JP6096590B2 - ボールペン用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン - Google Patents
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しかしながら、前記剪断減粘性を有する水性インキでは、特に着色剤として顔料を用いた際に座摩耗を生じ易くなったり、経時によって顔料の凝集を生じることがあるため、種々の添加剤の配合が必要となり、配合の自由度が損なわれるものであった。
前記エステルを剪断減粘性付与剤として配合した系においては、水性インキ中に汎用の潤滑剤を添加することなく、ボールペン筆記時の座摩耗を抑制し、優れた筆記感を長期的に維持できるため、着色剤として顔料を用いる際に広く適用されている。しかしながら、インキ状態で高温条件下に保管された場合には、インキ粘度が大きく変化してしまい、ボールペン形態での保管時にインキ漏れを生じたり、筆記時に筆跡カスレやボテ等を生じてしまうことがあった。
更には、前記ボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペンを要件とする。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、更には熱変色性組成物、光変色性組成物、香料等を直接又はマイクロカプセル化したカプセル顔料等を例示できる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
更に、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔHB=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度以上の高温域での消色状態が、特定温度域で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
尚、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができ、酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
前記水添リゾレシチンと水酸化レシチンは、前記ポリグリセリンイソステアリン酸エステルを用いた水性インキの性能(即ち、顔料凝集や筆跡滲みを生じることがなく、高い潤滑効果による滑らかな筆記感を発現する)を損なうことなく、前述のインキ粘度変化(物性変化)を抑制できるものであるが、これは、高温雰囲気下に長期間保管されることで、ポリグリセリンイソステアリン酸エステルが曇点現象によって不均一化して流動性が変化する時に、水添リゾレシチンと水酸化レシチンの分子中の水酸基がポリグリセリンイソステアリン酸エステルと相互作用することで、高温雰囲気下であっても安定なゲル構造を形成すると推察される。尚、水添リゾレシチンや水酸化レシチンに換えて、レシチンやその誘導体を用いた場合には、前記効果は得られず、更には経時的に物性が悪化する。
0.05〜1:0.3の範囲で配合されることが好ましい。
前記配合比率とすることで、ポリグリセリンイソステアリン酸エステルとのゲル構造を安定形成する効果が特に高いものとなる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
更に、汎用の潤滑剤を併用して添加することもできる。潤滑剤としては、例えば、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、ジカルボン酸型界面活性剤、β−アラニン型界面活性剤、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールやその塩やオリゴマー、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、N−アシル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物やその塩等が用いられる。
また、アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、α−トコフェロール、カテキン類、合成ポリフェノール、コウジ酸、アルキルヒドロキシルアミン、オキシム誘導体、α−グルコシルルチン、α−リポ酸、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜硫酸塩、スルホキシル酸塩、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素等を添加して化学的に気泡を除去することもできる。
更に、N−ビニル−2−ピロリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピペリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタムのオリゴマー等の増粘抑制剤を添加することで、出没式形態での機能を高めることもできる。
ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、従来から汎用のものが適用でき、例えば、インキ組成物が低粘度である場合は軸筒前部にインキ保留部材を装着し、軸筒内に直接インキ組成物を収容する構造や、多孔質体或いは繊維加工体に前記インキ組成物を含浸させて収容する構造が例示できる。更に、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、更にインキの端面には逆流防止用のインキ逆流防止体が密接している構造のボールペンが例示できる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等が適用でき、直径0.1mm〜2.0mmの範囲のものが好適に用いられる。
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
出没機構の操作方法としては、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記出没式ボールペンは軸筒内に複数のボールペンレフィルを収容してなる複合タイプの出没式ボールペン(レフィル交換式)であってもよい。
以下の表に実施例及び比較例のボールペン用水性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。また、顔料の粒子径はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製;LA−300〕を用いて測定してその数値を基に体積基準で平均粒子径(メジアン径)を算出した値である。更に、インキ粘度の測定は、20℃でE型回転粘度計〔東機産業(株)製〕を用いて、インキ作製直後及び各経時期間後に1rpmと100rpmにて行った。
(1)山陽色素(株)製、商品名:サンダイスーパーブラックC、顔料分30%
(2)カーボンブラック10部、N−ビニルピロリドンと1−ブテンの共重合体10部、水80部をボールミルで1時間攪拌混合した分散液
(3)山陽色素(株)製、商品名:サンダイスーパーレッドBS、顔料分32%
(4)(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.5部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T1:−20℃、T2:−9℃、T3:40℃、T4:57℃、ΔH:63℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物/壁膜=2.6/1.0、黒色から無色に色変化する)
(5)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(6)アーチ・ケミカルズ・ジャパン社製、商品名:プロキセルXL−2
(7)ヘキサグリセリンモノイソステアリン酸エステル
(8)デカグリセリンモノイソステアリン酸エステル
(9)デカグリセリンジイソステアリン酸エステル
水にポリグリセリンイソステアリン酸エステル以外の成分を添加し、混合攪拌した後にポリグリセリンイソステアリン酸エステルを添加して、20℃でディスパーにて6000rpmで1時間攪拌し、濾過することで各インキを調製した。
基油としてポリブテン98.5部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド1.5部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
前記実施例及び比較例のインキ組成物を直径0.5mmの超硬合金ボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを軸筒(キャップ式)に組み込み、試料ボールペンを作製した。
前記試料ボールペンを用いて以下の試験を行った。
筆記可能であることを確認した各試料ボールペンを、横置き状態で50℃の環境下に30日間放置した後、旧JIS P3201筆記用紙Aに手書きで螺旋状の丸を連続筆記した際の筆跡の状態を目視により確認した。
調製した各インキ5gをサンプル瓶に移し取り蓋をした後、50℃の環境下で30日間及び60日間放置した。各期間放置した際の、内部のインキの粘度を室温にて測定した。
前記試験の結果を以下の表に示す。
筆記試験
○:滑らかに筆記でき、良好な筆跡を示した。
×:筆跡にかすれや線飛び、またはボテ等が多数見られ、良好な筆跡が得られない。
インキ粘度安定性試験
○:初期と比べ、粘度変化は見られない。
×:初期と比べて粘度が大きく変化している。
Claims (2)
- 顔料と、水と、ポリグリセリンイソステアリン酸エステルと、水添リゾレシチン及び水酸化レシチンから選ばれるいずれか一種以上を含有し、前記ポリグリセリンイソステアリン酸エステルがインキ全量に対して3〜20重量%の範囲で用いられるとともに、前記ポリグリセリンイソステアリン酸エステルと、水添リゾレシチン及び水酸化レシチンから選ばれるいずれか一種以上との配合比率が、1:0.01〜1:0.5の範囲であるボールペン用水性インキ組成物。
- 前記請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。
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