JP6435933B2 - 炭素繊維複合材料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)繊維長が5〜50mmの炭素繊維からなる不織布と重量平均分子量が7万以上30万以下であるポリアリーレンスルフィドをマトリクス樹脂とする炭素繊維複合材料であり、計装化シャルピー衝撃試験で得られるき裂伝播エネルギーEpが0.2〜2[J]の範囲にある、炭素繊維複合材料。
(2)計装化シャルピー衝撃試験にて得られるき裂伝播エネルギーEpとき裂発生エネルギーEiとの比が0.3〜1の範囲にある、(1)に記載の炭素繊維複合材料。
(3)計装化シャルピー衝撃試験にて得られるシャルピー衝撃値Aucが40〜100[kJ/m2]の範囲にある、(1)または(2)に記載の炭素繊維複合材料。
(4)計装化シャルピー衝撃試験にて得られる荷重−変位曲線において、原点から最大荷重到達時の変位が2mm以上10mm以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の炭素繊維複合材料。
(5)計装化シャルピー衝撃試験にて得られる荷重−変位曲線において、最大荷重到達後から、荷重が0に至るまでの変位が2mm以上10mm以下である、(1)〜(4)のいずれかに記載の炭素繊維複合材料。
(6)炭素繊維複合材料中に占める前記炭素繊維の繊維体積含有率が20%以上40%未満である、(1)〜(5)のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
(7)繊維長と繊維束幅の比率で定義される繊維束のアスペクト比が1以上7200以下であり、重量が0.1mg以上である炭素繊維(A)が、前記炭素繊維の少なくとも一部に含まれ、下記式(1)で定義される繊維空間充填率が0%を超え50%以下を満たす、(1)〜(6)のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
繊維空間充填率=炭素繊維(A)の総体積/炭素繊維不織布の体積・・・(1)
(8)下記式(2)にて定義される、前記不織布に占める前記炭素繊維(A)の繊維面充填率が0%を超え60%以下である、(1)〜(7)のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
繊維面充填率=炭素繊維(A)の総面積/炭素繊維不織布の面積・・・(2)
(9)少なくとも以下の工程a)〜d)を経て得られる炭素繊維複合材料の製造方法。
a)繊維長が5〜50mmの炭素繊維からなる不織布を得る工程
b)環式アリーレンスルフィドを前記炭素繊維不織布に含浸する工程
c)含浸した前記環式アリーレンスルフィドを加熱して重合し、重量平均分子量が7万以上30万以下のポリアリーレンスルフィドを有する炭素繊維不織布基材とする工程
d)得られた炭素繊維不織布基材をプレスして炭素繊維複合材料を得る工程
(10)前記b)工程とc)工程の間に、e)環式アリーレンスルフィドが含浸された不織布をあらかじめ加熱・加圧する工程を行う、(9)に記載の炭素繊維複合材料の製造方法。
(11)前記c)工程において、減圧下または加圧下で環式アリーレンスルフィドを加熱重合する、(9)または(10)に記載の炭素繊維複合材料の製造方法。
本発明のCFRPを構成する炭素繊維は不織布形状であり、その繊維長は5〜50mmである。繊維長の好ましい範囲は5〜40mmであり、より好ましい範囲は10〜25mmである。繊維長が本範囲であれば、高い強度と成形性を両立することができる。
本発明のCFRPを構成する不織布において、繊維長と繊維束幅の比率で定義される繊維束のアスペクト比が1以上7200以下であり、重量が0.1mg以上である炭素繊維(A)の繊維空間充填率が0%を超え50%以下であることが好ましい。繊維空間充填率は下記式(1)で定義される。
繊維空間充填率=炭素繊維(A)の総体積/炭素繊維不織布の体積・・・(1)
複合材料の繊維体積含有率は20%以上40%未満であることが好ましい。繊維体積含有率が20%未満であると強化繊維による補強効果が得られにくく、40%以上であると強化繊維に対するマトリクス樹脂の含浸性が低下する。繊維体積含有率は25%以上35%以下であることがより好ましい。
複合材料の厚さは1mm以上であることが好ましい。複合材料の厚さが1mmを下回ると、複合材料に荷重が加わった際、厚さ方向にき裂が進展しやすく、良好な物性の複合材料が得られない。複合材料の厚さの上限に特に制限はないが、4mmを好ましい上限値として例示できる。
