JP6448215B2 - 電子写真トナー用樹脂バインダーの製造方法及び電子写真トナー用樹脂バインダー - Google Patents

電子写真トナー用樹脂バインダーの製造方法及び電子写真トナー用樹脂バインダー Download PDF

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Description

本発明は、樹脂組成物の製造方法、及び樹脂組成物に関する。
外力を物体に加えると時間経過に伴って変形し、外力を除くと原形付近まで回復してひずみが残る性質を粘弾性といい、このような粘弾性を有する樹脂組成物は、様々な産業分野で利用されている。インクジェットインクや電子写真トナーの樹脂バインダーには、保存安定性と画像形成能を並立させるという観点から、温度上昇に対して粘弾性を極めて急激に変化する特性(以下、シャープメルト特性と表現する)を有する組成物を利用することが好ましい。
結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの重合体や、結晶性主鎖を有するポリエステルのような結晶性ポリマーは、シャープメルト特性を有する。しかし、結晶性ポリマーは低温脆性が顕著であるため、単独では利用し難い。これに対し、特許文献1のような結晶性ポリマーと非結晶性ポリマーを混合して得られる樹脂組成物では、結晶性ポリマー特有の低温脆性が改善する。
特開2012−88580号公報
特許文献1の方法で樹脂組成物を得る場合、少なくとも、結晶性ポリマーの合成工程と、非結晶性ポリマーの合成工程と、結晶性ポリマーと非結晶性ポリマーの混合工程を要する。このように製造工程が多段階に及ぶことは、環境負荷の視点から好ましいとは言えない。
以上から、シャープメルト特性を有し、且つ、室温で脆くない樹脂組成物を、一段階の製造工程で生産できる方法が求められており、本発明の解決しようとする課題はこの点にある。
本発明は、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーとを、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル共重合して、電子写真トナー用の樹脂バインダーを得る電子写真トナー用樹脂バインダーの製造方法であって、
該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーは、ドコサン酸エステルであり、
結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーとは、それぞれの単独重合体を溶媒に溶解後、析出させたときに、相分離構造を形成する組み合わせであり
結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマー及び該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーのモノマー反応性比をそれぞれr1とr2としたとき該r1と該r2が下記の関係を満たし、
1>1.0
2<1.0
(r1=k11/k12であり、
11は、該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーに、該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーが付加する反応における反応速度定数であり、
12は、該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーに、該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーが付加する反応における反応速度定数であり、
2=k22/k21であり、
22は、該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーに、該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーが付加する反応における反応速度定数であり、
21は、該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーに、該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーが付加する反応における反応速度定数である。)
該共重合における、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーの量をA(質量部)、結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの量をB(質量部)としたとき、B/(A+B)が0.25以上0.80以下であることを特徴とする電子写真トナー用樹脂バインダーの製造方法に関する。
また、本発明は、結晶性分子鎖を有さないユニットと結晶性分子鎖を有するユニットとを有する電子写真トナー用樹脂バインダーであって、
該結晶性分子鎖を有するユニットは、下記ユニット1であり、
Figure 0006448215
(式中、R1は、水素原子であり、R2は、CH 3 (CH 2 20 である。)
電子写真トナー用樹脂バインダーにおける、結晶性分子鎖を有さないユニットの含有量をC(質量部)、結晶性分子鎖を有するユニットの含有量をD(質量部)としたとき、D/(C+D)が0.25以上0.80以下であり、
電子写真トナー用樹脂バインダーが、海島型相分離構造を有し、該海島型相分離構造における島相を構成する樹脂成分の主構成ユニットが該結晶性分子鎖を有さないユニットであり、海相を構成する樹脂成分の主構成ユニットが該結晶性分子鎖を有するユニットであることを特徴とする電子写真トナー用樹脂バインダーに関する。
本発明によれば、シャープメルト特性を有し、且つ、室温で脆くない樹脂組成物を、一段階の製造工程で生産できる方法を提供することができる。
