JP6454161B2 - タイヤのシミュレーション方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤの旋回走行状態をより正確に再現することができるシミュレーション方法に関する。
従来、タイヤの摩耗に関する物理量をコンピュータを用いて予測する方法が、種々提案されている。この種の方法は、例えば、下記特許文献1に記載されているように、自由転動、制動、駆動及び旋回の各運転条件でタイヤモデルを走行させて、各運転条件下での摩耗エネルギーが計測される。各摩耗エネルギーは、各運転条件の発生頻度を考慮した重み付けを行った上で足し合わされ、実車走行時の摩耗エネルギーが予測される。この各運転条件のうち、旋回走行シミュレーションに関しては、タイヤモデルと路面モデルとの間のスリップ角が境界条件として入力される。
特開2004−142571号公報
特許文献1に記載されているようなスリップ角をタイヤモデルの境界条件とする旋回走行シミュレーションでは、横力によって挙動が決定される実車の旋回走行状態を正確に再現できていない。例えば、ある旋回走行状態を再現するためのスリップ角は、タイヤ毎に異なっている。従って、旋回走行状態を再現するために、異なるタイヤモデル間に一律に同じスリップ角を入力するのは適切ではない。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、タイヤの旋回走行状態を正確に再現することができるシミュレーション方法を提供することを主たる目的としている。
本発明は、タイヤの旋回状態を、コンピュータを用いて再現するための方法であって、前記コンピュータにタイヤモデルを設定する工程と、前記コンピュータに前記タイヤモデルが走行する路面を有する路面モデルを設定する工程と、前記タイヤモデルを前記路面モデル上で旋回走行させるシミュレーション工程とを含み、前記シミュレーション工程は、前記タイヤモデルを前記路面モデルに接地させて転動させるとともに、前記路面モデル又は前記タイヤモデルに、前記路面と平行かつ前記タイヤモデルの進行方向と直交する向きの横力を与える工程を含むことを特徴とする。
本発明に係る前記タイヤのシミュレーション方法において、前記シミュレーション工程は、前記路面モデルを前記タイヤモデルの進行方向に移動させながら前記路面モデルに前記横力を与えるのが望ましい。
本発明に係る前記タイヤのシミュレーション方法において、前記路面モデル又は前記タイヤモデルは、前記路面モデル又は前記タイヤモデルの前記横力に沿った向きの自由度が拘束されて設定され、前記シミュレーション工程では、前記路面モデル又は前記タイヤモデルに前記横力を与える前に、前記自由度を解放する工程を含むのが望ましい。
本発明に係る前記タイヤのシミュレーション方法において、前記シミュレーション工程は、前記路面モデル又は前記タイヤモデルの前記横力に沿った横移動速度が安定するまで行われるのが望ましい。
本発明に係る前記タイヤのシミュレーション方法において、前記路面モデルに対する前記タイヤモデルのスリップ角を算出する工程をさらに含むのが望ましい。
本発明に係る前記タイヤのシミュレーション方法において、前記シミュレーション工程で再現された旋回走行に基づいて、旋回時のタイヤの摩耗に関する物理量を予測する工程をさらに含むのが望ましい。
本発明のタイヤのシミュレーション方法は、タイヤの旋回走行状態を、コンピュータを用いて再現するにあたり、タイヤモデルを路面モデルに接地させて転動させるとともに、路面モデル又はタイヤモデルに、路面と平行かつタイヤモデルの進行方向と直交する向きの横力を与えているため、実車の旋回状態を精度よく再現できる。
本実施形態のシミュレーション方法が実施されるコンピュータのブロック図である。 本実施形態のシミュレーション方法で、摩耗量が予測されるタイヤの断面図である。 図2のタイヤのトレッド展開図である。 本実施形態のシミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。 本実施形態のタイヤモデルの断面図である。 図5のトレッド展開図である。 本実施形態のタイヤモデル及び路面モデルの斜視図である。 第1摩耗エネルギー計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 本実施形態の旋回時摩耗エネルギー計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 実施例と比較例の平均摩耗エネルギー指数を示すグラフである。 実車の摩耗量指数を示すグラフである。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態のタイヤのシミュレーション方法(以下、単に「シミュレーション方法」ということがある。)は、タイヤの摩耗に関する物理量を、コンピュータを用いて予測ための方法である。
