以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。説明の便宜上、船外機1の向きについては、ドライブシャフト14の軸線方向(回転中心線の延伸方向)を船外機1の上下方向とし、ドライブシャフト14のエンジンユニット3の側を「上側」とし、シフト機構15の側を「下側」とする。また、プロペラシャフト161の軸線方向を船外機1の前後方向とし、プロペラシャフト161の推進プロペラ162が設けられる側を「後側」とし、その反対側を「前側」とする。さらに、ドライブシャフト14の軸線方向に直角な方向を「横方向」とする。各図面においては、船外機1の前側を矢印「Fr」で、後側を矢印「Rr」で、上側を矢印「Up」で、下側を矢印「Dn」で、右側を矢印「R」で、左側を矢印「L」で示す。
<船外機の全体構成>
まず、本発明の実施形態に係る船外機1の全体的な構成の例を、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る船外機1の構成例を模式的に示す右側面図である。図1に示すように、船外機1は、船舶9の後尾板91などに取り付けて使用される。なお、図1においては、船外機1が船舶9の後尾板91に取り付けられ、通常の航行時よりも前傾姿勢となっている状態を示す。
船外機1は、最上部に配置されるエンジンカバー11と、エンジンカバー11の下側に配置されるドライブシャフトハウジング12と、ドライブシャフトハウジング12の下側に配置されるギアケース13とを有する。エンジンカバー11とドライブシャフトハウジング12とギアケース13とは、船外機1の筐体であるとともに、船外機1の外観の意匠を構成する。エンジンカバー11は、例えば樹脂材料からなり、射出成形などによって形成される。ドライブシャフトハウジング12とギアケース13とは、例えばアルミニウム合金などの金属材料からなり、鋳造(たとえばダイキャスト)などによって形成される。
エンジンカバー11の内部には、船外機1の駆動力源であるエンジンユニット3が配置される。エンジンユニット3には、OHV方式の4サイクルガソリンエンジンが適用される。そして、エンジンユニット3は、クランクシャフト31の軸線(回転中心線)が上下方向に平行で、かつ、燃焼室414の軸線方向(ピストン33の往復方向)が前後方向に略平行な向きで配置される。なお、エンジンユニット3の構成については後述する。
ドライブシャフトハウジング12の内部には、ドライブシャフト14が回転可能に配置される。ドライブシャフト14は、エンジンユニット3が出力する回転動力(クランクシャフト31の回転)を、ギアケース13の内部に配置されるシフト機構15に伝達する。前述のとおり、ドライブシャフト14の軸線方向を、船外機1の上下方向とする。ドライブシャフト14の上端部は、エンジンユニット3のクランクシャフト31に接続されている。ドライブシャフト14の下端部には、シフト機構15の駆動歯車151が、ドライブシャフト14に一体に回転するように結合されている。
ドライブシャフトハウジング12の上端部には、エクステンション部121(エクステンションケースと称することもある)が取り付けられている。エクステンション部121の下部はドライブシャフトハウジング12の内部に配置されており、上部はドライブシャフトハウジング12の上端から上側に突出している。そして、エンジンユニット3のクランクケース4は、エックステンション部の上側に取り付けられている。このように、ドライブシャフトハウジング12は、エンジンユニット3のクランクケース4の下側に配置される。
ギアケース13の内部には、ドライブシャフト14の下端部と、シフトロッド17の下端部と、シフト機構15と、プロペラシャフト161とが配置されている。前述のとおり、プロペラシャフト161の軸線方向(回転中心線の方向)を、船外機1の前後方向とする。プロペラシャフト161は、ギアケース13の内部に配置され、軸受などを介してギアケース13に回転可能に支持される。推進プロペラ162は、プロペラシャフト161の後端部に、プロペラシャフト161と一体に回転するように取り付けられている。
シフト機構15は、ドライブシャフト14からプロペラシャフト161に伝達される回転動力の断続と、回転方向の正逆の切替えとを行う。シフト機構15は、駆動歯車151と、一対の被動歯車152と、ドッグ153と、ドッグ駆動機構とを有する。駆動歯車151と一対の被動歯車152とは、いずれも笠歯車(ベベルギア)が適用される。駆動歯車151は、ドライブシャフト14の下端部に結合しており、ドライブシャフト14と一体に回転する。一対の被動歯車152は、プロペラシャフト161の外周に前後方向に同軸に並べて配置されており、プロペラシャフト161に対して相対的に回転可能である。また、一対の被動歯車152は、駆動歯車151と常時噛み合っており、互いに反対方向に回転する。ドッグ153は、プロペラシャフト161の外周であって、一対の被動歯車152の間に配置される。ドッグ153は、プロペラシャフト161の外周を軸線方向に移動可能であり、プロペラシャフト161と一体に回転する。