本発明のシャープメルト特性を説明する図である。 結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーのラジカル共重合反応における素反応を説明する図である。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明は、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーとを、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル共重合して樹脂組成物を得る樹脂組成物の製造方法に関するものである。尚、本発明における結晶性分子鎖は、結晶性側鎖であって、樹脂組成物の状態では、ラジカル共重合によって形成される主鎖に対して、側鎖として結合しているものである。
そして、本発明によると、シャープメルト特性を有し、且つ、室温で脆くない樹脂組成物を一段階の製造工程で生産できる。
本発明の製造方法において、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと、結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーのモノマー反応性比が下記の関係を満たす。
1>1.0
2<1.0
以下、上記モノマー反応性比について説明する。
結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと、結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーのラジカル共重合は、以下の4通りの素反応の組み合わせによって進行する(図2参照)。
(1)素反応11:結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーに結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーが付加する反応。
(2)素反応12:結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーに結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーが付加する反応。
(3)素反応22:結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーに結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーが付加する反応。
(4)素反応21:結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーに結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーが付加する反応。
そして、素反応11の反応速度定数をk11、素反応12の反応速度定数をk12とすると、モノマー反応性比r1は以下のようになる。
1=k11/k12
また、素反応22の反応速度定数をk22、素反応21の反応速度定数をk21とすると、モノマー反応性比r2は以下のようになる。
2=k22/k21
モノマー反応性比r1及びr2が上記の規定を満たす、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーとを用いて、ラジカル共重合すると、以下のような共重合体を有する樹脂組成物が得られる。
(1)結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーのユニットに富む共重合体1
(2)結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーのユニットに富む共重合体2
本発明者等は、このような共重合体1と共重合体2とを有する樹脂組成物が、シャープメルト特性を有し、且つ、室温で脆くない樹脂組成物となることを実験により確認している。
これに対し、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと、結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの組み合わせが上記規定を満たさない場合、結晶性分子鎖を有さない単量体と結晶性分子鎖を有する単量体がランダムに含まれる共重合体が生成する。この場合、得られる樹脂組成物はシャープメルト特性を有さないか、シャープメルト特性が発現する温度を意図的に制御できなくなる。結晶性分子鎖を有さない単量体と結晶性分子鎖を有する単量体がランダムに含まれる共重合体中において側鎖として存在する結晶性分子鎖間距離が大きくなり、結晶化が阻害されることに起因すると、本発明者等は考察している。
一般的なラジカル重合性モノマーについて、モノマー反応性比の値は、POLYMERHANDBOOK THIRD EDITION(WILEY),II/153−II/266から得ることができる。また、モノマー反応性比の値は、曲線合致法や交点法、Fineman−Ross法、Kelen−Tudos法等の従来公知の方法によっても求めることができる。
本発明における結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーと、結晶性分子鎖を有するユニットについて説明する。
本発明における結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーは、以下の化合物1に示される結晶性カルボン酸ビニルエステル類である。
Figure 0006448215
(式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、炭素数17以上のアルキル基である。)
また、本発明の樹脂組成物中においては、上記の化合物1は、以下のユニット1として含有される。
Figure 0006448215
(式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、炭素数17以上のアルキル基である。)
結晶性カルボン酸ビニルエステル類の重合体は融点を示し、融点に起因する融解現象に基づいてシャープメルト特性を発現する。
よって、結晶性カルボン酸ビニルエステル類の重合体の融点は、結晶性分子鎖の分子量に応じて変化する。このことは、結晶性分子鎖の分子量を制御することによって、得られる樹脂組成物のシャープメルト特性の発現温度を制御できることを意味している。本発明者等は、化合物1及びユニット1におけるR2の炭素数が17以上(即ち、分子量239以上)の場合に、カルボン酸ビニルエステル類の重合体の融点と、樹脂組成物のシャープメルト特性の発現温度とが共に良好な範囲となることを見出した。また、化合物1及びユニット1におけるR2は、分岐状のアルキル基よりも結晶成長が良好な直鎖状のアルキル基が好ましい。なお、本発明の目的を達成可能な範囲において、複数の結晶性カルボン酸ビニルエステル類を組み合わせて使用しても良い。
