JP2019194276A - 筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な筆記性能を維持したまま、筆記時及び筆跡から、長期に亘って香りを放つことができる、興趣に富んだ筆記具用水性インキ組成物とそれを内蔵した筆記具を提供する。【解決手段】着色剤と、水と、香料と、下記式(1)で示される化合物とを含んでなる筆記具用水性インキ組成物。前記筆記具用水性インキ組成物を内蔵してなる筆記具。〔式(1)中、Rは炭素数8〜12であるアルキル基であり、m及びnは付加モル数を示す整数である。オレイン酸ソルビタンの付加モル数を示すmは、1〜100の範囲、アルキルグルコシドの付加モル数を示すnは、1〜100の範囲である。〕【選択図】なし

Description

本発明は筆記具用水性インキ組成物と筆記具に関する。更には、香料を用いた筆記具用水性インキ組成物とそれを内蔵した筆記具に関する。
従来、筆記時に香りを発するとともに、筆跡にもほのかな香りを残す香気性インキ組成物が知られている。
前記インキ組成物には、種々の香料を添加することで実用化されているが、近年では、筆跡の発色性に優れた水性インキ組成物に適用され、様々な技術が開示されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
この種の水性インキ組成物では、香料を水性媒体中に溶解又は分散安定化させる必要があるため、特許文献1では、剪断減粘性を付与して物理的に分散状態を保持している。また、特許文献2では、ポリグリセリン脂肪酸エステルを、特許文献3では、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルをそれぞれ添加することにより、化学的に分散状態を保持しており、いずれも油溶性香料を用いた際に有用な方法である。
しかしながら、特許文献1では、インキに高い剪断減粘性を付与しているので、筆記時には高剪断力が必要となる。そのため、筆記時に高速回転するボールを用いたボールペンのみにしか適用できず、更にインキ粘度が高いことから筆跡にかすれを生じ易いものである。また、前記インキ組成物は、高温での経時により分離し易いため、筆記具全般に適用するには実用性に乏しいものである。
特許文献2及び3では、様々な形態の筆記具に適用できる水性インキ組成物を構成できるものの、インキ中に香料を安定的に分散、溶解するためには多量の添加を必要とするため、筆跡乾燥性を損なうことがある。
特開2000−248221号公報 特開2001−342416号公報 特開2001−342407号公報
本発明は、前述した従来技術の不具合を生じることなく、良好な筆記性能を維持したまま、筆記時及び筆跡から、長期に亘って香りを放つことができる、興趣に富んだ筆記具用水性インキ組成物とそれを内蔵した筆記具を提供するものである。
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、着色剤と、水と、香料と、下記一般式(1)で示される化合物とを含んでなることを要件とする。
Figure 2019194276
〔式(1)中、Rは炭素数8〜12であるアルキル基であり、m及びnは付加モル数を示す整数である。オレイン酸ソルビタンの付加モル数を示すmは、1〜100の範囲、アルキルグルコシドの付加モル数を示すnは、1〜100の範囲である。〕
更に、前記一般式の化合物のHLB値が10〜16の範囲にあること、前記一般式の化合物が水性インキ中0.1〜15質量%の範囲にあること、前記香料が油溶性香料であることを要件とする。
更には、前記いずれかに記載の筆記具用水性インキ組成物を内蔵してなる筆記具を要件とする。
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、香料とともに前記一般式(1)で示される化合物を配合することにより、筆跡にかすれや乾燥性の悪化等を生じることなく、良好な筆記性能を維持したまま、筆記時及び筆跡から、長期に亘って香りを放つことができる、興趣に富んだ水性インキ組成物と筆記具となる。
前記一般式(1)で示される化合物は、オレイン酸ソルビタンとアルキルグルコシドのクロスポリマーであり、人工的に合成される他、天然物からの抽出によっても得られる。
前記化合物は、香料に対して分子構造中のアルキル基が吸着するとともに、複数の水酸基によって外周を親水性とするため、水性インキ中で化学的に香料を溶解又は分散安定化させるものである。
前記一般式(1)で示される化合物は、有効成分でインキ組成中0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%の範囲で添加することができる。
0.1質量%未満では所期の効果を得難く、また、15質量%を越えて配合しても更なる効果は得られないので、これ以上の添加を要しない。
前記香料は、筆記時や、紙面等に形成した筆跡から香りを放つためのものであり、香料の形態としては、水溶性香料、油溶性香料、乳化香料等が挙げられる。
具体的には、グレープフルーツ油、オレンジ油、レモン油、ライム油、ジャスミン油、ペパーミント油、ローズマリー油、ナツメッグ油、カツシア油、ラベンダー油、ヒノキ油、ヒバ油、フェンネル油等の精油類、ヘキシルアルコール、フェニルエチルアルコール(ローズP)、フルフリルアルコール、シクロテン、ゲラニオール等のアルコール類、ヘプタナール、オクタナール、ドデカナール、テトラデカナール、ヘキサデカナール、オクタデカナール、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類、エチルアセトアセテート、プロピルアセテート、アミルアセテート、リナリルアセテート、ベンジルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ベンジルプロピオネート等のエステル類、ヌートカトン、エチルピラジン、レモンターペンレス、オレンジターペンレス、ワニリン、エチルワニリン、フルフリルメルカプタン、ボーネオール及びヘリオトロープ等の芳香族化合物、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等のテルペン油類を例示できる。更に、前記香料を組み合わせた調合香料、例えば、バナナ香料、ブルーベリー香料、バニラ香料、ミント香料、アップル香料、ピーチ香料、メロン香料、パイナップル香料、グレープ香料、ライラック香料、ジャスミン香料、イチゴ香料、ミルク香料、抹茶香料、マンゴー香料、サイダー香料等を使用することもできる。これらの香料は、一種又は二種以上を組み合わせて使用される。
前記香料の中で、油溶性香料は水性インキ中での分散安定性に乏しいため、本発明の構成が特に効果的である。
前記香料は、インキ組成物全量に対し、0.1〜10.0質量%の範囲で使用することが好ましい。香料の含有量が0.1質量%未満であると、筆記時や形成された筆跡において、香りが十分に得られ難く、10.0質量%を越えると、インキ中の他成分に影響が出易くなるため、これ以上の添加は不要である。更に、香りの持続性やインキ経時安定性を考慮すると、0.5〜8.0質量%が好ましく、より好ましくは、1.0〜6.0質量%である。
