以下、実施形態について詳細に説明する。
実施形態に係る薄膜状無機酸化物の製造方法は、無機酸化物前駆体を含有する第1液と、その第1液の無機酸化物前駆体と反応してその無機酸化物前駆体から誘導される無機酸化物のゲルを形成させる物質(以下「無機酸化物形成物質」という。)を含有する第2液とを接触させることにより薄膜状無機酸化物のゲルを形成させる無機酸化物形成ステップを有し、この無機酸化物形成ステップを連続操作で行い、反応生成物である薄膜状無機酸化物のゲルを含有するスラリーを得る。そして、このとき第1及び第2液のうちの少なくとも一方がイオン性液体を含有する。ここで、本出願における「イオン性液体」とは、大気圧、100℃以下において液体である塩をいう。本出願における「連続操作」とは、第1液と第2液とを接触させる無機酸化物形成ステップにおいて、第1及び第2液を連続して又は間欠して継続的に接触させると共に、その反応生成物である薄膜状無機酸化物を継続的に回収する操作をいう。従って、本出願における「連続操作」は回分操作とは相違する。
ところで、特許文献1に開示された無機酸化物の製造方法では、得られる無機酸化物が中空粒子である。また、特許文献2に開示された酸化チタン薄膜の製造方法では、一旦、酸化チタン粒子を含有する分散液を調製し、それを用いて間接的に酸化チタン薄膜を製造する。更に、特許文献1及び2のいずれに開示された方法もバッチ操作による無機酸化物の製造方法である。
これに対し、実施形態に係る薄膜状無機酸化物の製造方法によれば、無機酸化物前駆体を含有する第1液と、その無機酸化物前駆体と反応してそれから誘導される無機酸化物のゲルを形成させる無機酸化物形成物質を含有する第2液とを接触させ、これを連続操作で行い、しかも第1及び第2液のうちの少なくとも一方がイオン性液体を含有することにより、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造することができる。これは、少なくとも一方がイオン性液体を含有する第1及び第2液を接触させたとき、連続操作により順次形成される第1及び第2液の接触界面において、無機酸化物前駆体が無機酸化物形成物質と反応して無機酸化物がゲルを形成するときの反応速度がゲルの二次元成長に好適なものになるためであると推測される。また、実施形態に係る薄膜状無機酸化物の製造方法によれば、個々の薄膜の厚さの均一性が優れる薄膜状無機酸化物を製造することができる。
第1液は無機酸化物前駆体を含有する。第1液は、無機酸化物前駆体が溶媒に溶解した溶液であってもよく、また、無機酸化物前駆体が分散媒に分散した分散液であってもよい。第1液は、例えば、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼンなどの炭化水素やクロロホルム等を含有することが好ましい。第1液は、これらのうちの1種又は2種以上を含有することが好ましく、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、トルエン、ヘキサン、及びヘプタンのうちの1種又は2種以上を含有することがより好ましい。
無機酸化物前駆体としては、加水分解反応及び重縮合反応を伴うゾル−ゲル転移によって酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、シリカ、アルミナ等の無機酸化物を誘導する加水分解性の官能基を持つ無機物質が挙げられる。無機酸化物前駆体としては、例えば、これらの無機酸化物のアルコキシド、ハロゲン化物、カルボキシル基やβ−ジケトンのような加水分解性の官能基を有する塩や配位化合物(錯体)、アミン類等が挙げられる。無機酸化物前駆体は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。無機酸化物前駆体は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、アルコキシドがより好ましく、金属アルコキシドが更に好ましく、反応性の高いチタンアルコキシド及びジルコニウムアルコキシドがより更に好ましく、アルキル基の炭素数が2以上4以下であるチタンアルコキシド及びジルコニウムアルコキシドがより更に好ましい。
チタンアルコキシドとしては、例えば、オルトチタン酸テトラエチル、オルトチタン酸テトラ-iso-プロピル、オルトチタン酸テトラ-n-ブチル(以下「Ti(OBu)4」という。)等が挙げられる。ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、オルトジルコニウム酸テトラエチル、オルトジルコニウム酸テトラ-iso-プロピル、オルトジルコニウム酸テトラ-n-ブチル(以下「Zr(OBu)4」という。)等が挙げられる。
第1液における無機酸化物前駆体の含有量c1は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、また、同様の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下である。この第1液における無機酸化物前駆体の含有量c1は、好ましくは1質量%以上80質量%以下、より好ましくは5質量%以上70質量%以下、更に好ましくは8質量%以上60質量%以下、より更に好ましくは8質量%以上50質量%以下、より更に好ましくは8質量%以上40質量%以下である。
第2液は無機酸化物形成物質を含有する。第2液は、無機酸化物形成物質が溶解した溶液であってもよく、また、無機酸化物形成物質が分散した分散液であってもよい。
無機酸化物形成物質としては、無機酸化物前駆体が金属アルコキシドのような無機酸化物を誘導する加水分解性の官能基を持つ無機物質の場合、典型的には水が挙げられる。無機酸化物形成物質は、1種だけを用いてもよく、また、2種以上を用いてもよい。
第2液における無機酸化物形成物質の含有量c2は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは5質量%以上であり、また、高選択率で薄膜を形成すると共に薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。この第2液における無機酸化物形成物質の含有量c2は、好ましくは0.1質量%以上70質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上30質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以上20質量%以下、更に好ましくは1質量%以上15質量%以下、更に好ましくは5質量%以上12質量%以下である。
第1及び第2液の関係において、第1液における無機酸化物前駆体の含有量c1は、第2液における無機酸化物形成物質の含有量c2と同一であってもよく、また、第2液における無機酸化物形成物質の含有量c2よりも大きくてもよく、或いは、第2液における無機酸化物形成物質の含有量c2よりも小さくてもよい。
第1及び第2液のうちの少なくとも一方はイオン性液体を含有する。従って、無機酸化物前駆体を含有する第1液及び無機酸化物形成物質を含有する第2液の両方がイオン性液体を含有する構成であってもよく、また、第1液がイオン性液体を含有せず且つ第2液がイオン性液体を含有する構成であってもよく、更に、第1液がイオン性液体を含有し且つ第2液がイオン性液体を含有しない構成であってもよい。
イオン性液体のカチオンとしては、例えば、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられる。
アンモニウムカチオンとしては、下記化学式(1)で示される1−アルキル−3−アルキルイミダゾリウムカチオンが挙げられる。なお、R1とR2とは同一でないことが好ましい。
(R1は、炭素原子数が12以下のアルキル基、又は、アルキル基の炭素原子結合間にエーテル結合を形成するように1又は2以上の酸素原子が導入され且つ炭素原子数と酸素原子数との合計が12以下である官能基を表し、R2は、炭素原子数が1以上4以下のアルキル基、又は、水素原子を表す。)
上記化学式(1)で示される1−アルキル−3−アルキルイミダゾリウムカチオンでは、1−アルキル−3−メチルイミダゾリウムカチオンが好ましく、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(以下「Emim」ともいう。)、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(以下「Bmim」ともいう。)がより好ましい。
アンモニウムカチオンとしては、下記化学式(2)で示されるN−アルキルピリジウムカチオンが挙げられる。
(Rは、炭素原子数が12以下のアルキル基、又は、アルキル基の炭素原子結合間にエーテル結合を形成するように1又は2以上の酸素原子が導入され且つ炭素原子数と酸素原子数との合計が12以下である官能基を表す。)
上記化学式(2)で示されるN−アルキルピリジウムカチオンでは、1−メチルピリジウムカチオン、1−エチルピリジウムカチオン、1−プロピルピリジウムカチオン、1−ブチルピリジウムカチオンが好ましい。
アンモニウムカチオンとしては、下記化学式(3)で示されるものが挙げられる。
[NRXH4−X]+ (3)
(Rは、炭素原子数が12以下のアルキル基、又は、アルキル基の炭素原子結合間にエーテル結合を形成するように1又は2以上の酸素原子が導入され且つ炭素原子数と酸素原子数との合計が12以下である官能基を表し、Xは0以上4以下の整数を表す。)
上記化学式(3)で示されるアンモニウムカチオンでは、N,N,N−トリエチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、エチルジメチルプロピルアンモニウムカチオンが好ましい。
ホスホニウムカチオンとしては、下記化学式(4)で示されるものが挙げられる。
[PRXH4−X]+ (4)
(Rは、炭素原子数が12以下のアルキル基、又は、アルキル基の炭素原子結合間にエーテル結合を形成するように1又は2以上の酸素原子が導入され且つ炭素原子数と酸素原子数との合計が12以下である官能基を表し、Xは0以上4以下の整数を表す。)
上記化学式(4)で示されるホスホニウムカチオンでは、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、トリブチルメチルホスホニウムカチオンが好ましい。
