JP7198077B2 - 固形筆記体 - Google Patents

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Description

本発明は、固形筆記体に関するものである。さらに詳しくは、強度、発色性、筆記性能に優れた固形筆記体に関するものである。
従来から、ワックスなどを賦形材として用いた色鉛筆など固形筆記体が知られている(例えば特許文献1など)。これらの固形筆記体の強度や成形性、筆記性を向上するために、タルクなどの無機フィラーを配合し、その性能を向上することが知られている。
また、従来から、常温域など一定の温度域において、変色前後の状態を互変的に記憶保持できる可逆熱変色性組成物を用いた固形筆記体が提案されている(例えば特許文献2~4)。
前記固形筆記体は、賦形材であるワックス中に添加する着色剤として可逆熱変色性組成物単独又はそのマイクロカプセル封入物を用いることで、温度変化により変色する筆跡を形成するものである。特に、加熱消色タイプの可逆熱変色性組成物を封入するマイクロカプセル顔料を用いた場合、摩擦熱によって筆跡を容易に消去できるため、誤記などの修正などが可能な利便性の高い筆記体となり、例えば、ノートや手帳への筆記や、描画等に利用可能である。
前記固形筆記体では、用いる材料の影響で、従来の色材に一般顔料を用いた固形筆記体と比べて、強度が劣るため、その強度を上げることが求められているが、一般的には、強度を上げると筆記した際の筆跡の濃度が下がってしまう課題があった。
特にシャープペンシル用の芯体など細径の芯として用いる場合、非焼成の芯においては、十分な強度を得ることができないなどの課題があった。
特開2002-201399号公報 実開平7-6248号公報 特開2008-291048号公報 特開2009-166310号公報
本発明は、筆跡の発色性に優れ、強度、耐衝撃性などに優れ、特に外径が細い際にも筆記する際に折れることがなく、高い筆跡濃度が得られる固形筆記体を提供するものである。
本発明は、固形筆記体に酸変性ポリオレフィンワックスと該酸変性ポリオレフィンワックスの酸性基と架橋可能な官能基を有する樹脂(以下、単に架橋可能な樹脂と記す場合がある)との架橋物を含むことなどにより、前記課題が解決された。
すなわち、本発明は、
「1.着色剤と、低密度ポリエチレンと、酸変性ポリオレフィンワックスと前記酸変性ポリオレフィンワックスの酸性基と架橋可能な官能基を有する樹脂との架橋物と、を含んでなることを特徴とする固形筆記体。
2.前記着色剤が機能性材料を内包したマイクロカプセル顔料を含んでなることを特徴とする第1項に記載の固形筆記体。
3.前記機能性材料が、
(イ)電子供与性呈色性有機化合物からなる成分と、
(ロ)電子受容性化合物からなる成分と、
(ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体と、
を含んでなる可逆熱変色性組成物であることを特徴とする第1項または第2項に記載の固形筆記体。
4.前記酸変性ポリオレフィンワックスの酸性基と架橋可能な官能基を有する樹脂の官能基が、エポキシ基、イソシアネート、アミン、アルコール性水酸基から選択される1または2以上であることを特徴とする第1項~第3項のいずれか1項に記載の固形筆記体。
5.前記酸変性ポリオレフィンワックスの酸性基と架橋可能な官能基を有する樹脂が、エポキシ基を含有する樹脂であることを特徴とする第1項~第4項のいずれか1項に記載の固形筆記体。
6.前記酸変性ポリオレフィンワックスが、カルボン酸変性ポリオレフィンワックスであることを特徴とする第1項~第5項のいずれか1項に記載の固形筆記体。
7.第1項~第6項に記載の固形筆記体の外径が0.3~3.5mmであることを特徴とする固形筆記体。
8.第7項に記載の固形筆記体をチャックを介して保持することを特徴とする筆記具。」に関する。
本発明によれば、固形筆記体に低密度ポリエチレンを用いたことにより、固形筆記体中での着色剤の分散性が向上するとともに、固形筆記体の強度が向上する。さらに、酸変性ポリオレフィンワックスと該ポリオレフィンワックスと架橋可能な官能基を有する樹脂との架橋物を用いることにより、筆跡濃度を落とすことなく、強度が向上するなど、従来では相反する関係であった筆跡濃度と固形筆記体の強度を同時に向上することができるなど優れた効果を奏するものである。
本発明に用いられる加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
本発明の固形筆記体は、酸変性ポリオレフィンワックスと該酸変性ポリオレフィンワックスの酸性基と架橋可能な官能基を含む樹脂との架橋物を含む固形筆記体としたことが、ひとつの特徴である。
本発明に用いる酸変性ポリオレフィンワックスは、エポキシ基、イソシアネート、アミン、アルコール性水酸基から選択される官能基を有する樹脂と反応して、酸性基と官能基が架橋した樹脂を得ることができるものである。具体的には、カルボン酸変性ポリオレフィンワックスなどが挙げられ、より具体的には、マレイン酸変性ポリオレフィンワックス、フマル酸変性ポリオレフィンワックス、イタコン酸変性ポリオレフィンワックス、メサコン酸変性ポリオレフィンワックス、シトラコン酸変性ポリオレフィンワックス、アコニット酸変性ポリオレフィンワックス、クロトン酸変性ポリオレフィンワックス、アクリル酸変性ポリオレフィンワックス、メタクリル酸変性ポリオレフィンワックス、ケイヒ酸変性ポリオレフィンワックス、無水マレイン酸変性ポリオレフィンワックス、無水イタコン酸変性ポリオレフィンワックス、無水シトラコン酸変性ポリオレフィンワックス、無水コハク酸変性ポリオレフィンワックスなどが挙げられる。カルボン酸変性ポリオレフィンワックスとして、無水マレイン酸変性ポリオレフィンワックスを用いることがより好ましい。市販品としては、ユーメックスシリーズ、サンワックスEシリーズ、ビスコールシリーズ(以上商品名、三洋化成工業社製)、ハイワックスAシリーズ、アドマーシリーズ(以上商品名、三井化学社製)、ノーブレンシリーズ(商品名、住友化学社製)、リコワックスシリーズ(商品名、クラリアントケミカルズ社製)などが挙げられる。 本発明に用いる酸変性ポリオレフィンワックスの配合割合としては、固形筆記体全質量に対して、5~40質量%であることが好ましい。この範囲より小さいと、架橋可能な樹脂との架橋点が少なくなり、固形筆記体の強度の向上が見られにくい傾向となり、この範囲より大きいと十分な筆記濃度が得られにくくなる傾向が見られる。
