JP5501641B2 - 油性ボールペン - Google Patents
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Description
前記構造のボールペンは、流量調節部材(ペン芯)を用いて密閉構造とする必要がないため、内圧の変化によるインキのボタ落ちを生じ難いという利点を有する反面、インキの調製及び充填に際し、特別な配慮が必要となる。前記構造のボールペンでは、インキ中に気体が混入していると、経時により気体が集まって気泡を発生し、筆記時のインキ出に悪影響を与えると共に、筆記先端部に気泡が存在すると筆記不能になる虞があるためである。
特に、インキ中の溶剤の蒸発防止や、筆記先端部上向き状態(正立状態)でのインキの逆流防止を目的として、インキ後端面にインキの消費に伴って追従するインキ逆流防止体(液栓)を充填した場合、インキが外部の空気と遮断された気密空間に存在することとなるため、前記気泡が発生した際に空気中に放出されないことから、気泡による悪影響を受け易い構成となる。
前述の問題を解決するために、機械的にインキ中の気体を取り除く脱泡処理が行われているが、この方法のみでは充分な脱泡ができ難く、インキ中に気体が残ることがある。また、顔料、金属粉、酸化チタン等の溶剤に不溶の着色剤を用いる場合、ビヒクルとの比重差が大きいものは、遠心脱泡等の処理を行うと前記着色剤がインキ収容管中に偏在するといった不具合を生じることがある。
従って、インキ中の気体を化学的に除去してインキ中の気泡発生を長期的に抑制する方法が考えられ、例えば、ヒドロキシルアミン又はその塩、ヒドロキシルアミン誘導体又はその塩を添加する試みがなされている(例えば特許文献1参照)。
更に、前記油性インキ組成物が剪断減粘性付与剤を含むこと、前記剪断減粘性付与剤が架橋型アクリル樹脂又は架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体のいずれかであることを要件とする。
更に、前記油性インキとインキ逆流防止体の比重差Xが、0≦X≦0.2の範囲にあることを要件とする。
更には、前記油性ボールペンを50℃、相対湿度20%の雰囲気下に60日間放置した後のインキ重量Yと、放置前のインキ重量Xが、Y/X≦0.960を満たすことを要件とする。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂等からなるものが適用でき、直径0.10mm〜2.0mmの範囲のものが用いられる。
尚、前記インキ収容管はそれ自体を把持用外装(軸筒)として使用する他、ボールペン用レフィルの形態として、該レフィルを別部材からなる軸筒内に収容するものでもよい。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記出没式ボールペンは外軸内に複数のボールペンレフィルを収容してなる複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
前記2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールは、インキ組成中0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%添加することができる。
0.01重量%未満では所期の気泡発生抑止効果を得ることは困難であり、5重量%以下で所望の効果は十分に得られるので、それ以上の添加は必要としない。
前記20℃における蒸気圧が0.5mmHg以上である溶剤としては、例えば、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールアルキル(C1〜4)エーテル、プロピレングリコールアルキル(C1〜4)エーテル、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、n−オクタン、イソオクタン、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、炭酸ジメチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を例示できる。
前記有機溶剤は一種又は二種以上を混合して用いてもよく、インキ組成中40〜80重量%の範囲で用いられる。
前記ソルベント染料の具体例としては、バリファストブラック3806(C.I.ソルベントブラック29)、同3807(C.I.ソルベントブラック29の染料のトリメチルベンジルアンモニウム塩)、スピリットブラックSB(C.I.ソルベントブラック5)、スピロンブラックGMH(C.I.ソルベントブラック43)、バリファストレッド1308(C.I.ベーシックレッド1の染料とC.I.アシッドイエロー23の染料の造塩体)、バリファストイエローAUM(C.I.ベーシックイエロー2の染料とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンイエローC2GH(C.I.ベーシックイエロー2の染料の有機酸塩)、スピロンバイオレットCRH(C.I.ソルベントバイオレット8−1)、バリファストバイオレット1701(C.I.ベーシックバイオレット1とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンレッドCGH(C.I.ベーシックレッド1の染料の有機酸塩)、スピロンピンクBH(C.I.ソルベントレッド82)、ニグロシンベースEX(C.I.ソルベントブラック7)、オイルブルー613(C.I.ソルベントブルー5)、ネオザポンブルー808(C.I.ソルベントブルー70)等が挙げられる。
前記着色剤は一種又は二種以上を混合して用いてもよく、インキ組成中3〜40重量%の範囲で用いられる。
具体的には、ケトン樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、アミド樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルピロリドン、α−及びβ−ピネン・フェノール重縮合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂等を例示できる。
更に、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル等の潤滑剤を必要により添加することもできるが、特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等を用いるとボール受け座の摩耗防止効果に優れる。