イオン性液体のアニオンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミドアニオン([(CF3SO2)2N]−)(以下「NTf2」ともいう。)、エチルサルフェートアニオン([C2H5OSO3]−)(以下「ES」ともいう。)、ビス(フルオロスルフォニル)アミドアニオン([(FSO2)2N]−)、ジシアミドアニオン([(CN)2N]−)(以下「DCA」ともいう。)、テトラフルオロボレートアニオン(BF4 −)、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6 −)、ハロゲン化物アニオン(Cl−、Br−、I−)、トリフルオロメタンスルフォネートアニオン([CF3SO3]−)等が挙げられる。
イオン性液体は、これらのカチオン及びアニオンの組み合わせのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
第1及び第2液は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、前者が、イオン性液体を含有せずに無機酸化物前駆体が有機溶媒に溶解した溶液であり且つ後者が、無機酸化物形成物質がイオン性液体に溶解した溶液であることが好ましい。この場合、第1液の有機溶媒としては、例えば、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼンなどの炭化水素溶媒やクロロホルムが挙げられる。有機溶媒は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。有機溶媒は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、これらのうちトルエン、ヘキサン、ヘプタンを用いることがより好ましい。
第1及び第2液のうちの少なくとも一方は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含んでいてもよい。第1及び第2液のうちの少なくとも一方は、例えば、加水分解速度を制御する観点から、酸、塩基、キレート剤等を含んでいてもよい。酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸などの無機酸;酢酸、シュウ酸、ギ酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸などの有機酸が挙げられる。塩基としては、例えば、アンモニア水溶液、トリエタノールアミン等が挙げられる。キレート剤としては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−iso−プロピル等が挙げられる。また、第1液は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する効果を損なわない範囲で、例えば水等の無機酸化物形成物質を含んでいてもよい。
第1及び第2液は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から相分離することが好ましい。ここで、本出願における「相分離」とは、第1及び第2液を接触させた際に液−液の相分離が視認されることをいい、それらがある程度相溶する場合も含む。このように第1及び第2液が相分離すると、それらの接触界面において無機酸化物前駆体の無機酸化物形成物質との反応によるゲル化の二次元成長を有効に生じさせることができる。
第1及び第2液が相分離する場合、第1液の第2液に対するそれらの接触時の温度における界面張力は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは0.1mN/m以上、より好ましくは0.5mN/m以上、更に好ましくは1mN/m以上であり、また、同様の観点から、好ましくは30mN/m以下、より好ましくは15mN/m以下、更に好ましくは10mN/m以下である。この界面張力は、好ましくは0.1mN/m以上30mN/m以下、より好ましくは0.5mN/m以上15mN/m以下、更に好ましくは1mN/m以上10mN/m以下である。この界面張力は、ウィルヘルミー型界面張力計を用いて測定される。
第1及び第2液の接触態様では、第1及び第2液のうちの両方又は片方を移動させる。第1及び第2液の接触態様には、移動する一方に他方を供給して接触させる態様、及び静止する一方に他方を供給して接触させると共に他方を移動させる態様がある。移動する一方に他方を供給して接触させる態様には、外力が作用して流動する一方に他方を供給して接触させる態様、及び外力が作用せずに搬送される一方に他方を供給して接触させる態様がある。更に、流動する一方に他方を供給して接触させる態様には、第1及び第2液の両方を流動させる態様、つまり、第1及び第2液の両方をそれぞれ流動させて合流させる態様、及び第1及び第2液のうちの一方だけを流動させる態様がある。
第1及び第2液の両方を流動させ、その流動する一方に他方を供給して接触させる態様としては、例えば、第1及び第2液の一方に他方を、一方の流動方向に対して斜め後方から合流させて接触させた後、一方の流動方向に沿って流動させる態様、第1及び第2液の両方を同一方向に流動させ、その流動方向を維持した状態でそれらを合流させて接触させる態様、第1及び第2液の一方に他方を、一方の流動方向に対して斜め前方から合流させて接触させた後、一方の流動方向に沿って流動させる態様、第1及び第2液の一方に、一方の流動方向に対して他方を直交する方向から合流させて接触させた後、一方の流動方向に沿って流動させる態様、第1及び第2液を対向するように合流させて接触させた後、第1及び第2液の流動方向とは異なる方向(例えば直交方向)に流動させる態様等が挙げられる。また、第1及び第2液の両方を流動させ、第1及び第2液の一方が他方で覆われるように接触させる、従って、一方の流動方向に直交する方向の全周を他方に接触させる態様であってもよい。
第1及び第2液の両方を流動させ、その流動する一方に他方を供給して接触させる態様は、高選択率で薄膜を形成することにより薄膜状無機酸化物の高い生産性を得る観点から、これらのうち第1及び第2液の一方を他方に、一方の流動方向に対して斜め後方から接触させた後、他方の流動方向に沿って流動させる態様、及び第1及び第2液の両方を同一方向に流動させ、その流動方向を維持した状態でそれらを接触させる態様が好ましい。前者の場合、高選択率で薄膜を形成することにより薄膜状無機酸化物の高い生産性を得る観点から、第1及び第2液が平行に流動して接触する態様に近いことが好ましい。このことから、一方の流動方向の他方の流動方向に対する角度θは、好ましくは90°以下、より好ましくは60°以下、更に好ましくは45°以下である。
第1及び第2液のうちの一方だけを流動させ、流動する一方に他方を供給して接触させる態様としては、例えば、第1及び第2液の一方に、一方の流動方向に対して斜め後方から他方を供給して接触させた後、一方の流動方向に沿って流動させる態様、第1及び第2液の一方に、一方の流動方向に対して斜め前方から他方を供給して接触させた後、一方の流動方向に沿って流動させる態様、第1及び第2液の一方に、一方の流動方向に対して直交する方向から他方を供給して接触させた後、一方の流動方向に沿って流動させる態様等が挙げられる。また、第1及び第2液のうちの一方だけを流動させ、第1及び第2液のうちの流動する一方が他方で覆われるように接触させる、従って、一方の流動方向に直交する方向の全周を他方に接触させる態様であってもよい。
第1及び第2液のうちの少なくとも一方を流動させ、その流動させる一方に他方を供給して接触させる態様において、一方に他方を供給する第1の具体的方法としては、例えば、図1に示すように、第1及び第2液の両方A,Bを反応器10内の流路11から流出させて合流させる方法が挙げられる。この方法では、第1及び第2液の接触時間は、第1及び第2液の流量により制御することができる。また、第1及び第2液の両方又は片方は複数で構成してもよい。なお、生成する無機酸化物は、第1及び第2液の合流部の下流側において回収することができる。
第1及び第2液のうちの一方に他方を供給する第2の具体的方法としては、例えば、図2に示すように、第1及び第2液のうちの一方Aを二重管型反応器20の内側配管21と外側配管22との間に流動させると共に、他方Bを内側配管21に流動させ、一方Aで他方Bを覆うようにそれらを合流させる方法が挙げられる。この場合、内側配管21と外側配管22との間に第2液を流動させ、内側配管21に第1液を流動させることが好ましい。この方法では、第1及び第2液の接触時間は、第1及び第2液の流量により制御することができる。また、第1及び第2液の両方又は片方は複数で構成してもよい。なお、生成する無機酸化物は、第1及び第2液の合流部の下流側において回収することができる。
第1及び第2液のうちの一方に他方を供給する第3の具体的方法としては、例えば、図3に示すように、第1及び第2液のうちの一方Aを液槽30に流動させ、その一方Aの表面に他方Bを供給する方法が挙げられる。この場合、液槽30には第2液を流動させることが好ましい。この方法では、第1及び第2液の接触時間は、一方Aの流量により制御することができる。また、第1及び第2液の両方又は片方は複数で構成してもよい。他方Bの供給手段としては、例えば、ノズルのスリットの開口から他方Bを流出させる手段、ノズルやシャワーヘッドから他方Bの液滴を滴下する手段、塗工ダイの開口に露出した他方Bを一方Aの流動に同伴させる手段等が挙げられる。また、他方Bの供給手段は、移動可能に設けられ、それによって一方Aへの他方Bの供給位置を変更できるように構成されていてもよい。なお、生成する無機酸化物は、液槽30の下流部において回収することができる。
第1及び第2液のうちの一方に他方を供給する第4の具体的方法としては、例えば、図4に示すように、第1及び第2液のうちの一方Aを傾斜面40に供給して自重で流動させ、その一方Aの表面に他方Bを供給して液積層構造を形成する方法が挙げられる。この場合、傾斜面40には第2液を流動させることが好ましい。傾斜面40は、一方Aに対する接触角が小さく、濡れ性が高いことが好ましい。この方法では、第1及び第2液の接触時間は、一方Aの流量及び傾斜面50の傾斜角度により制御することができる。また、第1及び第2液の両方又は片方は複数で構成してもよい。一方Aの供給手段としては、例えば、ノズルのスリットの開口から一方Aを流出させる手段等が挙げられる。また、一方Aの供給手段は、移動可能に設けられ、それによって傾斜面40への一方Aの供給位置を変更できるように構成されていてもよい。他方Bの供給手段としては、例えば、ノズルのスリットの開口から他方Bを流出させる手段、ノズルやシャワーヘッドから他方Bの液滴を滴下する手段、塗工ダイの開口に露出した他方Bを一方Aの流動に同伴させる手段等が挙げられる。また、他方Bの供給手段は、移動可能に設けられ、それによって一方Aへの他方Bの供給位置を変更できるように構成されていてもよい。一方A及び他方Bの供給手段は単一部品で構成されていてもよい。なお、生成する無機酸化物は、傾斜面40の下流部において回収することができる。
