それらの間に歪みや剥離等の欠陥が生じ、その欠陥を起点としてクラックなどが発生することがある。このため、可逆熱変色性組成物を用いた固形筆記体を単純に多層構造とすると、外観劣化、強度低下、筆記時や削り時の折れの発生などの不具合を生じることがあった。したがって、これらの欠陥の発生を可能な限り防止することが望まれる。
しかしながら、前記した特許文献においては、固形筆記体に可逆熱変色性組成物を用いることは考慮されておらず、そのためにこれらの固形筆記体に特有の問題は認識されていなかった。
なお、可逆熱変色組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料を賦形材中に均一に分散した固形筆記体とすることについては、例えば特許文献4〜6に開示されている。
また、特許文献7には、鉛筆などにおける木材を他の材料に置き換えることが提案されている。この文献に記載された発明は木材資源の節約を目的としており、木材代替材料として、セルロースや、木粉を用いることが開示されているが、筆記具としての性能向上に関する記載は見当たらない。
特許文献8は、内芯と外殻とを具備した二重芯構造を有する固形筆記体に関するものであり、内芯が色材として熱変色材料を含み、外殻に無機フィラーを含むことが開示されている。この文献には固形筆記体が備える外殻に弾性体樹脂を含有させたり、外殻のヤング率を特定の数値範囲としたりすることにより、内芯と外殻との親和性を改善することによって上記欠陥の発生を防止することができることが記載されている。
しかしながら、今般、本発明者は、この固形筆記体は上記した優れた効果を発揮することができるものの、製造過程における成形性および筆記体先端を切削する場合の切削性には改良の余地があることを知見した。
特開2007−246605号公報 特開2006−205730号公報 特表2003−516888号公報 実開平7−6248号公報 特開2008−291048号公報 特開2009−166310号公報 特表2011−527953号公報 国際公開WO2014/126231号パンフレット
近藤保、小石真純共著、「マイクロカプセル−その製法・性質・応用−」三共出版(株)、1977年
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、固形筆記体の温度変化に伴う欠陥の発生、および外殻が筆跡表面を擦過することに起因する筆跡濃度の低下および筆跡が削れることを防止することができ、さらには製造過程における高い成形性、ならびに製造過程および使用時における高い切削性とを有する固形筆記体を提供することである。
また、本発明は、十分な強度を有し、書き味や寸法安定性が良好であり、かつ強度、耐衝撃性に優れた固形筆記体を提供することもその目的とする。
本発明による固形筆記体は、
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と第一の賦形材とを含んでなる内芯と、
第二の賦形材と、有機フィラーとを含んでなり、前記内芯の外周面を被覆する外殻と、
を具備してなることを特徴とするものである。
また、本発明による固形筆記体セットは、前記の固形筆記体と、摩擦体とからなることを特徴とするものである。
本発明によれば、固形筆記体の温度に伴う欠陥の発生、および製造過程において高い成形性および切削性を有する。この固形筆記体は、使用時の削り直しに際しても高い切削性を有している。特に、外殻が内芯よりも相対的に低い強度を有する場合には、外殻が筆跡表面を擦過する際に生じた摩擦熱により筆跡濃度の低下や筆跡が削れることを防止することが可能となる。そして、外殻が内芯よりも相対的に低い強度を有する場合であっても、本願発明の構成とすることで、製造する際の成形性および寸法安定性に優れるため、製造の歩留まりを高くすることが可能である。
また、製造過程や使用時に固形筆記体の先端を刃物で削る際に、外殻と刃物との干渉を抑制することができるため、内芯が折れてしまうことを防止することができる。
さらに、固形筆記体を用いて被筆記面に筆記する際、被筆記面と外殻との干渉を抑制することができ、これにより、筆記感を向上させることができる。
本発明による固形筆記体の長手方向での断面の一部を、模式的に示した図である。 本発明による固形筆記体を長手方向と垂直方向での断面を、模式的に示した図である。 本発明による固形筆記体の筆跡の、変色挙動示す説明図である。 樹脂粒子の10%圧縮強度の測定方法の説明図。
<固形筆記体>
本発明による固形筆記体は、
(i)(イ)、(ロ)、および(ハ)成分からなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と第一の賦形材を含む筆記可能な内芯と、
(ii)第二の賦形材と、有機フィラーとを含んでなり、前記内芯の外周面を被覆する外殻と、
を具備したことをひとつの特徴的とするものである。
本発明による固形筆記体の構成を図1および図2を参照しながら説明すると以下の通りである。本発明による典型的な固形筆記体(1)の長さ方向の断面図は図1に、長さ方向と垂直方向の断面図は図2に、それぞれ示す通りである。具体的には、本発明による固形筆記体は、内芯(2)と、その外周面を被覆する外殻(3)とから構成されている。
(i)内芯
本発明による固形筆記体の内芯およびそれによる筆跡は、第1の発色状態と第2の発色状態を互変的に呈することができる。
本発明において、「第1の発色状態と第2の発色状態を互変的に呈する」とは、有色(1)と有色(2)の二つの発色した状態、発色状態と消色状態、または消色状態と発色状態を互変的に呈することを意味する。
即ち、第1の発色状態から温度が上昇して第2の発色状態へ変化する場合、有色(1)から有色(2)への変化、発色状態から消色状態への変化、即ち、加熱消色型の変化を含んでいる。
本発明による固形筆記体で筆記した際の筆跡の変色挙動について、加熱消色型を例に、図3と共に説明する。図3において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度T(以下、完全消色温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度T(以下、消色開始温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度T(以下、発色開始温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度T(以下、完全発色温度ということがある)における濃度を示す点である。変色温度域は前記TとT間の温度域であり、発色状態と消色状態の両状態が共存でき、TとTの間の温度域において完全発色状態と完全消色状態を選択的に呈することができる温度域となる。また、線分EFの長さが変色の割合を示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ΔHと言うことがある)である。本発明において、このΔH値を有することで、一定の温度域で第1の発色状態と第2の発色状態が選択的に保持されるヒステリシス特性を示すこととなる。
本発明による固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(イ)成分としては、通常、感熱紙などの感熱材料に用いられる、所謂ロイコ染料を用いることができる。具体的には、ジフェニルメタンフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類などが挙げられる。
より具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3´,6´−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、3´,6´−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、3´,6´−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
