JP7257757B2 - 可逆熱変色性固形描画体及びそれを用いた可逆熱変色性固形描画体セット - Google Patents
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Description
このような固形描画体は、着色材の他に、ワックスを主材として用いるものが多く、ワックス特有のねばつくような重い書き味を有しており、しかも、得られる描画線が粗く、塗りむらが生じやすいなどの課題を有している。
これに対し、着色材と、ワックスと、樹脂と、体質材とを含有し、上述のような、ねばつくような重い書き味が解消された固形描画体が知られているが、前記固形描画体は、硬い描画体となりやすく、描画の際に紙面などとの接触部分が摩耗しにくい傾向にあることから、幼児や筆圧の弱い者などが用いた場合には、得られる描画跡の発色が十分に得られ難く、また、広範囲を塗りつぶすことが難しいなどの課題を有している。(特許文献1)
上記課題を解決するため、書き味が滑らかで、弱い力でも優れた発色性を有した描画跡を残すことのできる、ゲル形成剤を使用したゲル状の固形描画体が提案され、広く普及されている。(特許文献2、3)
また、上述のようなゲル状の固形描画体において、光輝性物質を用いることで、滑らかな書き味とともに描画跡の光輝性を楽しむことのできる装飾性の高い固形描画体も提案されている。(特許文献4、5)
近年、固形描画体は、ボールペンやサインペンなどと同様、様々な目的やシチュエーションで使用されることが想定される。このため、上述のような、光輝性かつ優れた描画性を有するゲル状の固形描画体においても、描画跡の変色をも楽しむことのできる、機能性に優れたものが求められている。さらには、上記のようなゲル状の固形描画体は、幼児が用いる可能性が高いため、間違えて描画してしまった不要な描画跡を消去できるような利便性も求められている。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、固形描画体等を例示するものであって、本発明は、以下に示す固形描画体等に限定されない。
本発明の可逆熱変色性固形描画体(以下、単に「固形描画体」ともいう)は、少なくとも(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、光輝性顔料と、ゲル形成剤と、溶剤と、を含んでなり、ゲル形成剤と溶剤とでゲル状の賦形材を形成してなる固形描画体である。
本発明の固形描画体は、ゲル形成剤と溶剤とで、固形描画体の主たる骨格が形成されてなるもので、ゲル形成剤同士が結合して形成される網目状の分子鎖に溶剤が包含されている状態のゲル状構造を有し、この構造中に可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と光輝性顔料が含有されてなる、ゲル状の固形描画体である。
よって、本発明の固形描画体は、描画時に、被描画面と固形描画体が接している部分が描画圧や描画する際の摩擦などにより容易に摩耗し、低描画圧で描画した場合でも、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料および光輝性顔料が被描画面に十分に付着する。さらに、包含されている溶剤が放出され、潤滑剤として作用する。このため、本発明の固形描画体は、軽く滑らかな書き味で、発色性、光輝性に優れた描画跡をもたらすことができる。
また、本発明の固形描画体は、上述の通り、低い描画圧でも十分な発色を有する描画跡をもたらすことができるため、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に過剰な圧がかからず、該顔料の機能を十分に発揮でき、変色性に優れた描画跡を形成することができる。さらに、先に形成した描画跡上に重ねて描画する(重ね塗りする)際には、描画時に発生する摩擦熱による描画跡の熱変色を防ぐことができるため、描画跡に積層量による濃淡を形成することや、高濃度の描画跡を形成すること、さらには、広範囲の被描画面をムラなく塗りつぶすことが可能となる。
本発明のゲル形成剤は、溶剤とゲル状の賦形材を形成できれば特に限定されないが、具体的には一般的に用いられている水性ゲル形成剤や、油性ゲル形成剤を用いることができる。
水性ゲル形成剤とは、溶剤に水を含み、水とゲル状の賦形材を形成することが可能な材料のことであり、油性ゲル形成剤とは、溶剤に有機溶剤を含み、有機溶剤とゲル状の賦形材を形成することが可能な材料のことである。
