JP6455835B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナーに関する。
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、印刷市場への適用も始まっている。印刷市場では、幅広いメディア(紙種)に対応しながら、高速、高画質、高い生産性が要求されるようになってきている。例えば、厚紙から薄紙へ紙種が変更されても、紙種にあわせたプロセススピードの変更や定着器加熱設定温度の変更を行わずに印刷を続ける、メディア等速性が求められている。
メディア等速性の観点から、トナーには、低温から高温まで幅広い定着温度範囲で適正に定着を完了することが求められている。
幅広い定着可能温度で定着するために、シャープメルト性を有する結晶性樹脂をトナーへ添加し、低温定着性能を向上させたトナーが種々提案されている。その中で、非線状結晶性ポリエステルとポリオレフィン樹脂にビニル樹脂がグラフトした樹脂分散剤をハイブリッド樹脂へ添加したトナーが提案されている(特許文献1参照)。しかし、印刷市場に対応したような高速機においては、依然として、低温定着性が不足していた。また、トナー形状を制御したものではないことから、転写効率が不足することがあった。
また、高画質化を達成するために、静電潜像担持体から中間転写体への転写効率、及び、中間転写体から紙への転写効率を高めることが必要となる。トナーを熱処理することによって形状を制御し、トナーの付着力を下げ、転写効率を向上させる提案がなされている(特許文献2参照)。
しかし、熱処理されたトナーは、トナーの形状が制御される一方で、付着性の高いワックスがトナー表面近傍に溶出してくることが知られている。このため、トナー表面近傍に溶出したワックスによる影響で、転写効率が悪化する。その結果、エンボス紙やラフ紙などの表面平滑度の低い紙を用いた場合、十分な転写圧がかからない部分について、中間転写体上からトナーが転写されない、白斑点と呼ばれる画質欠陥が生じる場合がある。
以上のように、より低温での定着を可能にし、長期間の画像出力においても高転写性を維持するためには、依然として検討の余地がある。
特開2007−293327号公報 特開2011−123352号公報
本発明では、より低温での定着を可能にし、長期間の画像出力においても、高転写性を維持できるトナーを提供する。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、より低温での定着を可能にし、長期間の画像出力においても、高転写性を維持するために、次のことを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は、結晶性ポリエステル樹脂A、樹脂組成物B、樹脂組成物C、及び炭化水素ワックスを含有する混合物を溶融混練する工程、
溶融混練後に冷却する工程
冷却後に得られた混練物を粉砕する工程および
得られた粉砕物を熱処理する工程、
を経てトナー粒子を製造するトナーの製造方法であって、
(1)該樹脂組成物Bは、ポリエステル樹脂成分とビニル樹脂成分とが化学的に結合したハイブリッド樹脂であり、
(2)該樹脂組成物Cは、炭化水素化合物とビニル樹脂成分と反応した重合体であり、(3)示差走査熱量計(DSC)により測定される、該結晶性ポリエステル樹脂Aの融点をT1(℃)、該炭化水素ワックスの融点をT2(℃)、該樹脂組成物Cのガラス転移温度をT3(℃)としたとき、下記の関係を満たすことを特徴とするトナーの製造方法に関する。
|T3−T1|≦15 (式1)
|T2−T1|≦15 (式2)
60℃≦T1≦85℃ (式3)
本発明によれば、より低温での定着を可能にし、長期間の画像出力においても、高転写性を維持できるトナーを提供することができる。
本発明に用いられる熱処理装置の図
本発明のトナーは、結晶性ポリエステル樹脂A、樹脂組成物B、樹脂組成物C、及び炭化水素ワックスを含有する混合物を溶融混練後に冷却し、得られた混練物を粉砕し、得られた粉砕物を熱処理することにより得られるトナー粒子を有するトナーであって、
(1)該樹脂組成物Bは、ポリエステル樹脂成分とビニル樹脂成分とが化学的に結合することにより得られるハイブリッド樹脂であり、
(2)該樹脂組成物Cは、炭化水素化合物とビニル樹脂成分とを反応させて得られる重合体であり、
(3)示差走査熱量計(DSC)により測定される、該結晶性ポリエステル樹脂Aの融点をT1(℃)、該炭化水素ワックスの融点をT2(℃)、該樹脂組成物Cのガラス転移温度をT3(℃)としたとき、下記の関係を満たす。
|T3−T1|≦15 (式1)
|T2−T1|≦15 (式2)
60℃≦T1≦85℃ (式3)
本発明のトナーは、上記(式1)〜(式3)の関係を満足する、結晶性ポリエステル樹脂A、樹脂組成物C及び炭化水素ワックスと、主な結着樹脂としての樹脂組成物Bとを含有する混合物を、粉砕法により製造し、得られた粉砕物を熱処理したトナー粒子を含有する。
該トナーを用いることで、より低温での定着が可能となる。また、トナー表面へのワックス溶出が抑制されることにより、長期間の画像出力においても、高転写性が維持される。
本発明において、樹脂組成物Bに結晶性ポリエステル樹脂Aを添加することで、より低い温度での定着が可能となる。その理由は以下のように推察する。
樹脂組成物Bは、ポリエステル樹脂成分とビニル樹脂成分とが化学的に結合することにより得られるハイブリッド樹脂である。
該樹脂組成物Bのビニル樹脂成分が結晶性ポリエステル樹脂Aの分散助剤として働くことで、溶融混練後の冷却工程で、結晶性ポリエステル樹脂Aの結晶をトナー中に微分散させることができる。その結果、トナー粒子間の溶融特性のバラツキが少なくなり、定着時に加わる温度に対する応答速度が高く、応答速度のバラツキの少なくなり、上記効果を奏すると思われる。
例えば、通常のポリエステル樹脂に結晶性ポリエステル樹脂Aを添加した場合などは、ビニル樹脂成分の結晶性ポリエステル樹脂Aに対する分散効果が得られない。したがって
、結晶性ポリエステル樹脂Aの分散径が相対的に大きくなり、上記効果が得られない。また、結晶性ポリエステル樹脂Aの分散径が大きくなることで、粉砕界面における結晶性ポリエステル樹脂Aの露出面積が大きくなりやすく、高湿環境下に放置されると、帯電量が大きく低下し、カブリなどと画像弊害を引き起こすことがある。
一方、上述のように長期間の画像出力においても、高転写性が維持されるのは、トナー表面近傍への炭化水素ワックスの溶出が効果的に抑制されたことに起因すると推察する。
炭化水素ワックスが単独で分散している通常のトナーにおいては、熱処理によってワックスがトナー表面近傍へと溶出する。その結果、トナーの付着性が高まり、転写効率は低下する。
一方、本発明のトナーは、炭化水素ワックスがトナー内部に保持され、熱処理を行っても、ワックスがトナー表面へ溶出しない。その結果、長期間の画像出力においても、高転写性が維持される。
該効果は、本発明のトナーの構成材料の特定の組合せに起因すると推察する。
まず、本発明において、樹脂組成物Bのビニル樹脂成分と結晶性ポリエステル樹脂Aは極性が近いので、溶融混練後の冷却過程で、ビニル樹脂成分と結晶性ポリエステル樹脂Aは近接した状態でトナー中に固定化されると考えられる。
また、樹脂組成物Cも、炭化水素化合物とビニル樹脂成分とを反応させて得られる重合体であり、樹脂組成物Bと同様に、樹脂組成物Cのビニル樹脂成分と結晶性ポリエステル樹脂Aも近接した位置で固定化されると考えられる。
樹脂組成物B及びC、並びに結晶性ポリエステル樹脂Aを溶融混練後に冷却する本発明のトナーにおいては、樹脂組成物B及びCのビニル樹脂成分が結晶性ポリエステル樹脂Aを挟んで固定化されると考えられる。
さらに、樹脂組成物Cは炭化水素化合物とビニル樹脂成分とを反応させて得られる重合体であり、炭化水素化合物と炭化水素ワックスは、極性的、及び構造的になじみやすく、樹脂組成物Cはワックス分散剤としても機能している。したがって、樹脂組成物Cの炭化水素化合物近傍には、微分散した炭化水素ワックスが存在していると考えられる。
以上のように、結着樹脂となる樹脂組成物Bのビニル樹脂成分と結晶性ポリエステル樹脂Aとが近接する。そして、微分散した結晶性ポリエステル樹脂Aを介して樹脂組成物Cのビニル樹脂成分が近接する。さらに、樹脂組成物Cの炭化水素化合物を介して微分散した炭化水素ワックスがそれぞれ近接し、それぞれの成分が連なった位置に存在していると考えられる。
つまり、本発明のトナーは、樹脂組成物Bのビニル樹脂成分から結晶性ポリエステル樹脂A、さらに樹脂組成物Cから微分散した炭化水素ワックスへと連続した成分配置となる。
言い換えれば、本発明のトナーは、樹脂組成物B−結晶性ポリエステル樹脂A−樹脂組成物C−炭化水素ワックスが複合化された状態で、トナー中に固定化されていると考えられる。
この複合化された状態をとることで、炭化水素ワックスがトナー中に微分散されたままトナー内部に保持され、熱処理を行ってもトナー表面近傍へと溶出せず、転写性の低下を防止すると考えている。
本発明のトナーにおいて、樹脂組成物B−結晶性ポリエステル樹脂A−樹脂組成物C−炭化水素ワックスが複合化された状態で、トナー中に固定化されるためには、各成分が上記特定の関係(式1)〜(式3)を満たす必要がある。
各成分が上記特定の関係を満たすことで、結晶性ポリエステル樹脂A、樹脂組成物B、樹脂組成物C、及び炭化水素ワックスを含有する混合物を溶融混練した後の冷却工程で、これら各成分が同時期に固化する。その結果、各成分が複合化された状態で、トナー中に固定化されるものと推察している。
各成分が同時期に固化するためには、樹脂組成物Cのガラス転移温度[T3(℃)]と
結晶性ポリエステル樹脂Aの融点[T1(℃)]の差の絶対値が、15℃以下、つまり(式1)を満たすことが重要である。
T3とT1の差の絶対値が15℃以下の場合、結晶性ポリエステル樹脂Aと樹脂組成物Cが同時期に固化することができる。その結果、樹脂組成物Cが結晶性ポリエステル樹脂Aを介した複合化状態を形成し、樹脂組成物Cが保持される。その結果、熱処理を行っても、ワックス分散剤である樹脂組成物Cとともに炭化水素ワックスがトナー表面近傍への溶出を抑制することができる。
T3とT1の差の絶対値が15℃を超える場合、結晶性ポリエステル樹脂Aと樹脂組成物Cの固化するタイミングがあわず、樹脂組成物Cが結晶性ポリエステル樹脂Aを介した複合化状態を取りにくい。その結果、炭化水素ワックスへの保持効果が発現せず、熱処理することによって、樹脂組成物Cとともに炭化水素ワックスがトナー表面近傍へと溶出するものと考えられる。その結果、転写効率が低下する。
該T3とT1の差の絶対値は、0以上12以下であることが好ましく、0以上10以下であることがより好ましい。
また、同様に、結晶性ポリエステル樹脂Aの融点[T1(℃)]と炭化水素ワックスの融点[T2(℃)]の差の絶対値が、15℃以下、つまり(式2)を満たすことが重要である。
T2とT1の差の絶対値が15℃以下となるとき、同様に、結晶性ポリエステル樹脂Aと炭化水素ワックスが同時期に固化することができる。その結果、炭化水素ワックスが結晶性ポリエステル樹脂Aを介した複合化状態を形成する。その結果、炭化水素ワックスが結晶性ポリエステル樹脂Aを介して樹脂組成物Cとも同時期に複合化状態を取り、トナー粒子中に固定化され、その保持効果によって熱処理による炭化水素ワックスのトナー表面近傍への溶出を抑制することができると考えられる。
該T2とT1の差の絶対値は、0以上10以下であることが好ましく、0以上8以下であることがより好ましい。
