JP6939002B2 - 樹脂組成物および成形材料 - Google Patents

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本発明は樹脂組成物およびこれを用いた成形材料に関する。
反応活性のある不飽和結合を有する単量体の多くは、連鎖移動を起こす触媒を用いて適切な条件で反応させることによりポリマーを生成することができる。ポリマーを工業的に利用する場合、一種の単量体を用いたホモポリマーでは、材料の多様な要求に応えることができないため、異種のポリマーを混合する方法が用いられている。しかし、異種のポリマーを単に混合しただけでは、ポリマー同士が相溶せずに比較的大きなサイズのドメインを持った相分離(マクロ相分離と呼ばれる)され、異種のポリマーの混合物は、各ポリマーが有する特性を共に発現させることが困難な場合が多い。
上記の課題を解決する方法として、2種以上のポリマーセグメントを化学結合させたブロックコポリマーを用いる方法が知られている。異種のポリマーの混合物は、前述の通りポリマー同士の相溶性が低いため相分離が起こるが、ブロックポリマーはポリマーセグメント同士が互いに化学結合で連結しているため、その相分離構造はナノメーターサイズになる(ミクロ相分離と呼ばれる)。そのため、各ポリマーセグメントが有する特性を共に発現させることができる。
例えばアクリル樹脂成形体は透明性に優れるが、硬くて脆いという課題がある。前述の2種以上のポリマーセグメントを化学結合させた(メタ)アクリルブロックコポリマーであれば、相分離構造はミクロ相分離構造となるため、各ポリマーセグメントの特性を発揮させることによって、透明性に優れるとともに、耐衝撃性や柔軟性にも優れたアクリル樹脂成形体を実現できる。
(メタ)アクリルブロック/グラフトコポリマーの製造方法として、連鎖移動定数が極めて高いコバルト錯体をごく微量用いてアクリル系マクロモノマーをあらかじめ製造し、そのアクリル系マクロモノマーと他のアクリル系モノマーを共重合させることで(メタ)アクリルブロック/グラフトコポリマーを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1)。コバルト錯体を用いてアクリル系マクロモノマーを製造する方法は、触媒的連鎖移動重合(Catalytic Chain Transfer Polymerization: CCTP)と呼ばれる方法である。マクロモノマーとは、重合反応が可能な官能基を持った高分子のことであり、別名マクロマーとも呼ばれるものである。
特許文献1には、マクロモノマーを反応器に装填して加熱し、ここにコモノマーおよび重合開始剤を滴下して共重合させることによって、マクロモノマーの転化率を約80〜約100%にまで高めてマクロモノマー共重合体を製造する方法が記載されている。
さらに、CCTPを乳化重合法に適用してマクロモノマーを製造し、次いで乳化重合法で共重合させることによってグラフトコポリマー(コームコポリマー)を製造し、熱可塑性樹脂に添加する方法が知られている(特許文献2)。
特表2000−514845号公報 特表2004−509195号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されているグラフトコポリマーは、ポリメチルメタクリレートと混合したときの透明性が必ずしも十分ではない。
本発明は、ポリメチルメタクリレートとマクロモノマー共重合体の混合物の透明性を向上させることを目的とする。
本発明は以下の実施態様を有する。
[1] ポリメチルメタクリレート(A)とマクロモノマー共重合体(B)を含む樹脂組成物であって、前記ポリメチルメタクリレート(A)がメチルメタクリレート単位を80質量%以上含み、前記マクロモノマー共重合体(B)が、下記一般式(1)で表されるマクロモノマー(a)由来の単位35〜60質量%と、コモノマー(b)由来の単位40〜65質量%とからなり、前記マクロモノマー(a)由来の単位のうち、メチルメタクリレート単位が80質量%以上であり、前記コモノマー(b)由来の単位のうち、アクリレート単位が65質量%以上である、樹脂組成物。
Figure 0006939002
(式中、R及びR〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端基である。nは、2〜10,000の自然数である。)
[2] 前記マクロモノマー共重合体(B)のH−NMR測定において、下記式(2)で表されるHxの値が0.05以上0.40以下であることを特徴とする、[1]の樹脂組成物。
Hx=Hm/Ht (2)
(式(2)において、Hmは、前記一般式(1)のXがメチル基である場合の、末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークの積分値である。Htは、前記一般式(1)のXがメチル基である場合の、末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークの積分値と、前記一般式(1)のXが水素原子である場合の末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークの積分値との合計である。)
[3] 前記式(2)において、NMR装置を使用し、重クロロホルムとトルエンの重量比が88:12である混合溶媒中、40℃の条件でH−NMRを測定し、テトラメチルシランのピークを0.00ppmとした時、前記Hmは、5.43ppmおよび5.47ppmの各ピークの積分値の合計であり、前記Htは、5.43ppm、5.47ppmおよび5.52ppmの各ピークの積分値の合計である、[2]の樹脂組成物。
[4] 前記マクロモノマー共重合体(B)中の硫黄元素の含有量が0.02質量%以下である、[1]〜[3]のいずれかの樹脂組成物。
[5] 前記マクロモノマー共重合体(B)が、含硫黄連鎖移動剤残基を含まない[1]〜[4]のいずれかの樹脂組成物。
[6] 前記マクロモノマー共重合体(B)中の、未反応のマクロモノマー(a)の含有量が10質量%以下である、[1]〜[5]のいずれかの樹脂組成物。
[7] 前記マクロモノマー共重合体(B)中の、コモノマー(b)単位のみからなる重合体の含有量が10質量%以下である、[1]〜[6]のいずれかの樹脂組成物。
[8] 前記マクロモノマー(a)の数平均分子量が7,000〜20,000である、[1]〜[7]のいずれかの樹脂組成物。
[9] 前記ポリメチルメタクリレート(A)の質量平均分子量が50,000〜150,000である、[1]〜[8]のいずれかの樹脂組成物。
[10] [1]〜[9]のいずれかの樹脂組成物からなる成形材料。
本発明の樹脂組成物は、ポリメチルメタクリレートとマクロモノマー共重合体の混合物であり、透明性に優れる。
本発明の成形材料は、ポリメチルメタクリレートとマクロモノマー共重合体の混合物であり、透明性に優れる。
実施例および比較例の成形材料における透明性の評価結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施できる。
なお、以下において重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」といい、「単量体」を省略することもある。また、重合体を構成する単量体単位のことを「〜由来の単位」または「〜単位」という。また、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを示す。
本発明の樹脂組成物は成形材料として好適である。
以下の成形材料(D)は本発明の樹脂組成物の好ましい態様である。
本発明に係る成形材料(D)は、ポリメチルメタクリレート(A)と、マクロモノマー共重合体(B)、必要に応じて加えられるその他の成分(C)からなる。マクロモノマー共重合体(B)は、下記一般式(1)で表されるマクロモノマー(a)と、マクロモノマー(a)と共重合可能な他の重合性単量体であるコモノマー(b)からなる重合性成分(X)を共重合して得られる。
Figure 0006939002
(式中、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端基である。nは、2〜10,000の自然数である。)
[ポリメチルメタクリレート(A)]
ポリメチルメタクリレート(A)は、メチルメタクリレート単位を主成分とするポリマーであり、一般的にメタクリル樹脂やアクリル樹脂と呼ばれる。ポリメチルメタクリレートは一般的にPMMAと略記される。ポリメチルメタクリレート(A)は、メチルメタクリレート単位の他に、種々の目的でコモノマー単位を含んでもよい。たとえば、ポリメチルメタクリレート(A)が少量のアクリレート単位を含むと、高温条件下での解重合の進行を阻害することで耐熱分解性を上げることができる。また、コモノマーの種類や量を調整することで、ポリメチルメタクリレート(A)のガラス転移温度(Tg)や加工性、耐熱性、屈折率、耐候性、離型性、耐熱分解性、等の機能を適宜加えることができる。
ポリメチルメタクリレート(A)が含むメチルメタクリレート単位以外のコモノマー単位の原料となるコモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;グリジシル(メタ)アクリレート、グリジシルα−エチルアクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート系のビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
