次に、本発明の一実施の形態を図1から図5に基づいて説明する。なお、各図において矢印FRは本ウェビング巻取装置10が適用された車両前側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示し、矢印UPは車両上側を示す。
<本実施の形態の構成>
図1に示されるように、ウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は、本ウェビング巻取装置10が適用される車両のリヤシートの車両後側で車体(何れも図示省略)に固定されている。フレーム12は、一対の脚板14、16を備えており、これらの脚板14、16は、車幅方向に互いに対向されている。フレーム12の脚板14と脚板16との間には、スプール18が設けられている。スプール18は、略円筒形状に形成されている。スプール18の中心軸線方向は、車幅方向に沿っており、スプール18は、中心軸線周りに回転可能とされている。スプール18には、長尺帯状のウェビング20の長手方向基端部が係止され、ウェビング20は、スプール18の外周部に巻取られている。
ウェビング20は、スプール18から車両前側へ引出されている。スプール18から引出されたウェビング20は、リヤシートにおける乗員の着座位置の車幅方向外側で、リヤシートのシートバックの車両上側を通ってシートバックに沿って車両下側へ延び、リヤシートのシートバックとシートクッション(何れも図示省略)の間を通っている。リヤシートのシートクッションの車両下側には、アンカプレート(図示省略)が設けられている。アンカプレートは、車両の床部等の車体に固定されており、アンカプレートには、ウェビング20の長手方向先端部が係止されている。
また、本ウェビング巻取装置10が適用された車両用のシートベルト装置は、タングとバックル装置(何れも図示省略)とを備えている。タングは、リヤシートのシートバックの車両前側においてウェビング20に設けられており、タングは、ウェビング20に沿って移動可能とされている。これに対して、バックル装置は、リヤシートの着座位置の車幅方向内側に設けられている。リヤシートに着座した乗員の身体にウェビング20が掛回された状態で、タングがバックル装置に係合されることによって、乗員の身体にウェビング20が装着される。
一方、フレーム12の車幅方向内側には、渦巻きばね等のスプール付勢手段が設けられており、スプール18は、スプール付勢手段に直接又は間接的に連結され、スプール18は、スプール付勢手段によってウェビング20を巻取る際の回転方向である巻取方向(図1等の矢印A方向)へ付勢されている。また、フレーム12の車幅方向内側には、プリテンショナ(図示省略)が設けられている。プリテンショナは、車両衝突時等の車両緊急時に作動され、プリテンショナが作動されることによって、スプール18が巻取方向へ回転され、これによって、ウェビング20が、その長手方向基端側からスプール18に巻取られる。
また、図1及び図2に示されるように、スプール18の内側には、回転力吸収部材としてのトーションバー22が設けられている。トーションバー22は、回転力吸収部としての軸部24を備えている。軸部24は、車幅方向に長い棒状とされており、図2に示されるように、軸部24の車幅方向内側端部にはスプール側連結部26が形成されている。スプール側連結部26は、スプール18の内側でスプール18に対する相対回転が阻止された状態でスプール18に連結されている。
一方、図1及び図2に示されるように、スプール18の車幅方向外側には、ロック手段としてのロック機構28を構成するロック回転体としてのロックベース30が設けられている。図2に示されるように、ロックベース30に対応してトーションバー22の軸部24の車幅方向外側端部には、ロックベース側連結部32が形成されている。ロックベース側連結部32は、ロックベース30に対する相対回転が阻止された状態でロックベース30に連結されている。
また、ロックベース30は、図1に示されるフレーム12の脚板16に形成されたラチェット孔34の内側に配置されている。さらに、図1及び図2に示されるように、ロックベース30には、ロック部材としてのロックパウル36が設けられている。ロックパウル36には、フレーム12の脚板16のラチェット孔34のラチェット歯に噛合可能なラチェット歯が形成されており、ロックパウル36がラチェット孔34のラチェット歯へ接近移動されると、ロックパウル36のラチェット歯がラチェット孔34のラチェット歯に噛合う。これによって、ロックベース30の巻取方向とは反対の引出方向(図1等の矢印B方向)への回転が阻止される。