本発明による固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群などがある。活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂などが挙げられる。また、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩を用いることもできる。
より具体的には、フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナンなどが挙げられる。
また、前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1,2,3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物なども用いることができる。
さらに、電子受容性化合物として炭素数3〜18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特許文献8)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特許文献9)、没食子酸エステル(特許文献10)等を用いた加熱発色型の可逆熱変色性組成物を適用することもできる。
本発明による固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体である(ハ)成分としては、具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、またはエーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリンなどを用いることができる。
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10〜16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17〜23の脂肪酸エステル化合物を用いてもよい。
具体的には、エステル類としては、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシルなどが挙げられる。
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロンなどが挙げられる。
さらに、総炭素数が12〜24のアリールアルキルケトン類としては、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトンなどが挙げられる。
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
さらに、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
Figure 2017043773
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、q1は0〜2の整数を示し、Xのいずれか一方は−(CHOCOR’又は−(CHCOOR’、他方は水素原子を示し、kは0〜2の整数を示し、R’は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Yはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又はハロゲンを示し、p1はそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。)
前記(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、さらにRが水素原子であり、且つ、aが0の場合がより好適である。
なお、(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(1a)で示される化合物が用いられる。
Figure 2017043773
(式中のRは、炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルなどを例示できる。
さらに、前記(ハ)成分として、下記一般式(2)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 2017043773
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、p2はそれぞれ独立に1〜3の整数を示し、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又はハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルなどを例示できる。
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 2017043773
(式中、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又はハロゲン原子のいずれかを示し、p3はそれぞれ独立に1〜3の整数を示し、q3は1〜20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18−オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルなどを例示できる。
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 2017043773
(式中、Rは炭素数1〜21のアルキル基又はアルケニル基を示し、p4はそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルなどを例示できる。
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 2017043773
(式中、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又はハロゲン原子のいずれかを示し、p5はそれぞれ独立に1〜3の整数を示し、q5は1〜20の整数を示す。)
前記化合物としては、こはく酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,18−オクタデカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステルなどが挙げられる。
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 2017043773
(式中、Rは炭素数4〜22のアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基、炭素数4〜22のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、q6は0又は1を示す。)
前記化合物としては、4−フェニル安息香酸デシル、4−フェニル安息香酸ラウリル、4−フェニル安息香酸ミリスチル、4−フェニル安息香酸シクロヘキシルエチル、4−ビフェニル酢酸オクチル、4−ビフェニル酢酸ノニル、4−ビフェニル酢酸デシル、4−ビフェニル酢酸ラウリル、4−ビフェニル酢酸ミリスチル、4−ビフェニル酢酸トリデシル、4−ビフェニル酢酸ペンタデシル、4−ビフェニル酢酸セチル、4−ビフェニル酢酸シクロペンチル、4−ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル、4−ビフェニル酢酸ヘキシル、4−ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチルなどを例示できる。
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(7)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 2017043773
(式中、Rは炭素数3〜7のアルキル基を示し、Xは水素原子、メチル基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、メチル基のいずれかを示し、Zは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。)