ドッグ153が前側に移動して前側の被動歯車152と係合すると、前側の被動歯車152とドッグ153とは一体に回転する、この状態では、駆動歯車151の回転は、前側の被動歯車152と、ドッグ153とを介してプロペラシャフト161に伝達される。ドッグ153が後側に移動して後側の被動歯車152と係合すると、後側の被動歯車152とドッグ153とは一体に回転する、この状態では、駆動歯車151の回転は、後側の被動歯車152と、ドッグ153とを介してプロペラシャフト161に伝達される。また、ドッグ153が一対の被動歯車152の中間に位置して一対の被動歯車152のいずれにも係合していないと、駆動歯車151の回転は、プロペラシャフト161に伝達されない。このような構成のシフト機構15のシフトポジションは、例えば、ドッグ153が後側の被動歯車152に係合する場合が「前進」であり、前側の被動歯車152に係合する場合が「後進」であり、いずれにも係合しない場合が「中立」である。ドッグ駆動機構は、シフトロッド17の回転によってドッグ153を前後方向に移動させる。ドッグ駆動機構には、シフトロッド17の回転をドッグ153の直線運動に変換するカム機構などが適用される。なお、シフトロッド17の上端部には、シフトレバーが接続されており、使用者(操船者等)は、シフトレバーを操作することによって、シフトロッド17を回転させてシフトポジションを切替えることができる。なお、前述のシフト機構15の構成は一例であり、このような構成に限定されない。シフト機構15には、公知の各種構成が適用できる。
エンジンカバー11の内部であって、エンジンユニット3の上側には、エンジンユニット3のクランクシャフト31の回転によって動作するマグネト装置20(発電機)と、エンジンユニット3を始動させるリコイルスターター21とが配置される。これらマグネト装置20およびリコイルスターター21の構成は、特に限定されるものではない。
エンジンカバー11の下側には、操舵ハンドル191を取り付けるためのステアリングブラケット192が配置される。ステアリングブラケット192は、例えば、ドライブシャフトハウジング12の上端部に配置されるエクステンション部121に取り付けられている。そして、ステアリングブラケット192は、エクステンション部121と一体に(すなわち、船外機1の筐体と一体に)回転する。ステアリングブラケット192には、操舵ハンドル191が、前側に向かって延出するように取り付けられている。操舵ハンドル191には、エンジンユニット3の出力を調節するためのスロットルグリップが配置される。使用者(操船者等)は、操舵ハンドル191を操作することにより、船外機1を左右方向に回転させて操舵することができる。なお、ステアリングブラケット192と操舵ハンドル191の構成は特に限定されるものではない。
エンジンカバー11の下側には、ブラケット機構18が配置される。前述のように、エンジンカバー11の下側にステアリングブラケット192が配置される構成においては、ブラケット機構18は、ステアリングブラケット192の下側に配置される。ブラケット機構18は、スイベルブラケット181とトランサムブラケット182とを有する。スイベルブラケット181は、上下方向に貫通する筒状の構成を有しており、ドライブシャフトハウジング12の上端部近傍の外周に取り付けられている。そして、スイベルブラケット181は、ドライブシャフトハウジング12に対して(すなわち、船外機1の筐体に対して)、相対的に回転可能である。本発明の実施形態においては、スイベルブラケット181のドライブシャフトハウジング12に対する回転中心線と、ドライブシャフト14の軸線(回転中心線)とが一致している。トランサムブラケット182は、スイベルブラケット181の前側に配置される。トランサムブラケット182には、船外機1を船舶9の後尾板91に取り付けるためのクランプ183が設けられる。そして、スイベルブラケット181とトランサムブラケット182とは、ティルト軸184を介して相対的に上下方向(ピッチング方向)に回転可能(上下方向に変位可能)に連結される。なお、ティルト軸184は、軸線方向が左右方向に平行な軸である。このため、使用者(操船者等)は、船外機1が船舶9の後尾板91などに取り付けられた状態で、ティルト軸184を中心として船外機1の筐体を上下方向にティルトおよびトリムさせることができる。
なお、ブラケット機構18の構成は、前記構成に限定されるものではない。要は、船外機1がスイベルブラケット181を有しており、このスイベルブラケット181が、ドライブシャフトハウジング12の外周に、ドライブシャフト14に対して回転可能に取り付けられる構成であればよい。
<エンジンユニットの構成例>
次に、図2と図3を参照して、エンジンユニット3の構成例について説明する。図2は、エンジンユニット3の構成例を模式的に示す断面図であり、前後方向および上下方向に平行な面で切断した断面を右側から見た図である。図3は、エンジンユニット3の構成例を模式的に示す断面斜視図であり、右側斜め上方から見た図である。船外機1のエンジンユニット3には、OHV方式の4サイクルガソリンエンジンが適用される。また、本発明の実施形態では、エンジンユニット3が、1つの燃焼室414を有する単気筒エンジンである例を示す。ただし、エンジンユニット3の燃焼室414の数(気筒数)は特に限定されるものではない。
図2と図3に示すように、エンジンユニット3は、クランクケース4と、シリンダーブロック413と、シリンダーヘッド43と、シリンダーヘッドカバー44と、オイルポンプ35と、オイルフィルター423とを有する。
クランクケース4は、上側ケース41と下側ケース42とを有しており、上下方向に分割可能な構成を有する。上側ケース41には、シリンダーブロック413が一体に設けられており、シリンダーブロック413には、燃焼室414(シリンダ)が設けられる。クランクケース4の内部には、クランクシャフト31とカムシャフト32とが回転可能に配置されている。シリンダーブロック413の燃焼室414の内部には、ピストン33が往復動可能に配置されている。そして、ピストン33とクランクシャフト31とは、コンロッド34(コネクティングロッド)によって連結されている。また、クランクケース4は、潤滑油を貯留するオイルパンを有する。本発明の実施形態では、下側ケース42がオイルパンの機能を有する。なお、上側ケース41と下側ケース42の構成の詳細については後述する。
