JP2004338134A - ボールペンチップ及びボールペン - Google Patents
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Abstract
【課題】広範囲な粘度範囲を有する油性インキ、水性インキ、水性ゲルインキ、並びに加圧インキに対しても極めて優れた潤滑性を有すると共に、チップ摩耗を抑制する効果が大きく、かつ滑らかな書き味となるボールペンチップ及びボールペンを提供する。
【解決手段】ボール10と、該ボールを抱持してなるチップホルダー部材20とを備えたボールペンチップAにおいて、チップホルダー部材20がダイヤモンド状炭素(DLC)膜30でコートされていることを特徴とするボールペンチップ。
【選択図】 図1
【解決手段】ボール10と、該ボールを抱持してなるチップホルダー部材20とを備えたボールペンチップAにおいて、チップホルダー部材20がダイヤモンド状炭素(DLC)膜30でコートされていることを特徴とするボールペンチップ。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油性インキ、水性インキ、水性ゲルインキ、並びに加圧インキ用に好適なボールペンチップ及びボールペンに関し、更に詳しくは、広範囲な粘度範囲を有するインキに対しても、極めて優れた潤滑性を有すると共に、チップ摩耗を抑制する効果が大きく、かつ滑らかな書き味となるボールペンチップ及びボールペンに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ボールペンは、ボール、チップホルダー部材からなるボールペンチップ(ペン先)、インキ収容管、ペン軸などから構成されている。
この構造のボールペンにおいて、例えば、インキ収容管に油性インキを充填して筆記した場合、ペン先のボールの回転によりチップ内部より流出してくるインキが紙などの記録体に転写もしくは浸透し、特に転写により、筆跡・描線を得ることができるものである。
【0003】
その時、転写または浸透しきれなかった余剰のインキがチップホルダー部材の外周に付着し、書き始めや、時には筆記途中でインキのかたまりが滴下される現象、いわゆるボテ現象が発生し、きれいな描線を得ることができないことがある。
これらは、主にボールやチップホルダー部材の磨耗や腐食により発現する現象と考えられている。
【0004】
これらの問題等を解決するために、ボールの磨耗を軽減し、スムーズな筆記性の確保を目的に、例えば、ジルコニアなどを用いたボールペン用セラミックス系ボール(特許文献1参照)が知られ、更に、ボールに金属炭化物、金属窒化物、ダイヤモンド状炭素を被覆したボールペン(特許文献2及び3参照)が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−147091号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】
特開2001−121868号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】
特開2001−80262号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0006】
しかしながら、これらの特許文献1〜3に記載される技術は、ボールが非常に硬くなりボール自身の磨耗は軽減されるが、逆にボールの受け座部の磨耗は増大してしまうものとなる。しかも、ボールの受け座部の磨耗は、ボールの真球性が悪いと、特に顕著となる課題を有する。
このようなボールの受け座部の磨耗は、長距離筆記、特に、高筆圧下での長距離筆記の際には潤滑性が不足して筆感が重くなったり、描線がかすれたり、速書きすると線が途切れたりするなどの課題が発生する原因となっている。
【0007】
一方、書き始めのインキの出をスムーズにし、かつ滑らかな運筆感を得るために、従来から油性インキ組成物に潤滑剤としてステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸等の高級脂肪酸等が含有されている。
しかしながら、これらの高級脂肪酸を含有した油性ボールペン用インキ組成物では、長距離筆記、特に、高筆圧下での長距離筆記の際には潤滑性が不足して筆感が重くなったり、描線がかすれたり、速書きすると線が途切れたりするなどの課題があり、潤滑剤としては未だ性能的に不十分であった。
【0008】
そこで、油性インキ組成物に脂肪酸やナフテン酸等の非アルカリ金属塩を含有したもの(特許文献4参照)や、ラノリン誘導体を含有したもの(特許文献5参照)、並びに、フッ素系またはシリコーン系界面活性剤を含有したもの(特許文献6参照)が知られている。
更に、ポリグリセリンの脂肪酸エステルを含有したもの(特許文献7参照)、フッ素系ホスホン酸化合物を含有したもの(特許文献8参照)、リン酸エステル化合物を含有したもの(特許文献9参照)が知られている。
【0009】
【特許文献4】
特開昭52−123722号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】
特開昭55−84376号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献6】
特公平1−39467号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献7】
特開平3−28279号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献8】
特開平8−41407号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献9】
特開平9−194783号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0010】
しかしながら、上記特許文献4〜6に記載される配合では、未だ得られる性能が十分でなかったり、他の品質に悪影響を与えるなどの課題がある。
また、上記特許文献7〜9に記載される配合でも、多くの場合得られる性能が不十分であった。特に、軽い書き味を得るために、25℃での粘度が100〜5,000mPa・sと油性ボールペン用のインキ組成物として低い粘度に設定した場合や、耐光性や耐アルコール性などの堅牢性を付与するために、インキ中に5〜30重量%の顔料を添加したインキ等ではその性能低下は顕著となる課題がある。
【0011】
また、滑らかな書き味を向上させるために油性インキの粘度を下げると、数千mP・s以上では良いが、それ以下になると徐々にボールとボール受け座での金属接触が増加し書き味の低下やボール受け座の磨耗を引き起こすという課題を生じている。すなわち、使い始めのころは、粘度効果により比較的書き味が良好であるが、筆記するにするに従って、磨耗が進みチップの内部構造が破壊され書き味の低下は勿論、筆記できない状態になることもある。
更に、チップホルダー部材の材質として、ブロンズや洋白などは、切削性が良く安価であるがボール受け座の腐食や磨耗の問題がある。これらのチップ材質の問題を解決するために、ボール受け座の腐食を抑制するのに切削などの加工性が悪く、高価なステンレスなどを使用しているのが現状であるが、ステンレスでもボール受け座の腐食や磨耗の課題は未だ解決できていないのが現状である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、より潤滑効果が高く、滑らかな書き味で、かつ長時間筆記しても変わらぬ性能を有する油性ボールペン、水性ボールペン、水性ゲルボールペン、加圧ボールペンに好適なボールペンチップ及びボールペンを提供すること、すなわち、油性、水性を問わず広範囲な粘度範囲で優れた潤滑性を有すると共に、ボールとそのチップホルダーからなるペン先でのチップ磨耗、腐食を抑制する効果が大きく、かつ滑らかな書き味となる油性ボールペン、水性ボールペン、水性ゲルボールペン、加圧ボールペンなどに好適なボールペンチップ及びボールペンを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来の課題等を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、ボールペンチップを構成するボール、または、ボールと接触するボール受け座表面、または、これらの両方に、更には、チップホルダー部材外表面、インキ流動孔表面に特定物性の炭素膜をコートすることにより、カーボンブラックや二酸化チタンなどの顔料を用いたインキでも潤滑性と耐磨耗性、耐腐食性に優れ、長期間滑らかな書き味と筆記性能が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(9)に存する。
(1) ボールと、該ボールを抱持してなるチップホルダー部材とを備えたボールペンチップにおいて、チップホルダー部材がダイヤモンド状炭素膜でコートされていることを特徴とするボールペンチップ。
(2) チップホルダー部材の少なくとも、ボールと接触するボール受け座表面がダイヤモンド状炭素膜でコートされている上記(1)記載のボールペンチップ。
(3) チップホルダー部材の少なくとも、カシメ部表面と、ボールと接触するボール受け座表面とが共にダイヤモンド状炭素膜でコートされている上記(1)記載のボールペンチップ。
(4) チップホルダー部材の少なくとも、インキ誘導孔表面と、ボールと接触するボール受け座表面とが共にダイヤモンド状炭素膜でコートされている上記(1)記載のボールペンチップ。