次に、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと、結晶性分子鎖を有さないユニットについて説明する。結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーとは、非結晶性のラジカル重合性モノマーと同義である。反応性比が上記規定を満たす限りにおいては、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーは、特に制限されない。例えば、スチレン、非結晶性のスチレン誘導体、非結晶性のアクリレート類、非結晶性のメタクリレート類、非結晶性のアクリルニトリル類等の化合物が、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーとして使用することができる。また、本発明の目的を達成可能な範囲において、複数の結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーを組み合わせて使用しても良い。なお、本発明の結晶性分子鎖を有さないユニットとは、上記のような結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーの重合体を構成するユニットである。
本発明において、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーの単独重合体と、結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの単独重合体とを合成したとき、両者が相分離するものであることが必須要件である。
上述したように、本発明で得られる樹脂組成物は、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーの単独重合体に富む共重合体1と、結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの単独重合体に富む共重合体2を含有する。つまり、共重合体1と、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーの重合体の熱力学特性は極めて類似している。同様に、共重合体2と、結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの重合体の熱力学特性は極めて類似している。そのため、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーの単独重合体と、結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの単独重合体とが、相分離することは、共重合体1と共重合体2が、相分離することを表していると考えられる。
結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーの単独重合体(以下、単独重合体1と称す)と、結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの単独重合体(以下、単独重合体2と称す)とを合成したとき、両者が相分離構造を形成することは、以下のようにして確認することができる。
単独重合体1と単独重合体2を溶解させた溶解液を、単独重合体1と単独重合体2の共通貧溶媒に展開して析出させ、得られる析出物を乾燥することにより得られる樹脂組成物の内部構造を観察することにより確認できる。
単独重合体1と単独重合体2とが互いに非相溶性であり、相分離する場合、スピノーダル型の相分離現象や、核発生−核成長型の相分離現象にともなって形成される相分離構造が、内部構造として観察される。単独重合体1と単独重合体2が互いに相溶する場合、内部構造として明確な相分離構造は観察されない。相分離構造の例として、海島構造やシリンダー構造、ラメラ構造、共連続構造などが挙げられる。中でも、海島型相分離構造が形成される重合体であることが好ましい。そして、島相を構成する樹脂成分の主構成ユニットが結晶性分子鎖を有さないユニットであり、海相を構成する樹脂成分の主構成ユニットが結晶性分子鎖を有するユニットであることが、良好なシャープメルト性が得られる点で好ましい。
内部構造は、粘弾性組成物の断面を透過型電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡等の従来公知の方法により観察することで評価できる。
本発明では、共重合における、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーの量をA(質量部)、結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの量をB(質量部)としたとき、該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーに対する該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合(B/(A+B))が、0.25以上0.80以下であることが必須要件である。
前記割合が0.25より小さい場合、重合組成物は十分なシャープメルト特性を有さず、0.80より大きい場合は室温の脆さが顕著になり、本発明の目的の達成が困難となる。
さらに、本発明では、割合(B/(A+B))が、0.30以上0.60以下であることが好ましい。
前記割合が0.30以上であれば、樹脂組成物に含まれる結晶性分子鎖を有するユニットの質量によらず、安定して優れたシャープメルト特性が得られることを、本発明者等は実験により確認している。また、0.60以下では、室温における脆さが特に良化することを実験により確認している。