クランクシャフト31およびカムシャフト32の軸線(回転中心線)は、上下方向に平行である。また、クランクシャフト31の軸線(回転中心線)とドライブシャフト14の軸線(回転中心線)とは一致している。そして、前述のとおり、スイベルブラケット181のドライブシャフトハウジング12の軸線とドライブシャフト14の軸線とは一致している。このため、クランクシャフト31の軸線(回転中心線)とスイベルブラケット181のドライブシャフトハウジング12に対する軸線(回転中心線)とは一致している。
シリンダーヘッド43は、上側ケース41の後側で、かつ、下側ケース42の上側に、シリンダーブロック413に設けられる燃焼室414を覆うように取り付けられる。シリンダーヘッド43には、インテークポートとエグゾーストポートとが設けられるとともに、インテークポートを開閉する吸気バルブと、エグゾーストポートを開閉する排気バルブとが配置される。また、シリンダーヘッド43には、点火プラグが配置される。なお、本発明の実施形態では、エンジンユニット3に、OHV方式の4サイクルガソリンエンジンが適用される。このため、吸気バルブと排気バルブを駆動するカム321が設けられたカムシャフト32は、シリンダーヘッド43ではなくクランクケース4の内部に配置される。シリンダーヘッドカバー44は、シリンダーヘッド43に取り付けられ、シリンダーヘッド43に配置される吸気バルブや排気バルブなどを覆う。また、クランクケース4の後方であってシリンダーブロック413の側方(本発明の実施形態では右側)には、潤滑油を濾過するオイルフィルター423が配置される。
オイルポンプ35は、クランクケース4の下側に配置される。オイルポンプ35は、潤滑油を吸引する吸入口(以下、「ポンプ入口351」と称する)と、潤滑油を吐出する吐出口(以下、「ポンプ出口352」と称する)と、ポンプインナーローター353とを有している。そして、オイルポンプ35は、ポンプインナーローター353が回転すると、ポンプ入口351から潤滑油を吸引し、ポンプ出口352から潤滑油を吐出する。オイルポンプ35は、カムシャフト32から伝達される回転動力により作動する。なお、オイルポンプ35の構成は特に限定されるものではない。オイルポンプ35は、潤滑油を吸入するポンプ入口351と潤滑油を吐出するポンプ出口352とを有しており、外部から伝達される回転動力により作動する構成であればよい。
次に、クランクケース4の上側ケース41と下側ケース42の構成例の詳細について説明する。
クランクケース4の上側ケース41は、下側が開口する略ドーム状の形状を有する。上側ケース41には、シリンダーブロック413が一体に設けられる。シリンダーブロック413に設けられる燃焼室414の軸線(ピストン33の往復方向)は、前後方向に略平行である。また、シリンダーブロック413(燃焼室414)は、クランクシャフト31の後側に設けられる。このため、シリンダーブロック413は、上側ケース41の後側の面から後方に突出するように設けられる。なお、燃焼室414の軸線は、前後方向に平行であってもよいが、船外機1の左右方向の重量バランスや機器の配置などを考慮し、前後方向に対して傾斜していてもよい。各図においては、燃焼室414の軸線が、前後方向に対して右側に傾斜している構成を例に示す。
上側ケース41には、クランクシャフト31の上部を回転可能に支持する上側クランク軸受部411と、カムシャフト32の上端部近傍を回転可能に支持する上側カム軸受部412とが設けられる。上側クランク軸受部411は、クランクシャフト31のメインジャーナル311(クランクジャーナルと称することもある)を挿通可能で、上下方向に貫通する貫通孔が設けられる部分である。上側カム軸受部412は、カムシャフト32の上端部を挿入可能で下側が開口する凹部が設けられる部分である。さらに、上側ケース41には、上側クランク軸受部411の貫通孔の内周面と上側カム軸受部412の凹部の内周面とを連通する第4のオイル経路54が形成される。第4のオイル経路54は、上側ケース41の天板部に設けられる横孔であり、その軸線は横方向に平行な(ドライブシャフト14の軸線に直角な)直線である。
クランクケース4の下側ケース42は、上側が開口するトレイ状の形状を有する。下側ケース42は、潤滑油を貯留するオイルパンの機能を有する。なお、下側ケース42の全体がオイルパンとして機能する構成であってもよく、下側ケース42の一部がオイルパンとして機能する構成であってもよい。例えば、下側ケース42は、後述する下側クランク軸受部421および下側カム軸受部422を除く全域に潤滑油を貯留可能な構成であってもよい。また、下側ケース42には、他の部分に比較して深い部分が設けられ、この他の部分よりも深い部分がオイルパンとして機能する構成であってもよい。要は、クランクケース4が、潤滑油を貯留可能なオイルパンを有していればよい。なお、クランクケース4の底部の一部がオイルパンとして機能する構成においては、少なくとも下側クランク軸受部421の前側に、オイルパンとして機能する部分(例えば、他よりも深い部分)が設けられる。