また、本発明の結晶性ポリエステル樹脂Aの融点[T1(℃)]は、60℃以上85℃以下である。融点が60℃以上85℃以下であるとき、高速の定着プロセスにおいてもトナー粒子を可塑することができ、低温で定着できるトナーとなる。
本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)による測定において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピーク(すなわち、融点)を有する樹脂をいう。
T1が60℃よりも小さい時、トナーの保存性が低下するばかりか、特に、高温高湿環境下で画像比率の低い画像を連続出力された場合に、外添剤の埋め込みなどが起こり、現像性が低下することがある。
T1が85℃を超えると、定着時にトナーを十分に可塑することができず、低温での定着が難しくなる。
結晶性ポリエステル樹脂Aの融点は、65℃以上80℃以下であることが好ましく、70℃以上80℃以下であることがより好ましい。
以上より、上記各成分を同じタイミングで固化させるために、(式1)〜(式3)の範囲とすることが重要である。
なお、上記結晶性ポリエステル樹脂Aの融点、炭化水素ワックスの融点、樹脂組成物Cのガラス転移温度は、それぞれの構成成分を適宜選択することで容易に調整することができる。
以下に本発明において好ましいトナーの構成を詳述する。
<結晶性ポリエステル樹脂A>
本発明の結晶性ポリエステル樹脂Aは、炭素数2以上22以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ば
れた少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合して得られる。
そのなかでも、低温定着性と保存性を一段高いレベルで両立するという点から、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合して得られる、結晶性ポリエステル樹脂Aであることが好ましい。
上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであるとよい。
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブタジエングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、及びネオペンチルグリコールが挙げられる。並びに、これらの誘導体。誘導体としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記ジオールをエステル化した誘導体が挙げられる。
これらの中でも、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、及び1,12−ドデカンジオールなどが好ましく例示される。
上記アルコール成分において、炭素数2以上22以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が、全アルコール成分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
さらには、上記アルコール成分において、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が、全アルコール成分に対して、50質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
本発明において、上記脂肪族ジオール以外に多価アルコールを用いることもできる。
該多価アルコールのうち、上記脂肪族ジオール以外のジオールとしては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどの芳香族アルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
また、該多価アルコールのうち3価以上の多価アルコールとしては、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどの芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパンなどの脂肪族アルコールなどが挙げられる。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂Aの特性を損なわない程度に1価のアルコ−ルを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、例えば、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、及びベンジルアルコールなどの一価のアルコールなどが挙げられる。
一方、炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であるとよい。
例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、及びイタコン酸が挙げられる。並びに、これらの誘導体。誘導体
としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。
例えば、上記ジカルボン酸成分の酸無水物、ジカルボン酸成分をメチルエステル化、エチルエステル化、又は酸クロライド化した誘導体が挙げられる。
本発明において、上記カルボン酸成分において、炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が、全カルボン酸成分に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
さらには、上記カルボン酸成分において、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が、全カルボン酸成分に対して、50質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
本発明において、上記脂肪族ジカルボン酸以外に多価カルボン酸を用いることもできる。
該多価カルボン酸のうち、上記脂肪族ジカルボン酸以外の2価のカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸;n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸の脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなども含まれる。
また、その他の多価カルボン酸において、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、及びピロメリット酸などの芳香族カルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、及び1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、などの脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなどの誘導体なども含まれる。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂Aの特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を含有していてもよい。1価のカルボン酸としては、例えば、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸などの1価のカルボン酸が挙げられる。
さらに、本発明の結晶性ポリエステル樹脂Aは、該結晶性ポリエステル樹脂Aの末端において、炭素数10以上20以下(好ましくは炭素数12以上18以下)の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数10以上20以下(好ましくは炭素数13以上18以下)の脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれた一種以上の脂肪族化合物(以下、これら2つを総称して「長鎖脂肪族化合物」ともいう)が、縮合により結合した樹脂であることが好ましい。
具体的には、長鎖脂肪族化合物が結合する前の結晶性ポリエステル樹脂Aの末端に、カルボキシル基が存在する場合には、モノアルコールとの縮合反応が起こり、結合が生じる。また、長鎖脂肪族化合物が結合する前の結晶性ポリエステル樹脂Aの末端に、ヒドロキシ基が存在する場合には、モノカルボン酸との縮合反応が起こり、結合が生じる。
ここで、「末端」とは、結晶性ポリエステル樹脂Aが分岐鎖を有している場合は、その分岐鎖の末端も含む。
本発明の結晶性ポリエステル樹脂Aにおいて、結晶性ポリエステル樹脂Aの末端に長鎖脂肪族化合物が結合していることで、トナーの保存性が向上する。
このことから、末端に長鎖脂肪族化合物が結合することで、結晶性ポリエステル樹脂Aの結晶化速度が高まり、溶融混練後の冷却工程でより微分散した状態で固定化されていると考えられる。
一般的に結晶性部位は、結晶核が生成した後に、結晶が成長するとされている。本発明では、結晶性ポリエステル樹脂Aの末端に、長鎖脂肪族化合物を有することで、末端の長
鎖脂肪族化合物の炭化水素が、結晶性ポリエステル樹脂Aの結晶構造をとりうる部位(以下、部位aという)に結晶成長を促進することができ、結晶性ポリエステル樹脂Aの結晶化速度を向上させることができると考えられる。
また、結晶性ポリエステル樹脂Aと、樹脂組成物Bのビニル樹脂成分又は樹脂組成物Cのビニル樹脂成分との親和性を適度に調整することができ、樹脂組成物Bのビニル樹脂成分から結晶性ポリエステル樹脂A、さらに樹脂組成物Cから微分散した炭化水素ワックスへと連続した成分配置を容易にする。
長鎖脂肪族化合物を形成する化合物としては、部位aよりも結晶化速度が速い化合物であれば特に制限されるものではない。但し、結晶化速度が速いという観点から、主鎖が炭化水素系部位を含み、結晶性ポリエステル樹脂Aの末端と反応しうる官能基を1つ以上有する化合物であることが好ましい。さらに、炭化水素系部位が直鎖状であり、結晶性ポリエステル樹脂Aと反応する官能基数が1つである化合物が好ましい。
また、長鎖脂肪族化合物と結晶性ポリエステル樹脂Aの末端との反応性が高まる観点で、長鎖脂肪族化合物の分子量は100以上10,000以下であることが好ましく、150以上5,000以下であることがより好ましい。
上記長鎖脂肪族化合物は、結晶化速度を上げるという観点から、結晶性ポリエステル樹脂A中に、結晶性ポリエステル樹脂Aのポリエステル分子鎖の原料モノマー100mol部に対して、0.1mol部以上、10.0mol部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mol部以上、7.0mol部以下である。
上記の範囲内であれば、結晶性ポリエステル樹脂Aと、樹脂組成物Bのビニル樹脂成分又は樹脂組成物Cのビニル樹脂成分との親和性を適度に調整することができ、樹脂組成物Bのビニル樹脂成分から結晶性ポリエステル樹脂A、さらに樹脂組成物Cから微分散した炭化水素ワックスへと連続した成分配置をより容易にする。
上記炭素数10以上20以下の脂肪族モノカルボン酸としては、以下のものが挙げられる。