本発明に用いる酸変性ポリオレフィンワックスと架橋可能な官能基を含む樹脂としては、エポキシ基、イソシアネート、アミン、アルコール性水酸基など、酸性基と反応することが可能な樹脂である。具体的には、エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有スチレンアクリル樹脂、ジグリシジルエーテル類、ポリイソシアネート類、ポリアミン類、ポリアミド樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体ポリマー、ポリビニルアルコール樹脂、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。より具体的には、アルフォンUG4000シリーズ、レゼダGPシリーズ(以上商品名、東亞合成社製)、マープルーフ(商品名、日油社製)、jER(商品名、三菱ケミカル社製)、エバール(商品名、クラレ社製)、ポバール(商品名、クラレ社製)、ハイビスワコー(商品名、富士フイルム和光純薬社製)、エスレック(商品名、積水化学工業社製)などが挙げられる。架橋可能な樹脂として、エポキシ基を含有する樹脂を用いることが好ましく、エポキシ基含有アクリル樹脂を用いることがより好ましい。
本発明に用いる架橋可能な樹脂の配合割合としては、固形筆記体全質量に対して、2~15質量%であることが好ましく、さらに3~10質量%であることがより好ましい。この範囲より小さいと、酸変性ポリオレフィンワックスとの架橋点が少なくなり、固形筆記体の強度の向上が見られにくい傾向となり、この範囲より大きいと十分な筆記濃度が得られにくくなる傾向が見られる。
酸変性ポリオレフィンワックスの酸性基を前記酸変性ポリオレフィンワックスと架橋可能な官能基と反応させ架橋することで、架橋点が出現することから賦形材としての強度が向上する。さらに、架橋したことによりワックスが適度に滑らなくなり、崩れて転写しやすくなるため、筆跡濃度を損なうことなく、強度が向上すると推察される。
両者を併用することで、濃度と強度の両方を相乗的に向上することができ、従来相反する関係にあった、強度と濃度の向上を同時に図ることができる。
酸変性ポリオレフィンワックスと前記酸変性ポリオレフィンワックスの酸性基と架橋可能な樹脂の配合比としては、質量基準で、10:1~1:10であることが好ましく、より好ましくは、5:1~1:5である。この範囲よりどちらが大きい比率となっても、強度が低下する傾向が見られる。
本発明において、低密度ポリエチレンを用いることにより、着色剤の分散性を向上することができ、外径を細くした際にも固形筆記体の成形性を向上することができる。さらに、着色剤などの分散性が向上することから、固形筆記体の強度も向上することができる。
低密度ポリエチレンを配合することにより、紙面へ食いつきやすくなり、転写量を多くすることができ、筆跡濃度が向上する。また、固形筆記体の靭性が増し、強度の向上に寄与していると推察される。
本発明に用いる低密度ポリエチレンとしては、その融点が、95℃~130℃程度のものを用いるのが好ましい。この範囲にあると、固形筆記体の組成物を加熱混練し、押し出しや射出成形などにより製造する際に、過度に熱を加えることなく、軟化させることができるとともに、熱可逆性変色組成物や可逆熱変色性マイクロカプセル顔料組成物の成分などが劣化することも防止できるため好ましい。
本発明に用いる低密度ポリエチレンの配合割合としては、固形筆記体全質量を基準として3~20質量%であることが好ましく、より好ましくは、5~15質量%である。この範囲にあると、固形筆記体の組成物を加熱混練する際に混練しやすく、押し出しや射出成形などにより製造する際においても固形筆記体の成形性を向上することができ、固形筆記体の強度も向上することができるので好ましい。
本発明による固形筆記体は、固形筆記体の性能を損なわない範囲で無機フィラーを併用しても良い。無機フィラーを併用することで、成形性や切削性、筆感が良化する効果が得られる。前記無機フィラーとしては、例えばタルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、窒化硼素、チタン酸カリウムなどが挙げられ、特に着色剤として可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を用いた際に、その変色性能への影響などや成形性の点からタルク、炭酸カルシウムが好ましい。フィラーを配合することによって、成形性や切削性を改善することが可能である。本発明による固形筆記体に用いるフィラーの配合割合としては、固形筆記体全質量に対し、5~55質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。この範囲より小さいと成形性が劣る傾向にあり、固形筆記体を切削などする際に引っかかったり、切削折れが生じることがある。この範囲より大きいと、筆跡の表面の滑性が高くなり、筆跡の上に筆記した際に、固形筆記体が滑ってしまい、重ね塗り性が劣る傾向がみられる。前記範囲にあると、成形性、切削性が改善され、重ね塗り性も良好となる事から好ましい。
[着色剤]