第1及び第2液のうちの一方に他方を供給する第5の具体的方法としては、例えば、図5に示すように、第1及び第2液のうちの一方Aを漏斗50の壁面に供給して自重で流動させ、その一方Aの表面に他方Bを供給して液積層構造を形成する方法が挙げられる。この場合、漏斗50の壁面には第2液を流動させることが好ましい。この方法では、第1及び第2液の接触時間は、一方Aの流量及び漏斗50の傾斜角度により制御することができる。また、第1及び第2液の両方又は片方は複数で構成してもよい。一方Aの供給手段としては、例えば、ノズルの開口から一方Aを流出させる手段等が挙げられる。また、一方Aの供給手段は、移動可能に設けられ、それによって漏斗50への一方Aの供給位置を変更できるように構成されていてもよい。他方Bの供給手段としては、例えば、ノズルの開口から他方Bを流出させる手段、ノズルやシャワーヘッドから他方Bの液滴を滴下する手段等が挙げられる。また、他方Bの供給手段は、移動可能に設けられ、それによって一方Aへの他方Bの供給位置を変更できるように構成されていてもよい。一方A及び他方Bの供給手段は単一部品で構成されていてもよい。なお、生成する無機酸化物は、漏斗50の下方において回収することができる。
第1及び第2液のうちの搬送される一方に他方を供給して接触させる態様としては、例えば、第1及び第2液の一方に他方を、一方の搬送方向に対して斜め後方から接触させた後、一方の搬送方向に沿って搬送する態様、第1及び第2液の一方に他方を、一方の搬送方向に対して斜め前方から接触させた後、一方の搬送方向に沿って搬送する態様、第1及び第2液の一方に、一方の搬送方向に対して他方を直交する方向から接触させた後、一方の搬送方向に沿って搬送する態様等が挙げられる。
第1及び第2液のうちの搬送される一方に他方を供給して接触させる態様において、一方に他方を供給する具体的方法としては、例えば、図6に示すように、ベルトコンベア60を用い、第1及び第2液のうちの一方Aを一対のローラ61に巻き掛けられて走行する搬送ベルト62上に供給して搬送し、その表面に他方Bを供給して液積層構造を形成する方法が挙げられる。この場合、搬送ベルト62には第2液を供給して搬送することが好ましい。この方法では、第1及び第2液の接触時間は、搬送ベルト62の搬送速度により制御することができる。また、第1及び第2液の両方又は片方は複数で構成してもよい。一方Aの供給手段としては、例えば、ノズルのスリットの開口から一方Aを流出させる手段等が挙げられる。また、一方Aの供給手段は、移動可能に設けられ、それによって搬送ベルト62への一方Aの供給位置を変更できるように構成されていてもよい。他方Bの供給手段としては、例えば、ノズルのスリットの開口から他方Bを流出させる手段、ノズルやシャワーヘッドから他方Bの液滴を滴下する手段、塗工ダイの開口に露出した他方Bを搬送される一方Aに同伴させる手段等が挙げられる。また、他方Bの供給手段は、移動可能に設けられ、それによって一方Aへの他方Bの供給位置を変更できるように構成されていてもよい。一方A及び他方Bの供給手段は単一部品で構成されていてもよい。なお、生成する無機酸化物は、搬送ベルト62の下流部において回収することができる。
ベルトコンベア60は、図7A及びBに示すように、搬送ベルト62の表面に長さ方向及び幅方向に複数に区画された凹部63が形成され、各凹部63において、第1及び第2液の液積層構造を形成するように構成されていてもよい。このような構成のベルトコンベア60を用いれば、各凹部63において、第1及び第2液が反応することとなるので、均一性の高い薄膜状無機酸化物を得ることができる。なお、搬送手段については、特にベルトコンベア60に限定されるものではなく、搬送方向に連続した搬送面を有するものであればよい。
第1及び第2液のうちの静止する一方に他方を供給して接触させると共に他方を移動させる態様において、一方に他方を供給する具体的方法としては、例えば、図8に示すように、第1及び第2液のうちの一方Aを液槽80に貯留し、その表面に他方Bを供給して排除押出作用により流動させる方法が挙げられる。この場合、液槽80には第2液を貯留することが好ましい。この方法では、第1及び第2液の接触時間は、他方Bの供給速度により制御することができる。また、第1及び第2液の両方又は片方は複数で構成してもよい。他方Bの供給手段としては、例えば、ノズルのスリットの開口から他方Bを流出させる手段、ノズルやシャワーヘッドから他方Bの液滴を滴下する手段等が挙げられる。また、他方Bの供給手段は、移動可能に設けられ、それによって一方Aへの他方Bの供給位置を変更できるように構成されていてもよい。なお、生成する無機酸化物は、液槽80からオーバーフローする液体と共に回収することができる。
第1及び第2液の接触は、これらのうち単一の態様を用いてもよく、また、複数の態様を組み合わせて用いてもよい。また、第1及び第2液の接触は、反応器等を用いた場合のように、気相が存在せずに自由界面を有さない状態で行ってもよく、また、塗工ダイ等を用いて液積層構造を形成する場合のように、気相が存在して自由界面を有する状態で行ってもよい。
第1及び第2液を接触させて液積層構造を形成する場合、図9Aに示すように、複数の第1及び第2液L1,L2によりそれらの交互積層構造を形成してもよい。また、図9Bに示すように、第1及び第2液L1,L2の積層体間に、第1及び第2液L1,L2のいずれとも相溶性を有さず且つ反応に関与しない第3液L3の層を設けた液積層構造を形成してもよい。このようにすれば、第1及び第2液L1,L2の積層体間が独立し、薄膜状無機酸化物の合一が規制されるので、薄膜状無機酸化物の生産性を高めることができる。更に、図9Cに示すように、第2液L2の両側に、種類の異なる無機酸化物前駆体を含有する第1液L1,L1’を設けた液積層構造を形成してもよい。このようにすれば、種類の異なる無機酸化物が貼り合わされた薄膜状無機酸化物を得ることができる。
実施形態に係る薄膜状無機酸化物の製造方法における無機酸化物形成ステップにおいて、第1及び第2液の両方を移動させる場合、第1及び第2液の接触時における第2液の無機酸化物形成物質のモル移動量m2の第1液の無機酸化物前駆体のモル移動量m1に対する比(モル移動量比=m2/m1)は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは2以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは50以上であり、また、経済性の観点から、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。このモル移動量比(m2/m1)は、好ましくは2以上300以下、より好ましくは10以上200以下、更に好ましくは50以上150以下である。但し、第2液を循環等させて繰り返し使用する場合には、経済性の問題は回避されるので、このモル移動量比(m2/m1)が千オーダーや万オーダーの値となってもよい。なお、第1液のモル移動量m1は、第1液における無機酸化物前駆体の含有量c1及び流量Q1又は搬送量Q1’よって制御することができる。第1液のモル移動量m1は、第1液の流量Q1又は搬送量Q1’、無機酸化物前駆体の含有量c1、密度、及び無機酸化物前駆体の分子量から計算される。第2液のモル移動量m2は、第2液における無機酸化物形成物質の含有量c2及び流量Q2又は搬送量Q2’よって制御することができる。第2液のモル移動量m2は、第2液の流量Q2又は搬送量Q2’、無機酸化物形成物質の含有量c2、密度、並びに無機酸化物形成物質の分子量から計算される。
第1液を流動させる場合、第1及び第2液の接触時における第1液の線速u1は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは0.0001m/s以上、より好ましくは0.01m/s以上、更に好ましくは0.03m/s以上であり、また、同様の観点から、好ましくは100m/s以下、より好ましくは60m/s以下、更に好ましくは10m/s以下である。この第1液の線速u1は、好ましくは0.0001m/s以上100m/s以下、より好ましくは0.01m/s以上60m/s以下、更に好ましくは0.03m/s以上10m/s以下である。
第2液を流動させる場合、第1及び第2液の接触時における第2液の線速u2は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは0.001m/s以上、より好ましくは0.01m/s以上、更に好ましくは0.03m/s以上であり、また、同様の観点から、好ましくは100m/s以下、より好ましくは60m/s以下、更に好ましくは10m/s以下である。この第2液の線速u2は、好ましくは0.001m/s以上100m/s以下、より好ましくは0.01m/s以上60m/s以下、更に好ましくは0.03m/s以上10m/s以下である。
なお、この第1及び第2液の線速u1,u2は、第1及び第2液の流量Q1,Q2と装置形状によって制御することができる。また、図1及び2に示す第1及び第2液の接触方法では、第1及び第2液の線速u1,u2は、それらの流量Q1,Q2を、それぞれ合流部における合流後の流動方向に直交する断面の流路面積で除すことにより求められる。図3〜8に示す第1及び第2液の接触方法では、第1及び第2液の線速u1,u2は、それらの流量Q1,Q2を、それぞれ液積層構造を形成したときにおけるそれらの流動方向に直交する断面の面積で除すことにより求められる。
第1及び第2液の両方を流動させる場合、第1及び第2液の接触時における第1液の線速u1及び第2液の線速u2は、上記の範囲となることが好ましい。また、第1液の線速u1は、第2液の線速u2と同一でもよく、第2液の線速u2よりも大きくても小さくてもよい。第1及び第2液の接触時における第1液の線速u1の第2液の線速u2に対する比(u1/u2)は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、また、同様の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは10以下である。この線速の比(u1/u2)は、好ましくは0.01以上100以下、より好ましくは0.3以上60以下、更に好ましくは0.5以上10以下である。
また、第1液を流動させる場合、第1液は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、第1及び第2液が接触するまで、具体的には接触直前まで層流条件で流動することが好ましい。第1及び第2液が接触するまでの第1液のレイノルズ数Re1は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは5以上であり、また、同様の観点から、好ましくは3000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは100以下である。この第1液のレイノルズ数Re1は、好ましくは0.1以上3000以下、より好ましくは1以上500以下、更に好ましくは5以上100以下である。なお、この第1液のレイノルズ数Re1は、第1液の流量Q1によって制御することができる。