前記着色剤としては、水性系媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分24%、山陽色素株式会社製〕、C.I. Pigment Red 146〔品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、C.I.Pigment Red 220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
尚、前記顔料を分散する樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル酸樹脂、マレイン酸樹脂、アラビアゴム、セルロース、デキストラン、カゼイン等、およびそれらの誘導体、前記した樹脂の共重合体等が挙げられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
また、酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、天然雲母、合成雲母、アルミナ、ガラス片から選ばれる芯物質の表面を二酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、コレステリック液晶型光輝性顔料等を使用することもできる。
更に、熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(加熱消色型顔料)や、熱変色性組成物と共に、染料や顔料を内包したマイクロカプセル顔料等の熱変色性顔料を使用することもできる。
前記熱変色性組成物としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物が好適であり、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として適用される。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
更に、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている比較的大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示すものや、特開2006−137886号公報、特開2006−188660号公報、特開2008−45062号公報、特開2008−280523号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度以上の高温域での消色状態が、特定温度域で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させ加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
尚、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
前記着色剤は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成物中1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲で用いられる。
また、水に相溶性のある従来汎用の水溶性有機溶剤を用いることもでき、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオプレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用することもでき、インキ組成物中2〜60質量%、好ましくは5〜35質量%の範囲で用いられる。
その他、必要に応じて、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系界面活性剤を使用してもよい。
更に、潤滑剤を添加することができ、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、N−アシルアミノ酸系界面活性剤、ジカルボン酸型界面活性剤、β−アラニン型界面活性剤、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールやその塩やオリゴマー、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、α−リポ酸、N−アシル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物やその塩等が用いられる。
また、N−ビニル−2−ピロリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピペリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタムのオリゴマー等の増粘抑制剤を添加することで、出没式形態での機能を高めることもできる。
また、耐乾燥性を妨げない範疇でアルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の水溶性樹脂を一種又は二種以上添加したり、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤を一種又は二種以上添加することもできる。
前記水性インキ組成物には、剪断減粘性付与剤を添加することもできる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、ゼータシーガム、ダイユータンガム、マクロホモプシスガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ポリN−ビニル−カルボン酸アミド架橋物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示できる。更には、インキ組成物中にN−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加してもよい。
前記剪断減粘性付与剤は、インキ組成物中0.1〜20質量%の範囲で用いることができる。
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、ボールペンチップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペン、更には万年筆(キャップ式や出没式)等に充填される。
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ等のマーキングペン用ペン先(砲弾型、チゼル型、筆ペン型等)を筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
また、ペン先を1本備えるものの他、太さや形状の異なるペン先を軸筒の両端に備えた両頭式形態であってもよい。尚、前記両頭式形態においては、一端をボールペンとしたものであってもよい。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、さらにインキの端面にはインキ逆流防止体が密接している構造のボールペンが挙げられる。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、シリコーン油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム等を添加することもできる。
また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。尚、前記液状及び固体のインキ逆流防止体は併用することもできる。