本発明に用いる着色剤としては、固形筆記体に用いられている顔料、染料を用いることができる。染料としては、水溶性、油溶性のどちらの染料も用いることができる。具体的には、水溶性染料としては、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、直接染料、分散染料、食用色素など各種染料が挙げられ、油溶性染料としては、フタロシアニン系染料、ピラゾロン系染料、ニグロシン系染料、アントラキノン系染料、アゾ系染料などが挙げられる。染料を用いる場合、筆跡の耐水性が向上することから、特に油溶性染料を用いることが好ましい。
本発明に用いることができる顔料としては、通常固形筆記体などに用いられる顔料を用いることができる。具体的には、有機顔料、プラスチック顔料、無機顔料の他、金属光沢を有する金属粉顔料、着色金属粉顔料、金属蒸着粉顔料、ガラスフレーク等や虹彩色のような色彩を有するパール顔料などの非変色性の顔料、液晶類、可逆熱変色性組成物、フォトクロミック材料などの機能性材料を内包したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。
有機顔料としては、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、パーマネントレッド、レーキレッド、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アニリンブラックなどが挙げられる。プラスチック顔料としては、ローペイクシリーズ(ローム・アンド・ハース社製)、エポカラーシリーズ((株)旭成化学製)、ルミコールシリーズ(日本蛍光化学(株)製)などが挙げられる。
無機顔料としては、カーボンブラック、群青、カオリン、ルチル型・アナターゼ型等の各種酸化チタンなどが挙げられる。金属粉顔料としては、アルミニウム粉、真鍮粉、ステンレス鋼粉、ブロンズ粉などの金属光沢を有する金属粉顔料をそのまま用いても良く、それらの金属粉顔料に着色剤を吸着した金属顔料などでも良い。
ガラスフレーク顔料としては、ガラスフレークに無電解めっき法により金属を被覆したメタシャインシリーズR(日本板硝子(株)製)などが挙げられる。
パール顔料としては、イリオジンシリーズ(メルクジャパン(株)製)などが挙げられる。
さらに本発明による顔料としては、機能性材料を内包したマイクロカプセル顔料を用いることができるが、様々な機能を付加した筆跡が得られる為に好ましい。機能性材料としては、コレステリック液晶、ネマチック液晶などの液晶類、可逆熱変色性組成物、フォトクロミック材料などが挙げられる。
前記液晶としては、ヘリコーンHC SLM90020、同90120,同90220,同90320(以上、ワッカーケミー社製)などが挙げられる。
本発明に用いることができる可逆熱変色性マイクロカプセル顔料について以下に説明する。前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料としては、特公昭51-44706号公報、特公昭51-44707号公報、特公平1-29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1~7℃)を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を適用できる(図1参照)。
また、特公平4-17154号公報、特開平7-179777号公報、特開平7-33997号公報、特開平8-39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8~50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(T)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(T)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔T~Tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料も適用できる(図1参照)。
以下に前記可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を図1のグラフによって説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全に消色した状態に達する温度T(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色し始める温度T(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色し始める温度T(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全に発色した状態に達する温度T(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。
ここで、TとTの差、或いは、TとTの差(ΔT)が変色の鋭敏性を示す尺度である。
更に、可逆熱変色性組成物の発消色状態のうち常温域では特定の一方の状態(発色状態)のみ存在させると共に、前記可逆熱変色性組成物による印像を摩擦により生じる摩擦熱により簡易に変色(消色)させるためには、完全消色温度(T)が50~95℃であると好ましく、且つ、発色開始温度(T)が-50~10℃であると好ましい。
ここで、発色状態が常温域で保持でき、且つ、筆跡の摩擦による変色性を容易とするために何故完全消色温度(T)が50~95℃、且つ、発色開始温度(T)が-50~10℃であるかを説明すると、発色状態から消色開始温度(T)を経て完全消色温度(T)に達しない状態で加温を止めると、再び発色状態に復する現象を生じること、及び、消色状態から発色開始温度(T)を経て完全発色温度(T)に達しない状態で冷却を中止しても発色を生じた状態が維持されることから、完全消色温度(T)が常温域を越える50℃以上であれば、発色状態は通常の使用状態において維持されることになり、発色開始温度(T)が常温域を下回る-50~10℃の温度であれば消色状態は通常の使用において維持される。