第2液を流動させる場合、第2液は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、第1及び第2液が接触するまで、具体的には接触直前まで層流条件で流動することが好ましい。第1及び第2液が接触するまでの第2液のレイノルズ数Re2は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、また、同様の観点から、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下である。この第2液のレイノルズ数Re2は、好ましくは0.01以上500以下、より好ましくは0.05以上100以下、更に好ましくは0.1以上50以下である。なお、この第2液のレイノルズ数Re2は、第2液の流量Q2によって制御することができる。
第1及び第2液の両方を流動させる場合、第1及び第2液が接触するまでの第1液のレイノルズ数Re1及び第2液のレイノルズ数Re2は、上記の範囲となることが好ましい。また、第1液のレイノルズ数Re1は、第2液のレイノルズ数Re2と同一であってもよく、また、第2液のレイノルズ数Re2よりも大きくてもよく、或いは、第2液のレイノルズ数Re2よりも小さくてもよい。第1及び第2液が接触するまでの第1液のレイノルズ数Re1の第2液のレイノルズ数Re2に対する比(Re1/Re2)は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは5以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは15以上であり、また、同様の観点から、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは200以下、より更に好ましくは100以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは30以下、より更に好ましくは25以下である。このレイノルズ数の比(Re1/Re2)は、好ましくは0.01以上1000以下、より好ましくは0.1以上500以下、更に好ましくは1以上200以下、より更に好ましくは5以上100以下、より更に好ましくは10以上50以下、より更に好ましくは15以上30以下、より更に好ましくは15以上25以下である。
第1及び第2液の接触時間は、薄膜状無機酸化物を直接的に連続して製造する観点から、好ましくは0.5s以上、より好ましくは1.0s以上、更に好ましくは2.0s以上であり、また、同様の観点から、好ましくは600s以下、より好ましくは180s以下、更に好ましくは100s以下、より更に好ましくは50s以下、より更に好ましくは10s以下である。この接触時間は、好ましくは0.5s以上600s以下、より好ましくは1.0s以上180s以下、更に好ましくは2.0s以上100s以下、より更に好ましくは2.0s以上50s以下、より更に好ましくは2.0s以上10s以下である。
第1及び第2液の接触時の反応温度は、反応率、収率及び液の粘性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上である。また、反応制御の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは35℃以下である。この反応温度は、好ましくは0℃以上100℃以下、より好ましくは5℃以上60℃以下、更に好ましくは10℃以上35℃以下である。
実施形態に係る薄膜状無機酸化物の製造方法は、無機酸化物形成ステップにおいて薄膜状無機酸化物のゲルを含有するスラリーを得た後、そのスラリーから濾過等により薄膜状無機酸化物のゲルを分離するゲル分離ステップ、並びにそれを乾燥及び焼成して最終的に固体の薄膜状無機酸化物を得る乾燥・焼成ステップを有する。
実施形態に係る製造方法によって得られる薄膜状無機酸化物の平均長径(最大径)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下である。この平均長径は、好ましくは2μm以上300μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下、更に好ましくは10μm以上50μm以下である。平均長径は得られた薄膜状無機酸化物の顕微鏡観察により測定された500個の平均値として求められる。
薄膜状無機酸化物の平均厚さは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、また、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.8μm以下、より更に好ましくは0.5μm以下、より更に好ましくは0.4μm以下、より更に好ましくは0.3μm以下である。この平均厚さは、好ましくは0.01μm以上1.5μm以下、より好ましくは0.05μm以上1μm以下、更に好ましくは0.1μm以上0.8μm以下、より更に好ましくは0.1μm以上0.5μm以下、より更に好ましくは0.1μm以上0.4μm以下、より更に好ましくは0.1μm以上0.3μm以下である。平均厚さは、得られた薄膜状無機酸化物を切断し、その断面の顕微鏡観察により測定された20個の平均値として求められる。
薄膜状無機酸化物の平均長径の平均厚さに対する比は、好ましくは5以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは50以上であり、また、好ましくは2000以下、より好ましくは800以下、更に好ましくは500以下である。この比は、好ましくは5以上2000以下、より好ましくは30以上800以下、更に好ましくは50以上500以下である。
上述した実施形態に関し、更に以下の構成を開示する。
<1>無機酸化物前駆体を含有する第1液と、前記第1液の前記無機酸化物前駆体と反応して前記無機酸化物前駆体から誘導される無機酸化物を形成させる物質を含有する第2液とを接触させるステップを有する薄膜状無機酸化物の製造方法であって、前記ステップを連続操作で行い、且つ前記第1及び第2液のうちの少なくとも一方がイオン性液体を含有する薄膜状無機酸化物の製造方法。
<2>前記第1液が、前記無機酸化物前駆体が溶媒に溶解した溶液である<1>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<3>前記第1液が、好ましくはトルエン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、クロロホルムのうちの1種又は2種以上、より好ましくはトルエン、ヘキサン、及びヘプタンのうちの1種又は2種以上を含有する<1>又は<2>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<4>前記無機酸化物前駆体は、加水分解反応及び重縮合反応を伴うゾル−ゲル転移によって前記無機酸化物を誘導する加水分解性の官能基を持つ無機物質を含む<1>乃至<3>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<5>前記無機酸化物前駆体が、前記無機酸化物のアルコキシド、ハロゲン化物、加水分解性の官能基を有する塩、加水分解性の官能基を有する配位化合物、アミン類のうちの1種又は2種以上を含む<1>乃至<4>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<6>前記無機酸化物前駆体が、好ましくはアルコキシド、より好ましくは金属アルコキシド、更に好ましくはチタンアルコキシド及びジルコニウムアルコキシド、より更に好ましくはアルキル基の炭素数が2以上4以下であるチタンアルコキシド及びジルコニウムアルコキシドを含む<1>乃至<5>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<7>前記チタンアルコキシドが、オルトチタン酸テトラエチル、オルトチタン酸テトラ-iso-プロピル、又はオルトチタン酸テトラ-n-ブチルを含む<6>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<8>前記ジルコニウムアルコキシドが、オルトジルコニウム酸テトラエチル、オルトジルコニウム酸テトラ-iso-プロピル、又はオルトジルコニウム酸テトラ-n-ブチルを含む<6>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<9>前記第1液における前記無機酸化物前駆体の含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下である<1>乃至<8>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<10>前記無機酸化物前駆体の含有量が、好ましくは1質量%以上80質量%以下、より好ましくは5質量%以上70質量%以下、更に好ましくは8質量%以上60質量%以下、より更に好ましくは8質量%以上50質量%以下、より更に好ましくは8質量%以上40質量%以下である<1>乃至<9>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<11>前記第2液における前記無機酸化物を形成させる物質の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である<1>乃至<10>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<12>前記第2液における前記無機酸化物を形成させる物質の含有量が、好ましくは0.1質量%以上70質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上30質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以上20質量%以下である<1>乃至<11>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<13>前記イオン性液体のカチオンがアンモニウムカチオンを含む<1>乃至<12>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<14>前記アンモニウムカチオンが、下記化学式(1)で示される1−アルキル−3−アルキルイミダゾリウムカチオンを含む<13>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