下側ケース42には、下側クランク軸受部421と下側カム軸受部422とが設けられる。下側クランク軸受部421は、クランクシャフト31の軸線方向の下端部(下側に位置するメインジャーナル311)を挿通可能で上下方向に貫通する貫通孔が設けられる部分である。例えば特に図2に示すように、下側クランク軸受部421は、下側ケース42の底部から上側に突出する円筒状の形状を有する。また、下側クランク軸受部421は、上面視において、下側ケース42の略中心に設けられる。下側カム軸受部422は、カムシャフト32の下端部を挿通可能で上下方向に貫通する貫通孔が設けられる部分である。下側カム軸受部422は、上面視において、下側クランク軸受部421の右斜め後方に設けられる。
なお、下側ケース42は、上面視において、少なくとも下側クランク軸受部421よりも前側の部分が、オイルパンとして機能するように構成される。例えば、下側クランク軸受部421よりも前側には、他の部分よりも深い(内周側の底面の位置が低い)部分が設けられ、この部分がオイルパンとして機能する。また、上面視において下側ケース42の全体がオイルパンとして機能する構成であってもよい。要は、下側クランク軸受部421よりも前側に、オイルパンとして機能する部分を有していればよい。ただし、下側ケース42の内周側の底部の最も深い部分(もっとも位置が低い部分)は、下側クランク軸受部421の前側に設けられる構成であることが好ましい。
このほか、下側ケース42には、オイルフィルター423の筐体であるハウジング本体部426とハウジング支持部427とが一体に設けられる。ハウジング本体部426は、潤滑油を濾過するフィルターエレメント425が収容される部分である。ハウジング支持部427は、下側ケース42の側面から横方向(クランクシャフト31の軸線Oに直角な方向)外側に向かって突出する部分である。本発明の実施形態では、ハウジング支持部427は、右斜め後方に突出し、上面視においてシリンダーブロック413に隣接するように設けられる(図5A参照)。ハウジング本体部426は、ハウジング支持部427から上側に突出する円筒状の形状を有する。そして、ハウジング本体部426の内部にはフィルターエレメント425が収容され、ハウジング本体部426の上側には蓋部材428が取付けられる。
さらに、第1のオイル経路51と第2のオイル経路52と第3のオイル経路53とが、それぞれ下側ケース42に一体に設けられる。
第1のオイル経路51は、下側ケース42の内周側からポンプ入口351に至る潤滑油の経路であり、下側ケース42の内周側の底部と外周側の下面とを連通する孔である。第1のオイル経路51の入口は、オイルポンプ35が潤滑油を下側ケース42(すなわちオイルパン)から吸入するためのオイル吸入口513である。オイル吸入口513は、下側ケース42の内周側の底部、すなわちオイルパンの内周側の底部に設けられる。また、第1のオイル経路51の出口514は、下側ケース42の外周側の下面に設けられる。さらに、下側ケース42の内周側の底部には、オイル吸入口513を覆うように、オイルストレーナー37が取付けられる。
図4(a)は、第1のオイル経路51の構成例を模式的に示す断面図である。図4(b)は、オイルストレーナー37の構成例を模式的に示す断面図である。図4(a)に示すように、第1のオイル経路51は、横方向に延伸する横孔部511と、横孔部511の中間部と下側ケース42の外周側の下面とを連通する縦孔部512とを有する。横孔部511の一方の開口部であって、下側ケース42の内周面の底部に設けられる開口部が、オイル吸入口513となる。横孔部511の他方の開口部は、下側ケース42の外周側の側面に設けられ、着脱可能なネジなどによって塞がれている。なお、前述のとおり横孔部511は横方向に延伸し、その軸線(中心線)は直線である。
オイルストレーナー37は、潤滑油を濾過して異物を除去する濾過部材371(例えば、金属メッシュなど)と、濾過部材371を覆うように設けられるプロテクター372とを有しており、全体として下側が開口するドーム状の形状を有する。そして、オイルストレーナー37は、下側ケース42の内周側の底部に、ネジなどによって着脱可能に取り付けられる。オイルストレーナー37が取付けられた状態では、プロテクター372がオイル吸入口513を囲み、濾過部材371が第1のオイル吸入口513を覆う。プロテクター372と下側ケース42の内周面の底部(底面)との間には、潤滑油が通過可能な隙間が形成される。図3(a)における矢印は、潤滑油の流れを模式的に示す。オイルパンに貯留される潤滑油は、この隙間を通じてオイルストレーナー37のプロテクター372の内側に流入し、さらに濾過部材371を通過してオイル吸入口513から第1のオイル経路51に流入する。
図3に示すように、第3のオイル経路53は、ポンプ出口352からオイルフィルター423のハウジング本体部426の内部に至る潤滑油の経路である。ポンプ出口352から吐出された潤滑油は、この第3のオイル経路53を通じてハウジング本体部426の内部に流入する。第3のオイル経路53は、横孔部531と、第1の縦孔部532と、第2の縦孔部533とを有する。第3のオイル経路53の横孔部531は、横方向(クランクシャフト31の軸線Oに直角な方向)に延伸する。第1の縦孔部532は、上下方向に延伸し、横孔部531の一方の端部から下側ケース42の外周側の下面に至る。第2の縦孔部533は、上下方向に延伸し、横孔部531の他方の端部からハウジング本体部426の内部に至る。なお、第3のオイル経路53の横孔部531の第2の縦孔部533に近い側の端部は、下側ケース42の外周側の側面(特に、ハウジング支持部427の外周側の側面)に達している。そして、第3のオイル経路53の横孔部531の開口部(下側ケース42の外周側の側面に現れる開口部)は、着脱可能なネジなどによって塞がれている。
