JP6422351B2 - 導電性熱剥離固定材、及び導電性熱剥離固定材を用いた部品の加工方法 - Google Patents
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Description
また、加工後に部品を金属板から除去する際に、有機溶剤に浸漬させて、接着剤を除去する必要がある。このため、部品に塗布される接着剤の面積が大きな場合には、有機溶剤の浸入に掛かる時間が長くなり、接着剤の除去に多くの時間を要するため、効率が悪い。さらには、有機溶剤を使用するため、作業環境への影響も課題となる。
図1に示す本発明に係る導電性熱剥離固定材の実施の形態1による導電性熱剥離固定材10は、導電性基材1の表面に下にポリイオンコンプレックス樹脂層2と粘着剤層3が設けられ、粘着剤層3の裏面には、熱膨張性マイクロカプセル4が塗布された導電性粘着剤層6を有する金属箔5が貼り付けられた構造を有する。
図3及び図4は、上記の導電性熱剥離固定材10,11を、図5に示すワイヤ放電加工機による部品加工時に適応させるときのワーク99に貼り付けた状態をそれぞれ平面図及び断面図で示したものである。
なお、説明に不要な部分は省略し、また、説明を容易にするために拡大または、縮小して図示した部分がある。
(基材1)
基材1は、ワイヤ放電加工による切出し部品の荷重による変形を生じさせない剛性を有していることが重要である。基材1としては、銅、アルミ、銅合金、タングステン、ニッケルなどの金属板や、メッキ等により導電性を付与した剛体であってもよい。
基材1の厚さは、ワーク99から切り出す加工部品100の荷重を支持できる範囲で、特に制限されず適宜に決定できるが、ノズルとワークからの距離が離れるほどワイヤ放電加工の精度が低下するため5mm以下の厚みにすることが好ましい。
ポリイオンコンプレックス樹脂層2を基材1と粘着剤層3との間に設けることで、加工後に、酸性または塩基性の液体に浸漬することによって、基材1と粘着剤層3とを剥離させることが出来る。
本実施の形態による粘着剤層3には、ワイヤ放電加工によるワークの切断時に発生する固定材への応力によるずり変形を抑制するために、PETや金属箔などの基材を有する両面テープを用いることが好ましい。このとき、不織布基材や基材レスなどの両面テープを用いた場合には、変形が生じやすく、加工精度が低下するため、好ましくない。
図1及び図2で示される熱膨張性マイクロカプセル4と導電性粘着剤層6により形成される導電性熱膨張性粘着層は、少なくとも、粘着性を付与するための粘着剤と、熱膨張性を付与するための熱膨張性マイクロカプセルを含んでいる。そのため、導電性熱剥離固定材を、例えば、金属ワーク等の被着体に貼付けて加工した後、熱膨張性粘着層を加熱して、熱膨張性マイクロカプセル4等の発泡剤を膨張処理させることにより、熱膨張性粘着層が膨張し、この膨張により、熱膨張性粘着層と被着体(ワーク)との接触面積が減少し、導電性熱膨張性粘着層による接着力が減少して、導電性熱剥離固定材10,11を容易に被着体から剥離させることが出来るようになる。
また、熱膨張性マイクロカプセル4は、ワイヤ放電加工時に抵抗体として作用するため、金属蒸着や無電解めっきなどの方法により、表面に導電性を付与してもよい。
加熱処理温度は、熱膨張性マイクロカプセルの体積膨張温度に応じて、適宜選択することができるが、温度が高過ぎる場合には、ワーク99に用いる材料の熱膨張による変形が発生するため、100℃以下が好ましく、保存安定性や加工時の発熱による体積膨張の発生の可能性があるため、60℃以上であることが好ましい。
金属箔5は、ワイヤ放電加工時のワーク99と加工部品100との導電性を確保するために用いられる。金属箔5としては、導電性を有している材料から適宜することが出来る。例えば、銅箔またはアルミ箔が入手性、汎用性の点から好ましい。
金属箔の厚みとしては、特に制限されず適宜に決定できるが、作業性から0.001mm以上0.3mm以下であることが好ましい。