図2に示されるように、ロックベース30の車幅方向外側には、センサ機構38を構成する追従回転体としてのVギヤ40が設けられている。Vギヤ40は、ロックベース30に追従して回転可能であり、更に、Vギヤ40の引出方向への回転が阻止された状態で、ロックベース30は、Vギヤ40に対して引出方向へ回転可能とされている。ロックベース30のロックパウル36は、Vギヤ40に係合されており、ロックパウル36は、ロックベース30のVギヤ40に対する引出方向へ相対回転に連動して、フレーム12の脚板16のラチェット孔34のラチェット歯へ接近移動される。
また、センサ機構38は、車両衝突時等の車両緊急時における車両の加速度によって作動される「VSIR機構」及びVギヤ40の引出方向への回転加速度が一定の大きさを越えた場合に作動される「WSIR機構」等によって構成されており、センサ機構38が作動されることによって、Vギヤ40の引出方向への回転が阻止される。
一方、図1及び図3に示されるように、本ウェビング巻取装置10は、セレクタブルフォースリミッタ機構42を備えている。なお、以下、「セレクタブルフォースリミッタ」を「SFL」と省略して記載する。SFL機構42は、ベース部材としてのSFLハウジング44を備えている。SFLハウジング44の車幅方向外側には、カバー部材としてのSFLシート46が設けられている。SFLハウジング44及びSFLシート46は、板状に形成されており、SFLハウジング44の厚さ方向及びSFLシート46の厚さ方向は、車幅方向に沿っている。SFLハウジング44及びSFLシート46は、フレーム12の脚板14と脚板16との間における脚板16側に設けられており、SFLハウジング44及びSFLシート46は、ねじ等の締結手段によってフレーム12の脚板16に固定されている。
SFLハウジング44には、ベースリング収容部48が形成されている。ベースリング収容部48は、SFLハウジング44において車幅方向外側面で開口された孔部とされ、ベースリング収容部48の内側には、SFL回転体としてのベースリング50が設けられている。ベースリング50は、外側面の断面形状が円形のリング状に形成されており、ベースリング50は、スプール18に対する同軸上に設けられている。ベースリング50の車幅方向内側端部は、SFLハウジング44に形成されたハウジング側軸受孔52に回転自在に支持されており、ベースリング50の車幅方向外側端部は、SFLシート46に形成されたシート側軸受孔54に回転自在に支持されている。
ベースリング50の内側には、スプール18の車幅方向外側端部に形成されたパウル収容部56が配置されている。パウル収容部56には、SFL連結部材としてのSFLパウル58が設けられている。図2に示されるように、SFLパウル58にはシェアピン60が形成されており、シェアピン60は、ロック機構28のロックベース30に形成されたガイド孔62に入っている。スプール18がロックベース30に対して引出方向へ相対回転されると、SFLパウル58のシェアピン60がロックベース30のガイド孔62に案内され、これによって、SFLパウル58がベースリング50に接近移動される。
図1及び図3に示されるように、ベースリング50の内側面にはラチェット歯が形成されており、SFLパウル58にはベースリング50のラチェット歯に噛合可能なラチェット歯が形成されている。SFLパウル58がベースリング50に接近されることによって、SFLパウル58のラチェット歯がベースリング50のラチェット歯に噛合うと、ベースリング50がスプール18と共に引出方向へ回転され、更に、SFLパウル58のシェアピン60が破断される。
一方、ベースリング50には、エネルギー吸収長尺部材としてフォースリミッタ部材を構成するワイヤ64が設けられている。ワイヤ64は、長尺の金属線材によって螺旋形状に形成されている。ワイヤ64の長手方向先端側は、ワイヤ64の長手方向基端側に対して引出方向側(図1等の矢印B方向側)へ向いており、更に、ワイヤ64の長手方向先端側は、ワイヤ64の長手方向基端側に対して車幅方向内側へ変位されている。この螺旋形状のワイヤ64は、ベースリング50の径方向外側に設けられる。
また、図3に示されるように、ワイヤ64は、ワイヤ64の弾性力で、SFLハウジング44のベースリング収容部48の内側面に圧接され、これによって、ワイヤ64は初期状態(図3及び図5図示状態)でSFLハウジング44に保持されている。さらに、ワイヤ64の長手方向先端部は、ワイヤ64の長手方向先端部よりも長手方向基端側の螺旋状部分の径方向外側又は径方向内側を通って車幅方向外側へ変位されて、ベースリング50に形成されたワイヤ係止部(図示省略)に係止されている。これによって、ワイヤ64は、ベースリング50と共に回転される。
また、SFLハウジング44のベースリング収容部48内におけるベースリング50の車両後側には、一対のピース挿入孔66が形成されている。一対のピース挿入孔66は、ベースリング50の周方向に並んで形成されている。各ピース挿入孔66には車幅方向外側からピース68が挿入されている。ピース挿入孔66に挿入されたピース68は、車幅方向外側部分がピース挿入孔66よりも車幅方向外側へ突出されている。