前記割合で、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーを用いることによって、結晶性分子鎖を有さないユニットの含有量をC(質量部)、結晶性分子鎖を有するユニットの含有量をD(質量部)としたとき、該結晶性分子鎖を有さないユニットに対する該結晶性分子鎖を有するユニットの含有割合(D/(C+D))が0.25以上0.80以下である樹脂組成物を得ることができる。
また、前記割合(D/(C+D))は、0.30以上0.60以下であることが好ましい。
結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーとの重合には、従来公知のラジカル重合開始剤を適用することができる。具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブタンニトリル)、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤や、ジベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、過酸化アセチル、過酸エステル(例えばt−ブチルペルオクテートおよびα−クミルペルオキシピバレート)等の有機過酸化物系重合開始剤を例示することができる。また、アセトフェノン系やケタール系等の光ラジカル重合開始剤も適用可能である。また、ラジカル重合開始剤は1種類を使用しても良いし、複数を適宜混合して使用しても良い。2種類以上のラジカル重合開始剤を使用する場合には、10時間半減期温度が10℃以上異なるラジカル重合開始剤を使用すると、ラジカル共重合において、重合転化率を向上させやすいため好ましい。
本発明において、ラジカル共重合を誘起する方法は、一般的なラジカル重合を誘起する方法と同様であり、具体的に、加熱や光照射、還元剤添加等、従来公知の方法を適用することができる。中でも加熱は、作業性や化学反応の制御性という観点から優れており、好ましい。加熱によりラジカルの成長期を誘起する場合、少なくとも1種類のラジカル重合開始剤の10時間半減期温度以上、且つ10時間半減期温度より30℃高い温度以下の範囲に加熱することが好ましい。さらに好ましくは、10時間半減期温度以上、且つ10時間半減期温度より20℃高い温度以下の範囲で加熱することである。本発明の重合工程において、加熱する温度を、昇温、或いは降温しても良い。また、ラジカル共重合は、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーとラジカル重合開始剤とを含有する重合性単量体組成物を調製した上で行うことができ、ラジカル共重合の途中で、ラジカル重合開始剤を追加投入しても良い。
本発明におけるシャープメルト特性とは、貯蔵弾性率値、或いは、損失弾性率値が、図1に示すように温度に対して極めて急激に変化する特性である。樹脂組成物の粘弾性は、レオメーターのような従来公知の方法により評価できる。
以下、本発明における樹脂組成物、及びその製造方法に関する実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(樹脂粘弾性評価)
4MPaでペレット状に成形した樹脂組成物について、レオメーターであるAR2000ex(ティー・エイ・インスツルメント製)を使用し、温度に対する損失弾性率値の変化を計測した。
結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの単独重合体におけるシャープメルト性が発現する温度を基準とし、該温度より5℃高い温度と該温度より5℃低い温度での損失弾性率の変化幅が、107Pa以上である場合に良好なシャープメルト特性を示したと判断した。
(相分離構造の観察方法)
2MPaでペレット状に成形した樹脂組成物を、液体窒素中で割断し、四酸化ルテニウム蒸気で染色した後、走査型電子顕微鏡で樹脂組成物断面の反射電子像を観察した。
(脆性の評価)
結晶性カルボン酸ビニルエステル類の単独重合体と、この結晶性カルボン酸ビニルエステル類をラジカル重合性モノマーとして得た樹脂組成物との砕けやすさを比較して、脆性の評価とした。
具体的には、上記単独重合体と上記樹脂組成物とに対して4MPaの荷重をかけて、それぞれのペレットを形成し、得られたペレットを、室温において指で押しつぶし、その砕けやすさを比較した。樹脂組成物の砕けやすさが、単独重合体と比べて、同等の場合はpoor、良化した場合はfair、顕著に良化した場合はgoodと判定した。
(カルボン酸ビニルエステル類の単独重合体の合成例1)
20mLのガラス容器に1.0gのドコサン酸エテニルと0.8gのトルエンを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.2gのトルエンに溶解させておいた0.034gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル重合を開始した。6時間後、前記ガラス容器中の内容物を大量のエタノール中に投入し、ドコサン酸エテニルの重合体を析出物として回収した。乾燥した析出物を指で押しつぶしたところ、簡単に砕けてしまったことから、ドコサン酸エテニルの単独重合体は室温脆性に乏しいと判断した。なお、ドコサン酸エテニルは、上記化合物1におけるR1が水素、R2が炭素数21の直鎖状アルキル基(分子量295)である結晶性カルボン酸ビニルエステル類である。
(カルボン酸ビニルエステル類の単独重合体の合成例2)
「カルボン酸ビニルエステル類の単独重合体の合成例1」におけるドコサン酸エテニルをステアリン酸ビニルに変更し、ステアリン酸ビニルの重合体を得た。ステアリン酸ビニルの重合体は、ドコサン酸エテニルの重合体と同等に脆いことを確認した。なお、ステアリン酸ビニルは、上記化合物1におけるR1が水素、R2が炭素数17の直鎖状アルキル基(分子量239)である結晶性カルボン酸ビニルエステル類である。
(カルボン酸ビニルエステル類の単独重合体の合成例3)
「カルボン酸ビニルエステル類の単独重合体の合成1」におけるドコサン酸エテニルをパルミチン酸ビニルに変更すると共に、V−601の秤量を0.25に変更し、パルミチン酸ビニルの重合体を得た。パルミチン酸ビニルの重合体は、ドコサン酸エテニルの重合体と同程度に脆いことを確認した。なお、パルミチン酸ビニルは、上記化合物ユニット1におけるR1が水素、R2が炭素数15の直鎖状アルキル基(分子量211)である結晶性カルボン酸ビニルエステル類である。