カプリン酸(デカン酸)、ウンデシル酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、トリデシル酸、ミリスチル酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ノナデシル酸、アラキジン酸(イコサン酸)が挙げられる。
炭素数10以上20以下の脂肪族モノアルコールとしては、以下のものが挙げられる。
デシルアルコール(デカノール)、ウンデカノール、ラウリルアルコール(ドデカノール)、トリデカノール、ミリスチルアルコール(テトラデカノール)、ペンタデカノール、パルミチルアルコール(ヘキサデカノール)、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール(オクタデカノール)、ノナデカノール、アラキジルアルコール(イコサノール)が挙げられる。
上記長鎖脂肪族化合物が結晶性ポリエステル樹脂Aと結合しているか否かは、以下の分析によって判別する。
サンプルを2mgを精秤し、クロロホルム2mlを加えて溶解させてサンプル溶液を作製する。樹脂サンプルとしては結晶性ポリエステル樹脂Aを用いるが、結晶性ポリエステル樹脂Aが入手困難な場合には、結晶性ポリエステル樹脂Aを含有するトナーをサンプルとして代用することも可能である。
次に、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)20mgを精秤し、クロロホルム1mlを添加して溶解させてマトリックス溶液を調製する。
また、トリフルオロ酢酸Na(NaTFA)3mgを精秤した後、アセトンを1ml添加して溶解させてイオン化助剤溶液を調製する。
このようにして調製したサンプル溶液25μl、マトリックス溶液50μl、イオン化助剤溶液5μlを混合してMALDI分析用のサンプルプレートに滴下させ、乾燥させることで測定サンプルとする。
分析機器として、MALDI−TOFMS(Bruker Daltonics製 R
eflexIII)を用い、マススペクトルを得る。
得られたマススペクトルにおいて、オリゴマー領域(m/Zが2000以下)の各ピークの帰属を行い、分子末端に長鎖脂肪族化合物が結合した組成に対応するピークが存在するか否かを確認する。
本発明において、トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂Aの含有量が、樹脂組成物B 100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、4質量部以上12質量部以下であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂Aの含有量が上述の範囲であるとき、十分な低温定着性が発現し、トナー中に結晶性ポリエステル樹脂Aが微分散させることができるためより好ましい。
また、本発明において、トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂Aの含有量は、樹脂組成物Cの含有量と同量以上であることがより好ましく、樹脂組成物C 100質量部に対して、120質量部以上200質量部以下であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂Aの含有量が樹脂組成物Cの含有量と同量以上であることにより、結晶性ポリエステル樹脂Aと樹脂組成物Cとを近接した位置に固定化することができ、熱処理時のワックスの溶出を抑制する効果が十分に発揮される。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂Aは、通常のポリエステルの合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸成分とアルコ−ル成分とをエステル化反応、又はエステル交換反応させた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って縮重合反応させることで所望の結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
上記エステル化又はエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、オクチル酸錫(II)、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、及び酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、上記縮重合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、オクチル酸錫(II)、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、及び二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、及び触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化若しくはエステル交換反応、又は縮重合反応において、得られる結晶性ポリエステル樹脂の強度を上げるために全単量体を一括で仕込むことや、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させたりすることなどの方法を用いてもよい。
<樹脂組成物B(結着樹脂)>
本発明において、トナー粒子は結着樹脂として樹脂組成物Bを含有する。
該樹脂組成物Bは、ポリエステル樹脂成分とビニル樹脂成分とが化学的に結合することにより得られるハイブリッド樹脂である。
本発明において、結着樹脂は、樹脂組成物B(ハイブリッド樹脂)を単独で用いることも可能であるが、他の樹脂を結着樹脂として含有する混合物であってもよい。
例えば、ハイブリッド樹脂とビニル樹脂との混合物、又はハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、又はポリエステル樹脂とハイブリッド樹脂とビニル樹脂の混合物などが挙げられる。
ハイブリッド樹脂としては、以下のものが挙げられる。
(i)アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルのようなカルボン酸エステル基を有するモノマー成分を重合したビニル樹脂成分とポリエステル樹脂成分との間でエステル交換反応を行うことによって形成されるもの。
(ii)アクリル酸やメタクリル酸のようなカルボン酸基を有するモノマー成分を重合したビニル樹脂成分とポリエステル樹脂成分との間でエステル化反応を生じることによって形成されるもの。
(iii)フマル酸のような不飽和結合を持つモノマーを用いて重合された不飽和ポリエステル樹脂成分の存在下でビニルモノマーを重合して形成されるもの。
ハイブリッド樹脂は、上記の(i)、又は(ii)のように、ビニル樹脂成分及び/又はポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含有させ、それらを反応させることによって得ることができる。
ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうち、ビニル樹脂成分と反応し得るものとしては、例えば、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。
ビニル樹脂成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、アクリル酸やメタクリル酸のようなカルボキシル基を有するビニルモノマーやヒドロキシ基を有するビニルモノマーが挙げられる。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂Aを微分散する観点及び結晶性ポリエステル樹脂Aと樹脂組成物Bのビニル樹脂成分を近接して固定化する観点から、樹脂組成物Bにおける、ポリエステル樹脂成分のビニル樹脂成分に対する質量比が、50:50〜95:5であることが好ましく、70:30〜90:10であることがより好ましい。
上記ハイブリッド樹脂の製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(5)に示す製造方法を挙げることができる。
(1)ビニル樹脂とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解又は膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行って、ポリエステル樹脂成分とビニル樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を得る。
(2)ビニル樹脂製造後に、この存在下にポリエステル樹脂成分を生成し、ポリエステル樹脂成分とビニル樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を製造する。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(3)ポリエステル樹脂製造後に、この存在下にビニル樹脂成分を生成し、反応させポリエステル樹脂成分とビニル樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を製造する。
(4)ビニル樹脂及びポリエステル樹脂製造後に、これらの重合体成分存在下にビニルモノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール成分、カルボン酸成分)を添加することによりハイブリッド樹脂を製造する。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(5)ビニルモノマー及びポリエステルモノマー(アルコール成分、カルボン酸成分)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりポリエステル樹脂成分とビニル樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を製造する。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)〜(5)の製造方法において、ビニル樹脂成分及び/又はポリエステル樹脂成分は複数の異なる分子量、及び架橋度を有する重合体成分を使用することができる。
上記ハイブリッド樹脂は、定着時のシャープメルト性の観点から、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)が、1.0以上5.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.0以上3.0以下である。
また、上記ハイブリッド樹脂は、トナーに良好な帯電性を付与する観点より、酸価が0.1mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは1mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは1mgKOH/g以上10mgKOH/g以下である。
さらに、上記ハイブリッド樹脂は、トナーに良好な帯電性を付与する観点より、水酸基価が10mgKOH/g以上60mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは30mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である。