更に、摩擦により筆跡を消去する場合、完全消色温度(T)が95℃以下であれば、筆記面に形成された筆跡上を摩擦部材による数回の摩擦による摩擦熱で十分に変色できる。
完全消色温度(T)が95℃を越える温度の場合、摩擦部材による摩擦で得られる摩擦熱が完全消色温度に達し難くなるため、容易に変色し難くなり、摩擦回数が増加したり、或いは、荷重をかけ過ぎて摩擦する傾向にあるため、筆記面が紙の場合は紙面を傷めてしまう虞がある。
よって、前記温度設定は筆記面に変色状態の筆跡を選択して択一的に視認させるためには重要な要件であり、利便性と実用性を満足させることができる。
前述の完全消色温度(T)の温度設定において、発色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより高い温度であることが好ましく、しかも、摩擦による摩擦熱が完全消色温度(T)を越えるようにするためには低い温度であることが好ましい。よって、完全消色温度(T)は、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~80℃である。更に、前述の発色開始温度(T)の温度設定において、消色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより低い温度であることが好ましく、-50~5℃が好適であり、-50~0℃がより好適である。本発明においてヒステリシス幅(ΔH)は50℃~100℃の範囲であり、好ましくは55~90℃、更に好ましくは60~80℃である。
本発明による固形筆記体に用いる可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、前記変色温度域よりも高温側に完全消色温度(T)を有する可逆熱変色性組成物を用いることもできる。
前記可逆熱変色性組成物の発消色状態のうち常温域では特定の一方の状態(発色状態)のみ存在させると共に、前記可逆熱変色性組成物による印像を加熱消去具等から得られる熱により消色させるためには、完全消色温度(T)が80℃以上とし、且つ、発色開始温度(T)が15℃以下である。ここで、発色状態が常温域で保持でき、且つ、消色状態は通常の使用において維持されるために何故完全消色温度(T)が80℃以上、且つ、発色開始温度(T)が15℃以下であるかを説明すると、発色状態から消色開始温度(T)を経て完全消色温度(T)に達しない状態で加温を止めると、再び発色状態に復する現象を生じること、及び、消色状態から発色開始温度(T)を経て完全発色温度(T)に達しない状態で冷却を中止しても発色を生じた状態が維持されることから、完全消色温度(T)が常温域を越える80℃以上であれば、発色状態が夏場の車内等の高温環境下で維持され、発色開始温度(T)が常温域を下回る15℃以下の温度であれば消色状態は通常の使用において維持される。更に、完全消色温度(T)が90℃以上であれば、発色状態は高温環境下でより維持され、発色開始温度(T)が10℃以下であれば、消色状態が通常の使用状態でより維持される。よって、前記温度設定は押印面に変色状態の印像を選択して択一的に視認させるための重要な要件であり、印像は所期の目的を達成することができる。前述の完全消色温度(T)の温度設定において、発色状態が高温環境下で維持されるためにはより高い温度であることが好ましく、完全消色温度(T)は、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上である。更に、前述の発色開始温度(T)の温度設定において、消色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより低い温度であることが好ましく、-50~10℃が好適であり、-50~5℃がより好適である。なお、可逆熱変色性組成物を予め発色状態にするためには冷却手段としては汎用の冷凍庫にて冷却することが好ましいが、冷凍庫の冷却能力を考慮すると、-50℃迄が限度であり、従って、完全発色温度(T)は-50℃以上であると好ましい。本発明においてヒステリシス幅(ΔH)は70℃~150℃の範囲である。
前記可逆熱変色性組成物を用いることで、筆跡が夏場の車内などの高温環境下で放置しても消色することがなく、固形筆記体としての適用範囲を広げることができる。さらに、摩擦部材による擦過により、消去しにくくなることから、書類の真贋を判別することに用いることができる。
以下に可逆熱変色性組成物を構成する(イ)、(ロ)、(ハ)成分について説明する。
本発明において(イ)成分は、顕色剤である成分(ロ)に電子を供与し、成分(イ)が有するラクトン環などの環状構造が開環し、成分(ロ)と共鳴構造をとることにより発色する電子供与性呈色性有機化合物からなるものである。このような電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類、ピリジン類、キナゾリン類、ビスキナゾリン類などを挙げることができる。
成分(ロ)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール-アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度-温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物が用いられる。このような化合物としては、種々のものが提案されており、それらから任意に選択して用いることができるが、具体的には下記のようなものが挙げられる。
前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
