JP6451305B2 - 積層断熱シート - Google Patents
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ランダムプロピレン系樹脂(C)を主成分とする無多孔層(I)、並びに、ホモプロピレン系樹脂及びビニル芳香族エラストマー(B)からなる樹脂組成物を主成分としてなる多孔層(II)とが、(I)/(II)/(I)の順に並んだ少なくとも3層より構成され、透気性を有していないことを特徴とする積層断熱延伸シート。
[2]
前記ビニル芳香族エラストマー(B)の温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1g/10分以下である[1]に記載の積層断熱延伸シート。
[3]
前記多孔層(II)に含まれるホモポリプロピレン系樹脂が55〜85重量%、ビニル芳香族エラストマー(B)が15〜45重量%の割合で含有する樹脂組成物を含む[1]または[2]記載の積層断熱延伸シート。
[4]
前記ビニル芳香族エラストマー(B)が、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)からなる群の中から1種類以上含有する[1]〜[3]のいずれか1項に記載の積層断熱延伸シート。
[5]
前記積層断熱シートにおいて、熱伝導率S(W/mK)、及び比重D(g/cm 3 )が、以下に示す(1)式を満たすことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の積層断熱延伸シート。
S/D≦0.12 ・・・式(1)
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(A)としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1―ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。
一方、MFRが15g/10分以下とすることで、強度を十分に有することができる。なお、MFRはJIS K7210に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定している。
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂(A)に対し、ビニル芳香族エラストマー(B)を添加することが重要である。ビニル芳香族エラストマー(B)を添加することにより、効率的に微細で均一性の高い多孔構造を有する多孔層(II)が得られ、空孔の形状や孔径を制御し易くなる。
前記樹脂組成物におけるポリプロピレン系樹脂(A)が85重量%以下、すなわち、ビニル芳香族エラストマー(B)が15重量%以上であることによって、延伸による多孔化が生じやすくなり、十分な空気層を確保することで、断熱性の向上が期待できる。一方、前記樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂(A)が55重量%以上、すなわち、ビニル芳香族エラストマー(B)が45重量%以下であることによって、前記ポリプロピレン系樹脂組成物中のビニル芳香族エラストマー(B)同士が凝集を生じやすくなり、延伸による多孔化が生じ難くなる。
また、効率的に樹脂組成物中にビニル芳香族エラストマー(B)を分散させるためには、前記ビニル芳香族エラストマー(B)の中でも、ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶性が高い、エチレン成分、ブチレン成分が含有されているものが好ましく、中でも、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)がより好ましい。
本発明の無多孔層(I)に使用される樹脂としては、多孔層(II)と接着性を有する樹脂であれば特に限定されないが、ポリエチレン系樹脂、又は、ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
一方、MFRが15g/10分以下とすることで、強度を十分に有することができる。なお、MFRはJIS K7210に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定している。
本発明の樹脂組成物には、その性質を損なわない程度に添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤などの各種添加剤を適宜配合してもよい。またその性質を損なわない程度に他の樹脂組成物を含んでも良い。さらに、本発明の樹脂組成物には、本発明を損なわない範囲で必要に応じてコロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工、更にはミシン目加工などを施すことができ、用途に応じて本発明の積層断熱シートを数枚重ねて使用することも可能である。
本発明の積層断熱シートは、無多孔層(I)、並びに、前記ポリプロピレン系樹脂(A)及び前記ビニル芳香族エラストマー(B)からなる樹脂組成物を主成分としてなる多孔層(II)とが、(I)/(II)/(I)の順に並んだ少なくとも3層より構成される積層断熱シートであり、無多孔層(I)はポリプロピレン系樹脂(C)を主成分としてなることが好ましい。
以下、積層断熱シートについて記載する。