(R1は、炭素原子数が12以下のアルキル基、又は、アルキル基の炭素原子結合間にエーテル結合を形成するように1又は2以上の酸素原子が導入され且つ炭素原子数と酸素原子数との合計が12以下である官能基を表し、R2は、炭素原子数が1以上4以下のアルキル基、又は、水素原子を表す。)
<15>前記アンモニウムカチオンが、好ましくは1−アルキル−3−メチルイミダゾリウムカチオンを含み、より好ましくは1−メチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、又は1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンを含む<13>又は<14>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<16>前記アンモニウムカチオンが、下記化学式(2)で示されるN−アルキルピリジウムカチオンを含む<13>乃至<15>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
(Rは、炭素原子数が12以下のアルキル基、又は、アルキル基の炭素原子結合間にエーテル結合を形成するように1又は2以上の酸素原子が導入され且つ炭素原子数と酸素原子数との合計が12以下である官能基を表す。)
<17>前記アンモニウムカチオンが、1−メチルピリジウムカチオン、1−エチルピリジウムカチオン、1−プロピルピリジウムカチオン、又は1−ブチルピリジウムカチオンを含む<13>乃至<16>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<18>前記アンモニウムカチオンが、下記化学式(3)で示されるものを含む<13>乃至<17>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
[NRXH4−X]+ (3)
(Rは、炭素原子数が12以下のアルキル基、又は、アルキル基の炭素原子結合間にエーテル結合を形成するように1又は2以上の酸素原子が導入され且つ炭素原子数と酸素原子数との合計が12以下である官能基を表し、Xは0以上4以下の整数を表す。)
<19>前記アンモニウムカチオンが、N,N,N−トリエチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、又はエチルジメチルプロピルアンモニウムカチオンを含む<13>乃至<18>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<20>前記イオン性液体のカチオンがホスホニウムカチオンを含む<1>乃至<19>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<21>前記ホスホニウムカチオンが、下記化学式(4)で示されるものを含む<20>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
[PRXH4−X]+ (4)
(Rは、炭素原子数が12以下のアルキル基、又は、アルキル基の炭素原子結合間にエーテル結合を形成するように1又は2以上の酸素原子が導入され且つ炭素原子数と酸素原子数との合計が12以下である官能基を表し、Xは0以上4以下の整数を表す。)
<22>前記ホスホニウムカチオンが、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、又はトリブチルメチルホスホニウムカチオンを含む<20>又は<21>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<23>前記イオン性液体のアニオンが、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミドアニオン([(CF3SO2)2N]−)、エチルサルフェートアニオン([C2H5OSO3]−)、ビス(フルオロスルフォニル)アミドアニオン([(FSO2)2N]−)、ジシアミドアニオン([(CN)2N]−)、テトラフルオロボレートアニオン(BF4 −)、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6 −)、ハロゲン化物アニオン(Cl−、Br−、I−)、又はトリフルオロメタンスルフォネートアニオン([CF3SO3]−)を含む<1>乃至<22>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<24>前記第2液が、前記無機酸化物を形成させる物質が前記イオン性液体に溶解した溶液である<1>乃至<23>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<25>前記第1液が、前記イオン性液体を含有せずに前記無機酸化物前駆体が有機溶媒に溶解した溶液である<24>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<26>前記第1及び第2液は相分離する<1>乃至<25>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<27>前記第1液の前記第2液に対するそれらの接触時の温度における界面張力が、好ましくは0.1mN/m以上、より好ましくは0.5mN/m以上、更に好ましくは1mN/m以上であり、また、好ましくは30mN/m以下、より好ましくは15mN/m以下、更に好ましくは10mN/m以下である<26>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<28>前記第1液の前記第2液に対するそれらの接触時の温度における界面張力が、好ましくは0.1mN/m以上30mN/m以下、より好ましくは0.5mN/m以上15mN/m以下、更に好ましくは1mN/m以上10mN/m以下である<26>又は<27>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<29>前記第1及び第2液の接触態様が、前記第1及び第2液のうちの移動する一方に他方を供給して接触させる態様を含む<1>乃至<28>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<30>前記第1及び第2液の接触時における前記第2液の前記無機酸化物を形成させる物質のモル移動量の前記第1液の無機酸化物前駆体のモル移動量に対する比が、好ましくは2以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは50以上であり、また、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である<29>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<31>前記第1及び第2液の接触時における前記第2液の前記無機酸化物を形成させる物質のモル移動量の前記第1液の無機酸化物前駆体のモル移動量に対する比が、好ましくは2以上300以下、より好ましくは10以上200以下、更に好ましくは50以上150以下である<29>又は<30>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<32>前記第1及び第2液の接触態様が、前記第1及び第2液のうちの流動する一方に他方を供給して接触させる態様を含む<29>乃至<31>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<33>前記第1液を流動させるとき、前記第1及び第2液の接触時における前記第1液の線速が、好ましくは0.0001m/s以上、より好ましくは0.01m/s以上、更に好ましくは0.03m/s以上であり、また、好ましくは100m/s以下、より好ましくは60m/s以下、更に好ましくは10m/s以下である<32>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<34>前記第1液を流動させるとき、前記第1及び第2液の接触時における前記第1液の線速が、好ましくは0.0001m/s以上100m/s以下、より好ましくは0.01m/s以上60m/s以下、更に好ましくは0.03m/s以上10m/s以下である<32>又は<33>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<35>前記第2液を流動させるとき、前記第1及び第2液の接触時における前記第2液の線速が、好ましくは0.001m/s以上、より好ましくは0.01m/s以上、更に好ましくは0.03m/s以上であり、また、好ましくは100m/s以下、より好ましくは60m/s以下、更に好ましくは10m/s以下である<32>乃至<34>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<36>前記第2液を流動させるとき、前記第1及び第2液の接触時における前記第2液の線速が、好ましくは0.001m/s以上100m/s以下、より好ましくは0.01m/s以上60m/s以下、更に好ましくは0.03m/s以上10m/s以下である<32>乃至<35>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<37>前記第1液を流動させるとき、前記第1液は、前記第1及び第2液が接触するまで層流条件で流動する<32>乃至<36>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<38>前記第1液を流動させるとき、前記第1及び第2液が接触するまでの前記第1液のレイノルズ数が、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは5以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは100以下である<32>乃至<37>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<39>前記第1液を流動させるとき、前記第1及び第2液が接触するまでの前記第1液のレイノルズ数が、好ましくは0.1以上3000以下、より好ましくは1以上500以下、更に好ましくは5以上100以下である<32>乃至<38>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<40>前記第2液を流動させるとき、