(5) チップホルダー部材の少なくとも、カシメ部表面と、インキ誘導孔表面と、ボールと接触するボール受け座表面とが共にダイヤモンド状炭素膜でコートされている上記(1)記載のボールペンチップ。
(6) 更に、ボール表面がダイヤモンド状炭素膜でコートされている上記(1)〜(5)の何れか一つに記載のボールペンチップ。
(7) ダイヤモンド状炭素膜の厚さが1オングストローム〜5μmの範囲内である上記(1)〜(6)の何れか一つに記載のボールペンチップ。
(8) 上記(1)〜(7)の何れか一つに記載のボールペンチップと、インキ組成物を充填してなるインキ収容管と、ペン軸とを備え、上記インキ組成物には、少なくとも顔料が含まれていることを特徴とするボールペン。
(9) 顔料が、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化第一鉄、酸化第二鉄、チタンブラックである上記(9)記載のボールペン。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
図1及び図2は本発明のボールペンチップの実施形態の一例を示すものであり、図1(a)はボールペンチップのチップホルダー部材に、ダイヤモンド状炭素(DLC:Diamond Like Carbon)膜がコートされなる要部縦断面図、(b)はDLC膜をコートしていないボールペンチップの要部縦断面図、図2は図1(a)のボールペンチップ全体を示す縦断面図である。
【0015】
本実施形態のボールペンチップAは、図1及び図2に示すように、ボール10と、該ボール10を抱持してなるチップホルダー部材20とを備えたものである。
ボール10の材質としては、特に限定されるものではなく、各種金属の単体、合金、セラミック焼結体などが用いられる。具体的には、WCボール、鋼製ボール、ステンレス系ボールなどの合金系ボールや、TiC、VC、Cr3C2、TaC、NbC、Mo2C、B4C、ZrC、SiCなどの炭化物系、Al2O3、CrO3、MgO、SiO2、BeO、ThO2、TiO2、CaO、TiO、ZrO2などの酸化物系、TiN、BN、SiN4、AlNなどの窒化物系、ZrB2、CrB、TiB2などのホウ化物系、MoSi2、TiSi2、CrSi2などの珪化物系などのセラミック系ボールなどが挙げられる。
また、このボール10の直径は、特に限定されず、例えば、0.25mm〜2.0mmに設定される。
【0016】
チップホルダー部材20は、その先端外形が先細形状となり、その内部にはボール先端側へ順次径が縮小となるインキ導入孔21、インキ誘導孔22が形成されている。また、チップホルダー部材20の先端内部には、ボール10を抱持するボールハウス23が形成されている。このボールハウス23の内部には、ボール10と接触するボール受け座24と、その先端に形成されたカシメ部25とにより、ボール10が回転自在に抱持される構造となっている。
ボールハウス23の奥部には、テーパー面に放射状に3〜6本のインキ溝26を備えると共に、該インキ溝26はインキ誘導孔22と連通している。
チップホルダー部材20の材質としては、特に限定されるものではなく、ステンレス(SUS)、銅、黄銅、ニッケル、アルミニウムなどの各種金属の単体、合金、真鍮、洋白などが用いられる。
【0017】
本実施形態のチップホルダー部材20には、図1(a)に示すように、ボール10と接触するボール受け座24表面、カシメ部25表面、及びインキ溝26を有するインキ誘導孔22表面に、ダイヤモンド状炭素(DLC)膜30がコート(被覆)されている。
また、DLC膜30は、適宜、図3(a)に示すように、チップホルダー部材20において、ボール10と接触するボール受け座24表面のみ、図3(b)に示すように、ボール10と接触するボール受け座24表面及びカシメ部25表面、図3(c)に示すように、ボール10と接触するボール受け座24表面、カシメ部25表面及びインキ溝26を有するインキ誘導孔22表面、更に、図3(d)に示すように、ボール10表面に、コート(被覆)しても良いものである。
【0018】
コート(被覆)されるDLC膜30は、極めて硬く、高い化学的安定性、耐磨耗性、優れた光学透過性、潤滑性を有するものである。
このDLC膜30の厚さは、用いるチップホルダー部材20の材質などによって変動するものであるが、1オングストローム〜5μm、好ましくは、5オングストローム〜2μmとすることが望ましい。
このDLC膜30の厚さが1オングストローム未満であると、本発明の効果が発揮されず、また、5μmを超過では、均一に平滑面をえることが難しくなり、好ましくない。
【0019】
このDLC膜30をチップホルダー部材20、例えば、図1(a)に示すように、ボール受け座24表面、カシメ部25表面、及びインキ溝26を有するインキ誘導孔22表面に被覆する方法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンビーム、レーザアブレーションなどの物理的蒸着(物理的気相成長法)、真空アーク蒸着、プラズマ蒸着、レーザ蒸着などの化学的蒸着(化学的気相成長法)などが挙げられ、好ましくは、100℃以下の低温でDLC膜を薄膜でコートできる点から、低温プラズマCVD法が望ましい。
また、チップホルダー部材20の少なくとも一部分、例えば、図3(b)に示すように、ボール受け座24表面及びカシメ部25表面にのみDLC膜30を被覆する場合は、被覆しない部分(インキ誘導孔22等)をPVAなどの水溶性高分子でコートした後、水で溶解除去する方法や、剥離性樹脂マスク材を付着させた後、剥離する方法などにより、チップホルダー部材20の所定の場所にDLC膜を被覆することができる。なお、インキ誘導孔にDLC膜を形成しない場合は、DLV膜形成用ガスが入りこまないように嵌合自在となるゴム製又は樹脂製等の細棒部材を嵌め込んでもよいものである。
【0020】
このように構成される本実施形態のボールペンチップAは、例えば、図4に示される逆流防止ボール体35を有する継手部材36を介して筆記具用インキ組成物37及び逆流防止体(フォロア)38が充填される樹脂製又は金属製のインキ収容管(リフィール)40に連結される。このインキ収容管40は、図5に示すように、先軸部材45を介して軸体となるペン軸50に取り付けられて本発明となるボールペンBが構成されることとなる。なお、51はエラストマー材又はゴム部材からなるすべり止め部材であり、52はキャップ部材である。
【0021】
本発明のボールペンに用いる筆記具用インキ組成物としては、特に限定されず、油性インキ組成物、水性インキ組成物、水性ゲルインキ組成物、加圧用インキ組成物などを用いることができる。
油性インキ組成物の配合組成としては、例えば、着色剤、有機溶剤、樹脂その他の添加剤が含有される。着色剤としては、従来の油性ボールペン用インキ等に使用されている油溶性染料、顔料が使用可能である。油溶性染料としては、使用する有機溶剤に可溶な染料、例えば、バリーファーストカラー(オリエント化学社製)、アイゼンスピロン染料、アイゼンスSOT染料(保土ヶ谷化学社製)などが挙げられる。
また、顔料としては、例えば、カーボンブラック、二酸化酸化チタン、チタンブラック、金属粉、金属酸化物などの無機系顔料、あるいは、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などの有横糸顔料が挙げられる。
これらの着色剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上混合して用いても良く、また、染料と顔料を併用しても良い。
これらの着色剤の含有量は、インキ組成物の全重量に対して、5〜60重量%の範囲であることが好ましい。この着色剤の含有量が5重量%未満では、濃度が不足しボールペンとして十分な品質が得られず、また、60重量%超過では、保存安定性や溶解性の点で好ましくない。
【0022】
また、油性インキ組成物に用いる有機溶剤は、通常の油性ボールペンインキ組成物等に用いられている溶剤、すなわち、前記着色剤を溶解又は分散し、かつ比較的高沸点であるものが使用される。
このような有機溶剤としては、例えば、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、カービトール類、セロソルブ類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよく、その含有量はインキ組成物全量に対して、20〜70重量%の範囲であることが好ましい。
この有機溶剤の含有量が20重量%未満では、添加される着色剤その他の溶解性の点で好ましくなく、また、70重量%超過では、含有される着色剤が不足し濃度不足となる点で好ましくない。
【0023】
更に、油性インキ組成物には、樹脂を含有せしめることができ、該樹脂は当該インキ組成物の粘度を調製するために使用するものであり、通常の油性ボールペンインキ組成物に使用されている樹脂、例えば、ケトン樹脂、スルホンアミド樹脂、マレイン樹脂、エステルガム、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール樹脂、及びこれらの変性物が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