ピース68の車両後側には、ワイヤ64の長手方向先端側の第1巻目部分が通っており、ワイヤ64の長手方向先端側の第1巻目部分よりも長手方向基端側は、ピース68の車両前側を通っている。さらに、ワイヤ64の長手方向先端側における第1巻目部分には、曲部70が形成されている。曲部70は、車両前側へ凸状に曲げられており、曲部70は、車両後側から両方のピース68の間に入っている。
一方、図1及び図3に示されるように、SFLハウジング44には、阻止解除手段を構成する駆動装置72が設けられている。駆動装置72は、保持部材としてのベースカートリッジ74を備えている。ベースカートリッジ74は、例えば、亜鉛ダイカストによって形成されており、ベースカートリッジ74は、連結ピン等によってSFLハウジング44又はSFLシート46に連結されて保持されている。ベースカートリッジ74は、マイクロガスジェネレータ取付部76を備えている。なお、以下、「マイクロガスジェネレータ」を「MGG」と省略して記載する。MGG取付部76は、全体的に円筒形状に形成されており、MGG取付部76の中心軸線方向は車両上下方向とされている。MGG取付部76の内側には、駆動手段としてのMGG78が設けられている。
MGG78の車両上側部分には、コネクタ(図示省略)が接続されている。MGG78は、コネクタを介して制御手段としてのECU(図示省略)に接続されており、例えば、ECUから出力された起動信号がLowレベルからHighレベルに切替わると、MGG78が作動され、これによって、MGG78の車両下側端部からガスが噴出される。
ECUは、例えば、リヤシートのシートクッション等に設けられた荷重センサ、又は、本ウェビング巻取装置10のスプール18から引出されたウェビング20の長さを検出するウェビング引出長さ検出センサ等の体格検出手段に電気的に接続されており、ECUでは、体格検出手段から出力される体格検出信号に基づいて、リヤシートの着座位置に着座した乗員の体格が標準以上であるか否かが判定される。
一方、図3に示されるように、ベースカートリッジ74におけるMGG取付部76の車両下側には、シリンダ部80が形成されている。シリンダ部80には車両上下方向に貫通されたシリンダ孔82が形成されている。シリンダ孔82は、MGG取付部76の内側に繋がっており、MGG78から噴出されたガスは、シリンダ孔82内に供給される。
ベースカートリッジ74のシリンダ部80のシリンダ孔82内には、移動部材としてのピストン84が設けられている。ピストン84の車両下側部分は、シリンダ部80の車両下側端部から車両下側へ突出されており、MGG78から噴出されたガスがシリンダ孔82内に供給されると、ピストン84は、ガスの圧力によって車両下側へ移動される。
さらに、ベースカートリッジ74のシリンダ部80の車両下側端部からは、延出部86が車両下側へ延出されている。延出部86にはピストンストッパ部88が形成されている。ピストンストッパ部88は、ベースカートリッジ74のシリンダ部80の車両下側端部よりも更に車両下側に形成されている。ピストンストッパ部88の車両上側面は、ピストン84の車両下側端部における車幅方向中央よりも車幅方向外側部分と対向されている。このため、MGG78から噴出されたガスの圧力によって車両下側へ移動されたピストン84は、ベースカートリッジ74のピストンストッパ部88の車両上側面へ当接されることによって、車両下側への移動が阻止される。
また、図1に示されるように、ベースカートリッジ74のピストンストッパ部88の車幅方向内側には、阻止部材として阻止解除手段を構成する切替パウル90が設けられている。図3に示されるように、切替パウル90は、パウル基部92を備えている。パウル基部92は、略円板状とされ、パウル基部92の厚さ方向は、車幅方向に沿っている。切替パウル90のパウル基部92の車幅方向外側面にはパウル支持軸94が形成されている。パウル支持軸94は、パウル基部92の車幅方向外側面の中央に形成されており、ピストンストッパ部88に形成されたパウル軸受孔(図示省略)に挿入されている。これによって、切替パウル90は、パウル支持軸94周りに回動可能にベースカートリッジ74のピストンストッパ部88(図1参照)に支持されている。
さらに、図3に示されるように、切替パウル90のパウル基部92に対応して、SFLハウジング44には、阻止部材支持手段としてのハウジング側パウル軸受部96が形成されている。ハウジング側パウル軸受部96は、パウル支持面98を備えている。パウル支持面98は、切替パウル90のパウル支持軸94を曲率中心として凹状に湾曲されている。ハウジング側パウル軸受部96のパウル支持面98には、切替パウル90のパウル基部92の外側面が当接されており、切替パウル90は、SFLハウジング44のハウジング側パウル軸受部96によってもパウル支持軸94周りに回動可能に支持される。