図1は、本実施形態のシミュレーション方法が実施されるコンピュータ1のブロック図である。本実施形態のコンピュータ1は、入力デバイスとしての入力部11、出力デバイスとしての出力部12、及び、タイヤの物理量等を計算する演算処理装置13を有し、タイヤの摩耗に関する物理量を予測するシミュレーション装置1Aとして構成されている。
入力部11は、例えば、キーボード又はマウス等が用いられる。出力部12は、例えば、ディスプレイ装置又はプリンタ等が用いられる。演算処理装置13は、各種の演算を行う演算部(CPU)13A、データやプログラム等が記憶される記憶部13B、及び、作業用メモリ13Cが含まれている。
記憶部13Bは、例えば、磁気ディスク、光ディスク又はSSD等からなる不揮発性の情報記憶装置である。記憶部13Bには、データ部15及びプログラム部16が設けられている。
データ部15は、評価対象のタイヤや路面に関する情報(例えば、CADデータ等)が記憶される初期データ部15A、タイヤをモデル化したタイヤモデルが入力されるタイヤモデル入力部15B、及び、タイヤが転動する路面をモデル化した路面モデルが入力される路面モデル入力部15Cが含まれている。さらに、データ部15には、シミュレーションの境界条件が入力される境界条件入力部15D、及び、演算部13Aが計算した物理量が入力される物理量入力部15Eが含まれている。
プログラム部16は、演算部13Aによって実行されるプログラムである。プログラム部16には、タイヤモデルを設定するタイヤモデル設定部16A、路面モデルを設定する路面モデル設定部16B、タイヤモデルの内圧充填後の形状を計算する内圧充填計算部16C、及び、内圧充填後のタイヤモデルに荷重を定義する荷重負荷計算部16Dが含まれている。さらに、プログラム部16は、第1摩耗エネルギー計算部16E、発生頻度計算部16F、第2摩耗エネルギー計算部16G、及び、摩耗量計算部16Hを含んで構成されている。
図2は、本実施形態のシミュレーション方法で、摩耗に関する物理量が予測されるタイヤの断面図である。図3は、図2のタイヤのトレッド展開図である。本実施形態のタイヤ2は、トレッド部2aからサイドウォール部2bを経てビード部2cのビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2aの内部に配されるベルト層7とを具えている。
トレッド部2aには、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝9が設けられる。これにより、トレッド部2aは、周方向溝9で区分された複数の縦陸部10が設けられる。
本実施形態の周方向溝9は、タイヤ赤道Cのタイヤ軸方向の両外側に配置される一対のセンター周方向溝9a、9b、及び、センター周方向溝9a、9bとトレッド接地端2tとの間に配置される一対のショルダー周方向溝9c、9dを含んでいる。一対のセンター周方向溝9a、9bは、タイヤ赤道Cに対して、タイヤ軸方向の一方側D1に配置される第1センター周方向溝9aと、タイヤ軸方向の他方側D2に配置される第2センター周方向溝9bとに区別される。一対のショルダー周方向溝9c、9dは、タイヤ赤道Cに対して、タイヤ軸方向の一方側D1に配置される第1ショルダー周方向溝9cと、タイヤ軸方向の他方側D2に配置される第2ショルダー周方向溝9dとに区別される。
縦陸部10は、一対のセンター周方向溝9a、9b間で区分されるセンター縦陸部10a、センター周方向溝9a、9bと、ショルダー周方向溝9c、9dとで区分される一対のミドル縦陸部10b、10c、及び、ショルダー周方向溝9c、9dと、トレッド接地端2tとで区分される一対のショルダー縦陸部10d、10eを含んでいる。また、各縦陸部10a〜10eには、周方向溝9a〜9d又はトレッド接地端2tと交わる横溝20等が設けられている。