これらの樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対して、好ましくは、5〜30重量%である。この場合、樹脂の含有量が5重量%未満では、必要最低限の粘度が得られない点で好ましくなく、また30重量%超過では、得られる粘度が高くなりすぎる点で、好ましくない。
【0024】
好ましくは、用いる油性インキ組成物には、更に、リン酸エステル化合物を含有せしめることが望ましい。
用いることができるリン酸エステル化合物とは、アルキルフェノールとポリエチレングリコールとからなるエーテル型非イオン活性剤をリン酸エステル化することによって得られた非イオン性アニオン活性剤から選定したものであって、リン酸モノエステル、ジエステル、トリエステルから選択される一種又はこれらの混合物からなるものである。
また、これらのリン酸エステル化合物はイミダゾリン型活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アルキルアルカノールアミド等で中和して用いてもよいものである。
【0025】
これらのリン酸エステル化合物の含有量は、インキ組成全量に対して、好ましくは、0.01〜5重量%、更に好ましくは、0.05〜2重量%である。
このリン酸エステル化合物の含有量が0.01重量%未満では、更なる効果を充分に発揮せずに、かつ、更なる潤滑性が得られず、また、5重量%を越えると、油性ボールペンインキとしての系が壊れる等の他の性能を損なうこととなり、好ましくない。
【0026】
用いる油性インキ組成物は、25℃での粘度が、20,000mP・s以下、好ましくは、10〜10,000mP・sの広範囲で使用可能であり、適宜着色剤が染料や顔料の場合に応じて、前記樹脂と有機溶剤の含有量で粘度の調整することが好ましい。
なお、上記構成となる油性インキ組成物には、前記各成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常の油性ボールペンインキ組成物に用いられている他の添加物、例えば、脂肪酸類、界面活性剤(潤滑剤等)、防錆剤、酸化防止剤、抗菌剤、pH調整剤、潤滑油等を必要に応じて添加することもできる。
【0027】
また、水性インキ組成物としては、上述の着色剤、水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、海洋深層水)、水溶性有機溶剤、水溶性樹脂その他の添加剤が含有され、更に水性ゲルインキでは、ゲル化剤などを含有することができる。
この水性インキ組成物には、前記各成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常の水性ボールペンインキ組成物に用いられている他の添加物、例えば、界面活性剤(潤滑剤)、粘度調整剤、防錆剤、防腐材、酸化防止剤、抗菌剤、pH調整剤等を必要に応じて添加することもできる。
更に、本発明に用いる水性インキ組成物の粘度(25℃、以下同様)は、ボールペンの機構、すなわち、中綿方式のボールペンと直溜方式のボールペンにより、1〜数10mP・sのものと、50〜2000mP・sのものとに分けることができる。
中綿方式のボールペンでは、水性インキの粘度1〜数10mP・sのものを吸蔵させた中綿を収容した軸筒、その中綿に接続される繊維束などからなる中継芯、ボールとチップホルダーからなるペン先などから構成される。
また、直溜方式のボールペンには、2種類あり、その一つは、水性インキの粘度1〜数10mP・sのものを直接貯溜したインキタンク、インキタンク内の空気が温度上昇などによって膨張した場合、インキタンクから押し出されるインキを版先や空気孔からボタ落ちさせないために一時的に保留するインキ保留体(コレクター部材)、ボールとチップホルダーからなるペン先などから構成される。
他の一つの直溜方式のボールペンは、水性インキの粘度50〜2000mP・s又は擬塑性粘性を有するもので、例えば、38sec−1に100〜2000mP・sの範囲で、かつ、100回転(約380sec−1)の時に10〜100mP・sの範囲を示す粘性等があり、水性インキを直接貯溜したチューブ、ボールとチップホルダーからなるペン先などから構成される。
なお、本発明に用いる水性ボールペンのペン先は、ボールとチップホルダーとからなり、チップホルダーとしてステンレス、真鍮及び洋白から選ばれる少なくとも1種の材質から選ばれ、ボールは超硬合金、ジルコニア、炭化ケイ素などからなるものである。
【0028】
従って、用いるインキ組成物(油性インキ、水性インキ、水性ゲルインキ、加圧インキ)は、各用途の粘度範囲で優れた効果を発揮するものであり、特に、顔料を含有した油性インキ又は水性インキを用いると共に、易切削性の黄銅材や洋白材、ブロンズ等に対しても優れた品質を有するが、快削ステンレス鋼で構成されたボールペンチップを使用したボールペンで最も好適に使用される。このうち、特にインキ組成物の粘度が低いもの、例えば、25℃における粘度が5,000mPa・s以下の低粘度油性インキ組成物をボールペンに充填させた場合に優れた潤滑効果を発揮するものとなる。
【0029】
このように構成さるボールペンB(ボールペンチップAを含む)による筆記は、図6に示すように、ペン先のボール10の回転によりチップ内部より流出してくるインキ(図中の矢印)が紙などの記録体Kに転写もしくは浸透し、特に、転写により、筆跡・描線を得ることができるものである。このとき、余剰のインキがチップホルダー20の外周に付着しても、再び書き始めるときや、筆記途中におけるインキのボテ現象の発生がなく、いつまでもきれいな描線を得ることができる。
すなわち、本発明では、ボールぺンチップを構成するボール又はボールと接触するボール受け座表面、またはこれらの両方に、更には、チップホルダー部材のカシメ部表面、インキ溝表面を含むインキ流動孔表面にDLC膜をコートしたボールペンチップを用いることにより、顔料を含んだインキ組成物でもボールペンのペン先でのチップ摩耗を抑制する効果が大きく、かつ滑らかな書き味となるボールペンチップ及びボールペンが提供されることとなる。この作用メカニズムは、DLC膜が非常に硬く、耐食性に優れ、且つ非常に薄膜で平滑にコートできるためではないかと推測され、その結果、カーボンブラックや二酸化チタン、チタンブラック、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の顔料を含有したインキ組成物中に含んでも、高級脂肪酸やその他の添加剤及びノニルフェノール系以外のリン酸エステル等の潤滑剤では得られなかった高筆圧下での長距離筆記においても優れた潤滑性を保持することができるものとなる。
【0030】
本発明は、上述の如く、ボールペンチップ部材を構成するボール、チップホルダー部材におけるボールと接触するボール受け座表面、カシメ部、インキ誘導孔(インキ溝含む)の何れか、又は2ケ所以上にDLC膜がコートされることにより、ボール及びボール受け座の磨耗を防止できるものであるので、ボールペンチップ以外の構造は特に限定されるものではなく、油性ボールペン、水性ボールペン、水性ゲルボールペン、加圧ボールペンに好適に適用されるものである。
【0031】
【実施例】
次に、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものでない。
【0032】
〔実施例1〜6及び比較例1〜6〕
下記各方法により、ボールペンチップを作製し、また、下記方法により各インキ組成物(配合単位:重量%、全量100重量%)を調製した。
得られたインキ組成物の粘度の測定は、EHD型粘度計〔コーンプレートタイプ:トキメック社製、使用ローター;標準コーン(1°34´)〕により測定した。
【0033】
また、得られた各インキ組成物を各ボールペンチップ部材(ボール、チップホルダー部材の各表面にDLC膜がコートされているボールペンチップ部材)を用いたボールペン(インキ収納管:内径6mmのポリプロピレン製チューブ、チップホルダー:ステンレスチール、ボール:超硬合金タングステンカーバイドで、直径0.7mm又は0.5mm)に2g充填し、下記各方法により筆記性能(流出量、ボール沈み、ボール飛び数、筆記後の受け座の状態、経時後のチップ内部の状態)を評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0034】
(実施例1)
ステンレ製チップホルダーのボール受け座内部表面、カシメ部表面、インキ流動孔表面に、メタンガスを原料に、アルゴンガスをキャリアーガスとして、低温プラズマCVD法により(実施例2以降も同様)DLC膜を平均で約300オングストロームコートしたものに、超硬合金タングステンカーバイドで、直径0.7mm、超硬性ボールを嵌め込んだものをボールペンチップ〔図1(a)準拠〕として用いた。
また、下記配合組成となる油性ボールペン用黒インキ組成物(油性▲1▼)を調製した。インキ粘度は2,000mPa・sであった。
顔料:カーボンブラック(Plintex25)*1 11.5
染料:スピロンイエローC−GNH*2 5
スピロンバイオレットLRH*2 15
溶剤:ベンジルアルコール 60
樹脂:ポリビニルピロリドン(PVP K120)*3 0.7
リン酸エステル化合物:プライサーフA207H*4 0.8
(ジノニルフェノール系、HLB;7.1)
ポリビニルブチラール(BL−1) 5
オレイン酸 2
*1:デグッサ社製
*2:保土谷化学工業社製
*3:ISP社製
*4:第一工業製薬社製
【0035】
(実施例2)