前記第2液は、前記第1及び第2液が接触するまで層流条件で流動する<32>乃至<39>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<41>前記第2液を流動させるとき、前記第1及び第2液が接触するまでの前記第2液のレイノルズ数が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、また、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下である<32>乃至<40>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<42>前記第2液を流動させるとき、前記第1及び第2液が接触するまでの前記第2液のレイノルズ数が、好ましくは0.01以上500以下、より好ましくは0.05以上100以下、更に好ましくは0.1以上50以下である<32>乃至<41>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<43>前記第1及び第2液の接触態様が、前記第1及び第2液の両方をそれぞれ流動させて合流させる態様を含む<32>乃至<42>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<44>前記第1及び第2液の接触時における前記第1液の線速が、前記第2液の線速と同一、又は、前記第2液の線速よりも大きい<43>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<45>前記第1及び第2液の接触時における前記第1液の線速の前記第2液の線速に対する比が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは100以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは10以下である<43>又は<44>に記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<46>前記第1及び第2液の接触時における前記第1液の線速の前記第2液の線速に対する比が、好ましくは0.01以上100以下、より好ましくは0.3以上60以下、更に好ましくは0.5以上10以下である<43>乃至<45>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<47>前記第1及び第2液の両方を流動させるとき、前記第1及び第2液が接触するまでの前記第1液のレイノルズ数の前記第2液のレイノルズ数に対する比が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは5以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは15以上であり、また、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは200以下、より更に好ましくは100以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは30以下、より更に好ましくは25以下である<43>乃至<46>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<48>前記第1及び第2液の両方を流動させるとき、前記第1及び第2液が接触するまでの前記第1液のレイノルズ数の前記第2液のレイノルズ数に対する比が、好ましくは0.01以上1000以下、より好ましくは0.1以上500以下、更に好ましくは1以上200以下、より更に好ましくは5以上100以下、より更に好ましくは10以上50以下、より更に好ましくは15以上30以下、より更に好ましくは15以上25以下である<43>乃至<47>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<49>前記第1及び第2液の接触態様が、前記第1及び第2液のうちの一方だけを流動させる態様を含む<32>乃至<48>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<50>前記第1及び第2液の接触態様が、前記第1及び第2液のうちの搬送される一方に他方を供給して接触させる態様を含む<29>乃至<49>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<51>前記第1及び第2液の接触態様が、前記第1及び第2液のうちの静止する一方に他方を供給して接触させると共に前記他方を移動させる態様を含む<1>乃至<50>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<52>前記第1及び第2液の接触を、気相が存在せずに自由界面を有さない状態で行う<1>乃至<51>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<53>前記第1及び第2液の接触を、気相が存在して自由界面を有する状態で行う<1>乃至<51>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<54>前記第1及び第2液の接触時間が、好ましくは0.5s以上、より好ましくは1.0s以上、更に好ましくは2.0s以上であり、また、好ましくは600s以下、より好ましくは180s以下、更に好ましくは100s以下、より更に好ましくは50s以下、より更に好ましくは10s以下である<1>乃至<53>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<55>前記第1及び第2液の接触時間が、好ましくは0.5s以上600s以下、より好ましくは1.0s以上180s以下、更に好ましくは2.0s以上100s以下、より更に好ましくは2.0s以上50s以下、より更に好ましくは2.0s以上10s以下である<1>乃至<54>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<56>前記第1及び第2液の接触時の反応温度が、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは35℃以下である<1>乃至<55>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<57>前記第1及び第2液の接触時の反応温度が、好ましくは0℃以上100℃以下、より好ましくは5℃以上60℃以下、更に好ましくは10℃以上35℃以下である<1>乃至<56>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<58>前記薄膜状無機酸化物の平均長径が、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下である<1>乃至<57>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<59>前記薄膜状無機酸化物の平均長径が、好ましくは2μm以上300μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下、更に好ましくは10μm以上50μm以下である<1>乃至<58>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<60>前記薄膜状無機酸化物の平均厚さが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、また、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.8μm以下、より更に好ましくは0.5μm以下、より更に好ましくは0.4μm以下、より更に好ましくは0.3μm以下である<1>乃至<59>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<61>前記薄膜状無機酸化物の平均厚さが、好ましくは0.01μm以上1.5μm以下、より好ましくは0.05μm以上1μm以下、更に好ましくは0.1μm以上0.8μm以下、より更に好ましくは0.1μm以上0.5μm以下、より更に好ましくは0.1μm以上0.4μm以下、より更に好ましくは0.1μm以上0.3μm以下である<1>乃至<60>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<62>前記薄膜状無機酸化物の平均長径の平均厚さに対する比が、好ましくは5以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは50以上であり、また、好ましくは2000以下、より好ましくは800以下、更に好ましくは500以下である<1>乃至<61>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
<63>前記薄膜状無機酸化物の平均長径の平均厚さに対する比が、好ましくは5以上2000以下、より好ましくは30以上800以下、更に好ましくは50以上500以下である<1>乃至<62>のいずれかに記載の薄膜状無機酸化物の製造方法。
[第1実施例]
(薄膜状無機酸化物ゲル製造システム)
図10は、第1実施例で用いた薄膜状無機酸化物ゲル製造システムSを示す。
薄膜状無機酸化物ゲル製造システムSはマイクロリアクター100を備えている。マイクロリアクター100は、上流側部分に第1及び第2液流入部101,102、並びに下流側部分に液排出部103がそれぞれ設けられている。
マイクロリアクター100の第1液流入部101には、第1液L1を貯留するための第1貯槽211から延びた第1液供給管221が接続されている。同様に、第2液流入部102には、第2液L2を貯留するための第2貯槽212から延びた第2液供給管222が接続されている。第1及び第2液供給管221,222のそれぞれには、液の流通及び遮断を切り替えるためのコック231,232、液を送液するためのポンプ241,242、及び液の流量を検知するための流量計251,252が上流側から順に介設されており、また、流量計251,252の下流側に液の圧力を検知するための圧力計261,262が取り付けられている。ポンプ241,242と流量計251,252とは電気的に接続されており、液の流量のフィードバック制御を行うように構成されている。マイクロリアクター100の液排出部103からはスラリー回収管270が延びてスラリー回収槽280に接続されている。
図11A〜Eは基板積層型のマイクロミキサー100を示す。