Figure 0007198077000001
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、q1は0~2の整数を示し、Xのいずれか一方は-(CH2)kOCOR’又は-(CH2)kCOOR’、他方は水素原子を示し、kは0~2の整数を示し、R’は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Yはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、又はハロゲンを示し、p1はそれぞれ独立に1~3の整数を示す。)
前記(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、さらにRが水素原子であり、且つ、aが0の場合がより好適である。
なお、(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(1a)で示される化合物が用いられる。
Figure 0007198077000002
(式中のRは、炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基、好ましくは炭素数10~24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12~22のアルキル基である。)
さらに、前記(ハ)成分として、下記一般式(2)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 0007198077000003
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、p2はそれぞれ独立に1~3の整数を示し、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はハロゲンを示す。)
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 0007198077000004
(式中、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、又はハロゲン原子のいずれかを示し、p3はそれぞれ独立に1~3の整数を示し、q3は1~20の整数を示す。)
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 0007198077000005
(式中、Rは炭素数1~21のアルキル基又はアルケニル基を示し、p4はそれぞれ独立に1~3の整数を示す。)
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 0007198077000006
(式中、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はハロゲン原子のいずれかを示し、p5はそれぞれ独立に1~3の整数を示し、q5は1~20の整数を示す。)
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 0007198077000007
(式中、Rは炭素数4~22のアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基、炭素数4~22のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、q6は0又は1を示す。)
前記化合物としては、4-フェニル安息香酸デシル、4-フェニル安息香酸ラウリル、4-フェニル安息香酸ミリスチル、4-フェニル安息香酸シクロヘキシルエチル、4-ビフェニル酢酸オクチル、4-ビフェニル酢酸ノニル、4-ビフェニル酢酸デシル、4-ビフェニル酢酸ラウリル、4-ビフェニル酢酸ミリスチル、4-ビフェニル酢酸トリデシル、4-ビフェニル酢酸ペンタデシル、4-ビフェニル酢酸セチル、4-ビフェニル酢酸シクロペンチル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル、4-ビフェニル酢酸ヘキシル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチルなどを例示できる。
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(7)で示される化合物を用いることもできる。
Figure 0007198077000008
(式中、Rは炭素数3~7のアルキル基を示し、Xは水素原子、メチル基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、メチル基のいずれかを示し、Zは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。)
前記化合物としては、4-ブトキシ安息香酸フェニルエチル、4-ブトキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ペンチルオキシ安息香酸フェノキシエチルなどを例示できる。
さらに、電子受容性化合物として炭素数3~18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を用いたり(特開平11-129623号公報、特開平11-5973号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステルを用いたり(特開2001-105732号公報)、没食子酸エステル等を用いた(特公昭51-44706号公報、特開2003-253149号公報)加熱発色型(加熱により発色し、冷却により消色する)の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を適用することもできる。