また、切替パウル90は、荷重受け片100を備えている。荷重受け片100は、切替パウル90のパウル基部92からパウル基部92の径方向外側へ延出されている。切替パウル90の荷重受け片100の先端部は、ベースカートリッジ74のピストンストッパ部88の車両上側面よりも車両上側でピストン84の車両下側端部における車幅方向中央よりも車幅方向内側部分と対向されている。このため、MGG78から噴出されたガスの圧力によって車両下側へピストン84が移動されると、切替パウル90の荷重受け片100は、ピストン84の車両下側端部によって車両下側へ押圧される。これによって、切替パウル90は、パウル支持軸94周りの一方である阻止解除方向(図3等の矢印C方向)へ回動される。
さらに、図3に示されるように、初期状態の切替パウル90の荷重受け片100の車両下側には、切替シェアピン102が設けられている。切替シェアピン102は、SFLハウジング44から突出形成されており、切替シェアピン102が車両下側から切替パウル90の荷重受け片100に当接されることによって、初期状態の切替パウル90の阻止解除方向(図3等の矢印C方向)への回動が阻止されている。したがって、この切替シェアピン102が切替パウル90の荷重受け片100から受ける荷重により破断されると、切替パウル90は、阻止解除方向へ回動できる(図4参照)。
また、図1に示されるように、切替パウル90の車両前側には、変形量変更部材としてのSFLレバー104が設けられている。SFLレバー104は、レバー基部106を備えている。レバー基部106は、略円板状とされ、レバー基部106の厚さ方向は、車幅方向に沿っている。レバー基部106の車幅方向両側面には、それぞれレバー支持軸108(図1等では、車幅方向外側のレバー支持軸108のみを図示している)が形成されている。SFLレバー104の車幅方向内側のレバー支持軸108(図示省略)は、SFLハウジング44に形成されたハウジング側レバー軸受孔110に挿入されており、SFLレバー104の車幅方向外側のレバー支持軸108は、SFLシート46に形成されたシート側レバー軸受孔112に挿入されている。これによって、SFLレバー104は、レバー支持軸108周りに回動可能とされている。
図1及び図3に示されるように、SFLレバー104のレバー基部106の車両下側では、SFLハウジング44にハウジング側レバー軸受部114が形成されている。図3に示されるように、ハウジング側レバー軸受部114は、レバー支持面116を備えている。レバー支持面116は、SFLレバー104のレバー支持軸108を曲率中心として凹状に湾曲されている。ハウジング側レバー軸受部114のレバー支持面116には、SFLレバー104のレバー基部106の外側面が当接されており、SFLレバー104は、SFLハウジング44のハウジング側レバー軸受部114によってもレバー支持軸108周りに回動可能に支持される。
さらに、SFLレバー104は、レバー係合部118を備えている。レバー係合部118は、SFLレバー104のレバー基部106からレバー基部106の径方向外側へ延出されている。SFLレバー104のレバー係合部118の延出方向(長手方向)先端部は、SFLレバー104の初期状態(図3及び図5図示状態)で、SFLハウジング44のピース挿入孔66に挿入された両方のピース68の間に入っており、SFLレバー104のレバー係合部118の延出方向先端部は、ワイヤ64の曲部70に対して車両後側から当接されている。このため、この状態で、ワイヤ64がベースリング50と共に引出方向へ回転されると、ワイヤ64の曲部70よりも長手方向基端側は、両方のピース68と、SFLレバー104のレバー係合部118とによって波状にしごかれて変形される。
このように、ワイヤ64の曲部70よりも長手方向基端側が波状にしごかれて変形される際に、SFLレバー104のレバー係合部118にはワイヤ64から荷重が付与される。SFLレバー104は、このワイヤ64からの荷重によって変形等が生じないように機械的強度等が設定されており、このため、SFLレバー104は、切替パウル90よりも重い。
また、図3及び図5に示されるように、SFLレバー104の初期状態で、レバー係合部118の延出方向先端部は、SFLレバー104のレバー支持軸108(レバー基部106の回転中心)よりも車両前上側(図5の一点鎖線の矢印J方向側)に位置しており、SFLレバー104が、レバー基部106のレバー支持軸108周りの一方である変形量変更方向(図5等の矢印D方向)へ回動されると、レバー係合部118の延出方向先端部は、両方のピース68の間から抜ける。さらに、SFLレバー104の初期状態では、SFLレバー104のレバー支持軸108を挟んでレバー係合部118の延出方向先端部とは反対側で、SFLレバー104のレバー基部106が、SFLハウジング44におけるハウジング側レバー軸受部114のレバー支持面116に当接されている。