これらの中で、モノマーの入手のし易さの点で、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、メチルアクリレートがより好ましい。
ポリメチルメタクリレート(A)を構成する単量体単位の組成としては、メチルメタクリレート単位を80質量%以上含み、85質量%以上含むことが好ましい。メチルメタクリレート単位を80質量%含むことで、ポリメチルメタクリレートが持つ耐熱性、硬度、耐擦傷性、耐候性、透明性、加工性、等の性能が発揮されやすくなる。
ポリメチルメタクリレート(A)の質量平均分子量(Mw)は、30,000〜1000,000が好ましく、50,000〜500,000がより好ましく、80,000〜200,000がさらに好ましく、50,000〜150,000が特に好ましい。質量平均分子量が30,000以上であればポリメチルメタクリレートが持つ耐熱性、硬度、耐擦傷性、耐候性、透明性、等の性能が発揮されやすくなる。また、質量平均分子量が1000,000以下であれば、溶融粘度が適正な範囲内となり、溶融混練性や加工性が良好となる。
[マクロモノマー(a)]
マクロモノマー(a)は、ポリ(メタ)アクリレートセグメントの片末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基を持つ。
[R・R〜R
一般式(1)において、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基は、置換基を有することができる。
R及びR〜Rのアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びイコシル基が挙げられる。これらの中で、入手しやすさから、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、及びt−ブチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
R及びR〜Rのシクロアルキル基としては、例えば、炭素数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、アダマンチル基、等が挙げられる。入手しやすさから、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びアダマンチル基が好ましい。
R及びR〜Rのアリール基としては、例えば、炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。具体例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。
R及びR〜Rの複素環基としては、例えば、炭素数5〜18の複素環基が挙げられる。複素環に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。複素環基の具体例としては、例えば、γ−ラクトン基、ε−カプロラクトン基、モルフォリン基、等が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としては、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(−COOR’)、カルバモイル基(−CONR’R’’)、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基(−NR’R’’)、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、アルコキシ基(−OR’)、及び親水性もしくはイオン性を示す基からなる群から選択される基又は原子が挙げられる。なお、R’又はR’’の例としては、それぞれ独立して、Rと同様の基(ただし複素環基を除く。)が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのカルバモイル基としては、例えば、N−メチルカルバモイル基及びN,N−ジメチルカルバモイル基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのアミド基としては、例えば、ジメチルアミド基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
R又はR〜Rの置換基としての親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシ基のアルカリ塩又はスルホキシル基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
R及びR〜Rは、アルキル基及びシクロアルキル基から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルキル基がより好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はi−プロピル基が好ましく、入手のしやすさの観点から、メチル基がより好ましい。
[X〜X
一般式(1)において、X〜Xは、それぞれ水素原子又はメチル基であり、メチル基が好ましい。さらに、マクロモノマー(a)の合成し易さの観点から、X〜Xの80%以上がメチル基であることが好ましい。
[Z]
一般式(1)において、Zは、マクロモノマー(a)の末端基である。マクロモノマー(a)の末端基としては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子及びラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
マクロモノマー(a)の数平均分子量(Mn)は、マクロモノマー共重合体(B)を含有する成形材料から得られる成形体の機械物性及びミクロ相分離構造制御の点で、1,000以上1,000,000以下が好ましい。マクロモノマー(a)のMnの下限値は、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましく、7,000以上が特に好ましい。また、マクロモノマー(a)のMnの上限値は、500,000以下が好ましく、100,000以下がさらに好ましく、20,000以下が特に好ましい。
Mnが下限値以上であればマクロモノマー共重合体(B)が含有するマクロモノマー(a)由来のセグメントの重量比を大きくすることができ、ミクロ相分離構造制御が容易になると共に、マクロモノマー共重合体(B)の機械物性が良好になる。Mnが上限値以下であればマクロモノマー共重合体(B)が含有するコモノマー(b)由来のセグメントの重量比を大きくすることができ、ミクロ相分離構造制御が容易になると共にマクロモノマー共重合体(B)を合成する際の混合物粘度が取扱い容易な範囲内となる。
マクロモノマー(a)の数平均分子量(Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用し、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の検量線から算出した値を意味する。
[マクロモノマー(a)の原料モノマー]
マクロモノマー(a)を得るための原料モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;グリジシル(メタ)アクリレート、グリジシルα−エチルアクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート系のビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
これらの中で、モノマーの入手のし易さの点で、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、が好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、がより好ましい。
また、マクロモノマー(a)を得るための原料モノマーとしては、生成物であるマクロモノマー共重合体(B)及びこれを含有する成形体の耐熱性の点からは、メタクリレートおよびアクリレートを含有するモノマー組成物が好ましい。
アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート及びt−ブチルアクリレートが挙げられる。これらの中で、入手しやすさの点で、メチルアクリレートが好ましい。
一般式(1)で表されるマクロモノマー(a)は、マクロモノマー共重合体(B)において、ポリメチルメタクリレート(A)と相溶するセグメントとしての役割を担う。そのため、マクロモノマー(a)が含む単量体単位の組成は、ポリメチルメタクリレート(A)と同等であることが好ましい。
本発明において、マクロモノマー(a)由来の単位のうち、メチルメタクリレート単位が80質量%以上100質量%以下であり、85質量%以上100質量%以下が好ましい。
また、マクロモノマー(a)は、マクロモノマー共重合体(B)を成形材料(D)の一部として用いることから、メタクリル酸やアクリル酸などの加工時の熱によって架橋やゲル化したり脱ガスを生じたりする恐れがある成分を含まないことが好ましい。
[マクロモノマー(a)の製造方法]