ウレタン類、アミド類、増粘性多糖類、タンパク質等が挙げられるが、中でも、高級脂肪酸の金属塩を用いることが好ましく、炭素原子8~36個有する脂肪族カルボン酸の金属塩を用いることがより好ましい。これは、炭素原子8~36個有する脂肪族カルボン酸の金属塩を用いると、ゲル形成剤がもたらす骨格構造が、描画体自体は破損しにくい十分な強度を有しながらも、被描画面と接する部分は摩擦によって容易に摩耗しやすい構造となり、良好な発色性と光輝性を有する描画跡を形成しやすいためである。さらに好ましい水性ゲル形成剤は、炭素原子12~20個有する脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩であり、破損しにくい描画体強度を有すると共に、滑らかな書き味を奏する描画体が得られやすい。上記効果の向上および、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料にかかる描画圧を抑え、描画体の重ね塗り性の向上をも考慮すると、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムを用いることが好ましく、特には、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
また、水性ゲル形成剤を用いる場合には、10~25質量%であることが好ましく、油性ゲル形成剤を用いる場合には、10~40質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましい。
ゲル形成剤の含有率が上記数値範囲内であると、描画体自体が損壊しにくい十分強度を有しながらも、描画の際、被描画面と接する部分が摩擦によって容易に摩耗しやすい骨格構造となりやすく、よって、描画時にも折れることのない十分な描画体強度としながらも、滑らかな書き味で、発色性、光輝性に優れた描画跡を形成できる描画体とすることが容易となる。
本発明の固形描画体は、溶剤を含んでなる。前記溶剤は、描画の際、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料や光輝性顔料を被描画面に均等に付着させるための展色剤や、潤滑剤として作用するものである。上述のゲル形成剤とゲル状の賦形材を形成できれば特に限定はないが、含有させる可逆熱変色性マイクロカプセル顔料および光輝性顔料の機能を阻害しない必要がある。
有機溶剤として具体的には、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール等の多価アルコール類およびその誘導体、ポリブテン、ジアルキルカーボネート等が挙げられる。
さらには、水の他、多価アルコール類を用いることが好ましい。多価アルコール類を用いることで、水の蒸発を抑制し、描画体の形成性や滑らかな描画感を経時的に維持することが可能となる。さらに、多価アルコール類の中でも、グリセリンを用いることがより好ましく、グリセリンの高い保湿効果により、描画体から水分が蒸発し、描画体の形成性や描画感が悪化することを抑制しやすい。また、グリセリンは、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の機能を阻害せず、得られる描画跡の変色性を経時的に維持しすいことからも、好適に用いることができる。
よって、水性ゲル形成剤を用いる場合、溶剤として、グリセリンと水との混合溶剤を用いることが好ましく、グリセリンと水との混合溶剤を用いると、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の機能を保持したまま、経時的に安定した描画体が得られる上、前記混合溶剤は、描画時には優れた潤滑剤となって、描画感をより滑らかなものとしやすく、また、展色剤としても効果的に働き、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と光輝性顔料を被描画面に均等に付着させやすい。このため、発色性、光輝性、さらには変色性に優れた描画跡をもたらすことができる。