また、SFLレバー104は、当接片120を備えている。当接片120は、SFLレバー104のレバー係合部118の変形量変更方向側(図3等の矢印D方向側)に設けられており、当接片120における変形量変更方向とは反対側の端部は、レバー係合部118に繋がっている。当接片120は、板状に形成されており、当接片120の厚さ方向は、車幅方向に沿っている。また、当接片120は、レバー基部106に対してレバー基部106の径方向外側に離間して形成されており、当接片120の幅方向両側(当接片120のレバー基部106側及びレバー基部106とは反対側)の面は、SFLレバー104のレバー基部106のレバー支持軸108を曲率中心として湾曲されている。このため、SFLレバー104のレバー基部106と当接片120との間には、レバー支持軸108を曲率中心とする略扇状の空隙122が形成されている。
このSFLレバー104の空隙122に対応して、SFLハウジング44のハウジング側レバー軸受部114には軸受け延長部124が形成されている。軸受け延長部124は、ハウジング側レバー軸受部114の一部として、SFLレバー104のレバー基部106の外側面に当接され、レバー基部106を回動可能に支持している。また、SFLレバー104が変形量変更方向へ一定角度以上回動されると、軸受け延長部124は、SFLレバー104のレバー基部106と当接片120との間の空隙122に入る。
また、SFLレバー104の当接片120に対応して、切替パウル90にはレバーストッパ片126が形成されている。レバーストッパ片126は、切替パウル90のパウル基部92の径方向外側へ延出されており、SFLレバー104及び切替パウル90の初期状態で、レバーストッパ片126の延出方向先端部は、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部に当接されている。これによって、SFLレバー104の変形量変更方向への回動が、切替パウル90によって阻止されている。
また、SFLレバー104及び切替パウル90の初期状態で、切替パウル90のパウル基部92からのレバーストッパ片126の延出方向は、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部におけるSFLレバー104の回動接線方向に沿っている。さらに、レバーストッパ片126の延出方向先端部は、切替パウル90のパウル支持軸94を曲率中心として湾曲されている。
さらに、SFLレバー104及び切替パウル90の初期状態では、切替パウル90のパウル基部92を挟んでレバーストッパ片126の延出方向先端部とは反対側で、切替パウル90のパウル基部92の外側面が、ハウジング側パウル軸受部96のパウル支持面98に当接されている。
<本実施の形態の作用、効果>
本ウェビング巻取装置10では、車両のリヤシートに着座した乗員によってスプール18から引出されたウェビング20が、乗員の身体に掛回された状態で、ウェビング20に設けられたタングが、バックル装置に係合されることにより、乗員の身体へのウェビング20の装着状態になる。
車両衝突時等の車両緊急時には、センサ機構38の「VSIR機構」及び「WSIR機構」の少なくとも一方が作動され、これによって、Vギヤ40の引出方向への回転が阻止される。この状態で、車両前側へ慣性移動する乗員の身体にウェビング20が引張られ、これによって、ロック機構28のロックベース30が、スプール18と共に引出方向へ回転されると、ロックベース30がVギヤ40に対して引出方向(図1等の矢印B方向)へ相対回転される。
これによって、ロックベース30のロックパウル36が、フレーム12の脚板16のラチェット孔34のラチェット歯へ接近移動される。これによって、ロックベース30のロックパウル36のラチェット歯が、フレーム12の脚板16のラチェット孔34のラチェット歯に噛合うと、ロックベース30の引出方向への回転が阻止され、スプール18の引出方向への回転が阻止される。これによって、ウェビング20のスプール18からの引出しが阻止され、乗員の身体の車両前側への移動をウェビング20によって制限できる。
また、フレーム12の車幅方向内側に設けられたプリテンショナが作動されると、スプール18が巻取方向へ回転される。これによって、ウェビング20がスプール18に巻取られ、乗員の身体がウェビング20によってそれまでよりも強く拘束される。