上記ハイブリッド樹脂を構成するポリエステル樹脂成分とビニル樹脂成分について説明する。
ポリエステル樹脂成分を製造する際に用いることのできるモノマーを以下に例示する。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記(A)式で表わされるビスフェノール及びその誘導体、及び下記(B)式で示されるジオール類。
Figure 0006455835
2価のカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類、その無水物、又はその低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類、その無水物、又はその低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類若しくはアルキルコハク酸類、その無水物、又はその低級アルキルエステル;などのジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
また、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、及びn−ドデセニルコハク酸などの不飽和ジカルボン酸類、その無水物、又はその低級アルキルエステルを構成成分として含有することで、不飽和ポリエステル樹脂とすることも可能である。
これら不飽和ジカルボン酸の含有量は、ポリエステルモノマーの全カルボン酸成分に対して、0.1mol%以上10mol%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3mol%以上5mol%以下であり、さらに好ましくは0.5mol%以上3mol%以下である。
不飽和ジカルボン酸の含有量が上記範囲である場合には、ポリエステル樹脂成分の分子中に占める不飽和結合濃度が適当となり、適度な架橋点間距離を有したポリエステル樹脂とビニル樹脂とのハイブリッド化が生じ、結晶性ポリエステル樹脂Aの分散性向上の観点で好ましい。
また、上記ポリエステル樹脂成分において、必要に応じて3価以上のアルコール成分や3価以上のカルボン酸成分を使用することも可能である。
3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−
ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。
一方、3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、下記式(C)で表わされるテトラカルボン酸、これらの無水物、及びこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。
Figure 0006455835
(式C中、Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する、炭素数5以上30以下のアルキレン基又は炭素数5以上30以下のアルケニレン基を表す。)
これらの中でも、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、これらの無水物、及びこれらの低級アルキルエステルが好ましい。
上記ポリエステル樹脂成分においては、全成分に対して、アルコール成分が40mol%以上60mol%以下(より好ましくは45mol%以上55mol%以下)であり、カルボン酸成分が60mol%以上40mol%以下(より好ましくは55mol%以上45mol%以下)であることが好ましい。
また、三価以上の多価成分は、全成分に対して、0.1mol%以上60mol%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1mol%以上20mol%以下である。
上記ポリエステル樹脂は、通常一般に知られている縮重合によって得られる。ポリエステル樹脂の重合反応は、通常触媒の存在下150℃以上300℃以下、好ましくは170℃以上280℃以下程度の温度条件下で行われる。また反応は常圧下、減圧下、又は加圧下のいずれでも行うことができるが、所定の反応率(例えば30%〜90%程度)に到達後は反応系を200mmHg以下、好ましくは25mmHg以下、さらに好ましくは10mmHg以下に減圧し、反応を行うとよい。
上記縮重合反応に用いる触媒としては、通常ポリエステル製造に用いられる触媒、例えば、スズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウムなどの金属;及びこれら金属含有化合物(ジブチルスズオキサイド、ジオクタン酸スズ(II)、オルソジブチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、シュウ酸チタン酸二カリウム、テレフタル酸チタン酸カリウム、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸コバルト、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモンなど)が挙げられる。
本発明では、上記縮重合反応の制御のしやすさや、ビニルモノマーとの反応性の高さからチタン化合物が好ましく用いられ、特に好ましいものとしてテトライソプロピルチタネート、シュウ酸チタン酸二カリウム、テレフタル酸チタン酸カリウムが挙げられる。この際、結着樹脂の着色防止として酸化防止剤(特にリン系酸化防止剤)や、反応促進剤として助触媒(マグネシウム化合物が好ましく、特に酢酸マグネシウムが好ましい)を添加することが特に好ましい。
反応物の性質(例えば酸価、軟化点など)が所定の値に到達した時点、あるいは反応機の攪拌トルク又は攪拌動力が所定の値に到達した時点で反応を停止させることによって上記ポリエステル樹脂を得ることができる。
上記ビニル樹脂は、ビニルホモポリマー又はビニルコポリマーである。
ビニル樹脂を得る為のモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、及びp−n−ドデシルスチレンのようなスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンのような不飽和モノオレフィン類;ブタジエン及びイソプレンのような不飽和ポリエン類;塩化ビニル、臭化ビニル、及び沸化ビニルのようなハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及び安息香酸ビニルのようなビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、及びメタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、及びアクリル酸フェニルのようなアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、及びビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、及びメチルイソプロペニルケトンのようなビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、及びN−ビニルピロリドンのようなN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びアクリルアミドのようなアクリル酸誘導体又はメタクリル酸誘導体が挙げられる。
これらのビニルモノマーは単独で用いても、2種類以上のモノマーを混合して用いてもよい。
これらの中でも、スチレン共重合体、スチレンアクリル共重合体となるようなモノマーの組み合せが好ましい。
さらに、結着樹脂の酸価を調整するモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、及びクロトン酸などのアクリル酸、及びそのα−又はβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、及びシトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びそれらのモノエステル誘導体又は酸無水物などが挙げられる。
このようなモノマーを単独、若しくは混合して、又は他のモノマーと共重合させることにより所望の結着樹脂を作ることができる。
この中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体を用いることで、酸価をコントロールしてもよい。
より具体的には、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニルなどのようなα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチルなどのようなアルケニルジカルボン酸のモノエステル類;フタル酸モノメチルエステル、フタル酸モノエチルエステル、フタル酸モノブチルエステルなどのような芳香族ジカルボン酸のモノエステル類;などが挙げられる。
以上のようなカルボキシル基含有モノマーの含有量は、ビニル樹脂を合成する際に用いられる全モノマーに対して、0.1質量%以上30質量%以下をすればよい。
また、以下に例示するような架橋性モノマーを添加することも可能である。
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、及びジビニルナフタレンなど);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、及びネオペンチルグルコールジアクリレート、並びに、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、及びジプロピレングリコールジアクリレート、並びに、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及びポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、並びに、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、及びオリゴエステルアクリレート、並びに、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、及びトリアリルトリメリテートなどが挙げられる。
これらの架橋剤の含有量は、ビニルモノマー成分100質量部に対して、0.001質量部以上1質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.001質量部以上0.05質量部以下である。
ビニル樹脂の製造には、以下に示す重合開始剤を用いてもよい。
重合開始剤の例として、ベンゾイルパーオキサイド、n−ブチル−4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、tert−ブチルパーオキシクメン、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、及びジアゾアミノアゾベンゼンなどのアゾ及びジアゾ化合物などが挙げられる。
本発明において、樹脂組成物Bは、テトラヒドロフラン不溶分を10質量%以上30質量%以下含有することが、トナーの消費量、現像性、ホットオフセット性を高めるうえで好ましい。