本発明の積層断熱シートの厚みは、特に制限されるものではないが、100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましい。一方、上限は3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。厚みが100μm以上であれば、多孔層に充分な空気層を有し、断熱性を確保できる。また、厚みが3mm以下であれば、設置場所が狭い限られたスペースに使用する用途に対しても使用が容易である。
本発明の積層断熱シートは、透気性を有していないことが重要である。ここで透気性を有していないとは、JIS P8117に準拠した透気度測定(測定機器:デジタル型王研式透気度専用機(旭精工社製))において、その測定限界である99999秒/dLを確認できた場合である。透気性を有していないシートとすることで、多孔層に含まれる空気層の対流を防ぎ、優れた断熱性を有することができる。また、液体や粒子等の多孔層内への侵入を防ぎ、劣化や細菌の繁殖を防ぐことが可能となる。
空孔率は多孔構造を規定する為の重要な要素であり、本発明の積層断熱シートにおける多孔層の空間部分の割合を示す数値である。一般に空孔率が高いほど、優れた断熱性を有することが知られており、本発明の積層断熱シートにおいては、空孔率が50%以上であることが好ましく、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上である。空孔率が50%以上であれば、優れた断熱性を有する積層断熱シートとすることができる。
熱伝導率は断熱材を規定する為の重要な要素であり、本発明の積層断熱シートにおける断熱性能の指標の一つである。積層断熱シートの熱伝導率S(W/mK)、及び比重D(g/cm3)より算出された値が、以下に示す(1)式を満たすことが好ましい。
S/D≦0.12 ・・・式(1)
本発明では、まずポリプロピレン系樹脂の融点以上、分解温度未満の温度条件下で押出機等を用いて溶融・成形することによって、積層無孔膜状物を得る。積層無孔膜状物の成形方法として、より具体的にはTダイ成形が挙げられる。
(ポリプロピレン系樹脂(C))
・C−1;ランダムポリプロピレン(プライムポリプロJ232WA、MFR:1.5g/10分、プライムポリマー社製)
・C−2;ランダムポリプロピレン(プライムTPOF3910、MFR:4.5g/10分、プライムポリマー社製)
・C−3;ポリプロピレン(ノバテックFY6H、MFR:1.9g/10分、日本ポリプロ社製)
(ポリプロピレン系樹脂(A))
・A−1;ポリプロピレン(ノバテックFY6H、MFR:1.9g/10分、日本ポリプロ社製)
(ビニル芳香族エラストマー(B))
・B−1;スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(グレード名;SEPTON1001、MFR:0.1g/10分、クラレ社製)
・B−2;スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(グレード名:SEPTON2005、MFR:<0.1g/10分、クラレ社製)
・B−3;スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(グレード名:SEPTON2007、MFR:2.7g/10分、クラレ社製)
ポリプロピレン系樹脂(A−1)70重量%、ビニル芳香族エラストマー(B−1)30重量%を混合して、二軸押出機にて240℃で溶融押出した。リップ開度1mmのTダイで表裏層側押出機にポリプロピレン系樹脂(C−1)、中層側押出機にポリプロピレン系樹脂(A−1)とビニル芳香族エラストマー(B−1)の混合物を用いて成形を行い、キャストロールに導かれて、(表層)/(中層)/(裏層)=1/6/1である積層無孔膜状物を得た。その後、積層無孔膜状物は縦延伸機を用いて、20℃に設定したロールと40℃に設定したロール間において、ドロー比100%(縦延伸倍率2.0倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール間において、ドロー比50%(縦延伸倍率1.5倍)を掛けて高温延伸を行った。縦延伸後のフィルムは、フィルムテンター設備(京都機械社製)にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃で横方向に3.0倍延伸した後、145℃で熱処理を行い、積層断熱シートを得た。得られた積層断熱シートの評価結果を表1に纏める。
ポリプロピレン系樹脂(A−1)70重量%、ビニル芳香族エラストマー(B−2)30重量%を混合して、二軸押出機にて240℃で溶融押出した。リップ開度1mmのTダイで表裏層側押出機にポリプロピレン系樹脂(C−1)、中層側押出機にポリプロピレン系樹脂(A−1)とスチレン系エラストマー(B−2)の混合物を用いて成形を行い、キャストロールに導かれて、(表層)/(中層)/(裏層)=1/8/1である積層無孔膜状物を得た。その後、実施例1と同様の方法で縦延伸、横延伸を行い、積層断熱シートを得た。得られた積層断熱シートの評価結果を表1に纏める。
リップ開度1mmのTダイで表裏層側押出機にポリプロピレン系樹脂(C−2)、中層側押出機にポリプロピレン系樹脂(A−1)とビニル芳香族エラストマー(B−1)の混合物を用いて成形を行い、キャストロールに導かれて、(表層)/(中層)/(裏層)=1/4/1である積層無孔膜状物を得た。その後、実施例1と同様の方法で縦延伸を行い、縦延伸後のフィルムは、フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃で横方向に2.0倍延伸した後、145℃で熱処理を行い、積層断熱シートを得た。得られた積層断熱シートの評価結果を表1に纏める。
