JP5641698B2 - 水性ボールペン - Google Patents
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Description
前記ボールには、結合材としてコバルト、クロム、チタン、ニッケル等の金属が使用されていることから、水性ボールペンに用いた場合、インキ中の腐食成分(溶存酸素等)により前記結合材が経時的にインキ中に溶出し、ボールから結合材が失われることで、主成分である酸化ジルコニア、タングステンカーバイド等の結晶粒子が脱落したり、溶出した結合材が金属酸化物となり不溶化し、再びボール表面に付着する等、所謂腐食状態になることがある。前記腐食によりボール表面の凹凸が大きくなるため、ボールの回転が阻害され書き味が重くなったり、インキのスムーズな流出が阻害されて筆跡がかすれる等の不具合を生じることがあった。
特にタングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボールのうち、コバルトやニッケルを結合材に用いたボールでは、結合材の含有量が多いことから、経時的に腐食し易いという欠点を有している。
そこで前述の経時的な腐食を防止する方法として、インキ中にハイドロキノンスルホン酸を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
更に、前記水性インキ組成物のpHが6〜13であること、前記チアジアゾール、5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオン又はその塩、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのオリゴマーのいずれか一種又は二種以上がインキ組成物全量中0.01〜10重量%の範囲で添加されること、前記リン酸エステル系界面活性剤がインキ組成物全量中0.01〜10重量%の範囲で添加されることを要件とする。
尚、4a、5a、6a族の金属としてチタン、バナジウム、クロム、タンタルやそれらの炭化物を含んでいてもよい。
前記結合材であるコバルトとニッケルは水性インキ中に溶出し易いため、経時によりボール表面が粗くなり、更に長期的にはコバルトやニッケルの溶出によりタングステンカーバイドが脱落していっそうボール表面が凹凸状になることがある。その結果、ボール受け座に接触した状態でボールが回転すると受け座の磨耗が激しくなるので、筆記感が損なわれたり、軸方向のボールとボール抱持部の間隙(クリアランス)が大きくなりインキ流出量が増大して筆跡が太くなったり、線飛びが発生する等の不具合が生じ易くなる。
また、前記ボールは、直径0.1mm〜2.0mm、好ましくは0.15mm〜1.0mmの範囲のものが好適に用いられる。
前記軸筒内に収容されるインキ組成物は、インキ組成物が低粘度である場合は軸筒前部にインキ保留部材を装着し、軸筒内に直接インキ組成物を収容する方法と、多孔質体或いは繊維加工体に前記インキ組成物を含浸させて収容する方法が挙げられる。
尚、前記軸筒は、ボールペン用レフィルの形態として、該レフィルを外軸内に収容するものでもよい。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、外軸後端部や外軸側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、外軸後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記出没式ボールペンは外軸内に複数のボールペンレフィルを収容してなる複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
前記一般式(1)で示されるチアジアゾールとして、具体的には、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メチル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールや、更に、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、シクロヘキシルアルカノールアミン塩等が例示できる。
前記一般式(1)で示されるチアジアゾール、5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオン又はその塩、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのオリゴマーのいずれか一種又は二種以上は、インキ組成物全量中0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%添加することができる。
0.01重量%未満では所期の効果を得ることは困難であり、又、10重量%を越えて添加しても腐食抑制効果の向上は認められないので、これ以上の添加を要しない。
尚、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのオリゴマーとしては、2〜10量体のものが用いられる。
前記リン酸エステル系界面活性剤としては、芳香族若しくは脂肪族の官能基と、酸化エチレン基と、リン酸基とから構成されるリン酸モノエステル、ジエステル、トリエステル等、従来公知のものが用いられ、例えば、下記一般式(2)で与えられるものが適用できる。
特に、前記リン酸エステル系界面活性剤のうち、HLB値が5〜15の範囲のものが好適に用いられる。
0.01重量%以下では所期の効果を得ることは困難であり、又、10重量%を越えて添加しても潤滑性能の向上は認められないので、これ以上の添加を要しない。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:S.S.Blue GLL、顔料分22%、山陽色素株式会社製〕、
C.I. Pigment Red 146〔品名:S.S.Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、
C.I.Pigment Red220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、香料又は香料カプセル顔料などを例示できる。
前記熱変色性顔料としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が好適に用いられる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
尚、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