前記(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分の構成成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1~50、好ましくは0.5~20、(ハ)成分1~800、好ましくは5~200の範囲である(前記割合はいずれも質量基準である)。また、各成分は各々2種以上を混合して用いてもよい。
前記可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として使用される。これは、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル化する方法としては、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与することや、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
ここで、可逆熱変色性組成物とマイクロカプセル壁膜の質量比は7:1~1:1、好ましくは6:1~1:1の範囲を満たす。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料には、その機能に影響を及ぼさない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤、防腐・防黴剤、非熱変色性染料や顔料等の各種添加剤を添加することができる。
[賦形材]
本発明による固形筆記体には、前記酸変性ポリオレフィンワックスと酸変性ポリオレフィンワックスと架橋可能な官能基を有する樹脂との架橋物、低密度ポリエチレンと異なる賦形材(以下その他の賦形材と言うことがある)を用いることができる。前記その他の賦形材としては、例えばワックス、ゲル化剤、粘土などを用いることが出来る。ワックスとしては、従来公知のものであればいずれを用いてもよく、具体的にはカルナバワックス、木ろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、スチレン変性ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、および側鎖結晶性ポリオレフィンなどが挙げられる。ゲル化剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば12ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸アマイドなどが挙げられる。粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイトなどが挙げられる。これらのその他の賦形材は2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
また、前記その他の賦形材として側鎖結晶性ポリオレフィンを用いることが好ましい。ここで側鎖結晶性ポリオレフィンとは、直線状の主鎖に対して、比較的長い側鎖が結合した構造を有している。通常の直鎖状ポリオレフィンは、直鎖状である主鎖が折りたたまれて結晶化するために、融解が広い温度範囲で起こる傾向がある。これに対して側鎖結晶性ポリオレフィンとは、結晶化が主としてポリオレフィン主鎖ではなく側鎖で起こり、その結果、融点が低く、また融解が狭い温度範囲で起こるという特徴を有している。このような側鎖結晶性ポリオレフィンは、側鎖に例えば、C12~C28の長鎖アルキル基を有しているものが好ましい。また、側鎖の長鎖アルキル基は、直鎖型であっても分岐型でも特に限定されないが、結晶性の観点から直鎖型がより好ましい。なお、この側鎖であるアルキル基は置換基を有してもよいが、それによって結晶性が下がる傾向がある。したがって、結晶性を調整するために、側鎖結晶性ポリオレフィンの側鎖を、例えばスチレンなどによって変性することもできる。また、長鎖アルキル基は、水素結合を形成する官能基を持っていると、水素結合によって長鎖アルキル基同士が結合して凝集し、結晶性が向上するため好ましい。
また、側鎖結晶性ポリオレフィンには、高度な分岐構造を有するポリオレフィン(以下、簡単のために高分岐ポリオレフィンという)が包含されるが、これをその他の賦形材として用いることができる。すなわち高分岐ポリオレフィンも、結晶化の際に主鎖が折りたたまれることが少ないため、融点が低く、また融解が狭い温度範囲で起こる。
なお、固形筆記体の機械的強度や変色特性、製造時の取り扱い性の観点から、その他の賦形材の重量平均分子量Mwが2,000~50,000であるものが好ましく、10,000~30,000であるものがより好ましい。また、その他の賦形材の数平均分子量Mnが1,000~10,000であるものが好ましい。ここで、重量平均分子量、および数平均分子量はポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたものである。
このような側鎖結晶性ポリオレフィンとしては、HSクリスタ4100(Mw:16,000、m.p.:44.4℃)、HSクリスタ6100(Mw:28,000、m.p.:60.6℃)(いずれも商品名、豊国製油株式会社製)などが挙げられ、高分岐ポリオレフィンとしては、VYBAR103(Mw:17,348、Mn:4,400、m.p.:67.7℃)、VYBAR260(Mw:20,278、Mn:2,600、m.p.:54.7℃)、VYBAR343(Mw:10,164、m.p.:36.0℃)、VYBAR825(Mn:2,800)(いずれも商品名、ベイカーヒューズ社製)などが挙げられる。
[その他の成分]