(カルボン酸ビニルエステル類以外の結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの単独重合体の合成例)
「カルボン酸ビニルエステル類の単独重合体の合成1」におけるドコサン酸エテニルをベヘニルアクリレートに変更し、ベヘニルアクリレートの重合体を得た。ベヘニルアクリレートの重合体は、ドコサン酸エテニルの重合体と同程度に脆いことを確認した。尚ベヘニルアクリレートは化合物2に示す構造を有する。
Figure 0006448215
<実施例1>
20mLのガラス容器に合計で10.0gとなるように、スチレンとドコサン酸エテニルを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.4gのトルエンに溶解させておいた0.4gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル共重合を開始した。5時間後、0.2gのトルエンに溶解させておいた0.2gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル共重合を継続した。1時間後、前記ガラス容器から固形物を減圧乾燥することにより、粘弾性を有する樹脂組成物を得た。なお、スチレンとドコサン酸エテニルのモノマー反応性比は、r1が15、r2が0.01である。
前記重合操作において、スチレンとドコサン酸エテニルの仕込み質量をそれぞれ以下のように組み合わせて、樹脂組成物code1からcode11を得た。
code1:
9.0gのスチレンと1.0gのドコサン酸エテニルから得た樹脂組成物(結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合0.10)
code2:
8.0gのスチレンと2.0gのドコサン酸エテニルから得た樹脂組成物(結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合0.20)
code3:
7.5gのスチレンと2.5gのドコサン酸エテニルから得た樹脂組成物(結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合0.25)
code4:
7.0gのスチレンと3.0gのドコサン酸エテニルから得た樹脂組成物(結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合0.30)
code5:
6.0gのスチレンと4.0gのドコサン酸エテニルから得た樹脂組成物(結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合0.40)
code6:
5.0gのスチレンと5.0gのドコサン酸エテニルから得た樹脂組成物(結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合0.50)
code7:
4.0gのスチレンと6.0gのドコサン酸エテニルから得た樹脂組成物(結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合0.60)
code8:
3.0gのスチレンと7.0gのドコサン酸エテニルから得た樹脂組成物(結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合0.70)
code9:
2.0gのスチレンと8.0gのドコサン酸エテニルから得た樹脂組成物(結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合0.80)
code10:
1.5gのスチレンと8.5gのドコサン酸エテニルから得た樹脂組成物(結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合0.85)
code11:
1.0gのスチレンと9.0gのドコサン酸エテニルから得た樹脂組成物(結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの割合0.90)
得られた樹脂組成物中に含まれるドコサン酸エテニルに由来するユニットの質量分率を1H−NMRから算出し、表1にまとめた。
また、相分離構造と室温における脆性を観察し、評価結果を表1にまとめた。
樹脂組成物とドコサン酸エテニルの単独重合体の樹脂粘弾性評価を行い、損失弾性率の温度依存性を比較した。本実施例では、ドコサン酸エテニルの単独重合体におけるシャープメルト特性が発現する温度である60℃を基準とし、得られた樹脂組成物の55℃における損失弾性率と65℃における損失弾性率との変化幅に基づいて、シャープメルト特性を評価した。比較結果を表1にまとめた。
また、スチレンの重合体とドコサン酸エテニルの単独重合体を用いた相分離構造の観察を以下のようにして行った。
スチレンの重合体と、合成例1で得たドコサン酸エテニルの単独重合体を、クロロホルムに溶解させて溶解液とした後、この溶解液を大量のメタノールに展開して析出物を得た。減圧乾燥した析出物の内部構造を確認したところ、スチレンの重合体と、ドコサン酸エテニルの重合体から成る相分離構造が観察された。
なお、上記したスチレンの重合体は、下記手順によって得たものである。20mLのガラス容器に1.0gのスチレンと10.0gのトルエンを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.2gのトルエンに溶解させておいた0.04gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル重合を開始した。6時間後、前記ガラス容器中の内容物を大量のメタノール中に投入し、スチレンの重合体を析出物として回収した。
尚、樹脂組成物code3からcode9は、島相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがスチレンに由来するユニットであり、海相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがドコサン酸エテニルに由来するユニットである、海島型相分離構造を有するものであった。
Figure 0006448215
<実施例2>