一対のミドル縦陸部10b、10cは、タイヤ赤道Cに対して、タイヤ軸方向の一方側D1に配置される第1ミドル縦陸部10bと、タイヤ軸方向の他方側D2に配置される第2ミドル縦陸部10cとに区別される。一対のショルダー縦陸部は、タイヤ赤道Cに対して、タイヤ軸方向の一方側D1に配置される第1ショルダー縦陸部10dと、タイヤ軸方向の他方側D2に配置される第2ショルダー縦陸部10eとに区別される。
本明細書において、「トレッド接地端2t」とは、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した状態のタイヤ2に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度にて平坦面に接地させたときのトレッド接地面のタイヤ軸方向の最外端とする。
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" とする。
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
図2に示されるように、カーカス6は、少なくとも1枚以上、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aで構成される。このカーカスプライ6Aは、トレッド部2aからサイドウォール部2bを経てビード部2cのビードコア5に至る本体部6aと、この本体部6aに連なりビードコア5の廻りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを含んでいる。本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびるビードエーペックスゴム8が配される。また、カーカスプライ6Aは、タイヤ赤道Cに対して、例えば75度〜90度の角度で配列されたカーカスコードを有する。
ベルト層7は、ベルトコードを、タイヤ周方向に対して例えば10度〜35度の角度で傾けて配列した内、外2枚のベルトプライ7A、7Bを含んで構成されている。これらのベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードが互いに交差する向きに重ね合わせて構成される。
図4は、本実施形態のシミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態のシミュレーション方法では、先ず、コンピュータ1に、図2及び図3に示したタイヤ2をモデル化したタイヤモデルが設定される(工程S1)。
工程S1では、先ず、図1に示されるように、初期データ部15Aに記憶されているタイヤ2(図2に示す)に関する情報(例えば、タイヤ2の輪郭データ等)が、作業用メモリ13Cに入力される。さらに、タイヤモデル設定部16Aが、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、タイヤモデル設定部16Aが、演算部13Aによって実行される。図5は、本実施形態のタイヤモデルの断面図である。図6は、図5のトレッド展開図である。なお、図6では、溝のメッシュを省略して表示している。
工程S1では、タイヤ2(図2に示す)に関する情報に基づいて、数値解析法により取り扱い可能な有限個の要素F(i)(i=1、2、…)で離散化している。これにより、タイヤ2がモデル化されたタイヤモデル21が設定される。タイヤモデル21は、タイヤモデル入力部15B(図1に示す)に記憶される。なお、数値解析法としては、例えば有限要素法、有限体積法、差分法又は境界要素法が適宜採用できるが、本実施形態では有限要素法が採用される。
要素F(i)としては、例えば、4面体ソリッド要素、5面体ソリッド要素、又は6面体ソリッド要素などが用いられるのが望ましい。各要素F(i)には、複数個の節点25が設けられる。このような各要素F(i)には、要素番号、節点25の番号、節点25の座標値及び材料特性(例えば密度、ヤング率及び/又は減衰係数等)などの数値データが定義される。