ステンレスチール製チップホルダーのボール受け座内部表面、カシメ部表面、インキ流動孔表面に、DLC膜を平均で約300オングストロームコートしたものに、更に、超硬合金タングステンカーバイドで、直径0.7mm、超硬性ボールにDLC膜を平均で約300オングストロームコートしたものを嵌め込んだものをボールペンチップ〔図3(d)準拠〕として用いた。
また、下記配合組成となる油性ボールペン用青インキ組成物(油性▲2▼)を調製した。インキ粘度は3,000mPa・sであった。
顔料:カーボンブラック*1 10
染料:バリーファーストブルー#1603*5 5
サビニールブルーGLS*6 15
溶剤:ベンジルアルコール 4
溶剤:フェノキシエタノール 57.2
樹脂:ポリビニルピロリドン(ルピスコール K30)*7 4
ポリビニルピロリドン(ルピスコール K80)*7 0.8
リン酸エステル化合物:フォスファノールRM−410*8 4
(ジノニルフェノール系、HLB;5.8)
*5:オリエント化学工業社製
*6:SANDOZ社製
*7:BASF社製
*8:東邦化学工業社製
【0036】
(実施例3)
洋白製チップホルダー部材のボール受け座内部表面とカシメ部表面とインキ流動孔にDLC膜を平均で約300オングストロームコートしたものに、超硬合金タングステンカーバイドで、直径0.7mm、超硬性ボールを嵌め込んだものをボールペンチップ〔図1(a)準拠〕として用いた。
また、油性インキ組成物は上記実施例2の配合組成のもの(油性▲2▼)を用いた。
【0037】
(実施例4)
上記実施例1と同様のボールペンチップ(但し、直径0.5mm)を用いた。
また、下記配合組成となる水性インキ組成物油(水性▲1▼)を調製した。
この水性インキの調製は、下記成分のうちポリアクリル酸ナトリウムを除く各成分を撹絆機にて3時間撹拌・混合した後、ビーズミルにて5時間分散し、更に、粗大粒子を遠心分離機により除去して、その後、室温(25℃)で撹絆しながらポリアクリル酸ナトリウムをゆっくりと加えた後に、更に3〜4時間撹拌してからろ過し、粘度108mPa・sの水性ボールペン用黒インキ組成物を得た。
顔料:カーボンブラック(三菱化学社製、MA100) 7
溶媒:グリセリン 5
トリグリセリンのプロピレンオキサイド10モル付加物 10
分散剤:スチレンアクリル酸脂肪アンモニウム塩 2
増粘剤:ポリアクリル酸ナトリウム 2
潤滑剤:リノール酸カリウム 0.2
pH調整剤:トリエタノールアミン 0.2
防腐剤:1,2−ベンジルイソチアゾリンー3−オン 0.1
(ゼネカ社製、Proxel BDN)
防錆剤:ベンゾトリアゾール 0.2
精製水 73
【0038】
(実施例5)
上記実施例2のボールペンチップ(但し、直径0.5mm)を用いた。
また、下記配合組成となる水性インキ組成物油(水性▲2▼)を調製した。
この水性インキの調製は、カーボンブラックとスチレンマレイン酸水溶液と各溶媒の一部をとり、ビーズミルで分散・遠心分離により粗大粒子を除去して、残部を混合溶解してインキとして、粘度191mPa・sの水性ボールペン用黒インキ組成物を得た。
カーボンブラック(三菱化学社製、MA100) 8
スチレンマレイン酸30水溶液 6
アミノメチルプロパノール 0.3
プロピレングリコール 20
リン酸エステルRS−610(東邦化学社製) 0.5
精製水 58.8
プライマルTT−935(増粘剤、ローム&ハース社製) 6
防腐・防錆剤 0.4
【0039】
(実施例6)
上記実施例1のボールペンチップ(但し、直径0.5mm)を用いた。
インキとして、下記配合組成となる水性インキ組成物油(水性▲3▼)を調製した。
この水性インキの調製は、下記の配合で、粘度3.6mPa・Sの水性ボールペン用黒インキ組成物を調製した。
カーボンブラック(三菱化学社製、MA100) 8
グリセリン 20
スチレンアクリル酸樹脂のアンモニウム塩 3
トリエタノールアミン 0.5
2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール 1
ベンゾトリアゾール 0.1
フェノール 0.1
スチレン−アクリル酸共重合体エマルジョン 3
精製水 64.3
【0040】
〔比較例1〕
上記実施例1において、DLC膜をコートしないボールペンチップ〔図1(b)準拠〕を用いた。
インキは、上記実施例1におけるリン酸エステル化合物を配合しない他は、実施例1と同様にして下記の配合組成で、粘度10,500mPa・sの油性ボールペン用黒インキ組成物を調製した。
顔料:カーボンブラック(Plintex 25)*1 5
染料:バリーファーストブラック#1802*5 15
バリーファーストイエロー#1105*5 5
スピロンバイオレット C−RH*2 15
溶剤:ベンジルアルコール 10
フェノキシエタノール 34.5
樹脂:アセトフェノン樹脂(ハイラック110H)*9 15
ポリビニルピロリドン(PVP K90)*4 0.5
*9:本州化学工業社製
【0041】
〔比較例2〕
上記実施例2において、チップホルダー部材のボール受け座にDLC膜をコートしない実施例2のボールペンチップ(ボールのみDLC膜コート)を用いた。
〔比較例3〕
上記実施例3において、DLC膜をコートしないボールペンチップ〔図1(b)準拠〕を用いた。
【0042】
〔比較例4〕
上記実施例4において、DLC膜をコートしないボールペンチップ〔図1(b)準拠〕を用いた。
〔比較例5〕
上記実施例5において、DLC膜をコートしないボールペンチップ〔図1(b)準拠〕を用いた。
〔比較例6〕
上記実施例6において、DLC膜をコートしないボールペンチップ〔図1(b)準拠〕を用いた。
【0043】
(筆記流出量の測定方法)
得られた各ボールペンを用いてフリーハンドで用紙上に筆記し、100m毎にインキ消費量(重量)を測定し、0〜100mmでの消費量、900〜1000mでの消費量を測定した。但し、流出量の測定値は、5本の平均値とした。
【0044】
(ボール沈みの評価方法)
筆記前(初期)と800m筆記後のボール出の差を測定した。
(ボール飛びの評価方法)
400字詰原稿用紙30枚に筆記した後のボール飛びした数を求めた。但し、筆記試験は、比較的ペンを寝かせて書く人を15人選択して筆記試験を実施した。
【0045】
(ボール受け座の状態の評価方法)
上記1000m消費後のボールペンからボールを抜き取り、インキを十分除去した状態で顕微鏡にてチップホルダー部材のボール受け座の状態を観察し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:変化なし
△:やや磨耗
×:磨耗している
【0046】
(経時変化(強制劣化)試験方法)
50℃、80%RHの恒温恒湿槽内に3ケ月放置後、チップの内部を顕微鏡にて観察し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:変化なし
△:やや腐食
×:腐食している
【0047】
【表1】
【0048】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の範囲内となる実施例1〜6は、本発明の範囲外となる比較例1〜6に較べて、ボールペンチップにおけるボール、ボール受け座の磨耗及び腐食を防止できると共に、ボール沈み、ボール飛びもなく、長期経時後でも筆記性が良好となるボールペンが得られることが判明した。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、ボール及びチップホルダー部材のボール受け座の磨耗を防止できるばかりでなく、ボール及びボール受け座の腐食も抑制できると共に、金属加工面の荒れ面がDLC膜によって平滑化されチップ先端部の密閉性、即ちシール性が向上し、長期経時後の筆記性が良好となるボールペンチップ及びボールペンが得られるものとなる。
従って、本発明は、長時間筆記しなかった場合のペン先でのインキの劣化を極めて小さくすることができ、黄銅材や洋白材はもちろん、耐蝕性はよいが書き味が低いといわれるステンレススチール等で構成されたボールペンチップを使用したボールペンとしても、極めて滑らかな書き味を提供することができ、更に、加圧ボールペン、油性ボールペン、水性ボールペン、水性ゲルインキボールペン等の全てのボールペンタイプに利用可能となるボールペンチップ及びボールペンが提供されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のボールペンチップの実施形態の一例を示す要部縦断面図、(b)はチップホルダー部材に、ダイヤモンド状炭素膜がコートされていない状態を示す要部縦断面図である。
【図2】図1(a)のボールペンチップ全体を示す縦断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明のボールペンチップの実施形態の他例を示す要部縦断面図である。
【図4】図1(a)のボールペンチップを取り付けたインキ収容管(リフィール)の一例を示す縦断面図である。
【図5】図4のインキ収容管性を取り付けたボールペンの一例を示す縦断面図である。
【図6】本発明のボールペンの使用状態の一例を示す要部縦断面図である。
【符号の説明】
A ボールペンチップ
10 ボール
20 チップホルダー部材
30 ダイヤモンド状炭素(DLC)膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、油性インキ、水性インキ、水性ゲルインキ、並びに加圧インキ用に好適なボールペンチップ及びボールペンに関し、更に詳しくは、広範囲な粘度範囲を有するインキに対しても、極めて優れた潤滑性を有すると共に、チップ摩耗を抑制する効果が大きく、かつ滑らかな書き味となるボールペンチップ及びボールペンに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ボールペンは、ボール、チップホルダー部材からなるボールペンチップ(ペン先)、インキ収容管、ペン軸などから構成されている。