さらに、ロック機構28によるスプール18の引出方向への回転阻止状態で、ウェビング20からスプール18に付与される引出方向への回転力が、トーションバー22の軸部24を、その中心軸線周りに捻り変形させるために必要な回転荷重よりも大きくなると、トーションバー22のスプール側連結部26がロックベース側連結部32に対して引出方向へ相対回転され、これによって、トーションバー22の軸部24が捻り変形される。これによって、スプール18の引出方向への回転力の一部が吸収される。また、これによって、スプール18が引出方向(図1等の矢印B方向)へ回転されると、ウェビング20がスプール18から引出される。このスプール18からのウェビング20の引出し長さ分だけ、乗員の身体は車両前側へ慣性移動できる。
また、ロックベース30の引出方向への回転が阻止された状態でスプール18が引出方向へ回転されると、スプール18のパウル収容部56に設けられたSFLパウル58のシェアピン60が、ロック機構28のロックベース30のガイド孔62に案内されて移動される。これによって、SFLパウル58がベースリング50に接近する方向へ移動され、SFLパウル58のラチェット歯がベースリング50の内側面のラチェット歯に噛合う。これによって、ベースリング50がスプール18に連結される。
この状態で、ウェビング20からスプール18に付与される引出方向への回転力が、トーションバー22の軸部24を、その中心軸線周りに捻り変形させるために必要な回転荷重と、ワイヤ64を両方のピース68と、SFLレバー104のレバー係合部118とによって波状にしごいてワイヤ64を変形させるために必要な回転荷重との和よりも大きいと、スプール18が引出方向(図1等の矢印B方向)へ更に回転される。これによって、ウェビング20がスプール18から更に引出される。このスプール18からのウェビング20の引出し長さ分だけ、乗員の身体は車両前側へ更に慣性移動できる。
また、SFLパウル58によるベースリング50とスプール18との連結状態で、ベースリング50がスプール18と共に引出方向へ回転されると、ワイヤ64の長手方向先端部がベースリング50に引張られ、ワイヤ64がベースリング50と共に引出方向へ回転される。このように、ワイヤ64が引出方向へ回転されると、ワイヤ64の曲部70よりも長手方向基端側は、ピース68の車両後側へ誘導され、更に、両方のピース68とSFLレバー104のレバー係合部118との間に誘導される。これにより、ワイヤ64の曲部70よりも長手方向基端側は、両方のピース68と、SFLレバー104のレバー係合部118とによって波状にしごかれて変形され、スプール18の引出方向への回転力の一部は、このワイヤ64の変形によっても吸収される。
一方、体格検出手段から出力された体格検出信号に基づき、乗員の体格が標準未満であるとECUに判定されると、車両緊急時にECUから出力される起動信号がLowレベルからHighレベルに切替わり、これによって、MGG78が作動される。MGG78が作動されると、MGG78の車両下側端部からガスが噴出され、このガスがベースカートリッジ74のシリンダ部80のシリンダ孔82内に供給される。
これによって、シリンダ部80のシリンダ孔82内の圧力が上昇されると、シリンダ孔82内のピストン84が車両下側(図3〜図5の矢印K方向側)へ移動される。これによって、切替パウル90の荷重受け片100が、ピストン84によって車両下側へ押圧されると、SFLハウジング44の切替シェアピン102が、切替パウル90の荷重受け片100によって破断され、更に、ピストン84からの荷重を受けた切替パウル90が阻止解除方向(図3〜図5等の矢印C方向)へ回動される。
これによって、切替パウル90のレバーストッパ片126の延出方向先端部と、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部との当接が解除される。この状態で、ベースリング50がスプール18と共に引出方向へ回転されると、図5に示されるように、SFLレバー104のレバー係合部118の延出方向先端部には、ワイヤ64の曲部70が引出方向側へ伸びようとする張力に基づく押圧力F1と、レバー係合部118の延出方向先端部とワイヤ64の曲部70との摩擦力F2との合力F3が付与される。この合力F3の方向は、車両後上側となる。
一方、SFLレバー104の初期状態で、SFLレバー104のレバー基部106の回転中心であるレバー基部106のレバー支持軸108は、レバー係合部118の延出方向先端部よりも車両後下側(図5の一点鎖線の矢印Jとは反対方向側)に位置している。このため、この状態では、SFLレバー104が変形量変更方向(図5等の矢印D方向)へ回動される際のレバー係合部118の延出方向先端部での回転トルクの方向(図5の一点鎖線の矢印T方向)は、車両後上側となる。
このため、ワイヤ64の曲部70から付与される上記の押圧力F1と摩擦力F2との合力F3が、SFLレバー104のレバー係合部118の延出方向先端部に付与されると、SFLレバー104には、変形量変更方向側(図5等の矢印D方向側)の回転トルクが生じ、これによって、SFLレバー104は、変形量変更方向へ回動される。