本発明におけるプロピレンオキシド基を有する多価アルコール類およびその誘導体としては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンソルビットなどが挙げられる。中でも、分子量が200~4000であるものを用いることが好ましい。上述のようなプロピレンオキシド基を有する多価アルコール類およびその誘導体は、流動性を有する油性有機溶剤であり、描画時、優れた潤滑剤となって、描画感をより滑らかなものとしやすい。また、前記油性有機溶剤は、展色剤としても効果的に働き、熱変色性マイクロカプセル顔料と光輝性顔料を被描画面に均等に付着させることができるため、発色性、光輝性に優れた描画跡を形成することができる。また、上述のようなプロピレンオキシド基を有する多価アルコール類およびその誘導体は、揮発性や吸湿性が低いため、油性ゲル形成剤ととともに、経時安定性に優れた賦形材を形成することができ、ドライアップや吸湿による変形や性能変化のない、経時安定性に優れた描画体を得ることができる。
上述の効果向上および、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の機能が阻害されることを抑制し、経時的に安定した変色性を奏する描画跡を形成することを考慮すると、ポリプロピレングリコールを用いることが特に好ましい。また、ポリプロピレングリコールは、油性ゲル形成剤として、脂肪酸類、特には12―ヒドロキシステアリン酸を用いる場合、優れた賦形材を形成し、滑らかな書き味と、優れた光輝性、発色性の描画跡を形成しやすいため、特に効果的である。
尚、水性ゲル形成剤を用いる場合には、40~70質量%であることが好ましく、油性ゲル形成剤を用いる場合には、20~50質量%であることが好ましい。
尚、本発明において水性ゲル形成剤を用いる場合には、ゲル形成剤と溶剤との含有比は、質量基準で1:3~1:5であることがより好ましく、油性ゲル形成剤を用いる場合には、ゲル形成剤と溶剤との含有比は、質量基準で1:0.5~1:1.5であることがより好ましい。
本発明による固形描画体は光輝性顔料を含んでなる。光輝性顔料は、得られる描画跡に光輝性を付与できるものである。
本発明の光輝性顔料としては、不透明性光輝性顔料または透明性光輝性顔料を用いることが好ましい。
本発明において、不透明性光輝性顔料は、得られる描画跡に強い光輝性を付与できるものであり、白紙のような明度の高い被描画面においても、優れた光輝性を有する描画跡を形成しやすい。
不透明性光輝性顔料の平均厚みは、例えば、0.5μm以上5μm以下であり、好ましくは1μm以上3μm以下である。
また、不透明性光輝性顔料の平均粒子径は、例えば、5μm以上500μm以下であり、好ましくは10μm以上200μm以下であり、より好ましくは10μm以上150μm以下である。不透明性光輝性顔料の平均粒子径が上記数値範囲内であれば、描画跡中に光輝性顔料が埋もれ、所望の光輝性が得られ難くなることを抑制できるとともに、製造時の混練で粉砕され、所望の光輝性が得られ難くなることを抑制することができる。
また、後述するように、粘弾性体を含んで構成される摩擦部材を用いることで、光輝性顔料を除去させることが可能となるが、この光輝性顔料の除去性と、得られる描画跡の光輝性のバランスを良好とすることを考慮すると、10μm以上110μm以下であることが好ましく、10μm以上60μm以下であることがより好ましく、20μm以上60μm以下であることが特に好ましい。
樹脂被覆された薄片状金属顔料を用いることは、描画跡の光輝性を向上させやすい上、描画体表面の光輝性を向上させやすい。このため、描画体表面で、他色との識別性を向上することができる。固形描画体が木軸やプラスチック軸などの不透明性の外軸内に収納される場合、固形描画体の先端部表面で他色との識別が必要となるが、樹脂被覆された薄片状金属顔料を用いることにより、それが容易可能となる。
また、樹脂被覆された薄片状金属顔料は、耐腐食性、耐薬品性に優れ、酸、アルカリに対し強い抵抗性を有していることから、経時的に安定した優れた光輝性を、描画体および得られる描画跡に付与しやすい。さらに、樹脂被覆された薄片状金属顔料は耐熱性にも優れていることから、高温条件下で成形されても、描画体および描画跡に優れた光輝性を付与しやすい。
さらに、樹脂被覆された薄片状金属顔料は、樹脂で被覆されているため、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に悪影響を与えにくく、該顔料の変色機能を安定して発現させやすい。また、樹脂被覆された薄片状金属顔料は、耐冷熱衝撃性にも優れているため、高温条件と低温条件の変化が起こる状況下においても、描画体および得られる描画跡は、優れた光輝性を維持しやすい傾向にある。よって、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を用いた本発明の固形描画体において、不透明性光輝性顔料として、樹脂被覆された薄片状金属顔料を用いることは、効果的である。