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、水媒体中に、着色剤、香料、一般式(1)で示される化合物、必要により水溶性有機溶剤や剪断減粘性付与剤や各種添加剤を投入し、更に必要に応じて加温して攪拌し、溶解及び分散することにより調製され、ボールペン、サインペン、フェルトペン、筆ペン等のマーキングペン、万年筆等の形態の筆記具に充填して使用される。
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に実施例及び比較例の筆記具用水性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は質量部を示す。
Figure 2019194276
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名:フロキシン(C.I.アシッドレッド92)
(2)山陽色素(株)製、商品名:サンダイスーパーカラー ブルー GLL
(3)(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.5部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−20℃、T:−9℃、T:40℃、T:57℃、ΔH:63℃、平均粒子径:2.5μm、黒色から無色に色変化する)
(4)(イ)成分として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.0部、(ロ)成分としてビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド8.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:−6℃、T:48℃、T:60℃、ΔH:64℃、平均粒子径:2.3μm、青色から無色に色変化する)
(5)高砂香料工業(株)製、ペパーミント香料
(6)高砂香料工業(株)製、オレンジ香料
(7)(オレイン酸ソルビタン/デシルグルコシド)クロスポリマー、Colonial Chemical社製、商品名:Poly Suga Mulse D9(R=10、HLB=12〜14)
(8)一般式(1)において、R=12、n=20、m=5、HLB=12である化合物
(9)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、花王(株)製、商品名:エマゾールL−120V
(10)デカオレイン酸デカグリセリル、日光ケミカルズ(株)製、商品名:NIKKOL Decaglyn10−OV
(11)塩水港精糖(株)製、商品名:デキシーパールK−100
(12)リン酸エステル系界面活性剤、第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(13)ロンザジャパン社製、商品名:プロキセルXL−2
マーキングペンインキの調製
前記実施例1,2及び比較例1,2の配合量で各原料を混合し、25℃で1時間撹拌溶解した後、濾過することによりマーキングペンインキ組成物を得た。
マーキングペンの作製
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に前記マーキングペンインキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容し、ホルダーを介して軸筒先端部にポリエステル繊維の樹脂加工チップ(砲弾型)を接続状態に組み立て、キャップを装着することでマーキングペンを得た。
ボールペンインキAの調製
前記実施例1,2及び比較例1,2の配合量で各原料を混合し、25℃でディスパーにて400rpm、1時間攪拌した後、濾過することでボールペンインキ組成物を得た。
ボールペンAの作製
直径0.7mmの超硬合金製ボールを抱持するステンレススチール製チップを備えたペン芯(櫛歯状インキ貯溜体)が軸筒前方(開口側)に嵌合されることで、後方(封鎖側)をインキ貯蔵部とするペン芯式筆記具外装に前記インキを充填し、キャップを嵌合することでボールペンAを作製した。
ボールペンインキBの調製
前記実施例3〜6及び比較例3〜6の配合量で増粘剤を除く各原料を混合し、25℃でディスパーにて400rpm、1時間攪拌した後、増粘剤を加えて更に1時間攪拌することでボールペンインキ組成物を得た。
インキ逆流防止体の調製
基油としてポリブテン98.5部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド1.5部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
ボールペンBの作製
直径0.4mmの超硬合金製ボールを抱持するステンレススチール製チップが透明ポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィル内に、前記各インキ組成物を充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、キャップを装着することでボールペンBを作製した。
得られた各インキ組成物と各筆記具を用いて以下の試験を行った。
筆記試験A
各筆記具を50℃で30日間放置した後、JIS P3201筆記用紙Aに手書きで螺旋状の丸を連続筆記した際の筆跡の状態を目視により確認し、筆跡の香りを官能評価した。
筆記試験B
得られた各筆記具を用いて、JIS P3201筆記用紙Aに手書きで螺旋状の丸を三丸連続筆記した後、30秒後に手で筆跡を擦過した際の状態を目視により確認した。
インキ安定性試験
各インキを容器に密閉し、50℃の恒温器中に30日間放置後、放冷して常温とした際のインキの状態を目視により確認した。
各試験の結果を以下に示す。
Figure 2019194276
尚、前記表中の記号に関する評価は以下の通りである。
筆記試験A
○:良好な筆跡が得られ、筆跡から初期と同等の香りが確認された。
×:筆跡にカスレや線飛びが見られる。または、初期と比べて筆跡の香りが著しく低下した。
筆記試験B
○:良好な筆跡が維持された。
×:乾燥せずに残ったインキ滴により筆跡周辺や手が汚れた。
インキ安定性試験
○:試験前と変化無し。
×:香料の分離、または色材の析出、凝集が確認された。

Claims (5)

  1. 着色剤と、水と、香料と、下記一般式(1)で示される化合物とを含んでなる筆記具用水性インキ組成物。
    Figure 2019194276
    〔式(1)中、Rは炭素数8〜12であるアルキル基であり、m及びnは付加モル数を示す整数である。オレイン酸ソルビタンの付加モル数を示すmは、1〜100の範囲、アルキルグルコシドの付加モル数を示すnは、1〜100の範囲である。〕
  2. 前記一般式の化合物のHLB値が10〜16の範囲にある請求項1記載の筆記具用水性インキ組成物。
  3. 前記一般式の化合物が水性インキ中0.1〜15質量%の範囲にある請求項1又は2に記載の筆記具用水性インキ組成物。
  4. 前記香料が油溶性香料である請求項1記載の筆記具用水性インキ組成物。
  5. 前記請求項1乃至4のいずれかに記載の筆記具用水性インキ組成物を内蔵してなる筆記具。
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