更に、電子受容性化合物として炭素数3〜18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特開平11−129623号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル(特開2003−253149号公報)等を用いた加熱発色型の可逆熱変色性組成物を適用することもできる。
本発明による固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(イ)、(ロ)、(ハ)の3成分の配合比としては、濃度、変色温度変色形態や各成分の種類により決まるが、一般的に所望の特性が得られる配合比は、質量比で、(イ)成分:(ロ)成分:(ハ)成分=1:0.1〜50:1〜800であり、好ましくは、(イ)成分:(ロ)成分:(ハ)成分=1:0.5〜20:5〜200である。これらの各成分は、各々二種類以上を混合して用いてもよい。
本発明による固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料には、その機能に影響を及ぼさない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤、防腐・防黴剤などの各種添加剤を添加することができる。
本発明による固形筆記体は、第1の発色状態と第2の発色状態が、有色(1)と有色(2)の変化をする場合、染料や顔料などの非熱変色性の着色剤を配合することで達成できる。
本発明に用いるマイクロカプセル顔料は、内包物と壁膜の質量比が、内包物:壁膜=1:1〜7:1であることが好ましい。この範囲より内包物の比率が大きくなると、壁膜の厚みが薄くなり、圧力や熱に対して弱くなりマイクロカプセルが破壊される傾向があり、この範囲より小さいと、発色状態での濃度や視認性が低下する傾向がある。より好ましくは、内包物:壁膜=1:1〜6:1であり、この範囲にあると、発色状態での濃度や視認性が高く、マイクロカプセルが破壊されることがない。
本発明による固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料は、特に限定されないが平均粒子径が0.1〜50μmであることが好ましい。この範囲より小さいと、発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと固形筆記体の内芯に用いる際に、分散安定性や加工性が劣る傾向が見られる。より好ましくは、0.3〜30μmである。この範囲にあると、発色状態も良好で、分散安定性や加工性がよくなる。
本発明でいうマイクロカプセル顔料の平均粒子径とは、粒子径を測定したときの体積基準で表わしたD50の値で表される。測定の一例としては、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置((株)堀場製作所製;LA−300)を用いて測定してその数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出した値を用いる。
本発明による固形筆記体の内芯に用いるマイクロカプセル顔料の配合割合としては、前記固形筆記体の内芯全質量に対し、1〜70質量%が好ましい。この範囲より小さいと発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと固形筆記体の内芯の強度が低下する傾向が見られる。好ましくは、5〜50質量%、さらに好ましくは、10〜40質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の強度と筆跡濃度を両立することができる。
前記マイクロカプセル顔料は、製造方法としては、例えば、非特許文献1に記載されているような一般的に知られている方法を用いることができる。具体的には、コアセルベート法、界面重合法、界面重縮合法、in−situ重合法、液中乾燥法、液中硬化法、懸濁重合法、乳化重合法、気中懸濁被覆法、スプレードライ法などが挙げられ、適宜選択される。
本発明による固形筆記体の内芯に用いる第一の賦形材としては、例えばワックス、ゲル化剤、粘土などを用いることが出来る。ワックスとしては、従来公知のものであればいずれを用いてもよく、具体的にはカルナバワックス、木ろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、スチレン変性ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、および側鎖結晶性ポリオレフィンなどが挙げられる。ゲル化剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば12ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油、高級脂肪酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイトなどが挙げられる。第一の賦形材としては、ポリオレフィンワックス、ショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルの少なくとも一種を含有していることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、αオレフィン重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のワックスなどが挙げられる。これらの第一の賦形材は2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
特に、前記ポリオレフィンワックスのうち、軟化点が100℃〜130℃の範囲にあり、かつ針入度が10以下であるものは、筆記感が高いために、好ましく用いられる。針入度が10を越えると、固形筆記体の内芯が柔らかすぎて筆記し難くなる傾向が見られ、しかも、擦過消去時に筆跡が紙面上で伸びてしまう(ワックスが薄層化される)ために筆記面の空白部分を汚染したり、他の紙への色移りや汚れを生じる。
尚、前記ポリオレフィンワックスの軟化点、針入度の測定方法は、JIS K2207に規格化されており、針入度の値は、0.1mmを針入度1と表す。従って、数字が小さいほど硬く、大きいほど柔らかい固形筆記体の内芯である。
具体的には、ネオワックスシリーズ(ヤスハラケミカル(株)製 ポリエチレン)、サンワックスシリーズ(三洋化成工業(株)製 ポリエチレン)、ハイワックスシリーズ(三井化学(株)製 ポリオレフィン)、A−Cポリエチレン(Honeywell社製 ポリエチレン)等が挙げられる。
本発明による固形筆記体の第一の賦形材として、ショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルの少なくとも一種を含有していると、筆跡濃度の向上を図ることが出来るため好ましく用いられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、特にC12〜C22の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好ましく、より好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸が有用である。具体的には、三菱化学フーズ(株)製:リョートーシュガーエステルシリーズ、第一工業製薬(株)製:シュガーワックスシリーズ等が挙げられる。
また、本発明による固形筆記体の内芯に用いるデキストリン脂肪酸エステルとしては、特にC14〜C18の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好適であり、より好ましくは、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸が有用である。具体的には、千葉製粉(株)製:レオパールシリーズ等が挙げられる。