本発明おける環式アリーレンスルフィドとは、式 −(Ar−S)− の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上含有する下記一般式(O)のごとき化合物である。Arとしては式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が弾性率や耐熱性、難燃性などの特性に優れるCFRPが得られる点で特に好ましい。
本発明のCFRPの衝撃特性は下記物理量により量的に表される。
1.き裂伝播エネルギーEp
2.き裂伝播エネルギーEpとき裂発生エネルギーEiの比
3.シャルピー衝撃値Auc
4.荷重―変位関係
本発明のCFRPは、計装化シャルピー衝撃試験機による計装化シャルピー衝撃試験にて得られるき裂伝播エネルギーEpが0.2〜2[J]の範囲であることが必要である。き裂伝播エネルギーEpが本範囲であれば、き裂発生後にき裂が進展しづらく、靭性に優れたCFRPが得られる。シャルピー衝撃値は0.3[J]以上であることが好ましく、0.5[J]以上であることがより好ましい。
本発明のCFRPは、計装化シャルピー衝撃試験機による計装化シャルピー衝撃試験にて得られる上記き裂伝播エネルギーEpと、き裂発生エネルギーEiとの比が0.3〜1の範囲内にあることが好ましく、0.45〜1の範囲内にあることがより好ましい。き裂発生エネルギーき裂伝播エネルギーEpとEiが本範囲であれば、き裂が発生しづらいCFRPが得られるため好ましい。
本発明のCFRPは、計装化シャルピー衝撃試験機による計装化シャルピー衝撃試験にて得られるシャルピー衝撃値Aucは40[kJ/m2]以上であることが好ましく、50[kJ/m2]以上であることがより好ましい。シャルピー衝撃値の上限に特に制限は無いが、100[kJ/m2]以下を好ましい範囲として例示できる。シャルピー衝撃値Aucが本範囲であれば、き裂発生後破壊に至るまでの吸収エネルギーが大きい靭性に優れたCFRPが得られるため好ましい。
Auc[kJ/m2]=E/bt×103
計装化シャルピー衝撃試験機による計装化シャルピー衝撃試験により、荷重−変位関係が得られる。本発明に係るCFRPにおいては、荷重−変位曲線の原点から最大荷重到達時の変位(以降、最大荷重到達時変位と記載)が2mm以上10mm以下であることが好ましい。より好ましくは4mm以上、さらに好ましくは6mm以上である。
本発明の不織布は下記記載の製造方法により得ることが好ましい。
1.炭素繊維を裁断する工程
2.カットした炭素繊維を開繊し、繊維状の熱可塑性樹脂とともに不織布を得る工程
以下、各工程に関して詳細に述べる。
炭素繊維の裁断方法は、ギロチンカッターを用いる裁断方法、ロータリーカッターを用いる裁断方法などが好適例として示されるが、一般的な炭素繊維裁断方法は全て適用可能である。
本発明の不織布の製造方法は特に限定されないが、例えば裁断した炭素繊維ならびに繊維状の熱可塑性樹脂をカーディングにより炭素繊維を開繊しつつ炭素繊維不織布を得ることができる。
本発明のCFRPは下記記載の工程を経て製造される。
a)繊維長が5〜50mmの炭素繊維からなる不織布を得る工程
b)環式アリーレンスルフィドを前記炭素繊維不織布に含浸する工程
c)含浸した前記環式アリーレンスルフィドを加熱して重合し、重量平均分子量が7万以上30万以下のポリアリーレンスルフィドを有する炭素繊維不織布基材とする工程
d)得られた炭素繊維不織布基材をプレスして炭素繊維複合材料を得る工程
炭素繊維不織布に環式アリーレンスルフィドを含浸させる方法としては、例えば粉末状の環式アリーレンスルフィドを不織布に散布し、加熱溶融することで炭素繊維に含浸させる方法が例示できる。本発明において、環式アリーレンスルフィドを加熱して含浸させる温度は、環式アリーレンスルフィドの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、環式アリーレンスルフィドが溶融する温度であれば特に限定されないが、200〜300℃であることが好ましい。この温度範囲であれば、環式アリーレンスルフィドの溶融粘度が10Pa・s以下となり、炭素繊維への含浸性が容易となる。
加熱・加圧後には冷却せずに次の工程に供しても良いし、一度冷却してから環式アリーレンスルフィドを固化させてから次の工程に供しても良い。