第2のオイル経路52は、ハウジング本体部426の内部から下側カム軸受部422の凹部の内部を経由して下側クランク軸受部421の貫通孔の内周面に至る潤滑油の経路である。第2のオイル経路52は、横孔部521と縦孔部524とを有する。横孔部521は、横方向(クランクシャフト31の軸線Oに直角な方向)に延伸する部分であり、一方の端部は下側ケース42の外周側の側面に位置しており、他方の端部は下側クランク軸受部421の貫通孔の内周面に位置している。また、横孔部521の中間部は、下側カム軸受部422の貫通孔の内周面を通過している。説明の便宜上、第2のオイル経路52の横孔部521のうち、下側ケース42の外周側の側面から下側カム軸受部422の貫通孔の内周面までの部分を「第1の横孔部522」と称する。また、下側カム軸受部422の貫通孔の内周面から下側クランク軸受部421の内周面までの部分を「第2の横孔部523」と称する。第1の縦孔部532の一方の端部であって、下側ケース42の外周側の側面に現れる開口部は、着脱可能なネジなどによって塞がれている。第1の横孔部522と第2の横孔部523は、いずれも、横方向に直線状に延伸する。ただし、第1の横孔部522の軸線と第2の横孔部523の軸線は、延伸方向が上面視において互いに異なる。縦孔部524は、オイルフィルター423のハウジング本体部426の内周面と第1の横孔部522とを連通する部分である。
ハウジング本体部426の内部に配置されたフィルターエレメント425により濾過された潤滑油は、第2のオイル経路52の縦孔部524と第1の横孔部522とを通じて下側カム軸受部422の凹部に至る。そして一部の潤滑油はさらに第2のオイル経路52の第2の横孔部523を通じて下側クランク軸受部421の貫通孔の内周面に至る。残りの潤滑油は、カムシャフト32に設けられる第5のオイル経路323と、上側ケース41に設けられる第4のオイル経路54とを通じて、上側クランク軸受部411の貫通孔の内周面に至る。
クランクシャフト31は、クランクケース4の内部に回転可能に配置される。クランクシャフト31の回転中心線は、ドライブシャフト14の回転中心線と一致しており、上下方向に平行である。クランクシャフト31の軸線方向の上側に位置するメインジャーナル311(クランクジャーナル)は、上側クランク軸受部411の貫通孔に挿通されており、ベアリングなどの軸受によって回転可能に支持される。クランクシャフト31の軸線方向の下側に位置するメインジャーナル311は、下側クランク軸受部421の貫通孔に挿通されており、ベアリングなどの軸受によって回転可能に支持されている。なお、クランクシャフト31の上端部は、上側クランク軸受部411からクランクケース4の外側上方に突出している。この突出している部分には、マグネト装置20やリコイルスターター21が接続される。
クランクシャフト31には、クランクピン312に潤滑油を送給するためのクランクピン給油孔313が設けられる。クランクピン給油孔313は、上側クランク軸受部411に回転可能に支持される部分の外周面とクランクピン312の外周面とを連通する貫通孔である。クランクシャフト31の下側の端面には孔315(凹部)が設けられる。この孔315には、ドライブシャフト14の上端部が挿入される。これにより、クランクシャフト31の回転がドライブシャフト14に伝達される。このほか、クランクシャフト31には、カムシャフト32に回転動力を伝達するカム駆動歯車314が設けられる。本発明の実施形態では、カム駆動歯車314は、下側クランク軸受部421により回転可能に支持される部分の上側に設けられる。
カムシャフト32は、クランクシャフト31の回転動力が伝達され、クランクシャフト31に同期して回転する。カムシャフト32も、軸線が上下方向に平行となる向きで、クランクケース4の内部に回転可能に配置されている。カムシャフト32の上端部は、上側カム軸受部412の凹部に挿入されている。カムシャフト32の下端部は、下側カム軸受部422の貫通孔に挿通されている。そして、カムシャフト32の下端部は、下側カム軸受部422の貫通孔を通じてクランクケース4の外部下側に突出している。この突出している部分にはオイルポンプ35のポンプインナーローター353が収容されている。
カムシャフト32には、シリンダーヘッド43に設けられる吸気バルブと排気バルブのそれぞれを駆動するカム321が設けられる。また、カムシャフト32には、クランクシャフト31のカム駆動歯車314と常時噛み合うカム被動歯車322が設けられる。カムシャフト32は、カム駆動歯車314を介して伝達されるクランクシャフト31の回転動力により、クランクシャフト31に同期して回転する。
図3に示すように、カムシャフト32の内部には、第5のオイル経路323が設けられる。このため、カムシャフト32は、軸線方向の上側の端面が開口し、下側の端面が閉鎖する中空軸状の構成を有する。また、カムシャフト32には、外周面と第5のオイル経路323とを連通する開口部が設けられる。この開口部は、下側カム軸受部422の貫通孔の内部に収容される部分であって、第2のオイル経路52の横孔部521と同じ高さの位置に設けられる。このような構成によれば、第2のオイル経路52を流れる潤滑油は、カムシャフト32に設けられる開口部から第5のオイル経路323の内部に流入する。そして、第5のオイル経路323に流入した潤滑油は、カムシャフト32の上側の端面に設けられる開口部から流出する。
このほか、エンジンユニット3には、カムシャフト32のカム321により押されて運動するプッシュロッドと、プッシュロッドの運動を吸気バルブと排気バルブのそれぞれに伝達するロッカーアームとが配置される。これらの構成は特に限定されるものではなく、従来公知の構成が適用できる。