また、クリスタルカラーGF2125、クリスタルカラーGF2125-M、クリスタルカラーGF2140、クリスタルカラーGF2140-M、クリスタルカラーGF2525、クリスタルカラーGF2525-M、クリスタルカラーGF2540、クリスタルカラーGF2540-M、クリスタルカラーGF250、クリスタルカラーGF1345、クリスタルカラーGF1445(以上、東洋アルミニウム(株)製)等も挙げられる。
透明性光輝性顔料としては、光透過性を備えた光輝性顔料であり、例えば、(I)透明性を有する基材を金属酸化物で被覆してなる顔料や、(II)コレステリック液晶型光輝性顔料などが挙げられる。
透明性光輝性顔料を用いると、可逆熱変色性マイクロマイクロ顔料が着色状態では反射光により光輝性が発現され、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が消色状態では光輝性を視認できなくなる。よって、本発明において透明性光輝性顔料を用いることは、描画跡に光輝性をもたらすことは勿論のこと、描画跡を消去させる場合、効果的に作用する。
また、透明光輝性顔料の平均粒子径は、例えば、0.2μm以上200μm以下、好ましくは2μm以上100μm以下である。透明性光輝性顔料の平均粒子径が上記数値範囲内であると、描画跡中に光輝性顔料が埋もれ、所望の光輝性が得られ難くなることを抑制できるとともに、製造時の混練で粉砕され、所望の光輝性が得られ難くなることを抑制することができる。
これは、透明性を有する基材を金属酸化物で被覆してなる顔料は、混練成形時などに粉砕されにくく、得られる描画跡に優れた光輝性をもたらしやすい傾向にあるためである。
また前述の基材を被覆する金属酸化物としては、例えば、チタン、ジルコニウム、クロム、バナジウム、鉄等の酸化物を挙げることができ、好適には酸化チタンを主成分とする金属酸化物である。
また、基材の表面を被覆する金属酸化物の被覆率によって、金色、銀色又はメタリック色の金属光沢を呈する。尚、酸化チタン等の金属酸化物層の上に酸化鉄、非熱変色性染顔料をさらに被覆したものであってもよい。
天然雲母の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した顔料として、メルク社製の商品名「イリオジン」品番:100(粒度分布10μmから60μm:シルバーパール)、103(粒度分布10μmから60μm)、120(粒度分布5μmから25μm:ラスターサテン)、123(粒度分布5μmから25μm)、163(粒度分布20μから180μ)、201(粒度分布5μmから25μm:ルチルファインゴールド)、205(粒度分布10μmから60μm:ルチルプラチナゴールド)、221(粒度分布5μmから25μm:ルチルファインブルー)、225(粒度分布10μmから60μm:ルチルブルーパール)、231(粒度分布5μmから25μm:ルチルファインレッド)、235(粒度分布10μmから60μm:ルチルグリーンパール)、エンゲルハード社製の商品名「ルミナカラーズ」品番:ルミナゴールド(粒度分布10μmから48μm:金色)、ルミナレッド(粒度分布10μmから48μm:メタリックレッド)、ルミナレッドブルー(粒度分布10μmから48μm:メタリックブルー)、ルミナアクアブルー(粒度分布10μmから48μm:メタリックブルー)、ルミナグリーン(粒度分布10μmから48μm:メタリックグリーン)、ルミナターコイズ(粒度分布10μmから48μm:メタリックグリーン)等を例示できる。
また、合成雲母の表面を金属酸化物で被覆した顔料として、メルク社製の商品名「イリオジン」品番:6103(粒度分布5μmから40μm:銀色)、6123(粒度分布5μmから25μm:銀色)、6153(粒度分布20μmから100μm:銀色)、6163(粒度分布20μmから180μm:銀色)等を例示できる。
また、描画跡および描画体の光輝性を維持しながらも、描画跡を擦過した際の描画跡の変色性の向上を考慮すると、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
また、描画跡および描画体の光輝性を維持しながらも、描画跡を擦過した際の描画跡の変色性の向上を考慮すると、1質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。