次いで炭素繊維不織布に環式アリーレンスルフィドを含浸させた炭素繊維不織布に熱及び圧力を付与しながら高重合度化する。加熱温度や圧力には特に制限はなく、加圧条件下、常圧条件下、減圧条件下のいずれも可能であるが、減圧条件が好ましい。この具体的な重合条件としては、例えば圧力0.4kPa、雰囲気温度340℃にて4時間加熱し環式アリーレンスルフィドを高重合度化して炭素繊維不織布基材とする方法が例示できる。環式アリーレンスルフィドを加熱して重合する際の圧力は、1kPa未満であることが好ましく、より好ましくは0.8kPa未満、さらに好ましくは0.5kPa未満である。重合時の圧力は低いほど環式アリーレンスルフィドの重合度が高くなる傾向がある。下限は特に限定されないが、おおよそ0.2MPaより大きいことが好ましい。
前記で得られた炭素繊維不織布基材をプレスする方法としては一般的な熱圧成型法は全て適用可能であり、特に限定されないが、いわゆるホットプレス方式のプレス成型やコールドプレス方式のスタンパブル成型などが好適例として示される。この際、ポリアリーレンスルフィドの融点または軟化点以上の温度で加熱または加熱加圧を行うことで、CFRPを成形することができる。
CFRPの曲げ弾性率および最大曲げ応力はJIS K 7074―1988の3点曲げ試験(A法)に従い、以下の条件で測定した。試験は任意の方向を0°方向としてこれと直角方向について切り出した試験片についても行い、それぞれの方向について曲げ試験を行った。測定数は各方向に対してn=5として実施した。
装置:万能材料試験機 インストロン5565
試験片寸法:長さ100mm×幅15mm×厚さ2mm
支点間距離:80mm
試験速度:1mm/分
CFRPの衝撃特性はJIS K 7077―1991に従い、以下の条件で測定した。試験は任意の方向を0°方向としてこれと直角方向について切り出した試験片についても行い、それぞれの方向について計装化シャルピー衝撃試験を行った。測定数は各方向に対してn=10として実施した。
装置:計装化シャルピー衝撃試験機 試験機名:東京試験機 計装化4Jシャルピー衝撃試験機
試験片寸法:長さ80mm×幅10mm×厚さ2mm
試験片支持台間距離:60mm
ハンマの持ち上げ角度:135°
(1)炭素繊維不織布を100mm×100mmに切り出し、550℃にて2時間程度炉内で灰化して樹脂を除去した後、厚さ(H)を測定した。厚さの測定は定規もしくはマイクロメーターを用いて行った。
(2)炭素繊維不織布より繊維束をすべて取り出した。
(3)取り出した繊維束の全長(li)、幅(wi)、厚さ(hi)、重量(mi)を測定した。繊維束の全長、幅の測定は定規またはノギスを用いて行った。厚さの測定はマイクロメーターを用いて行った。繊維束の重量の測定には1/100mgまで測定可能な天秤を用いた。繊維束の長さが短い場合、繊維束の重量が小さく重量測定が困難となる。この場合、繊維束全長の長さを1mm程度の間隔で分類し、分類した繊維束の集合体の重量をまとめて測定し、その平均値を用いても良い。
(4)取り出した繊維束の、全長(li)と幅(wi)で定義されるアスペクト比(li/wi)が1以上7200以下であり、重量(mi)が0.1mg以上である繊維束を炭素繊維(A)とした。
(5)下記式により繊維空間充填率を得た。iの最小値は1、最大値は炭素繊維(A)の総本数である。
繊維空間充填率=炭素繊維(A)の総体積/炭素繊維不織布の体積
炭素繊維(A)の総体積=Σ(li×wi×hi)
炭素繊維不織布の体積=100×100×H
(1)炭素繊維不織布を100mm×100mmに切り出し、550℃にて2時間程度炉内で灰化して樹脂を除去した。
(2)炭素繊維不織布より繊維束をすべて取り出した。
(3)取り出した繊維束の全長(li)、幅(wi)、重量(mi)を測定した。繊維束の全長、幅の測定は定規またはノギスを用いて行った。繊維束の重量の測定には1/100mgまで測定可能な天秤を用いた。繊維束の長さが短い場合、繊維束の重量が小さく重量測定が困難となる。この場合繊維束全長の長さを1mm程度の間隔で分類し、分類した繊維束の集合体の重量をまとめて測定し、その平均値を用いても良い。
(4)取り出した繊維束の、全長(li)と幅(wi)で定義されるアスペクト比(li/wi)が1以上7200以下であり、重量(mi)が0.1mg以上である繊維束を炭素繊維(A)とした。
(5)下記式により繊維面充填率が得られた。iの最小値は1、最大値は炭素繊維(A)の総本数である。
繊維面充填率=炭素繊維(A)の総面積/炭素繊維不織布の面積
炭素繊維(A)の総面積=Σ(li×wi)
炭素繊維不織布の面積=100×100