20mLのガラス容器に6.0gのメチルメタクリレートと4.0gのドコサン酸エテニルを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.4gのトルエンに溶解させておいた0.4gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル共重合を開始した。5時間後、0.2gのトルエンに溶解させておいた0.2gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル共重合を継続した。1時間後、前記ガラス容器から固形物を減圧乾燥することにより、樹脂組成物code12を得た。code12に含まれるドコサン酸エテニルに由来するユニットの質量分率を1H−NMRから算出したところ、38.6質量%であった。
code12の内部構造を観察したところ、島相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがメチルメタクリレートに由来するユニットであり、海相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがドコサン酸エテニルに由来するユニットである、海島型相分離構造が確認された。
また、code12の脆性を観察し、goodと判定した。更に、code12の樹脂粘弾性評価を行い、code5と同等のシャープメルト特性を有することを確認した。
なお、メチルメタクリレートとドコサン酸エテニルのモノマー反応性比は、r1が5.5、r2が0.05である。
また、メチルメタクリレートの重合体とドコサン酸エテニルの単独重合体を用いた相分離構造の観察を以下のようにして行った。
メチルメタクリレートの重合体と、合成例1で得たドコサン酸エテニルの単独重合体を、クロロホルムに溶解させて溶解液とした後、この溶解液を大量のメタノールに展開して析出物を得た。減圧乾燥した析出物の内部構造を確認したところ、島相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがメチルメタクリレートに由来するユニットであり、海相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがドコサン酸エテニルに由来するユニットである海島型相分離構造が観察された。
なお、上記したメチルメタクリレートの重合体は、下記手順によって得たものである。20mlのガラス容器に1.0gのメチルメタクリレートと10.0gのトルエンを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.2gのトルエンに溶解させておいた0.04gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル重合を開始した。6時間後、前記ガラス容器中の内容物を大量のメタノール中に投入し、メチルメタクリレートの重合体を析出物として回収した。
<実施例3>
20mLのガラス容器に6.0gのアクリルニトリルと4.0gのドコサン酸エテニルを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.4gのトルエンに溶解させておいた0.4gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル共重合を開始した。5時間後、0.2gのトルエンに溶解させておいた0.2gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル共重合を継続した。1時間後、前記ガラス容器から固形物を減圧乾燥することにより、樹脂組成物code13を得た。code13に含まれるドコサン酸エテニルに由来するユニットの質量分率を1H−NMRから算出したところ、36.9質量%であった。
code13の内部構造を観察したところ、島相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがアクリルニトリルに由来するユニットであり、海相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがドコサン酸エテニルに由来するユニットである、海島型相分離構造が確認された。
また、code13の脆性を観察し、goodと判定した。更に、code13の樹脂粘弾性評価を行い、code5と同等のシャープメルト特性を有することを確認した。
なお、アクリルニトリルとドコサン酸エテニルのモノマー反応性比は、r1が4.5、r2が0.1である。
また、アクリロニトリルの重合体とドコサン酸エテニルの単独重合体を用いた相分離構造の観察を以下のようにして行った。
アクリルニトリルの重合体と、合成例1で得たドコサン酸エテニルの単独重合体を、クロロホルムに溶解させて溶解液とした後、この溶解液を大量のメタノールに展開して析出物を得た。減圧乾燥した析出物の内部構造を確認したところ、島相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがアクリルニトリルに由来するユニットであり、海相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがドコサン酸エテニルに由来するユニットである海島型相分離構造が観察された。
なお、上記したアクリルニトリルの重合体は、下記手順によって得たものである。20mlのガラス容器に1.0gのアクリルニトリルと10.0gのトルエンを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.2gのトルエンに溶解させておいた0.04gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル重合を開始した。6時間後、前記ガラス容器中の内容物を大量のメタノール中に投入し、アクリルニトリルの重合体を析出物として回収した。
<実施例4>