タイヤモデル21のトレッド部21aには、図2及び図3に示した周方向溝9が再現された周方向溝モデル22と、縦陸部10が再現された縦陸部モデル23とが設定されている。周方向溝モデル22は、第1センター周方向溝9aが再現された第1センター周方向溝モデル22a、及び、第2センター周方向溝9bが再現された第2センター周方向溝モデル22bが含まれている。さらに、周方向溝モデル22は、第1ショルダー周方向溝9cが再現された第1ショルダー周方向溝モデル22c、及び、第2ショルダー周方向溝9dが再現された第2ショルダー周方向溝モデル22dが含まれている。
縦陸部モデル23は、センター縦陸部10aが再現されたセンター縦陸部モデル23a、第1ミドル縦陸部10bが再現された第1ミドル縦陸部モデル23b、及び、第2ミドル縦陸部10cが再現された第2ミドル縦陸部モデル23cが含まれている。さらに、縦陸部モデル23は、第1ショルダー縦陸部10dが再現された第1ショルダー縦陸部モデル23d、及び、第2ショルダー縦陸部10eが再現された第2ショルダー縦陸部モデル23eが含まれている。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1に、路面をモデル化した路面モデルが設定される(工程S2)。工程S2では、先ず、図1に示した初期データ部15Aに記憶されている路面に関する情報が、作業用メモリ13Cに入力される。さらに、路面モデル設定部16Bが、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、路面モデル設定部16Bが、演算部13Aによって実行される。
図7は、本実施形態のタイヤモデル21及び路面モデル24の斜視図である。なお、図7では、タイヤモデル21のメッシュを省略して表示している。工程S2では、路面に関する情報に基づいて、数値解析法(本実施形態では、有限要素法)により取り扱い可能な有限個の要素G(i)(i=1、2、…)で離散化する。これにより、工程S2では、路面モデル24が設定される。設定された路面モデル24は、路面モデル入力部15C(図1に示す)に記憶される。
要素G(i)は、変形不能に設定された剛平面要素からなる。この要素G(i)には、複数の節点28が設けられる。さらに、要素G(i)は、要素番号や、節点28の座標値等の数値データが定義される。
本実施形態では、路面モデル24として、平滑な表面を有するものが例示されたが、必要に応じて、アスファルト路面のような微小凹凸、不規則な段差、窪み、うねり、又は、轍等の実走行路面に近似した凹凸などが設けられても良い。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、タイヤモデル21を走行(転動)させて、各縦陸部モデル23a〜23eの第1平均摩耗エネルギーを計算する(第1摩耗エネルギー計算工程S3)。本実施形態の工程S3は、自由転動、制動、駆動、及び旋回の各転動条件でタイヤモデルを走行(転動)させて、各縦陸部モデル23a〜23eの平均摩耗エネルギー(第1平均摩耗エネルギー)が、転動条件毎に計算される。図8は、第1摩耗エネルギー計算工程S3の処理手順の一例を示すフローチャートである。
第1摩耗エネルギー計算工程S3は、先ず、タイヤモデル21及び路面モデル24に境界条件が定義される(工程S31)。境界条件としては、例えば、タイヤモデル21の内圧条件、負荷荷重条件VF、キャンバー角、及び、タイヤモデル21と路面モデル24との摩擦係数等が設定される。さらに、境界条件としては、走行速度Vに対応する角速度V1、並進速度V2、及び、横力SFが設定される。なお、並進速度V2は、タイヤモデル21の接地面での速度である。また、横力SFは、路面と平行かつタイヤモデル21の進行方向と直交する向きの力であり、負荷荷重条件VFに横加速度を乗じた力として決定される。ここで、路面モデル24の横力SFに沿った向きの自由度は、拘束されて設定されていてもよい。
角速度V1は、自由転動時の角速度V1a、制動時の角速度V1b、駆動時の角速度V1c、及び、旋回時の角速度V1dが含まれる。同様に、並進速度V2は、自由転動時の並進速度V2a、制動時の並進速度V2b、駆動時の並進速度V2c、及び、旋回時の並進速度V2dが含まれる。これらの条件は、境界条件入力部15D(図1に示す)に記憶される。
次に、第1摩耗エネルギー計算工程S3は、タイヤモデル21(図5に示す)の内圧充填後の形状が計算される(工程S32)。工程S32では、図1に示されるように、タイヤモデル入力部15Bに記憶されているタイヤモデル21、及び、境界条件入力部15Dに記憶されている内圧条件が作業用メモリ13Cに読み込まれる。さらに、内圧充填計算部16Cが、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、内圧充填計算部16Cが、演算部13Aによって実行される。