1−クロロナフタレンを用いてマトリクス樹脂を溶解し、溶解前のCFRPの重量と溶解後に残ったCF基材の重量から繊維体積含有率を求めた。
環式アリーレンスルフィド、PPS樹脂、およびポリアリーレンスルフィド混合物の重量平均分子量Mwはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。
GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名: Shodex UT806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
CFRP中のポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量Mwは、得られたCFRPより1―クロロナフタレンを用いて樹脂部分を溶出させて、溶出部分の分子量を測定した。
<環式フェニレンスルフィドの調製>
撹拌機付きのオートクレーブに、47.5%硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2.96kg(71.0モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.44kg(116モル)、酢酸ナトリウム1.72kg(21.0モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水14.8kg及びNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだ硫黄成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
<ポリフェニレンスルフィドフィルムの作製>
重量平均分子量7.5万のPPSペレットをプレス機熱盤上に散布し、温度340℃、圧力15MPa、加圧時間300秒でプレスすることにより厚み100μmのポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。
東レ株式会社製炭素繊維“トレカ(商標登録)T700SC”(炭素繊維:T700S−12000、引張強度:4900MPa、引張弾性率:230GPa、伸び:2.1%、繊度:800g/1000m、密度:1.8g/cm3、繊維径:7μm)をロータリーカッターで15mm長に裁断した。裁断した炭素繊維とポリフェニレンスルフィド繊維“トルコン(商標登録)”(重量平均分子量Mw:5万、繊度:2.2dtex、カット長51mm)を質量比で80:20の割合で混合しつつカーディングにより炭素繊維を開繊することで、炭素繊維不織布を得た。得られた不織布を幅30mm長さ150mmに裁断し、参考例1で得られた環式フェニレンスルフィド粉末を不織布上に散布しつつこれを12枚積層した。その後、この積層体を酸素雰囲気下で温度300℃の下、圧力10kPaで15分間加圧した。その後、酸素雰囲気下で温度300℃の下、圧力1.0MPaで15分間加圧することで環式フェニレンスルフィドを不織布に溶融含浸した。得られた基材を窒素雰囲気下で雰囲気圧0.4kPaに減圧し、温度340℃の下、4時間加熱することで環式フェニレンスルフィドを重合した。得られた基材の両表面に参考例2のポリフェニレンスルフィドフィルムをそれぞれ1枚ずつ積層し、金型温度320℃圧力16MPa、加圧時間180秒でプレス成形することでCFRPを得た。CFRPの厚みは2mm、Vfは30%であった。得られた不織布の繊維空間充填率および繊維面充填率を測定すると繊維空間充填率は10%、繊維面充填率は20%であった。
実施例1で得られた不織布を幅30mm長さ150mmに裁断し、環式フェニレンスルフィド粉末を不織布上に散布しつつこれを12枚積層した。その後、この積層体を実施例1と同様の方法で加熱・加圧することで環式フェニレンスルフィドを不織布に溶融含浸した。得られた基材を窒素雰囲気下で雰囲気圧0.4kPaに減圧し、温度400℃の下、4時間加熱することで環式フェニレンスルフィドを重合した。得られた基材の両表面に参考例2のポリフェニレンスルフィドフィルムをそれぞれ1枚ずつ積層し、実施例1と同様の方法でプレス成形することでCFRPを得た。CFRPの厚みは2mm、Vfは29%であった。得られた不織布の繊維空間充填率および繊維面充填率を測定すると繊維空間充填率は10%、繊維面充填率は20%であった。