このように、SFLレバー104が変形量変更方向へ回動された状態では、ワイヤ64がSFLレバー104のレバー係合部118によってしごかれて変形されることはない。したがって、この状態では、SFLレバー104とピース68とによるワイヤ64の変形が抑制される。このため、ワイヤ64の変形によるスプール18の引出方向への回転力の吸収量を小さくできると共に、SFLレバー104が初期状態にある場合よりもスプール18が引出方向へ回転するために必要な回転力を小さくできる。
ここで、本実施の形態では、SFLレバー104は、ワイヤ64の曲部70から付与される上記の押圧力F1と摩擦力F2との合力F3によって変形量変更方向(図5等の矢印D方向)へ回動される。このため、MGG78にて発生されたガスの圧力は、ピストン84を車両下側へ移動させ、ピストン84の車両下側端部に押圧された切替パウル90が阻止解除方向(図5等の矢印C方向)へ回動させることができればよい。しかも、切替パウル90は、SFLレバー104よりも軽い。
したがって、本実施の形態の構成は、SFLレバーがピストンによって直接押圧され、これによって、SFLレバーが回動されてレバー係合部が両方のピースの間から抜ける構成に比べて、MGG78の出力を小さくできる。これによって、MGG78を小型化、軽量化でき、駆動装置72の小型化、軽量化、ひいては、ウェビング巻取装置10の小型化、軽量化が可能になる。
また、本実施の形態では、切替パウル90のレバーストッパ片126の延出方向先端部が、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部に当接され、これによって、SFLレバー104の変形量変更方向への回動が、切替パウル90によって阻止される。このため、図5に示されるように、切替パウル90によるSFLレバー104の回動阻止状態では、SFLレバー104が変形量変更方向へ回動しようとすると、切替パウル90のレバーストッパ片126の延出方向先端部には、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部から荷重F4が付与される。この荷重F4の方向は、レバーストッパ片126の延出方向先端部におけるSFLレバー104の回動接線方向となる。
ここで、SFLレバー104及び切替パウル90の初期状態では、切替パウル90のレバーストッパ片126のパウル基部92からの延出方向は、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部におけるSFLレバー104の回動接線方向とされる。このため、切替パウル90のレバーストッパ片126の延出方向先端部が、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部から受ける荷重F4の方向は、切替パウル90のレバーストッパ片126の延出方向とは反対方向になる。このため、切替パウル90のレバーストッパ片126の延出方向先端部が、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部から荷重F4を受けても、レバーストッパ片126に変形等が生じ難い。このため、切替パウル90の機械的強度を低く設定でき、切替パウル90の小型化、軽量化が可能になる。これによっても、MGG78の出力を小さくできる。
しかも、SFLレバー104及び切替パウル90の初期状態で、切替パウル90のパウル基部92の外側面は、切替パウル90のパウル支持軸94(すなわち、パウル基部92の回動中心)を挟んでレバーストッパ片126の延出方向先端部とは反対側でSFLハウジング44のハウジング側パウル軸受部96のパウル支持面98に当接されている。このため、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部から受けた荷重F4は、切替パウル90のレバーストッパ片126を介してSFLハウジング44のハウジング側パウル軸受部96に伝わる。
このため、切替パウル90のレバーストッパ片126に入力された荷重F4を、SFLハウジング44のハウジング側パウル軸受部96によって支持できる。これによっても、切替パウル90の機械的強度を低く設定でき、切替パウル90の小型化、軽量化が可能になる。これによっても、MGG78の出力を小さくできる。
さらに、切替パウル90のパウル基部92は、SFLハウジング44のハウジング側パウル軸受部96によって回動可能に支持される。このため、切替パウル90のパウル支持軸94の機械的強度(せん断強度)は、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部から受けた荷重F4に耐えられる大きさにしなくてもよい。このため、パウル支持軸94を細く、小さくでき、これによっても、切替パウル90を小型化、軽量化でき、MGG78の出力を小さくできる。