オイルポンプ35は、下側ケース42の下面に取り付けられる。ポンプ入口351は、第1のオイル経路51の縦孔部512に接続している。ポンプ出口352は、第3のオイル経路53の第1の縦孔部532に接続している。また、カムシャフト32の下端部は、下側カム軸受部422の貫通孔を通じて下側ケース42の外側下方に突出しており、ポンプインナーローター353は、カムシャフト32の下端部に接続されている。これにより、オイルポンプ35は、カムシャフト32の回転が伝達されて作動する。
ここで、潤滑油の流れについて説明する。クランクシャフト31が回転すると、カム駆動歯車314からカム被動歯車322に回転動力が伝達され、カムシャフト32が回転する。そして、カムシャフト32の下端部はオイルポンプ35に接続されており、オイルポンプ35はカムシャフト32の回転によって動作する。ポンプ入口351と第1のオイル経路51の出口514とが接続されている。このため、オイルポンプ35が動作すると、オイルパンとしての機能を有する下側ケース42に貯留される潤滑油は、オイル吸入口513から第1のオイル経路51の内部に吸入され、さらに第1のオイル経路51を通過してオイルポンプ35に吸入される。潤滑油がオイルストレーナー37の濾過部材371を通過する際に、異物が除去される。
ポンプ出口352は、第3のオイル経路53の第1の縦孔部532の下端側の開口部に接続されている。このため、ポンプ出口352から吐出された潤滑油は、第3のオイル経路53の第1の縦孔部532と、横孔部531と、第2の縦孔部533とを順次通過し、オイルフィルター423のハウジング本体部426の内部に流入する。ハウジング本体部426に流入した潤滑油は、フィルターエレメント425を通過して濾過される。濾過された潤滑油は、第2のオイル経路52の縦孔部524を通じてハウジング本体部426から流出する。
第2のオイル経路52は、オイルフィルター423のハウジング本体部426から、下側カム軸受部422の貫通孔を経由し、下側クランク軸受部421の貫通孔に至る。このため、第2のオイル経路52に流入した潤滑油は、まず、第2のオイル経路52の縦孔部524と第1の横孔部522とを経て、下側クランク軸受部421の貫通孔の内部に流入する。下側カム軸受部422の貫通孔には、カムシャフト32の下端部が挿通されている。このため、下側カム軸受部422の貫通孔に流入した潤滑油によって、カムシャフト32の下側カム軸受部422に回転可能に支持される部分が潤滑される。
下側カム軸受部422の貫通孔の内部に流入した潤滑油の一部は、第2のオイル経路52の第2の横孔部523を通過し、下側クランク軸受部421の貫通孔の内周側に流入する。下側クランク軸受部421の貫通孔には、クランクシャフト31の下端部が挿入されている。このため、下側クランク軸受部421に流入した潤滑油によって、クランクシャフト31の下側クランク軸受部421に回転可能に支持される部分が潤滑される。そして、下側クランク軸受部421の貫通孔の内周側に流入した潤滑油は、重力によって下方に流下し、下側ケース42の底部に戻る。
下側クランク軸受部421の貫通孔の内部に流入した潤滑油の残りは、カムシャフト32に設けられる開口部から第5のオイル経路323に流入する。カムシャフト32の上端部は、上側カム軸受部412の凹部に挿入されており、上側カム軸受部412によって回転可能に支持されている。そして、上側カム軸受部412の凹部の内周面と、上側クランク軸受部411の貫通孔の内周面とは、第4のオイル経路54によって連通している。このため、第5のオイル経路323に流入した潤滑油は、第5のオイル経路323を通過し、カムシャフト32の上側の端面に設けられる開口部を通じて第4のオイル経路54に流入する。なお、第5のオイル経路323から流出した潤滑油の一部は、カムシャフト32の外周面と上側カム軸受部412の凹部の内周面との隙間に流入する。これにより、カムシャフト32の上端部であって上側カム軸受部412に回転可能に支持される部分が潤滑される。
第4のオイル経路54に流入した潤滑油は、第4のオイル経路54を通過して、上側クランク軸受部411の貫通孔の内周側に流入する。上側クランク軸受部411の貫通孔には、クランクシャフト31の上部が挿通されており、クランクシャフト31の上部は上側クランク軸受部411によって回転可能に支持されている。このため、上側クランク軸受部411の貫通孔の内周側に流入した潤滑油により、クランクシャフト31の上部であって上側クランク軸受部411に回転可能に支持される部分が潤滑される。
上側クランク軸受部411の貫通孔の内周側に流入した潤滑油の一部は、クランクシャフト31に設けられるクランクピン給油孔313に流入し、クランクピン312の外周面に流出する。クランクピン312にはコンロッド34が回転可能に連結されている。このため、クランクピン312の外周面に流出した潤滑油によって、クランクピン312とコンロッド34との連結部が潤滑される。
このように、オイルポンプ35は、オイルパンとして機能する下側ケース42に貯留される潤滑油を、オイル吸入口513を介して吸引し、エンジンユニット3の各部に送給する。なお、本発明の実施形態では、オイルポンプ35により潤滑油が送給される部位として、下側カム軸受部422と、下側クランク軸受部421と、上側カム軸受部412と、上側クランク軸受部411と、クランクピン312とを示した。ただし、潤滑油が送給される部位は、前記部位に限定されない。エンジンユニット3が、第1〜第5のオイル経路51〜54,323のほかにさらにオイル経路を有し、これ以外の部位にも潤滑油が送給される構成であってもよい。
<オイル経路およびオイル吸入口>