また、前記第一の賦形材として側鎖結晶性ポリオレフィンを用いることが好ましい。ここで側鎖結晶性ポリオレフィンとは、直線状の主鎖に対して、比較的長い側鎖が結合した構造を有している。通常の直鎖状ポリオレフィンは、直鎖状である主鎖が折りたたまれて結晶化するために、融解が広い温度範囲で起こる傾向がある。これに対して側鎖結晶性ポリオレフィンとは、結晶化が主としてポリオレフィン主鎖ではなく側鎖で起こり、その結果、融点が低く、また融解が狭い温度範囲で起こるという特徴を有している。このような側鎖結晶性ポリオレフィンは、側鎖に例えば、C12〜C28の長鎖アルキル基を有しているものが好ましい。また、側鎖の長鎖アルキル基は、直鎖型であっても分岐型でも特に限定されないが、結晶性の観点から直鎖型がより好ましい。なお、この側鎖であるアルキル基は置換基を有してもよいが、それによって結晶性が下がる傾向がある。したがって、結晶性を調整するために、側鎖結晶性ポリオレフィンの側鎖を、例えばスチレンなどによって変性することもできる。また、長鎖アルキル基は、水素結合を形成する官能基を持っていると、水素結合によって長鎖アルキル基同士が結合して凝集し、結晶性が向上するため好ましい。
また、側鎖結晶性ポリオレフィンには、高度な分岐構造を有するポリオレフィン(以下、簡単のために高分岐ポリオレフィンという)が包含されるが、これを賦形材として用いることができる。すなわち高分岐ポリオレフィンも、結晶化の際に主鎖が折りたたまれることが少ないため、融点が低く、また融解が狭い温度範囲で起こる。
なお、固形筆記体の機械的強度や変色特性、製造時の取り扱い性の観点から、賦形材の重量平均分子量Mwが2,000〜50,000であるものが好ましく、10,000〜30,000であるものがより好ましい。また、賦形材の数平均分子量Mnが1,000〜10,000であるものが好ましい。ここで、重量平均分子量、および数平均分子量はポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたものである。
このような側鎖結晶性ポリオレフィンとしては、HSクリスタ4100(Mw:16,000、m.p.:44.4℃)、HSクリスタ6100(Mw:28,000、m.p.:60.6℃)(いずれも商品名、豊国製油株式会社製)、エルクリスタ4100(Mw:16,000)、エルクリスタ6100(Mw:28,000)(いずれも商品名、出光興産株式会社製)などが挙げられ、高分岐ポリオレフィンとしては、VYBAR103(Mw:17,348、Mn:4,400、m.p.:67.7℃)、VYBAR260(Mw:20,278、Mn:2,600、m.p.:54.7℃)、VYBAR343(Mw:10,164、m.p.:36.0℃)、VYBAR825(Mn:2,800)(いずれも商品名、ベイカーヒューズ社製)などが挙げられる。
本発明による固形筆記体の第一の賦形材の配合割合としては、内芯全質量に対し0.2〜70質量%、が好ましい。この範囲より小さいと固形筆記体の内芯としての形状を得られ難くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと十分な筆記濃度が得られにくくなる傾向が見られる。好ましくは、0.5〜40質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の内芯の形状と筆跡濃度を両立することができる。
本発明による固形筆記体の内芯は、必要に応じて、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、樹脂、フィラー、粘度調整剤、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、紫外線防止剤、光安定材、香料などが挙げられる。前記樹脂としては、固形筆記体の内芯の強度などを向上する目的で配合されるが、天然樹脂、合成樹脂を用いることができる。具体的には、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ピロリドン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アミド系樹脂、塩基性基含有樹脂などが挙げられる。前記フィラーとしては、例えばタルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、窒化硼素、チタン酸カリウム、ガラスフレークなどが挙げられ、特にマイクロカプセル顔料に対する変色性能への影響などや成形性の点からタルク、炭酸カルシウムが好ましい。フィラーは、本発明による固形筆記体の内芯の強度の向上や書き味を調整する目的で配合される。また、フィラーを配合することによって、成形性や切削性を改善することが可能である。本発明による固形筆記体の内芯に用いるフィラーの配合割合としては、内芯全質量に対し、10〜55質量%が好ましい。この範囲より小さいと内芯の強度が低下する傾向がみられ、この範囲より大きいと、発色性が低下したり、書き味が劣る傾向がみられる。
本発明による固形筆記体の内芯に染料や顔料などの非熱変色性の着色剤を配合することで、固形筆記体により得られる筆跡を、第1の発色状態である有色(1)から、第2の発色状態である有色(2)へ変化させることができる。
(ii)外殻
本発明による固形筆記体は、内芯の外周面に外殻を具備している。この外殻は、第二の賦形材と、有機フィラーを含んでいる。
本発明において、第二の賦形材としては、例えばワックス、ゲル化剤、粘土などを用いることが出来る。ワックスとしては、従来公知のものであればいずれを用いてもよく、具体的にはカルナバワックス、木ろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、スチレン変性ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、および側鎖結晶性ポリオレフィンなどが挙げられる。
ゲル化剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば12ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油、高級脂肪酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。
第二の賦形材としては、ポリオレフィンワックス、ショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステル、側鎖結晶性ポリオレフィンの少なくとも一種を含有していることが好ましい。一実施形態においては、第一の賦形材に用いることができるものと同じ材料から選択して用いることができる。第二の賦形材として、内芯に用いた第一の賦形材と同じ材料を用いると、内芯と外殻の界面が適度に融合し、無用な界面剥離を起こさないため好ましい。また、第二の賦形材は2種類以上を組み合わせて用いることもできる。第二の賦形材の配合割合としては、外殻全質量に対して、10質量%〜90質量%であることが好ましい。この範囲にあると、成形性が良くなるため好ましい。賦形材の配合量は、より好ましくは15質量%〜90質量%であり、さらに好ましくは15質量%〜50質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の成形性、切削性がさらに向上する。
本発明において、外殻は有機フィラーを含んでいる。ここで、有機フィラーは有機材料からなり、賦形材中に分散された状態で存在している。このため、固形筆記体の断面を観察すると、第二の賦形剤のマットリックス中に、有機フィラーがたとえば微粒子状に分散されていることが確認できる。この有機フィラーは、外殻の機械的強度を適切に調整する機能を有するものと考えられる。
このような有機フィラーは、第二の賦形材と非相溶の有機材料からなる。したがって、第二の賦形材の材料に応じて選択されるが、例えば、アミド樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、およびシリコーン樹脂からなる群から選択されるものが好ましい。具体的には、アミド基、イミド基などを繰り返し単位に含むホモポリマーまたはコポリマー、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アルキルシロキサンなどを繰り返し単位に含むホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。なお、本発明において、アクリル樹脂とはアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体を意味するものとする。
