JP2015036391A - 熱消色性筆記具インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、一度消去した筆跡上に再度筆記した場合であっても、カスレ等を生じることなく鮮明な筆跡を形成することができる、再筆記性に優れた熱消色性インキ組成物とそれを内蔵した筆記具を提供するものである。
更に、前記側鎖型ポリエーテル変性シリコーンが、ポリエーテル部のポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の重量比においてポリオキプロピレン鎖が0重量%以上60重量%未満であること、前記着色剤が、熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させたマイクロカプセル顔料であることを要件とする。
更には、前記熱消色性筆記具インキ組成物を内蔵した筆記具を要件とし、前記筆記具による筆跡を摩擦熱で消色する摩擦部材を備えてなることを要件とする。
前記分子量としては1000〜10000の範囲にあり、前記HLBとしては10〜18の範囲にある側鎖型ポリエーテル変性シリコーンにおいては、熱消去した筆跡箇所に再度筆記した際、その筆跡に途切れやカスレを生じることなく鮮明な筆跡を形成することができる。また、重ね塗りをした際にも、先に形成されたインキ面に対して鮮明な筆跡を形成することができる。分子量及びHLBが一方でも前記範囲を外れる場合には、所望の効果が得られないため、本発明においては分子量とHLBが重要な要因となる。
前記ポリエーテル基のうち、特に再筆記性に優れる点から、好ましくは、ポリオキシエチレン鎖単独で構成される、又は、少なくともポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとにより構成され、前記ポリオキシプロピレンの含有量が重量比で60重量%未満のものが用いられる。
0.01重量%未満では所期の効果を得ることは困難であり、また、3重量%を越えて配合しても更なる効果は得られないので、これ以上の添加を要しない。
前記加熱消色する着色剤としては、例えば、引用文献として例示した、特開2010−247358号公報等に開示される可逆タイプや、特開2010−229332号公報、特開2012−180412号公報等に開示される不可逆タイプのものが適用可能である。
特に、前記筆跡の変化は、熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させることで、組成変化を生じることなく長期間安定して発現できるものとなるため好適である。前記マイクロカプセル顔料に内包される熱変色性組成物としては、繰り返しの使用性、温度変化の正確性等の点から、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物が好適である。
更に、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている比較的大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示すものや、特開2006−137886号公報、特開2006−188660号公報、特開2008−45062号公報、特開2008−280523号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度以上の高温域での消色状態が、特定温度域で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させ加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
尚、筆記具インキに適用される、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
尚、前記顔料を分散する樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル酸樹脂、マレイン酸樹脂、アラビアゴム、セルロース、デキストラン、カゼイン等、およびそれらの誘導体、前記した樹脂の共重合体等が挙げられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
また、酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉顔料、天然雲母、合成雲母、アルミナ、ガラス片から選ばれる芯物質の表面を二酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、コレステリック液晶型光輝性顔料等を使用することもできる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用することもでき、インキ組成物中2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
更に、潤滑剤を添加することができ、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、N−アシルアミノ酸系界面活性剤、ジカルボン酸型界面活性剤、β−アラニン型界面活性剤、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールやその塩やオリゴマー、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、α−リポ酸、N−アシル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物やその塩等が用いられる。
また、N−ビニル−2−ピロリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピペリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタムのオリゴマー等の増粘抑制剤を添加することで、出没式形態での機能を高めることもできる。
更に、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤を一種又は二種以上添加することもできる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、ゼータシーガム、ダイユータンガム、マクロホモプシスガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ポリN−ビニル−カルボン酸アミド架橋物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示できる。更には、インキ組成物中にN−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加してもよい。
前記剪断減粘性付与剤は、インキ組成物中0.1〜20重量%の範囲で用いることができる。
また、ペン先を1本備えるものの他、太さや形状の異なるペン先を軸筒の両端に備えた両頭式形態であってもよい。尚、前記両頭式形態においては、一端をボールペンとしたものであってもよい。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等が適用できる。
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、シリコーン油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム等を添加することもできる。
また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。
尚、前記液状及び固体のインキ逆流防止体は併用することもできる。