また、樹脂組成物Bのガラス転移温度(Tg)は、50℃以上75℃以下であることが好ましい。樹脂組成物Bのガラス転移温度を上記範囲に調整することで、トナーの保存安定性とトナーの定着性をより向上させることができる。
<樹脂組成物C>
本発明において、樹脂組成物Cは、炭化水素化合物とビニル樹脂成分とを反応させて得られる重合体を含有する。
該炭化水素化合物とビニル樹脂成分とを反応させて得られる重合体としては、ビニル樹脂成分にポリオレフィンをグラフト共重合させて得られる重合体又はポリオレフィンにビニルモノマーをグラフト共重合させて得られる重合体が挙げられる。
ここで、ポリオレフィンとは、二重結合(C=C)を有する炭化水素化合物やアルケンをモノマーとして合成されるポリマーの総称である。
上記炭化水素化合物とビニル系樹脂成分とを反応させて得られる重合体は、トナー製造時の溶融混練工程において、溶融した、樹脂組成物Bと炭化水素ワックスとの親和性を高める効果があると考えている。そのため、上記重合体をトナー粒子に含有させることで、トナー粒子中の炭化水素ワックスの分散性をコントロールできるため好ましい。上記重合体を用いない場合には、トナー粒子中の炭化水素ワックスの分散状態が不十分なため、クリーニング性が低下する。
上述のように、炭化水素化合物は二重結合を一つ有する不飽和炭化水素モノマーの重合体又は共重合体であれば特に限定されず、様々なポリオレフィンを用いることができる。
特にポリエチレン、又はポリプロピレンが好ましく用いられる。
一方、上記ビニル樹脂成分に用いられるビニルモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンのようなスチレン及びその誘導体などのスチレンモノマー。
メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなアミノ基含有α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類。
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びアクリルアミドのようなアクリル酸又はメタクリル酸誘導体などのN原子を含むビニルモノマー。
マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、及びメサコン酸のような不飽和二塩基酸。
マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、及びアルケニルコハク酸無水物のような不飽和二塩基酸無水物。
マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、及びメサコン酸メチルハーフエステルのような不飽和二塩基酸のハーフエステル。
ジメチルマレイン酸、及びジメチルフマル酸のような不飽和二塩基酸エステル。
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、及びケイヒ酸のようなα,β−不飽和酸。
クロトン酸無水物、及びケイヒ酸無水物のようなα,β−不飽和酸無水物。
前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物。
アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物、及びこれらのモノエステルなどのカルボキシル基を含むビニルモノマー。
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸エステル類。
4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンなどの水酸基を含むビニルモノマー。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、及びアクリル酸フェニルのようなアクリル酸エステル類などのアクリル酸エステルからなるビニルエステルモノマー。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、及びメタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類などのメタクリル酸エステルからなるビ
ニルエステルモノマー。
上記炭化水素化合物と上記ビニル樹脂成分とを反応させて得られる重合体は、上記ビニルモノマー同士の反応や、一方の重合体のモノマーと他方の重合体との反応など、公知の方法によって得ることができる。
ビニル樹脂成分を構成するモノマー単位として、スチレンモノマー単位、ビニルエステルモノマー単位、アクリロニトリルモノマー単位、又はメタアクリロニトリルモノマー単位を含むことが好ましい。
また、該重合体のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上100℃以下であることが、保存性、低温定着性、及びホットオフセット性を両立させる上で好ましい。
さらに、該重合体は、トナー粒子が熱処理することにより得られる場合、トナー粒子同士の合一が課題となるが、合一を防ぐ希有な材料である。
本発明において、樹脂組成物Cにおける、炭化水素化合物のビニル樹脂成分に対する質量比は、1:99〜75:25であることが好ましい。より好ましくは10:90〜70:30である。
また、樹脂組成物Cの含有量は、結晶性ポリエステル樹脂Aの含有量と同量未満であることが、前述の複合化状態を維持する上で好ましい。
一方、樹脂組成物Cの含有量は、樹脂組成物B 100質量部に対して、0.2質量部以上40.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは、1.0質量部以上20.0質量部以下である。
<炭化水素ワックス>
本発明において、炭化水素ワックスは、樹脂組成物Cを構成する炭化水素化合物と極性が近く、相互に相溶する。したがって、該炭化水素ワックスも樹脂組成物Cを構成する炭化水素化合物と類似する炭化水素化合物である。
該炭化水素ワックスとしては、例えば、アルケンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒又はメタロセン触媒で重合した低分子量のアルケンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルケンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスが挙げられる。
さらにプレス発汗法、溶剤法、又は真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが、より好ましく用いられる。
母体としての炭化水素は、金属酸化物系触媒(多くは2種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの[例えば、ジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物];ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(固定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレンなどのアルケンをチーグラー触媒により重合した炭化水素が、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であるので好ましい。特にアルケンの重合によらない方法により合成されたワックスがその分子量分布からも好ましいものである。また、パラフィンワックスも好ましく用いられる。
低温定着性、及びホットオフセット性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような炭化水素ワックスが好ましい。
本発明において、炭化水素ワックスの含有量は、樹脂組成物B 100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
また、示差走査熱量計(DSC)で測定された、昇温時の吸熱曲線において、炭化水素ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が、45℃以上140℃以下であることが好ましい。該最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲内であるとトナーの保存性とホットオフセット性を両立できるため好ましい。
<着色剤>
本発明において、トナー粒子は着色剤を含有してもよい。該着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;下記イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。
着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。
C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
着色剤の含有量は、樹脂組成物B 100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
<荷電制御剤>
本発明において、トナー粒子は荷電制御剤を含有してもよい。
該荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナー粒子の帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。
ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
荷電制御剤は、トナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。
荷電制御剤の含有量は、樹脂組成物B 100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
<無機微粒子>
本発明のトナーは、トナー粒子に無機微粒子を含有させてトナーをすることもできる。
該無機微粒子は、トナー粒子に内添してもよいし、外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。
該外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムのような無機微粒子が好ましい。また、無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
一方、流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m/g以上400m/g以下の無機微粒子が好ましい。また、耐久性安定化のための外添剤としては、比表面積が10m/g以上50m/g以下の無機微粒子であることが好ましい。
流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粒子を併用してもよい。
外添剤として無機微粒子を使用する場合、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。この場合、トナー粒子と無機微粒子の混合は、ヘンシェルミキサーのような公知の混合機を用いることができる。
<現像剤>
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが好ましい。