マクロモノマー(a)は、公知の方法で製造できる。マクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許第4680352号明細書)、α−ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開第88/04304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60−133007号公報、米国特許第5147952号明細書)及び熱分解による方法(特開平11−240854号公報)等が挙げられる。
これらの中で、マクロモノマー(a)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数が高い触媒を使用する点で、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。
コバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマー(a)を製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法及び、懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が挙げられる。これらの中で、マクロモノマー(a)の回収工程の簡略化の点から水系分散重合法が好ましい。また、溶液重合法であれば、マクロモノマー(a)を回収せずにそのままコモノマー(b)及び熱重合開始剤を追添加してマクロモノマー共重合体(B)を重合反応によって得ることも可能である。
本発明において使用されるコバルト連鎖移動剤としては、一般式(3)に示されるコバルト連鎖移動剤が使用でき、例えば、特許第3587530号公報、米国特許第4526945号明細書、同第4694054号明細書、同第4886861号明細書、同第5324879号明細書、国際公開第95/17435号、特表平9−510499号公報、特開2012−158696号公報等に記載されているものを使用することができる。
Figure 0006939002
[式中、R〜Rは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基;Xは、それぞれ独立して、F原子、Cl原子、Br原子、OH基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基及びアリール基である。]
コバルト連鎖移動剤としては、具体的には、ビス(ボロンジフルオロジメチルジオキシイミノシクロヘキサン)コバルト(II)、ビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメイト)コバルト(II)、ビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシメイト)コバルト(II)、ビシナルイミノヒドロキシイミノ化合物のコバルト(II)錯体、テトラアザテトラアルキルシクロテトラデカテトラエンのコバルト(II)錯体、N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミノコバルト(II)錯体、ジアルキルジアザジオキソジアルキルドデカジエンのコバルト(II)錯体、コバルト(II)ポルフィリン錯体などがあげられる。中でも、水性媒体中に安定に存在し、連鎖移動効果が高いビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシメイト)コバルト(II)(R〜R:フェニル基、X:F原子)が好ましい。これらは一種以上を適宜選択して使用することができる。
コバルト連鎖移動剤の使用量は、マクロモノマー(a)を得るためのモノマーの合計量100部に対し5ppmから350ppmが好ましい。コバルト連鎖移動剤の使用量が5ppm未満であれば分子量の低下が不十分となりやすく、350ppmを超えると得られるマクロモノマー(a)が着色しやすい。
マクロモノマー(a)を溶液重合法で得る際に使用される溶剤としては、例えば、トルエン等の炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトン等のケトン;メタノール等のアルコール;アセトニトリル等のニトリル;酢酸エチル等のビニルエステル;エチレンカーボネート等のカーボネート;及び超臨界二酸化炭素が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[マクロモノマー(a)とコモノマー(b)との反応機構]
マクロモノマー(a)とコモノマー(b)との反応機構については、山田らの報文(Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.41,p645−654(2003)、Progress in Polymer Science 31 (2006) p835−877)等に詳しく記載されている。具体的には、マクロモノマー(a)の末端二重結合基は、アクリレートラジカルとの反応では分岐構造を形成し、共重合することができる。一方、マクロモノマー(a)の末端二重結合基とメタクリレートラジカルとの反応では分岐構造の形成が困難であり、主に再開裂して末端二重結合基とメタクリレートラジカルが再生する。コモノマー(b)にスチレンを用いた場合は、分岐構造を形成可能であるが反応の進行が遅くなる傾向がある。よって、コモノマー(b)は、アクリレート(b1)を主成分とし、必要に応じてメタクリレート(b2)やその他のモノマー(b3)を用いることが好ましい。
[コモノマー(b)]
コモノマー(b)は、マクロモノマー(a)と共重合可能であれば特に限定されず、必要に応じて各種の重合性単量体を使用できる。具体的には、マクロモノマー(a)を得るためのモノマーと同様のものが挙げられるが、前述のマクロモノマー(a)との反応性の点でアクリレート(b1)を主に用いることが好ましい。また、必要に応じてメタクリレート(b2)やその他のモノマー(b3)を用いることができる。
アクリレート(b1)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等のアクリレート;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセロールアクリレート等の水酸基含有アクリレート;アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシプロピルコハク酸等のカルボキシ基含有アクリレート;グリジシルアクリレート、グリジシルα−エチルアクリレート、3,4−エポキシブチルアクリレート等のエポキシ基含有アクリレート;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等のアミノ基含有アクリレート;エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルアクリレート等の多官能アクリレート;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
上記の中で、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートが特に好ましい。
本発明の一つの側面において、柔軟性や耐衝撃性、粘着性の付与を目的に、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することができる。
また、屈折率調整のための高屈折率成分として、例えば、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートを使用することができる。その他の目的としては、マクロモノマー(a)との相溶性確保を目的に、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート等を使用することができる。
メタクリレート(b2)としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等のメタクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート等の水酸基含有メタクリレート;メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシプロピルコハク酸等のカルボキシ基含メタクリレート;グリジシルメタクリレート、3,4−エポキシブチルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリレート;ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有メタクリレート;エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能メタクリレート;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
上記の中で、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレートが特に好ましい。
その他のモノマー(b3)としては、例えば、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
コモノマー(b)はアクリレート(b1)を主成分として含むことが好ましい。コモノマー(b)の合計量に対してアクリレート(b1)の割合は65〜100質量%であり、75〜100質量が好ましい。
すなわち、コモノマー(b)由来の単位のうち、アクリレート単位が65〜100質量%であり、75〜100質量が好ましい。