工程S32では、先ず、図5に示されるように、タイヤ2のリム26(図2に示す)がモデル化されたリムモデル27によって、タイヤモデル21のビード部21c、21cが拘束される。さらに、タイヤモデル21は、内圧条件に相当する等分布荷重wに基づいて変形計算される。これにより、工程S32では、内圧充填後のタイヤモデル21が計算される。内圧は、例えば、タイヤ2(図2に示す)が基づいている規格を含む規格体系において、各規格が定めている空気圧が設定されるのが望ましい。
タイヤモデル21の変形計算は、各要素F(i)の形状及び材料特性などをもとに、各要素F(i)の質量マトリックス、剛性マトリックス、及び、減衰マトリックスがそれぞれ作成される。さらに、これらの各マトリックスが組み合わされて、全体の系のマトリックスが作成される。そして、コンピュータ1が、前記各種の条件を当てはめて運動方程式を作成し、これらを微小時間(単位時間T(x)(x=0、1、…))ごとにタイヤモデル21の変形計算を行う。このようなタイヤモデル21の変形計算(後述する転動計算を含む)は、例えば、LSTC社製の LS-DYNA などの市販の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算できる。なお、単位時間T(x)については、求められるシミュレーション精度によって、適宜設定することができる。
次に、第1摩耗エネルギー計算工程S3では、荷重が定義されたタイヤモデル21が計算される(工程S33)。工程S33では、図1に示されるように、境界条件入力部15Dに記憶されている負荷荷重条件VF、キャンバー角及び摩擦係数が、作業用メモリ13Cに読み込まれる。さらに、工程S33では、荷重負荷計算部16Dが、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、荷重負荷計算部16Dが、演算部13Aによって実行される。
工程S33では、図7に示されるように、内圧充填後のタイヤモデル21と、路面モデル24との接触が計算される。次に、工程S33では、負荷荷重条件VF、キャンバー角(図示省略)及び摩擦係数に基づいて、タイヤモデル21の変形が計算される。これにより、工程S33では、路面モデル24に接地したタイヤモデル21が計算される。なお、本実施形態の「接触」は、タイヤモデル21に負荷荷重条件VFとして、例えば4410Nが作用する状態とされている。
次に、本実施形態の第1摩耗エネルギー計算工程S3では、自由転動時の各縦陸部モデル23a〜23eの第1平均摩耗エネルギーが計算される(工程S34)。工程S34では、先ず、境界条件入力部15Dに記憶されている自由転動時の角速度V1a及び並進速度V2aが、作業用メモリ13Cに読み込まれる。さらに、工程S34では、タイヤモデル21の第1摩耗エネルギーを計算する第1摩耗エネルギー計算部34が、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、第1摩耗エネルギー計算部34が、演算部13Aによって実行される。
図7に示されるように、工程S34では、先ず、自由転動時の角速度V1aがタイヤモデル21に設定される。また、路面モデル24には、並進速度V2aが設定される。これにより、路面モデル24の上を自由転動しているタイヤモデル21を計算することができる。図6に示されるように、各縦陸部モデル23a〜23eを構成する各節点25が路面モデル24(図7に示す)に接地している間、各節点25において、せん断力及びすべり量が計算される。せん断力Pには、タイヤ軸方向xのせん断力Px及びタイヤ周方向yのせん断力Pyが含まれる。また、すべり量Qには、前記せん断力Px、Pyに対応する、タイヤ軸方向xのすべり量Qx及びタイヤ周方向yのすべり量Qyが含まれる。
自由転動計算は、転動開始から、予め定められた転動終了まで、シミュレーションの単位時間T(x)毎に計算される。これにより、工程S34では、各節点25のせん断力Px、Py及びすべり量Qx、Qyが、転動開始から転動終了まで単位時間T(x)刻みで複数回計算される。