本発明において、有機フィラーとして用いることが好ましい有機材料としては、アクリル酸アルキルエステル重合体、またはメタクリル酸アルキルエステル重合体からなる群から選択されるアクリル樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。
ここで、これらのアクリル樹脂に含まれるアルキル基に含まれる炭素数が多い方が結晶性が低いためにフィラーの強度が低くなり、硬度が低下し、外殻のヤング率が低くなる傾向にあり好ましい。具体的にはアルキル基に含まれる炭素数が2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。このとき、アルキル基の一部が水酸基またはアルコキシ基により置換されていてもよい。
このようなアクリル樹脂としては、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソレシル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基、n−ブトキシエチル基、メトキシポリエチレングリコール基などの基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの重合体が挙げられる。また、アクリル樹脂以外の有機材料としては、ポリスチレン、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジプロピルポリシロキサン、ポリアミドなどが挙げられる。これらの樹脂は、架橋樹脂とすることもできる。このような架橋樹脂は耐熱性や耐溶剤性が向上するなどの効果が得られるため好ましい。いずれの有機材料も、ポリマー側鎖に長い炭化水素鎖を有するものは、外殻のヤング率が低くなる傾向にあり、好ましい。
本発明において有機フィラーとしては、有機物からなる樹脂粒子であることが好ましく、外殻中に分散された状態で存在するものが好ましい。有機フィラーが樹脂粒子である場合、その有機フィラーそのものが適切な機械的強度を有することが好ましい。具体的には、樹脂粒子の10%圧縮強度が1〜30MPaであることが好ましく、1〜20MPaであることがより好ましい。
ここで10%圧縮強度とは、樹脂粒子に荷重を加えたとき、粒子径の10%の変位が生じた時点での圧力である。
樹脂粒子の10%圧縮強度を上記数値範囲とすることにより、外殻の機械的強度を適切に調整しつつ、温度変化によって固形筆記体が膨張または収縮したときの、内芯の体積変化と外殻の体積変化の差が小さくなって、亀裂などが生じにくくなり、固形筆記体の強度をより向上させることができる。さらには、固形筆記体製造工程や実際の使用環境下における熱膨張を抑制することができる。
本発明において、10%圧縮強度は従来知られている一般的な方法により測定することができる。この測定方法は、例えば以下のようなものである。測定には、微小圧縮試験機が用いられ、このような試験機としては例えば島津製作所社製微小圧縮試験機(商品名:MCTシリーズ)が知られている。この試験機を用いた、より具体的な測定方法を図4を参照しながら説明すると以下の通りである。まず、試料台上5に、樹脂粒子4を配置する。ここで、試料台の表面上に配置された樹脂粒子の、試料台表面に鉛直方向の樹脂粒子の最大寸法dを樹脂粒子に厚さと定義する。樹脂粒子が真球形である場合、樹脂粒子の直径dと厚さとが一致する。そして、配置された樹脂粒子4に対して、試料台の鉛直方向から圧盤6を降下させて加圧したとき、樹脂粒子は変形していく。変形により樹脂粒子の厚さが10%変化する圧力を10%圧縮強度(MPa)とする。
(測定条件)
温度:20℃(常温)
相対湿度:65%
最大試験荷重:9.8mN
負荷速度:0.142mN/分
なお、樹脂粒子の形状や厚さには分布があるため、統計的に十分な個数の樹脂粒子について上記条件で測定を行って、その平均値を10%圧縮強度とすることが好ましい。
なお、本発明においては後述するように外殻の強度が相対的に内芯より低いことが好ましい。すなわち、外殻の強度が相対的に低いことにより、外殻が筆跡表面を擦過する際に筆跡を削り取ることが防止される他に、熱変色性固形筆記体においては、擦過による摩擦熱が低減されるので筆跡濃度の低下が防止されるのである。ただし、単に外殻の強度を低くすると固形筆記体の成形性や切削性が劣化するという問題が起こってしまうので、従来の固形筆記体に対して、単純に外殻の強度を低くするだけでは、実用性の高い固形筆記体は実現できない。このような問題を、本発明では外殻に対して、前記したような特徴を有する有機フィラーを用いることで改善している。すなわち、外殻に有機フィラーを含ませることで、熱変色性固形筆記体に特有の、外殻が筆跡を擦過する際に起きる摩擦熱による筆跡濃度低下を防止しながら、成形性や切削性を向上することができるのである。
有機フィラーは、外殻中に均一に分布していれば形状は特に限定されず、球状、繊維、不定形形状など任意の形状とすることができる。
ここで球状とは、完全な球状だけを意味するものではなく、真球状、略球状、扁平した形状、ラグビーボール状、繭状などを含むものであり、平面に対して点接触が可能な形状を意味している。
固形筆記体を押出成形により製造する場合に、有機フィラーが球状樹脂粒子であると、温度変化による欠陥の発生が少なく、また筆記時の擦過による筆跡の濃度低下も起こりにくいという本発明による効果を維持しながら、固形筆記体の成形性および切削性が改良される傾向にある。このため、有機フィラーは球状樹脂粒子であることが好ましい。
そして、有機フィラーが球状樹脂粒子である場合には、その平均粒子径が0.1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましい。有機フィラーの平均粒子径を上記数値範囲内のものとすることにより、固形筆記体の成形性の向上や、先端を刃物で削る際の内芯の折れを防止することができる。
ここで、有機フィラーの平均粒子径は、マイクロカプセルと同様の方法で測定することができる。なお、有機フィラーが球状樹脂粒子でない場合、製造時の成形性や切削性改良への寄与は小さくなるが、筆記特性などの改良効果は維持される。
本発明に用いる事ができる球状樹脂粒子としては、具体的には、ガンツパールシリーズ、スタフィロイドシリーズ(以上、商品名、アイカ工業株式会社製)、マリリンFM、HFシリーズ、(商品名、群栄化学工業株式会社製)、トレパールシリーズ、ナイロン微粒子SPシリーズ(以上、商品名、東レ株式会社製)、テクポリマーシリーズ(商品名、積水化成品工業株式会社製)、シリコーンパウダーKMPシリーズ(商品名、信越化学工業株式会社製)、トスパールシリーズ(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社製)、アートパールシリーズ(商品名、根上工業株式会社製)、エポスターシリーズ(商品名、株式会社日本触媒製)などが挙げられる。
また、外殻は有機フィラーとは別の有機材料として、配合後に賦形材マトリックス中に不定形状態で存在するものを含んでいてもよい。すなわち、賦形材とは非相溶であるが、有機フィラーとは異なり、配合後には配合前の形状を維持しない材料である。このような材料としては、水溶性ポリアミドなどが挙げられる。
有機フィラーの配合率は、外殻の他の成分の種類などに応じて変化するが、一般に外殻の全質量に対し、1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることが好ましい。