コモノマー(b)の組成比としては、前述のマクロモノマー(a)との反応性の点から、アクリレート(b1)とメタクリレート(b2)の比である(b1:b2)=70:30〜100:0の範囲内であることが好ましく、(b1:b2)=80:20〜100:0がより好ましい。
アクリレート(b1)とメタクリレート(b2)の比を上記の範囲内に収めることで、マクロモノマー(a)とコモノマー(b)との反応性を確保し、マクロモノマー共重合体(B)が含むブロックポリマーやグラフトポリマーの割合を十分に高めることができる。アクリレート(b1)が少ないと、マクロモノマー(a)が十分に反応せずに未反応のまま残ってしまったり、十分に分子量が上がらなかったり、反応時間が長くなりすぎたりする場合がある。
その他のモノマー(b3)の使用量は少ない方が好ましい。例えばコモノマー(b)の合計量に対して他のモノマー(b3)の割合は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。ゼロでもよい。
重合性成分(X)に対して、マクロモノマー(a)が0.02〜5.0モル%であることが好ましく、0.1〜5.0モル%がより好ましく、0.49〜3.0モル%がさらに好ましい。
重合性成分(X)がマクロモノマー(a)とコモノマー(b)からなる場合、マクロモノマー(a)とコモノマー(b)との仕込比としては、コモノマー(b)とマクロモノマー(a)の仕込モル比である(b:a)が、99.98:0.02〜95.00:5.00の範囲内であることが好ましく、99.90:0.10〜95.00:5.00の範囲内であることがより好ましく、99.51:0.49〜97.00:3.00の範囲内であることがさらに好ましい。
マクロモノマー(a)が少なすぎると、マクロモノマー(a)を含まずにコモノマー(b)のみからなるポリマーが生成する場合がある。逆にマクロモノマー(a)が多すぎると未反応のマクロモノマー(a)が大量に残る原因となる場合がある。本発明者らは鋭意検討の結果、マクロモノマー(a)とコモノマー(b)の仕込モル比が上記の範囲内であれば、重合反応中に残っているマクロモノマー(a)とコモノマー(b)の組成比がほぼ一定の状態を保つことができることを見出した。
[マクロモノマー共重合体(B)]
マクロモノマー共重合体(B)は、マクロモノマー(a)と、コモノマー(b)を含む重合性成分(X)を共重合して得られる。マクロモノマー共重合体(B)は、マクロモノマー(a)に由来する単位と、コモノマー(b)に由来する単位を有する。
マクロモノマー共重合体(B)は、マクロモノマー(a)単位とコモノマー(b)単位を有するブロックコポリマー(BI)、側鎖にマクロモノマー(a)単位を有するコモノマー(b)のグラフトコポリマー(BII)から選ばれる少なくとも1種を含む。さらに、マクロモノマー共重合体(B)は、コモノマー(b)のみからなるポリマー(BIII)、マクロモノマー(a)単位のみを有するポリマー、未反応のマクロモノマー(a)、未反応のコモノマー(b)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。
[ブロックコポリマー(BI)]
ブロックコポリマー(BI)は、マクロモノマー(a)単位とコモノマー(b)単位からなるブロックを同一分子内に併せ持つブロックコポリマーである。このブロックコポリマー(BI)は、コモノマー(b)がラジカルを有する活性種(成長ラジカル)となった状態でマクロモノマー(a)の末端二重結合と反応することで生成する。ブロックコポリマー(BI)の末端構造はマクロモノマー(a)と同じ構造の末端二重結合基となっているものを含む。つまり、ブロックコポリマー(BI)はマクロモノマー(a)単位とコモノマー(b)単位からなるブロックを併せ持つブロックコポリマーで、且つ末端二重結合基を有するものを含む。この末端二重結合基を有するブロックコポリマー(BI)は、ブロックマクロモノマーと呼べる。
原料であるマクロモノマー(a)がメタクリレート単位を主成分として含むことから、前記一般式(1)においてXは主にメチル基となる。一方で、ブロックポリマー(BI)が有する末端二重結合では、コモノマー(b)がアクリレート(b1)を主成分として含むことから、前記一般式(1)においてXは水素原子である。両者の違いによって、H−NMR(核磁気共鳴)における末端二重結合基のトランス位のプロトン由来のピークの位置が異なること山田らの報文で明らかにされている(Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.41,p645−654(2003)、Progress in Polymer Science 31 (2006) p835−877)。
[グラフトポリマー(BII)]
グラフトポリマー(BII)は、前述の末端二重結合を有するブロックコポリマー(BI)(前記ブロックマクロモノマー)がコモノマー(b)と共重合することで生成する。このグラフトポリマー(BII)は同一分子内に複数のマクロモノマー(a)単位を含むものや多分岐構造になっているものを含む。マクロモノマー共重合体(B)のミクロ相分離構造制御能や耐熱分解性の点で、ブロックコポリマー(BI)とグラフトポリマー(BII)は共に良好な働きをするため、両方含まれていて問題ない。
[ポリマー(BIII)]
ポリマー(BIII)は、コモノマー(b)のみが重合して生成したポリマーである。ポリマー(BIII)は、コモノマー(b)単位のみからなる重合体であり、ポリマー構造中にマクロモノマー(a)単位を含まない。ポリマー(BIII)は、マクロモノマー共重合体(B)のミクロ相分離構造制御能を低下させるため、より少ないことが好ましい。
マクロモノマー共重合体(B)が含むポリマー(BIII)は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
未反応のマクロモノマー(a)は、マクロモノマー共重合体(B)のミクロ相分離制御能と耐熱分解性の点で、少ない方が好ましい。
マクロモノマー共重合体(B)が含む未反応のマクロモノマー(a)は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
マクロモノマー共重合体(B)の質量平均分子量(Mw)は、30,000以上5,000,000以下が好ましく、100,000以上1,000,000以下がより好ましい。Mwが30,000以上であれば成形体の機械強度及び耐熱分解性が良好となり、5,000,000以下であれば成形性が良好となる。
[Hm、Ht及びHxについて]
下記式(2)で表されるHxについて説明する。
Hx=Hm/Ht …(2)
Hxは、マクロモノマー共重合体(B)においてマクロモノマー(a)の反応率やグラフトポリマー(BII)の生成比を反映させた指標である。Hxが小さいほど、マクロモノマー共重合体(B)が含むグラフトポリマー(BII)が多く、且つマクロモノマー(a)の反応率が高い。それは、Hmの値はマクロモノマー(a)とコモノマー(b)の共重合反応の過程において常に減少するが、Htの値は重合後期においてHmの値よりも大きくなるためである。
[Hm]
Hmは、マクロモノマー共重合体(B)のH−NMR測定において、一般式(1)のXがメチル基である場合の、末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークの積分値である。
マクロモノマー(a)は主成分がメタクリレートであることから、Xは主にメチル基である。したがって、Xがメチル基である場合の末端二重結合基の数の変化は、マクロモノマー(a)の末端二重結合基の数の変化の指標とすることができる。
NMR装置を使用し、重クロロホルムとトルエンの重量比が88:12である混合溶媒中、40℃の条件でH−NMRを測定し、テトラメチルシランのピークを0.00ppmとした時、Xがメチル基である場合の末端二重結合基のトランス位のプロトンと対応するピークは、5.43ppm付近と5.47ppm付近に現れる。Hmの値は、マクロモノマー(a)とコモノマー(b)の共重合反応の過程においてマクロモノマー(a)が消費されていくにしたがって減少する。
Hmは、5.43ppmおよび5.47ppmの各ピークの積分値を合計することで、求めることができる。
[Ht]
Htは、マクロモノマー共重合体(B)のH−NMR測定において、一般式(1)のXがメチル基である場合の、末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークの積分値と、一般式(1)のXが水素原子である場合の末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークの積分値との合計である。
ブロックポリマー(BI)は、コモノマー(b)単位が主にアクリレート(b1)単位からなることから、一般式(1)におけるXは主に水素原子である。したがって、Xが水素原子である場合の末端二重結合基の数の変化は、ブロックポリマー(BI)の末端二重結合基の数の変化の指標とすることができる。
NMR装置を使用し、重クロロホルムとトルエンの重量比が88:12である混合溶媒中、40℃の条件でH−NMRを測定し、テトラメチルシランのピークを0.00ppmとした時、Xが水素原子である場合の、末端二重結合基のトランス位のプロトンと対応するピークは、5.52ppm付近に現れる。この5.52ppm付近のピークは、マクロモノマー(a)とコモノマー(b)の共重合反応の過程において、ブロックポリマー(BI)の生成と消費が同時に進行していくことから、重合初期には徐々にピークが大きくなっていくが、重合後期には徐々にピークが減少していく。