金属箔5または、導電性金属箔テープの金属箔表面は、基材1上に形成される各種粘着層などとの密着性を向上させるために、研磨による物理的処理を施しても良い。
図5には、ワイヤ放電加工機を用いた加工プロセスの一例が示されており、放電ワイヤを用いる放電加工方法としては、特に制限なく、公知の手法または汎用的に入手可能なワイヤ放電加工装置を用いて、適宜加工を行うことができる。放電ワイヤ103としては、黄銅線や被覆線等の汎用に入手可能なワイヤを用いることができる。
ワーク99の加工条件は、必要な加工粗さに応じて、ワイヤ放電加工機の加工電圧を50V以上300V以下の範囲で適宜選択することができる。このとき、加工電圧が低いほど、加工粗さが小さくなり、加工精度が向上する。ただし、加工電圧が50V未満の場合には、ワークの加工は可能であるが、放電が安定して生じ難くなり、加工性が低下するため好ましくない。また、加工電圧が300Vよりも大きな場合には、加工粗さが増すため好ましくない。
放電ワイヤ103とワーク99との間には電圧が掛けられており(図示せず)、放電が起こる。この放電は、放電ワイヤ103とワーク99の最短距離を通るアーク放電となり、アーク放電の発生に伴う熱エネルギーは放電ワイヤ103とワーク99を溶解すると同時にその周辺の水も急激に熱せられて気化し、瞬時に膨張するために局所的に爆発が起こり、この爆発によって溶解した部分は吹き飛ばされる。そして、爆発が生じた空間には周囲から水が流れ込み、溶解した部分は微粉となって水中に除去される。また、放電ワイヤ103とワーク99も水により冷却され、くぼみ(ワイヤギャプ98)が形成される。このような現象が連続して起こることによって、ワイヤの移動方向に沿ってワークが切断加工される。
導電性熱剥離固定材10,11をワーク99より剥離する際の加熱処理は、ワーク99の熱容量が大きく、熱風乾燥機、エアードライヤーなどを用いた場合には、熱膨張性マイクロカプセル4の熱膨張開始温度に達することが困難なため、温水に浸漬させ、加熱することが好ましい。ただし、温水による加熱では、熱膨張性粘着層に用いられている粘着剤が熱の影響により変形し、熱膨張性マイクロカプセルの体積膨張だけでは、十分な剥離力が得られないことがあるため、基材1を除去した後に、荷重を掛けて、切出し部品をワーク99から除去する必要がある。
加熱剥離処理後に、固定材10,11の基材1からの除去を行うには、水系の除錆剤や防錆剤などの酸性または塩基性の液体に浸漬を行うことで、ポリイオンコンプレックス樹脂層のポリカチオン樹脂とポリアニオン樹脂への解離が進行し、固定材と粘着剤層を剥離することが出来る。
ワイヤ放電加工に用いられるワーク99としては、導電性を有している材料から適宜選択することが出来る。例えば、鋼材、超硬合金、非鉄合金、ダイヤ焼結材などが挙げられる。
[実施例1]
基材1として、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ソーダ(商品名「3−MPSソーダ」、旭化学工業(株)製)の1mMエタノール溶液に12時間浸漬させ表面処理を行った厚み1mmの銅板を用いて、ポリカチオンとしてポリアリルアミン塩酸塩(商品名「PAS−H−5L」、ニットーボーメディカル(株)製)の0.1重量%水溶液に浸漬乾燥させた後、ポリアニオンとしてポリスチレンスルホン酸ソーダ(商品名「PS−100」、東ソー有機化学(株)製)の0.1重量%水溶液に浸漬乾燥させた後、イオン交換水にて洗浄を行いポリイオンコンプレックス樹脂層の形成を行った。
次いで、加工後のワーク99及び部品100を、80℃に加熱した温水中に1分間浸漬させ、剥離を行った。この時、加工部品の上下面が接着していた箇所では、剥離が確認できたが、ワーク表面での剥離は確認できなかった。
基材1として、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ソーダ(商品名「3−MPSソーダ」、旭化学工業(株)製)の1mMエタノール溶液に12時間浸漬させ表面処理を行った厚み1mmの銅板を用いて、ポリカチオンとしてポリアリルアミン塩酸塩(商品名「PAS−H−5L」、ニットーボーメディカル(株)製)の0.1重量%水溶液に浸漬乾燥させた後、ポリアニオンとしてポリスチレンスルホン酸ソーダ(商品名「PS−100」、東ソー有機化学(株)製)の0.1重量%水溶液に浸漬乾燥させた後、イオン交換水にて洗浄を行いポリイオンコンプレックス樹脂層2の形成を行った。