工程S34では、各縦陸部モデル23a〜23eにおいて、各節点25のせん断力Px(i)、Py(i)と、該せん断力Px(i)、Py(i)に対応するすべり量Qx(i)、Qy(i)とを乗じた値は、各節点25の該当面積で除され、各節点25の単位面積当たりの摩耗エネルギーが算出される。各節点25の単位面積当たりの摩耗エネルギーは、各縦陸部モデル23a〜23eの接地入りから接地端までの要素F(i)を対象に積算され、各節点25の積算摩耗エネルギーが算出される。そして、各節点25の積算摩耗エネルギーが、縦陸部モデル23a〜23e毎に平均化されることにより、自由転動時の第1平均摩耗エネルギーが、縦陸部モデル23a〜23e毎に計算される。自由転動時の各縦陸部モデル23a〜23eの第1平均摩耗エネルギーは、物理量入力部15Eに記憶される。
次に、本実施形態の第1摩耗エネルギー計算工程S3では、制動時の各縦陸部モデル23a〜23eの第1平均摩耗エネルギーが計算される(工程S35)。工程S35では、図1に示されるように、境界条件入力部15Dに記憶されている自由転動時の角速度V1a、並進速度V2a、制動時の角速度V1b、並進速度V2b及び第1摩耗エネルギー計算部34が、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、第1摩耗エネルギー計算部34が、演算部13Aによって実行される。
工程S35では、図7に示されるように、自由転動時の角速度V1aがタイヤモデル21に設定され、かつ、並進速度V2aが路面モデル24に設定される。これにより、路面モデル24上を自由転動しているタイヤモデル21を計算することができる。次に、制動時の角速度V1bがタイヤモデル21に設定される。さらに、並進速度V2bが路面モデル24に設定される。これにより、自由転動している状態から制動したタイヤモデル21を計算することができる。工程S35では、節点25のせん断力Px、Py及びすべり量Qx、Qyが、制動開始から制動終了まで間、単位時間刻みで複数回計算される。
工程S35では、工程S34と同様の計算方法により、制動時の第1平均摩耗エネルギーが、縦陸部モデル23a〜23e毎に計算される。制動時の各縦陸部モデル23a〜23eの第1平均摩耗エネルギーは、物理量入力部15Eに記憶される。
次に、本実施形態の第1摩耗エネルギー計算工程S3では、駆動時の各縦陸部モデル23a〜23eの第1平均摩耗エネルギーが計算される(工程S36)。工程S36では、図1に示されるように、境界条件入力部15Dに記憶されている自由転動時の角速度V1a、並進速度V2a、駆動時の角速度V1c、並進速度V2c及び第1摩耗エネルギー計算部16Eが、作業用メモリ13Cに読み込まれる。そして、第1摩耗エネルギー計算部16Eが、演算部13Aによって実行される。
工程S36では、図7に示されるように、自由転動時の角速度V1aがタイヤモデル21に設定され、かつ、並進速度V2aが路面モデル24に設定される。これにより、路面モデル24上を自由転動しているタイヤモデル21を計算することができる。次に、駆動時の角速度V1cがタイヤモデル21に設定される。さらに、駆動時の並進速度V2cが路面モデル24に設定される。これにより、自由転動している状態から駆動したタイヤモデルを計算することができる。工程S36では、節点25のせん断力Px、Py及びすべり量Qx、Qyが、駆動開始から駆動終了まで間、単位時間刻みで複数回計算される。
工程S36では、工程S34と同様の計算方法により、駆動時の第1平均摩耗エネルギーが、縦陸部モデル23a〜23e毎に計算される。駆動時の各縦陸部モデル23a〜23eの第1平均摩耗エネルギーは、物理量入力部15Eに記憶される。
次に、本実施形態の第1摩耗エネルギー計算工程S3では、本実施形態の特徴でもある旋回時の各縦陸部モデル23a〜23eの第1平均摩耗エネルギーが計算される(旋回時摩耗エネルギー計算工程S37)。図9は、旋回時摩耗エネルギー計算工程S37の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、本実施形態の「旋回」は、車両に横加速度として、例えば0.2Gが作用する状態とされている。
旋回時摩耗エネルギー計算工程S37では、先ず、図1に示されるように、境界条件入力部15Dに記憶されている自由転動時の角速度V1a、並進速度V2a、旋回時の角速度V1d、並進速度V2d、横力SF及び第1摩耗エネルギー計算部16Eが、作業用メモリ13Cに読み込まれる(工程S371)。そして、第1摩耗エネルギー計算部16Eが、演算部13Aによって実行される。