前述のとおり、エンジンユニット3のクランクケース4の下側には、スイベルブラケット181が配置される。このような構成であると、下側ケース42の底部(オイルパンとして機能する部分)をスイベルブラケット181と同じ高さに配置できないため、下側ケース42の上下方向寸法を大きくすることが困難となる。このため、オイルパンの機能を有する下側ケース42は、底が浅く扁平な形状となる。このような構成では、船外機1が傾斜した場合や、加速度が掛った場合に、潤滑油が移動して下側ケース42の内周側の底部(すなわち、オイルパンの底部)に設けられるオイル吸入口513は、潤滑油の油面から露出しやすくなる。オイル吸入口513が潤滑油の油面から露出すると、オイルポンプ35は潤滑油を吸引できなくなり、各部への潤滑油の送給が滞る。そこで、本発明の実施形態では、オイル吸入口513の配置を次のような構成とすることにより、オイル吸入口513が潤滑油の油面から露出することを抑制して、潤滑油の吸引と各部への送給とが滞ることを抑制する。
第1〜第3のオイル経路51〜53の配置とオイル吸入口513の配置について、図5Aと図5Bを参照して説明する。図5Aは、エンジンユニット3を、上下方向に直角で、かつ、燃焼室414の中心線を通過する平面で切断した断面図である。図5Bは、エンジンユニット3を上側ケース41と下側ケース42の接合面で切断した断面図である。なお、図5Aと図5Bにおいては、エンジンカバー11を省略してある。
オイルポンプ35が潤滑油を吸引するためのオイル吸入口513は、スイベルブラケット181のドライブシャフトハウジング12に対する回転中心線を通過し前後方向に平行な直線M上に設けられる。本発明の実施形態では、スイベルブラケット181のドライブシャフトハウジング12に対する回転中心線と、ドライブシャフト14の軸線(回転中心線)と、クランクシャフト31の軸線O(回転中心線)とは一致している。このため、図5Aと図5Bに示すように、オイル吸入口513は、上面視において、クランクシャフト31の軸線O(回転中心線)を通過し前後方向に平行な直線M上に位置する。
このような構成によれば、船舶9や船外機1が左右に傾斜した際や、船外機1に加速度が掛った際に、オイル吸入口513が下側ケース42(オイルパン)に貯留される潤滑油の油面から上側に露出することが抑制される。すなわち、下側ケース42が底の浅い扁平な形状であると、船外機1が左右方向に傾斜した場合や船外機1に左右方向に加速度が掛った際には、下側ケース42に貯留される潤滑油が船外機1の傾斜や加速度の方向に偏りやすい。このため、下側ケース42の内周側の底部(底面)のうち、傾斜とは反対側の部分や加速度の向きとは反対側の部分は、潤滑油の油面から露出しやすくなる。これに対して、船外機1が左右何れの方向に傾斜した場合や、船外機1に左右方向の加速度が掛った場合であっても、この直線M上およびその近傍の部分は、潤滑油の油面から露出しにくい。そこで、本発明の実施形態のように、オイル吸入口513が、スイベルブラケット181のドライブシャフトハウジング12に対する回転中心線を通過し前後方向に平行な直線M上に設けられる構成とする。このような構成であると、オイル吸入口513が潤滑油の油面から露出することが抑制される。したがって、潤滑油の吸引と各部への送給が滞ることが抑制される。
オイル吸入口513は、クランクシャフト31の前側に設けられる。このような構成であると、船外機1を前傾させた場合において、オイル吸入口513が潤滑油の油面から露出することが抑制される。例えば、船外機1が取付けられた船舶9を浅瀬航行させる場合には、推進プロペラ162の水深を浅くするため、船外機1を通常よりも前傾させる(ドライブシャフト14の軸線が前傾するように船外機1を傾斜させる)角度を大きくする。すなわち、通常は、燃費の向上を図るためなどの目的で、船外機1の前後方向の傾斜角を制御するティルト操作が行われる。これに対して、浅瀬航行時には、船外機1が水底に接触することを防止するため、ティルト操作における船外機1の傾斜角度の範囲を超えて前傾角度を大きくする。このような状態での航行を、シャロー運転と称する。シャロー運転時には、下側ケース42に貯留される潤滑油が前側に偏りやすいため、下側ケース42の底部の後部が潤滑油の油面から露出しやすくなる。一方、下側ケース42の底部の前部は潤滑油の油面から露出しにくい状態となる。そこで、本発明の実施形態のように、オイル吸入口513を下側ケース42の底部の前寄りの部分であって、クランクシャフト31よりも前側の位置に設ける。このような構成によれば、シャロー運転時などにおいて船外機1を前傾させても、オイル吸入口513が潤滑油の油面から露出することが抑制される。したがって、潤滑油の吸引と各部への送給が滞ることが抑制される。
また、シャロー運転時において、船舶9を旋回(方向転換)させる場合には、船外機1を旋回方向に応じて左右いずれかの方向に傾斜させる。このため、この場合には、下側ケース42の底部の後寄りの部分および左右外側寄りの部分が、下側ケース42に貯留される潤滑油の油面から露出しやすくなる。一方、下側ケース42の底部のクランクシャフト31の前側の部分は、下側クランク軸受部421よりも下側に位置し、潤滑油の油面から露出しにくい状態となる。そこで、本発明の実施形態のように、オイル吸入口513が、直線M上で、かつ、クランクシャフト31よりも前側に設けられる構成とする。このような構成であれば、オイル吸入口513は、下側クランク軸受部421よりも下側に位置する状態に維持される。これにより、オイル吸入口513が潤滑油の油面から露出することが抑制される。したがって、潤滑油の吸引と各部への送給が滞ることが抑制される。