例えば、光輝性顔料として、不透明性光輝性顔料または透明性光輝性顔料のみを用いた場合には、光輝性顔料の含有量を増加させると、描画跡や描画体の光輝性を向上させることができる反面、描画体の強度が低下してしまう恐れがあり、また、不透明性光輝性顔料を単独で用いた場合では、描画体描画跡を擦過した際に金属の色相が残ってしまい所望の色に変色し難いなど、描画跡の変色性に影響が出てしまう可能性があった。しかしながら、光輝性顔料として、不透明性光輝性顔料と透明性光輝性顔料とを用いることで、上述の課題が改善され、描画体の強度を損なうことなく、描画体および描画跡に優れた光輝性を付与でき、さらに描画跡に優れた変色性を付与できる。
本発明において、上記効果を十分に得ることを考慮すると、光輝性顔料として、樹脂被覆された薄片状金属顔料と、透明性を有する基材を金属酸化物で被覆してなる顔料を含んでなることがより好ましい。
特に、本発明の固形描画体の描画跡が、有色から無色への変化(描画跡の消色)を示す場合、描画跡の光輝性と描画跡の消色性とのバランスを考慮すると、不透明性光輝性顔料に対する透明性光輝性顔料の含有比は、1以上10以下であることが好ましく、2以上8以下であることがより好ましい。
また、後述するように、粘弾性体を含んで構成される摩擦部材を用いることで、光輝性顔料を除去させることが可能となるが、この光輝性顔料の除去性と、描画体および得られる描画跡の光輝性のバランスを良好とすることを考慮すると、不透明性光輝性顔料に対する透明性光輝性顔料の含有比は、0.1以上10以下であることが好ましく、0.1以上8以下であることがより好ましい。
さらに、本発明の固形描画体の描画跡が有色から無色への変化(描画跡の消色)を示す場合には、粘弾性体を含んで構成される摩擦部材を用いることで、描画跡は消色し、光輝性顔料が除去され、描画跡を消去することが可能となる。この描画跡の消去性と、描画体および得られる描画跡の光輝性のバランスを良好とすることを考慮すると、不透明性光輝性顔料に対する透明性光輝性顔料の含有比は、1以上10以下であることが好ましく、2以上8以下であることがより好ましい。
本発明による固形描画体は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含んでなる。前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(以下、単に「マイクロカプセル顔料」ともいう)は、少なくとも(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物及び、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包するものである。
変色温度域は前記t1とt4間の温度域であり、着色状態と消色状態の両状態が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるt2とt3の間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
本発明において、水性ゲル形成剤を用いる場合、ショ糖飽和脂肪酸エステルをさらに含んでなることが好ましい。ショ糖飽和脂肪酸エステルを用いることで、描画カスの発生が抑制され、さらに、得られる描画跡が被描画面の裏面へ裏抜けしてしまうことを防止できるためである。これは、理由は定かではないが、ゲル形成剤と溶剤とで形成されるゲル状構造中にショ糖飽和脂肪酸エステルが取り込まれ、描画体の骨格構造が強くなり、描画時に、描画体の被描画面との接触部に圧力が加わった際、接触部からの溶剤の放出量を適度に保つことができるためと考える。
また、ショ糖飽和脂肪酸エステルは、マイクロカプセル顔料表面に吸着し、マイクロカプセル顔料の凝集を抑える傾向にあり、マイクロカプセル顔料の機能を効果的に得やすく、描画跡の発色と変色の視認性を良好とすることができることからも、本発明において、ショ糖飽和脂肪酸エステルを用いることは効果的である。
本発明の描画体はこのようなショ糖飽和脂肪酸エステルを用いることによって、描画体強度の向上や溶剤の滲出抑制効果を奏しやすくなる。
尚、上記ショ糖飽和脂肪酸エステルは、モノエステルのみからなるものであっても良く、モノエステルと複数のエステル結合を有するエステルとの混合物であっても良い。
ショ糖飽和脂肪酸エステルの含有率を上記数値範囲内とすると、描画体強度、描画感、および描画跡の形成性のバランスを良好としやすい。
本発明ワックスの含有率は、固形描画体の総質量を基準として、10~40質量%であることが好ましく、10~30質量%であることが好ましい。