また、長期にわたり安定した画像が得られるという点でも好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、酸化鉄;鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、及び希土類のような金属粒子、それらの合金粒子;それらの酸化物粒子;フェライトなどの磁性体;磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア);など、一般に公知のものを使用できる。
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、磁性キャリアとトナーの混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度が、2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4質量%以上13質量%以下である。
<トナーの製造方法>
次に、トナーの製造方法について説明する。
本発明のトナーは、上記結晶性ポリエステル樹脂A、樹脂組成物B、樹脂組成物C、及び炭化水素ワックスを含有する混合物を溶融混練後に冷却し、得られた混練物を粉砕し、得られた粉砕物を熱処理することにより得られる。
まず、結晶性ポリエステル樹脂A、樹脂組成物B、樹脂組成物C、及び炭化水素系ワックスなどを所定量秤量して配合し、混合する(原料混合工程)。
該原料混合工程で使用される装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(三井鉱山社製)が挙げられる。
次に、混合された混合物を溶融混練して、樹脂組成物Bに結晶性ポリエステル樹脂A、樹脂組成物C、及び炭化水素系ワックスなどを分散させる(溶融混練工程)。溶融混練工程において、混練物は、例えば、160℃程度まで加熱される。
溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーのようなバッチ式混練機や、連続式の混練機を用いることができる。連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製
)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(三井鉱山社製)が例示できる。
さらに、溶融混練して得られた混練物は、2本ロールなどで圧延した後に、水(例えば15℃程度の水)などの冷媒を用いて冷却する(冷却工程)。冷媒を用いずに自然冷却してもよい。
冷却は、樹脂組成物B−結晶性ポリエステル樹脂A−樹脂組成物C−炭化水素ワックスが複合化された状態で、トナー中に固定化する観点から、例えば、35℃以下程度まで冷却するとよい。
ついで、冷却された混練物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルのような粉砕機で粗粉砕した後、さらに、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕するとよい。
その後、得られた粉砕物を熱処理すること(熱処理工程)によりトナー粒子を得る。
上記熱処理工程は、熱処理工程でのトナー粒子の合一、形状の均一性の観点から、熱風を利用したものであることが好ましい。
以下、熱風を利用した熱処理工程について説明するが、該説明になんら限定されることはない。
熱風を利用した熱処理工程には、例えば、図1に示すような処理装置を用いることができる。
具体的には、原料定量供給手段1により定量供給された粉砕物は、圧縮気体流量調整手段2により調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管3に導かれる。導入管3を通過した粉砕物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる処理室6に導かれる。
このとき、処理室に供給された粉砕物は、処理室内に設けられた粉砕物の流れを規制するための規制手段9によって、その流れが規制される。このため処理室に供給された粉砕物は、処理室内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
供給された粉砕物を熱処理するための熱風は、熱風供給手段7から供給され、分配部材12を経て、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。
処理室内に供給される熱風の温度は、熱風供給手段7の出口部における温度が100℃以上300℃以下であることが好ましく、140℃以上230℃以下であることがより好ましい。熱風供給手段7の出口部における温度が上記の範囲内であれば、粉砕物を加熱しすぎることによるトナー粒子の融着や合一を防止しつつ、トナー粒子の平均円形度が所望の範囲を満たすようにトナー粒子を均一に熱処理することができる。
更に熱処理された熱処理トナー粒子は冷風供給手段8から供給される冷風によって冷却される。冷風供給手段8から供給される冷風の温度は−20℃以上30℃以下であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理トナー粒子を効率的に冷却することができ、トナー粒子の均一な熱処理を阻害することなく、熱処理トナー粒子の融着や合一を防止することができる。また、冷風の絶対水分量は、0.5g/m以上15.0g/m以下であることが好ましい。
次に、冷却された熱処理トナー粒子は、処理室の下端にある回収手段10によって回収される。なお、回収手段の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
また、粉体粒子供給口14は、供給された粉砕物の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられている。処理装置の回収手段10は、旋回された粉体粒子の旋回方向を維持するように、処理室の外周部に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう
構成されている。粉体粒子供給口14から供給される粉砕物の旋回方向、冷風供給手段8から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室内で乱流が起こらず、処理装置内の旋回流が強化され、トナー粒子に強力な遠心力がかかり、トナー粒子の分散性が更に向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃った熱処理トナー粒子を得ることができる。
また、必要に応じて、上記粉砕工程の後、又は熱処理工程の後に、慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)のような分級機や、ウルトラソニック(晃栄産業社製)、レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社)、ターボスクリーナー(ターボ工業社製)、ハイボルター(東洋ハイテック社製)などの篩分機を用いて分級してもよい。
また、必要に応じて、粉砕工程の後、又は熱処理工程の後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)又はメカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)を用いて粉砕物又は熱処理トナー粒子の表面改質処理を行うこともできる。
また、必要に応じて、熱処理工程の前に、粉砕物に無機微粒子などを添加しても構わない。粉砕物に無機微粒子などを添加する方法としては、粉砕物と無機微粒子を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス社製)、スーパーミキサー、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)などの粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌及び混合するとよい。
なお、本発明において、トナーの平均円形度は0.960以上1.000以下であることが好ましく、より好ましくは0.965以上1.000以下である。トナーの平均円形度が上記範囲であることにより、トナーの転写効率が向上する。トナーの平均円形度を上記範囲に調整する手段としては、上記熱処理工程が好適に例示できる。
以下に、トナー及び原材料の各種物性の測定法について説明する。
<樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂組成物のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、樹脂組成物5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30〜180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。
一度、180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、30〜180℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、DSC曲線におけるガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度を、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg:℃)とする。
<炭化水素ワックス及び結晶性ポリエステル樹脂の融点の測定>
炭化水素ワックス及び結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、炭化水素ワックス又は結晶性ポリエステル樹脂5mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲20〜180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。なお、測定においては、一度180℃まで昇温させ、続いて20℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度20〜180℃の範囲におけるDSC曲線の最大の
吸熱ピークのピーク温度を、炭化水素ワックス又は結晶性ポリエステルの融点(℃)とする。
<結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定>
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。
結晶性ポリエステル樹脂0.03gをo−ジクロロベンゼン10mlに分散して溶解後、135℃において24時間放置し溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
[分析条件]
装置: HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
検出器: 示差屈折率検出器 Shodex RI−71(昭和電工社製)
分離カラム:TSK gel GMHHR−H HT 2連(東ソー社製)
カラム温度:135℃
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
移動相流速:1.0ml/min.