次に、図7に示されるように、自由転動時の角速度V1aがタイヤモデル21に設定され、かつ、並進速度V2aが路面モデル24に設定される(工程S372)。その後、タイヤモデル21を、路面モデル24上で走行(転動)させる(工程S373)。これらの工程では、路面モデル24上を自由転動しているタイヤモデル21を計算することができる。
次に、旋回時の走行速度Vに対応する角速度V1dがタイヤモデル21に設定され、かつ、旋回時の並進速度V2d及び横力SFが路面モデル24に設定される(工程S374)。路面モデル24の横力SFに沿った向きの自由度が拘束されている場合は、この時までに、当該自由度が解放される。なお、本実施形態の横力SFは、タイヤモデル21に負荷される負荷荷重条件VF(4410N)に横加速度(0.2G)を乗じた力であり、例えば、882Nが作用するものとして設定される。
旋回時摩耗エネルギー計算工程S37は、次に、路面モデル24の横移動速度が安定するまで、計算が繰り返される(工程S375)。これにより、自由転動している状態から旋回したタイヤモデルを計算することができる。旋回時摩耗エネルギー計算工程S37では、節点25で計算されたせん断力Px、Py及びすべり量Qx、Qyが、旋回開始から旋回終了まで間、単位時間刻みで複数回計算される(工程S376)。
旋回時摩耗エネルギー計算工程S37では、工程S34と同様の計算方法により、旋回時の第1平均摩耗エネルギーが、縦陸部モデル23a〜23e毎に計算される(工程S377)。旋回時の各縦陸部モデル23a〜23eの第1平均摩耗エネルギーは、物理量入力部15Eに記憶される。
このように、各転動条件(自由転動、制動、駆動及び旋回)の摩耗エネルギーは、各縦陸部モデル23a〜23eの全要素F(i)の各節点25で計算されたせん断力Px(i)、Py(i)、及び、すべり量Qx(i)、Qy(i)に基づいて求められるため、タイヤ周方向に連続して摩耗する実際のタイヤの摩耗エネルギーに近似させることができる。このため、後述する摩耗量計算工程S6において、タイヤ周方向に連続して摩耗する実際のタイヤ2の摩耗量を、正確に予測するのに役立つ。さらに、タイヤモデル21と路面モデル24との間には、実際のタイヤ2と路面との摩擦係数等が設定されているため、摩耗エネルギーを、精度よく計算することができる。
上述したように、本実施形態の旋回時の第1平均摩耗エネルギーは、横力SFに基づいて計算される。従って、本実施形態のシミュレーション方法では、例えば、スリップ角に基づいて、旋回走行状態が再現される従来の方法に比べて、旋回走行状態がより正確に再現される。その結果、予測される摩耗エネルギー指数は、タイヤの実車摩耗指数に精度よく近似させることができる。また、本実施形態のシミュレーション方法では、路面モデル24に横力SFを直接与えているため、予備実験又は解析等が不要である。
さらに、本実施形態のシミュレーション方法では、例えば、安定した横移動速度と旋回時の並進速度V2dとから、路面モデル24に対するタイヤモデル21のスリップ角を算出することも可能である。この算出されたスリップ角を用いて、例えば、スリップ角が一定という条件での旋回走行状態も、より正確に再現することができる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、予め提供された車両の走行履歴について、各転動条件の発生頻度を取得する(工程S4)。工程S4では、発生頻度計算部16Fが、演算部13Aによって実行される。次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、第1平均摩耗エネルギーと各転動条件の発生頻度とに基づいて、走行履歴でタイヤ2が走行したときの各縦陸部10a〜10e(図3に示す)の第2平均摩耗エネルギーを計算する(工程S5)。工程S5では、第2摩耗エネルギー計算部16Gが、演算部13Aによって実行される。さらに、コンピュータ1が、各縦陸部10a〜10eの第2平均摩耗エネルギーに基づいて、各縦陸部10a〜10eの予測摩耗量を計算する(工程S6)。工程S6では、摩耗量計算部16Hが、演算部13Aによって実行される。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。例えば、旋回時摩耗エネルギー計算工程S37では、横力SFは、路面モデル24に設定されているが、タイヤモデル21に設定されてもよい。また、横力SFは、主として路面モデル24に設定されつつ、タイヤモデル21に補助的に設定されてもよい。さらに、例えば、第1摩耗エネルギー計算工程S3等では、摩耗に関する物理量の計算単位は、縦陸部モデル23a〜23eであるが、計算単位は任意に設定されてもよい。