加熱下、溶剤とゲル形成剤とを撹拌し、ゲル形成剤が溶解した後、マイクロカプセル顔料と、光輝性顔料と、各種添加剤を加え、均一に撹拌、混合させる。
その後、混合物を所定の型に流しこみ、室温で放冷後、固化した固形描画体を取り出すことにより、固形描画体を得ることができる。
マイクロカプセル顔料および光輝性顔料以外の下記原材料を90℃下で1時間攪拌混合し、マイクロカプセル顔料および光輝性顔料を加えて30分間撹拌混合した後、均一に混合した原材料を内径10mmの有底筒状体の型に流し込み、室温に放冷することで固体物(外径10mmの円柱)を得た。
さらに、上記固体物を-20℃に冷却し、常温に戻すことで固形描画体が得られた。
・可逆熱変色性マイクロカプセル顔料 10質量部
(マイクロカプセル顔料A)
・光輝性顔料 10質量部
(不透明性光輝性顔料:樹脂被覆された薄片状金属顔料)
・ゲル形成剤 16質量部
(水性ゲル形成剤:ステアリン酸ナトリウム)
・溶剤 24質量部
(水)
・溶剤 40質量部
(有機溶剤:多価アルコール(グリセリン))
実施例101に対して、配合する成分の種類や添加量を表1、表2に示した通りに変更した以外は、実施例101と同じ方法で、実施例102~実施例113、比較例101~比較例106の固形描画体を得た。
マイクロカプセル顔料および光輝性顔料以外の下記原材料を90℃下で1時間攪拌混合し、マイクロカプセル顔料および光輝性顔料を加えて30分間撹拌混合した後、均一に混合した原材料を内径10mmの有底筒状体の型に流し込み、室温に放冷することで固体物(外径10mmの円柱)を得た。
さらに、上記固体物を-20℃に冷却し、常温に戻すことで固形描画体が得られた。
・可逆熱変色性マイクロカプセル顔料 15質量部
(マイクロカプセル顔料A)
・光輝性顔料 15質量部
(不透明性光輝性顔料:樹脂被覆された薄片状金属顔料)
・ゲル形成剤 35質量部
(油性ゲル形成剤:12―ヒドロキシステアリン酸)
・溶剤 35質量部
(有機溶剤:ポリプロピレングリコール)
実施例201に対して、配合する成分の種類や添加量を表3、表4に示した通りに変更した以外は、実施例201と同じ方法で、実施例202~実施例215、比較例201~比較例208の固形描画体を得た。
(イ)電子供与性呈色性有機化合物として2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン5質量部、(ロ)電子受容性化合物として2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5質量部、4,4’-(2-メチルプロピリデン)ビスフェノール3.0質量部、(ハ)反応媒体としてラウリン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル50質量部からなるからなる可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0質量部、助溶剤40.0質量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル懸濁液を得た。前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセルを単離した。なお、前記マイクロカプセルの平均粒子径は2.3μmであり、t1:-8℃、t2:-1℃、t3:52℃、t4:65℃のヒステリシス特性を有する挙動を示し、黒色から無色、無色から黒色へ可逆的に色変化した。
(イ)電子供与性呈色性有機化合物として9-エチル(3-メチルブチル)アミノ-スピロ[12H-ベンゾ(α)キサンテン-12,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン5.0質量部、(ロ)電子受容性化合物として4,4′-(2-エチルヘキサン-1、1-ジイル)ジフェノール3.0質量部、2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン5.0質量部、(ハ)反応媒体としてカプリン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル50.0質量部からなる感温変色性色彩記憶組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0質量部、助溶剤40.0質量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に攪拌を続けて熱変色マイクロカプセル懸濁液を得た。前記懸濁液を遠心分離して熱変色マイクロカプセルを単離した。