試料濃度 :約0.3%
注入量 :300μl
また、結晶性ポリエステル樹脂の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用する。
<樹脂組成物Bにおけるポリエステル樹脂成分のビニル樹脂成分に対する質量比の測定>
樹脂組成物Bにおける、ポリエステル樹脂成分のビニル樹脂成分に対する質量比の測定は、樹脂組成物Bのポリエステル樹脂成分を加水分解して測定する。
具体的には、300mgの樹脂組成物Bに、ジオキサン50ml及び10質量%の水酸化カリウム水溶液10mlを加え、市販の水平型振とう機を用いて70℃で1秒間に約2往復の速度で6時間振とうして、樹脂組成物Bのポリエステル樹脂成分を加水分解する。
その後、室温まで冷却後、ジエチルエーテル加え分液操作を行い、水洗し、分離した有機層から溶媒を減圧留去し、さらに90℃雰囲気中において、減圧で24時間乾燥し、ビニル樹脂成分の質量を測定する[A(mg)]。
そして、次式により樹脂組成物Bにおける、ポリエステル樹脂成分のビニル樹脂成分に対する質量比を求める。
樹脂組成物Bにおけるポリエステル樹脂成分のビニル樹脂成分に対する質量比
={(300−A)/3}:{A/3}
<樹脂組成物のテトラヒドロフラン可溶分の分子量の測定>
樹脂組成物のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
室温で24時間かけて、樹脂組成物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<樹脂の軟化点の測定方法>
樹脂の軟化点は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って測定する。
本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温して溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出す。この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線が得られる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、試料の流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、試料の流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとなるときの流動曲線上の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて10MPaで、60秒間圧縮成型し、直径8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定>
トナーの重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer
3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)を使用する。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの
総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。
閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに電解液200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに電解液30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora 150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ電解液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<トナーの平均円形度の測定>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)を用い、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.2ml加える。
さらに測定試料を0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2ml添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載したフロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用する。
前記手順に従い調製した分散液をフロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モード
、トータルカウントモードにて3000個のトナーを計測する。
そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定し、トナーの平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施する。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。なお、実施例および比較例の部数および%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<結晶性ポリエステル樹脂A1の製造例>
表1に示した原料モノマー及びオクチル酸錫(II)(原料モノマー総量100質量部に対して0.5質量部相当)を、冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に入れた。次いで、窒素ガス雰囲気で撹拌しながら徐々に昇温し、撹拌しながら160℃で、5時間かけて反応した。その後、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、200℃に昇温し、4時間反応した(第一の反応工程)。
その後、反応槽内の圧力を序々に開放して常圧へ戻した後、原料モノマーの総モル%に対して7.0mol%のオクタデカン酸を加え、常圧下にて200℃で2時間反応した。その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応することで結晶性ポリエステル樹脂A1を得た(第二の反応工程)。
結晶性ポリエステル樹脂A1の重量平均分子量(Mw)は、1.01×10であり、融点は75℃であった。
<結晶性ポリエステル樹脂A2〜A9の製造例>
結晶性ポリエステル樹脂A1の製造例において、第一反応工程のアルコール成分及び/又はカルボン酸成分の種類及び使用量を表1となるように変更し、第二反応工程のモノマーの種類及び使用量を変更したほかは同様にして反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂A2〜A9を得た。結晶性ポリエステル樹脂A2〜A9の物性を表1に示す。
Figure 0006455835
<樹脂組成物B1の製造例>
表2に示したトリメリット酸以外のポリエステル樹脂用モノマー、両反応性化合物、及びエステル化触媒であるジオクタン酸スズ(II)15部を4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけ、窒素雰囲気下、230℃で4.5時間重合した。
その後、一旦160℃まで冷却したところで、トリメリット酸150部を添加した。次いで、表2に示したスチレン樹脂用モノマー及び重合開始剤であるジクミルパーオキサイド30部の混合物を、160℃で、2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに200℃まで昇温し、軟化点が115℃に達するまで3時間反応を行った。
<樹脂組成物B2〜B5の製造例>
表2に示した原料及び使用量に変更した以外は、樹脂組成物B1の製造例と同様に反応を行った。いずれも軟化点が115℃に達するまで、反応時間を適宜変更して反応を進め、樹脂組成物B2〜B5を得た。
<樹脂組成物B6の製造例>
表2に示したポリエステル樹脂用モノマー及びジオクタン酸スズ(II)15部を4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけ、窒素雰囲気下、220℃で6時間反応させて、ポリエステル樹脂を得た。
Figure 0006455835
<樹脂組成物C1の製造例>
・ポリエチレン 20質量部
(重量平均分子量:1400、数平均分子量:850、DSCによる吸熱ピークのピーク温度が100℃)
・スチレン 60質量部
・アクリル酸−n−ブチル 16質量部
・アクリロニトリル 4質量部
・キシレン 20質量部
上記原料の混合物をオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を窒素置換後、混合物を昇温及び撹拌しながら180℃に保持した。次いで、該混合物に、2質量%のジ−tert−ブチルパーオキサイドのキシレン溶液50質量部を5時間かけて連続的に滴下した。その後、冷却し溶媒を分離除去し、ポリエチレンにビニル共重合体がグラフト結合した樹脂組成物C1を得た。樹脂組成物C1のガラス転移温度(Tg)は61℃であり、樹脂組成物C1のTHF可溶分のGPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)が7400、数平均分子量(Mn)が2800であった。また、該GPC測定において、原料のポリ
エチレンに相当するピークは認められなかった。
<樹脂組成物C2〜C7の製造例>
樹脂組成物C1の製造例において、表3に示した原料及び使用量となるように変更した以外は同様に反応を行い、樹脂組成物C2〜C7を得た。樹脂組成物C2〜C7の物性を表3に示す。
<表3>
Figure 0006455835
<トナー1の製造例>
・樹脂組成物B3 100質量部
・結晶性ポリエステル樹脂A1 10質量部
・樹脂組成物C5 5質量部
・ワックス2(表4参照) 5質量部
・銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.3質量部
(ボントロンE88 オリエント化学工業社製)
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s−1、回転時間5minで混合した後、温度150℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、株式会社池貝製)にて溶融混練した。得られた混練物を25℃まで冷却し、その後、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらに、ファカルティF−300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級ローターの回転数を130s−1、分散ローターの回転数を120s−1で分級を行い、トナー粒子1を得た。
次いで、得られたトナー粒子1を用い、図1に示す処理装置によって熱処理を行い、熱処理トナー粒子を得た。
該処理装置の運転条件は以下の通りであった。
フィード量=5kg/hr、熱風温度=170℃、熱風流量=6m/min.、冷風温度=−5℃、冷風流量=4m/min.、ブロワー風量=20m/min.、圧縮気体流量=1m/min.。
さらに、100質量部の熱処理トナー粒子、1.0質量部の疎水性シリカ(BET比表面積:200m/g)、及びイソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET比表面積:80m/g)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)を用い、回転数30s−1、回転時間10minで混合してトナー1を得た。
トナー1の重量平均粒径(D4)は4.8μmであり、平均円形度は0.975であった。トナーの物性を表5に示した。
Figure 0006455835
<トナー2〜33の製造例>
トナー1の製造例において、結晶性ポリエステル樹脂A、炭化水素ワックス、樹脂組成物B及び樹脂組成物Cの種類と添加量を表5に従い調整した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2〜33を得た。なお、トナー24についてのみ、図1に示す処理装置による熱処理工程を省略した。
Figure 0006455835
<磁性コア粒子1の製造例>
・工程1(秤量及び混合工程):
Fe 62.7質量部
MnCO 29.5質量部
Mg(OH) 6.8質量部
SrCO 1.0質量部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕及び混合した。