Htは、5.43ppm、5.47ppmおよび5.52ppmの各ピークの積分値を合計することで、求めることができる。
H−NMRの各ピークの帰属は、山田らの報文(Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.41,p645−654(2003)、Progress in Polymer Science 31 (2006) p835−877)で明らかにされている。H−NMRの各ピークの厳密な位置は、重溶媒や測定温度等のH−NMRの測定条件によって変化することから、H−NMRの好ましい測定条件について後述する。
H−NMRの測定]
[NMR装置]
前記Hxを求める場合、またはマクロモノマー(a)とコモノマー(b)の共重合反応を追跡する場合、高い分解能が求められることから、より高周波数のNMR(核磁気共鳴)装置を使用することが好ましい。具体的には、250MHz以上が好ましく、400MHz以上がより好ましく、500MHz以上がさらに好ましい。
[サンプル調製]
マクロモノマー共重合体(B)を溶解させる重溶媒は、マクロモノマー共重合体(B)を均一に溶解させられるものであれば特に制限されないが、入手しやすさと溶解性の点で重クロロホルムが好ましい。特に、TMS(テトラメチルシラン)を基準物質として含む高純度の重クロロホルムを用いることが好ましい。
マクロモノマー共重合体(B)は、再沈等の精製を行わずに測定することが好ましい。精製操作を実施すると、マクロモノマー共重合体(B)が含む低分子量成分が除かれてしまい、正確な解析の妨げとなる場合がある。マクロモノマー共重合体(B)を溶液重合で製造した場合もそのまま重溶媒で希釈して測定することが好ましい。
マクロモノマー共重合体(B)は測定サンプル中に5質量%以上含むことが好ましい。溶液が薄すぎると一般式(1)の末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークを検出することが困難となる。
[NMR測定条件]
H−NMRの測定ではより積算回数を多くした方が、一般式(1)の末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークが検出しやすくなる。積算回数は1000回以上が好ましく、5000回以上がより好ましく、10000回以上がさらに好ましい。測定時のサンプル溶液の温度はより高い方が好ましいが、重溶媒の沸点を考慮して適切な範囲で設定する。例えば、重溶媒として重クロロホルムを用いる場合、40℃程度が好ましい。
[マクロモノマー共重合体(B)の製造方法]
マクロモノマー共重合体(B)の製造方法は、マクロモノマー(a)およびコモノマー(b)からなる重合性成分(X)を重合反応させる工程を有する。
重合性成分(X)を重合反応させる方法は特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の種々の方法を用いることができる。懸濁重合や乳化重合のような水系重合であれば重合発熱の制御が容易で回収操作がより簡便となるため生産性が高い点で好ましく、溶液重合であれば反応溶液の均一性が重合後期まで保たれた状態で反応させることが可能である。また、溶液重合や乳化重合はマクロモノマーの合成からマクロモノマー共重合体の合成まで連続して行うことが可能である点で有利である。
本発明のマクロモノマー共重合体(B)の製造方法では、マクロモノマー(a)とコモノマー(b)は反応開始時点で全て同一の反応容器内に投入済みであることが好ましい。重合性成分の滴下が必要な場合は、マクロモノマー(a)とコモノマー(b)を反応容器内と同じ組成比で均一に混合したものを滴下する必要がある。これは、反応容器中のマクロモノマー(a)とコモノマー(b)の組成比を常に一定に保つためであり、それによってマクロモノマー(a)のみが残ったり、コモノマー(b)のみが残ったりする現象を抑制することができる。
重合の際には、重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤として、メルカプタン類、水素、αメチルスチレンダイマー、テルペノイド類等を少量添加しても良い。ただし、連鎖移動剤を多量に添加した場合、マクロモノマー共重合体(B)の組成分布が広くなってしまう可能性があるため、使用量はなるべく少量に抑えることが好ましい。たとえば、マクロモノマー共重合体(B)が含む、メルカプタン由来の硫黄元素は0.02質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。また、マクロモノマー共重合体(B)が含硫黄連鎖移動剤残基を含まないことが好ましい。
ラジカル重合開始剤の存在下で重合する場合には、ラジカル重合開始剤として、有機過酸化物あるいはアゾ化合物を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2 , 2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。
これらの中でも、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が好ましい。これらラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ラジカル重合開始剤は、マクロモノマー(a)とコモノマー(b)の合計量100質量部に対して0.0001〜10質量部の範囲内で用いることが好ましい。
重合温度については特に制限はなく、例えば、−100〜250℃であり、好ましくは0〜200℃の範囲であり、さらに好ましくは60〜80℃である。重合時間全体の5割以上を占める時間の重合温度が60℃以上80℃以下であることが好ましい。
[マクロモノマー共重合体(B)の合成反応追跡]
[マクロモノマー(a)の反応率]
マクロモノマー(a)の反応率とは、マクロモノマー(a)がコモノマー(b)由来の単量体単位を含む共重合体に変化したものの割合を意味する。つまり、マクロモノマー(a)がグラフトポリマー(BII)に変換された割合とは異なる。それは、マクロモノマー(a)由来の末端二重結合基は、共重合反応の過程において、ブロックポリマー(BI)の末端に移動するためである。
本発明におけるマクロモノマー共重合体(a)の反応率は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって求めた値である。HPLC測定では、マクロモノマー(a)が含む単量体単位の組成とコモノマー(b)の組成が異なれば、測定条件を適切に設定することでマクロモノマー(a)ピークの面積や高さからマクロモノマー(a)の反応率を求めることができる。
マクロモノマー(a)の反応率は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
[コモノマー(b)の反応率]
コモノマー(b)の反応率は、例えば、H−NMR(核磁気共鳴)やGC(ガスクロマトグラフィー)などによって求めることができる。NMRの場合、H−NMRスペクトルや13C−NMRスペクトルからコモノマー(b)の反応率を求めることが可能である。GCの場合、コモノマー(b)が高分子量化して減少していく割合から反応率を求めることが可能である。コモノマー(b)の反応率は、NMRによって求めた場合とGCによって求めた場合で同等の値となる。本発明におけるコモノマー(b)の反応率は、原則としてH−NMRで求めた値を採用する。ただし、複数のモノマーをコモノマー(b)として併用するなどして基準ピークの大きさが見積れないなど、H−NMRではコモノマー(b)の反応率が正確に算出できない場合は、GCもしくはその他の解析方法を用いてコモノマー(b)の反応率を求めることもできる。
コモノマー(b)の反応率は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
[マクロモノマー(a)由来の末端二重結合反応率]
マクロモノマー(a)由来の末端二重結合は、共重合の反応過程においてブロックポリマー(BI)の末端に移動したのち、最終的にグラフトポリマー(BII)に取り込まれることで初めて消費される。すなわち、マクロモノマー(a)由来の末端二重結合が消費されるとき、マクロモノマー共重合体(B)中に分岐構造が生じる。
マクロモノマー(a)由来の末端二重結合反応率が高いほどマクロモノマー共重合体(B)が多くのグラフトポリマー(BII)を含むことになり好ましい。マクロモノマー(a)由来の末端二重結合反応率は53%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
本発明において、マクロモノマー(a)由来の末端二重結合反応率は、H−NMR(核磁気共鳴)によって原料のマクロモノマー(a)とマクロモノマー共重合体(B)を比較して求めた値である。
重合反応進行中に、反応系で、未反応の重合性成分(X)の組成が一定に保たれるように重合反応させると、マクロモノマー(a)由来の末端二重結合反応率は100%よりも低くなる傾向がある。
これは、マクロモノマー(a)由来の末端二重結合が一旦ブロックポリマー(BI)の末端に移動したのちにグラフトポリマー(BII)に取り込まれるためである。すなわち、マクロモノマー(a)の消費とコモノマー(b)の消費が同じように進行すると一定量のブロックポリマー(BI)がグラフトポリマー(BII)に取り込まれる前の状態で残る。マクロモノマー(a)由来の末端二重結合反応率を100%に近づけるためには、重合反応中にコモノマー(b)を滴下する方法が考えられるが、重合中に重合性成分(X)の組成が変化し、重合終盤にコモノマーのみからなるポリマー(BIII)が多く生成してしまう。