前記剪断減粘性付与剤を添加することによって、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
尚、剪断減粘性付与剤を添加する場合は、20℃でのE型粘度計による3.84S−1の剪断速度におけるインキ粘度が10mPa・s(20℃)以上、好適には10〜10000mPa・sであり、且つ、剪断減粘指数を0.3〜0.99の範囲に調整することが好ましく、前記した粘度範囲及び剪断減粘指数を示すことによって、更にインキ漏れだし、インキの逆流を防止することができる。
また、着色剤として顔料を用いた場合には、前記顔料の凝集・沈降を抑制することができる。
インキ粘度が10mPa・s未満では剪断減粘性による効果が適正ではなく、インキ吐出性及び筆跡性能に支障を来すこともある。
尚、剪断減粘指数(n)は、剪断応力値(T)及び剪断速度値(j)の如き粘度計による流動学測定から得られる実験式T=Kjn(Kは非ニュートン粘性係数)にあてはめることによって計算される値である。
特に、架橋型アクリル樹脂(エマルションタイプであってもよい)や架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体(共重合体であってもよい)は、前述の蒸気圧を有する有機溶剤中での増粘性が高く、筆跡滲みを抑制する効果が高いことから好適である。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなり、具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
前記不具合を解消するため、本願構成のボールペンにおいては、油性インキとインキ逆流防止体の比重差X(即ち、油性インキの比重−インキ逆流防止体の比重)が、0≦X≦0.2の範囲になるように調整される。
0.2を越えると倒立状態でインキ逆流防止体が移動して前述の不具合を生じてしまい、また、0未満の場合、倒立状態でインキによるインキ逆流防止体の汚れや、インキとインキ逆流防止体の界面が崩れるといった不具合を生じ易くなる。尚、比重差については同比重(0)であってもよいが、0.01〜0.2の範囲であることが好ましく、前記比重差の範疇であれば正倒立状態における初期、及び、経時後のいずれの状態であっても筆記性能を維持できる。
(1)オリエント化学工業(株)製、商品名:バリファストブラック3806
(2)オリエント化学工業(株)製、商品名:スピロンレッドCGH
(3)オリエント化学工業(株)製、商品名:オイルブルー613
(4)アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂
(5)ケトン樹脂
(6)ポリビニルピロリドン樹脂
(7)テルペンフェノール樹脂
(8)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフA207H
(9)N−ビニルアセトアミド重合体、日本純薬(株)製、商品名:レオジックGX205
(10)架橋型アクリル樹脂、クラリアントポリマー(株)製、商品名:ビスカレックスHV−30
前記配合量で各原料を混合し、ディスパーにて3時間撹拌することでボールペン用油性インキを得た。
基油としてポリブテン95部中に、増粘剤としてパルミチン酸デキストリン5部を添加して120℃で攪拌溶解した後、室温まで冷却し3本ロールにて混練することでインキ逆流防止体A(比重:0.895)を得た。
基油として精製鉱油20部及びエチレン−α−オレフィンコオリゴマー75部中に、増粘剤としてステアリン酸アルミニウム4部及び疎水性シリカ1部を添加して140℃で攪拌溶解した後、室温まで冷却し3本ロールにて混練することでインキ逆流防止体B(比重:0.850)を得た。
前記実施例及び比較例のインキを、直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、更に、インキの後端面に密着させてA、Bいずれかのインキ逆流防止体を充填して遠心処理を施した後、前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、ボールペンを得た。
前記試料ボールペンのインキ中に、マイクロシリンジを用いて10μLの空気を注入した後、20℃で5日間放置した際の気泡の有無を観察した。
試験B
前記試料ボールペンを40℃で60日間放置した後、インキ収容管内の気泡の発生の有無、及び、筆記試験(旧JIS P3201筆記用紙Aに手書き筆記)による筆跡の状態を目視により観察した。
試験C
前記試料ボールペンを50℃、相対湿度20%の雰囲気下に60日間放置した後のインキ重量Yを測定し、放置前のインキ重量Xからどれだけ減少したかを測定してY/Xの値を求めた。
前記各試験結果を以下に示す。また、各実施例及び比較例のボールペンに用いたインキ追従体の種類と、インキとの比重差についても記載する。
試験A
気泡の有無
○:気泡が消えている。
△:気泡が若干残っている。
×:気泡に変化が見られない、又は大きくなっている。
試験B
気泡の発生
○:インキ中に気泡が発生しない。
×:インキ中に気泡が発生する。
筆記試験
○:良好な筆跡が得られる。
△:書き出しに若干のかすれが生じる。
×:筆跡がかすれる、又は、筆跡を形成できない。
Claims (5)
- 着色剤と樹脂と有機溶剤と潤滑剤と2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを含有し、前記有機溶剤が20℃における蒸気圧が0.5mmHg以上である溶剤を50%以上含む油性インキ組成物を内蔵すると共に、前記インキの消費に伴って追従するインキ逆流防止体をインキ後端に密接配置してなる油性ボールペン。
- 前記油性インキ組成物が剪断減粘性付与剤を含む請求項1記載の油性ボールペン。
- 前記剪断減粘性付与剤が架橋型アクリル樹脂又は架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体のいずれかである請求項2記載の油性ボールペン。
- 前記油性インキとインキ逆流防止体の比重差Xが、0≦X≦0.2の範囲にある請求項1乃至3のいずれかに記載の油性ボールペン。
- 前記油性ボールペンを50℃、相対湿度20%の雰囲気下に60日間放置した後のインキ重量Yと、放置前のインキ重量Xが、Y/X≦0.960を満たす請求項1乃至4のいずれかに記載の油性ボールペン。
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