本発明による固形筆記体は、必要に応じて、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、樹脂、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、紫外線防止剤、光安定剤、香料などが挙げられる。前記樹脂としては、固形筆記体の強度などを向上する目的で配合されるが、天然樹脂、合成樹脂を用いることができる。具体的には、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ピロリドン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アミド系樹脂、塩基性基含有樹脂などが挙げられる。
また、本発明による組成物には、ヒンダードアミン化合物を添加することができる。ヒンダードアミン化合物を添加することにより、筆跡を消去した箇所の残像がいっそう視認され難くなるという特徴がある。このため被筆記面の見栄えを損なうことなく、しかも、再筆記性を満足させることができ、商品性を高めることができるので好ましい。
前記ヒンダードアミン化合物の分子量が1,000以下であることにより他の成分との相溶性に富み、ブリードアウトし難くなるため、経時後も明瞭な筆跡を形成することができるので好ましい。
なお、前記ヒンダードアミン化合物の融点は120℃以下であることが好ましい。融点が低いことにより、製造時に過度の熱を加えることなく熱可逆性変色組成物や、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、それを用いた固形筆記体を製造することができるため、組成物の成分などが劣化することを防止できる。
本発明の固形筆記体は、有色から別の有色への変化を実現するために、染料や顔料などの非熱変色性の着色剤を含むこともできる。
なお、本発明による固形筆記体は、単独で筆記体として使用が可能であるが、この筆記体の外側を樹脂などを含む外殻で被覆することもできる。このような外殻は、内部にある固形筆記体が物理的接触によって損傷を受けることを防ぐほか、固形筆記体全体の機械的強度の向上に寄与することもできる。このような外殻は、一般にフィラーや賦形材を含んでなる。このような外殻は筆跡形成に寄与する着色剤を含んでいても含んでいなくてもよい。
本発明による固形筆記体は、その外径が0.3~3.5mmであることが好ましい。外径が前記範囲であると、シャープペンシルに代表される、チャックで芯体を保持し、芯体を繰り出す方式の筆記具に用いることができ、芯体のみを繰り返し用いるため、また、芯体をごく一部の残芯まで使用することができ、環境に配慮することができるため好ましい。そして、従来のシャープペンシルと比較し、消しゴムによる消しカスが出ないことは利便性の面で優れている。外径について、より好ましくは、0.5~2.0mmの外径である。細い外径の芯体に用いた際に、架橋による強度向上と筆記濃度を向上した効果が特に得られるためである。
本発明の固形筆記体は、各種被筆記面に対して、筆記することが可能である。さらに、その筆跡は、指による擦過や加熱具又は冷熱具の適用により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、簡便に変色可能な手段として摩擦部材が用いられることが好ましい。
前記摩擦部材は、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー等の弾性体が好ましく用いられる。前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂などを用いることができる。前記摩擦部材は固形筆記体と別体の任意形状の部材である摩擦部材とを組み合わせて固形筆記体セットを得ることもできるが、固形筆記体または、固形筆記体を外装収容物に収容した固形筆記具の外装に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れたものとなる。
本発明による固形筆記体は、所謂鉛筆形状の木軸の外装を組み合わせて用いることができるが、固形筆記体の強度と筆記時の筆跡の濃度の両方を向上することができることから、所謂シャープペンシルなどの細い芯径の固形筆記体を用いる筆記具に用いることが好ましい。また、本発明による固形筆記体は、シャープペンシルに代表される、チャックで芯体を保持し、芯体を繰り出す方式の筆記具に用いることができる。
本発明による固形筆記体の製造方法としては、従来知られている、組成物を加熱混練した後、押し出しや、射出成形などにより製造することができる。また、組成物を加熱混練する際に、酸変性ポリオレフィンワックスと架橋可能な樹脂を架橋して、架橋物を得ることができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
(マイクロカプセル顔料Aの製造)
(イ)成分として3-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド2.0質量部、(ロ)成分として2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン8.0質量部、(ハ)成分としてカプリン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル50.0質量部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー25.0質量部、助溶剤50.0質量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。 前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料Aの粒子径はMultisizer 4e(ベックマン・コールター株式会社製)を用いて測定したところ、0.5~5.0μmの範囲であり、完全消色温度は60℃、完全発色温度は-10℃であり、温度変化により青色から無色、無色から青色へ可逆的に色変化する。