実施例1においてカーディングのシリンダー回転数を弱めた事以外同様にして得られた不織布を幅30mm長さ150mmに裁断し、環式フェニレンスルフィド粉末を不織布上に散布しつつこれを12枚積層した。その後、この積層体を実施例1と同様の方法で加熱・加圧することで環式フェニレンスルフィドを不織布に溶融含浸した。得られた基材を窒素雰囲気下で雰囲気圧0.5kPaに減圧し、温度400℃の下、4時間加熱することで環式フェニレンスルフィドを重合した。得られた基材の両表面に参考例2のポリフェニレンスルフィドフィルムをそれぞれ1枚ずつ積層し、実施例1と同様の方法でプレス成形することでCFRPを得た。CFRPの厚みは2mm、Vfは29%であった。得られた不織布の繊維空間充填率および繊維面充填率を測定すると繊維空間充填率は32%、繊維面充填率は41%であった。
実施例1においてカーディングのシリンダー回転数を弱めた事以外同様にして得られた不織布を幅30mm長さ150mmに裁断し、環式フェニレンスルフィド粉末を不織布上に散布しつつこれを12枚積層した。その後、この積層体を実施例1と同様の方法で加熱・加圧することで環式フェニレンスルフィドを不織布に溶融含浸した。得られた基材を窒素雰囲気下、常圧で温度400℃の下、4時間加熱することで環式フェニレンスルフィドを重合した。得られた基材の両表面に参考例2のポリフェニレンスルフィドフィルムをそれぞれ1枚ずつ積層し、実施例1と同様の方法でプレス成形することでCFRPを得た。CFRPの厚みは2mm、Vfは28%であった。得られた不織布の繊維空間充填率および繊維面充填率を測定すると繊維空間充填率は42%、繊維面充填率は53%であった。
実施例1においてカーディングのシリンダー回転数を弱めた事以外同様にして得られた不織布を幅30mm長さ150mmに裁断し、環式フェニレンスルフィド粉末を不織布上に散布しつつこれを12枚積層した。その後、この積層体を実施例1と同様の方法で加熱・加圧することで環式フェニレンスルフィドを不織布に溶融含浸した。得られた基材を窒素雰囲気下で雰囲気圧0.25MPaに加圧し、温度450℃の下、4時間加熱することで環式フェニレンスルフィドを重合した。得られた基材の両表面に参考例2のポリフェニレンスルフィドフィルムをそれぞれ1枚ずつ積層し、実施例1と同様の方法で金型温度230℃、加圧圧力3MPa、加圧時間180秒でプレス成形することでCFRPを得た。CFRPの厚みは2mm、Vfは28%であった。得られた不織布の繊維空間充填率および繊維面充填率を測定すると繊維空間充填率は42%、繊維面充填率は53%であった。得られたCFRPについて計装化シャルピー衝撃試験を行ったところ、Eiは0.59[J]、Epは0.2[J]、Ep/Eiは0.34、Aucは43[KJ/m2]、最大荷重到達時変位は6.7[mm]、最大荷重到達後変位は8.1[mm]であり、き裂の伝播が起こりにくく、耐衝撃性に優れるものであった。
実施例1においてカーディングのシリンダー回転数を弱めた事以外同様にして得られた不織布を幅30mm長さ150mmに裁断し、環式フェニレンスルフィド粉末を不織布上に散布しつつこれを12枚積層した。この積層体を酸素雰囲気下で温度300℃の下、圧力10kPaで15分間加圧した。その後、基材の両表面に参考例2のポリフェニレンスルフィドフィルムをそれぞれ1枚ずつ積層し、金型温度320℃、圧力16MPaにて、環式フェニレンスルフィドを高重合度化しつつ同時にプレス成形することでCFRPを得た。加圧時間は30分であった。CFRPの厚みは2mm、Vfは28%であった。得られた不織布の繊維空間充填率および繊維面充填率を測定すると繊維空間充填率は51%、繊維面充填率は61%であった。得られたCFRPについて計装化シャルピー衝撃試験を行ったところ、Eiは0.66[J]、Epは0.02[J]、Ep/Eiは0.03、Aucは37[KJ/m2]、最大荷重到達時変位は6.8[mm]、最大荷重到達後変位は1[mm]であり、実施例と比較して分子量が低いため靭性が低く、き裂伝播エネルギーが低い耐衝撃性に劣るものであった。
実施例1においてカーディングのシリンダー回転数を弱めた事以外同様にして得られた不織布を幅30mm長さ150mmに裁断し、環式フェニレンスルフィド粉末を不織布上に散布しつつこれを12枚積層した。その後、この積層体を比較例1と同様の方法で加熱・加圧することで環式フェニレンスルフィドを溶融した。基材の両表面に参考例2のポリフェニレンスルフィドフィルムをそれぞれ1枚ずつ積層し、金型温度320℃、圧力10MPaにて、環式フェニレンスルフィドを高重合度化しつつ同時にプレス成形することでCFRPを得た。加圧時間は30分であった。CFRPの厚みは3mm、Vfは19%であった。得られた不織布の繊維空間充填率および繊維面充填率を測定すると繊維空間充填率は52%、繊維面充填率は62%であった。