尚、前記マイクロカプセルの平均粒子径は2.3μmであり、t1:-20℃、t2:-10℃、t3:48℃、t4:58℃のヒステリシス特性を有する挙動を示し、ピンク色から無色、無色からピンク色へ可逆的に色変化した。
(イ)電子供与性呈色性有機化合物として3-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-3-(1)-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド2.0質量部、(ロ)電子受容性化合物として1,1-ビス(4‘―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4.0質量部、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-デカン4.0質量部、(ハ)反応媒体としてカプリル酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル(融点57℃)50.0質量部からなる感温変色性色彩記憶組成物とした以外は、マイクロカプセル顔料Aと同じ方法で、マイクロカプセル顔料を得た。尚、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は3.0μmであり、t1:-24℃、t2:-10℃、t3:42℃、t4:55℃のヒステリシス特性を有する挙動を示し、青色から無色、無色から青色へ可逆的に色変化した。
(1)山陽色素(株)製、商品名:SANDYE SUPER BLUE GLL-E、青色顔料分散体
(2)尾池イメージング(株)製、商品名:エルジーneo SILVER#325、(蒸着金属としてアルミニウムを含む、平均粒子径:44μm、平均厚み:2μm)
(3)尾池イメージング(株)製、商品名:エルジーneo SILVER#150、(蒸着金属としてアルミニウムを含む、平均粒子径:105μm、平均厚み:2μm)
(4)メルク社製、商品名:イリオジン6103、(粒度分布:5μmから40μm、合成雲母の表面を金属酸化物で被覆した顔料)
(5)メルク社製、商品名:イリオジン163、(粒度分布:20μmから180μm、天然雲母の表面を金属酸化物で被覆した顔料)
(6)三菱ケミカルフーズ(株)製、リョートーシュガーエステルS-970
(7)日本精蝋(株)製、商品名:パラフィンワックス135°F
(8)大日精化工業(株)製、商品名HS-4、青色顔料
(9)伊藤製油(株)製
(10)伊藤製油(株)製、商品名:ITOHWAX J-420
(11)旭硝子(株)製、商品名:エクセノール1020、分子量1000
(12)新日本石油(株)製、商品名:日石ポリブテンLV-50
得られた実施例および比較例の固形描画体を用いて描画試験用紙に手書きで円形状に塗りつぶした。その際の描画感を下記基準にて評価した。なお、描画試験用紙として、白紙(JIS P3210に準拠した描画用紙A)を用いた。
◎:描画に強い力を必要とせず、非常に滑らかな描画感であった。
○:描画に強い力を必要とせず、滑らかな描画感であった。
△:描画にやや力が必要であり、やや硬く重い描画感であった。
×:描画に強い力が必要であり、硬く重い描画感であった。
××: 描画に非常に強い力が必要であり、非常に硬く重い描画感で、実用上懸念が残るレベルであった。
上記、描画性の評価で得られた描画跡(円)の光輝性を目視にて確認し、以下の評価基準で評価した。
◎◎:描画跡全体に金属光沢調の非常に強い輝きが確認された。
◎:描画跡全体に金属光沢調の強い輝きが確認された。
○:穏やかな金属光沢調の輝きが確認された。
△:金属光沢調の輝きがやや弱かった。
×:金属光沢調の輝きが弱かった。
××:金属光沢調の輝きは確認されなかった。
上記、描画性の評価で得られた描画跡(円)の発色性を目視にて確認し、以下の評価基準で評価した。
○:描画跡の発色は明瞭であった。
△:描画跡の発色はやや不明瞭であったが、実用上問題のないレベルであった。
×:描画跡の発色が不明瞭であった。
上記、描画性の評価で得られた描画跡(円)の半分をSEBS樹脂を用いた摩擦部材で擦過した際の描画跡の変色性を目視にて観察し、以下の評価基準で評価した。
なお、描画跡の変色性は、実施例113、実施例215は有色から有色への変色性を確認し、その他の実施例、比較例の描画体は有色から無色への消色性を評価した。
◎◎:描画跡の変色(消色)の視認が非常に良好であった。
◎:描画跡の変色(消色)の視認が良好であった。