ポリイオンコンプレックス樹脂層の形成に用いるポリカチオンとして、塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース(商品名「カチナールHC−200」、東邦化学工業(株)製)の0.1重量%水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性熱剥離固定材10,11を得た。
ポリカチオンを用いなかったこと、イオン交換水による洗浄を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、導電性熱剥離固定材を得た。
次いで、市販のワイヤ放電加工機を用いて、加工中(仮固定中)のワーク及び部品の上下表面に導電性熱剥離固定材を貼付け、実施例1と同様の加工条件にて、ワイヤ放電加工を実施した。この時、加工途中に導電性熱剥離固定材より基材が剥離し、加工中の部品の位置ずれが生じ、短絡により、加工することが出来なかった。
ポリアニオンを用いなかったこと、イオン交換水による洗浄を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、導電性熱剥離固定材を得た。
次いで、市販のワイヤ放電加工機を用いて、加工中のワーク及び部品の上下表面に導電性熱剥離固定材を貼付け、実施例1と同様の加工条件にて、ワイヤ放電加工を実施した。この時、加工途中に導電性熱剥離固定材より、基材が剥離し、加工中の部品の位置ずれが生じ、短絡により、加工することが出来なかった。
熱膨張性マイクロカプセル4を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、導電性熱剥離固定材を得た。
次いで、市販のワイヤ放電加工機を用いて、加工中の部品の上下面に導電性熱剥離固定材を貼付け、実施例1と同様の加工条件にて、ワイヤ放電加工を実施した。この時、加工途中に導電性熱剥離固定材が被着体から剥離すること無く加工することができた。
次いで、温水加熱後のワーク及び部品を、除錆剤(商品名「KC−12」、日本メカケミカル(株)製)に浸漬させ、30秒間超音波洗浄を行った。この時、導電性熱剥離固定材に用いた基材が剥離したが、導電性熱剥離固定材表面より加工部品を押しても、加工部品を剥離することは出来なかった。
Claims (7)
- 導電性基材の表面にポリイオンコンプレックス樹脂層及び導電性熱膨張性粘着層がこの順番に設けられた
導電性熱剥離固定材。 - 前記ポリイオンコンプレックス樹脂層と前記導電性熱膨張性粘着層との間に粘着剤層及び金属箔が設けられている
請求項1に記載の導電性熱剥離固定材。 - 前記導電性熱膨張性粘着層が、ワイヤ放電加工において、加工部品をワークに仮固定して加工する際に、前記ワークと前記加工部品の上下表面にそれぞれ張付けられるものである
請求項1又は2に記載の導電性熱剥離固定材。 - 前記導電性熱膨張性粘着層が、前記ポリイオンコンプレックス樹脂層側の導電性粘着剤層と、前記ワーク側の熱膨張性マイクロカプセルとで構成されている
請求項3に記載の導電性熱剥離固定材。 - 前記粘着剤層が、絶縁性粘着剤層又は導電性粘着剤層である
請求項2に記載の導電性熱剥離固定材。 - 請求項1から5のいずれか一項に記載の導電性熱剥離固定材を、加工部品をワークに仮固定して加工する際に、前記ワークと前記加工部品の上下表面に張付けてワイヤ放電加工を行う
導電性熱剥離固定材を用いた部品の加工方法。 - 加工後、前記ワーク及び加工部品を温水中に浸漬し、その後、防錆剤又は除錆剤に浸漬させる
請求項6に記載の導電性熱剥離固定材を用いた部品の加工方法。
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