(マイクロカプセル顔料Bの製造)
(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分を下記の通りとした以外は、マイクロカプセル顔料Aと同じ方法でマイクロカプセル顔料Bを得た。
(イ)成分として2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン4.5質量部、
(ロ)成分として2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0質量部、4,4′-(1-メチルペンチリデン)ビスフェノール3.0質量部、
(ハ)成分としてカプリン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル50.0質量部
なお、前記マイクロカプセル顔料Bの粒子径はMultisizer 4e(ベックマン・コールター株式会社製)を用いて測定したところ、0.5~5.0μmの範囲であり、完全消色温度は60℃、完全発色温度は-10℃であり、温度変化により黒色から無色、無色から黒色へ可逆的に色変化する。
(実施例1)
(固形筆記体の製造)
マイクロカプセル顔料(着色剤) 25質量部
酸変性ポリオレフィンワックス 12質量部
(無水マレイン酸変性ポリオレフィンワックス)
エポキシ基含有アクリル樹脂 3質量部
(架橋可能な樹脂 )
タルク(無機フィラー) 44質量部
側鎖結晶性ポリオレフィン 6質量部
(その他の賦形材)
低密度ポリエチレン 9質量部
ヒンダードアミン(光安定剤) 1質量部
上記配合物をニーダーにて加熱混練し、得られた混練物をプレスにて圧縮成形を行い、外径φ0.9mm、長さ60mmに成形して固形筆記体を得た。加熱混練することで、酸変性ポリオレフィンワックスとエポキシ基含有アクリル樹脂が架橋し、両者の架橋物を含んだ固形筆記体が得られた。
(実施例2~5、比較例1~5)
(固形筆記体の製造)
(表1)に示した配合とした以外は実施例1と同じ方法により、固形筆記体を作製した。さらに、実施例1~5、比較例1~4の配合にて、外径φ1.3mm、長さ60mm固形筆記体についても作製をした。比較例5については、着色剤の分散性が悪いため成形できず、固形筆記体が得られなかった。
Figure 0007198077000009
実施例1~5、比較例1~4で得た混練物について、下記要領にて評価を行った。結果を(表1)に示す。
着色剤の分散性:混練物中の着色剤の分散性について、目視により評価した。
○: 着色剤が均一に分散する。
△:一部着色剤の凝集がある。
×: 着色剤の分散が不均一である。
強度:実施例1~5、比較例1~4の固形筆記体をJIS-S6005:2007に準じて曲げ強度を測定した。数値が大きいほど、強度が高いことを示す。
発色性:外径φ1.3mmの固形筆記体を用いて300g荷重(JIS S6005:2007準拠)で中性紙に筆記し、その筆跡濃度を目視により評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:筆跡を視認することができ、その濃度は十分高い。
△:筆跡を視認することはできるが、その濃度は十分でない。
×:筆跡を視認することができない。
××:筆記する際に固形筆記体が折れてしまい筆記できない。
実施例1~5の固形筆記体は、比較例1~4の固形筆記体と比較して、高い荷重にて筆記が可能であり、強度、発色性、耐衝撃性が良好であり、固形筆記体として優れていた。上記の通り、本発明の固形筆記体は、比較例1~4の固形筆記体と比較して、優れたもので有ることが明らかとなった。
本発明の固形筆記体は、マーキングペン、鉛筆、色鉛筆、シャープペンシルなど各種筆記具の他、塗り絵や描画等の描画材、温度インジケーターなどの示温材料などに利用可能である。

Claims (7)

  1. 着色剤と、低密度ポリエチレンと、酸変性ポリオレフィンワックスと前記酸変性ポリオレフィンワックスの酸性基と架橋可能な官能基を有する樹脂との架橋物と、を含んでなり、前記酸変性ポリオレフィンワックスの酸性基と架橋可能な官能基を有する樹脂の官能基が、エポキシ基、イソシアネート、アミン、アルコール性水酸基から選択される1または2以上であることを特徴とする固形筆記体。
  2. 着色剤と、低密度ポリエチレンと、酸変性ポリオレフィンワックスと前記酸変性ポリオレフィンワックスの酸性基と架橋可能な官能基を有する樹脂との架橋物と、を含んでなり、前記酸変性ポリオレフィンワックスの酸性基と架橋可能な官能基を有する樹脂が、エポキシ基を含有する樹脂であることを特徴とする、固形筆記体
  3. 前記着色剤が機能性材料を内包したマイクロカプセル顔料を含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の固形筆記体。
  4. 前記機能性材料が、
    (イ)電子供与性呈色性有機化合物からなる成分と、
    (ロ)電子受容性化合物からなる成分と、
    (ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体と、を含んでなる可逆熱変色性組成物であることを特徴とする請求項に記載の固形筆記体。
  5. 前記酸変性ポリオレフィンワックスが、カルボン酸変性ポリオレフィンワックスであることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の固形筆記体。
  6. 請求項1~に記載の固形筆記体の外径が0.3~3.5mmであることを特徴とする固形筆記体。
  7. 請求項に記載の固形筆記体をチャックを介して保持することを特徴とする筆記具。
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