本発明において、外殻は前記した有機フィラーのほかに、無機フィラーを含んでいてもよい。このようなフィラーとしては、体質剤などに用いられる炭酸カルシウム、粘土、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、マグネシウムオキシサルフェートウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、ワラストナイト、アタパルジャイト、セピオライト、シリカなど、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化ホウ素、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックス類、天然黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛類、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック類などが挙げられる。
固形筆記体の耐光性や成形性、固形筆記体の強度を改良するという観点からは無機フィラーの配合割合が多いことが好ましい。一方、外殻の親和性の改良や機械強度の調整をするという観点からは無機フィラーの配合量が少ないことが好ましい。無機フィラーの配合割合が好ましくは10質量%〜75質量%であり、より好ましくは、10質量%〜60質量%であり、さらに好ましくは、30質量%〜50質量%である。この範囲にあると、固形筆記体の耐光性、成形性、親和性および固形筆記体の強度の全てが向上するのでより好ましい。
本発明において、外殻はさらに有機フィラーを形成する材料以外の樹脂を含むことができる。このような樹脂を配合することによって、外殻および固形筆記体全体のヤング率を調整することができる。
外殻に樹脂を配合する場合、その配合割合としては、有機フィラーと賦形材の配合割合にも依存するが、本発明の効果を得るためには、外殻全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。一方で、成形性などを良好に保つために、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
適当な樹脂としては、スチレンと、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン・ブチレン、エチレン・プロピレン、ビニルポリイソプレンなどのポリオレフィンなどと、から成るスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、塩ビ系エラストマー、フッ素系エラストマーなどのエラストマー類、天然ゴム、シリコンゴムなどの合成ゴム類、アイオノマー樹脂などのエチレン系樹脂などが挙げられる。中でも不飽和結合を有するモノマーを付加重合させたことにより得られる重合体が挙げられる。
不飽和結合を有するモノマーとしては、具体的には、(i)エチレン、プロピレン、ブチレン、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、シクロヘキセンなどのオレフィン化合物、(ii)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、および酪酸ビニルなどの、ビニルアルコールとカルボン酸とのエステル、(iii)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルおよびメタクリル酸ブチルなどの、アクリル酸またはメタクリル酸とアルコールとのエステル、(iv)アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和結合を有するカルボン酸、などが挙げられる。このような不飽和結合を有するモノマーは、2種類以上組み合わせて用いることができる。
本発明において外殻に用いられる樹脂は、特に、(i)オレフィン化合物と、(ii)ビニルアルコールとカルボン酸とのエステル、または(iii)アクリル酸またはメタクリル酸とアルコールとのエステルとを重合させた共重合体が好ましい。このような樹脂を用いると温度変化にともなう内芯の膨張・収縮に伴う体積変化の際にも外殻が好適に追従するため内芯と外殻の親和性に優れた固形筆記体を得ることが出来る。さらに成形性にも優れ、強度の高い固形筆記体を得ることが出来る。すなわち内芯と外殻との親和性と成形性とを両立させることが可能となる。これらの中でも、最も好ましいのは、エチレン酢酸ビニル共重合体とその誘導体またはエチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体などのエチレン・アクリレート共重合体である。
また、上記した樹脂は種々の構造を有するものがあるが、構造とは独立に、硬度が高いものが好ましい。
ここで、物質の硬度は種々の基準で表すことができるが、本発明においては、デュロメーター硬度により樹脂の硬度を表す。
また、デュロメーター硬度とは、押針を試料の加圧面に押し付け、そのときの試料の変形量により決まる硬度である。具体的には、JIS−K7215に準じて測定することができる。
本発明において樹脂のデュロメーター硬度(デュロメーターA硬度)は、30以上100以下であることが好ましく、60以上95以下であることがより好ましい。従来、固形筆記体に一般的に用いられていた樹脂であるポリビニルアルコールや、スチレンアクリレート樹脂は、相対的に硬度が高く、これらの樹脂を用いた場合には外殻のヤング率が非常に高くなり、本発明の効果を達成することが困難である。
本発明において、外殻に用いられる樹脂の分子量は特に限定されず、樹脂の種類によって適当な分子量の樹脂を用いることができる。例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体を用いる場合には、数平均分子量が10000〜50000、好ましくは25000〜35000である。
ここで数平均分子量は、浸透圧法によって測定することができる。なお、分子量の異なった種々の樹脂の数平均分子量を測定する場合には、メルトフローレートと浸透圧法により測定した数平均分子量との検量線を作製しておき、メルトフローレートから数平均分子量を求めることもできる。
本発明による固形筆記体に用いる外殻は、各種機能を付与する目的などで、必要に応じて、各種添加剤を添加することができる。
添加剤としては、着色剤、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、香料などが挙げられる。これらの添加剤は、任意のものを用いることができる。また、単一の添加剤が複数の機能を有していてもよい。例えば、ステアリン酸のように滑り剤として機能すると同時に、賦形材としても機能するものもある。このように滑剤の機能を有する添加剤を添加した場合には、成形性を向上することができるなど、さらなる効果が得られる。また、紫外線吸収剤は単に紫外線を吸収するにとどまらず、外殻に含まれる各種材料が紫外線によって退色などすることを防ぐので、光安定性や保存性を改良する機能を併せ持つことがある。
<曲げ強度>
本発明による固形筆記体において、外殻の曲げ強度は、内芯の曲げ強度以下であることが好ましい。より具体的には、内芯の曲げ強度をT(MPa)としたとき、外殻の曲げ強度は、0.1T(MPa)以上1T(MPa)未満であることが好ましく、0.5(MPa)以上0.9T(MPa)以下であることがより好ましい。
内芯の有する曲げ強度は、例えば、10〜30MPaであることが好ましく、10〜25MPaであることがより好ましく、14〜20MPaであることがさらに好ましい。外殻の有する曲げ強度は、例えば、5〜25MPaであることが好ましく、10〜18MPaであることがより好ましく、10〜16MPaであることがさらに好ましい。なお、曲げ強度は、JIS−S6005に準じて測定することができる。
<ヤング率>
本発明による固形筆記体は、ヤング率が3.5GPa以下であることが好ましく、3.0GPa以下であることがより好ましく、2.5GPa以下であることがさらに好ましい。
そして、固形筆記体がこのようなヤング率を有するためには、外殻のヤング率は3.5GPa以下であることが好ましく、3.0GPa以下であることがより好ましく、2.5GPa以下であることがさらに好ましい。従来の固形筆記体のヤング率は5GPa以上であることが一般的であり、10GPa以上の製品も市販されている。それに対して、本発明による固形筆記体は相対的に低いヤング率を有しているが、そのような低いヤング率は、外殻に柔軟性の高い有機フィラーを用いることにより達成することができるものと推定される。