この構造のボールペンにおいて、例えば、インキ収容管に油性インキを充填して筆記した場合、ペン先のボールの回転によりチップ内部より流出してくるインキが紙などの記録体に転写もしくは浸透し、特に転写により、筆跡・描線を得ることができるものである。
【0003】
その時、転写または浸透しきれなかった余剰のインキがチップホルダー部材の外周に付着し、書き始めや、時には筆記途中でインキのかたまりが滴下される現象、いわゆるボテ現象が発生し、きれいな描線を得ることができないことがある。
これらは、主にボールやチップホルダー部材の磨耗や腐食により発現する現象と考えられている。
【0004】
これらの問題等を解決するために、ボールの磨耗を軽減し、スムーズな筆記性の確保を目的に、例えば、ジルコニアなどを用いたボールペン用セラミックス系ボール(特許文献1参照)が知られ、更に、ボールに金属炭化物、金属窒化物、ダイヤモンド状炭素を被覆したボールペン(特許文献2及び3参照)が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−147091号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】
特開2001−121868号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】
特開2001−80262号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0006】
しかしながら、これらの特許文献1〜3に記載される技術は、ボールが非常に硬くなりボール自身の磨耗は軽減されるが、逆にボールの受け座部の磨耗は増大してしまうものとなる。しかも、ボールの受け座部の磨耗は、ボールの真球性が悪いと、特に顕著となる課題を有する。
このようなボールの受け座部の磨耗は、長距離筆記、特に、高筆圧下での長距離筆記の際には潤滑性が不足して筆感が重くなったり、描線がかすれたり、速書きすると線が途切れたりするなどの課題が発生する原因となっている。
【0007】
一方、書き始めのインキの出をスムーズにし、かつ滑らかな運筆感を得るために、従来から油性インキ組成物に潤滑剤としてステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸等の高級脂肪酸等が含有されている。
しかしながら、これらの高級脂肪酸を含有した油性ボールペン用インキ組成物では、長距離筆記、特に、高筆圧下での長距離筆記の際には潤滑性が不足して筆感が重くなったり、描線がかすれたり、速書きすると線が途切れたりするなどの課題があり、潤滑剤としては未だ性能的に不十分であった。
【0008】
そこで、油性インキ組成物に脂肪酸やナフテン酸等の非アルカリ金属塩を含有したもの(特許文献4参照)や、ラノリン誘導体を含有したもの(特許文献5参照)、並びに、フッ素系またはシリコーン系界面活性剤を含有したもの(特許文献6参照)が知られている。
更に、ポリグリセリンの脂肪酸エステルを含有したもの(特許文献7参照)、フッ素系ホスホン酸化合物を含有したもの(特許文献8参照)、リン酸エステル化合物を含有したもの(特許文献9参照)が知られている。
【0009】
【特許文献4】
特開昭52−123722号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】
特開昭55−84376号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献6】
特公平1−39467号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献7】
特開平3−28279号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献8】
特開平8−41407号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献9】
特開平9−194783号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0010】
しかしながら、上記特許文献4〜6に記載される配合では、未だ得られる性能が十分でなかったり、他の品質に悪影響を与えるなどの課題がある。
また、上記特許文献7〜9に記載される配合でも、多くの場合得られる性能が不十分であった。特に、軽い書き味を得るために、25℃での粘度が100〜5,000mPa・sと油性ボールペン用のインキ組成物として低い粘度に設定した場合や、耐光性や耐アルコール性などの堅牢性を付与するために、インキ中に5〜30重量%の顔料を添加したインキ等ではその性能低下は顕著となる課題がある。
【0011】
また、滑らかな書き味を向上させるために油性インキの粘度を下げると、数千mP・s以上では良いが、それ以下になると徐々にボールとボール受け座での金属接触が増加し書き味の低下やボール受け座の磨耗を引き起こすという課題を生じている。すなわち、使い始めのころは、粘度効果により比較的書き味が良好であるが、筆記するにするに従って、磨耗が進みチップの内部構造が破壊され書き味の低下は勿論、筆記できない状態になることもある。
更に、チップホルダー部材の材質として、ブロンズや洋白などは、切削性が良く安価であるがボール受け座の腐食や磨耗の問題がある。これらのチップ材質の問題を解決するために、ボール受け座の腐食を抑制するのに切削などの加工性が悪く、高価なステンレスなどを使用しているのが現状であるが、ステンレスでもボール受け座の腐食や磨耗の課題は未だ解決できていないのが現状である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、より潤滑効果が高く、滑らかな書き味で、かつ長時間筆記しても変わらぬ性能を有する油性ボールペン、水性ボールペン、水性ゲルボールペン、加圧ボールペンに好適なボールペンチップ及びボールペンを提供すること、すなわち、油性、水性を問わず広範囲な粘度範囲で優れた潤滑性を有すると共に、ボールとそのチップホルダーからなるペン先でのチップ磨耗、腐食を抑制する効果が大きく、かつ滑らかな書き味となる油性ボールペン、水性ボールペン、水性ゲルボールペン、加圧ボールペンなどに好適なボールペンチップ及びボールペンを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来の課題等を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、ボールペンチップを構成するボール、または、ボールと接触するボール受け座表面、または、これらの両方に、更には、チップホルダー部材外表面、インキ流動孔表面に特定物性の炭素膜をコートすることにより、カーボンブラックや二酸化チタンなどの顔料を用いたインキでも潤滑性と耐磨耗性、耐腐食性に優れ、長期間滑らかな書き味と筆記性能が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(9)に存する。
(1) ボールと、該ボールを抱持してなるチップホルダー部材とを備えたボールペンチップにおいて、チップホルダー部材がダイヤモンド状炭素膜でコートされていることを特徴とするボールペンチップ。
(2) チップホルダー部材の少なくとも、ボールと接触するボール受け座表面がダイヤモンド状炭素膜でコートされている上記(1)記載のボールペンチップ。
(3) チップホルダー部材の少なくとも、カシメ部表面と、ボールと接触するボール受け座表面とが共にダイヤモンド状炭素膜でコートされている上記(1)記載のボールペンチップ。
(4) チップホルダー部材の少なくとも、インキ誘導孔表面と、ボールと接触するボール受け座表面とが共にダイヤモンド状炭素膜でコートされている上記(1)記載のボールペンチップ。
(5) チップホルダー部材の少なくとも、カシメ部表面と、インキ誘導孔表面と、ボールと接触するボール受け座表面とが共にダイヤモンド状炭素膜でコートされている上記(1)記載のボールペンチップ。
(6) 更に、ボール表面がダイヤモンド状炭素膜でコートされている上記(1)〜(5)の何れか一つに記載のボールペンチップ。
(7) ダイヤモンド状炭素膜の厚さが1オングストローム〜5μmの範囲内である上記(1)〜(6)の何れか一つに記載のボールペンチップ。
(8) 上記(1)〜(7)の何れか一つに記載のボールペンチップと、インキ組成物を充填してなるインキ収容管と、ペン軸とを備え、上記インキ組成物には、少なくとも顔料が含まれていることを特徴とするボールペン。
(9) 顔料が、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化第一鉄、酸化第二鉄、チタンブラックである上記(9)記載のボールペン。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
図1及び図2は本発明のボールペンチップの実施形態の一例を示すものであり、図1(a)はボールペンチップのチップホルダー部材に、ダイヤモンド状炭素(DLC:Diamond Like Carbon)膜がコートされなる要部縦断面図、(b)はDLC膜をコートしていないボールペンチップの要部縦断面図、図2は図1(a)のボールペンチップ全体を示す縦断面図である。