20mlのガラス容器に6gのスチレンと4gの合成例2のステアリン酸ビニルを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を70℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.8gのトルエンに溶解させておいた0.4gのV−65と0.4gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル共重合を開始した。5時間後、恒温槽の設定温度を80℃に昇温し、ラジカル共重合を継続した。2時間後、前記ガラス容器から固形物を減圧乾燥することにより、樹脂組成物code14を得た。code14に含まれるステアリン酸ビニルに由来するユニットの重量分率を1H−NMRから算出したところ、40.2質量%であった。
code14の内部構造を観察したところ、島相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがスチレンに由来するユニットであり、海相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがステアリン酸ビニルに由来するユニットである、海島型相分離構造が確認された。
また、code14の脆性を観察し、goodと判定した。更に、code14とステアリン酸ビニルの重合体の樹脂粘弾性評価を行い、損失弾性率の温度依存性を比較し、code14がステアリン酸ビニルの重合体と同等のシャープメルト特性を有することを確認した。なお、code14のシャープメルトの開始温度と、ステアリン酸ビニルの重合体のシャープメルト特性の発現温度は、何れも48℃であった。尚、スチレンとステアリン酸ビニルのモノマー反応性比は、r1が15、r2が0.01である。
また、スチレンの重合体とステアリン酸ビニルの単独重合体を用いた相分離構造の観察を以下のようにして行った。
スチレンの重合体と、合成例2で得たステアリン酸ビニルの単独重合体を、クロロホルムに溶解させて溶解液とした後、この溶解液を大量のメタノールに展開して析出物を得た。減圧乾燥した析出物の内部構造を確認したところ、島相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがスチレンに由来するユニットであり、海相を構成する樹脂成分の主構成ユニットがステアリン酸ビニルに由来するユニットである海島型相分離構造が観察された。
なお、上記したスチレンの重合体は、下記手順によって得たものである。20mLのガラス容器に1.0gのスチレンと10.0gのトルエンを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.2gのトルエンに溶解させておいた0.04gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル重合を開始した。6時間後、前記ガラス容器中の内容物を大量のメタノール中に投入し、スチレンの重合体を析出物として回収した。
<比較例1>
20mLのガラス容器に6.0gのスチレンと4.0gの合成例3のパルミチン酸ビニルを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.8gのトルエンに溶解させておいた1.0gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル共重合を開始した。5時間後、0.8gのトルエンに溶解させておいた1.0gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル共重合を継続した。1時間後、前記ガラス容器から固形物を減圧乾燥することにより、樹脂組成物ref1を得た。ref1に含まれるパルミチン酸ビニルに由来するユニットの質量分率を1H−NMRから算出したところ、39.7質量%であることを確認した。
ref1の内部構造を観察したところ、相分離構造を確認できなかった。ref1の脆性を観察し、goodと判定した。ref1とパルミチン酸ビニルの重合体の樹脂粘弾性評価を行い、損失弾性率の温度依存性を比較した。パルミチン酸ビニルの重合体は、シャープメルト特性の発現温度が38℃であったのに対し、ref1はシャープメルト特性を有さず、温度とともに損失弾性率が連続的に減少した。なお、スチレンとパルミチン酸ビニルのモノマー反応性比は、r1が15、r2が0.01である。
また、スチレンの重合体とパルミチン酸ビニルの単独重合体を用いた相分離構造の観察を以下のようにして行った。
スチレンの重合体と、合成例3で得たパルミチン酸ビニルの重合体を、クロロホルムに溶解させて溶解液とした後、この溶解液を大量のメタノールに展開して析出物を得た。減圧乾燥した析出物の内部構造を確認したところ、相分離構造は観察されなかった。
なお、上記したスチレンの重合体は、下記手順によって得たものである。20mLのガラス容器に1.0gのスチレンと8.0gのトルエンを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、2.2gのトルエンに溶解させておいた0.25gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル重合を開始した。6時間後、前記ガラス容器中の内容物を大量のメタノール中に投入し、スチレンの重合体を析出物として回収した。
<比較例2>
20mLのガラス容器に10.0gのスチレンと上記合成例のベヘニルアクリレート(化合物3)を秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.4gのトルエンに溶解させておいた0.4gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル共重合を開始した。6時間後、前記ガラス容器から固形物を減圧乾燥することにより、樹脂組成物ref2を得た。ref2に含まれるベヘニルアクリレートに由来するユニットの質量分率を1H−NMRから算出したところ、40.2質量%であることを確認した。
また、ref2の内部構造を観察したところ、明確な相分離構造を確認できなかった。
ref2の脆性を観察し、goodと判定した。ref2とベヘニルアクリレートの重合体の樹脂粘弾性評価を行い、損失弾性率の温度依存性を比較した。ベヘニルアクリレートの重合体は、シャープメルトの発現温度が63℃であったのに対し、ref2はシャープメルト特性を有さず、温度とともに損失弾性率が連続的に減少した。なお、スチレンとベヘニルアクリレートのモノマー反応性比は、r1が0.8、r2が0.3である。
また、スチレンの重合体とベヘニルアクリレートの単独重合体を用いた相分離構造の観察を以下のようにして行った。