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)(MgO)(SrO)(Fe
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
・工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。そのスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100質量部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0質量部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
<被覆樹脂1の調整>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量%
メチルエチルケトン 31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、及びメチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れ、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、80℃まで加温した。その後、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合した。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。
得られた30質量部の被覆樹脂1を、トルエン40質量部、及びメチルエチルケトン30質量部に溶解して、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
<被覆樹脂溶液1の調製>
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m/g、DBP吸油量75ml/100g

を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過をおこない、被覆樹脂溶液1を得た。
<磁性キャリア1の製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに被覆樹脂溶液1を、100質量部の磁性コア粒子1に対して、樹脂成分として2.5質量部になるように投入した。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
<二成分系現像剤1の製造例>
磁性キャリア1を92.0質量部に対し、トナー1を8.0質量部加え、V型混合機(V−20、セイシン企業製)により混合し、二成分系現像剤1を得た。
<二成分系現像剤2〜33の製造例>
二成分系現像剤1の製造例において、表6のようにトナーの組合せを変更した以外は同様の操作を行い、二成分系現像剤2〜33を得た。
<実施例1>
(低温定着性)
キヤノン製フルカラー複写機imagePRESS C1+のシアンステーションに二成分系現像剤1を入れた現像器を搭載し、定着器を取り外した状態で画像形成できるように改造を行った。該改造機を用い、評価紙上に定着されていないトナー像(以下、未定着画像)を形成した。
評価紙には、カラー複写機・プリンター用普通紙 GF−C104(A4、104g/cm)(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
実際には、FFH画像(以下、ベタ部)のトナーの紙上への載り量が1.2mg/cmとなるように現像条件を適宜調整し、評価紙(A4縦)の先端から3cm、及び評価紙の中心の位置に2cm×10cmの未定着画像を形成した。未定着画像は低温低湿環境下(15℃/10%Rh)で24時間調湿した。
続いて、キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C9075PROから定着器を取り出し、プロセススピード、上下の定着部材温度(ベルト温度)を独立に制御できるようにした定着試験用治具を準備した。
該定着試験用治具を以下の設定とした。
プロセススピード;450mm/sec
下ベルト温度;100℃に固定
上ベルト温度;100℃〜200℃の範囲で5℃おきに調整
低温低湿環境下(15℃/10%Rh)で、上記設定の定着試験用治具を用い、上記調湿済みの未定着画像を通紙し、定着画像を得た。
得られた定着画像に対し、4.9kPaの荷重をかけたレンズクリーニングワイパー(ダスパー 小津産業株式会社製)で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率が10%以下になる点を定着温度とした。
10%を超えて濃度低下がおこると定着できていないとの判定基準のもと、画像濃度低下率10%を超えない最も低い上ベルト設定温度を低温定着温度とし、下記の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
A:120℃未満 (優れている)
B:120℃以上130℃未満 (少し優れている)
C:130℃以上140℃未満 (従来技術レベル;本発明において許容レベル)
D:140℃以上 (従来より劣る;本発明において実用不可レベル)
(ホットオフセット性)
低温定着性の評価と同様に、キヤノン製フルカラー複写機imagePRESS C1+のシアンステーションに二成分系現像剤1を入れ、評価用未定着画像を作成した。
評価紙には、カラー複写機・プリンター用普通紙 CS680 (A4、68g/m)(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
実際には、FFH画像(以下、ベタ部)のトナーの紙上への載り量が0.08mg/cmとなるように現像条件を調整し、未定着のFFH画像を得た。
その後、低温定着性評価と同様に、キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C9075PROから取り外した定着器を改造した定着評価治具を用いて常温低湿環境下(23℃/5%Rh)にて評価を行った。
画出し前の評価紙について反射率をリフレクトメータ(「REFLECTOMETER
MODEL TC−6DS」、東京電色株式会社製)によって測定し、5箇所測定した平均値をD(%)とした。上記定着評価治具における定着温度を100〜200℃の範囲で5℃おきに調整し、各定着温度における定着画像の白地部についてリフレクトメータでその反射率を測定し、最大値をD(%)とした。
そして、D(%)とD(%)の差が0.5%を超えない、最も高い定着温度を定着上限温度とし、下記の基準にてホットオフセット性を評価した。
(評価基準)
A:200℃以上 (優れている)
B:180℃以上200℃未満 (少し優れている)
C:160℃以上180℃未満 (従来技術レベル;本発明において許容レベル)
D:160℃未満 (従来より劣る;本発明において実用不可レベル)
(定着可能幅)
低温定着温度と定着上限温度の差を定着可能幅とし、定着可能温度幅の広さを評価した。
(評価基準)
A:80℃以上 (優れている)
B:65℃以上80℃未満 (少し優れている)
C:35℃以上65℃未満 (従来技術レベル;本発明において許容レベル)
D:35℃未満 (劣る;本発明において実用不可レベル)
(転写特性[白斑点のレベル])
画像形成装置として、キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C9075 PROを用い、シアン位置の現像器に二成分系現像剤1を入れ、画像出力試験を実施し、転写特性の評価を行った。
画像出力試験では、紙上のトナーの載り量を0.35mg/cm(FFh画像)に調整し、高温高湿環境下(30℃/85%RH、)で、評価紙(A4用紙;CS−680、68.0g/m、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)に画像比率0.1%のFFh出力の帯チャートを、50,000枚連続出力した。
その後、該評価紙に画像比率100%の全面ベタ画像を出力し、画像中の白斑点の個数を目視で確認した。
(評価基準)
1 :白斑点が5個未満 (非常に優れている)
2 :白斑点が5個以上10個未満 (良好である)
3 :白斑点が10個以上20個未満
4 :白斑点が20個以上30個未満
5 :白斑点が30個以上40個未満
6 :白斑点が40個以上50個未満
7 :白斑点が50個以上60個未満 (本発明では問題ないレベルである)
8 :白斑点が60個以上70個未満 (8以下は、本発明では許容できないレベル)
9 :白斑点が70個以上80個未満
10:白斑点が80個以上
(転写効率)
画像形成装置として、キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C9075 PROを用い、転写特性[白斑点のレベル]の評価と同様の条件で、50,000枚の連続出力を行った。
その後、評価紙に画像比率100%の全面ベタ画像の現像中に複写機を停止し、透明なポリエステル製の粘着テープを用い、画像形成時の潜像担持体上の転写残トナーをはぎ取った。はぎ取った粘着テープを紙上に貼ったものの濃度から、粘着テープのみを紙上に貼ったものの濃度を差し引いた濃度差を算出し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
なお、濃度測定には、X−Riteカラー反射濃度計(X−Rite社)を使用した。(評価基準)
A:濃度差が0.10未満 (非常に優れている)
B:濃度差が0.10以上0.15未満 (良好である)
C:濃度差が0.15以上0.25未満 (本発明では問題ないレベルである)
D:濃度差が0.25以上 (本発明では許容できない)
<実施例2〜23、及び、比較例1〜10>
表6に示した二成分系現像剤2〜33を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表6に示す。
Figure 0006455835
1.原料定量供給手段、2.圧縮気体流量調整手段、3.導入管、4.突起状部材、5.供給管、6.処理室、7.熱風供給手段、8.冷風供給手段、9.規制手段、10.回収手段、11.熱風供給手段出口、12.分配部材、13.旋回部材、14.粉体粒子供給口

Claims (7)

  1. 結晶性ポリエステル樹脂A、樹脂組成物B、樹脂組成物C、及び炭化水素ワックスを含有する混合物を溶融混練する工程、
    溶融混練後に冷却する工程
    冷却後に得られた混練物を粉砕する工程および
    得られた粉砕物を熱処理する工程、
    を経てトナー粒子を製造するトナーの製造方法であって、
    (1)該樹脂組成物Bは、ポリエステル樹脂成分とビニル樹脂成分とが化学的に結合したハイブリッド樹脂であり、
    (2)該樹脂組成物Cは、炭化水素化合物とビニル樹脂成分と反応した重合体であり、(3)示差走査熱量計(DSC)により測定される、該結晶性ポリエステル樹脂Aの融点をT1(℃)、該炭化水素ワックスの融点をT2(℃)、該樹脂組成物Cのガラス転移温度をT3(℃)としたとき、下記の関係を満たすことを特徴とするトナーの製造方法
    |T3−T1|≦15 (式1)
    |T2−T1|≦15 (式2)
    60℃≦T1≦85℃ (式3)
  2. 前記結晶性ポリエステル樹脂Aは、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合して得られる樹脂である請求項1に記載のトナーの製造方法
  3. 前記結晶性ポリエステル樹脂Aの含有量が、前記樹脂組成物B 100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下である請求項1又は2に記載のトナーの製造方法
  4. 前記結晶性ポリエステル樹脂Aの含有量が、前記樹脂組成物Cの含有量と同量以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法
  5. 前記樹脂組成物Bにおける、前記ポリエステル樹脂成分の前記ビニル樹脂成分に対する質量比が50:50〜95:5である請求項1〜4のいずれか一項に記載のトナーの製造
    方法
  6. 前記結晶性ポリエステル樹脂Aは、該結晶性ポリエステル樹脂Aの末端に、炭素数10以上20以下の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数10以上20以下の脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれた一種以上の脂肪族化合物が、縮合により結合した樹脂である請求項1〜5のいずれか一項に記載のトナーの製造方法
  7. 前記熱処理する工程が、熱風により熱処理する工程である請求項1〜6のいずれか一項に記載のトナーの製造方法
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