この基板積層型のマイクロミキサー100は、上側及び下側基板111,112、中間基板113、並びに上側及び下側スペーサ114,115が積層一体化されて構成されている。
上側基板111は、長方形の板状に形成されており、その長さ方向の一方が上流側部分及び他方が下流側部分にそれぞれ構成されている。上側基板111の上流側部分には、第1液流入部101が幅方向の中間部に厚さ方向に貫通して形成されており、その下面側には、幅方向に延びるように形成された第1液溜凹部111aが第1液流入部101に連通して設けられている。上側基板111の両側の長辺及び上流側の短辺のそれぞれの縁部には、各々、厚さ方向に貫通して形成された複数の位置決め孔111aが間隔をおいて設けられている。
下側基板112は、上側基板111と同様、長方形の板状に形成されており、その長さ方向の一方が上流側部分及び他方が下流側部分にそれぞれ構成されている。下側基板112の上流側部分は、上面側が欠損しており、基板厚さが薄く形成された上流側の短辺の縁部に続いて下流側に向かって基板厚さが漸次厚くなるように形成された傾斜部116が構成されている。下側基板112の上流側部分には、第2液流入部102が幅方向の中間部に厚さ方向に貫通して形成されており、その上面側には、縁部の一部及び傾斜部116の一部を含んで幅方向に延びるように形成された第2液溜凹部112aが第2液流入部102に連通して設けられている。下側基板112の上面側における両側の長辺及び上流側の短辺のそれぞれの縁部には、各々、上側基板111の位置決め孔111bに対応するように形成された複数の位置決め孔112bが間隔をおいて設けられている。
中間基板113は、下側基板112の欠損に対応した楔形に形成されている。中間基板113の両側の側辺及び上流側の側辺のそれぞれの縁部には、各々、上側基板111の位置決め孔111bに対応して厚さ方向に貫通して形成された複数の位置決め孔113aが間隔をおいて設けられている。
上側スペーサ114は、上側基板111の下面における両側の長辺及び上流側の短辺の縁部に対応する形状の幅狭薄肉の帯状に形成されている。下側スペーサ115は、下側基板112の上面における両側の長辺及び上流側の短辺の縁部に対応する屈折した形状の幅狭薄肉の帯状に形成されている。上側及び下側スペーサ114,115には、各々、上側基板111の位置決め孔111bに対応して厚さ方向に貫通して形成された複数の位置決め孔114a,115aが間隔をおいて設けられている。
基板積層型のマイクロミキサー100は、下側基板112上に下側スペーサ115が積層されており、その上流側部分上に中間基板113が積層されている。上流側の中間基板113上及びそれよりも下流側の下側スペーサ115上には上側スペーサ114が積層されており、その上には上側基板111が積層されている。そして、上側基板111の各位置決め孔111bに、上側スペーサ114、中間基板113、下側スペーサ115、及び下側基板112の対応する位置決め孔114a,113a,115a,112bが位置合わせされ、それらに図示しないピンが挿通されて嵌合することにより一体に構成されている。
基板積層型のマイクロミキサー100における上側基板111の下面と中間基板113の上面との間には、上側スペーサ114の厚さに相当する第1液流路117aが第1液溜凹部111aに連通して構成されている。下側基板112の傾斜部116の上面と中間基板113の下面との間には、下側スペーサ115の厚さに相当する第2液流路117bが第2液溜凹部112aに連通して構成されている。中間基板113よりも下流側の部分においては、上側及び下側スペーサ114,115を合わせた厚さに相当する液接触部118が構成されている。液接触部118に連続する下流側の端のスリット状の開口は液排出部103に構成されている。そして、中間基板113の下流側の端には、第1液流路117aが液接触部118に開口した第1スリット119a、及び第2液流路117bが液接触部118に開口した第2スリット119bが並列するように構成されている。
この基板積層型のマイクロリアクター100では、第1液流路117aを流動する第1液L1を第1スリット119aから流出させ、液接触部118において、第2液流路117bを流動して第2スリット119bから流出させた第2液L2に接触させる。このとき、第1液L1に第2液L2が、第1液L1の流動方向に対して斜め後方から接触した後、それらが第1液L1の流動方向に沿って流動する。そして、液接触部118で第1及び第2液L1,L2が滞留する接触時間がそれらの反応時間に相当する。
この基板積層型のマイクロリアクター100において、第1液L1が流出する第1スリット119aにおける第1液L1の流動方向に直交する方向の合流部への開口幅δ1は130μmであった。第2液L2が流出する第2スリット119bにおける第2液L2の流動方向に直交する方向の合流部への開口幅δ2は130μmであった。下側基板112の傾斜部116の傾斜角度は、第1液L1の流動方向の第2液L2の流動方向に対する角度θの10°であった。
(薄膜状酸化チタンの製造)
上記基板積層型のマイクロリアクター100を備えた薄膜状無機酸化物ゲル製造システムSを用いて連続操作により第1及び第2液L1,L2を接触させて下記の実施例1の薄膜状酸化チタンの製造を行った。また、ウィルヘルミー型界面張力計を用いて第1液L1の第2液L2に対する25℃における界面張力を測定した。更に、得られた薄膜状酸化チタンの顕微鏡観察により測定された500個の最大径の平均値を平均長径として求めた。得られた薄膜状酸化チタンを切断し、その断面の顕微鏡観察により測定された20個の厚さの平均値を平均厚さとして求めた。これらの結果から平均長径の平均厚さに対する比を求めた。その結果について表1に示す。
<実施例1>
第1液L1として、無機酸化物前駆体のTi(OBu)4を8.0質量%含有するヘキサン溶液を調製した。また、第2液L2として、無機酸化物形成物質の水を10質量%含有するEmimをカチオン及びESをアニオンとするイオン性液体溶液を調製した。
第1及び第2液L1,L2をそれぞれ第1及び第2貯槽211,212に仕込み、それらを基板積層型のマイクロリアクター100に供給することにより薄膜状酸化チタンのゲルを含有するスラリーを得た。このとき、第1液L1の流量Q1を39mL/minとし、その第1及び第2液L1,L2の接触時における第1液L1の線速u1を0.05m/sとし、また、第1及び第2液L1,L2が接触するまでの第1液L1のレイノルズ数Re1を14とした。第2液L2の流量Q2を39mL/minとし、その第1及び第2液L1,L2の接触時における第2液L2の線速u2を0.05m/sとし、また、第1及び第2液L1,L2が接触するまでの第2液L2のレイノルズ数Re2を0.14とした。第1及び第2液L1,L2の温度(反応温度)は25℃とした。第1及び第2液L1,L2の液接触部での接触時間(反応時間)は3秒とした。第1及び第2液L1,L2の流動方向のなす角度は10°であった。
得られたスラリーを金属メッシュで濾過し、金属メッシュ上に残った薄膜状酸化チタンのゲルをエタノールで洗浄した後に乾燥及び焼成することにより固体の薄膜状酸化チタンを得た。
[第2実施例]
(薄膜状無機酸化物ゲル製造システム)
図12A及びBは、第2実施例で用いた薄膜状無機酸化物ゲル製造システムSのマイクロリアクター100を示す。なお、マイクロリアクター100以外の構成は、第1実施例で用いた薄膜状無機酸化物ゲル製造システムSと同一である。
この二重管型のマイクロリアクター100は、小径の内側配管121とそれを覆うように同軸に設けられた大径の外側配管122とを有し、内側配管121の先端が外側配管122の中間部に位置付けられている。内側配管121の内部には第1液流路121aが構成されていると共に、内側配管121と外側配管122との間には第2液流路122aが構成され、且つ内側配管121の先端の下流側に液接触部123が構成されている。マイクロリアクター100の上流側に設けられた第1及び第2流入部101,102は、それぞれ第1及び第2液流路121a,122aに連通している。マイクロリアクター100の下流側に設けられた液排出部103は液接触部123に連続する開口で構成されている。
この二重管型のマイクロリアクター100では、内側配管121内の第1液流路121aを流動する第1液L1を内側配管121の先端から流出させ、液接触部123において、その第1液L1を内側配管121と外側配管122との間の第2液流路122aを流動していた第2液L2に接触させる。このとき、第1及び第2液L1,L2の両方が同一方向に流動し、その流動方向を維持した状態でそれらが接触する。また、第1液L1が第2液L2で覆われるように接触する。そして、液接触部123で第1及び第2液L1,L2が滞留する接触時間がそれらの反応時間に相当する。
この二重管型のマイクロリアクター100において、第1液L1が流出する内側配管121の内径φin、すなわち、第1液L1の流動方向に直交する方向の合流部への開口径は170μmであった。第2液L2が流動する第2液流路122aを構成する外側配管122の内径Φinと内側配管121の外径φoutとの差の1/2、すなわち、第2液L2の流動方向に直交する方向の合流部への開口径は400μmであった。
(薄膜状金属酸化物の製造)
上記二重管型のマイクロリアクター100を備えた薄膜状無機酸化物ゲル製造システムSを用いて連続操作により第1及び第2液L1,L2を接触させて下記の実施例2-1〜2-8の薄膜状金属酸化物の製造を行った。また、実施例2-1〜2-8のそれぞれについて、ウィルヘルミー型界面張力計を用いて第1液L1の第2液L2に対する25℃における界面張力を測定した。更に、実施例2-1〜2-2及び2-5〜2-7のそれぞれで得られた薄膜状無機酸化物について、第1実施例と同様にして、平均長径及び平均厚さを求めると共に、平均長径の平均厚さに対する比を算出した。実施例2-2で得られた薄膜状無機酸化物については平均厚さだけを求めた。それらの結果について表2に示す。
<実施例2-1>
第1液L1として、無機酸化物前駆体のTi(OBu)4を20質量%含有するヘキサン溶液を調製した。また、第2液L2として、無機酸化物形成物質の水を1.0質量%含有するBmimをカチオン及びNTf2をアニオンとするイオン性液体溶液を調製した。
第1及び第2液L1,L2をそれぞれ第1及び第2貯槽211,212に仕込み、それらを二重管型のマイクロリアクター100に供給することにより薄膜状酸化チタンのゲルを含有するスラリーを得た。このとき、第1液L1の流量Q1を0.14mL/minとし、その第1及び第2液L2の接触時における線速u1を0.11m/sとし、また、第1及び第2液L1,L2が接触するまでのレイノルズ数Re1を42とした。第2液L2の流量Q2を10.4mL/minとし、その第1及び第2液L1,L2の接触時における線速u2を0.07m/sとし、また、第1及び第2液L1,L2が接触するまでのレイノルズ数Re2を2とした。第1及び第2液L1,L2の温度(反応温度)は25℃とした。第1及び第2液L1,L2の液接触部での接触時間(反応時間)は3秒とした。