前記摩擦部材としては、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適である。尚、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、前述の摩擦部材が好適に用いられる。
前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)、SBS樹脂(スチレンブチレンスチレン共重合体)、ポリエステル系樹脂等が用いられる。
前記摩擦部材は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具外装に摩擦部材を固着させることにより、携帯性に優れた形態となる。
キャップ式筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、キャップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、キャップ先端部(頂部)或いは軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)に摩擦部材を設けることができる。
出没式筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒開口部近傍、軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)或いはノック部に摩擦部材を設けることができる。
表1に実施例及び比較例の筆記具用水性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
(1)(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.5部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T1:−20℃、T2:−9℃、T3:40℃、T4:57℃、ΔH:63℃、平均粒子径:2.5μm、黒色から無色に色変化する)
(2)(イ)成分として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.0部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン8.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T1:−14℃、T2:−6℃、T3:48℃、T4:60℃、ΔH:64℃、平均粒子径:2.3μm、青色から無色に色変化する)
(3)3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド2.0部、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン6.0部、フタル酸ジフェニル50.0部を80℃で1時間攪拌した後に冷却することで色素化合物を得た。その後、色素化合物58.0部とシクロヘキサノン系ケトン樹脂10.0部を配合し、粉砕機にて粒度0.5mm以下に粉砕した配合物25.0部を用いて、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩3.0部、イオン交換水51.8部、プロピレングリコール20.0部、シリコーン系消泡剤0.2重量部をボールミルで1時間分散処理して得られる色素化合物分散液
(4)分子量:4000、HLB:15、ポリエーテル基:ポリオキシエチレン鎖単独
(5)分子量:8000、HLB:10、ポリエーテル基:ポリオキシエチレン鎖50%,ポリオキシプロピレン鎖50%
(6)リン酸エステル系界面活性剤、第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(7)北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150
(8)東レダウコーニング(株)製、商品名:FSアンチフォーム013A
(9)BASFジャパン(株)製、商品名:ジョンクリル690
前記実施例1乃至3,6及び比較例1乃至3の配合量で増粘剤を除く各原料を混合し、20℃でディスパーにて400rpm、1時間攪拌した後、増粘剤を加えて更に1時間攪拌することでボールペンインキ組成物を得た。
基油としてポリブテン98.5部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド1.5部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
直径0.5mmの超硬合金製ボールを抱持するステンレススチール製切削チップが透明ポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィル内に、前記各ボールペンインキ組成物を充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを軸筒(後端にSEBS樹脂製の摩擦体を備える)に組み込み、キャップを装着することで試料ボールペンを作製した。
前記実施例4乃至5及び比較例4乃至5の配合量で各原料を混合し、20℃で3時間撹拌溶解した後、濾過することによりマーキングペンインキ組成物を得た。
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に前記マーキングペンインキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容し、ホルダーを介して軸筒先端部にポリエステル繊維の樹脂加工チップ(砲弾型)を接続状態に組み立て、先端にSEBS樹脂製の摩擦を備えてなるキャップを装着することで試料マーキングペンを作製した。
前記各試料ボールペン、及び試料マーキングペンを用いて、旧JIS P3201筆記用紙Aに手書きでAからJまでのアルファベットを筆記し、各筆記具に装着された摩擦体で擦過することにより摩擦熱で消色させた。その後、消色箇所に螺旋状の丸を連続筆記した際の筆跡の状態を目視により確認した。
キャップオフ試験
筆記可能であることを確認した各筆記具をペン先が空気中に晒された状態とし、横置き状態で20℃の環境下で90分間(試料マーキングペン)又は7日間(試料ボールペン)放置した後、室温にて旧JIS P3201筆記用紙Aに手書きで1行に12個の螺旋状の丸を連続筆記した。その際の筆跡状態を目視により確認した。
試験の結果を以下に示す。
筆記試験
○:良好な筆跡が得られ、再筆記が可能であった。
×:筆跡にカスレやはじきが見られる。
キャップオフ試験
○:カスレを生じない。
△:3丸以内の筆記で回復した。
×:筆記不能。
Claims (6)
- 加熱により消色する着色剤と、水と、分子量が1000〜10000であり且つHLBが10〜18である側鎖型ポリエーテル変性シリコーンを含んでなる熱消色性筆記具インキ組成物。
- 前記側鎖型ポリエーテル変性シリコーンが、ポリエーテル部のポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の重量比においてポリオキプロピレン鎖が0重量%以上60重量%未満である請求項1記載の熱消色性筆記具インキ組成物。
- 前記着色剤が、熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させたマイクロカプセル顔料である請求項1又は2に記載の熱消色性筆記具インキ組成物。
- 前記熱変色性組成物が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とからなる可逆熱変色性組成物である請求項1乃至3のいずれかに記載の熱消色性筆記具インキ組成物。
- 前記請求項1乃至4のいずれかに記載の熱消色性筆記具インキ組成物を内蔵した筆記具。
- 前記筆記具による筆跡を摩擦熱で消色する摩擦部材を備えてなる請求項5記載の筆記具。
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