リップ開度1mmのTダイでポリプロピレン系樹脂(A−1)とビニル芳香族エラストマー(B−1)の混合物を用いて成形を行い、キャストロールに導かれて無孔膜状物を得た。その後、無孔膜状物は縦延伸機を用いて、20℃に設定したロールと40℃に設定したロール間において、ドロー比50%(縦延伸倍率1.5倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール間において、ドロー比100%(縦延伸倍率2.0倍)を掛けて高温延伸を行った。縦延伸後のフィルムは、実施例1と同様の方法で横延伸を行いシートを得た。得られたシートの評価結果を表1に纏める。
リップ開度1mmのTダイで押出機にポリプロピレン系樹脂(C−1)を用いて成形を行い、無孔膜状物を得た。その後、実施例1と同様の方法で縦延伸、横延伸を行い、シートを得た。得られたシートの評価結果を表1に纏める。
リップ開度1mmのTダイで表裏層側押出機にポリプロピレン系樹脂(C−3)、中層側押出機にポリプロピレン系樹脂(A−1)とビニル芳香族エラストマー(B−1)の混合物を用いて成形を行い、キャストロールに導かれて、(表層)/(中層)/(裏層)=1/8/1である積層無孔膜状物を得た。その後、比較例1と同様の方法で縦延伸を行い、縦延伸後のフィルムは、実施例3と同様の方法で横延伸を行い、シートを得た。得られたシートの評価結果を表1に纏める。
ポリプロピレン系樹脂(A−1)70重量%、ビニル芳香族エラストマー(B−3)30重量%を混合して、二軸押出機にて240℃で溶融押出した。リップ開度1mmのTダイで表裏層側押出機にポリプロピレン系樹脂(C−1)、中層側押出機にポリプロピレン系樹脂(A−1)とビニル芳香族エラストマー(B−3)の混合物を用いて成形を行い、キャストロールに導かれて、(表層)/(中層)/(裏層)=1/6/1である積層無孔膜状物を得た。その後、比較例1と同様の方法で縦延伸を行ったが、破断や厚みムラが多く、均質なシートを得るのは難しかった。
1/1000mmのダイアルゲージを用いて無作為に10点測定して、その平均値を厚みとした。
25℃の空気雰囲気下にて、JIS P8117に準拠して透気度を測定した。測定機器として、デジタル型王研式透気度専用機(旭精工社製)を用いた。
測定試料の実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度に基づいて空孔率が0%の場合の質量W0を計算し、これらの値から下記式に基づいて空孔率を算出した。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
測定試料を10mm角に切り出して厚みをマイクロメータで測定した後、グラファイトスプレーにて黒化処理した後、キセノンフラッシュ法(NETZSCH社製、型式:LFA447 nanoflash)を用いて熱拡散率を評価した。この値を寸法、質量から計算した、かさ密度、示差走査型熱量計(Perkin Elmer製DSC Pyris1)で測定した比熱との積から熱伝導率を求めた。
また、実施例1と比較例1の比較において、実施例1は空孔率が低い場合でも比較例1と同程度の熱伝導率を確保していることが示されている。これらの結果より、透気度を有しない無多孔層を有する本発明の態様では、多孔層に含まれる空気の対流を妨げることにより断熱性の効果を与えていると考える。
さらに、比較例2では、多孔層を有しない場合、延伸後も多孔化が生じず、熱伝導率の低下は見られなかった。
また、参考例1では、優れた断熱性を得ることができなかった。これは、ランダムポリプロピレン系樹脂以外を無多孔層に用いた場合、延伸に伴い無多孔層にもボイドが形成され、空気層の対流が生じるためと考える。
さらに、参考例2では、破断や厚みムラが多く均質なシートを得られなかった。これは、MFRの小さいビニル芳香族エラストマー(B)のマトリックス−ドメインの界面部分に応力が集中せず、開孔起点とならないため、延伸時に破断を多く生じてしまったものと考える。
Claims (5)
- ランダムプロピレン系樹脂(C)を主成分とする無多孔層(I)、並びに、ホモプロピレン系樹脂及びビニル芳香族エラストマー(B)からなる樹脂組成物を主成分としてなる多孔層(II)とが、(I)/(II)/(I)の順に並んだ少なくとも3層より構成され、透気性を有していないことを特徴とする積層断熱延伸シート。
- 前記ビニル芳香族エラストマー(B)の温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1g/10分以下である請求項1に記載の積層断熱延伸シート。
- 前記多孔層(II)に含まれるホモポリプロピレン系樹脂が55〜85重量%、ビニル芳香族エラストマー(B)が15〜45重量%の割合で含有する樹脂組成物を含む請求項1または2に記載の積層断熱延伸シート。
- 前記ビニル芳香族エラストマー(B)が、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)からなる群の中から1種類以上含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層断熱延伸シート。
- 前記積層断熱シートにおいて、熱伝導率S(W/mK)、及び比重D(g/cm3)が、以下に示す(1)式を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層断熱延伸シート。
S/D≦0.12 ・・・式(1)
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