図5Bに示すように、第1のオイル経路51と、第2のオイル経路52の第2の横孔部523とは、互いに平行で、かつ、横方向に直線状に延伸する。図5Bにおいては、第1のオイル経路51の中心線(延伸方向を示す線)を一点鎖線X1で示し、第2のオイル経路52の第2の横孔部523の中心線(延伸方向を示す線)を一点鎖線X2で示す。
第1のオイル経路51の横孔部511と、第2のオイル経路52の第2の横孔部523とは、例えば、ドリリングなどの孔あけ加工によって形成される。第1のオイル経路51の横孔部511の一方の端部は下側ケース42の内週側の底部に設けられ、他方の端部は下側ケース42の外周側の側面に設けられる。このような構成であると、下側ケース42の外周側から下側ケース42の内周側の底部に向けて孔をあけることにより、第1のオイル経路51の横孔部511を形成できる。また、第2のオイル経路52の第2の横孔部523の一方の端部は、下側クランク軸受部421の貫通孔なの内周面に設けられ、他方の端部は、下側ケース42の外周の側面に設けられる。このような構成であると、下側ケース42の外周側から下側クランク軸受部421の貫通孔の内周面に向けて孔をあけることにより、第2のオイル経路52の第2の横孔部523を形成できる。そして、第1のオイル経路51の横孔部511の中心線X1と第2のオイル経路52の第2の横孔部523の中心線X2とが平行であると、加工方向が同じとなる(同じ方向から加工できる)。このため、加工時の段取り(加工機械へのセッティングなど)に要する工数および製造コストの削減を図ることができる。
第2のオイル経路52の第1の横孔部522と第3のオイル経路53の横孔部531も、例えば、ドリリングなどの孔あけ加工によって形成される。第2のオイル経路52の第1の横孔部522と第3のオイル経路53の横孔部531とは、いずれも横方向に延伸する直線状に形成され、互いに平行である。そして、第2のオイル経路52の第1の横孔部522の一方の端部と、第3のオイル経路53の横孔部531の一方の端部は、いずれも、下側ケース42の外周の側面(より具体的には、オイルフィルター423のハウジング支持部427の外周の側面)に設けられる。このような構成であると、下側ケース42の外周側から下側カム軸受部422の内周面に至る孔をあけることにより、第2のオイル経路52の第1の横孔部522を形成できる。同様に、下側ケース42の外周側の側面から第1の縦孔部532の上端部に至る孔をあけることにより、第3のオイル経路53の横孔部531を形成できる。そして、第2のオイル経路52の第1の横孔部522と第3のオイル経路53の横孔部531が平行であると、加工方向が同じとなる。このため、加工時の段取りに要する工数および製造コストの削減を図ることができる。
また、第1〜第3のオイル経路51〜53は、ドリリングなどの孔あけ加工により形成できる。このように、これらの第1〜第3のオイル経路51〜53は、下側ケース42とは別部材が組み付けられる構成ではなく、下側ケース42に一体に設けられる。このような構成によれば、第1〜第3のオイル経路51〜53を形成するための部材が不要であるから、製造コストの削減を図ることができる。なお、第4のオイル経路54も、第1〜第3の51〜53オイル経路と同様に、ドリリングなどの孔あけ加工により形成される。すなわち、第4のオイル経路54も、上側ケース41とは別部材が組み付けられる構成ではなく、上側ケース41に一体に設けられる。したがって、第4のオイル経路54を形成するための部材が不要であるから、製造コストの削減を図ることができる。
第1のオイル経路51の横孔部511と第2のオイル経路52の第2の横孔部523とは平行である。また、第2のオイル経路52の第1の横孔部522と第3のオイル経路53の横孔部531とは平行である。なお、第1のオイル経路51の横孔部511および第2のオイル経路52の第2の横孔部523と、第2のオイル経路52の第1の横孔部522および第3のオイル経路53の横孔部531とは、平行ではなく、上面視における延伸方向が異なる。そして、第2のオイル経路52の第1の横孔部522および第3のオイル経路53の横孔部531は、第1のオイル経路51の横孔部511と第2のオイル経路52の第2の横孔部523よりも後側に設けられる。このため、オイルフィルター423は、上面視において、第1のオイル経路51の横孔部511の開口部とシリンダーブロック413との間に設けることができる。このような構成であると、オイルフィルター423をシリンダーブロック413に隣接するように設けることができるから、エンジンユニット3の左右方向寸法を小さくできる。
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明したが、前記実施形態は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、前記実施形態では、クランクケース4の下側ケース42がオイルパンとしての機能を有する構成を示したが、本発明はこのような構成に限定されない。エンジンユニット3が下側ケース42とは別部材のオイルパンを有する構成であってもよい。要は、クランクケース4が、オイルパンまたはオイルパンとして機能する部分を有する構成であればよい。
例えば、前記実施形態では、船外機の駆動力源であるエンジンユニットに、単気筒の4サイクルエンジンが適用される構成を示したが、船外機のエンジンユニットの種類は特に限定されるものではない。本発明は、潤滑油を貯留するオイルパンまたはオイルパンとして機能する部材を有するエンジンユニットを有する船外機であれば適用可能である。