マクロモノマー共重合体(B)が十分均一な組成になる重合条件では、マクロモノマー(a)由来の末端二重結合反応率は90%以下となりやすい。
マクロモノマー(a)由来の末端二重結合反応率は、53%以上90%以下が好ましく、60%以上85%以下がより好ましく、70%以上80%以下がさらに好ましい。
マクロモノマー共重合体(B)の組成は、マクロモノマー(a)由来の単位を35〜60質量%、コモノマー(b)由来の単位を40〜65質量%含むことが好ましい。
マクロモノマー(a)由来の単位が35質量%以上であると、マクロモノマー共重合体(B)とポリメチルメタクリレート(A)との相溶性が良好となり、ミクロ相分離構造においてコモノマー(B)由来の単位からなるポリマーセグメントの相分離サイズが十分小さくなると共に共連続構造を取りやすくなる。
コモノマー(b)由来の単位が40質量%以上であるとコモノマー(b)由来のポリマーセグメントの特性が発現しやすく、また、ポリメチルメタクリレート(A)に加えるマクロモノマー共重合体(B)の添加量を抑制することができる。
より好ましくは、マクロモノマー(a)由来の単位の含有量が40〜55質量%であり、コモノマー(b)由来の単位の含有量が45〜60質量%である。
マクロモノマー共重合体(B)の組成は、マクロモノマー共重合体(B)に含まれる、ブロックコポリマー(BI)、グラフトコポリマー(BII)、ポリマー(BIII)、マクロモノマー(a)単位のみを有するポリマー、および未反応のマクロモノマー(a)、未反応のコモノマー(b)の合計における組成である。精製を行わない場合は、マクロモノマー共重合体(B)の組成は仕込み時の組成と等しい。
マクロモノマー共重合体(B)は、マクロモノマー(a)由来の単位を35〜60質量%、コモノマー(b)由来の単位を40〜65質量%含み、前記Hxの値が0.05以上0.40以下であることが好ましく、0.10以上0.35以下が好ましい。
Hxの値が前記範囲の下限値以上であるとマクロモノマー共重合体(B)が含む未反応のマクロモノマー(a)が少ないことからマクロモノマー共重合体(B)の耐熱分解性が良好であり、成形材料に好適である。さらに、グラフトコポリマー(BII)を多く含むことからミクロ相分離構造が制御され、透明性が良好となる。一方、上限値以下であると未反応のマクロモノマー(a)を多く含むことからマクロモノマー共重合体(B)の耐熱分解性が不十分となり、成形材料として用いた時に分解ガスの発生による成形不良が生じる場合がある。
本発明のマクロモノマー共重合体(B)は、ブロックコポリマー(BI)およびグラフトコポリマー(BII)の含有率が高く、耐熱分解性に優れる。例えばマクロモノマー共重合体(B)の5%重量減少温度が320℃以上を達成することができる。
[その他の成分(C)]
その他の成分(C)は、成形材料(D)が含むポリメチルメタクリレート(A)およびマクロモノマー共重合体(B)以外の成分である。その他の成分(C)は、成形材料(D)に、加工性、離型性、耐熱性、耐熱分解性、耐擦傷性、耐候性、柔軟性、耐衝撃性、発色性、意匠性、加工性、硬度、等の機能を付与するために用いられる。
その他の成分(C)としては、例えば、離型剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐衝撃性改良剤、柔軟性付与剤、耐候性改良剤、着色剤、無機顔料、有機顔料、カーボンブラック、フェライト、導電性付与剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収材、滑剤、無機充填剤、強化剤、可塑剤、逆可塑剤、中和剤、架橋剤、難燃剤、防腐剤、防虫剤、芳香剤、ラジカル補足剤、吸音材、コアシェルゴム、等が挙げられる。
[成形材料(D)の組成]
本発明に係る成形材料(D)は、ポリメチルメタクリレート(A)と、マクロモノマー共重合体(B)、必要に応じて加えられるその他の成分(C)からなる。成形材料(D)が含むポリメチルメタクリレート(A)は、10〜99質量%が好ましく、20〜98質量%がより好ましく、50〜90%がさらに好ましい。成形材料(D)が含むマクロモノマー共重合体(B)は、1〜90質量%が好ましく、2〜80質量%が好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。マクロモノマー共重合体(B)の含有量は、必要とされる柔軟性や耐衝撃性の値によって最適化される。
その他の成分(C)は、添加するものの種類によって最適な添加量が適宜選択されるが、0〜20質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。その他の成分(C)が多すぎると成形後のブリードが課題になったり、コスト面で不利になったりする。一方、その他の成分(C)の添加量が少なすぎると、改良効果が表れにくくなる。
[成形材料(D)の製造方法]
成形材料(D)として、ポリメチルメタクリレート(A)、マクロモノマー共重合体(B)、必要に応じて加えられるその他の成分(C)を混合する方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、ブレンダー等の物理的混合方法及び押出機等の溶融混合法が挙げられる。成形材料(D)を用いて溶融成形することを想定した場合、あらかじめポリメチルメタクリレート(A)、マクロモノマー共重合体(B)、必要に応じて加えられるその他の成分(C)を溶融混練し、ペレット状に加工しておくことが好ましい。
成形材料(D)を用いて成形する成形体の形状としては、例えば、シート状及び3次元形状が挙げられる。成形体を得るための成形方法としては、溶融成形法が好ましく、例えば射出成形法、圧縮成形法、中空成形法、押出成形法、等が挙げられる。
本発明によれば、ミクロ相分離構造が制御されたポリメチルメタクリレートとマクロモノマー共重合体からなる成形材料が提供される。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の例によって制限されるものではない。
以下において配合量の単位である「部」は「質量部」の意味である。
[マクロモノマー共重合体(B)の解析法]
[GPC測定]
Mw及びMnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して求めた。以下に測定条件を示す。
装置:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER H−H(4.6×35mm、東ソー社製)と2本のTSK−GEL SUPER HM−H(6.0×150mm、東ソー社製)を直列に接続
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速: 0.6mL/分
Mw(質量平均分子量)及びMn(数平均分子量)は、Polymer Laboratories製のポリメチルメタクリレート(Mp(ピーク分子量)=141,500、55,600、11,100及び1,590の4種)を用いて作成した検量線を使用して算出した。分子量分布は、式「分子量分布=(質量平均分子量)/(数平均分子量)」により算出した。
[NMR測定]
前記Hxを求めるためのHm及びHtの値は、H−NMR測定によって求められる。H−NMR測定は核磁気共鳴装置を用いて実施した。以下に測定条件を示す。
装置:UNITY INOVA500(Varian社製、周波数500MHz)
重溶媒:重クロロホルム(シグマ−アルドリッチ社製、テトラメチルシラン(TMS)0.05v/v%添加、純度99.7%)
サンプル調製:重合性成分(X)及びその反応生成物であるマクロモノマー共重合体(Y)の合計重量の割合が33質量%であるトルエン溶液を調製した。次いで前記トルエン溶液0.225gに対して重クロロホルムを1.1g加えてNMR測定用サンプル溶液とした。NMR測定用サンプル溶液における重クロロホルムとトルエンの重量比は88:12であった。NMR測定用サンプル溶液が含む重合性成分(X)及びその反応生成物であるマクロモノマー共重合体は、5.66質量%であった。
測定条件:積算回数10000回、測定温度40℃
[HPLC測定]
マクロモノマー(a)の反応率は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を使用して測定した。測定条件を以下に示す。
装置:Alliance e2695(ウォーターズ社製)
カラム:TSKgel ODS100V(5μm、4.6×150mm、東ソー社製)
溶離液:アセトニトリル(A液)、テトラヒドロフラン(B液)
グラジエント条件:リニアグラジエント 0分(A液/B液=100/0)−10分(A液/B液=0/100)−15分(A液/B液=0/100)
測定温度:40℃
流速:1.0mL/分
検出器:荷電粒子検出器 Corona ultra RS(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
重合反応中にサンプリングした反応液をテトラヒドロフランに溶解し、サンプル溶液とした。また、マクロモノマー(a)をテトラヒドロフランに溶解し、標準溶液とした。標準溶液のクロマトグラムのうちマクロモノマー(a)に該当するピークの面積や高さから検量線を作成した。この検量線を用いてサンプルのクロマトグラムのうちマクロモノマー(a)に該当するピークの面積や高さからマクロモノマー(a)の反応率を求めた。
[マクロモノマー(a)由来の末端二重結合反応率の算出]