ここで、ヤング率は、JIS−S6005に準じて、円柱形状の試料について曲げ強度を測定した場合に、試料破損が起こった変位(最大変位)、破損時の荷重、支点間距離および試料直径から、下記式により測定することができる。
E=4PL/3πdσmax
ここで、
E: ヤング率(Pa)、
P: 荷重(N)、
L: 支点間距離(m)、
d: 試料直径(m)、
σmax: 最大変位(m)
である。
なお、外殻のヤング率は、外殻を形成させるための組成物のみから形成させた試料のヤング率を測定することで代用することができる。
適切なヤング率を有する外殻を用いると、固形筆記体の内芯と外殻との親和性が改良され、製造時に形成される欠陥が減少して、耐衝撃性などの強度を向上させることができる。また、製造時における成形性も改良される。外殻のヤング率および固形筆記体そのもののヤング率を調整することで、可逆熱変色性組成物を用いた固形筆記体の物性が改良されることは、特許文献1〜6などにも示唆されていない。
本発明による固形筆記体のひとつの好ましい実施形態は、
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と第一の賦形材とを含んでなる内芯と、
第二の賦形材と、前記第二の賦形材と非相溶である樹脂粒子とを含んでなり、前記内芯の外周面を被覆する外殻と
を具備してなる固形筆記体である。
本発明による固形筆記体の別の好ましい実施形態は、
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と第一の賦形材とを含んでなる内芯と、
第二の賦形材と、前記第二の賦形材と有機フィラーとを含んでなり、前記内芯の外周面を被覆する外殻と
を具備してなり、前記固形筆記体全体のヤング率が3.5GPa以下であることを特徴とする固形筆記体である。
<固形筆記体の製造方法>
本発明による固形筆記体の製造方法としては、押出成形や、圧縮成形を用いて製造することができる。具体的に一例を挙げると、内芯の塊状物の外周面に外殻を配設しプレスにて圧縮成形をするなどして、内芯の外周面を被覆する外殻を設けた固形筆記体を得ることができる。なお、本発明による固形筆記体は、内芯と外殻との二層構造を有するものが典型的であるが、それ以上の多層構造とすることもできる。例えば、内芯と外殻との間に、硬度や熱膨張係数などが適当な中間層を設けることにより、内芯と外殻との親和性をさらに高めることができる。このような中間層は、内芯と同様の感温変色性色彩記憶組成物を含む成分からなるものであってもよく、また筆跡として視認できないものであってもよい。また、そのような中間層を2以上具備してもよい。さらには外殻に別の被覆成分からなる被覆層を形成してもよい。
なお、本発明による固形筆記体の製造方法においては、内芯を構成する組成物と、外殻を構成する組成物と、必要に応じてその他の層を構成する組成物とを組み合わせ、一般的には高温条件下で成形を行って固形筆記体を製造する。このため、固形筆記体に含まれる感温変色性色彩記憶組成物は、常温における発色状態または消色状態とは異なる着色状態となっている。このため、高温における成形後に、常温における着色状態にするために、冷却に付されるのが一般的である。従来の固形筆記体においては、このような冷却によって欠陥が発生する可能性があったが、本発明による固形筆記体においては、温度変化による欠陥の発生が抑制されており、製造工程における歩留まりが改善されている。
なお、本発明による固形筆記体の太さや長さは、目的に応じて任意に選択することができる。例えば本発明による固形筆記体を鉛筆の芯として利用する場合を考えると、太さは一般的には2.0〜5.0mmであり、2.5〜4.0mmであることが好ましく、長さは一般に60〜300mmであり、80〜200mmであることが好ましい。また、内芯の太さおよび外殻の厚さも任意に選択することができるが、外殻の厚さが厚いと耐衝撃性が優れる傾向にあり、一方で外殻の厚さが薄いと内芯の露出量が多くなるため、使い勝手に優れる傾向にある。書き味が向上する傾向にあるので、内芯の半径長さに対する外殻の厚さが10〜100%であることが好ましく、20〜50%であることがより好ましい。
なお、本発明による固形筆記体は、鉛筆以外の用途、例えばメカニカルペンシルの芯、クレヨンなど、にも利用可能であり、太さや長さは用途に応じて適切に調整できる。
本発明による固形筆記体の内芯は、筆記濃度を良好に保つという観点から、外殻と比較して硬く摩耗しやすいことが好ましい。
内芯の材料として、外殻のヤング率を調整するのに適した樹脂、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体とその誘導体またはエチレン・アクリレート共重合体などを高い比率で用いると、芯が摩耗しにくくなり、筆記濃度が下がるなどの傾向があるため、注意が必要である。
<筆記具および筆記具セット>
本発明による固形筆記体は、各種被筆記面に対して、筆記することが可能である。さらに、その筆跡は、指による擦過や加熱具又は冷熱具の適用により変色させることができる。
加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。特に、擦過時に実質的に磨耗しない弾性体が好ましい。
摩擦部材は、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好ましく用いられる。
前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂などを用いることができる。前記摩擦部材は固形筆記体と別体の任意形状の部材である摩擦体とを組み合わせて固形筆記体セットを得ることもできるが、固形筆記体または、固形筆記体を外装収容物に収容した固形筆記具の外装に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れた筆記具セットとすることができる。具体的には、外装が木や紙などの鉛筆や、クレヨンなどの形状を有する筆記具に、摩擦部材を設けた形態の筆記具セットなどが挙げられる。
前記冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片などの冷媒を充填した冷熱変色具や保冷剤、冷蔵庫や冷凍庫の適用などが挙げられる。
(マイクロカプセル顔料Aの製造)
(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部、4,4’−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル 50.0質量部からなる可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0質量部、助溶剤40.0質量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル懸濁液を得た。前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセルを単離した。なお、前記マイクロカプセルの平均粒子径は2.3μmであり、T:−20℃、T:−10℃、T:48℃、T:58℃、△H:68℃、可逆熱変色性組成物:壁膜=2.6:1.0であった。このマクロカプセルは温度変化により、黒色から無色、無色から黒色へ可逆的に色変化するヒステリシス特性を示した。
(例1)
(内芯の混練物の製造)
マイクロカプセル顔料A(着色剤) 40質量部
タルク(無機フィラー) 38質量部
ショ糖脂肪酸エステル(第一の賦形材) 10質量部
(三菱化学フーズ(株)製 リョートーシュガーエステルP−170)
ポリオレフィンワックス(第一の賦形材) 10質量部
(三洋化成工業(株)製 サンワックス131−P 軟化点110℃ 針入度3.5)
ポリビニルアルコール(樹脂) 2質量部
上記配合物をニーダーにて混練し、内芯の混練物を得た。
(外殻の混練物の製造)
タルク(無機フィラー) 46質量部
有機樹脂粒子 30質量部
(ポリメタクリル酸メチル、 10%圧縮強度24.5MPa、平均粒子径6μm)
ショ糖脂肪酸エステル(第二の賦形材) 10質量部
(三菱化学フーズ(株)製リョートーシュガーエステルP−170(商品名))
ポリオレフィンワックス(第二の賦形材) 10質量部