○:描画跡の変色(消色)の視認が可能であった。
△:変色(消色)の視認がやや困難であったが、実用上問題のないレベルであった。
×:変色(消色)の視認が不可能であった。
また、実施例201~実施例215の固形描画体は、比較例204、205、208の固形描画体に比べて描画跡の濃淡を付けることや、塗りつぶしが容易であり、重ね塗り性に優れており、さらには、ワックスを含んでなる実施例204~実施例215は、特に重ね塗り性に優れていた。
実施例の固形描画体を、繰出し機能を有する丸形外軸内に収納成形することで、外軸より固形描画体を突出させることのできる、繰出式固形描画具を得た。
尚、実施例101~実施例113の固形描画体を用いた繰出式固形描画具は、キャップを設けるなどして気密容器とすることで、経時的に安定して、発色性、光輝性、変色性に優れた描画跡が得られるなど、経時安定性に優れた繰出式固形描画具が得られた。
前記繰出式固形描画具の後端またはキャップの登頂部に、SEBS樹脂や粘弾性体を用いた摩擦部材を固着するなどして、摩擦部材付繰出式固形描画具を得た。
また、繰出し機能を発現する繰出し操作体にSEBS樹脂や粘弾性体を用いることで、繰出し操作体を摩擦部材とした、摩擦部材付繰出式固形描画具も作製した。
前記摩擦部材付繰出式固形描画具を用いて紙面上に形成される描画跡は、前記摩擦部材を用いて摩擦することにより変色可能であり、携帯性に優れた摩擦部材付繰出式固形描画具を得ることができた。
実施例の固形描画体を用いた繰出式固形描画具と、SEBS樹脂や粘弾性体を用いた直方体形状の摩擦部材とを組み合わせて固形描画体セットを得た。
前記繰出式固形描画具を用いて紙面上に形成される描画跡は、前記摩擦部材を用いて擦過することにより変色可能であり、描画と描画跡の変色が簡単にできるより利便性の高いセットを得ることができた。
Claims (9)
- 少なくとも(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)
前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包する
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、光輝性顔料と、溶剤と、ゲル形成剤と、を含んで
なり、前記溶剤と、前記ゲル形成剤とでゲル状の賦形材を形成してなり、
前記光輝性顔料が、不透明性光輝性顔料および透明性光輝性顔料の組み合わせであるこ
とを特徴とする、可逆熱変色性固形描画体。 - 前記光輝性顔料の含有率が、前記固形描画体の総質量を基準として、1質量%以上40
質量%以下である、請求項1に記載の可逆熱変色性固形描画体。 - 前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料及び前記光輝性顔料の総含有率が、前記固形描
画体の総質量を基準として、5質量%以上50質量%以下である、請求項1または請求項
2に記載の可逆熱変色性固形描画体。 - 前記光輝性顔料に対する、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の含有比が質量基準
で、0.1以上20以下である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の可逆熱変色
性固形描画体。 - 前記可逆熱変色性固形描画体における不透明性光輝性顔料に対する透明性光輝性顔料の
含有比(透明性光輝性顔料/不透明性光輝性顔料)が、質量基準で1以上10以下である
、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の可逆熱変色性固形描画体。 - ショ糖飽和脂肪酸エステルをさらに含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の可逆
熱変色性固形描画体。 - 請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の固形描画体と、摩擦部材とからなることを
特徴とする、可逆熱変色性固形描画体セット。 - 前記摩擦部材は、粘弾性体である、請求項7に記載の可逆熱変色性固形描画体セット。
- 前記粘弾性体は、ショアA硬度(JIS K 7215に準拠)の押針接触開始直後の値
が55以上90以下である、請求項8に記載の可逆熱変色性固形描画体セット。
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