【0015】
本実施形態のボールペンチップAは、図1及び図2に示すように、ボール10と、該ボール10を抱持してなるチップホルダー部材20とを備えたものである。
ボール10の材質としては、特に限定されるものではなく、各種金属の単体、合金、セラミック焼結体などが用いられる。具体的には、WCボール、鋼製ボール、ステンレス系ボールなどの合金系ボールや、TiC、VC、Cr3C2、TaC、NbC、Mo2C、B4C、ZrC、SiCなどの炭化物系、Al2O3、CrO3、MgO、SiO2、BeO、ThO2、TiO2、CaO、TiO、ZrO2などの酸化物系、TiN、BN、SiN4、AlNなどの窒化物系、ZrB2、CrB、TiB2などのホウ化物系、MoSi2、TiSi2、CrSi2などの珪化物系などのセラミック系ボールなどが挙げられる。
また、このボール10の直径は、特に限定されず、例えば、0.25mm〜2.0mmに設定される。
【0016】
チップホルダー部材20は、その先端外形が先細形状となり、その内部にはボール先端側へ順次径が縮小となるインキ導入孔21、インキ誘導孔22が形成されている。また、チップホルダー部材20の先端内部には、ボール10を抱持するボールハウス23が形成されている。このボールハウス23の内部には、ボール10と接触するボール受け座24と、その先端に形成されたカシメ部25とにより、ボール10が回転自在に抱持される構造となっている。
ボールハウス23の奥部には、テーパー面に放射状に3〜6本のインキ溝26を備えると共に、該インキ溝26はインキ誘導孔22と連通している。
チップホルダー部材20の材質としては、特に限定されるものではなく、ステンレス(SUS)、銅、黄銅、ニッケル、アルミニウムなどの各種金属の単体、合金、真鍮、洋白などが用いられる。
【0017】
本実施形態のチップホルダー部材20には、図1(a)に示すように、ボール10と接触するボール受け座24表面、カシメ部25表面、及びインキ溝26を有するインキ誘導孔22表面に、ダイヤモンド状炭素(DLC)膜30がコート(被覆)されている。
また、DLC膜30は、適宜、図3(a)に示すように、チップホルダー部材20において、ボール10と接触するボール受け座24表面のみ、図3(b)に示すように、ボール10と接触するボール受け座24表面及びカシメ部25表面、図3(c)に示すように、ボール10と接触するボール受け座24表面、カシメ部25表面及びインキ溝26を有するインキ誘導孔22表面、更に、図3(d)に示すように、ボール10表面に、コート(被覆)しても良いものである。
【0018】
コート(被覆)されるDLC膜30は、極めて硬く、高い化学的安定性、耐磨耗性、優れた光学透過性、潤滑性を有するものである。
このDLC膜30の厚さは、用いるチップホルダー部材20の材質などによって変動するものであるが、1オングストローム〜5μm、好ましくは、5オングストローム〜2μmとすることが望ましい。
このDLC膜30の厚さが1オングストローム未満であると、本発明の効果が発揮されず、また、5μmを超過では、均一に平滑面をえることが難しくなり、好ましくない。
【0019】
このDLC膜30をチップホルダー部材20、例えば、図1(a)に示すように、ボール受け座24表面、カシメ部25表面、及びインキ溝26を有するインキ誘導孔22表面に被覆する方法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンビーム、レーザアブレーションなどの物理的蒸着(物理的気相成長法)、真空アーク蒸着、プラズマ蒸着、レーザ蒸着などの化学的蒸着(化学的気相成長法)などが挙げられ、好ましくは、100℃以下の低温でDLC膜を薄膜でコートできる点から、低温プラズマCVD法が望ましい。
また、チップホルダー部材20の少なくとも一部分、例えば、図3(b)に示すように、ボール受け座24表面及びカシメ部25表面にのみDLC膜30を被覆する場合は、被覆しない部分(インキ誘導孔22等)をPVAなどの水溶性高分子でコートした後、水で溶解除去する方法や、剥離性樹脂マスク材を付着させた後、剥離する方法などにより、チップホルダー部材20の所定の場所にDLC膜を被覆することができる。なお、インキ誘導孔にDLC膜を形成しない場合は、DLV膜形成用ガスが入りこまないように嵌合自在となるゴム製又は樹脂製等の細棒部材を嵌め込んでもよいものである。
【0020】
このように構成される本実施形態のボールペンチップAは、例えば、図4に示される逆流防止ボール体35を有する継手部材36を介して筆記具用インキ組成物37及び逆流防止体(フォロア)38が充填される樹脂製又は金属製のインキ収容管(リフィール)40に連結される。このインキ収容管40は、図5に示すように、先軸部材45を介して軸体となるペン軸50に取り付けられて本発明となるボールペンBが構成されることとなる。なお、51はエラストマー材又はゴム部材からなるすべり止め部材であり、52はキャップ部材である。
【0021】
本発明のボールペンに用いる筆記具用インキ組成物としては、特に限定されず、油性インキ組成物、水性インキ組成物、水性ゲルインキ組成物、加圧用インキ組成物などを用いることができる。
油性インキ組成物の配合組成としては、例えば、着色剤、有機溶剤、樹脂その他の添加剤が含有される。着色剤としては、従来の油性ボールペン用インキ等に使用されている油溶性染料、顔料が使用可能である。油溶性染料としては、使用する有機溶剤に可溶な染料、例えば、バリーファーストカラー(オリエント化学社製)、アイゼンスピロン染料、アイゼンスSOT染料(保土ヶ谷化学社製)などが挙げられる。
また、顔料としては、例えば、カーボンブラック、二酸化酸化チタン、チタンブラック、金属粉、金属酸化物などの無機系顔料、あるいは、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などの有横糸顔料が挙げられる。
これらの着色剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上混合して用いても良く、また、染料と顔料を併用しても良い。
これらの着色剤の含有量は、インキ組成物の全重量に対して、5〜60重量%の範囲であることが好ましい。この着色剤の含有量が5重量%未満では、濃度が不足しボールペンとして十分な品質が得られず、また、60重量%超過では、保存安定性や溶解性の点で好ましくない。
【0022】
また、油性インキ組成物に用いる有機溶剤は、通常の油性ボールペンインキ組成物等に用いられている溶剤、すなわち、前記着色剤を溶解又は分散し、かつ比較的高沸点であるものが使用される。
このような有機溶剤としては、例えば、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、カービトール類、セロソルブ類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよく、その含有量はインキ組成物全量に対して、20〜70重量%の範囲であることが好ましい。
この有機溶剤の含有量が20重量%未満では、添加される着色剤その他の溶解性の点で好ましくなく、また、70重量%超過では、含有される着色剤が不足し濃度不足となる点で好ましくない。
【0023】
更に、油性インキ組成物には、樹脂を含有せしめることができ、該樹脂は当該インキ組成物の粘度を調製するために使用するものであり、通常の油性ボールペンインキ組成物に使用されている樹脂、例えば、ケトン樹脂、スルホンアミド樹脂、マレイン樹脂、エステルガム、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール樹脂、及びこれらの変性物が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
これらの樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対して、好ましくは、5〜30重量%である。この場合、樹脂の含有量が5重量%未満では、必要最低限の粘度が得られない点で好ましくなく、また30重量%超過では、得られる粘度が高くなりすぎる点で、好ましくない。
【0024】
好ましくは、用いる油性インキ組成物には、更に、リン酸エステル化合物を含有せしめることが望ましい。
用いることができるリン酸エステル化合物とは、アルキルフェノールとポリエチレングリコールとからなるエーテル型非イオン活性剤をリン酸エステル化することによって得られた非イオン性アニオン活性剤から選定したものであって、リン酸モノエステル、ジエステル、トリエステルから選択される一種又はこれらの混合物からなるものである。
また、これらのリン酸エステル化合物はイミダゾリン型活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アルキルアルカノールアミド等で中和して用いてもよいものである。
【0025】
これらのリン酸エステル化合物の含有量は、インキ組成全量に対して、好ましくは、0.01〜5重量%、更に好ましくは、0.05〜2重量%である。
このリン酸エステル化合物の含有量が0.01重量%未満では、更なる効果を充分に発揮せずに、かつ、更なる潤滑性が得られず、また、5重量%を越えると、油性ボールペンインキとしての系が壊れる等の他の性能を損なうこととなり、好ましくない。
【0026】