スチレンの重合体と、合成例4で得たベヘニルアクリレートの単独重合体を、クロロホルムに溶解させて溶解液とした後、この溶解液を大量のメタノールに展開して析出物を得た。減圧乾燥した析出物の内部構造を確認したところ、相分離構造は観察されなかった。
なお、上記したスチレンの重合体は、下記手順によって得たものである。20mLのガラス容器に1.0gのスチレンと10.0gのトルエンを秤り取った。セラムラバーと窒素導入管を取り付けた前記ガラス容器を80℃の恒温槽中に設置し、10分間の窒素バブリングを行った。その後、0.2gのトルエンに溶解させておいた0.04gのV−601を前記ガラス容器中に注入し、ラジカル重合を開始した。6時間後、前記ガラス容器中の内容物を大量のメタノール中に投入し、スチレンの重合体を析出物として回収した。

Claims (8)

  1. 結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーとを、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル共重合して、電子写真トナー用の樹脂バインダーを得る電子写真トナー用樹脂バインダーの製造方法であって、
    該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーは、ドコサン酸エテニルであり
    該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーと該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーとは、それぞれの単独重合体を溶媒に溶解後、析出させたときに、相分離構造を形成する組み合わせであり、
    該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマー及び該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーのモノマー反応性比をそれぞれr1とr2としたとき、該r1と該r2とが下記の規定を満たし、
    1>1.0
    2<1.0
    (r1=k11/k12であり、
    11は、該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーに、該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーが付加する反応における反応速度定数であり、
    12は、該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーに、該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーが付加する反応における反応速度定数であり、
    2=k22/k21であり、
    22は、該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーに、該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーが付加する反応における反応速度定数であり、
    21は、該結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーに、該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーが付加する反応における反応速度定数である。)
    該共重合における、結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーの量をA(質量部)、結晶性分子鎖を有するラジカル重合性モノマーの量をB(質量部)としたとき、B/(A+B)が0.25以上0.80以下である、
    ことを特徴とする電子写真トナー用樹脂バインダーの製造方法。
  2. 該結晶性分子鎖を有さないラジカル重合性モノマーが、スチレン、メチルメタクリレート及びアクリロニトリルからなる群より選択されるモノマーである請求項に記載の電子写真トナー用樹脂バインダーの製造方法。
  3. 該B/(A+B)が0.30以上0.60以下である請求項1又は2に記載の電子写真トナー用樹脂バインダーの製造方法。
  4. 該ラジカル重合開始剤として、10時間半減期温度が10℃以上異なる2種類以上のラジカル重合開始剤を用いる請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真トナー用樹脂バインダーの製造方法。
  5. 該相分離構造が、海島型相分離構造である請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真トナー用樹脂バインダーの製造方法。
  6. 結晶性分子鎖を有さないユニットと結晶性分子鎖を有するユニットとを有する電子写真トナー用樹脂バインダーであって、
    該結晶性分子鎖を有するユニットは、下記ユニット1であり、
    Figure 0006448215
    (式中、R1は、水素原子であり、R2は、CH 3 (CH 2 20 である。)
    該電子写真トナー用樹脂バインダーにおける、結晶性分子鎖を有さないユニットの含有量をC(質量部)、結晶性分子鎖を有するユニットの含有量をD(質量部)としたとき、D/(C+D)が0.25以上0.80以下であり、
    該電子写真トナー用樹脂バインダーが、海島型相分離構造を有し、該海島型相分離構造における島相を構成する樹脂成分の主構成ユニットが該結晶性分子鎖を有さないユニットであり、海相を構成する樹脂成分の主構成ユニットが該結晶性分子鎖を有するユニットである、
    ことを特徴とする電子写真トナー用樹脂バインダー。
  7. 該結晶性分子鎖を有さないユニットが、
    Figure 0006448215
    からなる群から選択されるいずれかのユニットである請求項に記載の電子写真トナー用樹脂バインダー。
  8. 該D/(C+D)が0.30以上0.60以下である請求項6又は7に記載の電子写真トナー用樹脂バインダー。
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