上記の条件でH−NMR測定を実施した場合、一般式(1)でR及びR〜Rがメチルの場合、マクロモノマー(a)の末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークは5.43ppm、5.47ppm、及び5.52ppmに観測され、ポリメチルメタクリレート部のメチルエステル(R〜R)由来のプロトンピークは3.6ppmに観測される。そこで、3.6ppmのピーク積分値を基準とし、5.43ppm、5.47ppm、及び5.52ppmのピーク積分値が減少した割合を算出することでマクロモノマー(a)由来の末端二重結合反応率を算出した。具体的には、あらかじめマクロモノマー(a)のH−NMR測定を実施したのち、重合反応中にサンプリングした反応液をH−NMR測定して比較し、マクロモノマー(a)由来の末端二重結合反応率を算出した。
[コモノマー(b)の反応率の算出]
コモノマー(b)がn−ブチルアクリレートの場合、H−NMR測定でブチルエステル中の最もエステル結合に近いメチレン(−CH−)部位のプロトンと、ポリn−ブチルアクリレート部のブチルエステル中の最もエステル結合に近いメチレン(−CH−)部位のプロトンは、それぞれ4.1〜4.3ppmと3.9〜4.1ppmに観測される。3.9〜4.3ppmのピーク積分値と、3.9〜4.1ppmのピーク積分値の比を算出することでn−ブチルアクリレートの反応率を算出した。
[再沈殿]
溶液重合で得られたマクロモノマー共重合体(B)は、再沈殿を実施することで溶剤と残ったコモノマー(b)を取り除く方法で回収した。まず、重合反応溶液100質量部にトルエン200質量部を加えて希釈液300質量部を得た。次いで前記希釈液を、3000質量部のメタノール中に投じて沈殿物を生じさせ、その沈殿物を濾過して固体の回収物を得た。この回収物を減圧乾燥してマクロモノマー共重合体(B)を得た。
[溶融混練]
ポリメチルメタクリレート(A)とマクロモノマー共重合体(B)は、ラボプラストミル(東洋精機製作所社製)を用いて溶融混練を実施した。サンプルを合計57gとなるように計量し、240℃で10分間、30rpmの条件で溶融混練したのち取り出し、スタンプミル(日陶科学社製)を用いて粉砕した。
[小型成形片作製]
成形材料(D)を、小型射出成形機(井元製作所社製、18D7)を使用し、2mm厚の板状射出成形片を作製した。樹脂温度は240℃に設定し、3分間以上溶融混練したのち、射出成形した。
[耐熱分解性の評価(5%重量減少温度の測定)]
耐熱分解性は、熱重量測定/示差熱分析装置を使用してマクロモノマー共重合体(B)の重量減少を追跡して評価した。以下に測定条件を示す。
装置:SIIナノテクノロジー社製 TG/DTA6300
測定条件:窒素気流200mL/分、40℃〜550℃、昇温速度10℃/分
[透明性の評価(△Haze値の測定)]
射出成形して作製した2mm厚の成形板(板状射出成形片)を用い、ヘイズ値の測定を実施した。以下に測定条件を示す。
装置:日本電色工業社製 NDH2000
測定条件:全光線透過率はJIS K7361−1、ヘイズ値(曇価)はJIS K7316に準拠して評価した。
標準板としてVH001(三菱レイヨン社製、ポリメチルメタクリレート、商品名)で作成した2mm厚板を用い、各サンプルのヘイズ値(単位:%)と標準板のヘイズ値(単位:%)との差の絶対値をΔHaze値として算出した。ΔHaze値で比較することで、外部ヘイズの影響を除いた内部ヘイズの値を比較することができる。
<製造例1:分散剤(1)の合成>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応装置中に、17質量%水酸化カリウム水溶液61.6部、メチルメタクリレート19.1部及び脱イオン水19.3部を仕込んだ。次いで、反応装置内の液を室温にて撹拌し、発熱ピークを確認した後、4時間撹拌した。この後、反応装置中の反応液を室温まで冷却してメタクリル酸カリウム水溶液を得た。
次いで、撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、42質量%メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム水溶液(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルSEM−Na)70部、上記のメタクリル酸カリウム水溶液16部及びメチルメタクリレート7部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、反応装置内の液を50℃に昇温した。重合装置中に、重合開始剤としてV−50(和光純薬工業社製、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、商品名)0.053部を添加し、反応装置内の液を60℃に昇温した。重合開始剤投入後、15分毎にメチルメタクリレート1.4部を計5回(メチルメタクリレートの合計量7部)、分割添加した。この後、重合装置内の液を撹拌しながら60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分8質量%の分散剤(1)を得た。
<製造例2:連鎖移動剤(1)の合成>
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬工業社製、和光特級)2.00g(8.03mmol)及びジフェニルグリオキシム(東京化成社製、EPグレード)3.86g(16.1mmol)及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、室温で2時間攪拌した。
次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成社製、EPグレード)20mlを加え、更に6時間攪拌した。得られたものをろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、100MPa以下で、20℃において12時間乾燥し、茶褐色固体の連鎖移動剤(1)5.02g(7.93mmol、収率99質量%)を得た。
<製造例3:マクロモノマー(a−1)の合成>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム(NaSO)0.1部及び製造例1で製造した分散剤(1)(固形分10質量%)0.26質量部を入れて撹拌して、均一な水溶液とした。次に、メチルメタクリレート(三菱レイヨン社製)95部、メチルアクリレート(三菱化学社製)5部、製造例2で製造した連鎖移動剤(1)0.0016部及び重合開始剤としてパーオクタO(日油(株)製、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、商品名)0.13部を加え、水性分散液とした。
次いで、重合装置内を十分に窒素置換し、水性分散液を80℃に昇温してから3時間保持した後に90℃に昇温して2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、マクロモノマーの水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー(a−1)を得た。マクロモノマー(a−1)のMwは32,500、Mnは16,500であった。マクロモノマー(A−1)において、メチルメタクリレート単位/メチルアクリレート単位の質量比は95/5であった。マクロモノマー(a−1)の末端二重結合の導入率は、ほぼ100%であった。
<製造例4:マクロモノマー共重合体(B−1)の合成>
製造例4では、溶液重合法によりマクロモノマー共重合体(B−1)を製造した。
攪拌機、冷却管及び温度計を備えたセパラブルフラスコ内に、トルエン(和光純薬工業社製)100部、製造例3で製造したマクロモノマー(a−1)50部を入れて50℃で1時間撹拌して均一な溶液とした。一度室温まで冷却後、n−ブチルアクリレート(三菱化学社製)50部、AMBN(商品名、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、大塚化学社製)0.3部を加えて撹拌して均一な溶液を得た。30分間窒素バブリングを実施してセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換した。次いで69℃まで昇温して重合を開始し、窒素フローを施しながら8時間反応を進行させた後、室温まで冷却してマクロモノマー共重合体(B−1)を含むポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液を20mg秤取し、5mLのテトラヒドロフランで希釈し、GPC測定を実施した。また、得られたポリマー溶液を0.15g秤取し、重クロロホルム1.2gで希釈し、NMRを測定した。上記の方法で、HPLC測定、H−NMR測定も実施した。
得られたマクロモノマー共重合体のMnは55,400、Mwは131,300であった。HPLC測定から求めたマクロモノマー(a−1)の反応率は95%であった。1H−NMR測定から求めたコモノマー(b)の反応率は90%、Hxの値は0.21、未反応のマクロモノマー(a−1)の含有量は2.8質量%であった。
また、コモノマー(b)として用いたn−ブチルアクリレートのホモポリマーはヘキサンに可溶であることから、マクロモノマー共重合体(B)が含むヘキサン可溶ポリマーの重量比を求めたところ、3.2質量%であった。また、ヘキサン可溶ポリマーの組成を1H−NMRで解析したところ、n−ブチルアクリレート単量体単位が88質量%、メチルメタクリレート単量体単位が12質量%であった。すなわち、マクロモノマー共重合体(B)が含むコモノマー(b)単量体単位のみからなるポリマーは3.2質量%以下であった。