用いる油性インキ組成物は、25℃での粘度が、20,000mP・s以下、好ましくは、10〜10,000mP・sの広範囲で使用可能であり、適宜着色剤が染料や顔料の場合に応じて、前記樹脂と有機溶剤の含有量で粘度の調整することが好ましい。
なお、上記構成となる油性インキ組成物には、前記各成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常の油性ボールペンインキ組成物に用いられている他の添加物、例えば、脂肪酸類、界面活性剤(潤滑剤等)、防錆剤、酸化防止剤、抗菌剤、pH調整剤、潤滑油等を必要に応じて添加することもできる。
【0027】
また、水性インキ組成物としては、上述の着色剤、水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、海洋深層水)、水溶性有機溶剤、水溶性樹脂その他の添加剤が含有され、更に水性ゲルインキでは、ゲル化剤などを含有することができる。
この水性インキ組成物には、前記各成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常の水性ボールペンインキ組成物に用いられている他の添加物、例えば、界面活性剤(潤滑剤)、粘度調整剤、防錆剤、防腐材、酸化防止剤、抗菌剤、pH調整剤等を必要に応じて添加することもできる。
更に、本発明に用いる水性インキ組成物の粘度(25℃、以下同様)は、ボールペンの機構、すなわち、中綿方式のボールペンと直溜方式のボールペンにより、1〜数10mP・sのものと、50〜2000mP・sのものとに分けることができる。
中綿方式のボールペンでは、水性インキの粘度1〜数10mP・sのものを吸蔵させた中綿を収容した軸筒、その中綿に接続される繊維束などからなる中継芯、ボールとチップホルダーからなるペン先などから構成される。
また、直溜方式のボールペンには、2種類あり、その一つは、水性インキの粘度1〜数10mP・sのものを直接貯溜したインキタンク、インキタンク内の空気が温度上昇などによって膨張した場合、インキタンクから押し出されるインキを版先や空気孔からボタ落ちさせないために一時的に保留するインキ保留体(コレクター部材)、ボールとチップホルダーからなるペン先などから構成される。
他の一つの直溜方式のボールペンは、水性インキの粘度50〜2000mP・s又は擬塑性粘性を有するもので、例えば、38sec−1に100〜2000mP・sの範囲で、かつ、100回転(約380sec−1)の時に10〜100mP・sの範囲を示す粘性等があり、水性インキを直接貯溜したチューブ、ボールとチップホルダーからなるペン先などから構成される。
なお、本発明に用いる水性ボールペンのペン先は、ボールとチップホルダーとからなり、チップホルダーとしてステンレス、真鍮及び洋白から選ばれる少なくとも1種の材質から選ばれ、ボールは超硬合金、ジルコニア、炭化ケイ素などからなるものである。
【0028】
従って、用いるインキ組成物(油性インキ、水性インキ、水性ゲルインキ、加圧インキ)は、各用途の粘度範囲で優れた効果を発揮するものであり、特に、顔料を含有した油性インキ又は水性インキを用いると共に、易切削性の黄銅材や洋白材、ブロンズ等に対しても優れた品質を有するが、快削ステンレス鋼で構成されたボールペンチップを使用したボールペンで最も好適に使用される。このうち、特にインキ組成物の粘度が低いもの、例えば、25℃における粘度が5,000mPa・s以下の低粘度油性インキ組成物をボールペンに充填させた場合に優れた潤滑効果を発揮するものとなる。
【0029】
このように構成さるボールペンB(ボールペンチップAを含む)による筆記は、図6に示すように、ペン先のボール10の回転によりチップ内部より流出してくるインキ(図中の矢印)が紙などの記録体Kに転写もしくは浸透し、特に、転写により、筆跡・描線を得ることができるものである。このとき、余剰のインキがチップホルダー20の外周に付着しても、再び書き始めるときや、筆記途中におけるインキのボテ現象の発生がなく、いつまでもきれいな描線を得ることができる。
すなわち、本発明では、ボールぺンチップを構成するボール又はボールと接触するボール受け座表面、またはこれらの両方に、更には、チップホルダー部材のカシメ部表面、インキ溝表面を含むインキ流動孔表面にDLC膜をコートしたボールペンチップを用いることにより、顔料を含んだインキ組成物でもボールペンのペン先でのチップ摩耗を抑制する効果が大きく、かつ滑らかな書き味となるボールペンチップ及びボールペンが提供されることとなる。この作用メカニズムは、DLC膜が非常に硬く、耐食性に優れ、且つ非常に薄膜で平滑にコートできるためではないかと推測され、その結果、カーボンブラックや二酸化チタン、チタンブラック、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の顔料を含有したインキ組成物中に含んでも、高級脂肪酸やその他の添加剤及びノニルフェノール系以外のリン酸エステル等の潤滑剤では得られなかった高筆圧下での長距離筆記においても優れた潤滑性を保持することができるものとなる。
【0030】
本発明は、上述の如く、ボールペンチップ部材を構成するボール、チップホルダー部材におけるボールと接触するボール受け座表面、カシメ部、インキ誘導孔(インキ溝含む)の何れか、又は2ケ所以上にDLC膜がコートされることにより、ボール及びボール受け座の磨耗を防止できるものであるので、ボールペンチップ以外の構造は特に限定されるものではなく、油性ボールペン、水性ボールペン、水性ゲルボールペン、加圧ボールペンに好適に適用されるものである。
【0031】
【実施例】
次に、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものでない。
【0032】
〔実施例1〜6及び比較例1〜6〕
下記各方法により、ボールペンチップを作製し、また、下記方法により各インキ組成物(配合単位:重量%、全量100重量%)を調製した。
得られたインキ組成物の粘度の測定は、EHD型粘度計〔コーンプレートタイプ:トキメック社製、使用ローター;標準コーン(1°34´)〕により測定した。
【0033】
また、得られた各インキ組成物を各ボールペンチップ部材(ボール、チップホルダー部材の各表面にDLC膜がコートされているボールペンチップ部材)を用いたボールペン(インキ収納管:内径6mmのポリプロピレン製チューブ、チップホルダー:ステンレスチール、ボール:超硬合金タングステンカーバイドで、直径0.7mm又は0.5mm)に2g充填し、下記各方法により筆記性能(流出量、ボール沈み、ボール飛び数、筆記後の受け座の状態、経時後のチップ内部の状態)を評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0034】
(実施例1)
ステンレ製チップホルダーのボール受け座内部表面、カシメ部表面、インキ流動孔表面に、メタンガスを原料に、アルゴンガスをキャリアーガスとして、低温プラズマCVD法により(実施例2以降も同様)DLC膜を平均で約300オングストロームコートしたものに、超硬合金タングステンカーバイドで、直径0.7mm、超硬性ボールを嵌め込んだものをボールペンチップ〔図1(a)準拠〕として用いた。
また、下記配合組成となる油性ボールペン用黒インキ組成物(油性▲1▼)を調製した。インキ粘度は2,000mPa・sであった。
顔料:カーボンブラック(Plintex25)*1 11.5
染料:スピロンイエローC−GNH*2 5
スピロンバイオレットLRH*2 15
溶剤:ベンジルアルコール 60
樹脂:ポリビニルピロリドン(PVP K120)*3 0.7
リン酸エステル化合物:プライサーフA207H*4 0.8
(ジノニルフェノール系、HLB;7.1)
ポリビニルブチラール(BL−1) 5
オレイン酸 2
*1:デグッサ社製
*2:保土谷化学工業社製
*3:ISP社製
*4:第一工業製薬社製
【0035】
(実施例2)
ステンレスチール製チップホルダーのボール受け座内部表面、カシメ部表面、インキ流動孔表面に、DLC膜を平均で約300オングストロームコートしたものに、更に、超硬合金タングステンカーバイドで、直径0.7mm、超硬性ボールにDLC膜を平均で約300オングストロームコートしたものを嵌め込んだものをボールペンチップ〔図3(d)準拠〕として用いた。
また、下記配合組成となる油性ボールペン用青インキ組成物(油性▲2▼)を調製した。インキ粘度は3,000mPa・sであった。
顔料:カーボンブラック*1 10
染料:バリーファーストブルー#1603*5 5
サビニールブルーGLS*6 15
溶剤:ベンジルアルコール 4
溶剤:フェノキシエタノール 57.2
樹脂:ポリビニルピロリドン(ルピスコール K30)*7 4
ポリビニルピロリドン(ルピスコール K80)*7 0.8
リン酸エステル化合物:フォスファノールRM−410*8 4
(ジノニルフェノール系、HLB;5.8)
*5:オリエント化学工業社製
*6:SANDOZ社製
*7:BASF社製
*8:東邦化学工業社製
【0036】
(実施例3)
洋白製チップホルダー部材のボール受け座内部表面とカシメ部表面とインキ流動孔にDLC膜を平均で約300オングストロームコートしたものに、超硬合金タングステンカーバイドで、直径0.7mm、超硬性ボールを嵌め込んだものをボールペンチップ〔図1(a)準拠〕として用いた。
また、油性インキ組成物は上記実施例2の配合組成のもの(油性▲2▼)を用いた。
【0037】
(実施例4)