更に、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、N−アシルアミノ酸、N−アシルメチルタウリン等の潤滑剤を併用することもできる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示でき、更には、インキ組成物中にN−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加しても安定した剪断減粘性を付与できる。
前記pHに調整することで、一般式(1)で示されるチアジアゾール、5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオン又はその塩、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのオリゴマーがインキ中でより安定して存在でき、高い効果を発現するため、より効率的にボール腐食を抑制できる。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、α−オレフィンコオリゴマー、シリコーン油、精製鉱油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、脂肪酸アマイド等を添加することもできる。また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。前記液状及び固体のインキ逆流防止体は併用することも可能である。
以下の表に実施例及び比較例の水性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
(1)住友化学工業(株)製、商品名:アシッドブルーPG
(2)保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名:フロキシン
(3)三晶(株)製、商品名:KELZAN
(4)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL (HLB=5.6)
(5)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフA212E (HLB=10.3)
(6)川研ファインケミカル(株)製、商品名:アミゼット52P
(7)2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール
(8)2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールの2量体
(9)2−メチル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール
(10)2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール
(11)5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオンカリウム塩
(12)ハイドロキノンスルホン酸カリウム
基油としてポリブテン98.5部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド1.5部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
前記実施例1〜4、6、8及び比較例1〜4のインキ組成物を直径0.3mmのWC−Co系超硬合金ボールAを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを外軸(キャップ式)に組み込み、試料ボールペンAを作製した。
前記実施例1〜4、6、8及び比較例1〜4のインキ組成物を直径0.4mmのWC−Ni系超硬合金ボールBを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを外軸(キャップ式)に組み込み、試料ボールペンBを作製した。
前記実施例5、7及び比較例5、6のインキ組成物を軸筒内に収容し、直径0.5mmのWC−Co系超硬合金ボールAを抱持するステンレススチール製チップを筆記先端部に装着した櫛歯状インキ保留部材(ペン芯)を組み込むことで試料ボールペンCを作製した。
ボール腐食試験
調製した各インキ5gをサンプル瓶に移し取り、A、B二種類の超硬合金ボール(A:WC−Co系、B:WC−Ni系)を浸漬させて蓋をした後、70℃の環境下に30日間放置した。その後、室温にて光学顕微鏡(倍率1000倍)で各ボール表面の状態を確認した。
筆記可能であることを確認した試料ボールペンA〜Cを、横置き状態で50℃の環境下に60日間放置した後、筆記用紙に手書きで螺旋状の丸を連続筆記した際の筆記感と、目視による筆跡状態の確認を行った。
前記試験の結果を以下の表に示す。
ボール腐食試験
○:初期と変化なし。
△:初期と比較して光沢が失われた。
×:初期と比較して表面が粗い、又は、析出や付着物あり。
筆記試験
○:滑らかに筆記でき、良好な筆跡を示した。
△:筆記時にひっかかり感があり、筆跡に若干のかすれや線飛びが見られる。
×:筆記感が悪く、筆跡にかすれや線飛びが多数見られる、又は、筆記不能。
Claims (4)
- タングステンカーバイドと金属結合材からなる超硬合金ボールを筆記先端部に用いた水性ボールペンであって、前記金属結合材としてコバルト及び/又はニッケルを超硬合金ボール全量中1〜20重量%の範囲で含有し、更に、着色剤と水とリン酸エステル系界面活性剤と一般式(1)で示すチアジアゾール、5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオン又はその塩、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのオリゴマーのいずれか一種又は二種以上を含有する水性インキ組成物を内蔵することを特徴とする水性ボールペン。
- 前記水性インキ組成物のpHが6〜13であることを特徴とする請求項1記載の水性ボールペン。
- 前記チアジアゾール、5−メルカプト−3−フェニル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオン又はその塩、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのオリゴマーのいずれか一種又は二種以上が、インキ組成物全量中0.01〜10重量%の範囲で添加されることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性ボールペン。
- 前記リン酸エステル系界面活性剤がインキ組成物全量中0.01〜10重量%の範囲で添加されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水性ボールペン。
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