図4、図8及び図9に示す処理手順に従って、タイヤの各縦陸部の摩耗に関する物理量が予測された(実施例)。実施例では、横力に基づいて、旋回走行状態のタイヤモデルが再現された。実施例では、トレッド面の弾性率が4.79MPaのタイヤと9.58MPaのタイヤの平均摩耗エネルギーが予測された。実施例のトレッド面の弾性率が4.79MPaのタイヤを1とする平均摩耗エネルギー指数を示すグラフが、図10に示されている。
比較のために、上記特許文献1に記載された方法に従って、タイヤの摩耗エネルギーが求められた(比較例)。比較例では、スリップ角に基づいて、旋回走行状態のタイヤモデルが再現された。比較例では、トレッド面の弾性率が4.79MPaのタイヤと9.58MPaのタイヤの平均摩耗エネルギーが予測された。比較例のトレッド面の弾性率が4.79MPaのタイヤを1とする平均摩耗エネルギー指数を示すグラフが、図10に示されている。共通仕様は、次のとおりである。
タイヤサイズ:195/65 R15
リムサイズ:15×6.0
荷重:4410N
内圧:230kPa
テストの結果、実施例では、トレッド面の弾性率が4.79MPaのタイヤに対し、トレッド面の弾性率が9.58MPaのタイヤの平均摩耗エネルギー指数が下がることが確認された。一方、比較例では、トレッド面の弾性率が4.79MPaのタイヤに対し、トレッド面の弾性率が9.58MPaのタイヤの平均摩耗エネルギー指数が上がることが確認された。
図11は、実車の摩耗量指数を示すグラフである。図11は、実車のトレッド面の弾性率が4.79MPaのタイヤを1とする摩耗量指数が示される。実車では、トレッド面の弾性率が4.79MPaのタイヤに対し、トレッド面の弾性率が5.69MPaのタイヤの摩耗量指数が下がることが理解できる。実施例は、トレッド面の弾性率と摩耗指数との関係が、実車のトレッド面の弾性率と摩耗指数との関係と同じ傾向にある。従って、実施例は、実車のタイヤの旋回走行状態をより正確に再現できるものであり、その結果、予測される摩耗エネルギー指数が、タイヤの実車摩耗指数に精度よく近似させることができた。
2 タイヤ
21 タイヤモデル
24 路面モデル

Claims (5)

  1. タイヤの旋回状態を、コンピュータを用いて再現するための方法であって、
    前記コンピュータにタイヤモデルを設定する工程と、
    前記コンピュータに前記タイヤモデルが走行する路面を有する路面モデルを設定する工程と、
    前記タイヤモデルを前記路面モデル上で旋回走行させるシミュレーション工程とを含み、
    前記シミュレーション工程は、前記タイヤモデルを前記路面モデルに接地させて転動させるとともに、前記路面モデル又は前記タイヤモデルに、前記路面と平行かつ前記タイヤモデルの進行方向と直交する向きの横力を与える工程を含み、
    前記横力は、負荷荷重条件に横加速度を乗じた力として決定されることを特徴とするタイヤのシミュレーション方法。
  2. 前記シミュレーション工程は、前記路面モデルを前記タイヤモデルの進行方向に移動させながら前記路面モデルに前記横力を与える請求項1記載のタイヤのシミュレーション方法。
  3. 前記シミュレーション工程は、前記路面モデル又は前記タイヤモデルの前記横力に沿った横移動速度が安定するまで行われる請求項1又は2に記載のタイヤのシミュレーション方法。
  4. 前記路面モデルに対する前記タイヤモデルのスリップ角を算出する工程をさらに含む請求項記載のタイヤのシミュレーション方法。
  5. 前記シミュレーション工程で再現された旋回走行に基づいて、旋回時のタイヤの摩耗に関する物理量を予測する工程をさらに含む請求項1乃至のいずれかに記載のタイヤのシミュレーション方法。
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