上記実施例1と同様のボールペンチップ(但し、直径0.5mm)を用いた。
また、下記配合組成となる水性インキ組成物油(水性▲1▼)を調製した。
この水性インキの調製は、下記成分のうちポリアクリル酸ナトリウムを除く各成分を撹絆機にて3時間撹拌・混合した後、ビーズミルにて5時間分散し、更に、粗大粒子を遠心分離機により除去して、その後、室温(25℃)で撹絆しながらポリアクリル酸ナトリウムをゆっくりと加えた後に、更に3〜4時間撹拌してからろ過し、粘度108mPa・sの水性ボールペン用黒インキ組成物を得た。
顔料:カーボンブラック(三菱化学社製、MA100) 7
溶媒:グリセリン 5
トリグリセリンのプロピレンオキサイド10モル付加物 10
分散剤:スチレンアクリル酸脂肪アンモニウム塩 2
増粘剤:ポリアクリル酸ナトリウム 2
潤滑剤:リノール酸カリウム 0.2
pH調整剤:トリエタノールアミン 0.2
防腐剤:1,2−ベンジルイソチアゾリンー3−オン 0.1
(ゼネカ社製、Proxel BDN)
防錆剤:ベンゾトリアゾール 0.2
精製水 73
【0038】
(実施例5)
上記実施例2のボールペンチップ(但し、直径0.5mm)を用いた。
また、下記配合組成となる水性インキ組成物油(水性▲2▼)を調製した。
この水性インキの調製は、カーボンブラックとスチレンマレイン酸水溶液と各溶媒の一部をとり、ビーズミルで分散・遠心分離により粗大粒子を除去して、残部を混合溶解してインキとして、粘度191mPa・sの水性ボールペン用黒インキ組成物を得た。
カーボンブラック(三菱化学社製、MA100) 8
スチレンマレイン酸30水溶液 6
アミノメチルプロパノール 0.3
プロピレングリコール 20
リン酸エステルRS−610(東邦化学社製) 0.5
精製水 58.8
プライマルTT−935(増粘剤、ローム&ハース社製) 6
防腐・防錆剤 0.4
【0039】
(実施例6)
上記実施例1のボールペンチップ(但し、直径0.5mm)を用いた。
インキとして、下記配合組成となる水性インキ組成物油(水性▲3▼)を調製した。
この水性インキの調製は、下記の配合で、粘度3.6mPa・Sの水性ボールペン用黒インキ組成物を調製した。
カーボンブラック(三菱化学社製、MA100) 8
グリセリン 20
スチレンアクリル酸樹脂のアンモニウム塩 3
トリエタノールアミン 0.5
2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール 1
ベンゾトリアゾール 0.1
フェノール 0.1
スチレン−アクリル酸共重合体エマルジョン 3
精製水 64.3
【0040】
〔比較例1〕
上記実施例1において、DLC膜をコートしないボールペンチップ〔図1(b)準拠〕を用いた。
インキは、上記実施例1におけるリン酸エステル化合物を配合しない他は、実施例1と同様にして下記の配合組成で、粘度10,500mPa・sの油性ボールペン用黒インキ組成物を調製した。
顔料:カーボンブラック(Plintex 25)*1 5
染料:バリーファーストブラック#1802*5 15
バリーファーストイエロー#1105*5 5
スピロンバイオレット C−RH*2 15
溶剤:ベンジルアルコール 10
フェノキシエタノール 34.5
樹脂:アセトフェノン樹脂(ハイラック110H)*9 15
ポリビニルピロリドン(PVP K90)*4 0.5
*9:本州化学工業社製
【0041】
〔比較例2〕
上記実施例2において、チップホルダー部材のボール受け座にDLC膜をコートしない実施例2のボールペンチップ(ボールのみDLC膜コート)を用いた。
〔比較例3〕
上記実施例3において、DLC膜をコートしないボールペンチップ〔図1(b)準拠〕を用いた。
【0042】
〔比較例4〕
上記実施例4において、DLC膜をコートしないボールペンチップ〔図1(b)準拠〕を用いた。
〔比較例5〕
上記実施例5において、DLC膜をコートしないボールペンチップ〔図1(b)準拠〕を用いた。
〔比較例6〕
上記実施例6において、DLC膜をコートしないボールペンチップ〔図1(b)準拠〕を用いた。
【0043】
(筆記流出量の測定方法)
得られた各ボールペンを用いてフリーハンドで用紙上に筆記し、100m毎にインキ消費量(重量)を測定し、0〜100mmでの消費量、900〜1000mでの消費量を測定した。但し、流出量の測定値は、5本の平均値とした。
【0044】
(ボール沈みの評価方法)
筆記前(初期)と800m筆記後のボール出の差を測定した。
(ボール飛びの評価方法)
400字詰原稿用紙30枚に筆記した後のボール飛びした数を求めた。但し、筆記試験は、比較的ペンを寝かせて書く人を15人選択して筆記試験を実施した。
【0045】
(ボール受け座の状態の評価方法)
上記1000m消費後のボールペンからボールを抜き取り、インキを十分除去した状態で顕微鏡にてチップホルダー部材のボール受け座の状態を観察し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:変化なし
△:やや磨耗
×:磨耗している
【0046】
(経時変化(強制劣化)試験方法)
50℃、80%RHの恒温恒湿槽内に3ケ月放置後、チップの内部を顕微鏡にて観察し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:変化なし
△:やや腐食
×:腐食している
【0047】
【表1】
【0048】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の範囲内となる実施例1〜6は、本発明の範囲外となる比較例1〜6に較べて、ボールペンチップにおけるボール、ボール受け座の磨耗及び腐食を防止できると共に、ボール沈み、ボール飛びもなく、長期経時後でも筆記性が良好となるボールペンが得られることが判明した。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、ボール及びチップホルダー部材のボール受け座の磨耗を防止できるばかりでなく、ボール及びボール受け座の腐食も抑制できると共に、金属加工面の荒れ面がDLC膜によって平滑化されチップ先端部の密閉性、即ちシール性が向上し、長期経時後の筆記性が良好となるボールペンチップ及びボールペンが得られるものとなる。
従って、本発明は、長時間筆記しなかった場合のペン先でのインキの劣化を極めて小さくすることができ、黄銅材や洋白材はもちろん、耐蝕性はよいが書き味が低いといわれるステンレススチール等で構成されたボールペンチップを使用したボールペンとしても、極めて滑らかな書き味を提供することができ、更に、加圧ボールペン、油性ボールペン、水性ボールペン、水性ゲルインキボールペン等の全てのボールペンタイプに利用可能となるボールペンチップ及びボールペンが提供されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のボールペンチップの実施形態の一例を示す要部縦断面図、(b)はチップホルダー部材に、ダイヤモンド状炭素膜がコートされていない状態を示す要部縦断面図である。
【図2】図1(a)のボールペンチップ全体を示す縦断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明のボールペンチップの実施形態の他例を示す要部縦断面図である。
【図4】図1(a)のボールペンチップを取り付けたインキ収容管(リフィール)の一例を示す縦断面図である。
【図5】図4のインキ収容管性を取り付けたボールペンの一例を示す縦断面図である。
【図6】本発明のボールペンの使用状態の一例を示す要部縦断面図である。
【符号の説明】
A ボールペンチップ
10 ボール
20 チップホルダー部材
30 ダイヤモンド状炭素(DLC)膜
Claims (9)
- ボールと、該ボールを抱持してなるチップホルダー部材とを備えたボールペンチップにおいて、チップホルダー部材がダイヤモンド状炭素膜でコートされていることを特徴とするボールペンチップ。
- チップホルダー部材の少なくとも、ボールと接触するボール受け座表面がダイヤモンド状炭素膜でコートされている請求項1記載のボールペンチップ。
- チップホルダー部材の少なくとも、カシメ部表面と、ボールと接触するボール受け座表面とが共にダイヤモンド状炭素膜でコートされている請求項1記載のボールペンチップ。
- チップホルダー部材の少なくとも、インキ誘導孔表面と、ボールと接触するボール受け座表面とが共にダイヤモンド状炭素膜でコートされている請求項1記載のボールペンチップ。
- チップホルダー部材の少なくとも、カシメ部表面と、インキ誘導孔表面と、ボールと接触するボール受け座表面とが共にダイヤモンド状炭素膜でコートされている請求項1記載のボールペンチップ。
- 更に、ボール表面がダイヤモンド状炭素膜でコートされている請求項1〜5の何れか一つに記載のボールペンチップ。
- ダイヤモンド状炭素膜の厚さが1オングストローム〜5μmの範囲内である請求項1〜6の何れか一つに記載のボールペンチップ。
- 請求項1〜7の何れか一つに記載のボールペンチップと、インキ組成物を充填してなるインキ収容管と、ペン軸とを備え、上記インキ組成物には、少なくとも顔料が含まれていることを特徴とするボールペン。
- 顔料が、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化第一鉄、酸化第二鉄、チタンブラックである請求項9記載のボールペン。
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