実施例1においてカーディングのシリンダー回転数を弱めた事以外同様にして得られた不織布12枚と東レ株式会社製樹脂“トレリナ(登録商標)”ペレットを320℃で押し出し製膜して得られたフィルム(重量分子量Mw4万)を幅300mm長さ300mmに裁断したものを交互に積層した積層体とした。その後、この積層体の最外層にもフィルムを配置してプレス成形することでCFRPを得た。この時のプレス条件は金型温度320℃、加圧圧力3MPa、加圧時間は180秒であった。得られたCFRPの厚みは2mm、Vfは28%であった。得られた不織布の繊維空間充填率および繊維面充填率を測定すると繊維空間充填率は51%、繊維面充填率は61%であった。
2 シリンダーロール
3 テイクインロール
4 ドッファーロール
5 ワーカーロール
6 ストリッパーロール
7 フィードロール
8 ベルトコンベアー
9 不連続な炭素繊維
10 シート状のウエブ
Claims (11)
- 繊維長が5〜50mmの炭素繊維からなる不織布と重量平均分子量が7万以上30万以下であるポリアリーレンスルフィドをマトリクス樹脂とする炭素繊維複合材料であり、計装化シャルピー衝撃試験で得られるき裂伝播エネルギーEpが0.2〜2[J]の範囲にある、炭素繊維複合材料。
- 計装化シャルピー衝撃試験にて得られるき裂伝播エネルギーEpとき裂発生エネルギーEiとの比が0.3〜1の範囲にある、請求項1に記載の炭素繊維複合材料。
- 計装化シャルピー衝撃試験にて得られるシャルピー衝撃値Aucが40〜100[kJ/m2]の範囲にある、請求項1または2に記載の炭素繊維複合材料。
- 計装化シャルピー衝撃試験にて得られる荷重−変位曲線において、原点から最大荷重到達時の変位が2mm以上10mm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維複合材料。
- 計装化シャルピー衝撃試験にて得られる荷重−変位曲線において、荷重が0に至るまでの変位が2mm以上10mm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維複合材料。
- 炭素繊維複合材料中に占める前記炭素繊維の繊維体積含有率が20%以上40%未満である、請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
- 繊維長と繊維束幅の比率で定義される繊維束のアスペクト比が1以上7200以下であり、重量が0.1mg以上である炭素繊維(A)が、前記炭素繊維の少なくとも一部に含まれ、下記式(1)で定義される繊維空間充填率が0%を超え50%以下を満たす、請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
繊維空間充填率=炭素繊維(A)の総体積/炭素繊維不織布の体積・・・(1) - 下記式(2)にて定義される、前記不織布に占める前記炭素繊維(A)の繊維面充填率が0%を超え60%以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
繊維面充填率=炭素繊維(A)の総面積/炭素繊維不織布の面積・・・(2) - 少なくとも以下の工程a)〜d)を経て得られる炭素繊維複合材料の製造方法。
a)繊維長が5〜50mmの炭素繊維からなる不織布を得る工程
b)環式アリーレンスルフィドを前記炭素繊維不織布に含浸する工程
c)含浸した前記環式アリーレンスルフィドを加熱して重合し、重量平均分子量が7万以上30万以下のポリアリーレンスルフィドを有する炭素繊維不織布基材とする工程
d)得られた炭素繊維不織布基材をプレスして炭素繊維複合材料を得る工程 - 前記b)工程とc)工程の間に、e)環式アリーレンスルフィドが含浸された不織布をあらかじめ加熱・加圧する工程を行う、請求項9に記載の炭素繊維複合材料の製造方法。
- 前記c)工程において、減圧下または加圧下で環式アリーレンスルフィドを加熱重合する、請求項9または10に記載の炭素繊維複合材料の製造方法。
Priority Applications (1)
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