得られたスラリーを金属メッシュで濾過し、金属メッシュ上に残った薄膜状酸化チタンのゲルをエタノールで洗浄した後に乾燥及び焼成することにより固体の薄膜状酸化チタンを得た。
<実施例2-2>
第1液L1として、無機酸化物前駆体のTi(OBu)4を30質量%含有するトルエン溶液を用いたことを除いて実施例2-1と同様にして固体の薄膜状酸化チタンを得た。
<実施例2-3>
第2液L2として、無機酸化物形成物質である水を1.0質量%含有するEmimをカチオン及びDCAをアニオンとするイオン性液体溶液を用いたことを除いて実施例2-1と同様にして固体の薄膜状酸化チタンを得た。
<実施例2-4>
第2液L2として、無機酸化物形成物質である水を0.1質量%含有するBmimをカチオン及びNTf2をアニオンとするイオン性液体溶液を用いたことを除いて実施例2-1と同様にして固体の薄膜状酸化チタンを得た。
<実施例2-5>
第1液L1の流量Q1を0.48mL/minとし、その第1及び第2液L1,L2の接触時における線速u1を0.35m/sとし、また、第1及び第2液L1,L2が接触するまでのレイノルズ数Re1を87とすると共に、第2液L2の流量Q2を34.7mL/minとし、その第1及び第2液L1,L2の接触時における線速u2を0.2m/sとし、また、第1及び第2液L1,L2が接触するまでのレイノルズ数Re2を5としたことを除いて実施例2-2と同様にして固体の薄膜状酸化チタンを得た。
<実施例2-6>
第1液L1の流量Q1を5.2mL/minとし、その第1及び第2液L1,L2の接触時における線速u1を3.8m/sとし、また、第1及び第2液L1,L2が接触するまでのレイノルズ数Re1を1439とすると共に、第2液L2として、無機酸化物形成物質の水を1.2質量%含有するEmimをカチオン及びESをアニオンとするイオン性液体溶液を用いたことを除いて実施例2-1と同様にして固体の薄膜状酸化チタンを得た。
<実施例2-7>
第1液L1として、無機酸化物前駆体のZr(OBu)4を30質量%含有するヘキサン溶液を用いると共に、第2液L2として、無機酸化物形成物質の水を0.9質量%含有するBmimをカチオン及びNTf2をアニオンとするイオン性液体溶液を用いたことを除いて実施例2-1と同様にして固体の薄膜状酸化ジルコニウムを得た。
<実施例2-8>
二重管型のマイクロリアクター100において、第1液L1が流出する内側配管121の内径φinを750μmに変更した以外は実施例2-2と同様にして一部薄膜状酸化チタンを得た。
[第3実施例]
内径が2.4mmのT字管を用いて連続操作により第1及び第2液L1,L2を接触させて下記の実施例3の薄膜状酸化チタンの製造を行った。また、ウィルヘルミー型界面張力計を用いて第1液L1の第2液L2に対する25℃における界面張力を測定した。更に、得られた薄膜状無機酸化物について、第1実施例と同様にして、平均長径及び平均厚さを求めると共に、平均長径の平均厚さに対する比を算出した。その結果について表3に示す。
<実施例3>
第1液L1として、無機酸化物前駆体のTi(OBu)4を30質量%含有するトルエン溶液を調製した。また、第2液L2として、無機酸化物形成物質の水を1質量%含有するBmimをカチオン及びNTf2をアニオンとするイオン性液体溶液を調製した。
T字管の直管部分の一端から第1液L1を流入させると共に枝管部分に第2液L2を流入させることにより、直管部分と枝管部分との交差部分から下流側の液接触部でそれらを合流させ、そして、直管部分の他端から合流した流体を回収した。このとき、第1液L1の流量Q1を0.14mL/minとし、その第1及び第2液L1,L2の接触時における線速u1を0.0005m/sとし、また、第1及び第2液L1,L2が接触するまでのレイノルズ数Re1を1882とした。第2液L2の流量Q2を10.4mL/minとし、その第1及び第2液L1,L2の接触時における線速u2を0.038m/sとし、また、第1及び第2液L1,L2が接触するまでのレイノルズ数Re2を2.65とした。第1及び第2液L1,L2の温度(反応温度)は25℃とした。合流時の第1及び第2液L1,L2の流動方向のなす角度は90°であった。
[第4実施例]
図3に示すような液槽30を用いて連続操作により第1及び第2液L1,L2を接触させて下記の実施例4-1〜4-3の薄膜状酸化チタンの製造を行った。また、実施例4-1〜4-3のそれぞれについて、ウィルヘルミー型界面張力計を用いて第1液L1の第2液L2に対する25℃における界面張力を測定した。更に、得られた薄膜状酸化チタンについて、第1実施例と同様にして平均厚さを求めた。その結果を表4及びそれぞれで得られた薄膜状酸化チタンを表5に示す。
<実施例4-1>
第1液L1として、無機酸化物前駆体のTi(OBu)4を5.0質量%含有するヘキサン溶液を調製した。また、第2液L2として、無機酸化物形成物質の水を10質量%含有するEmimをカチオン及びESをアニオンとするイオン性液体溶液を調製した。
第2液L2を液槽30に循環させながら流動させ、その第2液L2の表面にマイクロシリンジから第1液L1を供給することにより薄膜状酸化チタンのゲルを含有するスラリーを得た。このとき、第2液L2の流量Q2を200mL/minとし、その線速u2は0.012m/s及びレイノルズ数Re2を5.1とした。第1液L1の流量Q1は0.66mL/minであった。第1及び第2液L1,L2の温度(反応温度)は25℃とした。第1及び第2液L1,L2の接触時間(反応時間)は13秒とした。
得られたスラリーを金属メッシュで濾過し、金属メッシュ上に残った薄膜状酸化チタンのゲルをエタノールで洗浄した後に乾燥及び焼成することにより固体の薄膜状酸化チタンを得た。
<実施例4-2>
第1液L1として、無機酸化物前駆体のTi(OBu)4を30質量%含有するヘキサン溶液を用いたことを除いて実施例4-1と同様にして固体の薄膜状酸化チタンを得た。
<実施例4-3>
第2液L2の流量Q2を300mL/minとし、その線速u2は0.016m/s及びレイノルズ数Re2を7.6とし、第1及び第2液L1,L2の接触時間(反応時間)を9秒としたことを除いて実施例4-2と同様にして固体の薄膜状酸化チタンを得た。
[第5実施例]
図6並びに図7A及びBに示すようなベルトコンベア60を用いて連続操作により第1及び第2液L1,L2を接触させて下記の実施例5の薄膜状酸化チタンの製造を行った。また、ウィルヘルミー型界面張力計を用いて第1液L1の第2液L2に対する25℃における界面張力を測定した。更に、得られた薄膜状酸化チタンについて、第1実施例と同様にして平均厚さを求めた。その結果を表6及び得られた薄膜状酸化チタンを表7に示す。
<実施例5>
第1液L1として、無機酸化物前駆体のTi(OBu)4を30質量%含有するヘキサン溶液を調製した。また、第2液L2として、無機酸化物形成物質の水を10質量%含有するEmimをカチオン及びESをアニオンとするイオン性液体溶液を調製した。
第2液L2を一対のローラ61に巻き掛けられて走行する搬送ベルト62上の凹部63に供給して搬送し、その表面に第1液L1を供給して液積層構造を形成することにより薄膜状酸化チタンのゲルを含有するスラリーを得た。このとき、第2液L2の搬送量Q2’を120mL/minとした。第1液L1の搬送量Q1’は0.06mL/minであった。第1及び第2液L1,L2の温度(反応温度)は25℃とした。第1及び第2液L1,L2の接触時間(反応時間)は10秒とした。
得られたスラリーを金属メッシュで濾過し、金属メッシュ上に残った薄膜状酸化チタンのゲルをエタノールで洗浄した後に乾燥及び焼成することにより固体の薄膜状酸化チタンを得た。
[比較例]
第1及び第2液L1,L2をバッチ操作で接触させて下記の比較例1及び2の酸化チタンの製造を行った。比較例1及び2のそれぞれについて、ウィルヘルミー型界面張力計を用いて第1液L1の第2液L2に対する25℃における界面張力を測定した。また、メタノールを第2液L2とし、第2実施例と同様の連続操作により第1及び第2液L1,L2を接触させて下記の比較例3の酸化チタンの製造を行った。それらの内容について表8及び9に示す。
<比較例1>
第1液L1として、無機酸化物前駆体のTi(OBu)4を30質量%含有するトルエン溶液を調製した。また、第2液L2として、無機酸化物形成物質の水を0.2質量%含有するBmimをカチオン及びNTf2をアニオンとするイオン性液体溶液を調製した。
第2液L2を調製した容器を静置した後、容器内の第2液L2上に上方から第1液L1を添加して10分間静置して界面反応させることにより球状酸化チタンのゲルを含有するスラリーを得た。第1及び第2液L1,L2の温度(反応温度)は25℃とした。
得られたスラリーを金属メッシュで濾過し、金属メッシュ上に残った球状酸化チタンのゲルをエタノールで洗浄した後に乾燥及び焼成することにより固体の球状酸化チタンを得た。
<比較例2>
第1液L1を第2液L2に添加した後に10分間撹拌したことを除いて比較例1と同様の操作を行ったところ、球状酸化チタンのゲルを含有するスラリーを得た。
得られたスラリーを金属メッシュで濾過し、金属メッシュ上に残った球状酸化チタンのゲルをエタノールで洗浄した後に乾燥及び焼成することにより固体の球状酸化チタンを得た。この比較例2では、撹拌により反応を促進させたものの、薄膜状酸化チタンを得ることができなかった。
<比較例3>
第1液L1として、無機酸化物前駆体のTi(OBu)4を20質量%含有するヘキサン溶液を調製した。また、第2液L2として、無機酸化物形成物質の水を1.8質量%含有するメタノール溶液を調製した。
第1及び第2液L1,L2をそれぞれ第1及び第2貯槽211,212に仕込み、それらを二重管型のマイクロリアクター100に供給することにより球状酸化チタンのゲルを含有するスラリーを得た。このとき、第1液L1の流量Q1を0.14mL/minとし、その第1及び第2液L1,L2の接触時における線速u1を0.11m/sとし、また、第1及び第2液L1,L2が接触するまでのレイノルズ数Re1を42とした。第2液L2の流量Q2を10.4mL/minとし、その第1及び第2液L1,L2の接触時における線速u2を0.07m/sとし、また、第1及び第2液L1,L2が接触するまでのレイノルズ数Re2を220とした。第1及び第2液L1,L2の温度(反応温度)は25℃とした。第1及び第2液L1,L2の液接触部での接触時間(反応時間)は3秒とした。
得られたスラリーを金属メッシュで濾過し、金属メッシュ上に残った球状酸化チタンのゲルをエタノールで洗浄した後に乾燥及び焼成することにより固体の球状酸化チタンを得た。