一方、本実施の形態では、SFLレバー104のレバー基部106は、SFLハウジング44に形成されたハウジング側レバー軸受部114によって回動自在に支持されている。このため、SFLレバー104のレバー支持軸108を細く、小さくできる。これによって、SFLレバー104を小型化、軽量化できる。
さらに、SFLハウジング44のハウジング側レバー軸受部114の軸受け延長部124は、SFLレバー104が変形量変更方向へ一定角度以上回動されると、SFLレバー104のレバー基部106と当接片120との間の空隙122に入る。このため、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部が、SFLハウジング44の軸受け延長部124におけるSFLレバー104の回動中心とは反対側に位置するまでSFLレバー104を変形量変更方向へ回動させることができる。これによって、SFLレバー104の回動範囲を保ちながらも、軸受け延長部124を含んだSFLハウジング44のハウジング側レバー軸受部114によるSFLレバー104のレバー基部106の支持範囲を大きくできる。
なお、本実施の形態では、MGG78が駆動手段とされ、MGG78から噴出されたガスの圧力が駆動力とされた構成であった。しかしながら、圧縮コイルばね等のピストン付勢手段を駆動手段としてピストン付勢手段の付勢力を駆動力としてもよいし、モータを駆動手段としてモータから出力される回転力等を駆動力としてもよい。さらには、ソレノイドを駆動手段として、ソレノイドを通電させることによって生じる磁力を駆動力とし、この磁力で移動されるプランジャをピストンに代わる移動部材としてもよい。このように、駆動手段は、MGG78に限定されることなく、広く適用が可能である。
また、本実施の形態では、SFLレバー104がSFLハウジング44に形成されたハウジング側レバー軸受部114に回動可能に支持され、更に、SFLレバー104がSFLハウジング44に形成されたハウジング側レバー軸受孔110及びSFLシート46に形成されたシート側レバー軸受孔112によっても回動可能に支持された構成であった。しかしながら、SFLレバー104がハウジング側レバー軸受部114だけで回動可能に支持される構成であってもよいし、SFLレバー104がハウジング側レバー軸受孔110及びシート側レバー軸受孔112だけで支持される構成であってもよく、SFLレバー104を支持する構成については特に限定されるものではない。
さらに、本実施の形態では、変形量変更部材としてのSFLレバー104は、ワイヤ64の曲部70から受ける力によって回動され、これによって、ワイヤ64の変形量が変更される構成であった。しかしながら、ワイヤ64の曲部70から受ける力による変形量変更部材の変位は、例えば、直線的な移動であってもよく、変形量変更部材の変位が回動に限定されるものではない。
また、本実施の形態では、変形量変更部材としてのSFLレバー104は、ワイヤ64の曲部70から受ける力によって回動される構成であった。しかしながら、例えば、ベースリング50がスプール18と共に引出方向へ回転されるよりも先に解除阻止手段としてのMGG78が作動されて、解除阻止手段の阻止部材としての切替パウル90のレバーストッパ片126の延出方向先端部と、SFLレバー104の当接片120の変形量変更方向側端部との当接が解除された場合には、SFLレバー104が自重によって回動される構成であってもよい。このように、変形量変更部材は、フォースリミッタ部材からの荷重によって変形量変更方向へ変位可能であればよく、解除阻止手段の作動タイミング等によっては、変形量変更部材がフォースリミッタ部材からの荷重によって変形量変更方向へ変位されなくてもよい。
さらに、本実施の形態では、ワイヤ64がフォースリミッタ部材とされた構成であった。しかしながら、フォースリミッタ部材は、例えば、トーションバー22のような棒状部材であってもよく、フォースリミッタ部材はスプール18に連結された状態でスプール18が引出方向へ回転されることによって変形される構成であれば、その具体的な態様に限定されるものではない。
また、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10は、車両のリヤシート用とされていたが、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10を、車両の運転席用や助手席用として用いてもよく、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10を、車両の運転席用や助手席用として用いた場合には、車両に対するウェビング巻取装置10の向きが異なることもある。