(三洋化成工業(株)製サンワックス131−P(商品名)、軟化点110℃ 針入度3.5)
エチレン・アクリレート共重合体(樹脂) 4質量部
(日本ユニカー(株)製NUC−6170(商品名))
上記配合物をニーダーにて混練し、外殻の混練物を得た。
(固形筆記体の製造)
得られた内芯の混練物の外周面に、外殻の混練物を巻き付け、プレスにて圧縮成形を行い、外径φ3mm、長さ60mm(内芯がφ2mmであり、外殻の被覆厚が0.5mm)に成形し内芯の外周面を被覆した外殻を設けた固形筆記体を得た。
(例2〜16)
表1および2に示した配合で、実施例1と同じ方法で、固形筆記体を得た。
例1〜16で得られた固形筆記体を用いて、下記方法により固形筆記体の諸性能について評価を行った。得られた結果は表1および2に示した通りであった。
(1)筆記濃度
固形筆記体を用いて中性紙に筆記し、内芯の筆跡上を外殻が擦過した際の筆跡濃度を目視により評価した。
A:内芯の筆跡を外殻が擦過しても摩擦熱はほとんど生じず、濃度低下はほとんどない
B:内芯の筆跡を外殻が擦過して若干の摩擦熱が生じるため、濃度低下が確認される、十分な濃度を維持している。
C:内芯の筆跡を外殻が擦過して摩擦熱が生じるため、濃度低下が確認されるが、実用可能なレベルの濃度を維持している。
D:内芯の筆跡を外殻が擦過して摩擦熱が生じ、筆跡の消色により濃度低下が確認される。
(2)親和性:固形筆記体を目視観察し、さらに固形筆記体に捻り応力を加え、破損の程度を観察して外殻と内芯との親和性を評価した。
A:亀裂や潜在的なクラックが確認されず、親和性が非常に良好である。
B:潜在的なクラックが若干確認されたが、親和性は良好である。
C:潜在的なクラックが若干確認されたが、親和性は実用可能レベルである。
D:亀裂が確認され、親和性は不十分である。
(3)切削性
固形筆記体を鉛筆を作製し、鉛筆削りによって切削した際の切削性を目視により評価した。
A:芯折れの発生がなく、切削面も平滑であり切削性は非常に良好である。
B:芯折れの発生はほとんどなく、切削面も平滑であり、切削性は良好である。
C:芯折れが生じることがあるが、再度の切削により実用可能レベルの切削性である。
D:芯折れが頻繁に生じ、実用上問題となるレベルである。
(4)耐熱性
固形筆記体を80℃に加熱した際の外観変化を目視により評価した。
A:加熱により外観変化は生じず、非常に良好な耐熱性を示した。
B:加熱により外観変化はほとんど生じず、良好な耐熱性を示した。
C:加熱により、膨張や寸法変化が見られるものの、実用可能レベルの耐熱性を示した。
D:加熱により、著しい膨張や寸法変化が見られ、実用上問題となるレベルであった。
(5)成形性:固形筆記体の外観を目視により評価した。また、固形筆記体の長手方向における芯の直径のバラツキをマイクロメーターにて測定し、寸法精度を評価した。
A:成形性、寸法精度共に優れる。
B:成形性に優れる。
C:寸法精度はやや落ちるが、成形可能。
D:成形不可能。
(6)曲げ強度の測定:JIS−S6005に準じて測定した。なお、内芯を構成する混練物のみから形成された構造体および外殻を構成する混練物のみからなる構造体についても、固形筆記体と同様に曲げ強度を測定した。
(7)ヤング率:JIS−S6005に準じて、円柱形上の試料について曲げ強度を測定した場合に、試料破損が起こった変位(最大変位)、破損時の荷重、支点間距離、および試料直径から下記式により測定した。
E=4PL/3πdσmax
ここで、
E: ヤング率(Pa)、
P: 荷重(N)、
L: 支点間距離(m)、
d: 試料直径(m)、
σmax: 最大変位(m)
である。なお、測定にはEZ−Test EZ−SX(商品名、株式会社島津製作所製)を用いて、支点間距離40mm、荷重速度10mm/分で測定した。
(8)総合評価:上記(1)〜(7)から総合評価をした。
Figure 2017043773
Figure 2017043773
前記の評価結果からも明らかなように、本発明による固形筆記体は、外殻に有機フィラーを含まない固形筆記体と比較して、各性能が優れていることが明らかである。具体的には、外殻が有機フィラー(樹脂粒子)を含む固形筆記体(例1〜11および例16)は、切削性や成形性に優れている。そして、さらに固形筆記体のヤング率が3.0GPa以下である例1〜11の固形筆記体は、非常に優れた性能を発揮している。
(鉛筆の作製)
得られた各実施例の固形筆記体を用いて、丸形木軸内に収納成形することで鉛筆を得た。中性紙上に筆記すると、いずれも筆跡を形成することができた。また、前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去(消色)された。
(応用例A)
(固形筆記具の作製)
各実施例で得た固形筆記体を繰出し式のプラスチック製円筒状容器にセットして固形筆記具を得た。尚、容器の後端部にSEBS樹脂からなる摩擦体を設けてなる。 前記固形筆記具は、紙面上に筆記すると、鮮明な筆跡を形成することができ、重ね塗りによる濃淡形成も可能であった。また、容器の後端部に設けた摩擦体を用いて筆跡を摩擦することにより残色を生じることなく消去できた。前記固形筆記具は摩擦体を備えているため携帯性に優れた固形筆記体であった。
(応用例B)
(固形筆記具セットの作製)
各実施例で得た固形筆記体を用いた前述の鉛筆と、SEBS樹脂からなる摩擦体を組み合わせて固形筆記具セットを得た。 前記固形筆記具セットは、固形筆記体を用いて紙面上に筆記すると、鮮明な筆跡を形成することができ、重ね塗りによる濃淡形成も可能であった。また、付属の摩擦体を用いて筆跡を摩擦することにより残色を生じることなく消去できた。前記固形筆記具セットは筆記具と摩擦体がセットになっているため、筆記と消去が簡単にできるより利便性の高いものであった。
本発明による固形筆記体は、マーキングペン用、鉛筆用、色鉛筆用など各種筆記具の他、塗り絵や描画等の描画材、温度インジケーターなどの示温材料などに利用可能である。
1 本発明による固形筆記体
2 本発明による固形筆記体の内芯
3 本発明による固形筆記体の外殻
4 樹脂粒子
5 試料台
6 圧盤
本発明による加熱消色型の固形筆記体の筆跡の完全発色温度
本発明による加熱消色型の固形筆記体の筆跡の発色開始温度
本発明による加熱消色型の固形筆記体の筆跡の消色開始温度
本発明による加熱消色型の固形筆記体の筆跡の完全消色温度
ΔH ヒステリシスの程度を示す温度幅

Claims (9)

  1. (イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と第一の賦形材とを含んでなる内芯と、
    第二の賦形材と、有機フィラーとを含んでなり、前記内芯の外周面を被覆する外殻と
    を具備してなることを特徴とする固形筆記体。
  2. 前記固形筆記体全体のヤング率が3.5GPa以下である、請求項1に記載の固形筆記体。
  3. 前記外殻のヤング率が3.5GPa以下である、請求項1または2に記載の固形筆記体。
  4. 前記有機フィラーが、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、およびシリコーン樹脂からなる群から選択されるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固形筆記体。
  5. 前記有機フィラーが樹脂粒子からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固形筆記体。
  6. 前記樹脂粒子の10%圧縮強度が1〜30MPaである、請求項5に記載の固形筆記体。
  7. 前記樹脂粒子の平均粒子径が0.1〜100μmである樹脂粒子である、請求項5または6に記載の固形筆記体。
  8. 前記有機フィラーの配合率が、外殻の全質量に対して1〜50質量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固形筆記体。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の固形筆記体と、摩擦体とからなることを特徴とする固形筆記体セット。
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