次に、得られたポリマー溶液100質量部をトルエン(和光純薬工業社製)200部で希釈した後、3000質量部のメタノール(和光純薬工業社製)に投入して沈殿物を生じさせた。得られた沈殿物を濾別して回収し、減圧乾燥させて精製されたマクロモノマー共重合体を得た。再沈精製後のマクロモノマー共重合体を使用し、熱重量測定/示差熱分析装置を使用して耐熱分解性を評価したところ、5%重量減少温度は324℃であった。重合条件及び評価結果を表1にまとめた。
<製造例5:マクロモノマー共重合体(B−2)の合成>
製造例5では、懸濁重合法を用いてマクロモノマー共重合体(B−2)を合成した。脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部、及び製造例1で製造した分散剤(1)0.26部を混合して水性懸濁液を調製した。冷却管付きセパラブルフラスコに、マクロモノマー(a−1)40部、コモノマー(b)としてアクリレート(b1)であるn−ブチルアクリレート(三菱化学社製)36部、およびメタクリレート(b2)であるメチルメタクリレート(三菱レイヨン社製)24部、n−オクチルメルカプタン(関東化学社製)0.1部を仕込み、撹拌しながら50℃に加温し、均一な組成物を得た。得られた組成物を40℃以下に冷却した後、組成物にAMBN(商品名、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、大塚化学社製)0.3部を溶解させた。
次いで、冷却管付きセパラブルフラスコに水性懸濁液を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、撹拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。シラップ分散液を75℃に昇温し、セパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、シラップ分散液が75℃となった時点でシラップ分散液を85℃に昇温し、30分間保持して重合反応を完結させ、懸濁液を得た。懸濁液を40℃以下に冷却したのち、濾過物を40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー共重合体(B−2)を得た。
製造例4と同様の測定を行った。重合条件及び評価結果を表1にまとめた。
なお、マクロモノマー共重合体(B−2)に関しては、その他のモノマー(c)としてメチルメタクリレートを用いたことから、ヘキサン可溶成分の単離及び評価は行わなかった。
Figure 0006939002
<実施例1>
ポリメチルメタクリレート(A−1)としてVH001(商品名、三菱レイヨン社製、メチルメタクリレート単位を主成分とするポリメチルメタクリレート、質量平均分子量(Mw)100,000)を用いた。
ポリメチルメタクリレート(A−1)90部、製造例4で合成したマクロモノマー共重合体(B−1)10部をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)を用いて溶融混練した。樹脂温度240℃、30rpmの条件で10分間混練した後、スタンプミル(日陶科学社製)を使用して粉砕し、粉状の成形材料を得た。
次いで、小型射出成形機(井元製作所社製、18D7)を使用し、2mm厚の板状射出成形片を作製した。条件は樹脂温度を240℃に設定し、3分間以上溶融混練したのち、射出成形した。VH001のみで同じ方法で作製したサンプル片とのヘイズの差をΔHazeとして算出したところ、ΔHazeの値は3.4%であった。また、射出成形したサンプル片はn−ブチルアクリレート単位を5質量%含む。結果を表2にまとめた。
<実施例2〜3、比較例1〜3>
混合するポリマー組成を表2に記載の組成に変更し、その他の条件は実施例1と同じ方法でサンプル片の作製及び評価を実施した。結果を表2にまとめた。
Figure 0006939002
表2の結果より、実施例1〜3と比較例1〜3を比較すると、実施例1〜3で用いたマクロモノマー共重合体(B−1)の方がポリメチルメタクリレートと混合した際の透明性が高いことが分かる。
図1は、成形材料におけるn−ブチルアクリレート単位の含有量を横軸、ΔHazeの値を縦軸とするグラフである。
図1の結果より、マクロモノマー共重合体(B)とポリメチルメタクリレートとの混合物からなる成形材料において、n−ブチルアクリレート単位の含有量が同じである場合、マクロモノマー共重合体(B)としてマクロモノマー共重合体(B−1)を用いた方が成形材料の透明性が高いことがわかる。
実施例1〜3では、マクロモノマー共重合体(B−1)のマクロモノマー(a)の反応率が高く、Hxの値が小さく、n−ブチルアクリレート単位のみからなるポリマーの含有量が少なく、ポリメチルメタクリレートと混合した成形材料の透明性が高い。
一方、マクロモノマー共重合体(B−2)では、マクロモノマー(a)の反応率が低く、Hxの値が大きく、ポリメチルメタクリレートと混合した際の透明性が低い。この結果から、マクロモノマー共重合体(B−2)のミクロ相分離制御能が低いことがわかる。

Claims (12)

  1. ポリメチルメタクリレート(A)とマクロモノマー共重合体(B)を含む樹脂組成物であって、
    前記ポリメチルメタクリレート(A)がメチルメタクリレート単位を80質量%以上含み、
    前記マクロモノマー共重合体(B)が、下記一般式(1)で表されるマクロモノマー(a)由来の単位40〜60質量%と、コモノマー(b)由来の単位40〜60質量%とからなり、
    前記マクロモノマー(a)由来の単位のうち、メチルメタクリレート単位が80質量%以上であり、
    前記コモノマー(b)由来の単位のうち、アクリレート単位が65質量%以上である、樹脂組成物。
    Figure 0006939002
    (式中、R及びR〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端基である。nは、2〜10,000の自然数である。)
  2. 前記コモノマー(b)由来の単位のうち、アクリレート単位が75質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記マクロモノマー(a)由来の単位のうち、メチルメタクリレート単位が85質量%以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記マクロモノマー共重合体(B)のH−NMR測定において、下記式(2)で表されるHxの値が0.05以上0.40以下であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
    Hx=Hm/Ht (2)
    (式(2)において、Hmは、前記一般式(1)のXがメチル基である場合の、末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークの積分値である。Htは、前記一般式(1)のXがメチル基である場合の、末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークの積分値と、前記一般式(1)のXが水素原子である場合の末端二重結合基のトランス位のプロトンに対応するピークの積分値との合計である。)
  5. 前記式(2)において、NMR装置を使用し、重クロロホルムとトルエンの重量比が88:12である混合溶媒中、40℃の条件でH−NMRを測定し、テトラメチルシランのピークを0.00ppmとした時、前記Hmは、5.43ppmおよび5.47ppmの各ピークの積分値の合計であり、前記Htは、5.43ppm、5.47ppmおよび5.52ppmの各ピークの積分値の合計である、請求項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記マクロモノマー共重合体(B)中の硫黄元素の含有量が0.02質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記マクロモノマー共重合体(B)が、含硫黄連鎖移動剤残基を含まない、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  8. 前記マクロモノマー共重合体(B)中の、未反応のマクロモノマー(a)の含有量が10質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  9. 前記マクロモノマー共重合体(B)中の、コモノマー(b)単位のみからなる重合体の含有量が10質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  10. 前記マクロモノマー(a)の数平均分子量が7,000〜20,000である、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  11. 前記ポリメチルメタクリレート(A)の質量平均分子量が50,000〜150,000である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる成形材料。
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